JP2010059215A - 生分解性樹脂シート - Google Patents
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Abstract
【課題】シート製造後も経時変化が小さく安定的な柔軟性を備え、微生物などによる分解も可能で、使用後、廃棄処分がしやすい環境適合性に優れた生分解性のシート、フィルムを提供する。
【解決手段】生分解性(3HA)共重合体からなるシートであって、式(1):{(製造から1日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から30日間経過後の引張り伸び率(%))/(製造から30日間経過後の結晶化度(%)−製造から1日間経過後の結晶化度(%))}で示される、シート製造から1日間経過後と30日間経過後の結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率が20以下であり、且つ、シート製造から60日間経過後の引張り伸び率が100(%)以上である生分解性樹脂シート。
【選択図】 図1
【解決手段】生分解性(3HA)共重合体からなるシートであって、式(1):{(製造から1日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から30日間経過後の引張り伸び率(%))/(製造から30日間経過後の結晶化度(%)−製造から1日間経過後の結晶化度(%))}で示される、シート製造から1日間経過後と30日間経過後の結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率が20以下であり、且つ、シート製造から60日間経過後の引張り伸び率が100(%)以上である生分解性樹脂シート。
【選択図】 図1
Description
本発明は、生分解性(3−ヒドロキシアルカノエート)共重合体からなる生分解性樹脂シートに関する。
従来、プラスチックは加工や使用のしやすさや、再利用の困難さ、衛生上の問題などから、そのほとんどが使い捨てにされてきた。しかし、プラスチックが多量に使用、廃棄されるにつれ、その埋め立て処理や焼却処理に伴う問題がクローズアップされてきており、ゴミ埋め立て地の不足、非分解性のプラスチックスが環境に残存することによる生態系への影響、燃焼時の有害ガスの発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境へ大きな負荷を与える原因となっている。近年、プラスチック廃棄物の問題を解決できるものとして、生分解性プラスチックの開発が盛んになっている。一般的に生分解性プラスチックは、1)ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと記す)といった微生物産生系脂肪族ポリエステル、2)ポリ乳酸やポリカプロラクトン等の化学合成系脂肪族ポリエステル、3)澱粉や酢酸セルロース等の天然物利用系といった、3種類に大別される。化学合成系脂肪族ポリエステルのなかでもポリ乳酸、ポリカプロラクトンは耐熱性に問題があり、また、天然物利用系は非熱可塑性であることや耐水性に劣るといった問題がある。
一方、PHAは、好気性、嫌気性下での分解性に優れ、燃焼時には有毒ガスを発生せず、植物原料を使用した微生物に由来するプラスチックで高分子量化が可能であり、地球上の二酸化炭素量を増大させないカーボンニュートラルである、といった優れた特徴を有している。特に、嫌気性下で分解する性質や、高分子量化が可能である点は特筆すべき性能である。該PHAは脂肪族ポリエステルに分類されるが、先に述べた化学合成系の脂肪族ポリエステルとは、ポリマーの性質が大きく異なるものである。
このように、PHAは天然成分からなり、廃棄物の問題が解決され、環境適合性に優れるため、包装材料、食器材料、建築・土木・農業・園芸材料、吸着・担体・濾過材等に応用可能な成形体が望まれている。
PHAの代表的なものとして、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)(以下、PHBと記す)が挙げられる。PHBに関しても、フィルムや繊維などの成形体への利用が検討されている。しかし、PHBホモポリマーは結晶化度が高いため、固くて脆いという物性上の欠点があり、また、成形した直後は延性挙動を示すが、その後の老化による物性低下が著しく、柔軟性を有し、かつ品質が安定化した成形体を得るに至っていないのが実状である。
このような問題を解決すべく、数平均分子量50万以上のPHBを2倍以上の延伸倍率で延伸し、引張り伸び性を向上させることが開示されている(特許文献1参照)。しかし、延伸することで引張り伸び性の向上は見られるものの、100(%)を超えるような高いレベルでの伸び性は得られておらず、また、成形体作製からの経日後の物性変化に関する記載は一切なく、安定的に高い柔軟性を有するレベルには至っていない。
また、PHBの物性を改質する試みとして、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバリレートをモノマーユニットとする共重合体(以下、PHBVと記す)を得るといった開示がある(特許文献2参照)。しかし、このPHBVも、PHBよりは結晶性が低下するため脆性は改善されるが、柔軟性が要求されるフィルム用途への適用には至っていない。
このような問題を解決すべく、PHBVに生分解性樹脂のポリカプロラクトンを配合してなる組成物で成形されたフィルムが提案されている。しかし、ポリカプロラクトンは、融点が約60℃と低く、また50℃を越えると、軟化がひどいため、PHBVにポリカプロラクトンを配合しても、フィルムの脆性、柔軟性、および成形性の改善には不充分であり、得られるフィルムはブロッキング、ベタツキ等が発生する傾向がある。
