JP7230237B2 - 積層体およびその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む積層体およびその利用に関する。
近年、廃棄プラスチックによる環境問題がクローズアップされている。中でも、廃棄プラスチックによる海洋汚染は深刻であり、自然環境下で分解する生分解性プラスチックの普及が期待されている。
そのような生分解性プラスチックとしては、種々のものが知られているが(特許文献1)、中でも、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、多くの微生物種の細胞内にエネルギー貯蔵物質として生産、蓄積される熱可塑性ポリエステルであり、土中だけでなく、海水中でも生分解が進行しうる材料であるため、上記の問題を解決する素材として注目されている。
また、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を、紙等の生分解性を有する基材にラミネート加工して製造される積層体は、樹脂と基材の双方が優れた生分解性を有する材料であるため、環境保護の観点から極めて有望である。
特開2010-200697号公報
このような中、本発明者らが検討したところ、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む積層体を押出ラミネーションにより製造する際に、基材との接着性、ネックイン特性および冷却ロールからのラミネート層の剥離性の点で改善の余地があることがわかった。
そこで、本発明の一態様は、上記の課題が解決された、すなわち、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む積層体を押出ラミネーションにより製造する際に、基材との接着性を良好に保つとともに、ネックイン特性および冷却ロールからのラミネート層の剥離性を改善できるポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む積層体、およびその利用技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の融点挙動および溶融粘度を有するポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を用いることにより、押出ラミネーションにより積層体を製造する際に、基材との接着性を良好に保つとともに、ネックイン特性が改善されること、および冷却ロールからのラミネート層の剥離性が改善されること(その結果としてラミネート層の表面状態が良好な積層体が得られること)、を初めて見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明の一態様は、基材層と、基材層の少なくとも片面に積層されたラミネート層と、を含む積層体であり、前記ラミネート層が、(A)示差走査熱量分析において、130~155℃の範囲にある結晶融解曲線のトップ温度(Tm)と、結晶融解曲線のエンド温度(Tm)との差が10℃以上、および(B)175℃における溶融粘度が100~700Pa sを満たす、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、積層体である。
本発明の一態様によれば、押出ラミネーションにより積層体を製造する際に、基材との接着性を良好に保つとともに、ネックイン特性および冷却ロールからのラミネート層の剥離性が改善された、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む積層体を提供することができる。また、本発明の一態様によれば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、ラミネート層の表面状態が良好な積層体を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法を示す模式図である。 実施例1および4における示差走査熱量計(DSC)チャートを示す模式図である。 実施例2および3におけるDSCチャートを示す模式図である。 比較例1および2におけるDSCチャートを示す模式図である。
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
〔1.本発明の概要〕
本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む積層体は、基材層と、前記基材層の少なくとも片面に積層されたラミネート層と、を含む積層体であり、前記ラミネート層が、(A)示差走査熱量分析において、130~155℃の範囲にある結晶融解曲線のトップ温度(Tm)と、結晶融解曲線のエンド温度(Tm)との差が10℃以上、および(B)175℃における溶融粘度が100~700Pa sを満たすポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、ことを特徴とする。以下において、「ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂」を「P3HB系樹脂」と略して言及する場合もある。また、以下において、「本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂」を「本P3HB系樹脂」と略して言及する場合もある。
一般に、押出ラミネーションでは、基材への接着性向上や、ラミネート層の薄膜化と成形の高速化を目的に、溶融粘度を下げることが必要とされる。溶融粘度を下げる手法としては、P3HB系樹脂の分子量を下げることにより、加工温度を比較的高温にする手法がとり得る。
