JP2021066843A - 繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物及び積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】繊維生地とエラストマー基材とを高強度で接合することができ、かつ接合箇所の柔軟性及び伸縮性を保持することができる繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物を提供すること。【解決手段】アクリル系粘着性ポリマー(A)を含有する繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物であって、アクリル系粘着性ポリマー(A)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を有するアクリル系ポリマー鎖を主体とし、アクリル系ポリマー鎖のガラス転移温度が−80℃以上10℃以下であり、繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が1.0MPa以下である、繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物とする。【選択図】なし

Description

本発明は、繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物及び積層体に関し、詳しくは、繊維生地とエラストマー基材とを接合するための粘着剤組成物、及び当該粘着剤組成物を用いて繊維生地とエラストマー基材とが接合された積層体に関する。
各種製品の製造工程等において異種又は同種の素材同士を接着加工により貼り合わせるための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ウレタン系のホットメルト接着剤を用いて衣類の生地片同士を接合することが開示されている。
エラストマーは、伸縮性や制振性を示すことから、例えば衣料品や日用品、スポーツ用品、医療用品、車両用内外装材等の各種用途において、伸縮性材料や制振性材料として使用されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2には、エラストマーシートとして、熱可塑性エラストマーからなるメッシュ状の伸縮性不織布が開示されている。
特開2017−186695号公報 特開2017−186535号公報
各種製品の製造工程において、繊維素材に伸縮性を付与するために繊維生地にエラストマーシートを貼り合わせることがある。このとき、繊維生地とエラストマーシートとの接合箇所において浮きや剥がれが生じないように、繊維生地とエラストマーシートとを高強度に接合することが望ましい。
しかしながら、特許文献1に記載されたウレタン系ホットメルト接着剤は、繊維生地や樹脂フィルムを主な接合対象としており、繊維生地とエラストマー材料とを十分な強度で接着できないことが懸念される。また、ウレタン系ホットメルト接着剤は、室温では柔軟性を失い固体状態となるため、繊維生地とエラストマー材料との接合箇所が部分的に硬くなり、接合箇所の柔軟性や伸縮性が低下してしまう。
特許文献2に記載されたメッシュ状のエラストマーシートは熱可塑性を有するため、熱圧着によってエラストマーシートを溶融することにより、粘着剤を用いずにエラストマーシートを繊維生地に接着させることが可能である。しかしながら、繊維生地との接合時にはエラストマーシートが溶融して変形するため、接合前の状態に比べ、エラストマーシートの伸縮性が低下してしまうことが懸念される。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、繊維生地とエラストマー基材とを高強度で接合することができ、かつ接合箇所の柔軟性及び伸縮性を保持することができる繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物を提供することを主たる目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の粘着剤組成物を用いて繊維生地とエラストマー基材とを接合する技術によれば上記課題を解決できることを見出した。本発明は、こうした知見に基づいて完成したものである。本発明によれば以下の手段が提供される。
〔1〕アクリル系粘着性ポリマー(A)を含有し、繊維生地とエラストマー基材とを接合するための繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物であって、前記アクリル系粘着性ポリマー(A)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を有するアクリル系ポリマー鎖を主体とし、前記アクリル系ポリマー鎖のガラス転移温度が−80℃以上10℃以下であり、前記繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が1.0MPa以下である、繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
〔2〕前記アクリル系ポリマー鎖は、(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の単量体に由来する構造単位を有する、〔1〕の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
〔3〕前記アクリル系ポリマー鎖は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位を有する、〔1〕又は〔2〕の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
〔4〕前記アクリル系粘着性ポリマー(A)の数平均分子量が、50,000以上1,000,000以下である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
〔5〕ガラス転移温度が40℃以上200℃以下であり、かつ、数平均分子量が500以上10,000以下であるビニル重合体(B)を更に含有する、〔1〕〜〔4〕のいずれか1の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
〔6〕前記アクリル系粘着性ポリマー(A)は、ガラス転移温度が50℃以上である重合体ブロックMと、前記アクリル系ポリマー鎖を有する重合体ブロックNとを含むブロック共重合体である、〔1〕〜〔5〕のいずれか1の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
〔7〕前記アクリル系粘着性ポリマー(A)における前記重合体ブロックMと前記重合体ブロックNとのモル比(重合体ブロックM/重合体ブロックN)が、1/99〜20/80である、〔6〕の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
〔8〕上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を介して、繊維生地とエラストマー基材とが接合された接合部を有する積層体。
本発明の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物によれば、繊維生地とエラストマー基材との接合箇所の柔軟性及び伸縮性を保持したまま、繊維生地とエラストマー基材とを高強度で接合することができる。
以下、本開示について詳しく説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
《繊維生地/エラストマー接合用粘着剤組成物》
本発明の繊維生地/エラストマー接合用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう。)は、繊維生地とエラストマー基材とを接合するための粘着剤組成物である。
[繊維生地]
繊維生地は、特に限定されないが、例えば、織物、編物、不織布、レース、皮革(天然皮革、合成皮革、人工皮革等)、毛皮等が挙げられる。また、繊維生地を構成する繊維の種類についても特に制限されない。その具体例としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン及びアクリル繊維等の合成繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維;アセテート等の半合成繊維;木綿、麻、羊毛等の天然繊維等が挙げられる。また、エラストマー基材と貼り合わせる繊維生地の表面には撥水処理等が施されていてもよい。
[エラストマー基材]
エラストマー基材は、熱可塑性エラストマーにより形成されていてもよく、熱硬化性エラストマーにより形成されていてもよい。また、熱可塑性エラストマーと熱硬化性エラストマーとを組み合わせた材料を用いることも可能である。熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等が挙げられる。熱硬化性エラストマーの具体例としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム等が挙げられる。
これらのうち、加工性の観点から熱可塑性エラストマーが好ましく、中でも、柔軟性が高い点でTPS、TPOが好ましく、耐熱性が高い点でTPEE、TPA、TPU等が好ましい。これらの具体例としては、TPSとして、SBS、SIS、SEBS、SEPS、SEEPS、SIBS及びSEBC等のスチレン系ブロック共重合体、並びにこれらスチレン系ブロック共重合体にカルボキシル基等の官能基又はその誘導体を導入したもの等を;TPOとして、CEBC等のブロック共重合体、ポリオレフィンとEPM、EPDM等のゴムとの分散系等を;TPEEとして、ポリエステル又はポリエーテル構造のソフトセグメントとポリエステル構造のハードセグメントとからなるブロック共重合体等を;TPAとして、ポリエステル又はポリエーテル構造のソフトセグメントとポリアミド構造のハードセグメントとからなるブロック共重合体等を;TPUとして、ポリエステル又はポリエーテル構造のソフトセグメントとポリウレタン構造のハードセグメントとからなるブロック共重合体等を、それぞれ挙げることができる。これらの中でも、TPSやTPOは繊維との接着性が比較的低く、繊維生地との接着性改善が希求されるエラストマー材料である。エラストマー基材には、熱可塑性エラストマー及び熱硬化性エラストマー以外に、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等の樹脂成分や、各種添加剤成分(例えば、オイル、酸化防止剤、着色剤等)が配合されていてもよい。
エラストマー基材の形状は特に限定されないが、繊維生地の柔軟性を保持しつつ十分な伸縮性を付与する観点から、フィルム状のシート材であることが好ましい。当該シート材は、通気性を確保すること等を目的として、厚み方向に貫通する多数の孔部を有するメッシュ状(網目状)であってもよい。エラストマー基材の厚さは、用途に応じて適宜設定され得るが、例えば0.1mm以上10mm以下であり、好ましくは0.1mm以上5mm以下である。
[粘着剤組成物]
本粘着剤組成物は、アクリル系粘着性ポリマー(A)を含有する。以下に、本粘着剤組成物に配合されるアクリル系粘着性ポリマー(A)、及び必要に応じて配合される成分について詳しく説明する。
<アクリル系粘着性ポリマー(A)>
アクリル系粘着性ポリマー(A)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を有するポリマー鎖(以下、「アクリル系ポリマー鎖」ともいう。)を主体とする重合体であり、粘着性を有する。なお、本明細書において、アクリル系粘着性ポリマー(A)がアクリル系ポリマー鎖を「主体」とするとは、アクリル系粘着性ポリマー(A)が有する全構成単量体単位に対し、アクリル系ポリマー鎖を構成する単量体単位の割合が、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは90モル%以上であることをいう。
