JP7230258B1 - 法枠、法面の安定化部材及び法枠、法面の安定化方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一般的なのり枠は、斜面上に金網製の型枠を設置し、そこにモルタルを吹き付けて造成する、吹付のり枠工により行われる。
この工法は、法面に所定の間隔で金網製の型枠と鉄筋を設置し、そこにモルタルを吹き付けて鉄筋モルタル構造の法枠を構築するものであり、法枠と地盤との付着性が高いのが特徴であり、特にコンクリート擁壁等の施工が困難な高所で多く用いられている。
この背面空洞化が法枠工の広範囲に進むと、法枠と地盤との付着がなくなり、法面の表層保護機能を失うだけでなく、法枠工自体が自重により法面下方に滑動するおそれがあり、道路利用者等に危険を及ぼすことも考えられる。
しかし、高所で施工された法枠工を取り壊すことは人力作業となる場合が多く、非常に多くの労力と費用を必要とする。さらに、地盤の土砂化や脆弱化が進行した状態では法枠工を取り壊すことで法面崩壊が発生することも十分考えられる。法面の崩壊は、作業員のみならず道路利用者等にも危険が及ぶため、法枠工を取り壊す際には大規模な仮設防護柵を設置して、長期間道路の通行止めを行うことも考えなければならない。
しかし、モルタルを吹き付ける方法では、空洞の隙間が狭い場合には確実に充填することが困難であり、注入固化材を充填する方法でも、確実に充填したことを確認することは困難であるし、さらに土砂化や脆弱化した地盤に対して法枠工の自重を支えられるだけの付着力が得られるかどうか不明である。
本願の第二発明は、前記プレートの下面に、前記補強材に外挿し、下端が前記底辺よりも下方に位置する筒体を有することを特徴とする、第一発明又は第二発明の法枠、法面の安定化部材を提供する。
本願の第三発明は、第一発明又は第二発明の法枠、法面の安定化部材を用いた法枠、法面の安定化方法であって、既存の法枠工の横方向枠の下部の法面に補強材を、法面鉛直方向よりも頭部を谷側に振った角度で打設し、前記台座部材の前記側板と前記連結板で囲まれた空間に前記補強材の頭部を挿通し、前記台座部材の後辺を前記法枠工の横方向枠の下面に当接し、前記補強材に前記ナットを螺合して締め付けて前記ナットと前記プレートを係合し、前記補強材に前記ナットを螺合して締め付けて前記台座部材の後辺を前記法枠工の横方向枠の下面に当接して前記台座部材を固定することを特徴とする、法枠、法面の安定化方法を提供する。
本願の第四発明は、第三発明の法枠、法面の安定化方法において、前記台座部材を固定した後に、充填材を前記法枠工の背面の空洞箇所に充填することを特徴とする、法枠、法面の安定化方法を提供する。
本願の第五発明は、第三発明の法枠、法面の安定化方法において、前記台座部材を固定する前に、充填材を前記法枠工の背面の空洞箇所に充填することを特徴とする、法枠、法面の安定化方法を提供する。
(1)台座部材により法枠工を支持することで、法枠工を取り壊さないで、法枠工の自重による滑動を防止することができる。
(2)法面に打設する補強材の頭部に台座部材を固定することで、地盤の風化による土砂化や脆弱化により、法枠のみでは抑止できない深いすべり崩壊が想定される場合でも抑止することが可能となり、法面の安定性を向上することができる。
(3)台座部材の斜辺に溝を設け、その溝にプレートを収めることにより、ナットを締め付けて固定する時に補強材に発生する法面上方向分力を台座部材に伝えることができ、台座部材を法枠工の横方向枠の下部に押し付けることになり、密着性を高めることができる。
(4)台座部材は法枠工の横方向枠の下部に密着して下から直接支えることで、法枠では不足であった法面の深い位置でのすべり崩壊により補強材に発生する法面上方向分力を法枠工で支持させることができ、台座部材の法面上方向への滑動を防止することができる。
(5)台座部材を固定した後に、背面空洞箇所の充填作業を行うことができるため、充填作業時の安全性が高まる。
(6)台座部材を固定する前に背面空洞箇所の充填作業を行うことで、背面空洞深さが台座部材高さより大きい場合でも、台座部材を、充填材を充填した法面と法枠工の横方向枠の2面に接して設置することができ、安定して法枠工を支持できる。
(7)法枠の自重による滑動力に対して、補強材に外挿する筒体が加わるため、断面係数と断面積が大きくなり、曲げやせん断に対する耐力が向上する。
本発明の法枠、法面の安定化部材は、法面1上に配置した法枠工2を支持するものである(図1)。
