JP7230417B2 - 粘着剤組成物及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、粘着剤組成物に関するものであり、さらに詳しくは、繊維生地の貼り合わせ等に有用な粘着剤組成物に関するものである。
衣服等の製造工程において、風合いや着心地を良くするために、繊維生地どうしをミシン等による縫製ではなく、接着剤によって貼り合わせる接着方法、いわゆる無縫製が用いられる場合ある。この際、用いられる接着剤として、ウレタン系ホットメルト型接着剤が提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
また、接着層と繊維層との間の層間接着強度が高く、しかも繊維層の風合いが損なわれない積層体とするため、アクリル系ブロック共重合体を含有する接着層が提案されている(引用文献3)。
特開2016-74996号公報 特開2017-78232号公報 特開2017-206677号公報
しかしながら、特許文献1で使用しているウレタン系ホットメルト接着剤は室温で固体状態であるため、貼り合わせ箇所が硬くなり風合いが悪くなるという問題がある。また、特許文献2では、ウレタン系ホットメルト型接着剤で高強度となる貼り合わせ方法を行っているが、工程が複雑化するという問題がある。
すなわち、従来のホットメルト型接着フィルムは、溶融接着する際に樹脂が布の網目や発泡シート等の空隙などに含侵するため、生地・素材の風合いを損なうという問題がある。
さらに、特許文献3に使用されるアクリル系ブロック共重合体では、接着層と繊維層との層間接着強度が十分とはいえず、また、貼り合わせ箇所の柔軟性も不十分である。
したがって、生地どうしを簡易な方法で高強度に張り合わせることができ、貼り合わせ箇所が柔軟となる繊維生地貼り合わせ用の接着剤が要望されている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、繊維層どうしを強く接着でき、かつ、接着後の繊維層の風合いが損なわれない粘着剤組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合体を含有する粘着剤組成物が、室温での柔らかさと熱プレス時の流動性を両立できることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成したものである。本発明は以下のとおりである。
〔1〕重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を含む粘着剤組成物であって、
前記重合体ブロック(A)は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上350℃以下の重合体であって、前記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構造単位を50質量%以上99質量%以下含み、かつ、ガラス転移点が-50℃以上-10℃以下の重合体であり、
前記粘着剤組成物の23℃における貯蔵弾性率が0.01MPa以上0.50MPa以下である、粘着剤組成物。
〔2〕前記重合体ブロック(A)と前記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)との質量比が、1/99~20/80であるブロック共重合体を含む〔1〕に記載の粘着剤組成物。
〔3〕前記重合体ブロック(A)が、マレイミド化合物に由来する構造単位を10質量%以上90質量%以下含む〔1〕または〔2〕に記載の粘着剤組成物。
〔4〕前記重合体ブロック(A)は、さらにスチレン類に由来する構造単位を10質量%以上90質量%以下含む〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔5〕前記ブロック共重合体の数平均分子量が、10,000以上500,000以下である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔6〕前記ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比が、1.05以上2.50以下である〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の粘着剤組成物によって貼り合わせた繊維生地。
本発明の粘着剤組成物によれば、繊維層の風合いが損なわれることなく繊維層どうしを強く接着することができる。
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
本発明は、ガラス転移点が50℃以上350℃以下である重合体ブロック(A)、及び、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構造単位を50質量%以上99質量%以下含み、かつ、ガラス転移点が-50℃以上-10℃以下である(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を含む粘着剤組成物であって、当該粘着剤組成物(から調製された粘着剤層)の23℃での貯蔵弾性率が0.01MPa以上0.5MPa以下である、粘着剤組成物が提供される。
本発明で使用されるブロック共重合体が、重合体ブロック(A)及び/又は(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を同一分子内に2つ以上有する場合、各ブロックの構造は同一であっても異なっていても良い。
<重合体ブロック(A)について>
重合体ブロック(A)は、ガラス転移点が50℃以上350℃以下である重合体ブロックであり、重合体ブロック(A)を構成する単量体としては、マレイミド化合物、アミド基含有ビニル化合物、スチレン系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、架橋性官能基を有するビニル系単量体等が挙げられる。
マレイミド化合物には、マレイミド及びN-置換マレイミド化合物が含まれる。N-置換マレイミド化合物としては、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-イソブチルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、N-ペンチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-ヘプチルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ステアリルマレイミド等のN-アルキル置換マレイミド化合物、N-シクロペンチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-シクロアルキル置換マレイミド化合物、N-ベンジルマレイミド等のN-アラルキル置換マレイミド化合物、N-フェニルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(4-アセチルフェニル)マレイミド、N-(4-メトキシフェニル)マレイミド、N-(4-エトキシフェニル)マレイミド、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ブロモフェニル)マレイミド等のN-アリール置換マレイミド化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。重合体ブロック(A)においては、上記の内でも、得られるブロック共重合体の耐熱性及び接着性がより優れるものとなる点で、下記一般式(1)で表される化合物が好ましく、より好ましくは、N-フェニルマレイミドである。
Figure 0007230417000001
(式中、Rは水素原子、炭素数1~3のアルキル基又はPhRを表す。ただし、Phはフェニル基を表し、Rはフェニル基の任意の位置に結合した水素原子、ヒドロキシ基、
炭素数1~2のアルコキシ基、アセチル基又はハロゲンを表す。)
前記重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対する、マレイミド化合物の使用量は、10~90質量%が好ましい。より好ましくは、15~80質量%、さらに好ましくは、20~70質量%、一層好ましくは、20~65質量%である。
マレイミド化合物に由来する構造単位を10質量%以上含むブロック共重合体は、耐熱性及び接着性に優れるため好ましい。マレイミド化合物の重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対する使用量が90質量%以下であれば、ブロック共重合体の柔軟性を確保することができるため好ましい。
