JP7552012B2 - 衣料用粘着剤組成物及びその用途 - Google Patents

衣料用粘着剤組成物及びその用途 Download PDF

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Description

本発明は、衣料用粘着剤組成物及びその用途に関し、詳しくは、衣料用の繊維生地どうしを接合するために用いる溶剤型又は固体状の粘着剤組成物及びその用途に関する。
衣服の着心地や風合いを良好にするために、繊維生地どうしをミシン等による縫製ではなく接着剤によって貼り合わせる接着方法、いわゆる無縫製により衣服を製造することが行われている。この場合に使用される接着剤は、ウレタン系のホットメルト型接着剤が中心となっている。また、ホットメルト型接着剤を用いた生地の接着方法が種々提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
特許文献3には、アクリル系粘着性ポリマーと、ガラス転移温度が30℃以上200℃以下であり、かつ数平均分子量が500以上10,000以下であるビニル重合体とを含有し、粘着剤組成物全体のガラス転移温度が-80℃以上10℃以下である粘着剤組成物が提案されている。この特許文献3には、当該粘着剤組成物を用いることにより、生地どうしを高強度で接着し、かつ生地同士の接着箇所が柔軟であって風合いに優れたものとなることが開示されている。
特開2017-78232号公報 特開2016-74996号公報 特開2019-11382号公報
従来のホットメルト型接着剤を用いて無縫製の衣服を製造した場合、加熱溶融した樹脂が布の網目に浸透し、室温では樹脂が柔軟性を失って固体状態となる。このため、接着箇所が部分的に硬く、風合いや着心地が良好でないという不都合がある。
衣服の製造工程において、粘着テープや粘着シートにより繊維生地どうしを貼り合わせる際に粘着テープ等を一時的に被着体に接着させる仮止めを行うことがある。しかしながら、特許文献3の粘着剤組成物は、接着箇所の風合いや柔軟性は改善されているものの、常温での粘着力が十分に高くなく、一方の繊維生地に対して他方の繊維生地を仮止めする際には粘着剤層を加熱する必要がある。このため、衣服の製造時において作業性が低下することが懸念される。
さらに、粘着剤を衣料用に適用する場合、繊維生地どうしの接着強度が十分でないと、洗濯時の水洗いや脱水の際に引張応力が掛かることにより接着部分の強度が弱まり、貼り合わせ箇所で生地の剥がれが生じるおそれがある。このため、衣料用の粘着剤組成物には、洗濯により衣服に負荷がかかった後にも、生地の貼り合わせ箇所における剥離強度が高い(耐洗濯性が高い)ことが求められる。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、接着箇所の柔軟性及び風合いが良好であり、熱を付与しなくても繊維生地に仮接着可能であり、かつ耐洗濯性に優れた粘着剤を得るための粘着剤組成物を提供することを主たる目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討し、特定の粘着剤組成物を用いて繊維生地どうしを接合する技術によれば上記課題を解決できることを見出した。本発明は、こうした知見に基づいて完成したものである。本発明によれば以下の手段が提供される。
〔1〕重合体成分が有機溶剤に溶解された溶液型であるか又は固形状若しくは半固形状であり、衣料用の繊維生地を接合するための粘着剤組成物であって、数平均分子量が30,000以上である(メタ)アクリル系重合体(A)を含有し、かつ前記粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率が1.0MPa以下であり、数平均分子量が10,000以下であるビニル系重合体(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体(A)の100質量部に対して5質量部以下である、衣料用粘着剤組成物。
〔2〕前記(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも一種に由来する構造単位を有する、〔1〕の衣料用粘着剤組成物。
〔3〕前記(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキル化合物に由来する構造単位を、前記(メタ)アクリル系重合体が有する全構成単量体単位に対して50モル%以上有する、〔1〕又は〔2〕の衣料用粘着剤組成物。
〔4〕前記(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位を有する、〔1〕~〔3〕のいずれかの衣料用粘着剤組成物。
〔5〕重合体成分が有機溶剤に溶解された溶液型であるか又は固形状若しくは半固形状であり、衣料用の繊維生地を接合するための粘着剤組成物であって、ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、スチレン系重合体、オレフィン系重合体、シリコーン系重合体、ポリアミド系重合体、及びポリビニルエーテル系重合体よりなる群から選択される少なくとも一種であって、数平均分子量が30,000以上である重合体を含有し、かつ前記粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率が1.0MPa以下である、衣料用粘着剤組成物。
〔6〕支持体と、〔1〕~〔5〕のいずれかの衣料用粘着剤組成物を用いて前記支持体上に形成された粘着剤層と、を備える、粘着性製品。
〔7〕上記〔1〕~〔5〕のいずれかの衣料用粘着剤組成物を用いて繊維生地と繊維生地とが接合された衣料用繊維製品。
本発明の衣料用粘着剤組成物によれば、繊維生地どうしを接着した場合に、接着箇所の柔軟性及び風合いが良好な粘着剤を得ることができる。また、本発明の衣料用粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、熱を付与しなくても繊維生地に仮接着可能である。このため、衣料用繊維製品の製造時には、粘着剤層を介して一方の繊維生地を他方の繊維生地に対して仮止めすることが可能であり、製品製造時の作業性を向上させることができる。さらに、本発明の衣料用粘着剤組成物により形成された粘着剤層は剥離強度が高く、当該粘着剤層を介して繊維生地どうしが接合された衣料用繊維製品を洗濯した場合に、接着箇所において繊維生地が剥がれにくく、耐洗濯性に優れている。
以下、本開示について詳しく説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
《衣料用粘着剤組成物》
本発明の粘着剤組成物は、衣料用の繊維生地を接合するための衣料用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう)であり、重合体成分が有機溶剤に溶解された溶液型、又は室温で固形状若しくは半固形状の粘着剤組成物である。本粘着剤組成物は、ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、シリコーン系重合体、及びポリアミド系重合体よりなる群から選択される少なくとも一種であって、数平均分子量が30,000以上である重合体(以下、「重合体(A)」ともいう)を含有する。以下に、本粘着剤組成物に配合される重合体(A)、及び必要に応じて配合される成分について詳しく説明する。
<重合体(A)>
ビニル系重合体(以下、「ビニル系重合体(A)」ともいう)は、炭素-炭素二重結合を重合性基として有する単量体を用いて得られる重合体である。ビニル系重合体(A)を構成する単量体としては、ラジカル重合性を有する種々のビニル系不飽和化合物を使用することができる。当該ビニル系不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸の鎖状エステル化合物、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物、(メタ)アクリル酸の芳香族エステル化合物、脂肪族ビニル化合物、脂肪族環式ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシ基含有ビニル化合物、アミノ基含有ビニル化合物、アミド基含有ビニル化合物、シアノ基含有不飽和化合物、ニトリル基含有不飽和化合物、イミド基含有ビニル化合物、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル化合物等が挙げられる。ビニル系重合体(A)の製造に際し、単量体は1種のみ用いられてもよく、2種以上用いられてもよい。
ビニル系重合体(A)は、粘着性能の観点から、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、オレフィン系重合体、及びポリビニルエーテル系重合体よりなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。これらの具体例としては、(メタ)アクリル系重合体として、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等を;スチレン系重合体して、スチレン-イソプレン共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)等を;オレフィン系重合体として、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の炭素数2~8のオレフィン単位を有する単独重合体(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等)又は共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等)等を;ポリビニルエーテル系重合体として、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等を、それぞれ挙げることができる。
ポリエステル系重合体は、多価カルボン酸とポリオールとを含む単量体を共重合することにより得られる重合体である。多価カルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、三価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの具体例としては、脂肪族ジカルボン酸として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、イタコン酸及びこれらの誘導体等を;脂肪族環式ジカルボン酸として、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、マレイン酸及びこれらの誘導体等を;芳香族ジカルボン酸として、フタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらの誘導体等を;三価以上のカルボン酸として、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの誘導体等を、それぞれ挙げることができる。