アクリル系ポリマー鎖のガラス転移温度(以下、「ガラス転移温度TgN」ともいう。)は、−80℃以上10℃以下の範囲である。ガラス転移温度TgNが−80℃未満の場合は、得られる粘着剤層の凝集力が不十分となり、せん断接着性が低下する傾向がある。また、ガラス転移温度TgNが10℃を超える場合は、得られる粘着剤層の柔軟性が低下し、繊維生地とエラストマー基材とを接合した際に接合部分の柔軟性が十分でない場合がある。アクリル系粘着性ポリマー(A)の粘着性と柔軟性とをより良好にする観点から、ガラス転移温度TgNは、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは−5℃以下であり、更に好ましくは−10℃以下であり、また更に好ましくは−15℃以下であり、特に好ましくは−25℃以下である。また、ガラス転移温度TgNは、好ましくは−70℃以上であり、より好ましくは−60℃以上である。
なお、本明細書において、重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定した値である。測定方法の詳細は、後述する実施例に記載の操作に従うことができる。重合体のガラス転移温度は、構成単量体の種類や組成等を変えることにより任意に選択することができる。
アクリル系ポリマー鎖を構成する単量体としては、ガラス転移温度TgNが比較的低く良好な粘着性を有する重合体を得ることができる点で、(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の単量体(以下、「単量体R1」ともいう。)を好ましく使用することができる。
(メタ)アクリル酸アルキル化合物は、(メタ)アクリル酸の鎖状アルキルエステルであり、その具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル及び(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
アクリル系ポリマー鎖が(メタ)アクリル酸アルキル化合物に由来する構造単位を有する場合、(メタ)アクリル酸アルキル化合物に由来する構造単位の含有量は、アクリル系ポリマー鎖の全構成単量体単位に対して、1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることが更に好ましい。また、(メタ)アクリル酸アルキル化合物に由来する構造単位の含有量は、アクリル系ポリマー鎖の全構成単量体単位に対して、99モル%以下であることが好ましく、97モル%以下であることがより好ましく、95モル%以下であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシブチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシブチル等が挙げられる。
アクリル系ポリマー鎖が(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物に由来する構造単位を有する場合、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物に由来する構造単位の含有量は、アクリル系ポリマー鎖の全構成単量体単位に対して、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更に好ましい。また、アクリル系ポリマー鎖が(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物に由来する構造単位を有する場合、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物に由来する構造単位の含有量は、アクリル系ポリマー鎖の全構成単量体単位に対して、99モル%以下であることが好ましく、95モル%以下であることがより好ましく、90モル%以下であることが更に好ましい。
アクリル系ポリマー鎖を構成する単量体R1としては、アクリル系粘着性ポリマー(A)の柔軟性をより優れたものとする観点から、上記のなかでも、炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。また、粘着性能を加味した場合、単量体R1は、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び炭素数2〜3のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることがより好ましい。
アクリル系ポリマー鎖において、単量体R1に由来する構造単位の含有量は、粘着物性を十分に高くする観点から、アクリル系ポリマー鎖の全構成単量体単位に対して、20モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましく、80モル%以上であることがまた更に好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。また、単量体R1に由来する構造単位の含有量は、アクリル系ポリマー鎖の全構成単量体単位に対し、100モル%以下の範囲で適宜設定することできる。当該含有割合は、好ましくは99モル%以下であり、より好ましくは98モル%以下であり、更に好ましくは97モル%以下である。単量体R1に由来する構造単位の含有量の範囲は、既述の下限及び上限を適宜組み合わせることができるが、好ましくは20モル%以上100モル%以下であり、より好ましくは50モル%以上100モル%以下であり、更に好ましくは70モル%以上97モル%以下である。なお、単量体R1としては、1種又は2種以上を使用することができる。
アクリル系ポリマー鎖は、単量体R1に由来する構造単位のみを有していてもよいが、単量体R1とは異なる化合物であって、かつ単量体R1と共重合可能な化合物(以下、「他の単量体」ともいう。)に由来する構造単位を更に有していてもよい。アクリル系ポリマー鎖を構成する他の単量体は、(メタ)アクリル系単量体であってもよく、(メタ)アクリル系単量体以外の単量体であってもよい。他の単量体としては、1種又は2種以上を使用することができる。
アクリル系ポリマー鎖の製造に際し、他の単量体として架橋性官能基を有するビニル単量体を使用することにより、アクリル系ポリマー鎖を、架橋性構造単位を有する構造とすることができる。アクリル系ポリマー鎖が架橋性構造単位を有することにより、粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層の耐熱性及び耐久性をより向上できる点で好ましい。架橋性官能基を有するビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシ基含有ビニル化合物、エポキシ基含有ビニル化合物、反応性ケイ素基含有ビニル化合物等が挙げられる。
架橋性官能基を有するビニル単量体の具体例としては、不飽和カルボン酸として、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、桂皮酸、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のモノアルキルエステル)等を;不飽和酸無水物として、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等を;
ヒドロキシ基含有ビニル化合物として、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、アリルアルコール等の不飽和アルコール、並びに、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン及びp−ヒドロキシスチレン等の水酸基含有スチレン系化合物等を;
エポキシ基含有ビニル化合物として、(メタ)アクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物等を;
反応性ケイ素基含有ビニル化合物として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン及びビニルジメチルメトキシシラン等のビニルシラン化合物、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル及び(メタ)アクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル化合物、並びに、トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル化合物等を、それぞれ挙げることができる。また、架橋性官能基を有するビニル単量体として、オキサゾリン基含有ビニル化合物又はイソシアネート基含有ビニル化合物等を使用してもよい。なお、アクリル系ポリマー鎖の合成に際し、架橋性官能基を有するビニル単量体としては、1種又は2種以上を使用することができる。
アクリル系ポリマー鎖が架橋性構造単位を有する場合、架橋性構造単位の含有量は、アクリル系ポリマー鎖の全構成単量体単位に対して、好ましくは0.01モル%以上であり、より好ましくは0.1モル%以上であり、更に好ましくは0.5モル%以上である。アクリル系ポリマー鎖における架橋性構造単位の含有量を0.01モル%以上とすることにより、良好な架橋構造を形成させ、より高い耐熱性及び耐久性を示すアクリル系粘着性ポリマー(A)を得やすくなる。また、架橋性構造単位の含有量の上限は特に制限されるものではないが、得られる粘着剤層の柔軟性を十分に確保する観点から、アクリル系ポリマー鎖の全構成単量体単位に対して、好ましくは30モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下であり、更に好ましくは15モル%以下であり、特に好ましくは10モル%以下である。
アクリル系ポリマー鎖が有する架橋性構造単位は、上記の中でも、(メタ)アクリロイル基を有する化合物((メタ)アクリル系単量体)に由来する構造単位であることが好ましい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物、及びシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体に由来する構造単位であることがより好ましい。また、アクリル系ポリマー鎖の粘着力が高くなる傾向があることから、架橋性構造単位は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物としては、粘着性能の観点から、炭素数2〜8のヒドロキシアルキル基を有する化合物が好ましく、炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基を有する化合物が特に好ましい。
アクリル系ポリマー鎖が(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位を有する場合、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位の含有量は、良好な架橋構造を形成させる観点から、アクリル系ポリマー鎖の全構成単量体単位に対して、好ましくは0.01モル%以上であり、より好ましくは0.1モル%以上であり、更に好ましくは0.5モル%以上である。また、粘着剤層の柔軟性を十分に確保する観点から、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位の含有量は、アクリル系ポリマー鎖の全構成単量体単位に対して、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは12モル%以下であり、更に好ましくは7モル%以下である。
他の単量体としては、上記の他、例えば、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物、(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル化合物、(メタ)アクリル酸の芳香族エステル化合物、脂肪族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、アミド基含有ビニル化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、ニトリル基含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル化合物等が挙げられる。