さらに、PHBV成形品の製造後に、PHBVの融解温度以下の温度で熱処理することで、経時的な物性変化を遅延させることも開示されている(特許文献3参照)。この特許文献に記載の実施例によると、熱処理による経時的な物性変化に対する遅延効果はあるものの、長期的に見た場合、物性低下の傾向は見られる。さらに、PHBVに可塑剤を配合した樹脂組成物を熱処理することで、初期の柔軟性レベルは向上する(特許文献4参照)。しかし、この場合も、経日的に物性低下の傾向は見られ、さらに可塑剤を用いることによる、ブリードやベタツキ等の問題が挙げられる。
このように、PHA類であるPHBやPHBVを例に取ると、これら樹脂自体の結晶化度が高く、脆い性質であるため、高い柔軟性を有し、且つ、ブリードやベタツキ等の問題が無く、安定的にその柔軟性を維持した、生分解性PHAフィルムは未だかつて見られていない。
また、さらに柔軟性を有するPHA類として、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシヘキサノエートをモノマーユニットとする共重合体であるPHBHを用いたフィルムも開示されている(特許文献5参照)。ここでは、PHBHの共重合体組成比がポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=95/5のPHBHを用い、使い捨て吸収製品のバックシートやトップシートを得ている。また、PHBHについて、可溶溶媒により、組成比の異なるPHBHを分別、抽出し、それらの機械的性質、結晶性などに関しての報告がある(非特許文献1参照)。ここでは、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=98/2〜87/13(mol/mol)のPHBHフィルムの引張り伸び性について記されており、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=98/2(mol/mol)では、数%レベルの伸び率(%)に対し、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=87/13(mol/mol)では、60%レベルの伸び率(%)が得られている。一方、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)比率が低いPHBHでは、フィルム作製直後からの伸び率の低下が認められる。しかしながら、ここでは、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)比率が高いPHBHに関して、一般的な柔軟な延性についての記載はあるが、経日後の物性変化などに関する詳細な記載はなく、初期の柔軟性とともに、経日的にその柔軟性を確保することが出来るかどうかについては全く記載されていない。
また、フィルム製造後の経時での引張り伸び率の変化率を規定したフィルムに関する開示もある(特許文献6)。しかし、結晶化度の経時での変化、結晶構造の周期に関する記載は全くない。
特開平10−176070号公報
特開昭63−269989号公報
特表平9−501449号公報
特表平9−504808号公報
米国特許第5990271号明細書
特開2006−45365号公報
Biomacromolecules,2002,3,p1006−1012
本発明は、シート製造後も経時変化が小さく安定的な柔軟性を備えた生分解性樹脂シートを提供することを目的とする。また、本発明は、様々なシート、フィルム用途、特に使い捨て製品において使用することが可能であり、また、廃棄処分手段のひとつとしての生分解性、すなわち、微生物などによる分解も可能で、使用後、廃棄処分がしやすい、環境適合性に優れたシート、フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、PHAから製造されたシートにおける基材樹脂の結晶化度に着目し、シート製造から1日間経過後と30日間経過後の結晶化度(%)の変化に対する引張り伸び率(%)の変化の割合(以下、「変化率」という。)が20以下になるシートにおいて、安定的な柔軟性を兼ね備えた生分解性樹脂シートを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、生分解性(3−ヒドロキシアルカノエート)共重合体からなるシートであって、
式(1):{(製造から1日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から30日間経過後の引張り伸び率(%))/(製造から30日間経過後の結晶化度(%)−製造から1日間経過後の結晶化度(%))}
で示される、シート製造から1日間経過後と30日間経過後の結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率が20以下であり、且つ、シート製造から60日間経過後の引張り伸び率が100(%)以上であることを特徴とするシートに関する。さらに好ましい実施態様は、前記式(1)で示される引張り伸び率の変化率が10以下である。また、好ましい実施態様は、シート製造から60日間経過後の引張り伸び率が150(%)以上である。好ましい実施態様は、シート製造から30日間経過後の結晶化度が45%以下である。好ましい実施態様は、シート製造から1日間経過後の結晶周期の距離が6.5nm以上である。また、前記生分解性(3−ヒドロキシアルカノエート)共重合体の好ましい実施態様は、(3−ヒドロキシブチレート)繰り返し単位および(3−ヒドロキシヘキサノエート)繰り返し単位からなるポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]であり、さらに好ましい実施態様は、前記ポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]の繰り返し単位の構成比が、(3−ヒドロキシブチレート)単位/(3−ヒドロキシヘキサノエート)単位=92/8〜80/20(mol/mol)の範囲である。