対象となる法枠工2の規格としては、法枠断面寸法(幅×高さ)が0.15m×0.15m~0.6m×0.6m、枠間隔(縦方向枠21×横方向枠22)が1.0m×1.0m~3.0×3.0m程度となるが、本発明の使用頻度が多いのは、法枠工2の交点部に地山補強土工やグラウンドアンカー工を設置せずに、法枠工2単独で施工される、断面寸法(幅×高さ)0.15m×0.15m~0.3m×0.3m、枠間隔(縦×横)1.0m×1.0m~2.0×2.0mの法枠工2である。
本発明の法枠、法面の安定化部材は、法面1に打設した補強材3の頭部に係合し、法枠工2の横方向枠22の下面に接して支持する(図2)。
法枠、法面の安定化部材は、補強材3に挿通する台座部材4と、補強材3の頭部に螺合するナット5と、補強材3を挿通し、ナット5と台座部材4との間に配置するプレート6と、を有する(図3)。
台座部材4は、離隔して平行に対向した2枚の側板41と、離隔して対向するとともに側板41と直交する2枚の連結板42と、からなる(図4)。
側板41は、底辺411と、底辺411の前側端部から直立する前辺412と、底辺411の後側端部から直立する後辺413と、後辺413から前辺412にかけて底辺411側に傾斜する斜辺414と、を有する。
連結板42は両端をそれぞれ側板41の内面に固定して側板41を平行に保持する。
連結板42は、その延長線が斜辺414に対して直角となるように配置する。連結板42と斜辺414の角度を、連結板42が補強材3と平行になる角度に規定すると、斜辺414と補強材3が直角となる。
斜辺414は、プレート6が収まる溝415を有する。
ナット5は、補強材3の頭部に螺合する。
プレート6は、中央の孔に法面1から突設した補強材3の頭部を挿通し、台座部材4の斜辺414上に配置する。
ナット5はプレート6中央の孔より大きく、ナット5を締め込むことにより、プレート6は台座部材4の斜辺414に押し付けられ、法面1方向に台座部材4を押し付ける(図5)。なお、ナット5と補強材3の頭部の防錆保護を目的とした頭部保護キャップ(図示せず)を付けてもよい。
プレート6は斜辺414の溝415に収まるため、ナット5を締め込むことで補強材3に発生する法面上方向分力を台座部材4に伝えることができ、台座部材4の後辺413を横方向枠22の下面に押し付けることとなり、密着性を高めることができる。なお、本実施例はプレート6を溝415に収めて斜辺414上に配置したが、台座部材4と一体に形成してもよい。
台座部材4は、法枠工2の横方向枠22に密着して下から直接支えることで、自重による法枠工2自体の滑動を抑えることができる。また、補強材3に作用する法面上方向分力を法枠工2で支持させることができ、台座部材4の法面1上方向への滑動を防止することができる。
補強材3は、ナット5を螺合して固定できるネジ節異形棒鋼が望ましいが、その他にも地表突出部がネジ加工された異形棒鋼や鋼管でもよい。また、H鋼や等辺山形鋼などの形鋼を使用してもよい。
ネジ節異形棒鋼の材質はSD345相当以上、呼び径は法枠工2載荷時のたわみを考慮してD22以上が望ましい。
また、短期間の仮設対策として使用する場合を除き、防錆処理を施す。防錆処理の種類としては溶融めっきの2種HDZ55(JIS H 8641、めっき付着量550g/m2)相当以上が望ましい。
W=w・h・(a+b-w)・γ
補強材で増加させる安全率ΔFs、法面傾斜角αとすると、一本あたりの補強材3に作用する法枠工の滑動力Pは
P=ΔFs・W・sinα
法枠背面空洞深さdとすると、補強材3に作用する曲げモーメントMは、
M=P・d
補強材3に作用するせん断力Sは、
S=P
断面積A、補強材3の断面係数Zとすると、補強材3の曲げ引張応力度σは
σ=M/Z
せん断応力度τは
τ=S/A
で求められる。
この計算結果を表1に示す。計算の結果から補強材はD22であれば問題ない。
また、既設の法枠工2自体の劣化が著しく、取り壊しが必要な場合には、取り壊し時の仮設部材として使用することもできる。取り壊し時の法枠工2の自重による滑動防止と、取り壊した後の不安定地山のすべり崩壊防止の2つの仮設対策工となる。そして、新たな法枠工を再設置する場合には、法枠工の型枠固定用のアンカーバーや、法枠工と併用する地山補強土工法として使用することもできる。
補強材3の設置角度については、特に規定するものではないが、ナット5を締め込むことで発生する法面上方向分力を利用して台座部材4と横方向枠22の密着性を高めることを考えて、法面鉛直方向よりも頭部を谷側に15°以上振った角度とするのが望ましい。
θ=45°-φ/2の時に最も補強効果が高い。