他の単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物として、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等を;
(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル化合物として、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル等を;(メタ)アクリル酸の芳香族エステル化合物として、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等を;
脂肪族ビニル化合物として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のアルキルビニルエステル、並びに、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のアルキルビニルエーテルを;
芳香族ビニル化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−クロロスチレン及びジビニルベンゼン等のスチレン系化合物、並びに、安息香酸ビニル、ビニルナフタレン等を、それぞれ挙げることができる。
また、他の単量体の具体例としては、アミド基含有ビニル化合物として、(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイソブチルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシブチルアクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等を;
多官能(メタ)アクリレート化合物として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等を;
多官能アルケニル化合物として、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジアリルフタレート、メチレンビスアクリルアミド等を;
ニトリル基含有不飽和化合物として、(メタ)アクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル等を;
不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル化合物として、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のジアルキルエステル等を、それぞれ挙げることができる。
アクリル系ポリマー鎖において、他の単量体に由来する構造単位の含有量は、アクリル系ポリマー鎖の全構成単量体単位に対して、0モル%以上80モル%以下であることが好ましく、0モル%以上50モル%以下であることがより好ましく、0モル%以上30モル%以下であることが更に好ましく、0モル%以上10モル%以下であることが特に好ましい。他の単量体としては、1種又は2種以上を使用することができる。
アクリル系粘着性ポリマー(A)は、アクリル系ポリマー鎖によって主鎖の一部又は全部が構成されている限り特に限定されない。アクリル系粘着性ポリマー(A)の具体例としては、[1]アクリル系ポリマー鎖により主鎖全体が構成された重合体(以下、「重合体(A1)」ともいう。)、[2]重合体ブロックMと重合体ブロックNとを有するブロック共重合体であって、重合体ブロックNがアクリル系ポリマー鎖を有する重合体(以下、「ブロック共重合体(A2)」ともいう。)、が挙げられる。
[1]重合体(A1)について
重合体(A1)は、例えば溶液重合法等の公知のラジカル重合方法を採用して、上記単量体を重合することにより得ることができる。溶液重合法による場合、有機溶剤及び単量体を反応器に仕込み、重合開始剤を添加して、50〜300℃に加熱して共重合することにより、目的とする重合体(A1)を得ることができる。単量体を含む各原料の仕込み方法は、全ての原料を一括して仕込むバッチ式の初期一括仕込みでもよく、少なくとも一部の原料を連続的に反応器中に供給するセミ連続仕込みでもよく、全原料を連続供給し、同時に反応器から連続的に生成樹脂を抜き出す連続重合方式でもよい。また、粘着剤組成物の調製の際には、有機溶剤に溶解された重合体溶液として重合体(A1)を用いてもよいし、加熱減圧処理等により有機溶剤を留去して用いてもよい。
溶液重合法に使用する有機溶剤としては、有機炭化水素系化合物が適当である。有機炭化水素系化合物としては、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類を例示することができる。有機溶剤としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。有機溶剤の使用量は、重合に使用する単量体の合計量が、有機溶剤と単量体との合計量に対して、例えば1〜50質量%となる量である。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、特に限定されるものではない。また、重合開始剤としては、公知の酸化剤及び還元剤からなるレドックス型重合開始剤を用いてもよい。また更に、重合開始剤と共に、公知の連鎖移動剤を併用することもできる。
重合開始剤の具体例としては、アゾ系化合物として、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等を;
有機過酸化物として、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等を;
無機過酸化物として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等を;
レドックス型重合開始剤として、例えば、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたもの等を、それぞれ挙げることができる。重合体(A1)の製造に際し、重合開始剤の使用量は、重合に使用する全単量体100質量部に対して、例えば0.01〜20質量部である。
[2]ブロック共重合体(A2)について
ブロック共重合体(A2)が有する重合体ブロックMは、アクリル系ポリマー鎖(すなわち、重合体ブロックN)よりもガラス転移温度が高いセグメントであることが好ましく、具体的には、ガラス転移温度が50℃以上であることが好ましい。重合体ブロックMのガラス転移温度(以下、「ガラス転移温度TgM」ともいう。)が50℃以上であると、ブロック共重合体(A2)に良好な耐熱性を付与できる点で好ましい。また、ブロック共重合体(A2)がミクロ相分離構造を形成する等により疑似架橋を形成し得るため好ましい。粘着剤層を構成する重合体が疑似架橋構造を形成すると凝集力が向上する傾向があり、接着強度が高まる傾向がある。
なお、本明細書において、重合体ブロックM及び重合体ブロックNのガラス転移温度は、重合体ブロックMの単独重合体及び重合体ブロックNの単独重合体を製造し、各単独重合体につきDSC測定を行うことによって求めた値である。測定方法の詳細は、後述する実施例に記載の操作に従うことができる。
重合体ブロックMは、イミド基含有ビニル化合物、スチレン系化合物、(メタ)アクリル酸アルキル化合物、及びアミド基含有ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する構造単位(以下「構造単位U1」ともいう。)を有していることが好ましい。重合体ブロックMが構造単位U1を有することにより、耐熱性及び接着性により優れたブロック共重合体を得ることができる点で好適である。重合体ブロックMは、これらの中でも、イミド基含有ビニル化合物及びスチレン系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する構造単位を少なくとも有していることが特に好ましい。
イミド基含有ビニル化合物としては、マレイミド、N−置換マレイミド化合物等のマレイミド化合物;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド化合物;N−メチルシトラコンイミド、N−エチルシトラコンイミド、N−ブチルシトラコンイミド、N−オクチルシトラコンイミド、N−2−エチルヘキシルシトラコンイミド、N−シクロヘキシルシトラコンイミド、N−ラウリルシトラコンイミド等のシトラコンイミド化合物;N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)コハク酸イミド、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)マレイミド、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フタル酸イミド、N−(4−(メタ)アクリロイルオキシブチル)コハク酸イミド、N−(4−(メタ)アクリロイルオキシブチル)マレイミド、N−(4−(メタ)アクリロイルオキシブチル)フタル酸イミド等の(メタ)アクリルイミド化合物等が挙げられる。イミド基含有ビニル化合物としては、マレイミド化合物を好適に用いることができる。
マレイミド化合物には、マレイミド及びN−置換マレイミド化合物が含まれる。N−置換マレイミド化合物としては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−ペンチルマレイミ
ド、N−ヘキシルマレイミド、N−ヘプチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド化合物;N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキル置換マレイミド化合物;N−ベンジルマレイミド等のN−アラルキル置換マレイミド化合物;N−フェニルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−アセチルフェニル)マレイミド、N−(4−メトキシフェニル)マレイミド、N−(4−エトキシフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)マレイミド等のN−アリール置換マレイミド化合物等が挙げられる。重合体ブロックMの製造に使用するマレイミド化合物は、上記のうち、ブロック共重合体(A2)の耐熱性及び接着性をより優れたものとすることができる点で、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
Figure 2021066843
(式(1)中、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、フェニル基の任意の位置にヒドロキシ基、炭素数1〜2のアルコキシ基、アセチル基又はハロゲン原子が結合した置換フェニル基を表す。)
重合体ブロックMの製造に際し、イミド基含有ビニル化合物を使用する場合の使用量は、重合体ブロックMの全構成単量体単位に対して、100モル%以下の範囲で適宜設定することができる。重合体ブロックMの全構成単量体単位に対するイミド基含有ビニル化合物の含有量は、好ましくは5〜90モル%、より好ましくは10〜70モル%、更に好ましくは20〜65モル%である。イミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位を含むブロック共重合体は、耐熱性、接着性に優れるため好ましい。イミド基含有ビニル化合物の含有量が、重合体ブロックMの全構成単量体単位に対し70モル%以下であると、ブロック共重合体(A2)の接着性を十分に確保することができるため好ましい。
重合体ブロックMを構成する単量体として使用されるアミド基含有ビニル化合物、スチレン系化合物、及び(メタ)アクリル酸アルキル化合物の具体例としては、アクリル系ポリマー鎖を構成する単量体の説明で例示した化合物をそれぞれ挙げることができる。