アミド基含有ビニル化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド誘導体、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド及びN-ビニルイソブチルアミド等のN-ビニルアミド系単量体などが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対する、アミド基含有ビニル化合物の使用量は、特に限定されないが、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。上限は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以下であることが最も好ましい。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-イソブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
上記の内でも、重合性の観点から、スチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレンが好ましい。また、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルナフタレンは、重合体ブロック(A)のガラス転移点を高めることができ、耐熱性に優れるブロックを得ることができる点において好ましい。
重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対する、スチレン系化合物の使用量は、10~90質量%が好ましい。より好ましくは、15~80質量%、さらに好ましくは、20~70質量%、一層好ましくは、20~65質量%である。
スチレン系化合物は、マレイミド化合物の重合性を向上させるという性質を有している。したがって、重合体ブロック(A)の構成単量体単位として、マレイミド化合物を用いた場合、スチレン系化合物を併用することで、マレイミド化合物の重合性を向上させることが好ましい。マレイミド化合物とスチレン系化合物を併用する場合、マレイミド化合物1molに対する、スチレン系化合物の使用量は、好ましくは、0.01~100mol、より好ましくは、0.1~10mol、さらに好ましくは、0.2~5mol、一層好ましくは、0.5~1.5molである。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル及び(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸の直鎖状又は分岐状アルキルエステル化合物、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物等が挙げられる。
重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対する、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の使用量は、特に限定されず、例えば5質量%以上であり、また例えば10質量%以上であり、また例えば20質量%以上である。上限は、例えば60質量%以下であり、また例えば50質量%以下であり、また例えば40質量%以下である。
架橋性官能基を有するビニル系単量体は、特に限定されず、公知の各種単量体化合物を用いることができ、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシ基含有ビニル化合物、エポキシ基含有ビニル化合物、反応性ケイ素基含有ビニル化合物、オキサゾリン基含有ビニル化合物及びイソシアネート基含有ビニル化合物等が挙げられる。重合体ブロック(A)においては、公知の化合物から1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、桂皮酸、更には、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のモノアルキルエステル)等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ヒドロキシ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、並びに、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応性ケイ素基含有ビニル化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等のビニルシラン類、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル類、トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル類等を挙げることができる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2以上の架橋性官能基数を容易に導入できることから、反応性ケイ素基含有ビニル化合物は好適である。また、かかるビニル化合物は、反応性ケイ素基同士が脱水縮合(重合)することができる。このため、ブロック共重合体を製造する重合反応及びその後の上記架橋反応を効率的に行うことができる点において好適である。
上記の外にも、オキサゾリン基含有ビニル化合物又はイソシアネート基含有ビニル化合物を共重合することにより、架橋性官能基としてオキサゾリン基又はイソシアネート基を導入することができる。
さらに、分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する多官能重合性単量体を共重合することにより、重合体ブロック(A)に架橋性官能基として重合性不飽和基を導入し得る。上記多官能重合性単量体としては、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基等の重合性官能基を分子内に2つ以上有する化合物であり、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等が挙げられる。例えば、ヘキサンジオールジアクリレートなどのアルキレンジオールジアクリレートの他、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等の分子内に(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体ブロック(A)の製造に、架橋性官能基を有するビニル系単量体を使用する場合の使用量は、重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対して0.01mol%以上使用することができる。また例えば0.1mol%以上であり、また例えば1.0mol%以上であり、また例えば2.0mol%以上である。架橋性官能基を有するビニル系単量体を0.01mol%以上使用することで、良好な架橋構造を得られ易くなり、高い耐熱性及び耐久性を備えるブロック共重合体を得易くなる。なお、上限は特に限定するものではないが、架橋反応の制御性の観点から、例えば60mol%以下であり、また例えば40mol%以下であり、また例えば20mol%以下であり、また例えば10mol%以下である。架橋性官能基を有するビニル系単量体の使用量の範囲は、既述の下限及び上限を適宜組み合わせることができるが、例えば、1mol%以上60mol%以下、また例えば5mol%以上50mol%以下、10mol%以上40mol%以下などとすることができる。
重合体ブロック(A)は、本ブロック共重合体の作用を損なわない範囲で、これらの単量体と共重合可能な他の単量体に由来する構成単位を備えることもできる。例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物などを含むことができる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシブチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシブチル等が挙げられる。
上記以外の他の単量体としては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
重合体ブロック(A)の製造における、上記の他の単量体の使用量は、重合体ブロック(A)の全構成単量体単位に対し、0~50質量%の範囲とすることができる。例えば5質量%以上であり、また例えば10質量%以上である。また例えば45質量%以下であり、また例えば40質量%以下である。