また、ポリオールとしては、脂肪族ジオール、脂肪族環式ジオール、芳香族ジオール、三価以上のアルコール等が挙げられる。これらの具体例としては、脂肪族ジオールとして、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール等を;脂肪族環式ジオールとして、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等を;芳香族ジオールとして、ビスフェノールA、ビスフェノールS、p-ジヒドロキシベンゼン、p-キシレンジオール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等を;三価以上のアルコールとして、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチルプロパン等を、それぞれ挙げることができる。
ポリウレタン系重合体は、ポリオールと多価イソシアネートとを反応させて得られる重合体である。ポリウレタンを構成単量体であるポリオールとしては、ポリエステル系重合体の説明が適用される。多価イソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、脂肪族環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらの具体例としては、脂肪族ジイソシアネートとして、プロパン-1,3-ジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を;脂肪族環式ジイソシアネートとして、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等を;芳香族ジイソシアネートとして、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等を、それぞれ挙げることができる。
シリコーン系重合体は、例えばアルコキシシラン化合物等の有機ケイ素化合物の加水分解縮合物である。シリコーン系重合体の具体例としては、付加反応硬化型ポリシロキサン、過酸化物硬化型ポリシロキサン等が挙げられる。
ポリアミド系重合体は、多価カルボン酸とジアミンとを反応させて得られる重合体である。ポリアミド系重合体を構成する多価カルボン酸としては特に限定されず、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。また、ジアミンについても特に限定されず、脂肪族ジアミン、脂肪族環式ジアミン、芳香族ジアミン等の公知のジアミンを適宜用いることができる。
重合体(A)は、剥離強度が高く耐洗濯性により優れることから、上記のうち、ビニル系重合体(A)、ポリエステル系重合体、及びポリウレタン系重合体よりなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、ポリエステル系重合体、及びポリウレタン系重合体よりなる群から選択される少なくとも一種がより好ましい。これらの中でも、(メタ)アクリル系重合体及びスチレン系重合体よりなる群から選択される少なくとも一種がより好ましく、透明性、耐候性及び粘着性に優れ、かつ設計の自由度が高い点で、(メタ)アクリル系重合体(以下、「(メタ)アクリル系重合体(A)」ともいう)が特に好ましい。
・(メタ)アクリル系重合体(A)
(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を主体とする重合体であり、粘着性を有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリル系重合体(A)が(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を「主体」とするとは、(メタ)アクリル系重合体(A)が有する全構成単量体単位に対し、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位の割合が、50モル%よりも多く、好ましくは65モル%以上であり、より好ましくは75モル%以上であり、更に好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは90モル%以上である。
(メタ)アクリル系単量体としては、ガラス転移点が比較的低く良好な粘着性を有する重合体を得ることができる点で、(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも一種の単量体(以下、「単量体MA」ともいう)を好ましく使用することができる。
(メタ)アクリル酸アルキル化合物は、(メタ)アクリル酸の鎖状アルキルエステルであり、その具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル及び(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシブチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシブチル等が挙げられる。
単量体MAとしては、(メタ)アクリル系重合体(A)の粘着性及び柔軟性をより優れたものとすることができる点で、上記のうち、炭素数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び炭素数2~12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び炭素数2~3のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることがより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(A)において、単量体MAに由来する構造単位(以下、「構造単位UA」ともいう)の含有量は、粘着物性を十分に高くする観点から、(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単量体単位に対して、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。また、構造単位UAの含有量の上限については、(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単量体単位に対し、100モル%以下の範囲で適宜設定することできる。構造単位UAとは異なる単量体単位を(メタ)アクリル系重合体(A)に導入する場合、(メタ)アクリル系重合体(A)における構造単位UAの含有量は、好ましくは99モル%以下である。
(メタ)アクリル酸アルキル化合物に由来する構造単位の含有量は、熱圧着を行わなくても室温で生地どうしを仮接着可能にすることができる点で、(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単量体単位に対して、10モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることが更に好ましく、70モル%以上であることがより更に好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。また、(メタ)アクリル酸アルキル化合物に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単量体単位に対して、99モル%以下であることが好ましく、95モル%以下であることがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物に由来する構造単位の含有量は、十分な量の(メタ)アクリル酸アルキル化合物を導入することによって室温で生地どうしを仮接着可能にすることができる点で、(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単量体単位に対して、95モル%以下であることが好ましく、90モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることが更に好ましく、60モル%以下であることがより更に好ましく、45モル%以下であることが特に好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(A)は、上記の中でも、室温での貯蔵弾性率をより低くでき、熱圧着に依らずに繊維生地に対して仮接着可能な粘着剤を得ることができる点で、炭素数4~12のアクリル酸アルキル化合物に由来する構造単位を有することが特に好ましい。炭素数4~12のアクリル酸アルキル化合物に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単量体単位に対して、10モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることが更に好ましく、70モル%以上であることが特に好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル系単量体として単量体MAのみを用いて製造されてもよいが、単量体MAとは異なる(メタ)アクリル系単量体であって、かつ単量体MAと共重合可能な化合物(以下、「単量体MB」ともいう)を更に用いて製造されてもよい。
(メタ)アクリル系重合体(A)の製造に際し、単量体MBとして架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体を使用することにより、架橋性構造単位を有する構造の(メタ)アクリル系重合体(A)とすることができる。(メタ)アクリル系重合体(A)が架橋性構造単位を有することにより、粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層の耐熱性及び耐久性をより向上できる点で好ましい。
