JP2022185708A - ロール状積層シートの製造方法 - Google Patents

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康則 岡田
Yasunori Okada
五樹 日下部
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Abstract

【課題】紙基材層と樹脂層を含むロール状積層シートの製造方法において、ロール状積層シートにおける積層シート同士のブロッキングを抑制し、樹脂層表面への紙基材の凹凸の転写を低減すること。【解決手段】積層シートをロール状に巻回してなるロール状積層シートの製造方法。前記積層シートは、紙基材層と、その片面に積層された、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む樹脂層を有する。紙基材を連続的に搬送しながら、該紙基材の片面に、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む水系コーティング液を塗布し、得られた塗布膜を、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の融点以上に加熱して前記樹脂層を形成し、積層シートの紙基材層側表面に対し冷却媒体を吹き付けた後、前記積層シートをロール状に巻き取る。【選択図】図1

Description

本発明は、紙基材層と樹脂層が積層されているロール状の積層シートの製造方法に関する。
近年、廃棄プラスチックによる環境問題がクローズアップされている。中でも、廃棄プラスチックによる海洋汚染は深刻であり、自然環境下で分解する生分解性プラスチックの普及が期待されている。
そのような生分解性プラスチックとしては、種々のものが知られているが、中でも、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、多くの微生物種の細胞内にエネルギー貯蔵物質として生産、蓄積される熱可塑性ポリエステルであり、土中だけでなく、海水中でも生分解が進行しうる材料であるため、上記の問題を解決する素材として注目されている。
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む層を、紙基材に積層してなる積層体は、樹脂と基材の双方が優れた生分解性を有する材料であるため、環境保護の観点から極めて有望である(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献2では、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂として、重量平均分子量が特定範囲内にある3-ヒドロキシブチレートと3-ヒドロキシヘキサノエートとの共重合体を含む水分散液を、紙に塗布して乾燥させることで、前記積層体を製造することが記載されている。
国際公開第01/094697号 国際公開第2021/075412号
紙基材層と樹脂層が積層されてなる積層体を製造するにあたっては、生産性向上のため、長尺の紙を連続的に搬送しながら紙の表面に樹脂層を形成する方法が望ましい。
本発明者らは、特許文献2に開示されているようにポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む水分散液を紙に塗布し乾燥させる方法を採用して、連続的に前記積層シートを製造し、該積層シートをロール状に巻き取ってロール状の積層シートを得ることを試みた。
しかしながら、得られたロール状の積層シートから積層シートを繰り出したところ、積層シート同士がブロッキングしており(即ち、巻き取ることで接触した紙基材層と樹脂層が付着し)、その結果、紙の凹凸が樹脂層表面に転写され、外観上又は物性上問題があることが判明した。
本発明は、上記現状に鑑み、紙基材にポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む水系コーティング液を塗布した後、ロール状に巻き取ることによる、紙基材層と樹脂層を含むロール状積層シートの製造方法であって、ロール状積層シートにおける積層シート同士のブロッキングを抑制し、樹脂層表面への紙基材の凹凸の転写を低減可能な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、紙基材にポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む水系コーティング液を塗布し、該樹脂の融点以上に加熱して樹脂層を形成した後、紙基材層側表面に対し冷却媒体を吹き付けてから、積層シートをロール状に巻き取ることで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、積層シートをロール状に巻回してなるロール状積層シートの製造方法であって、前記積層シートは、紙基材層、及び、該紙基材層の片面に積層された、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む樹脂層を有し、前記製造方法は、紙基材を連続的に搬送しながら、該紙基材の片面に、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む水系コーティング液を塗布して、紙基材層の片面に塗布膜を形成する工程、前記塗布膜を、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の融点以上に加熱し、前記樹脂層を形成して前記積層シートを得る工程、前記積層シートの紙基材層側表面に対し、冷却媒体を吹き付ける工程、及び、前記積層シートをロール状に巻き取って前記ロール状積層シートを得る工程、を含む、製造方法に関する。
好ましくは、前記冷却媒体が水である。
好ましくは、前記冷却媒体の温度は30℃以下である。
好ましくは、前記冷却媒体の吹き付け量は、前記積層シートの単位面積あたり、0.05~0.2mL/cmである。
前記製造方法は、前記塗布膜を形成する工程の後、前記冷却媒体を吹き付ける工程の前に、前記積層シートを35~70℃で冷却する工程をさらに含んでもよい。