重合体ブロック(A)のガラス転移点は、50℃以上350℃以下である。ガラス転移点が50℃以上であると、本発明で使用されるブロック共重合体に良好な耐熱性を付与することができる。好ましくは120℃以上であり、また例えば140℃以上であり、また例えば160℃以上であり、また例えば180℃以上であり、また例えば200℃以上である。また、重合体ブロック(A)のガラス転移温度は、使用可能な構成単量体単位の制限から350℃以下であり、また例えば280℃以下であり、また例えば270℃以下であり、また例えば260℃以下である。
なお、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)のほか、ブロック共重合体のガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。また、DSCの測定が不可能であるときには、重合体ブロックを構成する単量体単位から計算により求めることもできる。
重合体ブロック(A)の数平均分子量は、500~30,000の範囲にあることが好ましい。数平均分子量が500以上であれば、ブロック共重合体の凝集力を確保することができ、30,000以下であれば、被着体に対する剥離強度が高い。好ましくは、1,000~18,000であり、より好ましくは2,000~16,000、さらに好ましくは、5,000~13,000、一層好ましくは8,000~12,000である。
重合体ブロック(A)は、後述する(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)と相分離する性質を有することが好ましい。
前記相分離する性質を有することで、ミクロ相分離構造を形成することができる。本願出願時の技術常識に基づいて当業者であれば容易に、(メタ)アリリル系重合体ブロック(B)と相分離する重合体ブロック(A)を設計することができる。例えば、公知の溶解パラメータの算出方法、例えば、以下に示すFedors法により計算したSP値を(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のSP値と比較したときの差分が0.01(絶対値)以上などとすることができる。また例えば0.05以上、また例えば0.1以上、また例えば0.2以上であってもよい。さらに例えば0.5以上であってもよい。また例えば、意図する重合体ブロック(A)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のポリマーブレンドを調製して、これらを混合して得られる構造を電子顕微鏡、原子間力顕微鏡又は小角X線散乱等で観察することにより、ブロック間の相分離性を容易に推測することができる。
SP値は、R.F.Fedorsにより著された「Polymer Engineering and Science」14(2),147(1974)に記載の計算方法によって、算出することができる。
<(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)について>
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、(メタ)アクリル系単量体を構成単量体
単位として含み、ガラス転移点が-50℃以上-10℃以下である重合体ブロックであり、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構造単位を、50質量%以上99質量%以下含むものである。
前記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシブチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシブチル等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸2-メトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル及び(メタ)アクリル酸2-エトキシエチルが好ましく、接着後の繊維層の風合い及びコストの面から、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルが特に好ましい。
前記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)に含まれる(メタ)アクリル系単量体としては、必須構成単量体である(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを含めて、構成単量体単位として、50質量%以上であり、また例えば70質量%以上であり、また例えば80質量%以上であることが好ましい。
前記(メタ)アクリル系単量体としては、下記一般式(2)で表される化合物である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル及びポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
CH=CR-C(=O)O(RO)n-R (2)
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数2~6の直鎖状又は分岐状アルキレン基を表し、Rは水素原子、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のア
リール基を表す。nは0又は1~100の整数を表す。)
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、重合体ブロック(A)に用いることができる単量体として例示した(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、粘着力が高くなる傾向があることから、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルを使用するのが好ましく、アクリル酸2-ヒドロキシエチルが特に好ましい。(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルの好ましい使用量は、0.1~20質量%、より好ましくは0.5~12質量%、更に好ましくは、2~7質量%である。
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、上記一般式(2)における(RO)は1種類のみであってもよいし、2種類以上の構造単位を含んでもよい。(RO)を2種類以上有する場合、nは各構造単位の繰返し単位数の総和を表す。nは1~100であってもよく、1~50であってもよく、1~30であってもよい。具体的な化合物としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。上記の化合物は市販品としても入手可能であり、例えばメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートとしては、日油株式会社製「ブレンマーPMEシリーズ」(n=2、4、9、23、90等、ブレンマーは登録商標)が挙げられる。
その他、アミド基、アミノ基、カルボキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を用いることもできる。
また、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、架橋性構成単位を含むブロックとすることができる。架橋性構成単位は、例えば、架橋性官能基を有するビニル化合物を共重合することによって導入することができる。架橋性官能基を有するビニル化合物としては、重合体ブロック(A)の製造に関して説明した化合物を用いることができる。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)が架橋性官能基を有する場合、例えば、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の全構成単量体単位に対して、架橋性官能基を有するビニル化合物を0.01モル%以上使用することができる。また例えば0.1モル%以上であり、また例えば0.5モル%以上である。架橋性官能基を有するビニル化合物の使用量を0.01モル%以上とすることで、耐熱性に優れるブロック共重合体を得易くなる。なお、上限は特に限定するものではないが、柔軟性の観点から、例えば20モル%以下であり、また例えば10モル%以下であり、また例えば5モル%以下である。架橋性官能基を有するビニル化合物の使用量の範囲は、既述の下限及び上限を適宜組み合わせることができるが、例えば、0.01~20モル%、また例えば0.1~10モル%、あるいは、0.5~5モル%等とすることができる。
