JP5670099B2 - 皮革様シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は皮革様シートの製造方法に関し、更に詳しくは感熱凝固性ポリウレタン樹脂エマルションを用いて得られる皮革様シートの製造方法に関する。
従来、皮革様シートの製造方法において、繊維質基材にポリウレタン樹脂を結束剤として付与する方法が行われている。天然皮革のような優れた風合いを有する皮革様シートを得るには、ポリウレタン樹脂が繊維質基材に均一に付与されることが重要である。その方策として、ポリウレタン樹脂を可塑化させて造膜性を向上させることが有効であり、ホスフェート、アジペート、セバケート又はアルキルスルホン酸エステルを可塑剤として用いた人工皮革の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1で提案されている方法では、可塑剤の水への溶解性が低く、皮革様シートに付与されたウレタン樹脂中に可塑剤が残存するため、優れた強度を有する皮革様シートを得ることが難しいという問題がある。
特開2005−248415号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、強度に優れ、かつ天然皮革に近い風合いを有する皮革様シートを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、
ポリウレタン樹脂(A)、可塑剤(B)、感熱凝固剤(C)及び水性媒体(D)を含有してなる感熱凝固性を有するポリウレタン樹脂エマルション(Q)を繊維質基材に含浸又は塗布する工程、前記工程後に前記(Q)を感熱凝固させる工程及び水洗工程を含む皮革様シートの製造方法であって、以下の(1)〜()を全て満足する皮革様シートの製造方法である。
(1)前記(A)と前記(B)の重量比率[(A):(B)]が、99:1〜40:60である。
(2)前記(B)が、炭素数1〜10の1〜6価の脂肪族アルコール(B1)の炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物である。
)前記(B)が25℃において水100gに対して10g以上溶解する。
)前記(B)の溶解度パラメータ(SP値)が、9.2〜12.5である。
)前記(Q)を乾燥して得られる皮膜の100℃における貯蔵弾性率が0.01〜0.1MPaである。
)前記(Q)の構成成分の内、前記(B)のみを含有しないポリウレタン樹脂エマルション(Q’)を乾燥して得られる皮膜の100℃における貯蔵弾性率が0.5〜10MPaである。
)前記(Q)の感熱凝固温度が40〜90℃である。
)製造された皮革様シートにおける単位面積当たりの(B)の重量(Wb2)を、感熱凝固工程後の繊維質基材の単位面積当たりの(B)の重量(Wb1)で除して得られる(B)の残存率(X)が5重量%以下である。
本発明の皮革様シートの製造方法により、シートの強度と風合いを両立した皮革様シートが得られる。
本発明における感熱凝固性を有するポリウレタン樹脂エマルション(Q)は、ポリウレタン樹脂(A)、可塑剤(B)、感熱凝固剤(C)及び水性媒体(D)を含有してなる。
本発明におけるポリウレタン樹脂(A)は、必須原料としての高分子ポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)を反応させて得られる。(A)の機械的強度を調整することを目的として、原料として更に鎖伸長剤(a3)を使用することができる。また、(A)の分散向上を目的として、更に親水基含有活性水素化合物(a4)を原料として使用することもできる。
高分子ポリオール(a1)としては、例えば、ポリエーテルジオール(a11)、ポリエステルジオール(a12)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
ポリエーテルジオール(a11)としては、炭素数2〜20の活性水素原子含有2官能化合物に炭素数2〜12のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)が付加した構造の化合物及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
炭素数2〜20の活性水素原子含有2官能化合物としては、2価アルコール、2価フェノール類及びジカルボン酸等が挙げられる。
2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及びビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等が挙げられる。
2価フェノール類としては、カテコール及びヒドロキノンのほかビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等のビスフェノール類が挙げられる。
ジカルボン酸としてはコハク酸及びアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにフタル酸及びテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
上述した炭素数2〜20の活性水素原子含有化合物は2種以上使用することもできる。
炭素数2〜20の活性水素原子含有2官能化合物に付加させる炭素数2〜12のAOとしては、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−、2,3−又は1,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)、スチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド及びエピクロルヒドリン等が挙げられる。
AOは単独でも2種以上を併用してもよく、併用の場合はブロック付加でもランダム付加でも両者の混合系でもよい。
これらのAOの内で、柔軟性の観点から好ましいものはEO単独、PO単独、THF単独、PO及びEOの併用並びにPO及び/又はEOとTHFの併用であり、特に好ましいのはTHF単独である。
炭素数2〜20の活性水素原子含有2官能化合物へのAOの付加は、通常の方法で行うことができ、無触媒又は触媒(アルカリ触媒、アミン系触媒又は酸性触媒)の存在下に行なわれる。
(a11)の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられ、好ましいのはポリテトラメチレングリコールである。