しかしながら、本発明者らが検討したところ、P3HB系樹脂は、低分子量化に伴い溶融時の張力が大きく低下する性質があり、加えて、高温での加工では熱分解を受けやすく低分子量化が著しく進行するため、ネックイン特性が悪くなりやすい問題があることがわかった。また、P3HB系樹脂は冷却ロールに付着しやすく、ロールから剥離する際に大きな力がかかることにより、ラミネート層表面に微細な凹凸が形成され、さらには白濁したムラが生じて、積層体の外観が悪化する問題があることがわかった。さらに、P3HB系樹脂はロールからの剥離性が悪いために、長時間にわたる連続的なラミネート加工が難しくなる問題もあることがわかった。
つまり、(1)ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、低分子量化による溶融張力の低下が大きく、ネックイン特性が悪くなりやすいこと、(2)ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は冷却ロールに付着しやすく(「冷却ロールへのブロッキング」ともいう。)、ロールから剥離する際に大きな力がかかることにより、ラミネート層表面に微細な凹凸が形成され、さらには白濁したムラが生じて、積層体の外観が悪化すること、および(3)ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂はロールからの剥離性が悪いために、長時間にわたる連続的なラミネート加工が難しくなる等の複数の問題があることがわかった。このように、本発明者らは、押出ラミネーションによりP3HB系樹脂を含む積層体を製造する場合の新たな課題を認識した。
そこで、本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の融点挙動および溶融粘度を有するP3HB系樹脂を用いることにより、押出ラミネーションにより積層体を製造する際に、基材との接着性を良好に保つとともに、ネックイン特性および冷却ロールからのラミネート層の剥離性が改善されること、およびラミネート層の表面状態が良好な積層体が得られること、という新規知見を見出した。さらに、冷却ロールからのラミネート層の剥離性が改善された結果として、長時間にわたる連続的なラミネート加工が可能となるという利点もあることがわかった。
このように、基材との接着性を良好に保つとともに、ネックイン特性および冷却ロールからのラミネート層の剥離性が改善され、かつ、ラミネート層の表面状態が良好なP3HB系樹脂を含む積層体の開示は初めてであり、本発明は、種々の分野での利用において極めて有用である。以下、P3HB系樹脂を含む積層体の構成およびその利用技術について詳説する。
〔2.積層体〕
(2-1.積層体の構成)
本発明の一実施形態に係る積層体(以下、「本積層体」と称する。)は、基材層と、前記基材層の少なくとも片面に積層されたラミネート層と、を含む積層体であり、前記ラミネート層が、後述する特定の融点挙動((A)で示すパラメータ)および溶融粘度((B)で示すパラメータ)を有する、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、ことを特徴とする。本積層体は、ラミネート層の表面状態が良好であるため、種々の用途において有利である。
本積層体において、ラミネート層は、基材層の片面にのみ積層されていてもよく、両面に積層されていてもよい。ラミネート層は、他の層を介して基材層に積層されていてもよいし、他の層を介さずに、直接、基材層に積層されていてもよい。
本発明の一実施形態において、本積層体は、ラミネート層の上にさらに別のラミネート層等が積層されていてもよい。
(2-2.ラミネート層)
本積層体におけるラミネート層は、後述する樹脂組成物により構成される。本明細書において「ラミネート層」は、当該層を構成する成分の観点から、「樹脂層」と表現することもできる。
(樹脂組成物)
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」と称する。)は、特定のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む。
<ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂>
本樹脂組成物は、後述する特定の融点挙動((A)で示すパラメータ)および溶融粘度((B)で示すパラメータ)を有する。本樹脂組成物がこのような特定の融点挙動および溶融粘度を有することにより、押出ラミネーションにより積層体を製造する際に、基材との接着性を良好に保つとともに、ネックイン特性および冷却ロールからのラミネート層の剥離性を改善し、ラミネート層の表面状態が良好な積層体を得ることができる。
本P3HB系樹脂は、上述のような効果を有するため、好ましくは、押出ラミネート層を形成するための用途で、換言すれば、基材層の少なくとも片面に押出ラミネーションによりラミネート層を形成するための用途で使用され得る。
本明細書において、P3HB系樹脂は、3-ヒドロキシブチレートを繰り返し単位とする、微生物から生産され得る脂肪族ポリエステル樹脂である。
本発明の一実施形態において、P3HB系樹脂は、3-ヒドロキシブチレートのみを繰り返し単位とするポリ(3-ヒドロキシブチレート)であってもよいし、3-ヒドロキシブチレートと他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体であってもよい。
本発明の一実施形態において、P3HB系樹脂は、単独重合体と1種または2種以上の共重合体との混合物であってもよいし、2種以上の共重合体の混合物であってもよい。共重合の形式は特に限定されず、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等であり得る。