好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は重量平均分子量が10万~70万である。
好ましくは、前記水性コーティング液中の前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の固形分濃度が、25~65重量%である。
好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、示差走査熱量分析による結晶融解曲線において、100~150℃の範囲に少なくとも1つのピークトップ温度(Tma)と、150~170℃の範囲に少なくとも1つのピークトップ温度(Tmb)を有し、かつ、TmaとTmbの温度差が10℃以上である。
好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、少なくとも1種類のポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含む。
本発明によれば、紙基材にポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む水系コーティング液を塗布した後、ロール状に巻き取ることによる、紙基材層と樹脂層を含むロール状積層シートの製造方法であって、ロール状積層シートにおける積層シート同士のブロッキングを抑制し、樹脂層表面への紙基材の凹凸の転写を低減可能な製造方法を提供することができる。本発明の好適な態様によると、樹脂層表面への紙基材の凹凸の転写が低減されることに加えて、ロール状積層シートから積層シートを繰り出す際の剥離音を低減することもできる。
本発明の一態様に係る製造方法を構成する工程を示すチャート 本発明の別の態様に係る製造方法を構成する工程を示すチャート
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る製造方法では、積層シートをロール状に巻回してなるロール状積層シートを製造する。まず、積層シートについて説明する。
(積層シート)
積層シートは長尺の帯状のものである。ロール状積層シートは、前記積層シートを、例えば円筒状のローラーを軸にして、その周囲に複数回、巻回することで形成されたものである。
前記積層シートは、長尺で帯状の紙基材層と、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む樹脂層とを有する。前記樹脂層は、前記紙基材層の片面に積層されている。前記積層シートの片面は、樹脂層の表面によって構成され(即ち樹脂層側表面)、もう一方の面は、紙基材層の表面によって構成されること(即ち紙基材層側表面)が好ましい。前記積層シートは、樹脂層と紙基材層の二層から構成されることが好ましい。
(紙基材層)
紙基材層は、巻回可能な程度の柔軟性を有するものである限り、一般的な紙から形成されるものであってよい。
紙の種類は、特に限定されず、積層シートの用途に応じて適宜選択することができるが、例えば、カップ原紙、クラフト紙、上質紙、薄葉紙、グラシン紙、板紙等が挙げられる。紙は、必要に応じて、耐水剤、撥水剤、無機物等が添加されたものであってもよい。
紙の単位あたりの重量(目付)は、特に限定されないが、50~400g/mが好ましく、100~300g/mがより好ましく、150~250g/mがさらに好ましい。目付をこの範囲とすることで、樹脂層の冷却に充分な量の冷却媒体を紙基材中に含ませることが可能となる。この範囲内では、冷却媒体の紙基材中の拡散が速く、樹脂層の十分な冷却効果が得られやすくなる。
紙の樹脂層を形成する面には、予め、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、各種樹脂又は無機成分の積層によるアンカーコート処理、酸素バリアコーティング、水蒸気バリアコーティング等の表面処理が施されたものであってもよい。これらの表面処理は、単独で行ってもよいし、複数の表面処理を併用してもよい。
(樹脂層)
前記樹脂層は、少なくともポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む。本願明細書において、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂(以下、P3HB系樹脂ともいう)は、3-ヒドロキシブチレートを繰り返し単位とする脂肪族ポリエステル樹脂である。
P3HB系樹脂は、3-ヒドロキシブチレートのみを繰り返し単位とするポリ(3-ヒドロキシブチレート)であってもよいし、3-ヒドロキシブチレートと他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体であってもよい。
P3HB系樹脂は、単独重合体と1種または2種以上の共重合体との混合物であってもよいし、2種以上の共重合体の混合物であってもよい。共重合の形式は特に限定されず、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等であり得る。
P3HB系樹脂としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)(P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)(P3HB3HO)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)(P3HB3HOD)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)(P3HB3HD)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HV3HH)等が挙げられる。中でも、工業的に生産が容易であることから、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB4HBが好ましい。