ポリエステルジオール(a12)には、前記2価アルコール及び/又は数平均分子量(以下、Mnと略記)1,000以下のポリエーテルジオールと炭素数6〜20のジカルボン酸とを反応させて得られる縮合ポリエステルジオール(a121)、前記2価アルコール又はその混合物と炭素数6〜20の低級アルコール(メタノール等)の炭酸ジエステルとを反応させて得られるポリカーボネートジオール(a122)並びに炭素数4〜12のラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオール(a123)等が含まれる。
本発明において、(a1)、(a3)及びこれらの原料のMnは水酸基価より求められ、水酸基価は、JIS−K0070−1992(電位差滴定方法)に規定された方法で測定できる。
Mn1,000以下のポリエーテルジオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
また、炭素数2〜20のジカルボン酸としては脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバシン酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等)、これらのジカルボン酸のエステル形成性誘導体[酸無水物及び低級アルキル(炭素数1〜4)エステル等]及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
炭素数4〜12のラクトンとしてはγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
ポリエステル化反応は、通常の方法、例えば低分子ジオール及び/又はMn1,000以下のポリエーテルジオールを、ジカルボン酸若しくはそのエステル形成性誘導体とを反応(縮合)させる方法、あるいは開始剤(低分子ジオール及び/又はMn1,000以下のポリエーテルジオール)にラクトンを付加させる方法等により製造することができる。
(a121)としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチレンアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール及びポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール等のアジペート系縮合ポリエステルジオール;ポリエチレンアゼレートジオール及びポリブチレンアゼレートジオール等のアゼレート系縮合ポリエステルジオール;ポリエチレンセバケートジオール及びポリブチレンセバケートジオール等のセバケート系縮合ポリエステルジオール等が挙げられる。
(a122)としては、アルキレンの炭素数が4〜10の直鎖状アルキレンカーボネートジオール(例えば、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール及びポリノナメチレンポリカーボネートジオール)及びアルキレンの炭素数が4〜10の分岐状アルキレンカーボネートジオール(例えば、2−メチルブタンジオールのポリカーボネートジオール、2−エチルブタンジオールのポリカーボネートジオール、ネオペンチルグリコールのポリカーボネートジオール、2−メチルペンタンジオールのポリカーボネートジオール及び3−メチルペンタンジオールのポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
(a123)としてはポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
(a1)の内、皮革様シートの風合い及び耐加水分解性の観点から好ましいのはポリエーテルジオール(a11)、ポリカーボネートジオール(a122)及びこれらの混合物であり、更に好ましいのはポリカーボネートジオール(a122)、特に好ましいのはテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール及び3−メチルペンタンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールと低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1〜6のジアルキルカーボネート等)から、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートジオールであり、最も好ましいのはポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、3−メチルペンタンジオールのポリカーボネートジオールである。
(a1)のMnは、樹脂の柔軟性の観点から、通常400〜5,000、好ましくは500〜5,000、更に好ましくは1,000〜3,000である。
ポリイソシアネート(a2)としては、従来からポリウレタン製造に使用されているものが使用できる。(a2)としては炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート、これらのジイソシアネートの変性体(カーボジイミド変性体、ウレタン変性体及びウレトジオン変性体等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
炭素数6〜20の芳香族ジイソシアネートとしては、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン及び1,5−ナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。
炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート及び2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、m−又はp−キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
(a2)の内、樹脂の柔軟性の観点から好ましいのは炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネートであり、更に好ましいのはイソホロンジイソシアネート及び4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである。
鎖伸長剤(a3)としては炭素数2〜10のジアミン類(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン及びトルエンジアミン);ポリアミン類(例えばジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン);ヒドラジン若しくはその誘導体(2塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド等);炭素数2〜20の多価アルコール類[前述の2価アルコール、3価アルコール(例えばグリセリン及びトリメチロールプロパン)及びこれらの多価アルコールのEO及び/又はPO低モル付加物(Mn500未満)]等が挙げられる。