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体は、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物、及びシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体であることが好ましい。これらの中でも、(メタ)アクリル系重合体(A)の粘着力が高くなる傾向があることから、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物としては、粘着性能の観点から、炭素数2~8のヒドロキシアルキル基を有する化合物が好ましく、炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基を有する化合物が特に好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(A)が架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位(以下、「架橋性構造単位」ともいう)を有する場合、当該架橋性構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単量体単位に対して、好ましくは0.1モル%以上であり、より好ましくは0.5モル%以上であり、更に好ましくは1モル%以上である。また、架橋性構造単位の含有量の上限は特に制限されるものではないが、得られる粘着剤層の柔軟性を十分に確保する観点から、(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単量体単位に対して、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは15モル%以下であり、更に好ましくは10モル%以下である。
(メタ)アクリル系重合体(A)が(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位UB」ともいう)を有する場合、構造単位UBの含有量は、良好な架橋構造を形成させる観点から、(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単量体単位に対して、好ましくは0.1モル%以上であり、より好ましくは0.5モル%以上であり、更に好ましくは1モル%以上である。また、粘着剤層の柔軟性を十分に確保する観点から、構造単位UBの含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単量体単位に対して、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは15モル%以下であり、更に好ましくは10モル%以下であり、特に好ましくは7モル%以下である。
単量体MBとしては、上記のほか、例えば、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物、(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル化合物、(メタ)アクリル酸の芳香族エステル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。(メタ)アクリル系重合体(A)の製造に際し、単量体MBとしては1種又は2種以上を使用することができる。
(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル系単量体以外の単量体(他の単量体)を更に有していてもよい。他の単量体としては、脂肪族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、多官能アルケニル化合物、ニトリル基含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル化合物等が挙げられる。他の単量体に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単量体単位に対して、0モル%以上50モル%未満であることが好ましく、0モル%以上30モル%以下であることがより好ましく、0モル%以上10モル%以下であることが更に好ましい。他の単量体としては、1種又は2種以上を使用することができる。
(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移点は、(メタ)アクリル系重合体(A)が粘着性を示す限り特に限定されない。(メタ)アクリル系重合体(A)が優れた粘着性を示し、繊維生地に仮圧着可能な粘着剤層を形成しやすい点で、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を主体とするポリマー鎖のガラス転移点(以下、「ガラス転移点Tg1」ともいう)が、-80℃以上10℃以下の範囲であることが好ましい。ガラス転移点Tg1が-80℃以上であると、得られる粘着剤層の凝集力が十分に高く、せん断接着性を十分に確保できる傾向がある。また、ガラス転移点Tg1が10℃以下であると、粘着剤層の柔軟性を高くでき、繊維生地どうしを接合した際に接合部分の柔軟性を十分に確保することができる。(メタ)アクリル系重合体(A)の粘着性と柔軟性とをより良好にする観点から、ガラス転移点Tg1は、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは-5℃以下であり、更に好ましくは-10℃以下であり、より更に好ましくは-15℃以下であり、特に好ましくは-25℃以下である。また、ガラス転移点Tg1は、好ましくは-70℃以上であり、より好ましくは-60℃以上である。
なお、本明細書において、重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定した値である。測定方法の詳細は、後述する実施例に記載の操作に従うことができる。重合体のガラス転移温度は、構成単量体の種類や組成等を変えることにより任意に選択することができる。
(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を主体とするポリマー鎖によって主鎖の一部又は全部が構成されている限り、特に限定されない。(メタ)アクリル系重合体(A)の具体例としては、[1](メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を主体とするポリマー鎖のみによって主鎖が構成された重合体(以下、「重合体(A1)」ともいう)、[2]ハードセグメントである重合体ブロックAとソフトセグメントである重合体ブロックBとを有し、かつ重合体ブロックBが、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を主体とするポリマー鎖からなるブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体(A2)」ともいう)、が挙げられる。
[1]重合体(A1)について
重合体(A1)は、例えば溶液重合法等の公知のラジカル重合方法を採用して、上記単量体を重合することにより得ることができる。溶液重合法による場合、有機溶剤及び単量体を反応器に仕込み、重合開始剤を添加して、50~300℃に加熱して共重合することにより、目的とする重合体(A1)を得ることができる。単量体を含む各原料の仕込み方法は、全ての原料を一括して仕込むバッチ式の初期一括仕込みでもよく、少なくとも一部の原料を連続的に反応器中に供給するセミ連続仕込みでもよく、全原料を連続供給し、同時に反応器から連続的に生成樹脂を抜き出す連続重合方式でもよい。また、粘着剤組成物の調製の際には、有機溶剤に溶解された重合体溶液として重合体(A1)を用いてもよいし、加熱減圧処理等により有機溶剤を留去して用いてもよい。
溶液重合法に使用する有機溶剤としては、有機炭化水素系化合物が適当である。有機炭化水素系化合物としては、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類を例示することができる。有機溶剤としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。有機溶剤の使用量は、重合に使用する単量体の合計量が、有機溶剤と単量体との合計量に対して、例えば1~50質量%となる量である。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、特に限定されるものではない。また、重合開始剤としては、公知の酸化剤及び還元剤からなるレドックス型重合開始剤を用いてもよい。また更に、重合開始剤と共に、公知の連鎖移動剤を併用することもできる。
重合開始剤の具体例としては、アゾ系化合物として、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2-(tert-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等を;
有機過酸化物として、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等を;
無機過酸化物として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等を;
レドックス型重合開始剤として、例えば、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたもの等を、それぞれ挙げることができる。重合体(A1)の製造に際し、重合開始剤の使用量は、重合に使用する全単量体100質量部に対して、例えば0.01~20質量部である。
[2]ブロック共重合体(A2)について
ブロック共重合体(A2)が有する重合体ブロックAは、重合体ブロックBよりもガラス転移点が高いセグメントであることが好ましく、具体的には、ガラス転移点が50℃以上のセグメントであることが好ましい。重合体ブロックAのガラス転移点が50℃以上であると、ブロック共重合体(A2)に良好な耐熱性を付与できる点で好ましい。また、ブロック共重合体(A2)がミクロ相分離構造を形成する等により疑似架橋を形成し得るため好ましい。粘着剤層を構成する重合体が疑似架橋構造を形成すると凝集力が向上する傾向があり、接着強度が高まる傾向がある。
重合体ブロックAのガラス転移点は、ブロック共重合体(A2)に良好な耐熱性を付与できる点で、より好ましくは60℃以上であり、更に好ましくは80℃以上であり、特に好ましくは90℃以上である。また、重合体ブロックAのガラス転移点は、熱圧着時の加熱温度を低くできる点で、350℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、260℃以下であることが更に好ましい。なお、本明細書において、重合体ブロックA及び重合体ブロックBのガラス転移点は、各重合体ブロックの単独重合体を製造してDSC測定を行うことにより求めた値である。測定方法の詳細は、後述する実施例に記載の操作に従うことができる。