また、繰り返し単位の組成比を変えることで、融点、結晶化度を変化させ、結果として、ヤング率、耐熱性等の物性を変化させることができ、かつ、ポリプロピレンとポリエチレンとの間の物性を付与することが可能であること、および上記したように工業的に生産が容易であり、物性的に有用なプラスチックであるという観点から、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシヘキサン酸の共重合体であるP3HB3HHがより好ましい。また、P3HB3HHは、融点を低くすることができ、低温での成形加工が可能となる観点からも好ましい。
本実施形態において、P3HB系樹脂は、少なくとも1種類のP3HB3HHを含むことが好ましく、構成モノマーの含有割合が互いに異なる少なくとも2種類のポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含むことが特に好ましい。また、少なくとも1種類のP3HB3HHと、P3HBを含むことも好ましい。
P3HB系樹脂は微生物によって生産され得る。該微生物としては、P3HB系樹脂の生産能を有する微生物であれば特に限定されない。例えば、P3HB生産菌としては、1925年に発見されたBacillus megateriumが最初で、他にもカプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator)(旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha))、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)等の天然微生物が挙げられる。これらの微生物ではP3HBが菌体内に蓄積されることが知られている。
また、3-ヒドロキシブチレートとその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体の生産菌としては、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が知られている。特に、P3HB3HHに関し、P3HB3HHの生産性を上げるために、P3HA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましい。これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また上記以外にも、生産したいP3HB系樹脂に合わせて、各種P3HB系樹脂合成関連遺伝子を導入した遺伝子組換え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件の最適化をしてもよい。
また、P3HB3HHは、例えば、国際公開第2010/013483号公報に記載された方法によっても製造され得る。P3HB3HHの市販品としては、例えば、株式会社カネカ「カネカ生分解性ポリマーPHBH(登録商標)」等が挙げられる。
P3HB3HH中の各構成モノマーの組成比は、3HB/3HH=95~70/5~30(モル%/モル%)であることが好ましく、3HB/3HH=90~82/10~18(モル%/モル%)であることがより好ましい。P3HB3HH中の3HHの組成比が5モル%以上であると、後述する融解特性を有する樹脂層を容易に形成することができる。また、3HHの組成比が30モル%以下であるP3HB3HHは、結晶化速度が遅くなりすぎず、製造が比較的容易である。なお、3HHの組成比は、P3HB3HHをNMRで測定することにより行われる。
3HHの組成比が5~30モル%であるP3HB3HHは、培養により得ることができ、単独のP3HB系樹脂として使用してもよいし、当該P3HB3HHを、3HHの組成比が5モル%未満であるP3HB3HH又はP3HB(3HBの単独重合体)と併用してもよい。この併用によると、単独使用の場合と比較して、ロール状積層シートにおけるブロッキングを抑制することが容易となる。3HHの組成比が5モル%未満であるP3HB3HH中の3HHの組成比は、3モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが更に好ましい。
3HHの組成比が5モル%未満であるP3HB3HH又はP3HBの配合量は、特に限定されないが、前記樹脂層に含まれるP3HB系樹脂全体に対して1~50重量%であることが好ましく、3~30重量%がより好ましく、4~20重量%がさらに好ましく、5~15重量%が特に好ましい。
微生物産生P3HB3HHは、ランダム共重合体である。3HH組成比の調整は、例えば、菌体の選択、原料となる炭素源の選択、3HH組成比が異なるP3HB3HHのブレンド、3HBの単独重合体のブレンド等により行われ得る。
本実施形態によると、P3HB系樹脂の重量平均分子量は、10万以上であることが好ましく、15万以上がより好ましく、20万以上が更に好ましい。P3HB系樹脂の重量平均分子量が10万以上であると、樹脂層の機械強度が高く、積層シートを2次加工する際に折り曲げなどをしても、樹脂層が割れにくいという利点がある。
また、P3HB系樹脂の重量平均分子量は、70万以下であることが好ましく、60万以下がより好ましく、55万以下が更に好ましい。P3HB系樹脂の重量平均分子量が70万以下であると、樹脂の結晶化が比較的速く、ロール状積層シートにおけるブロッキングを抑制することができる。また、樹脂の溶融粘度が高くなりすぎず、後述する加熱工程で樹脂粒子間の融着が進みやすく、樹脂層でのピンホールの発生を抑制することもできる。
なお、P3HB系樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC-101」)によって、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K-804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。
前記樹脂層は、発明の効果を奏する範囲で、P3HB系樹脂以外の樹脂を1種または2種以上含んでいてもよい。そのような他の樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバテートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレート等の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の添加量は、樹脂層の生分解性を担保するために、P3HB系樹脂100重量部に対して、10重量部以下が好ましい。前記樹脂層は、P3HB系樹脂以外の樹脂を含有しなくともよい。