これらの内、樹脂強度の調整の観点から好ましいのは、炭素数2〜6の2価アルコールである。
親水基含有活性水素化合物(a4)としては、炭素数6〜24のカルボキシル基含有ポリオール(a41)[ジアルキロールアルカン酸、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸(以下、DMPAと略記)、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸及び2,2−ジメチロールオクタン酸}]、炭素数2〜10のスルホ基含有ポリオール(a42)[スルホン酸ジオール{3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸等}及びスルファミン酸ジオール{N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)スルファミン酸及びそのAO付加物(付加モル数2〜20)}]並びにこれらの塩等が挙げられる。
(a4)が塩である場合、その塩としては(a41)又は(a42)と中和剤(a5)との中和塩が挙げられる。
(a5)としては、例えばアンモニア、炭素数1〜12のアミン[1級モノアミン(例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン及びオクチルアミン)、2級モノアミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルミン)、3級モノアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン及びN,N−ジメチルエタノールアミン等の脂肪族3級モノアミン;N−メチルピペリジン及びN−メチルモルホリン等の複素環式3級モノアミン;ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン;及びN−ジメチルアニリン等の芳香環含有3級モノアミン等)]、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム等)並びにこれらの2種以上の併用が挙げられる。これらの内、乳化性の観点から好ましいのは炭素数1〜12のアミン、更に好ましいのは炭素数1〜12の脂肪族3級モノアミン、特に好ましいのはトリエチルアミンである。
中和剤(a5)の使用量は、特に皮革様シートの性能に影響を与えるものではないが、カルボキシル基及びスルホ基の合計に基づいて、通常20〜200モル%、好ましくは30〜150モル%である。(a5)の使用量が30モル%以上の場合にはポリウレタン樹脂エマルションの保存安定性が更に向上する。また、150モル%以下の場合にはポリウレタン樹脂エマルションの粘度を更に低下させることができ、ハンドリングの観点で好ましい。
中和剤(a5)の添加は(A)の分散前にウレタンプレポリマーに添加する方法と分散後に添加する方法のどちらでもかまわない。
本発明における(A)を得るためのウレタン化反応においては反応を促進させるため、必要により通常のウレタン化反応に使用される触媒を使用してもよい。触媒としては、例えばトリエチルアミン、N−エチルモルホリン及びトリエチレンジアミン等のアミン触媒、米国特許第4524104号明細書に記載のシクロアミジン類[1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(サンアプロ(株)製造、DBU)等]、ジブチル錫ジラウリレート、ジオクチル錫ジラウリレート及びオクチル酸錫等の錫系触媒並びにテトラブチルチタネート等のチタン系触媒が挙げられる。
ポリウレタン樹脂(A)のMnは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)により測定することができ、(A)が非架橋型(熱可塑性)の場合には通常10,000〜200,000又はそれ以上、好ましくは30,000〜150,000、特に50,000〜100,000である。(A)が架橋型の場合は上記範囲より高いMnのもの、GPCで測定できない高いMnのものでもよい。
本発明における可塑剤(B)は、皮革様シートの製造過程において、感熱凝固工程まではポリウレタン樹脂エマルション(Q)の造膜性の向上に寄与し、その後の工程(例えば、極細繊維化工程、染色工程及び水洗工程)における水溶性処理液で抽出されてその量が減少することによりポリウレタン樹脂の強度を発現させ、製造される皮革様シートの強度を向上させるものである。
従って、可塑剤(B)は、水溶性であること即ち25℃において水100g対して10g以上溶解することが必要であり、15g以上溶解することが好ましく、20g以上溶解することが更に好ましい。
水に対する溶解度は、25℃で可塑剤(B)を水100gで希釈し、目視で均一であることを確認することで測定することができる。
可塑剤(B)としては、25℃において水100gに対して10g以上の溶解度を有する以下の(B1)〜(B7)等を挙げることができる。
炭素数1〜10の1〜6価の脂肪族アルコール(B1):メタノール、エタノール及び1−プロパノール等の1価のアルコール並びにエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、テトラグリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、ネオペンチルアルコール、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、ショ糖及びブドウ糖等の2〜6価のアルコール。
炭素数2〜10の脂肪族モノ、ジ又はトリアミン(B2):エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン及びジエチレントリアミン等。
炭素数2〜10のエーテル(B3):テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル及びジエチレングリコールのモノエチルエーテル等。
炭素数2〜6のポリカルボン酸(塩)(B4):シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸及びこれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等。
炭素数8〜24のスルホン酸塩(B5);ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等。