スチレン系化合物は、イミド基含有ビニル化合物(好ましくはマレイミド化合物)の重合性を向上させるという性質を有する。したがって、重合体ブロックMの構成単量体単位としてイミド基含有ビニル化合物を用いた場合、スチレン系化合物を併用することによって、イミド基含有ビニル化合物の重合性を向上させることが好ましい。重合体ブロックMの製造に際し、イミド基含有ビニル化合物とスチレン系化合物とを併用する場合、重合体ブロックMにおいて、イミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位1モルに対する、スチレン系化合物に由来する構造単位の含有量は、好ましくは0.01〜100モルであり、より好ましくは0.1〜10モルであり、更に好ましくは0.2〜5モル、特に好ましくは0.5〜1.5モルである。
重合体ブロックMの製造に際し、スチレン系化合物を使用する場合の使用量は特に限定されない。重合体ブロックMの全構成単量体単位に対する、スチレン系化合物に由来する構造単位の含有量は、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上であり、更に好ましくは20モル%以上である。重合体ブロックMにおいて、スチレン系化合物に由来する構造単位の含有量の上限は特に限定されず、100モル%以下で適宜設定することができる。スチレン系化合物に由来する構造単位の含有量の上限は、重合体ブロックMの全構成単量体単位に対して、好ましくは95モル%以下であり、より好ましくは90モル%以下であり、更に好ましくは80モル%以下である。
重合体ブロックMにおける構造単位U1の割合は、重合体ブロックMが有する全構成単量体単位に対して、30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。なお、重合体ブロックMが有する構造単位U1としては、1種又は2種以上とすることができる。
重合体ブロックMは、ブロック共重合体(A2)の作用を損なわない範囲で、これらの単量体と共重合可能な単量体であって上記以外の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。当該単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及び架橋性官能基を有するビニル単量体等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述したように、重合体ブロックMのガラス転移温度TgMは、重合体ブロックNよりも高いことが好ましい。ブロック共重合体(A2)に良好な耐熱性を付与できる点で、ガラス転移温度TgMは、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは60℃以上であり、更に好ましくは80℃以上であり、特に好ましくは90℃以上である。また、ガラス転移温度TgMは、使用可能な構成単量体単位の自由度が高い点、及び接合時の加熱温度を低くできる点で、350℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、270℃以下であることが更に好ましく、260℃以下であることが特に好ましい。
重合体ブロックMの数平均分子量は、500〜40,000の範囲にあることが好ましい。数平均分子量が500以上であれば、ブロック共重合体の凝集力を十分に確保することができ、40,000以下であれば、被着体に対する剥離強度を十分に高くすることができる点で好ましい。重合体ブロックMの数平均分子量は、好ましくは1,000以上であり、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは6,000以上、特に好ましくは9,000以上である。また、重合体ブロックMの数平均分子量は、好ましくは38,000以下であり、より好ましくは37,000以下、更に好ましくは35,000以下、特に好ましくは33,000以下である。重合体ブロックMの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
なお、ブロック共重合体(A2)の1分子中に重合体ブロックMが複数個存在する場合、「重合体ブロックMの数平均分子量」とは、ブロック共重合体(A2)1分子が有する複数個の重合体ブロックM全体の数平均分子量を意味する。例えば、ブロック共重合体(A2)がM−N−M型のトリブロック体である場合、当該トリブロック体における重合体ブロックMの数平均分子量は、2個の重合体ブロックMの数平均分子量を足し合わせた値である。
重合体ブロックMは、重合体ブロックNと相分離する性質を有しているとよい。かかる性質を有することで、ブロック共重合体(A2)がミクロ相分離構造を形成しやすくなる点で好適である。本願出願時の技術常識に基づいて当業者であれば容易に、重合体ブロックNと相分離する重合体ブロックMを設計することができる。例えば、公知の溶解性パラメータであるSP値の算出方法(例えばFedors法)により計算した重合体ブロックMのSP値を重合体ブロックNのSP値と比較したときの差分ΔSP(絶対値)を0.01以上とする。差分ΔSPは、例えば0.05以上、また例えば0.1以上、また例えば0.2以上、また例えば0.5以上であってもよい。Fedors法による場合、SP値は、R.F.Fedorsにより著された「PolymerEngineering andScience」14(2),147(1974)に記載の計算方法によって算出することができる。また、SP値は、意図するブロック共重合体(A2)の構造を電子顕微鏡、原子間力顕微鏡又は小角X線散乱等で観察することにより、ブロック間の相分離性を容易に推測することもできる。
ブロック共重合体(A2)は、重合体ブロックMと重合体ブロックNとを有する限り、その構造は特に限定されない。ブロック共重合体(A2)の具体例としては、例えば重合体ブロックMと重合体ブロックNとからなる(MN)ジブロック体、重合体ブロックM/重合体ブロックN/重合体ブロックMからなる(MNM)トリブロック体、又は重合体ブロックN/重合体ブロックM/重合体ブロックNからなる(NMN)トリブロック体等が挙げられる。また、ブロック共重合体(A2)は、重合体ブロックM及び重合体ブロックN以外の重合体ブロックを更に有するものであってもよい。これらのうち、ブロック共重合体(A2)は、MNM型構造であることが好ましい。かかる構造であると、重合体ブロックM及び重合体ブロックNが疑似架橋構造を形成しやすく、粘着物性が向上する。
ブロック共重合体(A2)における重合体ブロックMと重合体ブロックNとの比率は、モル比(重合体ブロックM/重合体ブロックN)で1/99〜25/75であることが好ましい。モル比が上記範囲内であると、ハードセグメントを構成し架橋点となり得る重合体ブロックMと、ソフトセグメントとなる重合体ブロックNとを有する重合体により優れた接着性を示す粘着剤が得られやすく、また、接合箇所の柔軟性を十分に保持できるため好ましい。重合体ブロックMと重合体ブロックNとのモル比は、より好ましくは1/99〜23/77であり、更に好ましくは1/99〜20/80であり、また更に好ましくは1/99〜15/85であり、特に好ましくは1/99〜10/90である。
<ブロック共重合体(A2)の製造方法>
ブロック共重合体(A2)は、重合体ブロックM及び重合体ブロックNを有するブロック共重合体を得ることができる限り、製造方法に特段の制限を受けるものではなく、公知の製造方法により得ることができる。ブロック共重合体(A2)の製造方法としては、例えば、リビングラジカル重合及びリビングアニオン重合等の各種制御重合法を利用する方法や、官能基を有する重合体同士をカップリングする方法等を挙げることができる。これらの中でも、操作が簡便であり、広い範囲の単量体に対して適用することができる観点から、リビングラジカル重合法が好ましい。
リビングラジカル重合は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、乾式連続重合プロセス、連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のいずれのプロセスを採用してもよい。また、重合形式は、溶剤を用いないバルク重合、溶剤系の溶液重合、水系の乳化重合、ミニエマルション重合又は懸濁重合等の各種態様に適用することができる。
リビングラジカル重合法の種類についても特段の制限はなく、可逆的付加−開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、ニトロキシラジカル法(NMP法)、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)、有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)、有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)及びヨウ素移動重合法等の各種重合方法を採用することができる。これらのなかでも、重合の制御性と実施の簡便さの観点から、RAFT法、NMP法及びATRP法が好ましい。
RAFT法では、特定の重合制御剤(RAFT剤)及び一般的なフリーラジカル重合開始剤の存在下、可逆的な連鎖移動反応を介して制御された重合が進行する。RAFT剤としては、ジチオエステル化合物、ザンテート化合物、トリチオカーボネート化合物及びジチオカーバメート化合物等、公知の各種RAFT剤を使用することができる。RAFT剤は活性点を1箇所のみ有する一官能のものを用いてもよいし、二官能以上のものを用いてもよい。MNM型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい点では、二官能型のRAFT剤を用いることが好ましい。また、RAFT剤の使用量は、用いる単量体及びRAFT剤の種類等により適宜調整される。
RAFT法による重合の際に用いる重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができるが、安全上取り扱い易く、ラジカル重合時の副反応が起こりにくい点からアゾ化合物が好ましい。アゾ化合物の具体例としては、重合体(A1)の説明で例示したアゾ化合物等が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、1種類のみ使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ラジカル重合開始剤の使用割合は特に制限されないが、重合反応を安定的に行うとともに分子量分布がより小さい重合体を得る点から、RAFT剤1モルに対し、ラジカル重合開始剤の使用量を0.01モル以上0.5モル以下とすることが好ましく、0.01モル以上0.2モル以下とすることがより好ましい。
RAFT法による重合反応の際の反応温度は、好ましくは40℃以上100℃以下であり、より好ましくは45℃以上90℃以下であり、更に好ましくは50℃以上80℃以下である。反応温度が40℃以上であると、重合反応を円滑に進めることができる点で好ましい。また、反応温度が100℃以下であると、副反応を抑制できるとともに、使用できる開始剤や溶剤に関する制限が緩和される点で好ましい。
NMP法では、ニトロキシドを有する特定のアルコキシアミン化合物等をリビングラジカル重合開始剤として用い、リビングラジカル重合開始剤に由来するニトロキシドラジカルを介して重合を進行させる。ブロック共重合体(A2)の製造において、用いるニトロキシドラジカルの種類に特に制限はなく、商業的に入手可能のニトロキシド系重合開始剤を用いることができる。アクリレートを含む単量体を重合する際の重合制御性の観点から、ニトロキシド化合物として下記式(3)で表される化合物を用いることが好ましい。
Figure 2021066843
(式(3)中、Rは炭素数1〜2のアルキル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基であり、Rは−(CH)m−、mは0〜2の整数であり、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基である。式中の複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