本発明により奏される効果を妨げない限り、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、上記(メタ)アクリル系単量体以外の単量体を構成単量体単位として使用することができる。(メタ)アクリル系単量体以外の単量体としては、(メタ)アクリロイル基以外の不飽和基を有する単量体を用いることができ、アルキルビニルエステル、アルキルビニルエーテル及びスチレン系化合物等の脂肪族または芳香族ビニル化合物などが挙げられる。
(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)のガラス転移点は、-50℃以上-10℃以下である。ガラス転移点が-10℃以下であると、良好な粘着性及び柔軟性を本発明で使用するブロック共重合体に付与することができる。また例えば-20℃以下であり、また例えば-25℃以下であり、また例えば-30℃以下であり、また例えば-35℃以下である。ガラス転移点下限は、-50℃である。
既述のとおり、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、重合体ブロック(A)と相分離する性質を有することが好ましく、重合体ブロック(A)のSP値との所定の差分を有することが好適である。
<ブロック共重合体について>
本発明で使用するブロック共重合体は、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を各々1つ以上有していればよく、例えば重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)からなる(AB)ジブロック体、重合体ブロック(A)/(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)/重合体ブロック(A)からなる(ABA)トリブロック体又は(BAB)トリブロック体等が挙げられる。
また、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)以外の重合体ブロック(C)を含む、(ABC)又は(ABCA)等の構造を有するものであってもよい。中でも、本ブロック共重合体は、A-(BA)n(nは1以上の整数)構造を有することが好ましい。かかる構造であると、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)が擬似架橋構造を形成し、粘着物性の観点から好適である。尚、上記A-(BA)n構造は共重合体の全部又は一部に存在すればよく、例えば(BABAB)構造からなる共重合体などであってもよい。
本発明で使用するブロック共重合体における重合体ブロック(A)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)との質量比は、1/99~20/80であることが好ましく、より好ましくは、1/99~15/85であり、さらに好ましくは、1/99~10/90である。質量比が1/99~20/80であれば、架橋点となってハードセグメントを構成する重合体ブロック(A)と、ソフトセグメントとなる(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)から良好な耐熱性及び耐久性の粘着剤が得られ易くなるとともに、柔軟性が保たれるため好ましい。
本発明で使用するブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、特に限定するものではないが、10,000~500,000の範囲であることが好ましい。数平均分子量が10,000以上あれば、粘着剤において十分な強度や耐久性を発揮することができる。また、500,000以下であれば、良好な流動性、塗工性等の加工性を確保することができる。粘着剤の耐久性及び加工性等の観点から、本ブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは30,000以上であり、より好ましくは90,000以上であり、さらに好ましくは120,000以上である。また、好ましくは400,000以下であり、より好ましくは300,000以下であり、さらに好ましくは250,000以下である。
また、本発明で使用されるブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)の値を上記数平均分子量(Mn)の値で除して得られる分子量分布(Mw/Mn)は、擬似架橋構造を形成して粘着物性(接着性、凝集性等)を確保する観点から、2.5以下であることが好ましく、より好ましくは2.3以下である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、1.05以上であることが好ましく、さらに好ましくは1.1以上である。
また、重合体ブロック(A)が架橋性官能基を有する場合、これを利用して架橋することにより耐熱性がより良好な粘着剤を得ることができる。上記架橋は重合体ブロック(A)に導入した架橋性官能基同士の反応によるものであってもよいし、当該架橋性官能基と反応可能な官能基を有する架橋剤を添加して行ってもよい。重合体ブロック(A)に導入した架橋性官能基同士の反応による場合、当該架橋性官能基として反応性ケイ素基を用いると、本ブロック共重合体を製造する重合反応及びその後の上記架橋反応を効率的に行うことができる。
<ブロック共重合体の製造方法>
本ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を得る限りにおいて特段の制限を受けるものではなく、公知の製造方法を採用することができる。例えば、リビングラジカル重合及びリビングアニオン重合等の各種制御重合法を利用する方法や、官能基を有する重合体同士をカップリングする方法等を挙げることができる。これらの中でも、操作が簡便であり、広い範囲の単量体に対して適用することができる観点から、リビングラジカル重合法が好ましい。
リビングラジカル重合は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、乾式連続重合プロセス、連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のいずれのプロセスを採用してもよい。また、重合形式は、溶剤を用いないバルク重合、溶剤系の溶液重合、水系の乳化重合、ミニエマルション重合又は懸濁重合等の各種態様に適用することができる。
リビングラジカル重合法の種類についても特段の制限はなく、可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、ニトロキシラジカル法(NMP法)、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)、有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)、有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)及びヨウ素移動重合法等の各種重合方法を採用することができる。これらの内でも、重合の制御性と実施の簡便さの観点から、RAFT法、NMP法及びATRP法が好ましい。
RAFT法では、特定の重合制御剤(RAFT剤)及び一般的なフリーラジカル重合開始剤の存在下、可逆的な連鎖移動反応を介して制御された重合が進行する。RAFT剤としては、ジチオエステル化合物、ザンテート化合物、トリチオカーボネート化合物及びジチオカーバメート化合物等、公知の各種RAFT剤を使用することができる。RAFT剤は活性点を1箇所のみ有する一官能のものを用いてもよいし、二官能以上のものを用いてもよい。上記A-(BA)n型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい点では、二官能型のRAFT剤を用いることが好ましい。
また、RAFT剤の使用量は、用いる単量体及びRAFT剤の種類等により適宜調整される。
RAFT法による重合の際に用いる重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができるが、安全上取り扱い易く、ラジカル重合時の副反応が起こりにくい点からアゾ化合物が好ましい。上記アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤は1種類のみ使用しても又は2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤の使用割合は特に制限されないが、分子量分布がより小さい重合体を得る点から、上記RAFT剤1molに対する上記ラジカル重合開始剤の使用量を0.5mol以下とすることが好ましく、0.2mol以下とするのがより好ましい。また、重合反応を安定的に行う観点から、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量の下限は、0.01molである。したがって、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量は、0.01~0.5molの範囲が好ましく、0.05~0.2mol以下の範囲がより好ましい。