炭素数4〜40の4級アンモニウム塩(B6):塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等];及びアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等。
前記(B1)、(B2)又は炭素数7〜20の1価アルコールの炭素数2〜4のAO付加物(Mn150〜1500)(B7):ラウリルアルコール、セチルアルコール、エチレングリコール又はプロピレングリコールのAO20モル付加物等。
尚、上記における炭素数7〜20の1価アルコールとしては、ヘプタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール及びオクタデシルアルコール等が挙げられる。
また、上記における炭素数2〜4のAOとしては、前記炭素数2〜12のAOの内の炭素数2〜4のものが挙げられる。これらのAOの内、水溶性を発揮しやすいという観点から、EO、PO及びこれらの併用が好ましい。併用の場合、POの量は30モル%以下が好ましく、結合様式はランダムでも、ブロックでも、これらの併用でもよい。
これらの内、水溶性及び可塑性の観点から好ましいのは(B7)、更に好ましいのは、(B1)の炭素数2〜4のAO付加物、特に好ましいのはMnが200〜1,000のポリエチレングリコール及びMnが200〜1,000のポリプロピレングリコールである。
可塑剤(B)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、可塑剤(B)として25℃において水100gに対して10g以上の溶解度を有する可塑剤を1種又は2種以上を使用するが、本発明の効果を損なわない範囲で25℃における水100gへの溶解度が10g未満の可塑剤を併用することもできる。この場合、可塑剤の混合物の水への溶解度が25℃において10g以上であることが必要である。
また、可塑剤(B)の溶解度パラメーター(以下、SP値と略記)は、(B)の水への溶解性、可塑化効果及びシート強度の観点から、9.2〜12.5であることが必要であり、好ましくは9.5〜12.0、特に好ましくは10.0〜11.5である。
尚、本発明におけるSP値は、Polymer Engineeringand Science,Feburuary,1974,Vol.14,No.2,147〜154に記載のFedors法によって計算される値であり、次式により算出される。
SP値=(△H/V)1/2
式中、ΔHはモル蒸発熱(cal)を、Vはモル体積(cm3)を表す。
尚、可塑剤を2種以上用いる場合、各可塑剤の使用量とSP値から重量平均により求めた値を本発明におけるSP値とする。
可塑剤(B)は、ポリウレタン樹脂(A)が親水基含有活性水素化合物(a4)を含まない場合に、水性媒体(D)に分散させるための乳化剤として使用することもできる。
本発明におけるポリウレタン樹脂エマルション(Q)が感熱凝固性を有するためには、感熱凝固剤(C)を含有する必要がある。
感熱凝固剤(C)としては、有機酸塩(C1)、無機塩(C2)、ポリビニルメチルエーテル、シリコーンポリエーテル共重合体及びポリシロキサン等が挙げられる。
有機酸塩(C1)としては炭素数1〜20のカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸及びリンゴ酸等)及びスルファミン酸と、前記中和剤(a5)との中和塩が挙げられる。
無機塩(C2)としては、アルカリ金属塩(C21)、アルカリ土類金属塩(C22)及びアンモニウム塩(C23)等が挙げられる。
アルカリ金属塩(C21)としては、アルカリ金属炭酸塩[炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸リチウム]、アルカリ金属硫酸塩[硫酸ナトリウム及び硫酸カリウム]、アルカリ金属硝酸塩[硝酸ナトリウム及び硝酸カリウム]、アルカリ金属リン酸塩[リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム及びリン酸カリウム]、アルカリ金属亜硫酸塩[亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸カリウム]及びアルカリ金属ハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素若しくはフッ素)化物[塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム及びフッ化カリウム]等が挙げられる。
アルカリ土類金属塩(C22)としては、アルカリ土類金属炭酸塩(炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等)、アルカリ土類金属硫酸塩(硫酸カルシウム及び硫酸マグネシウム等)、アルカリ土類金属硝酸塩(硝酸カルシウム及び硝酸マグネシウム等)、アルカリ土類金属リン酸塩(リン酸水素カルシウム及びリン酸水素マグネシウム等)、アルカリ土類金属亜硫酸塩(亜硫酸カルシウム及び亜硫酸マグネシウム等)及びアルカリ土類金属ハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素又はフッ素)化物[塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム及びフッ化マグネシウム]等が挙げられる。
アンモニウム塩(C23)としては、ハロゲン化アンモニウム(塩化アンモニウム及び臭化アンモニウム等)等が挙がられる。
これらの中で好ましいのは、感熱凝固性の観点から有機酸類(C1)及び無機塩(C2)であり、更に好ましいのはアルカリ土類金属塩(C22)である。
本発明における水性媒体(D)としては、例えば、水単独又は水と親水性溶剤の混合物が挙げられる。
親水性溶剤としてはアセトン、メチルエチケトン、テトラヒドロフラン及びN,N−ジメチルホルムアミド等)が挙げられる。
水に親水性溶剤を混合する場合の添加量(重量%)としては、特に制限はないが、水の重量を基準として1〜50重量%が好ましい。
本発明におけるポリウレタン樹脂エマルション(Q)を製造する方法としては、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
(1)予め(a1)、(a2)並びに必要により(a3)、(a4)及び(a5)を反応させて末端イソシアネート基のプレポリマー(以下、末端NCO基ウレタンプレポリマーと略記)を製造しておいて、可塑剤(B)、感熱凝固剤(C)及び必要により鎖伸長剤(a3)等の存在下に水性媒体(D)に分散させて、水及び必要により(a3)で伸長反応を行う方法。