重合体ブロックAは、イミド基含有ビニル化合物、スチレン系化合物、(メタ)アクリル酸アルキル化合物、及びアミド基含有ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する構造単位(以下「構造単位U1」ともいう。)を有していることが好ましい。重合体ブロックAが構造単位U1を有することにより、耐熱性及び接着性により優れたブロック共重合体を得ることができる点で好適である。重合体ブロックAは、これらの中でも、イミド基含有ビニル化合物及びスチレン系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物に由来する構造単位を少なくとも有していることが特に好ましい。
イミド基含有ビニル化合物としては、マレイミド、N-置換マレイミド化合物等のマレイミド化合物;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド化合物;N-メチルシトラコンイミド、N-エチルシトラコンイミド、N-ブチルシトラコンイミド、N-オクチルシトラコンイミド、N-2-エチルヘキシルシトラコンイミド、N-シクロヘキシルシトラコンイミド、N-ラウリルシトラコンイミド等のシトラコンイミド化合物;N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)コハク酸イミド、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)マレイミド、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)フタル酸イミド、N-(4-(メタ)アクリロイルオキシブチル)コハク酸イミド、N-(4-(メタ)アクリロイルオキシブチル)マレイミド、N-(4-(メタ)アクリロイルオキシブチル)フタル酸イミド等の(メタ)アクリルイミド化合物等が挙げられる。イミド基含有ビニル化合物としては、マレイミド化合物を好適に用いることができる。
マレイミド化合物には、マレイミド及びN-置換マレイミド化合物が含まれる。N-置換マレイミド化合物としては、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-イソブチルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、N-ペンチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-ヘプチルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ステアリルマレイミド等のN-アルキル置換マレイミド化合物;N-シクロペンチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-シクロアルキル置換マレイミド化合物;N-ベンジルマレイミド等のN-アラルキル置換マレイミド化合物;N-フェニルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(4-アセチルフェニル)マレイミド、N-(4-メトキシフェニル)マレイミド、N-(4-エトキシフェニル)マレイミド、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ブロモフェニル)マレイミド等のN-アリール置換マレイミド化合物等が挙げられる。重合体ブロックAの製造に使用するマレイミド化合物は、上記のうち、ブロック共重合体(A2)の耐熱性及び接着性をより優れたものとすることができる点で、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
Figure 0007552012000001
(式(1)中、Rは水素原子、炭素数1~3のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、フェニル基の任意の位置にヒドロキシ基、炭素数1~2のアルコキシ基、アセチル基若しくはハロゲン原子が結合した置換フェニル基を表す。)
重合体ブロックAの製造に際し、イミド基含有ビニル化合物を使用する場合の使用量は、重合体ブロックAの全構成単量体単位に対して、100モル%以下の範囲で適宜設定することができる。重合体ブロックAの全構成単量体単位に対するイミド基含有ビニル化合物の含有量は、好ましくは5~90モル%、より好ましくは10~70モル%、更に好ましくは20~65モル%である。イミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位を含むブロック共重合体は、耐熱性、接着性に優れるため好ましい。イミド基含有ビニル化合物の含有量が、重合体ブロックAの全構成単量体単位に対し70モル%以下であると、ブロック共重合体(A2)の接着性を十分に確保することができるため好ましい。
スチレン系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-イソブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-クロロスチレン及びジビニルベンゼン等が挙げられる。
重合体ブロックAの製造に際し、スチレン系化合物を使用する場合の使用量は特に限定されない。重合体ブロックAの全構成単量体単位に対する、スチレン系化合物に由来する構造単位の含有量は、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上であり、更に好ましくは20モル%以上である。重合体ブロックAにおいて、スチレン系化合物に由来する構造単位の含有量の上限は特に限定されず、100モル%以下で適宜設定することができる。スチレン系化合物に由来する構造単位の含有量の上限は、重合体ブロックAの全構成単量体単位に対して、好ましくは95モル%以下であり、より好ましくは90モル%以下であり、更に好ましくは80モル%以下である。
スチレン系化合物は、イミド基含有ビニル化合物の重合性を向上させるという性質を有する場合がある。したがって、重合体ブロックAの構成単量体単位としてイミド基含有ビニル化合物(好ましくはマレイミド化合物)を用いた場合、スチレン系化合物を併用することによって、イミド基含有ビニル化合物の重合性を向上させることが好ましい。重合体ブロックAの製造に際し、イミド基含有ビニル化合物とスチレン系化合物とを併用する場合、重合体ブロックAにおいて、イミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位1モルに対する、スチレン系化合物に由来する構造単位の含有量は、好ましくは0.01~100モルであり、より好ましくは0.1~10モルであり、更に好ましくは0.2~5モル、特に好ましくは0.5~1.5モルである。
重合体ブロックAにおける構造単位U1の割合は、重合体ブロックAが有する全構成単量体単位に対して、30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。なお、重合体ブロックAが有する構造単位U1としては、1種又は2種以上とすることができる。
重合体ブロックAは、ブロック共重合体(A2)の作用を損なわない範囲で、構造単位U1を構成する単量体と共重合可能であって上記以外の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。当該単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合体ブロックAの数平均分子量は、500~30,000の範囲にあることが好ましい。数平均分子量が500以上であると、ブロック共重合体の凝集力を十分に確保することができ、30,000以下であれば、被着体に対する剥離強度を十分に高くすることができる点で好ましい。重合体ブロックAの数平均分子量は、より好ましくは1,000~25,000の範囲であり、更に好ましくは2,000~20,000の範囲である。重合体ブロックAの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。なお、ブロック共重合体(A2)の1分子中に重合体ブロックAが複数個存在する場合、「重合体ブロックAの数平均分子量」とは、共重合体1分子が有する複数個の重合体ブロックAの合計の数平均分子量を意味する。
重合体ブロックAは、重合体ブロックBと相分離する性質を有しているとよい。かかる性質を有することで、ブロック共重合体(A2)がミクロ相分離構造を形成しやすくなる点で好適である。本願出願時の技術常識に基づいて当業者であれば容易に、重合体ブロックBと相分離する重合体ブロックAを設計することができる。例えば、公知の溶解性パラメータであるSP値の算出方法(例えばFedors法)により計算した重合体ブロックAのSP値を重合体ブロックBのSP値と比較したときの差分ΔSP(絶対値)を0.01以上とする。差分ΔSPは、例えば0.1以上、また例えば0.2以上、また例えば0.5以上であってもよい。Fedors法による場合、SP値は、R.F.Fedorsにより著された「PolymerEngineering andScience」14(2),147(1974)に記載の計算方法によって算出することができる。
ブロック共重合体(A2)の構造の具体例としては、重合体ブロックAと重合体ブロックBとからなる(AB)ジブロック体、重合体ブロックA/重合体ブロックB/重合体ブロックAからなる(ABA)トリブロック体、又は重合体ブロックB/重合体ブロックA/重合体ブロックBからなる(BAB)トリブロック体等が挙げられる。また、ブロック共重合体(A2)は、重合体ブロックA及び重合体ブロックB以外の重合体ブロックを更に有するものであってもよい。これらのうち、ブロック共重合体(A2)は、ABA型構造であることが好ましい。かかる構造であると、重合体ブロックA及び重合体ブロックBが疑似架橋構造を形成しやすく、粘着物性が向上する。
ブロック共重合体(A2)における重合体ブロックAと重合体ブロックBとの比率は、モル比(重合体ブロックA/重合体ブロックB)で1/99~25/75であることが好ましい。モル比が上記範囲内であると、相分離構造を形成し疑似架橋点となり得る重合体ブロックAと、ソフトセグメントとなる重合体ブロックBとを有する重合体により優れた接着性を示す粘着剤が得られやすく、また、生地と生地との接合箇所の柔軟性を十分に保持できるため好ましい。重合体ブロックAと重合体ブロックBとのモル比は、より好ましくは1/99~20/80であり、更に好ましくは1/99~15/85であり、特に好ましくは1/99~10/90である。
<ブロック共重合体(A2)の製造方法>