本発明の一実施形態において、P3HB系樹脂としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)(P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)(P3HB3HO)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)(P3HB3HOD)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)(P3HB3HD)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HV3HH)等が挙げられる。中でも、工業的に生産が容易であることから、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB4HBが好ましい。
また、繰り返し単位の組成比を変えることで、融点、結晶化度を変化させ、結果として、ヤング率、耐熱性等の物性を変化させることができ、かつ、ポリプロピレンとポリエチレンとの間の物性を付与することが可能であること、および上記したように工業的に生産が容易であり、物性的に有用なプラスチックであるという観点から、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシヘキサン酸の共重合体であるP3HB3HHがより好ましい。また、P3HB3HHは、融点を低くすることができ、低温での成形加工が可能となる観点からも好ましい。
なお、上記P3HB3HVは、3-ヒドロキシブチレート成分と3-ヒドロキシバリレート成分との比率によって融点、ヤング率等が変化するが、両成分が共結晶化するために結晶化度は50%以上と高い。したがって、P3HB3HVは、P3HBに比べれば柔軟ではあるが、脆性の改良は不十分である。
本発明の一実施形態において、(A)示差走査熱量分析において、130~155℃の範囲にある結晶融解曲線のトップ温度(Tm)と、結晶融解曲線のエンド温度(Tm)との差(以下、「(A)の融点温度における差」と称する場合もある。)は、10℃以上であり、好ましくは、15℃以上であり、より好ましくは、20℃以上であり、さらに好ましくは、25℃以上である。上記の範囲内であると、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を溶融させると同時に、一部の結晶を溶融させずに残存させることが容易になるためである。これにより、押出ラミネーションの際に、十分な予熱をかけて樹脂を溶融させて基材に接着することができ、残存する結晶により保持される張力によってネックインを抑制することができる。また、一部の結晶を残すことによって結晶化速度が速くなり、冷却ロールからのラミネート層の剥離性を良好なものとすることができる。また、上限については、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の製造の容易さの観点から、例えば、50℃以下であり、より好ましくは、40℃以下であり、さらに好ましくは、30℃以下である。
本明細書において、「示差走査熱量分析における結晶融解曲線のトップ温度(Tm)」および「結晶融解曲線のエンド温度(Tm)」は、以下の通り定義される。樹脂試料4~10mgをアルミパンに充填し、示差走査熱量分析器を用いて、窒素気流下、30℃から180℃まで10℃/分の速度で昇温して前記樹脂試料を融解して吸熱曲線を得る。得られた吸熱曲線において、130~155℃の範囲に存在する融点ピークについて、吸熱量が最大となった融点ピークのトップ温度をTmとし、吸熱が認められなくなった温度をTmとした。Tmより高温側に別の融点ピークがある場合は、その吸熱が認められなくなった温度をTmとした。例えば、実施例および比較例において、「示差走査熱量分析における結晶融解曲線のトップ温度(Tm)」および「結晶融解曲線のエンド温度(Tm)」、ならびに後述する「Tm」は、図2~4の模式的なDSCチャートで表されるそれぞれの位置を示す。
本発明の一実施形態において、本P3HB系樹脂におけるTmとTmとしては、例えば、(i)Tm=130~155℃に対して、Tm=160~180℃であり、(ii)より好ましくはTm=140~145℃に対して、Tm=165~175℃であり、(iii)さらにTm=140~145℃、Tm=165~175℃であって、かつ、160℃<Tm<Tmの関係を満たす別の吸熱ピーク温度(Tm)を有することがさらに好ましい。本P3HB系樹脂の融点が上記範囲内であると、P3HB系樹脂の熱分解温度の180℃を超えない温度領域で、樹脂を十分溶融させながら一部の結晶を残す加工が容易となり、冷却ロールからの剥離性とネックイン抑制を両立できるとともに、熱分解によるラミネート層の機械強度を低下や臭気に発生を抑制することができる。特に、Tmを有する場合、冷却ロールからの剥離性とネックイン抑制について、より高い改良効果を得ることが可能になる。
本発明の一実施形態において、(B)175℃における溶融粘度(以下、「(B)の溶融粘度」と称する場合もある。)は、700Pa s以下であり、好ましくは、500Pa s以下であり、より好ましくは、400Pa s以下であり、さらに好ましくは、300Pa s以下である。上記の範囲内であると、押出ラミネーションの際の基材への濡れが向上し、接着性を良好なものにすることができる。さらには、押出機中でのせん断発熱が抑制され、加工時の樹脂の熱分解による加工性の悪化、臭気発生等の作業環境の悪化を低減できる。また、下限については、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、100Pa s以上であり、好ましくは、130Pa s以上である。上記の範囲よりも低粘度になると、ネックインの改善効果を十分に得られない場合がある。
なお、(A)示差走査熱量分析において、130~155℃の範囲にある結晶融解曲線のトップ温度(Tm)と、結晶融解曲線のエンド温度(Tm)との差、および(B)175℃における溶融粘度は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