(2)予め(a1)、(a2)並びに必要により(a3)、(a4)及び(a5)を反応させて末端水酸基のポリウレタン樹脂を製造しておいて、可塑剤(B)、感熱凝固剤(C)の存在下に水性媒体(D)に分散させる方法。
これらの内、皮革用シートの風合いの観点から好ましいのは(1)の方法である。
(1)の方法における末端NCO基ウレタンプレポリマーは、分子内に活性水素含有基を含まない親水性有機溶剤(アセトン、メチルエチケトン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等)の存在下又は非存在下で、高分子ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)並びに必要により鎖伸長剤(a3)及び親水基含有活性水素化合物(a4)からなる活性水素成分とを、(NCO/水酸基)当量比が、通常1.05〜2.0、好ましくは1.1〜1.6の範囲でワンショット法又は多段法により、通常20℃〜150℃、好ましくは60℃〜110℃で反応させた後、必要により(a5)で中和して得られる。
また、(2)の方法における末端水酸基のポリウレタン樹脂は、分子内に活性水素含有基を含まない有機溶剤の存在下又は不存在下に、(a1)、(a2)並びに必要により(a3)及び(a4)とからなる活性水素成分とを、(NCO/OH)当量比が、0.5〜0.99の範囲でワンショット法又は多段法で反応させ、末端水酸基のウレタンポリマーとし、これを必要により(a5)で中和して得られる。
可塑剤(B)はエマルション製造時に添加してもよいし、エマルションの製造後に添加・配合してもよいが、可塑化効果の観点からエマルション製造時に添加することが好ましい。
ポリウレタン樹脂エマルション(Q)の分散安定性を向上させるために、上記(1)及び(2)の分散工程において少量の界面活性剤を使用することができる。
界面活性剤としては、特に制限はないが、炭素数12〜20の脂肪族アルコールEO付加物、フェノールEO付加物、ノニルフェノールEO付加物及び炭素数8〜22のアミンEO付加物等の内、40℃〜180℃の曇点を有するノニオン性界面活性剤が挙げられる。
上記界面活性剤の添加量は、皮革様シートの耐水性の観点から、通常(A)に対して2重量%未満、好ましくは1重量%未満である。
本発明において、ポリウレタン樹脂エマルション(Q)を製造する際の装置は特に限定されず、例えば下記の方式の乳化機が挙げられる:(1)錨型撹拌方式、(2)回転子−固定子式方式[例えば「エバラマイルダー」(荏原製作所製)]、(3)ラインミル方式[例えばラインフローミキサー]、(4)静止管混合式[例えばスタティックミキサー]、(5)振動式[例えば「VIBRO MIXER」(冷化工業社製)]、(6)超音波衝撃式[例えば超音波ホモジナイザー]、(7)高圧衝撃式[例えばガウリンホモジナイザー(ガウリン社)]、(8)膜乳化式[例えば膜乳化モジュール]及び(9)遠心薄膜接触式[例えばフィルミックス]。これらの内、せん断力の観点から好ましいのは、(1)、(2)及び(9)である。
ポリウレタン樹脂エマルション(Q)におけるポリウレタン樹脂(A)の含有量は、製造コストの観点から、(Q)の重量を基準として、通常3〜40重量%、好ましくは3〜20重量%である。
また、(A)と(B)の重量比率は、通常99:1〜40:60、好ましくは95:5〜80:20、更に好ましくは90:10〜85:15である。
ポリウレタン樹脂エマルション(Q)における感熱凝固剤(C)の含有量は、(Q)の凝固性の観点から、(Q)の重量を基準として、通常1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%である。
ポリウレタン樹脂エマルション(Q)における(D)の含有量は、(Q)の含浸効率の観点から、(Q)の重量を基準として、通常50〜90重量%、好ましくは70〜85重量%である。
本発明における(Q)には必要により酸化チタン等の着色剤、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系及びベンゾトリアゾール系等)や酸化防止剤[4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−1−ブチルフェノール)等のヒンダードフェノール;トリフェニルホスファイト、トリクロルエチルホスファイト等の有機ホスファイト等]等の各種安定剤、防腐剤、架橋剤(ポリエポキシ化合物及びポリイソシアネート化合物等)、無機充填剤(炭酸カルシウム等)等を添加することができる。これら各添加剤の合計量は(Q)の重量に対して5重量部以下が好ましい。更に好ましくは0.1重量部以上3重量部以下である。
本発明において、感熱凝固工程でウレタン樹脂エマルション(Q)の造膜性及びシート強度を良好なものとするためには、(Q)を乾燥して得られる皮膜の100℃における貯蔵弾性率(MPa)が0.01〜0.1であることが必要であり、好ましくは0.02〜0.09、特に好ましくは0.03〜0.08である。
本発明における貯蔵弾性率は、乾燥後の膜厚が200μmになるように(Q)をポリプロピレン製トレーに入れて25℃で24時間乾燥後、更に120℃で2時間乾燥して得られるフィルムについて、貯蔵弾性率測定装置[Rheogel E4000{UBM(株)製}]を使用して周波数11Hzで100℃の貯蔵弾性率を測定した値である。
また、本発明において、前記(Q)の構成成分の内、前記(B)のみを含有しないポリウレタン樹脂エマルション(Q’)を乾燥して得られる皮膜の100℃における貯蔵弾性率(MPa)は、シート強度の観点から0.5〜10である必要があり、好ましくは0.55〜8、特に好ましくは0.6〜5である。貯蔵弾性率が0.5以下であると、得られる皮革用シートの強度が低下するため好ましくない。また、貯蔵弾性率が10以上であると均一なシートが得られず、風合いが低下するため好ましくない。
(Q’)の貯蔵弾性率の測定条件については、上記の記載と同様である。
本発明における(Q)の感熱凝固温度は、通常40〜90℃であり、好ましくは50〜70℃である。40℃未満であると(Q)の保存安定性が悪くなり、90℃を超えると凝固が遅く、ポリウレタン樹脂のマイグレーションが起こるため、皮革用シートの風合いが低下する。
(Q)の感熱凝固温度は、(Q)を加温していき、凝固流動しなくなる温度を読みとることで測定できる。
(Q)の体積平均粒子径は、分散安定性の観点から、0.01μm〜1μmが好ましく、更に好ましくは0.02μm〜0.5μmである。平均粒子径は、大塚電子株式会社製、ELS−800型電気泳動光散乱光度計を用いて測定できる。
本発明の皮革様シートの製造において使用される繊維質基材としては、従来皮革様シートの製造に用いられている不織布や編織布を用いることができる。