前記樹脂層は、発明の効果を奏する範囲で、当該技術分野において通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機充填剤、もみがら、木粉、新聞紙等の古紙、各種デンプン、セルロース等の有機充填剤、顔料、染料等の着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤、粘着付与剤、フィラー、薬剤等が挙げられる。添加剤としては、1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
本実施形態によると、前記P3HB系樹脂は、示差走査熱量分析による結晶融解曲線において、100~150℃の範囲に少なくとも1つのピークトップ温度(Tma)と、150~170℃の範囲に少なくとも1つのピークトップ温度(Tmb)を有し、かつ、TmaとTmbの温度差が10℃以上である、という融解特性を有することが好ましい。前記樹脂層がこのような融解特性を有することにより、ロール状積層シートにおけるブロッキングを更に低減することができる。
前記樹脂層が150~170℃という比較的高温領域に融点ピークを有することによって、Tmbを有する樹脂結晶が結晶核として作用することで、加熱工程後のP3HB系樹脂の結晶化が速くなり、ロール状積層シートにおけるブロッキングを更に低減することができる。
TmaとTmbの温度差は、10℃以上であり、好ましくは、15℃以上であり、より好ましくは、20℃以上であり、さらに好ましくは、25℃以上である。前記温度差が10℃以上であると、ロール状積層シートにおけるブロッキングを更に低減することができる。TmaとTmbの温度差の上限は特に限定されないが、製造の容易さの観点から、例えば、60℃以下であり、より好ましくは、50℃以下である。
本願明細書において、示差走査熱量分析における結晶融解曲線のピークトップ温度は、以下の通り定義される。測定対象の樹脂2~5mgをアルミパンに充填し、示差走査熱量分析器を用いて、窒素気流下、20℃から190℃まで10℃/分の速度で昇温して、前記樹脂を融解して結晶融解曲線を得る。得られた結晶融解曲線において、100~150℃の範囲に存在する融点ピークのトップ温度をTmaとし、150~170℃の範囲に存在する融点ピークのトップ温度をTmbとする。また、100~150℃の範囲に複数の融点ピークが認められる場合は、高さが最も高いピークのトップ温度をTmaとし、150~170℃の範囲に複数の融点ピークが認められる場合は、高さが最も高いピークのトップ温度をTmbとする。
前記樹脂層におけるP3HB系樹脂の単位あたりの重量(目付)は、好ましくは、5~100g/mであり、より好ましくは、10~50g/mであり、特に好ましくは、15~30g/mである。前記樹脂層におけるP3HB系樹脂の単位あたりの重量が上記範囲内であると、ピンホール等の欠陥を防ぎ、使用に耐え得る程度の強度を樹脂層に持たせることができ、耐水性等の機能を効率よく発現することができる。なお、前記樹脂層におけるP3HB系樹脂の単位あたりの重量は、実施例に記載の方法で測定される。
前記樹脂層の厚さは、特に限定されないが、紙基材層への吸水を防止しながら、充分な柔軟性を確保する観点から、5~100μmが好ましく、10~30μmがより好ましい。
次に、本実施形態に係る製造方法を、各工程ごとに説明する。
本実施形態の一態様に係る製造方法は、図1に示すように、紙基材の繰り出し工程、コーティング液の塗布工程、加熱工程、冷却媒体の吹き付け工程、及び、積層シートの巻き取り工程を、この順で実施することにより行うことができる。各工程は、ラインにて紙基材を搬送しながら、連続的に実施することが好ましい。
(繰り出し工程)
まず、原反として、ロール状に巻回された紙基材を準備する。このロールから紙基材を、一般的な紙の搬送装置を用いて、連続的に繰り出しながら搬送する。このように紙基材を搬送しながら、次の塗布工程以下を連続的に行う。
また、紙基材を連続的に抄紙した後、紙基材をロール状に巻回することなく、そのまま搬送しながら、次の塗布工程以下を連続的に行うこともできる。
紙基材の搬送速度は特に限定されず、生産性を考慮して適宜設定できるが、例えば、1~200m/minであってよい。
次の塗布工程の前に、紙基材に対し、上述したコロナ処理等の表面処理を施す工程を実施してもよい。
(コーティング液の塗布工程)
搬送されている紙基材の片面に対し、P3HB系樹脂を含む水系コーティング液を塗布して、紙基材層の片面に塗布膜を形成する。この塗布工程は連続的に行う。
この塗布工程は、一般的な紙の塗工機を用いて実施することができる。塗工機の種類としては特に限定されないが、例えば、スリットコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーター等の公知の塗工機が挙げられる。塗工後、マシンカレンダーやソフトカレンダー等を用いて平坦化処理を行ってもよい。
P3HB系樹脂を含む水系コーティング液は、特に限定されないが、以下の方法により製造することができる。まず、微生物の菌体内にP3HB系樹脂を産生させた後、P3HB系樹脂を含有する微生物菌体を水性分散体の状態で破砕して菌体内のP3HB系樹脂を分離する。
一般に、微生物菌体からのP3HB系樹脂の回収にあたっては、クロロホルム等の有機溶剤を用いてP3HB系樹脂を溶解させ、メタノール、ヘキサン等のP3HB系樹脂不溶性溶媒でP3HB系樹脂を沈殿回収する方法等が使用される。しかし、当該方法では、得られるP3HB系樹脂が微粒子状にならず、P3HB系樹脂を微粒子状にする工程が追加的に必要となり、経済的に不利である。これに対し、P3HB系樹脂を含有する微生物菌体を水性分散体の状態で破砕して菌体内のP3HB系樹脂を分離する工程によると、微生物菌体内に産生したP3HB系樹脂について、微細な粒径をかなりの程度維持したP3HB系樹脂微粒子の水性分散液を得ることができる。