RAFT法による重合反応の際の反応温度は、好ましくは40℃以上100℃以下であり、より好ましくは45℃以上90℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上80℃以下である。反応温度が40℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。
一方、反応温度が100℃以下であれば、副反応が抑制できるとともに、使用できる開始剤や溶剤に関する制限が緩和される。
NMP法では、ニトロキシドを有する特定のアルコキシアミン化合物等をリビングラジカル重合開始剤として用い、これに由来するニトロキシドラジカルを介して重合が進行する。本発明で使用されるブロック共重合体の製造においては、用いるニトロキシドラジカルの種類に特に制限はなく、商業的に入手可能のニトロキシド系重合開始剤を用いることができる。また、アクリレートを含む単量体を重合する際の重合制御性の観点から、ニトロキシド化合物として一般式(3)で表される化合物を用いることが好ましい。
Figure 0007230417000002
{式中、Rは炭素数1~2のアルキル基又は水素原子であり、R2は炭素数1~2のアルキル基又はニトリル基であり、Rは-(CH2)m-、mは0~2であり、R4、R5は炭素数1~4のアルキル基である。}
上記一般式(3)で表されるニトロキシド化合物は、70~80℃程度の加熱により一次解離し、ビニル系単量体と付加反応を起こす。この際、2以上のビニル基を有するビニル系単量体にニトロキシド化合物を付加することにより多官能性の重合前駆体を得ることが可能である。次いで、上記重合前駆体を加熱下で二次解離することにより、ビニル系単量体をリビング重合することができる。この場合、重合前駆体は分子内に2以上の活性点を有するため、より分子量分布の狭い重合体を得ることができる。上記A-(BA)n型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい観点から、分子内に活性点を2つ有する二官能型の重合前駆体を用いることが好ましい。また、ニトロキシド化合物の使用量は、用いる単量体及びニトロキシド化合物の種類等により適宜調整される。
本ブロック共重合体をNMP法により製造する場合、上記一般式(3)で表されるニトロキシド化合物1molに対し、下記一般式(4)で表されるニトロキシドラジカルを0.001~0.2molの範囲で添加して重合を行ってもよい。
Figure 0007230417000003
{式中、R6、R7は炭素数1~4のアルキル基である。}
上記一般式(4)で表されるニトロキシドラジカルを0.001mol以上添加することにより、ニトロキシドラジカルの濃度が定常状態に達する時間が短縮される。これにより、重合をより高度に制御することが可能となり、より分子量分布の狭い重合体を得ることができる。一方、上記ニトロキシドラジカルの添加量が多すぎると重合が進行しない場合がある。上記ニトロキシド化合物1molに対する上記ニトロキシドラジカルのより好ましい添加量は0.01~0.5molの範囲であり、さらに好ましい添加量は0.05~0.2molの範囲である。
NMP法における反応温度は、好ましくは50℃以上140℃以下であり、より好ましくは60℃以上130℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上120℃以下であり、特に好ましくは80℃以上120℃以下である。反応温度が50℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。一方、反応温度が140℃以下であれば、ラジカル連鎖移動等の副反応が抑制される傾向がある。
ATRP法では、一般に有機ハロゲン化物を開始剤とし、触媒に遷移金属錯体を用いて重合反応が行われる。開始剤である有機ハロゲン化物は、一官能性のものを用いてもよいし、二官能以上のものを用いてもよい。上記A-(BA)n型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい点では、二官能性の化合物を用いることが好ましい。また、ハロゲンの種類としては臭化物及び塩化物が好ましい。
ATRP法における反応温度は、好ましくは20℃以上200℃以下であり、より好ましくは50℃以上150℃以下である。反応温度20℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。
リビングラジカル重合法により、重合体ブロック(A)-(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)-重合体ブロック(A)からなる、ABAトリブロック共重合体等のA-(BA)n型構造体を得る場合、例えば、各ブロックを順次重合することにより目的とするブロック共重合体を得てもよい。この場合、まず、第一重合工程として、重合体ブロック(A)の構成単量体を用いて重合体ブロック(A)を得る。次いで、第二重合工程として、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の構成単量体を用いて(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を得る。さらに、第三重合工程として、重合体ブロック(A)の構成単量体を用いて重合することによりABAトリブロック共重合体を得ることができる。この場合、重合開始剤は、上記した一官能性の重合開始剤又は重合前駆体を用いることが好ましい。上記の第二重合工程及び第三重合工程を繰り返すことにより、テトラブロック共重合体等のより高次のブロック共重合体を得ることができる。
また、以下に示す二段階の重合工程を含む方法により製造した場合は、より効率的に目的物が得られることから好ましい。すなわち、第一重合工程として、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の構成単量体を用いて(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を得た後、第二重合工程として、重合体ブロック(A)の構成単量体を重合して重合体ブロック(A)を得る。これにより、重合体ブロック(A)-(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)-重合体ブロック(A)からなる、ABAトリブロック共重合体を得ることができる。この場合、重合開始剤は、二官能性の重合開始剤又は重合前駆体を用いることが好ましい。この方法によれば、各ブロックを順次重合して製造する場合に比較して工程を簡略化することができる。また、上記の第一重合工程及び第二重合工程を繰り返すことにより、テトラブロック共重合体等のより高次のブロック共重合体を得ることができる。
本発明で使用するブロック共重合体の重合は、その重合方法によらず、必要に応じて連鎖移動剤の存在下で実施しても良い。連鎖移動剤は公知のものを使用することができ、具体的には、エタンチオール、1-プロパンチオール、2-プロパンチオール、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、1-ヘキサンチオール、2-ヘキサンチオール、2-メチルヘプタン-2-チオール、2-ブチルブタン-1-チオール、1,1-ジメチル-1-ペンタンチオール、1-オクタンチオール、2-オクタンチオール、1-デカンチオール、3-デカンチオール、1-ウンデカンチオール、1-ドデカンチオール、2-ドデカンチオール、1-トリデカンチオール、1-テトラデカンチオール、3-メチル-3-ウンデカンチオール、5-エチル-5-デカンチオール、tert-テトラデカンチオール、1-ヘキサデカンチオール、1-ヘプタデカンチオール及び1-オクタデカンチオール等の炭素数2~20のアルキル基を有するアルキルチオール化合物の他、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトエタノール等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