不織布は、補強用等の目的で編織布等が内部又は表面に積層されたものでも良い。
繊維質基材を構成する繊維は、天然繊維又は化学繊維のいずれでもよい。
天然繊維としては綿、羊毛、絹及び石綿等、化学繊維としてはレーヨン、テンセル等の再生繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維並びにポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル等の合成繊維が挙げられ、これらを混合使用した繊維を用いることも可能である。更に、繊維質基材を構成する繊維が極細繊維発生型繊維、例えば海島型複合繊維であっても良い。
本発明の皮革様シートの製造方法は、(Q)を繊維質基材に含浸又は塗布する工程、感熱凝固工程及び水洗工程を必須の工程として有するが、その他の工程については、通常の皮革様シート製造に用いられる工程を設けることができる。例えば、含浸又は塗布工程、感熱凝固工程並びに極細繊維化工程、染色工程及びこれらの工程の後に実施される水洗工程を経て、皮革様シートを製造することができる。
含浸又は塗布の方法としては、通常行われる方法であればいずれでもよい。
例えば繊維質基材に(Q)を含浸し、マングル等で搾ってピックアップを調製する方法、その他ナイフコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング及びスプレーコーティング等の方法が挙げられる。
繊維質基材に付与された(Q)の感熱凝固の方法としては、例えば、(1)加熱水蒸気を吹き付けて感熱凝固したのち、乾燥装置による加熱乾燥又は風乾する方法、及び(2)乾燥装置中にそのまま導入して加熱凝固すると共に乾燥する方法、等を挙げることができる。
上記の内で好ましいのは、(1)の方法である。
繊維質基材に付与された(Q)を感熱凝固させるための雰囲気の温度は、凝固浴の安定性及びポリウレタン樹脂エマルションの凝固を速やかに完了させるという観点から、好ましくは40〜180℃、更に好ましくは60〜150℃、特に好ましくは70〜120℃である。感熱凝固させる時間は温度によって異なるが通常0.1分〜30分、好ましくは0.5分〜20分である。
凝固させた後の乾燥温度は通常100〜200℃、好ましくは120〜180℃であり、時間は通常1〜60分、好ましくは2〜30分である。
繊維質基材として極細繊維発生型繊維からなる基材を用いる場合は、感熱凝固工程に続いてアルカリ水溶液や有機溶剤を用いて海成分を除去する工程を設けて極細繊維化することができる。
本発明の皮革様シートの製造方法において、可塑剤(B)を除去するために専用の水洗工程を設けてもよいが、感熱凝固工程後に実施されうる極細繊維化工程、染色工程及びこれらの後に実施される水洗工程において抽出・除去することもできる。
(B)を水洗工程等で除去するための温度及び時間は、感熱凝固工程後に実施されうる極細繊維化工程、染色工程及びこれらの後に実施される水洗工程における条件と同様でよいが、(B)の種類や使用量に基づき適宜調整することもできる。
(B)の残存率(X)は、製造された皮革様シートにおける単位面積当たりの(B)の重量(Wb2)を感熱凝固工程後の皮革様シートの単位面積当たりの(B)の重量(Wb1)で除した(割り算した)値を百分率で表した値である。(B)の残存率(X)はシート強度の観点から、通常5重量%以下であり、更に好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
(B)の残存率(X)は、以下の方法で求めることができる。
(1)(Wb1)を以下の方法で求める。
(Wb1)=Wq×Cb/S’
Wq:繊維基材に含浸された(Q)の重量(g)
Cb:(Q)における(B)の濃度(%)
S:皮革様シートの面積(cm2
(2)(Wb2)を以下の方法で求める。
製造された皮革様シートをシート重量(Wa)に対して100倍量の水に漬け、24時間静置する。続いて、皮革様シートを120℃×20分乾燥させ、シート重量(Wa’)を測定する。(Wa)と(Wa’)の差を製造された皮革様シートの面積で除した値を(Wb2)とする。計算式は以下の通りである。
(Wb2)=(Wa−Wa’)/S’
Wa:製造されたシート重量(g)
Wa’:上記抽出操作により得られたシート重量(g)
S’:皮革様シートの面積(cm2
(3)上記(Wb1)と(Wb2)により下式を用いて(X)を求める。
(X)=(Wb2)/(Wb1)×100。
繊維質基材へのポリウレタン樹脂(A)の付着重量は、シート強度の観点から繊維質基材100重量部に対し好ましくは3〜150重量部、更に好ましくは10〜100重量部、特に好ましくは20〜50重量部である。
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、「部」は重量部を示す。尚、以下における実施例1〜6は参考例である。
<ポリウレタン樹脂エマルションの製造>
製造例1
温度計及び攪拌機を備えた耐圧反応槽にMn2,000のポリテトラメチレングリコール537部、α,α−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)16.7部、イソホロンジイソシアネート143部及びアセトン300部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換した後、攪拌下90℃で10時間反応させ、末端NCO基ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。系内を40℃に冷却してトリエチルアミン15.1部を加えた。次いで、可塑剤としてのヘキサデシルアルコールのEO14モル付加物2.0部及びMn=600のポリエチレングリコール174部を水335部に溶解したものを加え、ホモミキサーで1分間攪拌して乳化した後、エチレンジアミン6.4部を水554部に溶解したものを加え、鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去し、水で濃度調整して、ウレタン樹脂(A)濃度40重量%、平均分散粒子径0.2μmのポリウレタン樹脂エマルション(q−1)を得た。
製造例2
Mn2,000のポリテトラメチレングリコールをMn2,000のポリヘキサメチレンカーボネートジオールに代える以外は、製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(q−2)を得た。
製造例3
Mn2,000のポリテトラメチレングリコールをMn2,000の1,4−ブタンジオールとアジピン酸の縮合型ポリエステルジオールに代える以外は、製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(q−3)を得た。