P3HB系樹脂を含有する微生物菌体を水性分散体の状態で破砕して菌体内のP3HB系樹脂を分離する際には、P3HB系樹脂を含有する微生物菌体を撹拌しながら、破砕およびアルカリ添加を同時に行うことが好ましい。この方法の利点は、(i)微生物菌体から漏洩したP3HB系樹脂以外の菌体構成成分による分散液の粘度上昇を防げること、(ii)菌体分散液の粘度上昇を防ぐことによってpHのコントロールが可能になり、さらにアルカリを連続的あるいは断続的に添加することにより低いアルカリ濃度で処理を行うことができること、および(iii)P3HB系樹脂の分子量低下を抑制でき、高純度のP3HB系樹脂が分離できることである。
アルカリ添加後の菌体分散液のpHは、9~13.5であることが好ましい。pHが9以上であると、P3HB系樹脂が菌体から分離し易く、pHが13.5以下であると、P3HB系樹脂の分解が抑えられる傾向がある。
微生物菌体の破砕には、超音波で破砕する方法や、乳化分散機、高圧ホモジナイザー、ミル等を用いる方法がある。中でも、アルカリ処理によりP3HB系樹脂を菌体内から溶出させ、主に粘度上昇の原因となる核酸を効率よく破砕し、細胞壁、細胞膜、不溶性蛋白質等のP3HB系樹脂以外の不溶性物質を充分に分散できるという点で、乳化分散機、例えば、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)、クリアーミックス(エムテック社製)、エバラマイルダー(エバラ社製)等を用いることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
また、微生物菌体の破砕およびアルカリ添加時の温度条件は、好ましくは、室温~50℃の範囲内である。上記の温度条件が50℃を超えると、P3HB系樹脂の分解が起こりやすくなるため、室温付近が好ましい。また、室温未満にしようとすると冷却操作が必要となるので、経済的ではない。
微生物菌体を破砕およびアルカリ処理することにより得られた分散液から遠心分離により沈殿物を得、この沈殿物を水洗浄、必要であればメタノール洗浄を行い、最後に水を適当量添加して、所望の固形分濃度のP3HB系樹脂を含む水性コーティング液を得ることができる。
得られた水性コーティング液に機械的剪断を与え、一部凝集したP3HB系樹脂の粒子を相互に分離させる工程を行ってもよい。機械的剪断を与えることは、凝集物を実質的に無くし、均一な粒径のP3HB系樹脂を含む水性コーティング液を得ることができるという点で好ましい。水性コーティング液の機械的剪断は、例えば、攪拌機、ホモジナイザー、超音波等を用いて行うことができる。この時点では、P3HB系樹脂粒子の凝集はそれほど強固ではないため、簡便性の点から、通常の撹拌翼を備える撹拌機を用いて行うことが好ましい。
前記水性コーティング液中のP3HB系樹脂の固形分濃度は、25~65重量%であることが好ましく、30~55重量%がより好ましく、35~50重量%が特に好ましい。前記水性コーティング液中のP3HB系樹脂の固形分濃度が上記範囲内であると、コーティング液の粘度が高すぎず、均一な塗布が可能であり、また必要な塗膜の厚みを保持できることにより、塗膜の欠陥を生じさせにくいという効果を奏する。
前記水性コーティング液中のP3HB系樹脂の平均粒径は、P3HB系樹脂の生産性とコーティング時の均一性を両立する観点から、例えば、0.1~50μmであり、好ましくは、0.5~30μmであり、より好ましくは、0.8~20μmである。平均粒径が0.1μm以上であることにより、微生物産生および化学合成法のいずれの方法でも、容易にP3HB系樹脂を得ることができる。平均粒径が50μm以下であることにより、塗布むらの発生を回避することができる。
なお、水性コーティング液中のP3HB系樹脂の平均粒径は、マイクロトラック粒度計(日機装製、FRA)等の汎用の粒度計を用い、P3HB系樹脂を含む水懸濁液を所定濃度に調整し、正規分布の全粒子の50%蓄積量に対応する粒径として、算出できる。
前記水性コーティング液は、乳化剤を含まなくともよいが、当該コーティング液を安定化させるため、乳化剤を含むことが好ましい。乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ソーダ、オレイン酸ソーダ等のアニオン性界面活性剤、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の水溶性高分子等が挙げられる。
乳化剤の添加量は、特に限定されないが、P3HB系樹脂の固形分に対し、1~10重量%が好ましい。乳化剤の添加量が1重量%以上であると、乳化剤による安定化効果が得られる傾向があり、10重量%以下であると、P3HB系樹脂への過剰な乳化剤の混入による物性低下、着色等を回避することができる。
前記乳化剤は、微生物菌体の破砕・アルカリ処理後、遠心分離、水洗浄を行った後の水性分散液に添加することができる。メタノール洗浄を行う場合は、メタノール洗浄後、適当量の水を添加してP3HB系樹脂の固形分濃度を調整する前または調整した後に、添加することができる。
(加熱工程)
加熱工程では、塗布工程によって紙基材層の片面に形成された塗布膜を、P3HB系樹脂の融点以上に加熱することによって、樹脂層を形成し、積層シートを得る。この工程では、水を蒸発させると共に、水系コーティング液に含まれていたP3HB系樹脂粒子同士を融着させて、比較的均一性が高い樹脂層を形成することができる。前述のP3HB系樹脂の融点とは、前記示差走査熱量分析における結晶融解曲線において最も高い温度のピークトップ温度を指す。例えば、前記TmaとTmbが存在する場合には、Tmbのことを指す。
この加熱工程は、紙の塗工において一般的に使用される装置を用いて連続的に実施することができる。具体的には、特定温度に調節された乾燥炉内に、片面に塗布膜を有する紙基材を通過させることで実施できる。また、特定温度に調節されたロールに、片面に塗布膜を有する紙基材を接触させる、又はそのようなロール間に挟み込むことでも、実施可能である。