ブロック共重合体(A2)は、重合体ブロックA及び重合体ブロックBを有するブロック共重合体を得ることができる限り、製造方法に特段の制限を受けるものではなく、公知の製造方法により得ることができる。ブロック共重合体(A2)の製造方法としては、例えば、リビングラジカル重合及びリビングアニオン重合等の各種制御重合法を利用する方法や、官能基を有する重合体同士をカップリングする方法等を挙げることができる。これらの中でも、操作が簡便であり、広い範囲の単量体に対して適用することができる観点から、リビングラジカル重合法が好ましい。
リビングラジカル重合は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、乾式連続重合プロセス、連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のいずれのプロセスを採用してもよい。また、重合形式は、溶剤を用いないバルク重合、溶剤系の溶液重合、水系の乳化重合、ミニエマルション重合又は懸濁重合等の各種態様に適用することができる。
リビングラジカル重合法の種類についても特段の制限はなく、可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、ニトロキシラジカル法(NMP法)、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)、有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)、有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)及びヨウ素移動重合法等の各種重合方法を採用することができる。これらのなかでも、重合の制御性と実施の簡便さの観点から、RAFT法、NMP法及びATRP法が好ましい。
RAFT法では、重合制御剤(RAFT剤)及び一般的なフリーラジカル重合開始剤の存在下、可逆的な連鎖移動反応を介して制御された重合が進行する。RAFT剤としては、ジチオエステル化合物、ザンテート化合物、トリチオカーボネート化合物及びジチオカーバメート化合物等、公知の各種RAFT剤を使用することができる。RAFT剤として二官能型の化合物を用いることにより、ブロック共重合体(A2)を効率的に得やすい点で好ましい。RAFT剤の使用量は、用いる単量体及びRAFT剤の種類等により適宜調整される。
RAFT法による重合の際に用いる重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。これらのうち、安全上取り扱い易く、重合時の副反応が起こりにくい点からアゾ化合物が好ましい。アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、1種類のみ使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ラジカル重合開始剤の使用割合は特に制限されないが、重合反応を安定的に行うとともに分子量分布がより小さい重合体を得る点から、RAFT剤1モルに対し、ラジカル重合開始剤の使用量を0.01モル以上0.5モル以下とすることが好ましい。重合の際の反応温度は、好ましくは40℃以上100℃以下であり、より好ましくは45℃以上90℃以下である。
NMP法では、ニトロキシドを有する特定のアルコキシアミン化合物等をリビングラジカル重合開始剤として用い、リビングラジカル重合開始剤に由来するニトロキシドラジカルを介して重合を進行させる。ブロック共重合体(A2)の製造において、ニトロキシドラジカルの種類に特に制限はなく、商業的に入手可能のニトロキシド系重合開始剤を用いることができる。ブロック共重合体(A2)を効率的に得やすい観点から、分子内に活性点を2つ有する二官能型の重合前駆体を用いることが好ましい。ニトロキシド化合物の使用量は、用いる単量体及びニトロキシド化合物の種類等により適宜調整される。また、ブロック共重合体(A2)をNMP法により製造する場合、ニトロキシド化合物1モルに対し、ニトロキシドラジカルを添加して重合を行ってもよい。NMP法における反応温度は、好ましくは50℃以上140℃以下であり、より好ましくは60℃以上130℃以下である。
ATRP法では、一般に有機ハロゲン化物を開始剤とし、触媒に遷移金属錯体を用いて重合反応が行われる。開始剤である有機ハロゲン化物は、一官能性のものを用いてもよいし、二官能以上のものを用いてもよい。ブロック共重合体(A2)を効率的に得やすい点では、二官能性の化合物を用いることが好ましい。ハロゲンの種類としては、臭化物及び塩化物が好ましい。ATRP法における反応温度は、好ましくは20℃以上200℃以下であり、より好ましくは50℃以上150℃以下である。反応温度を20℃以上とすると、重合反応を円滑に進めることができる点で好ましい。
重合反応に際しては、リビングラジカル重合において公知の重合溶媒を用いることができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン及びアニソール等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アルコール、水等が挙げられる。また、重合溶媒を使用せず、塊状重合等の態様で行ってもよい。また、ブロック共重合体(A2)の重合は、必要に応じて公知の連鎖移動剤の存在下で実施してもよい。
重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、良好な接着性を発揮する観点から、30,000以上であり、40,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましい。また、重合体(A)のMnは、製造しやすさの観点から、800,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、300,000以下が更に好ましい。重合体(A)のMnの範囲は、好ましくは30,000以上800,000以下であり、より好ましくは40,000以上800,000以下であり、更に好ましくは50,000以上500,000以下である。なお、重合体(A)の分子量は、GPCにより測定したポリスチレン換算値である。
重合体(A)につき、重量平均分子量(Mw)とMnとの比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、重合体(A)の主鎖に応じて適宜設定することができる。例えば、重合体(A1)の分子量分布は、良好な剥離強度が得られやすい点から、8.0以下が好ましく、7.5以下がより好ましく、7.0以下が更に好ましい。また、ブロック共重合体(A2)の分子量分布は、疑似架橋構造の形成により粘着物性(接着性、凝集性等)を確保する観点から、3.5以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましい。重合体(A)のMw/Mnの下限は特に限定されず、1.0以上とすることができる。
<その他の成分>
重合体(A)は、単独で粘着剤材料として使用できるが、必要に応じて、重合体(A)以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう)を粘着剤組成物に配合して使用してもよい。以下に、本粘着剤組成物に配合されてもよいその他の成分について説明する。
(粘着付与樹脂)
本粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を含有していてもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、数平均分子量が10,000以下のビニル系重合体(以下、「ビニル系重合体(B)」ともいう);ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステル等のロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等を主体とするテルペン系樹脂;クマロン-インデン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂等が挙げられる。
本粘着剤組成物において、粘着付与樹脂の含有量は、重合体(A)の全量100質量部に対して、60質量部以下とすることが好ましい。粘着付与樹脂の含有量を60質量部以下とすることにより、接着箇所の柔軟性及び風合いを十分に保つことができ、また室温における仮接着性を十分に発揮することが可能である。粘着付与樹脂の含有量の上限は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。本粘着剤組成物に粘着付与樹脂を配合する場合、粘着付与樹脂の含有量の下限については、例えば0.1質量部以上である。
本粘着剤組成物に含有される重合体(A)が(メタ)アクリル系重合体(A)である場合には、粘着付与樹脂の含有量を、重合体(A)の全量100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下とすることが好ましく、0質量部以上2質量部以下とすることがより好ましく、0質量部以上1質量部以下とすることが更に好ましく、0質量部以上0.5質量部以下とすることがより更に好ましい。粘着付与樹脂の含有量を上記範囲内とすると、繊維生地に対する粘着剤層の仮接着性をより優れたものとすることができる。こうした観点から、本粘着剤組成物に含有される重合体(A)が(メタ)アクリル系重合体(A)である場合、本粘着剤組成物は粘着付与樹脂を含有しないことが特に好ましい。
粘着剤組成物中に重合体(A)として(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、オレフィン系重合体、ポリビニルエーテル系重合体といったビニル系重合体(A)が配合される場合に粘着付与樹脂が使用される際には、相溶性の観点からビニル系重合体(B)が好ましく用いられる。ビニル系重合体(B)を構成する単量体としては、ビニル系重合体(A)の製造に使用されるビニル系不飽和化合物が挙げられる。ビニル系重合体(B)の製造に際し、単量体は1種単独で又は2種以上が組み合わされて用いられる。なお、ビニル系重合体(B)の製造方法は特段の制約はないが、例えば、溶液重合法等の公知のラジカル重合方法を採用することができる。ビニル系重合体(B)は、室温で良好な粘着性を示す点で、ガラス転移点が40℃以上であることが好ましく、40~150℃であることがより好ましく、40~120℃であることが更に好ましい。