製造例4
ポリエチレングリコールの仕込量を19.8部に、エチレンジアミンを溶解する水の量を水708部に代える以外は製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション−4を得た。以外は製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(q−4)を得た。
製造例5
ポリエチレングリコールの仕込み量を893部に、エチレンジアミンを溶解する水の量を88部に代え、更に、ポリウレタン樹脂(A)の濃度を35重量%となるように水で濃度調整する以外は製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(q−5)を得た。
製造例6
Mn2,000のポリテトラメチレングリコール537部の内の269部をMn2,000のポリヘキサメチレンカーボネートジオールで代える以外は、製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(q−6)を得た。
製造例7
温度計及び攪拌機を備えた耐圧反応槽にMn2,000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール537部、α,α−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)16.7部、イソホロンジイソシアネート143部及びアセトン300部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換した後、攪拌下90℃で10時間反応させ、末端NCO基ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。系内を40℃に冷却してトリエチルアミン15.1部を加えた。次いで、水335部を該アセトン溶液に加えホモミキサーで1分間攪拌して乳化した後、エチレンジアミン6.4部を水554部に溶解したもので鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去した。得られたポリウレタン樹脂エマルションに可塑剤としてのMn=600のポリエチレングリコール176部を加え、水で濃度調整して、ポリウレタン樹脂(A)の濃度40重量%、平均分散粒子径0.4μmのポリウレタン樹脂エマルション(q−7)を得た。
比較製造例1
ヘキサデシルアルコールのEO14モル付加物2.0部及びMn=600のポリエチレングリコール174部を水335部に溶解したものを、水511部に代える以外は製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(y−1)を得た。
比較製造例2
ポリエチレングリコールの仕込み量を1305部に、エチレンジアミンの溶解用の水の仕込量を14部に代え、更に、ポリウレタン樹脂(A)の濃度を30重量%となるように水で濃度調整すること以外は製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(y−2)を得た。
比較製造例3
ヘキサデシルアルコールのEO14モル付加物及びポリエチレングリコールを「DIBA」[大八化学工業(株)製、ジイソブチルアジペート、25℃において水100gに対して0.5g溶解する。]に代える以外は、製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(y−3)を得た。
比較製造例4
ポリエチレングリコールをMn=2,000のポリプロピレングリコールに代える以外は、製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(y−4)を得た。
比較製造例5
ポリエチレングリコールをグリセリンのEO2.7モル付加物に代える以外は、製造例1と同様にしてポリウレタン樹脂エマルション(y−5)を得た。
<不織布の製造>
ポリエチレンテレフタレート短繊維から積層シートを作り、このシートを280本/cm2の打込数となるようにニードルパンチして、重量380g/m2、見掛密度0.18g/cm2の不織布を得た。
実施例1
ポリウレタン樹脂エマルションにおける感熱凝固剤の濃度が3重量%となるように、100部のポリウレタン樹脂エマルション(q−1)に対して、感熱凝固剤としての塩化カルシウムの10重量%水溶液60部を添加し、更にポリウレタン樹脂濃度が20重量%となるように水を加えて調整してポリウレタン樹脂エマルション(Q−1)を得た。10cm×20cmにカットした前記不織布に(Q−1)を含浸させ、ウレタン樹脂の付着率が重量に対して50重量%となるようにマングルで絞った後、シートの一部を10cm×10cmにカットして測定したシート重量と予め測定しておいた不織布の10cm2当たりの重量から含浸した(Q−1)の重量(Wq)を測定した。残りのシートを100℃の飽和水蒸気中で5分間加熱し感熱凝固させて、120℃の熱風乾燥機で20分乾燥した後室温まで冷却してシートの重量(Wq1’)を測定した。得られた皮革様シートを(Wq1’)に対して100倍量の染色液が入った容器に入れて3枚羽根を備えた攪拌装置で攪拌することで染色処理[染料:サカイオーベックス(株)製Miketon Poly.Yellow GSL、温度:60℃、時間:5時間]を行い、得られた皮革様シートを(Wq1’)に対して100倍量の水が入った容器に入れて25℃で20分間、3枚羽根を備えた攪拌装置で撹拌することにより水洗した後、120℃で20分乾燥して本発明の製造方法による皮革様シートを得た。
実施例2〜7
ポリウレタン樹脂エマルション(q−1)をポリウレタン樹脂エマルション(q−2)〜(q−7)に代える以外は実施例1と同様にして、実施例2〜7のポリウレタン樹脂エマルション(Q−2)〜(Q−7)及び皮革様シートを得た。
比較例1〜3
ポリウレタン樹脂エマルション(q−1)をポリウレタン樹脂エマルション(y−1)〜(y−3)に代える以外は実施例1と同様にして、比較例1〜3のポリウレタン樹脂エマルション(Y−1)〜(Y−3)及び皮革様シートを得た。
比較例4
塩化カルシウムの10重量%水溶液60部を添加しない以外は実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂エマルション(Y−4)及び皮革様シートを得た。
比較例5〜6
ポリウレタン樹脂エマルション(q−1)をポリウレタン樹脂エマルション(y−4)〜(y−5)に代える以外は実施例1と同様にして比較例5〜6のポリウレタン樹脂エマルション(Y−5)〜(Y−6)及び皮革様シートを得た。