式(1):{(製造から1日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から30日間経過後の引張り伸び率(%))/(製造から30日間経過後の結晶化度(%)−製造から1日間経過後の結晶化度(%))}
で示される、シート製造から1日間経過後と30日間経過後の結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率が20以下であり、且つ、シート製造から60日間経過後の引張り伸び率が100(%)以上であることを特徴とするシートに関する。さらに好ましい実施態様は、前記式(1)で示される引張り伸び率の変化率が10以下である。また、好ましい実施態様は、シート製造から60日間経過後の引張り伸び率が150(%)以上である。好ましい実施態様は、シート製造から30日間経過後の結晶化度が45%以下である。好ましい実施態様は、シート製造から1日間経過後の結晶周期の距離が6.5nm以上である。また、前記生分解性(3−ヒドロキシアルカノエート)共重合体の好ましい実施態様は、(3−ヒドロキシブチレート)繰り返し単位および(3−ヒドロキシヘキサノエート)繰り返し単位からなるポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]であり、さらに好ましい実施態様は、前記ポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]の繰り返し単位の構成比が、(3−ヒドロキシブチレート)単位/(3−ヒドロキシヘキサノエート)単位=92/8〜80/20(mol/mol)の範囲である。
本発明によれば、製造後も経時変化が小さく安定的な柔軟性を備えた生分解性樹脂シートを得ることが可能である。本発明に係る生分解性樹脂シートは、様々なシート、フィルム用途、特に使い捨て製品において使用することが可能である。また、本発明に係る生分解性樹脂シートは、生分解性に優れたPHA共重合体からなるので、廃棄処分手段のひとつとしての生分解性、すなわち、微生物などによる分解も可能で、使用後、廃棄処分がしやすい、環境適合性に優れたシート、フィルム類を提供することができる。
本発明に係る生分解性樹脂シートは、生分解性(3−ヒドロキシアルカノエート)共重合体からなり、
式(1):{(製造から1日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から30日間経過後の引張り伸び率(%))/(製造から30日間経過後の結晶化度(%)−製造から1日間経過後の結晶化度(%))}
で示される、シート製造から1日間経過後と30日間経過後の結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率が20以下であり、且つ、シート製造から60日間経過後の引張り伸び率が100(%)以上であることを特徴とする。
式(1):{(製造から1日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から30日間経過後の引張り伸び率(%))/(製造から30日間経過後の結晶化度(%)−製造から1日間経過後の結晶化度(%))}
で示される、シート製造から1日間経過後と30日間経過後の結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率が20以下であり、且つ、シート製造から60日間経過後の引張り伸び率が100(%)以上であることを特徴とする。
本発明における生分解性ポリマーとしては、嫌気性下で分解する性質や、耐湿性に優れる、高分子量化が可能である、といった観点から、[−O−CHR−CH2−CO−](式中、RはCnH2n+1で表されるアルキル基で、n=1〜15の整数である。)で示される2種以上の繰り返し単位からなる生分解性ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)共重合体が用いられる。
前記生分解性ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)の代表例としては、例えば、ポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシバリレート)]、ポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]、ポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシオクタノエート)]、ポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシデカノエート)]等があげられる。これらの中でも、ポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)](PHBH)が好ましく、微生物によって生産される共重合体がより好ましい。必要に応じて、さらに、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸またはポリカプロラクトンの他に、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする重合体としての、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートまたはポリブチレンサクシネートあるいはそれらの共重合体などの脂肪族ポリエステルを少なくとも1種添加することができる。