本発明で使用するブロック共重合体の製造においては、リビングラジカル重合において公知の重合溶媒を用いることができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アルコール、水等が挙げられる。また、重合溶媒を使用せず、塊状重合等の態様で行ってもよい。
<粘着剤組成物について>
本発明で使用するブロック共重合体は、単独でも粘着剤材料として適用することが可能であるが、必要に応じて公知の添加剤等を配合した粘着剤組成物の態様としてもよい。特に、本ブロック共重合体が重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)の少なくともいずれかに架橋性官能基を含む場合、当該架橋性官能基と反応可能な架橋剤を配合することができる。さらに必要に応じて、加熱処理等を施すことにより、用途に応じた粘着剤を得ることができる。
上記架橋剤(硬化剤)としては、グリシジル基を2つ以上有するグリシジル化合物、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物、アジリジニル基を2つ以上有するアジリジン化合物、オキサゾリン基を有するオキサゾリン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物等が挙げられる。なかでも、高温条件下における粘着物性に優れる点でイソシアネート化合物が好ましい。
上記アジリジン化合物としては、1,6-ビス(1-アジリジニルカルボニルアミノ)ヘキサン、1,1’-(メチレン-ジ-p-フェニレン)ビス-3,3-アジリジル尿素、1,1’-(ヘキサメチレン)ビス-3,3-アジリジル尿素、エチレンビス-(2-アジリジニルプロピオネート)、トリス(1-アジリジニル)ホスフィンオキサイド、2,4,6-トリアジリジニル-1,3,5-トリアジン、トリメチロールプロパン-トリス-(2-アジリジニルプロピオネート)等が挙げられる。
上記グリシジル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジル化合物が挙げられる。
上記イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート基を2つ以上有する化合物が用いられる。
上記イソシアネート化合物としては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物、更には、これらのイソシアネート化合物の変性物(プレポリマー等)を用いることができる。
芳香族イソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。
脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。 脂環族イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等が挙げられる。
また、変性イソシアネートとしては、上記イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。
本発明で提供される粘着剤組成物が架橋剤(硬化剤)を含有する場合、その含有量は、本発明で使用するブロック共重合体の使用量に対して、0.01~10質量%とすることもできる。また、0.03~5質量%、0.05~2質量%とすることもできる。
本発明で提供される粘着剤組成物は、粘着付与剤が添加されたものであっても良い。粘着付与剤としては、常温で固体であれば、特に限定されず、ロジン系化合物、テルペン系化合物、ポリ(α-メチルスチレン)等のスチレン樹脂、(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー等が挙げられる。
ロジン系化合物としては、不均化ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、重合ロジンエステル樹脂等が挙げられる。これらは市販品を用いても良く、不均化ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製のスーパーエステルA-100、A-115、及び、A-125等が例示される。水添ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製のパインクリスタルKE-604及びKE-140等が例示される。また、重合ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製のペンセルA、ペンセルC、ペンセルD-125、ペンセルD-135、及び、ペンセルD-160等が挙げられる。
テルペン系化合物としては、例えば、荒川化学工業社製のタマノル80L、および、タマノル901、あるいは、ヤスハラケミカル社製のYSポリスターG150、YSポリスターG125、YSポリスターT100、YSポリスターT115、YSポリスターT130、および、YSポリスターT145等が例示される。
粘着付与剤として、(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーも好適に使用することができる。粘着付与剤として使用できる(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーのガラス転移点は10~300℃であり、好ましくは、15~250℃、より好ましくは、20~200℃、さらに好ましくは30~150℃である。ガラス転移点が前記範囲内であれば、接着性の向上効果がある。より具体的には、ガラス転移点が30~150℃、数平均分子量が500~10,000である(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーを好適に使用することができる。
これらの粘着付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの粘着付与剤の中では、透明性等の観点から(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーを用いるのが好ましい。
粘着付与剤の使用量は、本発明で使用するブロック共重合体の使用量に対して、好ましくは0~40質量%であり、より好ましくは0~20質量%であり、さらに好ましくは0~5質量%である。使用量が前記範囲内であれば、接着性の向上効果がある。
その他、上記の添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、防かび剤、シランカップリング剤、充填剤、着色剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、本発明で使用するブロック共重合体の使用量に対して、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは0~5重量%であり、さらに好ましくは0~2質量%である。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
実施例及び比較例で使用した重合体の分析方法および製造方法について以下に記載する。
<分子量測定>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(型式名「HLC-8320」、東ソー社製)を用いて、下記の条件よりポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得た。また、得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
○測定条件
カラム:東ソー社製TSKgel SuperMultiporeHZ-M×4本
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
流速:600μL/min
<重合体の組成比>
得られた重合体の組成比は1H-NMR測定より同定・算出した。測定装置にはBRUKER社製AscendTM400核磁気共鳴測定装置を用いた。25℃で、テトラメチルシランを標準物質、重クロロホルムを溶媒として測定を行った。
<ガラス転移点(Tg)の測定>
得られた重合体のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計を用いて得られた熱流束曲線のベースラインと変曲点での接線の交点から決定した。熱流束曲線は試料約10mgを-50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで300℃まで昇温し、引き続き-50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで350℃まで昇温する条件で得た。
測定機器:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220