実施例1〜7及び比較例1〜6におけるポリウレタン樹脂エマルション(Q−1)〜(Q−7)及び(Y−1)〜(Y−6)の組成、感熱凝固温度、ポリウレタン樹脂の目付量、以下の試験法により測定又は評価されたポリウレタン樹脂エマルションの乾燥皮膜の貯蔵弾性率、可塑剤の残存率並びに皮革様シートの形状変化率及び風合いを表1及び表2に示した。
[貯蔵弾性率−1]
実施例1〜7及び比較例1〜6のポリウレタン樹脂エマルション(Q−1)〜(Q−7)及び(Y−1)〜(Y−6)をポリプロピレン製トレーに乾燥後の膜厚が200μmとなるように入れて、25℃で24時間乾燥後、更に120℃で2時間乾燥して得られた厚さ200μmのフィルムについて、貯蔵弾性率測定装置、Rheogel E4000[UBM(株)製]を使用して周波数11Hzで100℃の貯蔵弾性率を測定した。
[貯蔵弾性率−2]
上記製造例1〜7及び比較製造例1〜6のポリウレタン樹脂エマルション(Q−1)〜(Q−7)及び(Y−1)〜(Y−6)の構成成分の内、可塑剤(B)のみを含有しないポリウレタン樹脂エマルションを製造した。即ち、製造例及び比較製造例において可塑剤を使用しないポリウレタン樹脂エマルションを製造して、実施例1〜7及び比較例1〜6と同様に感熱凝固剤及び水を添加してポリウレタン樹脂エマルションを製造した。但し、比較例4に相当するものは感熱凝固剤を添加せず水のみを添加した。続いて、該ポリウレタン樹脂エマルションを用いて貯蔵弾性率−1の測定方法と同様にして、100℃の貯蔵弾性率を測定した。
[可塑剤の残存率]
(1)感熱凝固工程後の皮革様シートの単位面積当たりの可塑剤の重量(Wb1)を以下の方法で求めた。
(Wb1)=Wq×Cb/S’
Wq:繊維基材に含浸された(Q)の重量(g)
Cb:(Q)における(B)の濃度(%)
S:皮革様シートの面積(cm2
(2)製造された皮革様シートにおける単位面積当たりの可塑剤の重量(Wb2)を以下の方法で求めた。
製造された皮革様シートをシート重量(Wa)に対して100倍量の水に漬け、24時間静置した。続いて、皮革様シートを120℃×20分乾燥させ、シート重量(Wa’)を測定した。(Wa)と(Wa’)の差を製造された皮革様シートの面積で除した値を(Wb2)とした。計算式は以下の通りである。
(Wb2)=(Wa−Wa’)/S’
Wa:製造されたシート重量(g)
Wa’:上記抽出操作により得られたシート重量(g)
S’:皮革様シートの面積(cm2
(3)上記(Wb1)と(Wb2)により下式を用いて可塑剤の残存率(X)を求めた。
(X)=(Wb2)/(Wb1)×100。
[皮革様シートの強度(形状変化率)]
製造された皮革様シートの強度は、シートに液流染色機で水をたたきつけることにより評価した。即ち、製造されたシートに含まれるポリウレタン樹脂の造膜性が不十分であったり、可塑剤の残存量が多い場合は、液流染色機内でもまれたり、引張られた際にポリウレタン樹脂が脱落し、シートの形状変化率が高くなる。製造された皮革様シートの形状変化率の具体的評価方法は以下の通りである。
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた皮革様シートを縦10cm、横10cmの寸法に切り取り(厚さは1.0mm)、縦方向の中央部の距離(H0)及び横方向の中央部の長さ(L0)をノギスで最小目盛り0.05mmまで測定後、染色試験機[(株)テクサム技研製ウインス染色機]を用いて液流処理(温度:120℃、流速:200〜300L/min)を行い、120℃で20分乾燥後の縦方向の中央部の長さ(H1)及び横方向の中央部の長さ(L1)を測定した。下式から形状変化率(%)を計算した。
形状変化率(%)=[{(H1−H0)/H0}×100+{(L1−L0)/L0}×100]/2
[風合い]
実施例1〜7及び比較例1〜4で作成した皮革様シートの風合いについて、手の触感による官能試験を行い、天然皮革様の風合いを有するものである場合を「○」と判定し、天然皮革に比べて柔軟性がやや劣るものを「△」、柔軟性不足のため天然皮革様の風合いを呈さない場合を「×」と判定した。
Figure 0005670099
Figure 0005670099
本発明の製造方法により、強度及び風合いが優れ、天然皮革に近似した皮革様シートを製造することができるため、本発明の製造方法により得られた皮革様シートは、種々の用途、例えば、マットレス、鞄内張り材料、衣料、靴用芯材、クッション地、自動車内装材及び壁材に好適に使用することができる。

Claims (3)

  1. ポリウレタン樹脂(A)、可塑剤(B)、感熱凝固剤(C)及び水性媒体(D)を含有してなる感熱凝固性を有するポリウレタン樹脂エマルション(Q)を繊維質基材に含浸又は塗布する工程、前記工程後に前記(Q)を感熱凝固させる工程及び水洗工程を含む皮革様シートの製造方法であって、以下の(1)〜()を全て満足する皮革様シートの製造方法。
    (1)前記(A)と前記(B)の重量比率[(A):(B)]が、99:1〜40:60である。
    (2)前記(B)が、炭素数1〜10の1〜6価の脂肪族アルコール(B1)の炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物である。
    )前記(B)が25℃において水100gに対して10g以上溶解する。
    )前記(B)の溶解度パラメータ(SP値)が、9.2〜12.5である。
    )前記(Q)を乾燥して得られる皮膜の100℃における貯蔵弾性率が0.01〜0.1MPaである。
    )前記(Q)の構成成分の内、前記(B)のみを含有しないポリウレタン樹脂エマルション(Q’)を乾燥して得られる皮膜の100℃における貯蔵弾性率が0.5〜10MPaである。
    )前記(Q)の感熱凝固温度が40〜90℃である。
    )製造された皮革様シートにおける単位面積当たりの(B)の重量(Wb2)を、感熱凝固工程後の繊維質基材の単位面積当たりの(B)の重量(Wb1)で除して得られる(B)の残存率(X)が5重量%以下である。
  2. 前記(A)が、ポリイソシアネート(a2)とポリエーテルジオール(a11)及び/若しくはポリカーボネートジオール(a122)とを反応して得られるポリウレタン樹脂、又は、前記(a2)とポリエーテルジオール(a11)及び/若しくはポリカーボネートジオール(a122)と鎖伸長剤(a3)及び/若しくは親水基含有活性水素化合物(a4)とを反応させて得られるポリウレタン樹脂である請求項1記載の製造方法。
  3. 前記(B)が、200〜1,000の数平均分子量を有するポリエチレングリコール及び/又は200〜1,000の数平均分子量を有するポリプロピレングリコールである請求項1又は2記載の皮革様シートの製造方法。
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