本発明の一実施形態において、(A)の融点温度における差および(B)の溶融粘度を満たすP3HB系樹脂は、例えば、微生物により産生され得る。この場合、(i)単一の微生物を用いて、(A)の融点温度における差および(B)の溶融粘度を満たすP3HB系樹脂を得てもよいし、(ii)複数の微生物から得られたP3HB系樹脂を混合して、(A)の融点温度における差および(B)の溶融粘度を満たすP3HB系樹脂を得てもよい。
本P3HB系樹脂を生産する微生物としては、P3HB系樹脂の生産能を有する微生物であれば特に限定されない。例えば、P3HB生産菌としては、1925年に発見されたBacillus megateriumが最初で、他にもカプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator)(旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha))、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)等の天然微生物が挙げられる。これらの微生物ではP3HBが菌体内に蓄積されることが知られている。
また、ヒドロキシブチレートとその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体の生産菌としては、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が知られている。特に、P3HB3HHに関し、P3HB3HHの生産性を上げるために、P3HA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また上記以外にも、生産したいP3HB系樹脂に合わせて、各種P3HB系樹脂合成関連遺伝子を導入した遺伝子組換え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件の最適化をすればよい。
また、P3HB3HHは、例えば、国際公開第2010/013483号公報に記載された方法によっても製造され得る。P3HB3HHの市販品としては、例えば、株式会社カネカ「カネカ生分解性ポリマーPHBH(登録商標)」等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、(A)の融点温度における差および(B)の溶融粘度を満たすP3HB系樹脂は、例えば、KNK-631株(国際公開第2009/145164号参照)、およびKNK-005株(米国特許第7384766号明細書参照)から得られたP3HB系樹脂を混合することにより得られる(後述する実施例の「樹脂ペレット1」)。また、本発明の一実施形態において、(A)の融点温度における差および(B)の溶融粘度を満たすP3HB系樹脂は、例えば、KNK-005ΔphaZ1::Plac-phaCReΔphaZ2,6株(国際公開第2015/146195号)単独から得られた樹脂を分子量調整して得ることもできる(後述する実施例の「樹脂ペレット2」および「樹脂ペレット3」。KNK-005ΔphaZ1::Plac-phaCReΔphaZ2,6株から得られたP3HB系樹脂は、160~165℃の範囲に融点ピーク温度を有するため、より高温での加工においてもネックインの抑制および冷却ロールからの剥離性を向上させることができる。KNK-005ΔphaZ1::Plac-phaCReΔphaZ2,6株から得られたP3HB系樹脂は、本発明の効果を奏する範囲で、KNK-005株等の他の菌株から得られたP3HB系樹脂と混合して使用してもよい(後述する実施例の「樹脂ペレット4」)。
本発明の一実施形態において、P3HB3HHの繰り返し単位の組成比は、柔軟性および強度のバランスの観点から、3-ヒドロキシブチレート単位/3-ヒドロキシヘキサノエート単位の組成比が、80/20~99/1(mol/mol)であることが好ましく、85/15~97/3(mo1/mo1)であることがより好ましい。3-ヒドロキシブチレート単位/3-ヒドロキシヘキサノエート単位の組成比が、99/1(mol/mol)以下であると、十分な柔軟性が得られ、80/20(mol/mol)以上であると、十分な硬度が得られる。
本発明の一実施形態において、P3HB系樹脂の重量平均分子量(以下、「Mw」と称する場合がある。)は、特に限定されないが、15~40万が好ましく、20~35万がより好ましく、25~30万がさらに好ましい。重量平均分子量が15万以上であると、十分な機械物性等が得られ、40万以下であると、段落〔0035〕に記載の好ましい溶融粘度が達成でき、押出ラミネーションの際に必要な十分な流動性が担保され、樹脂層の厚みの制御が容易となる。P3HB系樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC-101」)によって、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K-804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。
<その他>
本発明の一実施形態において、本樹脂組成物は、上記P3HB系樹脂を含む、押出ラミネート層用の樹脂組成物である。
「押出ラミネート層用」とは、押出ラミネートにより、基材層に対してラミネートするための層としての用途を意図する。なお、押出ラミネートは、当該技術分野において公知の方法である。
本発明の一実施形態において、本樹脂組成物は、1種のP3HB系樹脂を単独で使用することもできるし、2種以上のP3HB系樹脂を組み合わせて使用することもできる。2種以上のP3HB系樹脂を組み合わせて使用する場合、例えば、上記<ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂>の項で記載した樹脂が使用される。