測定雰囲気:窒素雰囲気下
なお、実施例及び比較例において使用したブロック共重合体の示差走査熱量(DSC)測定を行うことにより、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)に対応する変曲点が得られ、これらから各重合体ブロックのTgを求めることができる。ブロック共重合体の変曲点が不明確な場合は、重合体ブロック(A)の単独重合体及び重合体ブロック(B)の単独重合体を調製し、DSC測定を行うことで、各重合体ブロックのTgを求めることができる。
<合成例1> 実施例1に用いた粘着剤溶液
攪拌機、温度計を装着した1LフラスコにRAFT剤としてジベンジルトリチオカーボネート(以下、「DBTTC」ともいう。)(3.18g)、重合開始剤として2,2´-アゾビス2-メチルブチロニトリル(以下、「ABN-E」ともいう。)(0.51g)、単量体としてスチレン(75g)及びフェニルマレイミド(以下、「PhMI」ともいう。)(125g)、溶媒としてアセトニトリル(466g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却して反応を停止した。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体ブロックAを得た。得られた重合体ブロックAの分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定(ポリスチレン換算)より、Mn11,400であった。
次に、攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに得られた重合体ブロックA(21.1g)、重合開始剤としてABN-E(0.08g)、単量体としてアクリル酸メトキシエチル(以下、「MEA」ともいう。)(290g)及びアクリル酸ヒドロキシエチル(以下、「HEA」ともいう。)(15g)、溶媒としてアセトニトリル(107g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、アセトニトリルを追加することで固形分濃度が30%になるように調整し、粘着剤溶液を得た。得られたA-B-Aブロック共重合体の分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定(ポリスチレン換算)より、Mn122,100、Mw/Mn1.97であった。
<合成例2> 実施例2-4に用いた粘着剤溶液
攪拌機、温度計を装着した1LフラスコにRAFT剤としてDBTTC(3.18g)、重合開始剤としてABN-E(0.51g)、単量体としてスチレン(75g)、および、PhMI(125g)、溶媒としてアセトニトリル(466g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却して反応を停止した。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体ブロックAを得た。得られた重合体ブロックAの分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn10,900であった。
次に、攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに得られた重合体ブロックA(21.1g)、重合開始剤としてABN-E(0.08g)、単量体としてMEA(234g)、アクリル酸ブチル(以下、「n-BA」ともいう。)(51g)、および、HEA(15g)、溶媒としてアセトニトリル(107g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、アセトニトリルを追加することで固形分濃度が30%になるように調整し、粘着剤溶液を得た。得られたA-B-Aブロック共重合体の分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn160,000、Mw/Mn2.24であった。
<合成例3> 実施例5に用いた粘着剤溶液
攪拌機、温度計を装着した1LフラスコにRAFT剤としてDBTTC(3.18g)、重合開始剤としてABN-E(0.51g)、単量体としてスチレン(75g)及びPhMI(125g)、溶媒としてアセトニトリル(466g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却して反応を停止した。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体ブロックAを得た。得られた重合体ブロックAの分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn10,900であった。
次に、攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに得られた重合体ブロックA(21.1g)、重合開始剤としてABN-E(0.08g)、単量体としてMEA(205g)、BA(87g)及びHEA(15g)、溶媒としてアセトニトリル(107g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、アセトニトリルを追加することで固形分濃度が30%になるように調整し、粘着剤溶液を得た。得られたA-B-Aブロック共重合体の分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn152,000、Mw/Mn1.84であった。
<合成例4> 実施例6に用いた粘着剤溶液
攪拌機、温度計を装着した1LフラスコにRAFT剤としてDBTTC(3.18g)、重合開始剤としてABN-E(0.51g)、単量体としてスチレン(75g)及びPhMI(125g)、溶媒としてアセトニトリル(466g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却して反応を停止した。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体ブロックAを得た。得られた重合体ブロックAの分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn10,900であった。
次に、攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに得られた重合体ブロックA(21.1g)、重合開始剤としてABN-E(0.08g)、単量体としてMEA(168g)、BA(112g)及びHEA(15g)、溶媒としてアセトニトリル(107g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、アセトニトリルを追加することで固形分濃度が30%になるように調整し、粘着剤溶液を得た。得られたA-B-Aブロック共重合体の分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn150,000、Mw/Mn1.72であった。
<合成例5> 比較例1に用いた粘着剤溶液
攪拌機、温度計を装着した1LフラスコにRAFT剤としてDBTTC(3.18g)、重合開始剤としてABN-E(0.51g)、単量体としてスチレン(75g)及びPhMI(125g)、溶媒としてアセトニトリル(466g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却して反応を停止した。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体ブロックAを得た。得られた重合体ブロックAの分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn10,900であった。
次に、攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに得られた重合体ブロックA(21.1g)、重合開始剤としてABN-E(0.08g)、単量体としてBA(285g)及びHEA(15g)、溶媒としてアセトニトリル(107g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、アセトニトリルを追加することで固形分濃度が30%になるように調整し、粘着剤溶液を得た。得られたA-B-Aブロック共重合体の分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn156,900、Mw/Mn1.56であった。

<合成例6> タッキファイヤの合成