加熱工程における加熱温度は、P3HB系樹脂の融点以上であればよいが、P3HB系樹脂の融点の10~40℃上の温度であることが好ましく、20~30℃上の温度であることがさらに好ましい。具体的には、前記加熱温度は、160℃以上であることが好ましく、165℃以上がより好ましく、170℃以上が特に好ましい。また、前記加熱温度は200℃以下であることが好ましい。前記加熱温度が200℃以下であると、紙基材層の過度な乾燥やP3HB系樹脂の熱分解を原因とする、積層シートの機械強度の低下や、破断などの問題を回避することができる。
なお、加熱工程における加熱温度とは、積層シートが実際に示す温度ではなく、上記乾燥炉又はロールなどの装置の設定温度のことを指す。
加熱工程における加熱時間は、加熱工程による効果を勘案して適宜設定することができるが、例えば3秒~1分が好ましく、5~45秒がより好ましく、10~30秒がさらに好ましい。加熱時間は、積層シートの搬送速度を調節することによって制御可能である。
(冷却媒体の吹き付け工程)
冷却媒体の吹き付け工程では、加熱工程で得られた積層シートの紙基材層側表面に対し、冷却媒体を吹き付けて、積層シートを冷却する。これによって、樹脂層を効率よく冷却して、P3HB系樹脂の結晶化を促進することができる。この工程を行うことによって、ロール状積層シートにおいて、積層シート同士のブロッキングが抑制され、樹脂層表面への紙基材の凹凸の転写を低減することが可能となる。この吹き付け工程も、搬送されている積層シートに対して連続的に行う。
冷却媒体の吹き付けとは、冷却媒体をミスト状にして、対象面に噴霧することをいう。冷却媒体を噴霧することにより、少ない使用量で、樹脂層をムラ無く均一に冷却することが可能となる。当該冷却媒体の吹き付けは、例えば、非接触塗布を特徴とする市販の液体塗布装置を用いて実施することができる。
これに対し、ロールの表面に冷却媒体の薄膜を形成し、このロール表面を対象面に接触させることで樹脂層を冷却する方法も考えられる。しかし、この方法では、ロール表面に均一な冷却媒体の薄膜を形成するために冷却媒体の使用量が多くなってしまう。結果、製造後のロール状積層シートにおいて冷却媒体の含有量にばらつきが生じ、積層シートの二次加工性が低下する問題が生じる。
本実施形態によると、冷却媒体の吹き付けは、積層シートの樹脂層側表面ではなく、積層シートの紙基材層側表面に対して行う。紙基材層の表面に冷却媒体を吹き付けることで、水分が紙基材層の内部に浸透して紙基材層の温度が低下するため、紙基材層側から均一に樹脂層が冷却され、P3HB系樹脂の結晶化が促進されることで、ロール状積層シートにおけるブロッキングを抑制することができると推測される。
これに対し、冷却媒体を積層シートの樹脂層側表面に吹き付けた場合には、後述する比較例2で示すように、ロール状積層シートにおけるブロッキングを十分に抑制することができない。これは、冷却媒体を樹脂層側表面に吹き付けると、樹脂層が冷却媒体をはじくために、樹脂層を均一に冷却できないことが原因と推測される。また、この方法によると、吹き付けた冷却媒体の液滴の痕が樹脂層の表面に残って外観を損ねたり、冷却媒体の液滴が装置内で落下して、作業環境が悪化する不利益もある。
冷却媒体の種類は、紙基材層に浸透して積層シートを冷却可能な液体であれば特に限定されないが、低コスト、及びロール状積層シートに与える影響が少ないことから、水が好ましい。水には冷却機能を損なわない範囲で、グリセリン、プロピレングリーコールなどの保湿剤、各種香料、防腐剤などの添加剤を含んでもよい。
冷却媒体の温度は、積層シートを冷却してブロッキング抑制効果が得られる温度であれば良いが、具体的には、良好なブロッキング抑制効果を得る観点から、50℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。冷却媒体の温度の下限は特に限定されないが、結露防振の観点から、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。特に、調温を行っていない、常温(10~30℃程度)の冷却媒体を使用することが好ましい。
冷却媒体の吹き付け量は、ブロッキング抑制効果や、製造後のロール状積層シートにおける冷却媒体の含有量などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。具体的には、積層シートの単位面積あたり、0.01~0.5mL/cmであることがより好ましく、0.05~0.2mL/cmであることが好ましい。吹き付け量がこの範囲内にあると、ロール状積層シートのブロッキング抑制効果を得ることができると共に、吹き付け後に紙基材に吸収されなかった冷却媒体の液滴の痕が表面に残って外観を損ねるなどの問題を回避できる。
(積層シートの巻き取り工程)
以上のように冷却媒体を吹き付けた後の積層シートを、巻き取りローラーに巻き取ることによって、ロール状の積層シートを得る。
巻き取り時には、冷却媒体の吹き付けによってP3HB系樹脂の結晶化が進行しているために、巻き取り後の積層シート同士のブロッキングは抑制され、得られたロール状積層シートから積層シートを再度繰り出した時に、樹脂層表面への紙基材の凹凸の転写は低減されている。
本実施形態の別の態様に係る製造方法は、図2に示すように、紙基材の繰り出し工程、コーティング液の塗布工程、加熱工程、事前冷却工程、冷却媒体の吹き付け工程、及び、積層シートの巻き取り工程を、この順で実施することにより行うことができる。本実施形態は、加熱工程の後、冷却媒体の吹き付け工程の前に事前冷却工程を実施すること以外は、図1に示した実施形態と同じである。以下では事前冷却工程について説明する。
(事前冷却工程)
事前冷却工程では、加熱工程で得られた積層シートを、35~70℃で冷却する。冷却媒体の吹き付け工程の前に、この事前冷却工程を実施することで、ロール状積層シートのブロッキングを更に抑制することができる。これは、冷却媒体の吹き付け前に、事前冷却工程によって積層シートの温度を低下させておくことで、その後に噴霧した冷却媒体が蒸発するのを抑え、冷却温度に近い温度の冷却媒体が速やかに紙基材の内部に浸透することで、紙基材層側から、より効率よく樹脂層が冷却され、P3HB系樹脂の結晶化を更に促進できるためと推測される。
この事前冷却工程は、紙の塗工において一般的に使用される装置を用いて連続的に実施することができる。具体的には、特定温度に調節された乾燥炉内に、片面に塗布膜を有する紙基材を通過させることで実施できる。また、特定温度に調節されたロールに積層シートを接触させる、又は当該ロール間に挟み込むことでも、実施可能である。