上記式(3)で表されるニトロキシド化合物は、70〜80℃程度の加熱により一次解離し、ビニル系単量体と付加反応を起こす。この際、2以上のビニル基を有するビニル系単量体にニトロキシド化合物を付加することにより多官能性の重合前駆体を得ることが可能である。次いで、上記重合前駆体を加熱下で二次解離することにより、ビニル系単量体をリビング重合することができる。この場合、重合前駆体は分子内に2以上の活性点を有するため、より分子量分布の狭い重合体を得ることができる。MNM型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい観点から、分子内に活性点を2つ有する二官能型の重合前駆体を用いることが好ましい。ニトロキシド化合物の使用量は、用いる単量体及びニトロキシド化合物の種類等により適宜調整される。
ブロック共重合体(A2)をNMP法により製造する場合、上記式(3)で表されるニトロキシド化合物1モルに対し、下記式(4)で表されるニトロキシドラジカルを0.001〜0.2モルの範囲で添加して重合を行ってもよい。
Figure 2021066843
(式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基である。式中の複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、式中の複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。)
上記式(4)で表されるニトロキシドラジカルを0.001モル以上添加することにより、ニトロキシドラジカルの濃度が定常状態に達する時間を短縮することができる。これにより、重合をより高度に制御することが可能となり、より分子量分布の狭い重合体を得ることができる点で好ましい。一方、ニトロキシドラジカルの添加量が多すぎると重合が進行しない場合がある。ニトロキシド化合物1モルに対するニトロキシドラジカルのより好ましい添加量は、0.01〜0.5モルの範囲であり、更に好ましい添加量は0.05〜0.2モルの範囲である。
NMP法における反応温度は、好ましくは50℃以上140℃以下であり、より好ましくは60℃以上130℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上120℃以下であり、特に好ましくは80℃以上120℃以下である。反応温度が50℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。一方、反応温度が140℃以下であれば、ラジカル連鎖移動等の副反応が抑制される傾向がある。
ATRP法では、一般に有機ハロゲン化物を開始剤とし、触媒に遷移金属錯体を用いて重合反応が行われる。開始剤である有機ハロゲン化物は、一官能性のものを用いてもよいし、二官能以上のものを用いてもよい。MNM型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい点では、二官能性の化合物を用いることが好ましい。ハロゲンの種類としては臭化物及び塩化物が好ましい。ATRP法における反応温度は、好ましくは20℃以上200℃以下であり、より好ましくは50℃以上150℃以下である。反応温度を20℃以上とすると、重合反応を円滑に進めることができる点で好ましい。
リビングラジカル重合法により、重合体ブロックM/重合体ブロックN/重合体ブロックMからなるトリブロック共重合体(A2)を得る場合、例えば、各ブロックを順次重合することにより目的とするブロック共重合体(A2)を得てもよい。この場合、まず、第1重合工程として、重合体ブロックMの構成単量体を用いて重合体ブロックMを得る。次いで、第2重合工程として、重合体ブロックNの構成単量体を用いて重合体ブロックNを得る。さらに、第3重合工程として、重合体ブロックMの構成単量体を用いて重合することによりMNMトリブロック共重合体を得ることができる。重合開始剤としては、上記した一官能性の重合開始剤又は重合前駆体を用いることが好ましい。
以下に示す二段階の重合工程を含む方法により製造した場合は、より効率的に目的物が得られる点で好ましい。すなわち、第1重合工程として、重合体ブロックNの構成単量体を用いて重合体ブロックNを得た後、第2重合工程として、重合体ブロックMの構成単量体を重合して重合体ブロックMを得る。これにより、重合体ブロックM−重合体ブロックN−重合体ブロックMからなる、MNMトリブロック共重合体を得ることができる。この場合、重合開始剤は、二官能性の重合開始剤又は重合前駆体を用いることが好ましい。この方法によれば、各ブロックを順次重合して製造する場合に比較して工程を簡略化することができる。
ブロック共重合体(A2)の重合は、必要に応じて連鎖移動剤の存在下で実施してもよい。連鎖移動剤は公知のものを使用することができ、具体的には、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、1−ヘキサンチオール、2−ヘキサンチオール、2−ブチルブタン−1−チオール、1,1−ジメチル−1−ペンタンチオール、1−ドデカンチオール、tert−テトラデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール及び1−オクタデカンチオール等の炭素数2〜20のアルキル基を有するアルキルチオール化合物の他、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール等が挙げられる。連鎖移動剤としては、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
ブロック共重合体(A2)の製造に際しては、リビングラジカル重合において公知の重合溶媒を用いることができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン及びアニソール等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アルコール、水等が挙げられる。また、重合溶媒を使用せず、塊状重合等の態様で行ってもよい。
アクリル系粘着性ポリマー(A)の数平均分子量(Mn)は、良好な接着性を発揮する観点から、30,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましく、70,000以上が更に好ましい。また、アクリル系粘着性ポリマー(A)のMnは、製造しやすさや、後述するビニル重合体(B)との相溶性を良好にする観点から、1,000,000以下が好ましく、700,000以下がより好ましく、500,000以下が更に好ましく、300,000以下が特に好ましい。アクリル系粘着性ポリマー(A)のMnの範囲は、好ましくは30,000以上1,000,000以下であり、より好ましくは50,000以上1,000,000以下であり、更に好ましくは50,000以上500,000以下である。なお、アクリル系粘着性ポリマー(A)の分子量は、GPCにより測定したポリスチレン換算値である。
アクリル系粘着性ポリマー(A)につき、重量平均分子量(Mw)とMnとの比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、重合体(A1)及びブロック共重合体(A2)に応じて適宜設定することができる。重合体(A1)の分子量分布は、良好な接着強度が得られやすい点から、10以下が好ましく、9.5以下がより好ましく、9.0以下が更に好ましい。また、ブロック共重合体(A2)の分子量分布は、疑似架橋構造の形成により粘着物性(接着性、凝集性等)を確保する観点から、3.5以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましい。アクリル系粘着性ポリマー(A)のMw/Mnの下限は特に限定されず、1.0以上とすることができる。
<その他の成分>
アクリル系粘着性ポリマー(A)は、単独でも粘着剤材料として使用できるが、必要に応じて、アクリル系粘着性ポリマー(A)以外の重合体や添加剤等の成分(以下、「その他の成分」ともいう。)を粘着剤組成物に配合して使用してもよい。以下に、本粘着剤組成物に配合されてもよいその他の成分について説明する。
(ビニル重合体(B))
本粘着剤組成物は、アクリル系粘着性ポリマー(A)と共に、40℃以上200℃以下のガラス転移温度を有するビニル重合体(以下、「ビニル重合体(B)」ともいう。)を含有していてもよい。ビニル重合体(B)を更に含む粘着剤組成物によれば、当該粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層は高温でも高い粘着力を発現し得る点で好ましい。
ビニル重合体(B)のガラス転移温度(以下、「ガラス転移温度TgB」ともいう。)は、好ましくは45℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、更に好ましくは75℃以上であり、また更に好ましくは80℃以上であり、特に好ましくは90℃以上である。また、ガラス転移温度TgBは、好ましくは180℃以下であり、より好ましくは160℃以下であり、更に好ましくは150℃以下であり、また更に好ましくは140℃以下であり、特に好ましくは120℃以下である。ガラス転移温度TgBの範囲は、既述の上限、下限を適宜組み合わせることができるが、好ましくは40℃以上180℃以下であり、より好ましくは45℃以上160℃以下であり、更に好ましくは70℃以上150℃以下である。ガラス転移温度TgBが低すぎると、本粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成した場合に、粘着剤層の表層部分のガラス転移温度が十分に高くなりにくく、繊維生地及びエラストマー基材への接着強度が十分でなく耐久性に劣る場合がある。また、原料単量体の制約等から、ガラス転移温度TgBは、一般に200℃以下である。
ビニル重合体(B)を構成する単量体としては、ラジカル重合性を有する種々のビニル系不飽和化合物を使用することができる。当該ビニル系不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル化合物、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物、(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル化合物、(メタ)アクリル酸の芳香族エステル化合物、脂肪族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシ基含有ビニル化合物、アミノ基含有ビニル化合物、アミド基含有ビニル化合物、シアノ基含有不飽和化合物、ニトリル基含有不飽和化合物、イミド基含有ビニル化合物、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル化合物等が挙げられる。ビニル重合体(B)の製造に際し、これらの化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
これらビニル系不飽和化合物の中でも、アクリル系粘着性ポリマー(A)に対して適切な相溶性を得られることから、ビニル重合体(B)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を有することが好ましい。ビニル重合体(B)において、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位の含有量は、ビニル重合体(B)の全構成単量体単位に対して、10モル%以上100モル%以下の範囲が好ましい。(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位の含有量は、ビニル重合体(B)の全構成単量体単位に対して、より好ましくは30モル%以上であり、更に好ましくは50モル%以上であり、特に好ましくは55モル%以上である。また、当該含有量の上限は特に限定されず、100モル%以下で適宜選択され得る。