ビニル系重合体(B)の数平均分子量(Mn)は、500以上10,000以下であることが好ましい。ビニル系重合体(B)のMnは、より好ましくは500以上8,000以下であり、更に好ましくは700以上6,000以下であり、特に好ましくは1,000以上5,000以下である。ビニル系重合体(B)につき、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、3.0以下が好ましく、2.5以下であることがより好ましい。なお、ビニル系重合体(B)の分子量は、GPCを用いて得られた標準ポリスチレン換算値である。
本粘着剤組成物に含有される重合体(A)が(メタ)アクリル系重合体(A)である場合、本粘着剤組成物におけるビニル系重合体(B)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)の全量100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下の範囲とすることが好ましい。ビニル系重合体(B)の含有量を上記範囲とすると、本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の表層部分の粘着力を十分に高くでき、熱を付与しなくても粘着剤層を繊維生地に接着(仮接着)させることができる点で好ましい。本粘着剤組成物に含有される重合体(A)が(メタ)アクリル系重合体(A)である場合、ビニル系重合体(B)の含有量は、仮接着性をより高くできる点で、(メタ)アクリル系重合体(A)の全量100質量部に対し、より好ましくは4質量部以下であり、更に好ましくは1質量部以下であり、より更に好ましくは0.5質量部以下であり、粘着付与樹脂を含有しないことが特に好ましい。
(架橋剤)
重合体(A)が架橋性官能基を有する場合、当該架橋性官能基と反応可能な架橋剤を粘着剤組成物に配合してもよい。また、必要に応じて更に加熱処理等を施すことにより、用途に応じた粘着剤を得ることができる。
架橋剤(硬化剤)としては、グリシジル基を2つ以上有するグリシジル化合物、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物、アジリジニル基を2つ以上有するアジリジン化合物、オキサゾリン基を有するオキサゾリン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物等が挙げられる。これらの中でも、高温条件下における粘着物性に優れる点でイソシアネート化合物が好ましい。
架橋剤の具体例としては、グリシジル化合物として、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジル化合物を;
イソシアネート化合物として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等の芳香族イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)等の脂肪族イソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等の脂環族イソシアネート化合物;ウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等の変性イソシアネート化合物等を;
アジリジン化合物として、1,6-ビス(1-アジリジニルカルボニルアミノ)ヘキサン、1,1’-(メチレン-ジ-p-フェニレン)ビス-3,3-アジリジル尿素、エチレンビス-(2-アジリジニルプロピオネート)、2,4,6-トリアジリジニル-1,3,5-トリアジン、トリメチロールプロパン-トリス-(2-アジリジニルプロピオネート)等を、それぞれ挙げることができる。
粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、重合体(A)の含有量に対して、通常、0.01~10質量%であり、好ましくは0.03~5質量%、より好ましくは0.05~2質量%である。
(可塑剤)
粘着剤組成物は、可塑剤が配合されていてもよい。可塑剤としては、ジn-ブチルフタレート、ジn-オクチルフタレート、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、ジn-デシルフタレート等のフタル酸エステル類;ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジn-オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;セバシン酸エステル類;アゼライン酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類;ポリプロピレングリコール等のグリコール類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ変性植物油類;トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類;アジピン酸と1,3-ブチレングリコールとのエステル化物等のエステルオリゴマー類;低分子量ポリブテン、低分子量ポリイソブチレン、低分子量ポリイソプレン等の低分子量重合体;プロセスオイル、ナフテン系オイル等のオイル類等が挙げられる。可塑剤の含有量は、重合体(A)の全量に対して、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは0~10質量%であり、更に好ましくは0~5質量%である。
その他、粘着剤組成物に配合される添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、防かび剤、シランカップリング剤、充填剤、着色剤等が挙げられる。添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲において、各種化合物に応じて適宜設定することができる。
本粘着剤組成物は、重合体(A)、及び必要に応じて配合されるその他の成分が溶剤に溶解された溶液型の重合体組成物であってもよいし、固形状又は半固形状(すなわち室温で非流動性)であるホットメルト型の重合体組成物であってもよい。重合体(A)が(メタ)アクリル系重合体(A)である場合、本粘着剤組成物は、好ましくは溶液型(溶剤型ともいう)である。
粘着剤組成物の調製に使用する溶剤としては、重合体(A)を溶解可能な有機溶媒であれば特に限定されない。当該有機溶媒の具体例としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。有機溶媒は、これらの1種でもよく、2種以上の混合溶媒であってもよい。
溶液型の粘着剤組成物における固形分濃度(すなわち、粘着剤組成物の全体質量に対する、粘着剤組成物中の溶剤以外の成分の質量の割合)は、特に限定されないが、好ましくは1~70質量%である。固形分濃度が1質量%以上であると、十分な厚みを有する粘着剤層を形成することができる点で好ましい。また、固形分濃度が70質量%以下であると、良好な塗工性を確保でき、均一な厚みの粘着剤層を形成しやすい点で好適である。粘着剤組成物における固形分濃度は、より好ましくは5~50質量%であり、更に好ましくは10~45質量%である。
本粘着剤組成物をセパレーター等の支持体上に塗布して粘着剤層を形成することにより、例えば粘着シートや粘着テープ等の粘着性製品を得ることができる。この粘着性製品は、繊維生地どうしを貼り合わせるための粘着剤として用いた場合に、繊維生地どうしを高強度で接合することができる。また、繊維生地どうしを高強度で接合しながら、接合箇所において、繊維生地が有する柔軟性及び伸縮性を保持することができる。
支持体としては、各種樹脂材料からなる樹脂フィルムが用いられる。当該樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、アセテート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。粘着剤層の形成は、溶液型の粘着剤組成物の場合、粘着剤組成物を公知の塗工方法により支持体に塗布し、好ましくは加熱等の乾燥処理によって溶媒を除去することにより行う。なお、粘着剤層を形成するための加熱温度及び加熱時間は、溶媒を除去可能であればよく、粘着剤組成物の溶媒や固形分濃度等に応じて適宜設定され得る。
粘着性製品は、剥離強度の異なる2種のセパレーターにより粘着剤層が挟持された、いわゆる基材レスの態様であってもよいし、接合対象の一方を基材(繊維生地)とするものあってもよい。また、粘着性製品の形状についても特段の制限はなく、使用状況に応じて適宜設定される。例えば粘着シートは、枚葉状であってもよく、ロール状であってもよく、短冊状に裁断されていてもよく、あるいは接合箇所に応じた任意の形状を有していてもよい。粘着性製品における粘着剤層の厚さは、接合対象や、接合箇所の面積及び形状等により適宜設定すればよい。粘着剤層の厚さは、通常、1~200μmである。また、粘着性製品の粘着剤層を所望の厚さとするために、複数の粘着剤層を積層することによって粘着性製品の粘着剤層を形成してもよい。
本粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率(以下「貯蔵弾性率G’」ともいう。)が1.0MPa以下である。貯蔵弾性率G’が1.0MPa以下であることにより、当該粘着剤層によって繊維生地どうしを貼り合わせた場合に、高い剥離強度を有しつつ、接合箇所において生地の柔軟性及び風合いを保持することができる。接合箇所の柔軟性及び風合いをより良好にできる点で、貯蔵弾性率G’は、0.70MPa以下であることが好ましく、0.55MPa以下であることがより好ましく、0.45MPa以下であることが更に好ましく、0.40MPa以下であることがまた更に好ましく、0.30MPa以下であることが特に好ましい。また、貯蔵弾性率G’の下限は特に制限されないが、例えば0.1MPa以上である。
本明細書において貯蔵弾性率G’は、測定温度23℃において、昇温速度2℃/分、ひずみ0.1%、測定周波数1Hzの条件で、厚さ0.8mmの粘着剤層のずり粘弾性を測定することにより得られた値である。なお、貯蔵弾性率G’は、重合体(A)の組成及び架橋の程度や、可塑剤の添加量、ブロック共重合体(A2)中のハードセグメントの比率を調整することにより任意に調整することができる。例えば(メタ)アクリル系重合体(A)の場合、(メタ)アクリル系重合体(A)の構成単量体として(メタ)アクリル酸アルキル化合物及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル化合物の少なくとも一方を1種又は2種以上使用し、当該化合物の種類及び使用量を調整することによって貯蔵弾性率G’を調整することが好ましい。また、ブロック共重合体(A2)中のハードセグメントの比率により貯蔵弾性率G’を調整する場合、ハードセグメントの比率が高くなると貯蔵弾性率G’は高くなる傾向がある。
《衣料用繊維製品》
本粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を介して、被着体としての繊維生地どうしを貼り合わせることにより、繊維生地と繊維生地との間に粘着剤層が配置された衣料用繊維製品を得ることができる。当該衣料用繊維製品は、本粘着剤組成物を用いて繊維生地どうしが接着されていることから、接合部において繊維生地の柔軟性及び風合いがそのまま保持されており、しかも接合部の剥離強度が高い。
本発明の衣料用繊維製品を得るには、まず、粘着剤層を介して繊維生地と繊維生地とが接するように貼り合わせ、必要に応じて仮圧着することにより繊維生地/粘着剤層/繊維生地の積層体とし、その積層体を加熱(好ましくは加熱圧着)することにより行うことができる。加熱圧着により繊維生地どうしを接合する場合、接合時の圧力は、所望の接合強度が得られるように適宜設定すればよい。また、加熱温度は、用いる被着体(繊維生地)の耐熱温度以下とすることが好ましい。本粘着剤組成物によれば、熱圧着時に樹脂が繊維生地の網目に含浸しても接合箇所が柔軟であり、かつ繊維生地どうしを高強度で接着することができる点で好適である。さらに、本粘着剤組成物を用いて得られた粘着シート等の粘着性製品は、粘着剤層の表層部分の粘着力が高いため、一方の繊維生地に対して他方の繊維生地を仮止めするために用いることが可能である。
本発明の粘着剤組成物及び粘着性製品は、繊維類に対しても生地の柔軟性及び風合いを保持することができ、しかも接着性が高い粘着剤層を形成可能であることから、服飾雑貨を含む衣料用の繊維生地(例えば、織物、編物、不織布、レース、皮革(天然皮革、合成皮革、人工皮革等)、毛皮等)に対して好適に使用することができる。
接合する繊維生地は特に制限されず、衣料用に使用される繊維生地、例えばポリエステル、ポリアミド及びアクリル繊維等の合成繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維;アセテート等の半合成繊維;木綿、麻、羊毛等の天然繊維等を適宜用いることができる。また、接合する繊維生地の表面には撥水処理等が施されていてもよい。本粘着剤組成物を用いて製造される衣料用繊維製品についても特に限定されず、例えば、日常着用している洋服や和服、民族服、下着(例えば、無縫製でのランジェリー製品やインナー製品等)、上着、トップス、ボトムス、アウトドア用品、作業着、制服、礼服、水着、スポーツウェア、靴下、帽子、靴等といった幅広い用途の衣料品の製造時や手芸用途等に、粘着剤として利用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」は、特に断らない場合、質量部及び質量%を意味する。実施例及び比較例で使用した重合体の分析方法及び製造方法は以下のとおりである。
<分子量測定>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(型式名「HLC-8320」、東ソー社製)を用いて、下記の条件よりポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得た。また、得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
○測定条件
カラム:東ソー社製TSKgel SuperMultiporeHZ-M×4本
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
流速:600μL/min
<重合体のモノマー組成比>
重合体のモノマー組成比(モル%)は、仕込み量とガスクロマトグラフ(GC)測定によるモノマー消費量とから計算した。GC測定は以下の条件にて実施した。
GC:Agilent Technolosies製(7820A GC System)、検出器:FID、カラム:100%ジメチルシロキサン(CP-Sil 5CB) カラム長さ30m、カラム内径0.32mm、算出方法:内部標準法
<ガラス転移点(Tg)の測定>
重合体のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計を用いて得られた熱流束曲線のベースラインと、変曲点での接線との交点から決定した。熱流束曲線は、試料約10mgを-50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで300℃まで昇温し、引き続き-50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで350℃まで昇温する条件で得た。
測定機器:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220
測定雰囲気:窒素雰囲気下
なお、重合体ブロックA及び重合体ブロックBのガラス転移点は、各重合体ブロックの単独重合体を製造し、得られた単独重合体につき、上記の測定方法に従い示差走査熱量(DSC)測定を行うことにより求めた。
1.(メタ)アクリル系重合体の合成
[合成例1]実施例1~3及び比較例1に用いた重合体A-1
内容積3リットルの4つ口フラスコに、アクリル酸2-メトキシエチル(以下、「MEA」ともいう)(421質量部)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」ともいう)(21質量部)、アクリル酸n-ブチル(以下、「BA」ともいう)(78質量部)、及び酢酸エチル(770質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製、V-65)(0.35質量部)を仕込み、重合を開始した。5時間後、固形分が30質量%になるように酢酸エチルを追加して、重合体A-1の酢酸エチル溶液である粘着剤溶液を得た。得られた重合体A-1は、Mn92,000、Mw/Mn8.72、Tg=-35℃であった。
[合成例2]実施例4に用いた重合体A-2
内容積3リットルの4つ口フラスコに、HEA(24質量部)、BA(506質量部)、及び酢酸エチル(974質量部)を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を75℃に上昇し、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製、V-65)(0.25質量部)を仕込み、重合を開始した。5時間後、固形分が30質量%になるように酢酸エチルを追加して、重合体A-2の酢酸エチル溶液である粘着剤溶液を得た。得られた重合体A-2は、Mn87,000、Mw/Mn5.38、Tg=-41℃であった。
[合成例3]実施例5に用いた重合体A-3
攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、RAFT剤としてジベンジルトリチオカーボネート(以下、「DBTTC」ともいう)(3.18質量部)、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(以下、「ABN-E」ともいう)(0.51質量部)、単量体としてスチレン(以下、「St」ともいう)(75質量部)、及びN-フェニルマレイミド(以下、「PhMI」ともいう)(125質量部)、溶媒としてアセトニトリル(466質量部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却して反応を停止した。上記重合溶液をメタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体ブロックAを得た。得られた重合体ブロックAは、Mn10,900、Tg=206℃であった。次に、攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、得られた重合体ブロックA(21.1質量部)、重合開始剤としてABN-E(0.08質量部)、単量体としてMEA(234質量部)、BA(51質量部)、及びHEA(15質量部)、溶媒としてアセトニトリル(107質量部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、アセトニトリルを追加することで固形分濃度が30質量%になるように調整し、重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するA-B-Aトリブロック共重合体である重合体A-3を含む粘着剤溶液を得た。得られた重合体A-3は、Mn160,000、Mw/Mn1.77であった。重合体ブロックBのガラス転移点は-35℃であった。
[合成例4]比較例2に用いた重合体A-5
攪拌機、温度計を装着した2Lフラスコに、RAFT剤としてDBTTC(1.9質量部)、重合開始剤としてABN-E(0.25質量部)、単量体としてSt(56質量部)、及びPhMI(94質量部)、溶媒としてアセトニトリル(337質量部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却して反応を停止した。得られた重合体ブロックAは、Mn15,100、Tg=212℃であった。次に、重合体ブロックAが入った2Lフラスコに、単量体としてMEA(303質量部)、BA(66質量部)、及びHEA(19質量部)、溶媒としてアセトニトリル(188質量部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し、アセトニトリルを追加することで固形分濃度が30質量%になるように調整し、重合体ブロックAと重合体ブロックBとを有するA-B-Aトリブロック共重合体である重合体A-5を含む粘着剤溶液を得た。得られた重合体A-5は、Mn48,000、Mw/Mn1.35であった。重合体ブロックBのガラス転移点は-35℃であった。
上記で製造した重合体A-1~A-3及びA-5につき、仕込み量とGC測定によるモノマー消費量とから計算した組成(モル%)、分子量特性及びガラス転移点を表1に示した。表1中、「-」は、該当する欄の化合物を使用しなかったことを意味する。
Figure 0007552012000002
2.粘着付与樹脂(タッキファイヤ)の合成
[合成例5]実施例2及び比較例1に用いた重合体B-1
内容積1リットルの4つ口フラスコに、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」ともいう)(19質量部)、St(11質量部)、酢酸ブチル(224質量部)、及びV?601(8.7質量部)からなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気し、混合液の内温を90℃に昇温した。別途、MMA(108質量部)、St(93質量部)、V?601(78質量部)、及び酢酸ブチル(90質量部)からなる混合液を滴下ロートからフラスコ内に5時間かけて滴下することにより重合を行った。滴下終了後、重合溶液をメタノール(4200質量部)及び蒸留水(1800質量部)からなる混合溶液に滴下することにより、重合溶液中のビニル重合体を単離して、重合体B-1を得た。得られた重合体B-1は、Mn1,910、Mw/Mn1.47、Tg=44℃であった。