ここで、前記生分解性ポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]とは、3−ヒドロキシブチレートおよび3−ヒドロキシヘキサノエートを主成分とする共重合体の総称として用いるものである。共重合体は、3−ヒドロキシブチレートおよび3−ヒドロキシヘキサノエートを主成分とするものである限り、それら以外の他の単量体成分(繰り返し単位)を含んでもよい。また、上記共重合体を得るための重合方法は特に限定されず、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合等のいずれの共重合方法を適用してもよい。
本発明に使用する生分解性ポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]の繰り返し単位の構成比としては、(3−ヒドロキシブチレート)単位/(3−ヒドロキシヘキサノエート)単位が、92/8〜80/20(mol/mol)の範囲内であることが好ましく、90/10〜82/18(mol/mol)の範囲内であることがより好ましい。なお、以下の記載では、ポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]の繰り返し単位の構成比に関しては、3−ヒドロキシヘキサノエート組成比率を3HH組成比率と略する場合がある。
一般に、3HH組成比率が高いほど、結晶化度は低くなり、PHBHのポリマー特性としては、より柔軟な傾向にあり、3HB/3HHが92/8より大きく、3HBの比率が大きくなると結晶化度が上昇し、樹脂が脆くなりPHBHの柔軟性が不足する場合がある。また、PHBH中の3HB/3HHが80/20より小さく、3HBの比率が小さくなると、結晶化度が低下するとともに、結晶融解温度も低くなる傾向にあり、耐熱性が要求される用途に適さない場合がある。
本発明の生分解性(3−ヒドロキシアルカノエート)共重合体の重量平均分子量としては、耐衝撃性や引張特性の面から、30万〜300万が好ましく、40万〜250万がより好ましく、50万〜200万がさらに好ましい。(3−ヒドロキシアルカノエート)共重合体の重量平均分子量が30万未満では、機械物性が劣る場合があり、300万を超えると、加工が難しくなる場合がある。なお、生分解性(3−ヒドロキシアルカノエート)共重合体の重量平均分子量の測定方法は特に限定されないが、一例としては、クロロホルムを移動相として、システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)を用いることにより、本発明の樹脂組成物のポリスチレン換算での分子量として求めることができる。
本発明に使用するPHBHは、微生物から生産する方法および化学合成法のいずれの方法によって得られてもよく、特に限定されるものではない。中でも、油脂を原料として微生物を培養することでPHBHを得ることができる点、化学合成法に比べてプロセスが簡単でコストも安価であるという点で、微生物から生産されたPHBHが好ましい。また、微生物から生産されるPHBHは、化学合成法で得られるPHBHに比べて分子量分布が広く、3HBおよび3HHが適度に不均一に重合している点で好ましい。さらに、化学合成法によって得られるPHBHは、未反応のモノマー成分や使用した重合開始剤、乳化重合の場合には乳化剤などが、PHBH中に残存して物性が低下する可能性があるので、好適ではない。
前記PHBHを生産する微生物としては、細胞内にPHBHを蓄積する微生物であれば特に限定されず、A.lipolytica、A.eutrophus、A.latusなどのアルカリゲネス属(Alcaligenes)、シュウドモナス属(Pseudomonas)、バチルス属(Bacillus)、アゾトバクター属(Azotobacter)、ノカルディア属(Nocardia)、アエロモナス属(Aeromonas)などの菌があげられる。なかでも、PHBHを効率よく生産するという点で、特にAeromonas caviae(アエロモナス属)などの菌株、さらにはPHA合成酵素群の遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32(FERM BP−6038)(J.Bacteriol.,179,p4821−4830(1997))などがより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にPHBHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。
本発明で生分解性樹脂シートとは、シートおよびフィルムが含まれる、長さと厚さの比が大きく、幅と厚さの比が大きい、薄い連続的な一片を意味する。厚さの明確な上限についての条件はないが、シートとしての好ましい上限は2mmであり、より好ましくは1mm以下である。下限については、シート(フィルム)として製造できる厚みであれば特に制限はない。
なお、本発明における生分解性樹脂シートの結晶化度は、広角X解回折により、Vonkの手法(C.G.Vonk,J.Appl.Crystallogr.,6 ,148 (1973))に基づき、X線回析図の非晶部由来のハロー領域と結晶部由来のピーク領域との面積比により決定した値である。
本発明のPHAからなるシートでは、シート製造から1日間経過後と30日間経過後の結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率が20以下であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは5以下である。また、本発明のPHAからなるシートの引張り伸び率(%)は、シート製造後60日間経過した時点で100(%)以上であることが好ましく、より好ましくは150(%)以上である。