ビニル重合体(B)は、ガラス転移温度を比較的高く設定することができ、繊維生地とエラストマー基材とを接合部でより強固に接着できる点から、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物に由来する構造単位を有していることが好ましい。(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物の具体例については上記の説明が適用される。ビニル重合体(B)中の(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物に由来する構造単位は、ビニル重合体(B)の全構成単量体単位に対して、1モル%以上60モル%以下の範囲が好ましく、2モル%以上50モル%以下がより好ましく、5モル%以上40モル%以下が更に好ましい。
ビニル重合体(B)の数平均分子量(Mn)は、500以上10,000以下であることが好ましい。Mnが10,000を超えると、アクリル系粘着性ポリマー(A)との相溶性が低下する傾向がある。一方、Mnが500未満の重合体を製造するには、重合開始剤や連鎖移動剤を多量に用いる必要性が生じたり、生産性が低下したりすることがある。ビニル重合体(B)のMnは、より好ましくは500以上8,000以下であり、更に好ましくは600以上7,000以下であり、より更に好ましくは700以上6,000以下であり、特に好ましくは1,000以上6,000以下である。なお、ビニル重合体(B)の分子量は、GPCを用いて得られた標準ポリスチレン換算値である。
ビニル重合体(B)につき、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、良好な接着強度が得られやすい点で、3.0以下が好ましい。Mw/Mnは、より好ましくは2.5以下であり、更に好ましくは2.0以下であり、特に好ましくは1.8以下である。ビニル重合体(B)のMw/Mnの下限は特に限定されず、1.0以上とすることができる。
ビニル重合体(B)は、アクリル系粘着性ポリマー(A)と相分離する性質を有しているとよい。かかる性質を有することで、本粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、良好な透明性を示すとともに、粘着剤層中においてビニル重合体(B)が表層部分に偏析しやすくなる。粘着剤層の表層におけるビニル重合体(B)の濃度が他の部分よりも高くなる構成を取った場合、接着界面近傍の粘着剤層は、比較的高いガラス転移温度を有する。これにより、粘着剤層は、高い剥離強度と引張せん断接着強度を発揮することができる点で好ましい。
アクリル系粘着性ポリマー(A)と相分離するビニル重合体(B)は、例えば、SP値の算出方法(例えばFedors法)により計算したビニル重合体(B)のSP値をアクリル系粘着性ポリマー(A)のSP値と比較したときの差分ΔSP(絶対値)を0.01以上とすることにより設計することができる。差分ΔSPは、例えば0.05以上、また例えば0.1以上、また例えば0.2以上、また例えば0.5以上であってもよい。また、SP値は、アクリル系粘着性ポリマー(A)とビニル重合体(B)とのポリマーブレンドを調製して、これらを混合して得られる構造を電子顕微鏡、原子間力顕微鏡又は小角X線散乱等で観察することにより、ブロック間の相分離性を推測してもよい。
ビニル重合体(B)の製造方法は特段の制約はないが、例えば、溶液重合法等の公知のラジカル重合方法を採用して、上記の単量体を重合することにより得ることができる。ビニル重合体(B)の製造方法の詳細は、アクリル系粘着性ポリマー(A)の説明が適用される。
ビニル重合体(B)は、撹拌槽型反応器を使用し、180〜350℃の温度範囲において連続重合することにより得ることもできる。この重合方法では、重合開始剤や連鎖移動剤を実質的に使用することなく、比較的低分子量のビニル重合体(B)を得ることができるため、純度の高い重合体が得られ、後述する着色や臭気の点でも有利であり好ましい。重合温度が180℃未満の場合には、重合反応に重合開始剤や多量の連鎖移動剤が必要となり、得られたビニル重合体(B)は着色しやすく、また好ましくない臭気を発生する。一方、重合温度が350℃を超える場合には、重合反応中に分解反応が起こりやすく、得られるビニル重合体(B)が着色するため、これを含む粘着剤組成物から得られる粘着剤層の透明性の低下が懸念される。さらに、このような重合方法によれば、分子量の分布範囲が狭いビニル重合体(B)が得られる。なお、重合開始剤は随意に使用してもよいが、全単量体に対して約1質量%以下で使用するのが好ましい。
本粘着剤組成物におけるビニル重合体(B)の含有量は、固形分換算で、アクリル系粘着性ポリマー(A)100質量部に対し、0.5質量部以上60質量部以下であることが好ましい。ビニル重合体(B)の含有量の下限は、アクリル系粘着性ポリマー(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは1.5質量部以上であり、更に好ましくは2質量部以上である。また、ビニル重合体(B)の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー(A)100質量部に対して、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下であり、更に好ましくは30質量部以下である。ビニル重合体(B)の含有割合が0.5質量部以上であると、粘着剤層表層にビニル重合体(B)が十分偏析し、高い接着強度を付与することができる。一方、60質量部以下であると、ビニル重合体(B)が過度に偏析することを抑制し、十分な接着性を発現することができる。
(架橋剤)
アクリル系粘着性ポリマー(A)が架橋性官能基を有する場合、当該架橋性官能基と反応可能な架橋剤を粘着剤組成物に配合してもよい。また、必要に応じて更に加熱処理等を施すことにより、用途に応じた粘着剤を得ることができる。
架橋剤(硬化剤)としては、グリシジル基を2つ以上有するグリシジル化合物、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物、アジリジニル基を2つ以上有するアジリジン化合物、オキサゾリン基を有するオキサゾリン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物等が挙げられる。これらの中でも、高温条件下における粘着物性に優れる点でイソシアネート化合物が好ましい。
架橋剤の具体例としては、グリシジル化合物として、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジル化合物を;
イソシアネート化合物として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等の芳香族イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)等の脂肪族イソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等の脂環族イソシアネート化合物;ウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等の変性イソシアネート化合物等を;
アジリジン化合物として、1,6−ビス(1−アジリジニルカルボニルアミノ)ヘキサン、1,1’−(メチレン−ジ−p−フェニレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、エチレンビス−(2−アジリジニルプロピオネート)、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパン−トリス−(2−アジリジニルプロピオネート)等を、それぞれ挙げることができる。
粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、アクリル系粘着性ポリマー(A)の含有量に対して、通常、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.03〜5質量%、より好ましくは0.05〜2質量%である。
(粘着付与剤)
粘着剤組成物は、更に粘着付与剤を含有するものであってもよい。粘着付与剤としては、例えば、ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステル等のロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等を主体とするテルペン系樹脂;(水添)石油樹脂;クマロン−インデン系樹脂;水素化芳香族コポリマー;スチレン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂;(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。粘着付与剤は、1種単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。粘着付与剤の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー(A)の全量に対して、好ましくは0〜40質量%であり、より好ましくは0〜20質量%であり、更に好ましくは0〜10質量%である。
(可塑剤)
粘着剤組成物は、可塑剤が配合されていてもよい。可塑剤としては、ジn−ブチルフタレート、ジn−オクチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジn−デシルフタレート等のフタル酸エステル類;ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジn−オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;セバシン酸エステル類;アゼライン酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類;ポリプロピレングリコール等のグリコール類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ変性植物油類;トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類;アジピン酸と1,3−ブチレングリコールとのエステル化物等のエステルオリゴマー類;低分子量ポリブテン、低分子量ポリイソブチレン、低分子量ポリイソプレン等の低分子量重合体;プロセスオイル、ナフテン系オイル等のオイル類等が挙げられる。可塑剤の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー(A)の全量に対して、好ましくは0〜20質量%であり、より好ましくは0〜10質量%であり、更に好ましくは0〜5質量%である。
その他、粘着剤組成物に配合される添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、防かび剤、シランカップリング剤、充填剤、着色剤等が挙げられる。添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲において、各種化合物に応じて適宜設定することができる。
本粘着剤組成物は、アクリル系粘着性ポリマー(A)、及び必要に応じて配合されるその他の成分が溶剤に溶解又は分散された液状の組成物であってもよい。粘着剤組成物の調製に使用する溶剤としては、アクリル系粘着性ポリマー(A)を溶解可能な有機溶媒、又はアクリル系粘着性ポリマー(A)を分散可能な水媒体が挙げられる。当該有機溶媒の具体例としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。有機溶媒は、これらの1種でもよく、2種以上の混合溶媒であってもよい。
粘着剤組成物が液状である場合、粘着剤組成物における固形分濃度(すなわち、粘着剤組成物の全体質量に対する、粘着剤組成物中の溶剤以外の成分の質量の割合)は、特に限定されないが、好ましくは1〜70質量%である。固形分濃度が1質量%以上であると、十分な厚みを有する粘着剤層を形成することができる点で好ましい。また、固形分濃度が70質量%以下であると、良好な塗工性を確保でき、均一な厚みの粘着剤層を形成しやすい点で好適である。粘着剤組成物における固形分濃度は、より好ましくは5〜50質量%であり、更に好ましくは10〜45質量%である。