事前冷却工程における冷却温度は、上述の通り35~70℃であることが好ましいが、40~60℃がより好ましい。
なお、事前冷却工程における冷却温度とは、積層シートが実際に示す温度ではなく、上記乾燥炉又はロールなどの装置の設定温度のことを指す。
事前冷却工程における冷却時間は、事前冷却工程による効果を勘案して適宜設定することができるが、例えば3秒~1分が好ましく、5~30秒がより好ましく、10~20秒がさらに好ましい。冷却時間は、積層シートの搬送速度を調節することによって制御可能である。
(用途)
本実施形態によって得られるロール状積層シートから繰り出した積層シートは、所望の大きさ及び形状にカットして使用することができる。
カットされた積層シートは、二次加工することにより、各種成形体とすることができる。そのような成形体としては、例えば、チューブ、板、棒、包装材料(例えば、袋)、容器(例えば、ボトル容器)、部品等が挙げられる。特に、前記成形体は、ショッピングバッグ、各種製袋、食品・菓子包装材、カップ、トレー、カートン等の各種包装容器資材として(換言すれば、食品、化粧品、電子、医療、薬品等の各種分野で)、好適に利用することができる。また、前記成形体は、紙基材の片面に、基材への高い接着性および良好な耐熱性を有する樹脂層が形成されているため、液体を入れる容器、特に、即席麺、即席スープ、コーヒー等の飲食品カップ、総菜、弁当、電子レンジ食品等に用いるトレー等、温かい内容物を入れる容器として、特に好適に利用することができる。
前記2次加工は、当該技術分野で公知である任意の方法、例えば、各種製袋機、充填包装機等を用いて行うことができる。また、紙カップ成型機、打抜き機、函機等の装置を用いて加工することもできる。これらの加工機において、積層シートの接着方法は公知の技術を使用することができ、例えば、ヒートシール法、インパルスシール法、超音波シール法、高周波シール法、ホットエアシール法、フレームシール法等が使用できる。特に前記成形体は、ヒートシール法を用いて2次加工されたものであることが好ましい。当該ヒートシールは、紙基材層と樹脂層の間で実施してもよいし、樹脂層間で実施してもよい。
前記成形体は、その物性を改善するために、当該成形体とは異なる材料から構成される別の成形体(例えば、繊維、糸、ロープ、織物、編物、不織布、紙、フィルム、シート、チューブ、板、棒、容器、袋、部品、発泡体等)と複合化することもできる。これらの材料も、生分解性であることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
(樹脂目付の測定方法)
各実施例及び比較例で得られたコート紙を10cm×10cmに切り出し、重量を測定し、その重量値から原紙の重量を差し引いて、100倍した値を樹脂目付の値とした。
(ブロッキング評価)
各実施例及び比較例で得られたロール状のコート紙を1日室温で養生した後、再度繰り出し、樹脂層表面を目視で観察し、下記基準によって評価した。
<評価>
◎:繰り出しの際に剥離音がなく、かつ、樹脂層表面に紙の凹凸の転写が認められない状態
〇:繰り出しの際にごくわずかな剥離音があるが、樹脂層表面に顕著な紙の凹凸の転写が認められない状態
△:樹脂層表面の一部にのみ、紙の凹凸の転写が認められる状態
×:樹脂層表面の全面に、紙の凹凸の転写が認められる状態
(P3HB3HH水分散液の製造方法)
国際公開第2015/146195号記載の方法に準じて、3-ヒドロキシヘキサノエート単位の含有割合が11モル%(重量平均分子量55万)で、100~150℃の範囲に存在する融点ピークのトップ温度Tmaが110℃、150~170℃の範囲に存在する融点ピークのトップ温度Tmbが160℃であるP3HB3HHを、固形分濃度で50重量%含む水分散液を得た。
TmaとTmbは、得られた水分散液を60℃の熱風乾燥機で乾固して得た乾固物2~5mgをアルミパンに充填し、示差走査熱量分析器を用いて、窒素気流下、20℃から190℃まで10℃/分の速度で昇温して乾固物を融解させて測定した。
(水性コーティング液の製造方法)
P3HB3HH水分散液に含まれる樹脂100重量部に対し、部分鹸化ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレポバールPVA205)が3重量部となるように、5%水溶液を加えて撹拌し、P3HB3HHを固形分濃度で40重量%含む水性コーティング液を得た。
〔実施例1〕
原反繰り出し機からコーティング部に連続的に供給している目付200g/mのカップ原紙の片面に、乾燥後の樹脂目付30g/mになるようにスリットコーターを用いて水性コーティング液をコーティングした後、通紙速度を調節して、190℃に設定した乾燥炉中で10秒間加熱して樹脂層を形成した。
次いで、インラインで、ローターダンプニング(WEKO社薬液塗布装置、ニッカ株式会社提供)で噴霧量が0.05cc/cmとなるように水(水温は常温)を紙側表面に噴霧した後、コート紙をロール状に巻き取った。巻き取り長は200mとした。
得られたコート紙についてブロッキングを評価した。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
水の噴霧量を0.1cc/cmに変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られたコート紙についてブロッキングを評価した。結果を表1に示す。
〔実施例3〕
原反繰り出し機からコーティング部に連続的に供給している目付200g/mのカップ原紙の片面に、乾燥後の樹脂目付30g/mになるようにスリットコーターを用いて水性コーティング液をコーティングした後、通紙速度を調節して、190℃に設定した乾燥炉中で10秒間加熱して樹脂層を形成した。
次いで、インラインで、40℃に設定した乾燥炉中で10秒間事前冷却した後、ローターダンプニングで噴霧量が0.1cc/cmとなるように水(水温は常温)を紙側表面に噴霧した後、コート紙をロール状に巻き取った。巻き取り長は200mとした。
得られたコート紙についてブロッキングを評価した。結果を表1に示す。
〔実施例4〕