3.粘着剤組成物の評価
[実施例1]
上記合成例1で得られた重合体A-1の酢酸エチル溶液(固形分濃度30質量%)を厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製セパレーター上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが100μmとなるように塗布した。粘着剤組成物を100℃で6分間乾燥することにより酢酸エチルを除去した。乾燥後、上記セパレーターとは剥離力の異なる厚さ38μmのPET製セパレーターを貼り合わせて、両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。得られた粘着フィルム試料を用いて、以下に示す方法により各種評価を行った。評価結果を表2に示した。
<仮圧着性>
1.0cm幅にカットした粘着フィルム試料の片側のセパレーターを剥がし、粘着剤層の表面をポリエステル生地と接触させた。ポリエステル生地と粘着剤層とが接触された状態でその表面に2kgローラーを3往復させた。その後、もう一方のセパレーターを剥がそうとした際に、粘着剤層がセパレーターと剥がれてポリエステル生地側に残れば「○」とし、部分的に生地に残れば「△」とし、粘着剤層が生地から完全に剥がれてセパレーター側に付いてきた場合を「×」として、仮圧着性を評価した。
<剥離強度測定>
1.0cm幅にカットした粘着フィルム試料により、ポリエステル生地どうしを貼り合わせ、ポリエステル生地/粘着フィルム/ポリエステル生地の構成の積層体を得た。得られた積層体を熱プレス処理(条件:130℃、3kg/cm、10秒間)により圧着した。圧着後の積層体を試験片とし、引張り試験機INSTRON 5566A(インストロンジャパン社製)を用いて、測定温度23℃、試験片幅10mm、剥離速度300mm/分の条件でT型剥離強度を測定し、接着強度とした。
<室温(23℃)における貯蔵弾性率G’>
粘着フィルム試料の粘着剤層を積層して、粘着剤層が800μm厚の試験片を作製した。この試験片を直径1cmの円状に打ち抜き、粘弾性測定装置Physica MCR301(AntonPaar社製)を用いて、-50℃から150℃まで2℃/minで昇温しながら、ひずみ0.1%、周波数1Hzで動的粘弾性を測定し、23℃における貯蔵弾性率G’を読み取った。なお、測定には直径8mmのパラレルプレートを用いた。
<接着部の風合い>
熱プレス処理により貼り合わせた試験片の接着箇所の曲げ硬さ及び伸縮性を手触りで確認し、以下の基準により評価した。
○:柔らかく伸縮性あり。
△:少し硬さを感じ、伸縮時にやや抵抗を感じる。
×:硬さを感じ、あまり伸縮性がない。
<耐洗濯性>
剥離強度測定と同様の手順で作製した試験片を卓上洗濯機(ALUMiSALUMiS製、AHB-02)で水洗いを6分間行い、次いで浸水状態で1時間静置し、その後脱水を1分間行った。脱水後、温度23℃、湿度50%の環境下で24時間静置して乾燥させた後に上記の剥離強度測定と同様にして剥離強度を測定した。洗濯処理後に測定した剥離強度が洗濯処理前の剥離強度に比べて50%以上の強度を保持していた場合は「○」、50%未満であった場合は「△」、洗濯処理工程で剥がれた場合は「×」として評価した。
[実施例2]
上記合成例1で得られた重合体A-1の酢酸エチル溶液(固形分濃度30質量%)100質量部に、架橋剤としてタケネートD-110N(固形分濃度75質量%、三井化学社製)を0.08質量部(固形分換算で、重合体A-1の100質量部に対し、架橋剤0.2質量部)混合し、粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。その後、40℃で5日間養生することで架橋反応を促進した。得られた粘着フィルム試料を用いて実施例1と同様に各種評価を行った。評価結果を表2に示した。
[実施例3]
上記合成例1で得られた重合体A-1の酢酸エチル溶液を、重合体A-1が固形分で100質量部となる量、及び上記合成例5で得られた重合体B-1を4質量部取り、酢酸エチルを追加して固形分濃度が30質量%の粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。また、得られた粘着フィルム試料を用いて実施例1と同様に各種評価を行った。評価結果を表2に示した。
[実施例4、5]
実施例4では合成例2で得られた重合体A-2の粘着剤溶液を用い、実施例5では合成例3で得られた重合体A-3の粘着剤溶液を用いた以外は実施例1と同様にして両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。また、得られた粘着フィルム試料を用いて実施例1と同様に各種評価を行った。評価結果を表2に示した。
[実施例6]
ポリエステル系接着剤(東亞合成社製 「PES310S30」、固形分濃度30質量%であるトルエンとメチルエチルケトン(MEK)との混合溶液)を用いて、実施例1と同様にして両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。また、得られた粘着フィルム試料を用いて実施例1と同様に各種評価を行った。評価結果を表2に示した。
[比較例1]
重合体B-1の配合量を10質量部に変更した点以外は実施例3と同様にして固形分濃度が30質量%の粘着剤組成物を調製した。また、調製した粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして両面セパレーター付き粘着フィルム試料を製造し、実施例1と同様に各種評価を行った。評価結果を表2に示した。
[比較例2]
合成例4で得られた重合体A-5の粘着剤溶液を用いて実施例1と同様にして両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。また、得られた粘着フィルム試料を用いて実施例1と同様に各種評価を行った。評価結果を表2に示した。
[比較例3]
エマルジョン粘着剤(東亞合成社製 アロンタック「HV-C5166」、固形分濃度55質量%)を用いて実施例1と同様にして両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。また、得られた粘着フィルム試料を用いて実施例1と同様に各種評価を行った。評価結果を表2に示した。
[比較例4]
市販のウレタン系ホットメルト接着剤のフィルム(膜厚50μm)を2枚重ねて熱プレス処理(条件:130℃、0.5kg/cm、10秒間)することで、粘着剤層が100μmの両面セパレーター付き粘着フィルム試料を得た。また、得られた粘着フィルム試料を用いて実施例1と同様に各種評価を行った。評価結果を表2に示した。
Figure 0007552012000003
表2の略称は以下のとおりである。
A-4:ポリエステル系接着剤「PES310S30」(東亞合成社製)
A-6:エマルジョン粘着剤「アロンタックHV-C5166」(東亞合成社製)
A-7:市販ウレタン系ホットメルト接着剤
D-110N:タケネートD-110N(三井化学社製)
なお、表2中、重合体及び架橋剤は、固形分換算での配合量(質量部)を表す。
表2に示すように、重合体A-1~A-4を含有し、粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率G’が1.0MPa以下である粘着剤組成物を用いた実施例1~6ではいずれも、剥離強度が6.0N/10mmよりも高く、接着箇所において剥がれが生じにくかった。また、実施例1~6は仮圧着性についても良好であった。これらの中でも、タッキファイヤを含まない粘着剤組成物(実施例1、2、4~6)は仮圧着性が「○」の評価であり、特に優れていた。
さらに、実施例1~6では、繊維生地どうしの接着箇所が柔軟であり、かつ伸縮性が良好であった。特に、重合体(A)としてトリブロック共重合体を用いた実施例5では、剥離強度が13.2N/10mmと非常に高く、接着部の柔軟性及び伸縮性を維持しながら優れた接着性を示した。また、(メタ)アクリル系重合体(A)を用いた実施例1~5は耐洗濯性にも優れていた。
一方、重合体B-1の含有量を10質量部とした比較例1は、剥離強度、接着部の風合い及び耐洗濯性は良好であったものの、粘着力が弱く、仮圧着性が劣っていた。また、粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率G’が1.0MPaよりも大きい比較例2の粘着剤組成物は、接着部の柔軟性及び伸縮性が十分でなく、剥離強度も低く、仮圧着性及び耐洗濯性も実施例1~6より劣っていた。エマルジョン接着剤を用いた比較例3では、接着部の風合いは良好であったものの、耐洗濯性に劣っていた。また、ウレタン系ホットメルト接着剤により繊維生地どうしを貼り合わせた比較例4では、剥離強度は13.0N/10mmと高い値を示したものの、接着箇所が硬く、伸縮性が十分でなかった。

Claims (3)

  1. 重合体成分が有機溶剤に溶解された溶液型であるか又は固形状若しくは半固形状であり、衣料用の繊維生地を接合するための粘着剤組成物であって、
    数平均分子量が30,000以上である(メタ)アクリル系重合体(A)を含有し、かつ前記粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率が1.0MPa以下であり、
    数平均分子量が10,000以下であるビニル系重合体(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体(A)の100質量部に対して5質量部以下であり、
    前記(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル化合物に由来する構造単位を、前記(メタ)アクリル系重合体(A)が有する全構成単量体単位に対して1モル%以上20モル%以下有し、かつ(メタ)アクリル酸アルキル化合物に由来する構造単位を、前記(メタ)アクリル系重合体(A)が有する全構成単量体単位に対して50モル%以上有する、衣料用粘着剤組成物。
  2. 支持体と、請求項1に記載の衣料用粘着剤組成物を用いて前記支持体上に形成された粘着剤層と、を備える、粘着性製品。
  3. 請求項1に記載の衣料用粘着剤組成物を用いて繊維生地と繊維生地とが接合された衣料用繊維製品。
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