本粘着剤組成物をセパレーター等の支持体上に塗布して粘着剤層を形成することにより、例えば粘着シートや粘着テープ等の粘着性製品を得ることができる。この粘着性製品は、繊維生地とエラストマー基材とを貼り合わせるための粘着剤として用いた場合に、繊維生地とエラストマー基材とを高強度で接合することができる。また、繊維生地とエラストマー基材とを高強度で接合しながら、接合箇所において、繊維生地及びエラストマー基材が有する柔軟性及び伸縮性を保持することができる。また、エラストマー基材の耐熱温度よりも低温で繊維生地とエラストマー基材とを接合可能であり、接合時においてエラストマー基材の熱変形を抑制することができる。
支持体としては、各種樹脂材料からなる樹脂フィルムが用いられる。当該樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、アセテート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。粘着剤層の形成は、例えば、液状の粘着剤組成物を公知の塗工方法により支持体に塗布し、好ましくは加熱等の乾燥処理によって溶媒を除去することにより行う。なお、粘着剤層を形成するための加熱温度及び加熱時間は、溶媒を除去可能であればよく、粘着剤組成物の溶媒や固形分濃度等に応じて適宜設定され得る。
粘着性製品は、剥離強度の異なる2種のセパレーターにより粘着剤層が挟持された、いわゆる基材レスの態様であってもよいし、接合対象の一方を基材(繊維生地又はエラストマー基材)とするものあってもよい。また、粘着性製品の形状についても特段の制限はなく、使用状況に応じて適宜設定される。例えば粘着シートは、枚葉状であってもよく、ロール状であってもよく、短冊状に裁断されていてもよく、あるいは接合箇所に応じた任意の形状を有していてもよい。粘着性製品における粘着剤層の厚さは、接合対象や、接合箇所の面積及び形状等により適宜設定すればよい。粘着剤層の厚さは、通常、1〜200μmである。また、粘着性製品の粘着剤層を所望の厚さとするために、複数の粘着剤層を積層することによって粘着性製品の粘着剤層を形成してもよい。
本粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率(以下「貯蔵弾性率G’」ともいう。)が1.0MPa以下である。貯蔵弾性率G’が1.0MPa以下であることにより、当該粘着剤層により繊維生地とエラストマー基材とを貼り合わせた場合に、高い接着強度を有しつつ、接合箇所において被着体が有する柔軟性及び伸縮性を保持することができる。接合箇所の柔軟性及び伸縮性をより良好にできる点で、貯蔵弾性率G’は、0.70MPa以下であることが好ましく、0.55MPa以下であることがより好ましく、0.45MPa以下であることが更に好ましく、0.40MPa以下であることがまた更に好ましく、0.30MPa以下であることが特に好ましい。また、貯蔵弾性率G’の下限は特に制限されないが、例えば0.1MPa以上である。
本明細書において貯蔵弾性率G’は、測定温度23℃において、昇温速度2℃/分、ひずみ0.1%、測定周波数1Hzの条件で、厚さ0.8mmの粘着剤層のずり粘弾性を測定することにより得られた値である。なお、貯蔵弾性率G’は、アクリル系粘着性ポリマー(A)の組成及び架橋の程度や、可塑剤の添加量、ブロック共重合体(A2)における重合体ブロックMと重合体ブロックNとの比率等を調整することにより任意に調整することができる。アクリル系粘着性ポリマー(A)の組成による場合、アクリル系粘着性ポリマー(A)の構成単量体として炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を1種又は2種以上使用し、当該化合物の種類及び使用量を調整することによって貯蔵弾性率G’を調整することが好ましい。
《積層体》
本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を介して、被着体としての繊維生地とエラストマー基材とを貼り合わせることにより、繊維生地とエラストマー基材との間に粘着剤層が配置された積層体を得ることができる。当該積層体は、本粘着剤組成物を用いて繊維生地とエラストマー基材とが接着されていることから、繊維生地とエラストマー基材との接合部において繊維生地の柔軟性とエラストマー基材の伸縮性とがそのまま保持されており、しかも接合部の接着強度が高い。
本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層によって繊維生地とエラストマー基材とを接合するには、まず、粘着剤層を介して繊維生地とエラストマー基材とが接するように配置することにより繊維生地/粘着剤層/エラストマー基材の積層体とし、その積層体を加熱(好ましくは加熱圧着)することにより行うことができる。加熱圧着により繊維生地とエラストマー基材とを接合する場合、接合時の圧力は、所望の接合強度が得られるように適宜設定すればよい。また、加熱温度は、用いる被着体(繊維生地及びエラストマー基材)の耐熱温度以下とすることが好ましい。本粘着剤組成物によれば、熱圧着時に樹脂が繊維生地の網目に含浸しても接合箇所が柔軟であり、かつ繊維生地とエラストマー基材とを高強度で接着することができる点で好適である。
本発明の粘着剤組成物は、幅広い用途において粘着剤として適用することができる。具体的には、例えば衣料品(服飾雑貨を含む。)、スポーツ用品(例えば、スポーツウェアやスポーツ靴、スポーツ手袋、バットやラケットのグリップ等)、医療用品(例えば、サポーターやコルセット等)、自動車用内装品又は外装品、アウトドア用品、手芸用品、玩具類、生活雑貨、家庭用品、家具類等の種々の用途に粘着剤として利用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。実施例及び比較例で使用した重合体の分析方法及び製造方法は以下のとおりである。
<分子量測定>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(型式名「HLC−8320」、東ソー社製)を用いて、下記の条件よりポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得た。また、得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
○測定条件
カラム:東ソー社製TSKgel SuperMultiporeHZ−M×4本
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
流速:600μL/min
<重合体のM/N比率>
得られた重合体の組成比はH−NMR測定より同定・算出した。測定装置にはBRUKER社製AscendTM400 核磁気共鳴測定装置を用いた。25℃で、テトラメチルシランを標準物質、重クロロホルムを溶媒として測定を行った。
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計を用いて得られた熱流束曲線のベースラインと、変曲点での接線との交点から決定した。熱流束曲線は、試料約10mgを−50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで300℃まで昇温し、引き続き−50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで350℃まで昇温する条件で得た。
測定機器:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220
測定雰囲気:窒素雰囲気下
なお、重合体ブロックM及び重合体ブロックNのガラス転移温度は、重合体ブロックMの単独重合体及び重合体ブロックNの単独重合体をそれぞれ製造し、上記の測定方法に従い示差走査熱量(DSC)測定を行うことにより求めた。
1.アクリル系粘着性ポリマー(A)の合成
[合成例1]実施例1,2に用いた重合体A−1
内容積3リットルの4つ口フラスコに、アクリル酸2−メトキシエチル(以下、「MEA」ともいう)(421質量部)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」ともいう)(21質量部)、アクリル酸n−ブチル(以下、「BA」ともいう)(78質量部)、及び酢酸エチル(770質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製、V−65)(0.35質量部)を仕込み、重合を開始した。5時間後、固形分が30質量%になるように酢酸エチルを追加して、重合体A−1の酢酸エチル溶液を得た。得られた重合体A−1は、Mn92,0000、Mw/Mn8.72、Tg=−35℃であった。重合体A−1のモノマー組成(モル%)を、仕込み量とガスクロマトグラフ(GC)測定によるモノマー消費量とから計算した結果を表1に併せて示した(以下の合成例についても同じ)。
[合成例2]実施例3,4に用いた重合体A−2
内容積3リットルの4つ口フラスコに、HEA(24質量部)、BA(506質量部)、及び酢酸エチル(974質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製、V−65)(0.25質量部)を仕込み、重合を開始した。5時間後、固形分が30質量%になるように酢酸エチルを追加して、重合体A−2の酢酸エチル溶液を得た。得られた重合体A−2は、Mn87,0000、Mw/Mn5.38、Tg=−41℃であった。
[合成例3]実施例5,6に用いた重合体A−3
攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、RAFT剤としてジベンジルトリチオカーボネート(以下、「DBTTC」ともいう)(3.18質量部)、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(以下、「ABN−E」ともいう。)(0.51質量部)、単量体としてスチレン(以下、「St」ともいう)(75質量部)、及びN−フェニルマレイミド(以下、「PhMI」ともいう)(125質量部)、溶媒としてアセトニトリル(466質量部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却して反応を停止した。上記重合溶液をメタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体ブロックMを得た。得られた重合体ブロックMは、Mn10,900、Tg=206℃であった。
次に、攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、得られた重合体ブロックM(21.1質量部)、重合開始剤としてABN−E(0.08質量部)、単量体としてMEA(234質量部)、BA(51質量部)、及びHEA(15質量部)、溶媒としてアセトニトリル(107質量部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、アセトニトリルを追加することで固形分濃度が30質量%になるように調整し、重合体ブロックMと重合体ブロックN(アクリル系ポリマー鎖)とを有するM−N−Mトリブロック共重合体である重合体A−3を含む粘着剤溶液を得た。得られた重合体A−3は、Mn160,000、Mw/Mn1.77であった。重合体ブロックNのTgは−35℃であった。
[合成例4]実施例7に用いた重合体A−4
攪拌機、温度計を装着した1LフラスコにRAFT剤としてDBTTC(0.9質量部)、重合開始剤としてABN−E(0.12質量部)、単量体としてSt(56質量部)、及びPhMI(94質量部)、溶媒としてアセトニトリル(343質量部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却して反応を停止させた。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体ブロックMを得た。得られた重合体ブロックMは、Mn32,300、Tg=212℃であった。