実際の現場では地質が不均質で、地層が複数層に分かれている場合も多いことから、安定計算によって補強効果が最も高くなる補強材設置角度を求める必要がある。ただし、補強材3の設置角度が水平面から±5°の範囲になる場合には、充填材の注入時に地表から流失して施工が困難になり、かつブリーディングの影響を受けるため避ける必要がある。
法枠、法面の安定化部材と補強材3の平面配置は、計算上満足するのであれば必ずしも縦方向枠21と横方向枠22で囲まれる法枠の全箇所に配置(図1)する必要はない。
この場合、平面配置形状は千鳥配置(図6)が望ましいが、長方形配置(図7)でも問題はない。
法面1の表層に凹凸があり、台座部材4の底面411と法面1の設置面が密着しない場合には、法面表層を平らに整形する、もしくはモルタル等を間詰め材として使用して密着させる。また、台座部材4の後面413と既設法枠2の設置面が密着しない場合にも、同様にモルタル等を間詰め材として使用して密着させる。
既設の法枠工2の背面の空洞箇所にはモルタル・コンクリートや短繊維混合補強土等の充填材8を充填して固化する。
このとき、台座部材4を補強材3に固定して既設の法枠工2を下方から支持し、滑動に対する安定性を確保した後に、法枠工2と法面1の間にある背面の空洞箇所に充填材8を充填して固化することで、充填作業時の安全性が高まる。
逆に、台座部材4を固定する前に背面の空洞箇所の充填作業を行うことで、背面空洞深さが台座部材4の高さより大きい場合(図8)でも、台座部材4を、充填材を充填した法面と法枠工の横方向枠の2面に接して設置することができ、安定して法枠工2を支持できる。
縦方向枠21と横方向枠22に囲まれた枠内にモルタル・コンクリートを吹き付ける際には吹付厚さは10cm以上とし、事前に枠内に菱形金網(線形2mm、網目50mm×50mm)を張り、アンカーピンで固定する。なお、モルタル・コンクリートには短繊維を混合することもできる。この場合、曲げ耐力が向上するため吹付厚さは7cm以上とすることができ、菱形金網を張る必要はない。混合する短繊維としては、ビニロン繊維やポリプロピレン繊維などがある。
プレート6の下面に、補強材3に外挿し、側板41と連結板42で囲まれた空間に位置する筒体61を設けてもよい(図9)。筒体61は、プレート6を台座部材4の溝415に収めた際に、下端が底辺411よりも下方に位置する。
法枠2の自重による滑動力に対して、補強材3に外挿する筒体61が加わるため、断面係数と断面積が大きくなり、曲げやせん断に対する耐力が向上する。
2…法枠工、21…縦方向枠、22…横方向枠
3…補強材
4…台座部材、41…側板、411…底辺、412…前辺、413…後辺、414…斜辺、415…溝、42…連結板
5…ナット
6…プレート、61…筒体
7…すべり面
8…充填材
Claims (5)
- 法面に打設する補強材の上部に係合する、法枠、法面の安定化部材であって、
離隔して対向した2枚の側板と、離隔して対向するとともに前記側板と直交する2枚の連結板と、を有する台座部材と、
前記補強材の頭部に螺合するナットと、
前記台座部材の前記側板と前記連結板で囲まれた空間の上部に位置し、前記補強材を挿通し、前記ナットと係合するプレートと、を有し、
前記台座部材の前記側板は、底辺と、前記底辺の一端から直立する前辺と、前記底辺の他端から直立する後辺と、前記後辺から前記前辺にかけて前記底辺側に傾斜する斜辺とを有し、
前記プレートは前記斜辺に設けた溝に収まることを特徴とする、
法枠、法面の安定化部材。 - 前記プレートの下面に、前記補強材に外挿し、下端が前記底辺よりも下方に位置する筒体を有することを特徴とする、
請求項1に記載の法枠、法面の安定化部材。 - 請求項1又は請求項2に記載の法枠、法面の安定化部材を用いた法枠、法面の安定化方法であって、
既存の法枠工の横方向枠の下部の法面に補強材を、法面鉛直方向よりも頭部を谷側に振った角度で打設し、
前記台座部材の前記側板と前記連結板で囲まれた空間に前記補強材の頭部を挿通し、
前記台座部材の後辺を前記法枠工の横方向枠の下面に当接し、前記補強材に前記ナットを螺合して締め付けて前記ナットと前記プレートを係合し、前記台座部材の後辺を前記法枠工の横方向枠の下面に当接して前記台座部材を固定することを特徴とする、
法枠、法面の安定化方法。 - 前記台座部材を固定した後に、充填材を前記法枠工の背面の空洞箇所に充填することを特徴とする、
請求項3に記載の法枠、法面の安定化方法。 - 前記台座部材を固定する前に、充填材を前記法枠工の背面の空洞箇所に充填することを特徴とする、
請求項3に記載の法枠、法面の安定化方法。
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