また、本発明の一実施形態において、本樹脂組成物は、本発明の効果を奏する範囲で、P3HB系樹脂以外の生分解性樹脂を1種または2種以上含んでいてもよい。そのような他の樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバテートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレート等の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペートと乳酸、テレフタル酸、リンゴ酸、セバシン酸との共重合体等のポリブチレンサクシネートアジペート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の添加量は、本樹脂組成物の生分解性を担保するために、P3HB系樹脂100重量部に対して30重量部以下が好ましい。
また、本樹脂組成物は、本発明の効果を奏する範囲で、当該技術分野において通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機充填剤、もみがら、木粉、新聞紙等の古紙、各種デンプン、セルロース等の有機充填剤、顔料、染料等の着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤等が挙げられる。添加剤としては、1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
(ラミネート層)
本積層体におけるラミネート層は、上述した(樹脂組成物)に記載の本樹脂組成物により形成される。本発明の一実施形態において、本積層体におけるラミネート層は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記樹脂組成物以外の成分を含んでいてもよい。これら添加剤の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
上述した通り、本樹脂組成物に含まれる本P3HB系樹脂が、特定の融点挙動((A)で示すパラメータ)および溶融粘度((B)で示すパラメータ)を有することにより、押出ラミネーションにより積層体を製造する際に、基材との接着性を良好に保つとともに、ネックイン特性および冷却ロールからのラミネート層の剥離性を改善できる。そのため、好ましくは、本積層体のラミネート層は押出ラミネート層であることが好ましい。換言すれば、本積層体の基材層の少なくとも片面に押出ラミネーションによりラミネート層が形成されていることが好ましい。
(2-3.基材層)
本積層体は、基材層を含む。本積層体における基材層は、ラミネート層を積層可能な層であれば特段限定されない。
本発明の一実施形態において、基材層は、生分解性を有する層であることが好ましい。基材層が生分解性を有する層であることにより、本積層体はラミネート層を含めた全体が生分解性を有することとなり、海洋汚染の問題を解決する素材としてより有利である。
生分解性を有する基材層としては、特に限定されないが、例えば、紙(主成分がセルロース)、セロハン、セルロースエステル;ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ポリグリコール酸、プルラン、またはこれらの基材にアルミ、シリカ等の無機物を蒸着したもの等が挙げられる。中でも耐熱性に優れ、安価である点から、紙が好ましい。紙の種類は、特に限定されず、カップ原紙、片艶紙、クラフト紙、上質紙、コート紙、薄葉紙、グラシン紙、板紙等が挙げられる。紙の種類は、本積層体の用途に応じて適宜選択することができる。紙には、必要に応じて、耐水剤、撥水剤、無機物等を添加してもよく、酸素バリア層コーティング、水蒸気バリアコーティング等の表面処理が施されたものであってもよい。
本発明の一実施形態において、基材層には、コロナ処理、フレーム処理、アンカーコート処理等の表面処理を行ってもよい。これらの表面処理は、単独で行ってもよいし、複数の表面処理を併用してもよい。特に、ラミネーション加工のインラインで基材層にコロナ処理を施して、その基材層の上にラミネート層を積層することで、P3HB系樹脂と基材層との密着強度を上げることができる。
〔3.積層体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る本積層体の製造方法(以下、「本製造方法」と称する。)は、下記(i)~(iii)の工程を含む:
工程(i):ラミネート層用の樹脂を溶融押出しする工程、
工程(ii):前記工程(i)で得られた溶融押出し後のラミネート層用の樹脂と、別途繰り出した基材層用の基材とを接触させて、前記基材層と前記ラミネート層とを含む積層体を形成する工程、
工程(iii):前記工程(ii)で得られた積層体を少なくとも1本が温調可能な2本のロールで挟み、前記積層体を構成する前記基材層と前記ラミネート層とを圧着する、圧着工程。
本積層体は、上記(i)~(iii)の工程を含む押出ラミネート法により、基材層の片面または両面に、樹脂組成物を加熱融着させて製造することができる。本明細書中、「温調可能」とは、温度調節機能が備わっており、所望の温度に調節することが可能であることを意味する。
本製造方法の一実施形態を図1に示す。本製造方法では、まず、T型ダイからラミネート層用の樹脂を溶融押出しする(工程(i))。次に、前記溶融押出し後の樹脂と、基材繰り出しロールから別途繰り出した基材層用の基材とを接触させて、基材層と、ラミネート層とが層構造をなすように、積層体を形成する(工程(ii))。その後、形成された積層体を少なくとも1本が温調可能な1対の圧着ロールで挟み、前記積層体を構成する前記基材層と前記ラミネート層とを圧着する。このときの圧着は冷却圧着であり、ロールは冷却ロールであることが好ましい。また、工程(iii)において、前記温調可能なロールは、積層体のラミネート層に接することが好ましい。工程(iii)により得られた圧着後の積層体は、ロールから剥離され、積層体巻取りロールに巻き取られることで回収される。