次に、攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、得られた重合体ブロックM(47質量部)、重合開始剤としてABN−E(0.06質量部)、単量体としてMEA(175質量部)、BA(38質量部)、及びHEA(11質量部)、溶媒としてアセトニトリル(167質量部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、アセトニトリルを追加することで固形分濃度が30質量%になるように調整し、重合体ブロックMと重合体ブロックN(アクリル系ポリマー鎖)とを有するM−N−Mトリブロック共重合体である重合体A−4を含む粘着剤溶液を得た。得られた重合体A−4は、Mn140,000、Mw/Mn1.78であった。重合体ブロックNのTgは−35℃であった。
[合成例5]比較例2に用いた重合体A−5
攪拌機、温度計を装着した2Lフラスコに、RAFT剤としてDBTTC(1.9質量部)、重合開始剤としてABN−E(0.25質量部)、単量体としてSt(56質量部)、及びPhMI(93質量部)、溶媒としてアセトニトリル(337質量部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却して反応を停止させた。得られた重合体ブロックMは、Mn15,100、Tg=212℃であった。
次に、重合体ブロックMが入った2Lフラスコに、単量体としてMEA(303質量部)、BA(66質量部)、及びHEA(19質量部)、溶媒としてアセトニトリル(188質量部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、アセトニトリルを追加することで固形分濃度が30質量%になるように調整し、重合体ブロックMと重合体ブロックN(アクリル系ポリマー鎖)とを有するM−N−Mトリブロック共重合体である重合体A−5を含む粘着剤溶液を得た。得られた重合体A−5は、Mn48,000、Mw/Mn1.35であった。重合体ブロックNのTgは−32℃であった。
2.ビニル重合体(B)の合成
[合成例6]実施例2,6に用いた重合体B−1
内容積1リットルの4つ口フラスコに、溶媒として酢酸ブチル(210質量部)と、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬社製、V−601)(0.9質量部)とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に昇温した。別途、単量体としてメタクリル酸メチル(以下、「MMA」ともいう)(165質量部)、及びメタクリル酸イソボルニル(以下、「IBXMA」ともいう)(44質量部)、V−601(17質量部)、並びに酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をヘキサン(6000質量部)に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体(B)(これを「重合体B−1」とする。)を単離した。得られた重合体B−1のモノマー組成を、仕込み量とガスクロマトグラフ(GC)測定によるモノマー消費量とから計算した結果、MMA90モル%、IBXMA10モル%からなり、Mw7390、Mn4760、Mw/Mn1.55、Tg=100℃であった。
4.粘着剤組成物の調製及び評価
[実施例1]
上記合成例1で得られた重合体A−1の酢酸エチル溶液(固形分濃度30質量%)を厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製セパレーター上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが100μmとなるように塗布した。粘着剤組成物を100℃で6分間乾燥することにより酢酸エチルを除去した。乾燥後、上記セパレーターとは剥離力の異なる厚さ38μmのPET製セパレーターを貼り合わせて、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。得られた粘着フィルム試料を用いて、以下に示す方法により各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
<剥離強度の評価>
10mm幅にカットした粘着フィルム試料により、ポリエステル生地とエラストマーシート(SEPS、膜厚450μm)とを貼り合わせ、ポリエステル生地/粘着フィルム/エラストマーシートの順に積層されてなる積層体を得た。得られた積層体を熱プレス処理(条件:130℃、3kg/cm、10秒間)により圧着した。圧着後の積層体を試験片とし、引張り試験機INSTRON 5566A(インストロンジャパン社製)を用いて、測定温度23℃、試験片幅10mm、剥離速度300mm/分の条件で、JIS K6854−3に準じてT形の剥離強度を測定し、接着強度とした。
<室温(23℃)における貯蔵弾性率G’>
粘着フィルム試料の粘着剤層を積層して、粘着剤層が800μm厚の試験片を作製した。この試験片を直径1cmの円状に打ち抜き、粘弾性測定装置Physica MCR301(AntonPaar社製)を用いて、−50℃から150℃まで2℃/minで昇温しながら、ひずみ0.1%、周波数1Hzで動的粘弾性を測定し、23℃における貯蔵弾性率G’を読み取った。なお、測定には直径8mmのパラレルプレートを用いた。
<手触り試験:柔軟性及び伸縮性>
熱プレス処理により貼り合せた試験片の接着箇所の曲げ硬さ及び伸縮性を手触りで確認し、以下の基準により評価した。
○:柔らかく伸縮性あり。
△:すこし硬さを感じ、伸縮時にやや抵抗を感じる。
×:硬さを感じ、あまり伸縮性がない。
[実施例2]
上記合成例1で得られた重合体A−1を固形分換算で100質量部、及び上記合成例6で得られた重合体B−1を4質量部取り、酢酸エチルを加えて固形分濃度が30質量%の粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。得られた粘着フィルム試料を用いて、実施例1と同様に各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例3〜7及び比較例2]
アクリル系粘着性ポリマー(A)及びビニル重合体(B)の種類及び配合比率を表1に示すように変更して、固形分濃度30質量%の粘着剤組成物を得た。また、得られた粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例4では、ビニル重合体(B)として三井化学製芳香族系炭化水素樹脂「FTR−6100」(重合体名称を「B−2」とする)を使用した。
[比較例1]
市販のウレタン系ホットメルト接着剤を用い、接着剤層が50μmの両面セパレーター付き接着シート試料を得た。この両面セパレーター付き接着シート試料を用いて実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1と同じポリエステル生地とエラストマーシートとを、粘着剤を用いずに熱圧着により貼り合わせ、実施例1と同様に各種評価を行った。ポリエステル生地とエラストマーシートとの接合は、ポリエステル生地/エラストマーシートの積層体を熱プレス処理(条件:130℃、3kg/cm、10秒間)にて圧着することにより行った。結果を表1に示す。熱プレス処理の温度(130℃)は、エラストマーシートが熱変形しない温度である。
なお、表1中、アクリル系粘着性ポリマー(A)及びビニル重合体(B)の配合量の欄の数値は、固形分換算で、アクリル系粘着性ポリマー(A)100質量部に対しビニル重合体(B)を配合した量(質量部)を表す。
Figure 2021066843
表1に示すように、アクリル系粘着性ポリマー(A)を含有し、粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率G’が1.0MPa以下である粘着剤組成物を用いた実施例1〜7ではいずれも、剥離強度が0.5N/10mm以上であり、繊維生地とエラストマー基材とを高い接着力で貼り合わせることができた。また、実施例1〜7では、繊維生地とエラストマー基材との接合箇所が柔軟であり、かつ十分な伸縮性を有していた。特に、アクリル系粘着性ポリマー(A)として、ハードセグメント(重合体ブロックM)の占める割合が低いか、又はハードセグメントを有さない重合体を用いた実施例1〜6では、剥離強度が3.2N/10mm以上と高く、かつ接合箇所において優れた柔軟性及び伸縮性を有していた。また、ビニル重合体(B)を配合した実施例では、ビニル重合体(B)を配合しなかった実施例との対比(実施例2と実施例1との対比、実施例4と実施例3との対比、実施例6と実施例5との対比)で、剥離強度がより高く、優れた接着力を有していた。特に、M−N−Mトリブロック共重合体とビニル重合体(B)とを含有する実施例6の粘着剤組成物は、剥離強度が15.2N/10mmと高く、接合箇所の柔軟性及び伸縮性を維持しながら、特に優れた接着性を示した。
一方、ウレタン系ホットメルト接着剤により繊維生地とエラストマー基材とを貼り合わせた比較例1では、剥離強度は1.6N/10mmであったものの、接合箇所が硬く、伸縮性が十分でなかった。また、粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率G’が1.0MPaよりも大きい比較例2の粘着剤組成物は、接合箇所の柔軟性も伸縮性も十分でなく、剥離強度も低かった。比較例3では、エラストマーシートが熱変形しない温度でエラストマーシートを繊維生地に圧着したが、全く強度が出なかった。

Claims (8)

  1. アクリル系粘着性ポリマー(A)を含有し、繊維生地とエラストマー基材とを接合するための繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物であって、
    前記アクリル系粘着性ポリマー(A)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を有するアクリル系ポリマー鎖を主体とし、前記アクリル系ポリマー鎖のガラス転移温度が−80℃以上10℃以下であり、
    前記繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が1.0MPa以下である、繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
  2. 前記アクリル系ポリマー鎖は、(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の単量体に由来する構造単位を有する、請求項1に記載の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
  3. 前記アクリル系ポリマー鎖は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位を有する、請求項1又は2に記載の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
  4. 前記アクリル系粘着性ポリマー(A)の数平均分子量が、50,000以上1,000,000以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
  5. ガラス転移温度が40℃以上200℃以下であり、かつ、数平均分子量が500以上10,000以下であるビニル重合体(B)を更に含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
  6. 前記アクリル系粘着性ポリマー(A)は、ガラス転移温度が50℃以上である重合体ブロックMと、前記アクリル系ポリマー鎖を有する重合体ブロックNとを含むブロック共重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
  7. 前記アクリル系粘着性ポリマー(A)における前記重合体ブロックMと前記重合体ブロックNとのモル比(重合体ブロックM/重合体ブロックN)が、1/99〜20/80である、請求項6に記載の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の繊維/エラストマー接合用粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を介して、繊維生地とエラストマー基材とが接合された接合部を有する積層体。
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