内容積1リットルの4つ口フラスコに、溶媒として酢酸ブチル(210質量部)と、重合開始剤としてジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬社製、V-601)(0.9質量部)とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に昇温した。別途、単量体としてメタクリル酸メチル(以下、「MMA」ともいう)(165質量部)、メタクリル酸イソボルニル(以下、「IBXMA」ともいう)(44質量部)及びV-601(17質量部)、酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離した。得られた重合体のモノマー組成は、仕込量とGC測定によるモノマー消費量から計算した結果、MMA80質量%、IBXMA20質量%からなり、Mw7390、Mn4760、Mw/Mn1.55であった。Tgは100℃であった。
「実施例1」
上記合成例1で得られた固形分濃度30質量%の粘着剤溶液を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」)製セパレーター上に、乾燥後の厚みが100μmとなるように塗布した。粘着剤組成物を100℃、6分間乾燥することで、アセトニトリルを除去した。乾燥後は前記セパレーターとは剥離力の異なる厚さ38μmのPET製セパレーターを貼りあわせて、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。
「実施例2、5、6、並びに、比較例1」
使用した粘着剤組成物を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の操作により、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。
「実施例3」
上記合成例2で得られた固形分濃度30質量%の粘着剤溶液に架橋剤としてタケネートD-110N(固形分濃度75質量%、三井化学社製)(0.08質量部)を混合し、粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、厚さ50μmのPET製セパレーター上に、乾燥後の厚みが100μmとなるように塗布した。粘着剤組成物を100℃、6分間乾燥することで、アセトニトリルを除去した。乾燥後は前記セパレーターとは剥離力の異なる厚さ38μmのPET製セパレーターを貼りあわせて、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。その後、40℃で5日間養生することで架橋反応を促進した。
「実施例4」
上記合成例1で得られた固形分濃度30質量%の粘着剤溶液に添加剤として、<合成例6>で調製したタッキファイヤ(粘着剤固形分に対して4質量部)を混合し、粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、厚さ50μmのPET製セパレーター上に、乾燥後の厚みが100μmとなるように塗布した。粘着剤組成物を100℃、6分間乾燥することで、アセトニトリルを除去した。乾燥後は前記セパレーターとは剥離力の異なる厚さ38μmのPET製セパレーターを貼りあわせて、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。
「比較例2」
ペレット状のウレタン系ホットメルト接着剤(バイエル社製Desmocoll500)を離型紙に挟み、130℃、1kg/cm2で熱プレスして100μm厚の粘着フィルム試料を得た。
<23℃における貯蔵弾性率>
100μm厚の粘着剤シートを積層して、800μm厚のサンプルを作製した。この積層シートを1cmφに打ち抜き、粘弾性測定装置Physica MCR301(AntonPaar社製)を用いて、ひずみ0.1%、周波数1Hzで23℃における貯蔵弾性率を測定した。
<手触り試験:風合い>
風合いは熱プレスで貼り合せた接着箇所の曲げ硬さを以下の基準で評価した。
○:非接着部の生地と同程度の柔らかさ
×:接着剤由来の硬さを感じる
<剥離強度の評価>
ポリエステル生地2枚を1.0cm幅にカットした粘着剤シートで貼り合せた。貼り合わせた生地の積層体を熱プレスで130℃、3kg/cm、10秒の条件で圧着した。圧着した試験片は恒温槽付き引張り試験機INSTRON 5566A(インストロンジャパン社製)を用いて、測定温度23℃、試験片幅1.0cm、剥離速度300mm/分で接着面に対して垂直方向に剥離強度を測定し、接着強度とした。
<接着性の評価>
上記方法で測定した剥離強度を用いて、以下の基準によって接着性を評価した。
〇:10N/10mm以上
△:8N/10mm以上10N/10mm未満
×:8N/10mm未満
Figure 0007230417000004
表1に示された化合物の詳細は以下の通りである。
PhMI:フェニルマレイミド
St:スチレン
MEA:アクリル酸2-メトキシエチル
n-BA:アクリル酸n-ブチル
HEA:アクリル酸ヒドロキシエチル
架橋剤: 三井化学製タケネートD-110N
タッキファイヤ: [合成例6]で調製したタッキファイヤ
表1に示したように、ビニル系単量体を構成単量体として含む重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構造単位50質量%以上から成る(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を含み、23℃での貯蔵弾性率が0.5MPa以下である粘着剤組成物を用いた実施例1~実施例6では、何れも剥離強度が9.0N/10mm以上であり、本発明で提供される粘着剤組成物が生地に対する高い接着力を有していることが分かった。また、実施例1~実施例6では、接着部の風合いは柔軟性を有していることが分かった。
一方、(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)に(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構造単位を含まない粘着剤組成物を用いた比較例1では、生地に対する接着力が低下した。また従来汎用されてきたウレタン系ホットメルト接着剤を用いた比較例2では、剥離強度が高く、良好な接着性を示したものの、貯蔵弾性率が高いため接着部が固く、また、接着部の風合いも良くないことが分かった。
本発明で提供される粘着剤組成物は、熱プレス時に樹脂が布の網目に含浸しても、室温での弾性率が低いため柔軟であり、かつ、生地と生地を強度に接着することが可能であり、無縫製でのランジェリー製品やインナー製品等の衣料用品の製造時等に、粘着剤組成物として好適に利用することができる。




Claims (6)

  1. 重合体ブロック(A)及び(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を含む粘着剤組成物であって、
    前記重合体ブロック(A)は、マレイミド化合物に由来する構造単位とスチレン系化合物に由来する構造単位とを含み、かつ、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上350℃以下の重合体であり、前記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)は、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構造単位をモル%以上95モル%以下含み、かつ、ガラス転移点が-50℃以上-10℃以下の重合体であり、
    前記ブロック共重合体における前記重合体ブロック(A)と前記(メタ)アクリル系重合体ブロック(B)との質量比が1/99~20/80であり、
    前記粘着剤組成物の、周波数1Hzで測定した23℃における貯蔵弾性率が0.01MPa以上0.50MPa以下である、粘着剤組成物。
  2. 前記重合体ブロック(A)が、マレイミド化合物に由来する構造単位を10質量%以上90質量%以下含む請求項1に記載の粘着剤組成物。
  3. 前記重合体ブロック(A)は、スチレン系化合物に由来する構造単位を10質量%以上90質量%以下含む請求項に記載の粘着剤組成物。
  4. 前記ブロック共重合体の数平均分子量が、10,000以上500,000以下である請求項1~のいずれかに記載の粘着剤組成物。
  5. 前記ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比が、1.05以上2.50以下である、請求項1~のいずれかに記載の粘着剤組成物。
  6. 請求項1~請求項のいずれかに記載の粘着剤組成物によって貼り合わせた繊維生地。
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