本製造方法の一実施形態において、上記の押出ラミネート法は、溶融した樹脂材料を含むラミネート層を基材に冷却圧着し、その直後に冷却ロールからラミネート層を剥離するものであるため、連続的に実施される。そのため、従来法では、樹脂材料としてP3HB系樹脂を用いた場合、冷却ロールからラミネート層がスムーズに剥離しにくく、冷却ロールにラミネート層が一時的に付着したようになる現象が生じやすかった。その結果、その付着箇所がロールから剥離する際に力がかかり、当該箇所でラミネート層表面に白濁したムラ(微細な凹凸)が生じるという問題が特に顕著に発生していた。しかし、本P3HB系樹脂を適用することで、冷却ロールからの剥離性を改善して、ラミネート層の表面状態が良好な積層体を製造することができる。
本発明の一実施形態において、工程(i)における加熱温度は、熱融着させる樹脂の温度が、結晶の一部が残るようにTm未満に調節することが好ましく、Tm-5℃に調節することがより好ましい。この温度とすることで、本発明におけるネックインおよびロールからの剥離性の改善効果が得られる。下限温度としては、基材との接着性を確保する観点から、155℃以上が好ましく、158℃以上がより好ましい。上限温度としては、P3HB系樹脂の熱分解温度である180℃を超えない温度がよく、具体的には175℃以下が好ましい。
本発明の一実施形態において、工程(iii)における冷却ロールの表面温度は、ラミネート層を冷却圧着できる温度であれば特に限定されず、適宜決定することができる。冷却ロールの表面温度は、例えば、35~70℃であり、40~60℃であることが好ましい。上記範囲内であると、P3HB系樹脂の結晶化が促進され、その結果、冷却ロールへの粘着が減少し、短時間での固化を達成することができる。
本積層体におけるラミネート層(本積層体が2層以上のラミネート層を有する場合には各ラミネート層)の厚さは、特に限定されないが、基材層への吸水を防止しながら、十分な柔軟性を確保する観点から、5~300μmが好ましく、10~200μmがより好ましい。
本発明の一実施形態において、紙コップや食品トレイ向けに、基材層として、150~350g/mのカップ原紙を用いた場合には、ラミネート層の厚みは、20~100μmとすることが好ましく、30~70μmとすることがより好ましい。上記厚みの範囲とすることで、打ち抜き性、ヒートシール性等の2次加工性を良好に保つことができる。
本発明の他の一実施形態において、ピロー包装や梱包紙袋向けに、基材層として、50~150g/mの片艶紙、クラフト紙または上質紙を用いた場合には、ラミネート層の厚みは、20~50μmとすることが好ましく、30~40μmとすることがより好ましい。上記厚みの範囲とすることで、ヒートシール性を良好に保つことができるとともに、袋に成形した時の柔軟性を確保することができる。
〔4.成形体〕
本発明の一実施形態に係る成形体(以下、「本成形体」と称する。)は、本積層体を含む。本成形体は、ラミネート層の表面状態が良好である積層体から形成されているため、種々の用途において有利である。
本成形体は、本積層体を含むものであれば特に限定されないが、例えば、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器(例えば、ボトル容器、コップ(「カップ」ともいう。)、トレー)、袋、部品等が挙げられる。本成形体は、海洋汚染の対策の観点から、好ましくは、袋または容器(例えば、ボトル容器、コップ、トレー)である。
本発明の一実施形態において、本成形体は、本積層体それ自体であってもよい。
本発明の一実施形態において、本成形体に含まれる本積層体は、2次加工されたものであってもよい。
本積層体が2次加工されていることにより、それを含む本成形体は、ショッピングバッグ、各種製袋、食品・菓子包装材、カップ、トレー、カートン等の各種包装容器資材として(換言すれば、食品、化粧品、電子、医療、薬品等の各種分野で)、好適に利用することができる。本積層体は、基材への高い接着性および良好な耐熱性を有するために、液体を入れる容器、特に、即席麺、即席スープ、コーヒー等の飲食品カップ、総菜、弁当、電子レンジ食品等に用いるトレー等、温かい内容物を入れる容器として、より好ましい。
上記の各種2次加工は、従来の樹脂ラミネート紙と同じ方法、すなわち、各種製袋機、充填包装機等を用いて行うことができる。また、紙カップ成型機、打抜き機、函機等の装置を用いて加工することもできる。これらの加工機において、積層体の接着方法は公知の技術を使用することができ、例えば、ヒートシール法、インパルスシール法、超音波シール法、高周波シール法、ホットエアシール法、フレームシール法等が使用できる。
本積層体または本成形体のヒートシール温度は、接着法により異なる。本積層体または本成形体のヒートシール温度は、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合、通常は250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記範囲内であると、シール部近傍の樹脂の溶け出しを回避し、適当な樹脂層の膜厚の確保およびシール強度の確保を行うことができる。また、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合の下限値は、通常は130℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上である。上記範囲内であると、シール部における適当な接着を確保することができる。
本積層体または本成形体のヒートシール圧力は、接着法により異なる。本積層体または本成形体のヒートシール圧力は、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合、通常は0.1MPa以上、好ましくは0.3MPa以上である。上記範囲内であると、シール部における適当な接着を確保することができる。また、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合の上限値は、通常は0.5MPa以下、好ましくは0.45MPa以下である。上記範囲内であると、シール端部の膜厚の薄肉化を回避し、シール強度を確保することができる。