目付180g/mのカップ原紙を用いた以外は、実施例3と同様に行った。得られたコート紙についてブロッキングを評価した。結果を表1に示す。
〔実施例5〕
目付230g/mのカップ原紙を用い、乾燥機の設定温度を180℃に、水の噴霧量を0.2cc/cmに変更した以外は、実施例3と同様に行った。得られたコート紙についてブロッキングを評価した。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
原反繰り出し機からコーティング部に連続的に供給している目付200g/mのカップ原紙の片面に、乾燥後の樹脂目付30g/mになるようにスリットコーターを用いて水性コーティング液をコーティングした後、通紙速度を調節して、190℃に設定した乾燥炉中で10秒間加熱して樹脂層を形成した。次いで、水を噴霧せずに、コート紙をロール状に巻き取った。巻き取り長は200mとした。得られたコート紙についてブロッキングを評価した。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
原反繰り出し機からコーティング部に連続的に供給している目付200g/mのカップ原紙の片面に、乾燥後の樹脂目付30g/mになるようにスリットコーターを用いて水性コーティング液をコーティングした後、通紙速度を調節して、190℃に設定した乾燥炉中で10秒間加熱して樹脂層を形成した。次いで、インラインで、ローターダンプニングで噴霧量が0.1cc/cmとなるように水(水温は常温)を樹脂層面側に噴霧し、コート紙をロール状に巻き取った。巻き取り長は200mとした。得られたコート紙についてブロッキングを評価した。結果を表1に示す。
Figure 2022185708000002
〔結果〕
表1に示す通り、加熱工程後にコート紙の紙側表面に水を噴霧してからコート紙を巻き取った実施例1~5では、コート紙のブロッキングが抑制され、樹脂層への紙の凹凸の転写が少なく、樹脂層表面の外観を良好に保つことができた。これは、紙側表面に水を噴霧することで、水分が紙の内部に浸透して、紙層側から均一に樹脂層を冷却して、コート紙を巻き取るまでにポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の結晶化を促進できたためと推測される。
また、実施例1~5の中でも実施例3~5では、加熱工程後に40℃に事前冷却してから、紙側表面に水を噴霧することで、コート紙のブロッキングがより抑制され、樹脂層への紙の凹凸の転写が認められなかった。
一方、水を噴霧しなかった比較例1では、コート紙のブロッキングが生じ、樹脂層への紙の凹凸の転写が全面に観察された。これは、コート紙を巻き取るまでのポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の結晶化が不十分であり、巻き取ることで接触した紙面と樹脂層面が付着してしまうことが原因と推測される。また、コート紙の紙面側ではなく、樹脂層面側に水を噴霧した比較例2でも、コート紙のブロッキングが生じ、樹脂層への紙の凹凸の転写が全面に観察された。樹脂層面側への水の噴霧は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の結晶化を十分に促進できないためと推測される。

Claims (9)

  1. 積層シートをロール状に巻回してなるロール状積層シートの製造方法であって、
    前記積層シートは、紙基材層、及び、該紙基材層の片面に積層された、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む樹脂層を有し、
    前記製造方法は、
    紙基材を連続的に搬送しながら、該紙基材の片面に、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む水系コーティング液を塗布して、紙基材層の片面に塗布膜を形成する工程、
    前記塗布膜を、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の融点以上に加熱し、前記樹脂層を形成して前記積層シートを得る工程、
    前記積層シートの紙基材層側表面に対し、冷却媒体を吹き付ける工程、及び、
    前記積層シートをロール状に巻き取って前記ロール状積層シートを得る工程、
    を含む、製造方法。
  2. 前記冷却媒体が水である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記冷却媒体の温度は30℃以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記冷却媒体の吹き付け量は、前記積層シートの単位面積あたり、0.05~0.2mL/cmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記塗布膜を形成する工程の後、前記冷却媒体を吹き付ける工程の前に、
    前記積層シートを35~70℃で冷却する工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は重量平均分子量が10万~70万である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記水性コーティング液中の前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の固形分濃度が、25~65重量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、示差走査熱量分析による結晶融解曲線において、100~150℃の範囲に少なくとも1つのピークトップ温度(Tma)と、150~170℃の範囲に少なくとも1つのピークトップ温度(Tmb)を有し、かつ、TmaとTmbの温度差が10℃以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、少なくとも1種類のポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
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