また、本発明の一実施形態において、本成形体は、その物性を改善するために、本成形体とは異なる材料から構成される成形体(例えば、繊維、糸、ロープ、織物、編物、不織布、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品、発泡体等)と複合化することもできる。これらの材料も、生分解性であることが好ましい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
すなわち、本発明の一実施形態は、以下である。
<1>基材層と、前記基材層の少なくとも片面に積層されたラミネート層と、を含む積層体であり、
前記ラミネート層が、以下の(A)および(B)を満たす、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、積層体:
(A)示差走査熱量分析において、130~155℃の範囲にある結晶融解曲線のトップ温度(Tm)と、結晶融解曲線のエンド温度(Tm)との差が10℃以上、
(B)175℃における溶融粘度が100~700Pa s。
<2>前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)である、<1>に記載の積層体。
<3>前記ラミネート層が、押出ラミネート層である、<1>または<2>に記載の積層体。
<4>前記基材層が、生分解性を有する層である、<1>~<3>のいずれかに記載の積層体。
<5>前記基材層が紙である、<1>~<4>のいずれかに記載の積層体。
<6><1>~<5>のいずれかに記載の積層体を含む、成形体。
<7>下記(i)~(iii)の工程を含む、<1>~<5>のいずれかに記載の、積層体の製造方法:
(i)ラミネート層用の樹脂を溶融押出しする工程、
(ii)前記工程(i)で得られた溶融押出し後のラミネート層用の樹脂と、別途繰り出した基材層用の基材とを接触させて、前記基材層と前記ラミネート層とを含む積層体を形成する工程、および
(iii)前記工程(ii)で得られた積層体を少なくとも1本が温調可能な2本のロールで挟み、前記積層体を構成する前記基材層と前記ラミネート層とを圧着する、圧着工程。
<8>前記工程(i)において、押出時の樹脂温度が155~175℃である、<7>に記載の積層体の製造方法。
<9>前記工程(iii)において、温調可能なロールが前記積層体のラミネート層に接する、<7>または<8>に記載の積層体の製造方法。
<10>前記工程(iii)において、温調可能なロールの温度が35~70℃である、<7>~<9>のいずれかに記載の積層体の製造方法。
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔材料〕
実施例および比較例において、以下の表1に記載の、特定の融点特性および特定の溶融粘度を有するポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート系樹脂を含む樹脂ペレット1~7を使用した。なお、前記樹脂ペレット1~4は、上述の段落〔0041〕に記載の方法により製造した。また、前記樹脂ペレット5、6は、前記KNK-005株から得られた樹脂単独を用いて製造した。前記樹脂ペレット7は、前記KNK-005ΔphaZ1::Plac-phaCReΔphaZ2,6株単独から得られた樹脂を分子量調整することなく用いて製造した。
Figure 0007230237000001
〔測定および評価方法〕
実施例および比較例における評価を、以下の方法で行った。
(示差走査熱量分析評価)
樹脂試料4~10mgをアルミパンに充填し、示差走査熱量分析器を用いて、窒素気流下、30℃から180℃まで10℃/分の速度で昇温して樹脂試料が融解した時に得られる吸熱曲線を得た。130~155℃の範囲に存在する融点ピークについて、吸熱量が最大となった融点ピークのトップ温度をTmとし、吸熱が認められなくなった温度をTmとした。Tmより高温側に別の融点ピークがある場合は、その吸熱が認められなくなった温度をTmとした。
(溶融粘度の測定方法)
口径1mm、長さ10mm、流入角90°のオリフィスを装着し、175℃に加熱したキャピログラフ(シリンダー径10mm)に樹脂試料15gを充填し、5分間予熱した後に、ピストンを10mm/minの速度で降下させた。前記オリフィスから溶融樹脂を押出す際の、ピストンにかかる応力から、剪断速度122/sでの溶融粘度を算出した。
(冷却ロールからの剥離性)
冷却ロールへのラミネート層の張り付き具合を観測した。評価基準は下記の通りとした。
<評価>
◎:4.0m/minで成形した場合、ラミネート表面に凹凸がなく、連続運転できる状態
〇:4.0m/minで成形した場合、冷却ロールから離れにくく白濁したムラがあるが、2.0m/minで成形した場合、ラミネート面に凹凸がなく連続運転はできる状態
×:2.0m/min未満での成形した場合でも、積層体が冷却ロールから離れにくくなっており、手で剥離の補助をしないと連続運転ができない状態
(ネックイン特性)
T型ダイスの横幅に対するラミネート層の横幅の割合を測定した。評価基準は下記の通りとした。
<評価>
◎:65%以上
〇:60%以上
×:60%未満。
(基材(紙)とラミネート層間の接着性)
ラミネート層にカッターナイフで、長さ30mmのクロスカットを入れた。続いて、ラミネート層のカット面に積水化学オリエンテープ No.380を貼り付け、手で剥離して、紙の剥離の様子を観察した。評価基準は下記の通りとした。
<評価>
◎:界面剥離せず、紙の凝集破壊が観察された。
○:主に紙の凝集破壊が起こったが、一部界面剥離する部分が観察された。
×:紙の凝集破壊が起こらず、界面剥離の状態が観察された。
(成形性の総合評価)
冷却ロールからの剥離性、ネックイン特性、および基材とラミネート層間の接着性を基に総合的に評価した。評価基準は下記の通りとした。
◎:×の項目がなく、◎が2つ以上
○:×の項目がない
×:×の項目が1つ以上ある。
〔実施例1〕
樹脂ペレット1を横幅:150mm、リップ開口幅:0.25mmのT型ダイスを装着した単軸押出機(東洋精機製作所製 「20C200型」ラボプラストミル)を用いて、シリンダー温度140~160℃、T型ダイ170℃に設定して、冷却ロールを60℃に温調したラミネーター(ロール径100mm)を用いて、坪量200g/mのカップ原紙の片面に厚さ30μmでラミネートして、積層体を得た。冷却ロールの速度が4.0m/minでは冷却ロールへの張り付きが起こり、連続運転が困難であったため、2.0m/minに速度を落として成形した(この場合、冷却ロールからの剥離性を○と評価した。)。続いて、得られた積層体を用いて、ネックイン特性および基材(紙)とラミネート層間の接着性を評価した。結果を表2に示す。
〔実施例2〕
樹脂ペレット1を樹脂ペレット2に変更した以外は、実施例1と同様にして、各評価項目を評価した。結果を表2に示す。
〔実施例3〕
樹脂ペレット1を樹脂ペレット3に変更した以外は、実施例1と同様にして、各評価項目を評価した。結果を表2に示す。
〔実施例4〕
樹脂ペレット1を樹脂ペレット4に変更した以外は、実施例1と同様にして、各評価項目を評価した。結果を表2に示す。
〔比較例1〕
樹脂ペレット1を樹脂ペレット5に変更した以外は、実施例1と同様にして、各評価項目を評価した。結果を表2に示す。
〔比較例2〕
樹脂ペレット1を樹脂ペレット6に変更した以外は、実施例1と同様にして、各評価項目を評価した。結果を表2に示す。
〔比較例3〕
樹脂ペレット1を樹脂ペレット7に変更した以外は、実施例1と同様にして、各評価項目を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0007230237000002
〔結果〕
表2より、実施例では、冷却ロールへのブロッキング、ネックイン特性、および基材との接着性のすべての評価項目について、良好な結果であった。
一方、比較例では、上記評価項目のすべてが良好な結果であったものはなく、上記評価項目のうち少なくとも1つの評価項目は、不良であった。
したがって、P3HB系樹脂を含む本積層体は、前記積層体を押出ラミネーションにより製造する際に、ネックイン特性および冷却ロールからのラミネート層の剥離性を改善できることが示された。また、本積層体が上記P3HB系樹脂を含むことにより、ラミネート層の表面状態が良好で、かつ、基材とラミネート層との接着性が良好となることが示された。
上述の通り、P3HB系樹脂を含む本積層体は、前記積層体を押出ラミネーションにより製造する際に、ネックイン特性および冷却ロールからのラミネート層の剥離性を改善できるうえ、ラミネート層の表面状態が良好であることから、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に利用することができる。

Claims (9)

  1. (i)ラミネート層用の樹脂を溶融押出しする工程、
    (ii)前記工程(i)で得られた溶融押出し後のラミネート層用の樹脂と、別途繰り出した基材層用の基材とを接触させて、基材層とラミネート層とを含む積層体を形成する工程、および
    (iii)前記工程(ii)で得られた積層体を少なくとも1本が温調可能な2本のロールで挟み、前記積層体を構成する前記基材層と前記ラミネート層とを圧着する、圧着工程、を含む、積層体の製造方法であり、
    前記積層体は、基材層と、前記基材層の少なくとも片面に積層されたラミネート層と、を含
    前記ラミネート層が、以下の(A)および(B)を満たす、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、積層体の製造方法:
    (A)示差走査熱量分析において、130~155℃の範囲にある結晶融解曲線のトップ温度(Tm)と、結晶融解曲線のエンド温度(Tm)との差が10℃以上であり、
    (B)175℃における溶融粘度が100~700Pa sである。
  2. 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)である、請求項1に記載の積層体の製造方法
  3. 前記ラミネート層が、押出ラミネート層である、請求項1または2に記載の積層体の製造方法
  4. 前記基材層が、生分解性を有する層である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法
  5. 前記基材層が紙である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法
  6. 前記工程(i)において、押出時の樹脂温度が155~175℃である、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  7. 前記工程(iii)において、温調可能なロールが前記積層体のラミネート層に接する、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  8. 前記工程(iii)において、温調可能なロールの温度が35~70℃である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
  9. 請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法により積層体を製造する工程を含む、成形体の製造方法
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