また、本発明のPHAからなるシートは、好ましくはシート製造から30日間経過後の結晶化度が45%以下であり、より好ましくは40%以下である。製造後30日経過後の結晶化度が45%を超える場合は、結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率が大きくなり、伸び率が低下する。また、結晶化度の下限は20%であり、それ以下の場合は耐熱性が低下する。
さらに、本発明のPHAからなるシートは、シート製造から1日間経過後の結晶周期の距離が6.5nm以上であることが好ましい。より好ましくは7.0nm以上である。好ましい理由は、結晶周期が6.5nm以上になることで結晶周期内に存在するアモルファスの領域が大きくなり、結晶化度が上昇してもその影響度が小さくなり、伸び率への影響を小さく抑えることができるためと考えられる。
<PHAからなるシートの製造方法>
本発明に係る生分解性樹脂シートの製造方法は特に限定されるものではなく、適宜必要に応じて製造できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの汎用熱可塑性プラスティックをシート成形する場合に用いられる溶融押出法が挙げられるが、押出機の先端に必要に応じて、狭いスリット状の間隔を持った幅の広いT型ダイ(T型ダイ法)や、リング状の間隔を持ったリングダイ(インフレーション法)等を付けてシートやフィルム成形する方法が挙げられる。また、塩化ビニル樹脂やポリエチレンオキサイド樹脂をシート成形する場合に良く用いられるカレンダー法によるシート成形が挙げられる。カレンダー成形とは、ロールの間で樹脂を圧延してシートを作る方法であるが、ロールの配置の違いにより、直線型3本ロールタイプ、逆Lタイプ、Zタイプ等があり、必要に応じて、ロールのタイプを選ぶことができる。
本発明に係る生分解性樹脂シートの製造方法は特に限定されるものではなく、適宜必要に応じて製造できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの汎用熱可塑性プラスティックをシート成形する場合に用いられる溶融押出法が挙げられるが、押出機の先端に必要に応じて、狭いスリット状の間隔を持った幅の広いT型ダイ(T型ダイ法)や、リング状の間隔を持ったリングダイ(インフレーション法)等を付けてシートやフィルム成形する方法が挙げられる。また、塩化ビニル樹脂やポリエチレンオキサイド樹脂をシート成形する場合に良く用いられるカレンダー法によるシート成形が挙げられる。カレンダー成形とは、ロールの間で樹脂を圧延してシートを作る方法であるが、ロールの配置の違いにより、直線型3本ロールタイプ、逆Lタイプ、Zタイプ等があり、必要に応じて、ロールのタイプを選ぶことができる。
また、溶媒を用いたキャスト法やエマルジョン法、その他の樹脂との積層によるラミネート法や共押出法などの方法が挙げられるが、必要に応じてこれら方法を用いても良い。さらに、縦横二方向あるいは、そのいずれか一方方向に引き伸ばして延伸配向させることも可能であり、汎用プラスティックシートやフィルム成形時に実施する、いずれの加工方法を用いても良い。
本発明のシートの厚みは、適宜必要に応じて、調整することができるが、さらに柔軟性を付与させるために、柔軟性を有する樹脂層などを積層して組み合わせて、厚みを調整することも可能である。
本発明の樹脂シートには、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤、無機系または有機系粒子、ガラス繊維、ケナフ、セルロース等の天然繊維、ウイスカー、雲母などの充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤その他の副次的添加剤を含有することができる。
本発明の樹脂シートは、それ単独で、紙、フィルム、シート、容器、袋等として使用されるか、または、この樹脂シート以外の各種材料からなる、紙、フィルム、シート、容器、袋等に複合化することで物性を改善した成形品として使用される。このようにして得られた各種成形品は、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、食品産業、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に用いることができる。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1〜3、比較例1〜2)
<PHBHの調製>
使用したPHBHは、微生物として、Alcaligenes eutrophusに、Aeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32(J.Bacteriol.,179,p4821(1997))を用いて、原料、培養条件を適宜調整して生産されたPHBHであり、3HH組成比率が5、7、10、12、18mol%であり、Mw(重量平均分子量)がそれぞれ64万、100万、31万、76万、57万のものを使用した。
<PHBHの調製>
使用したPHBHは、微生物として、Alcaligenes eutrophusに、Aeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32(J.Bacteriol.,179,p4821(1997))を用いて、原料、培養条件を適宜調整して生産されたPHBHであり、3HH組成比率が5、7、10、12、18mol%であり、Mw(重量平均分子量)がそれぞれ64万、100万、31万、76万、57万のものを使用した。
<フィルムの調整>
上記3HH組成比率が異なる5種類のPHBHを、クロロフォルム溶液からキャストし、1日間、室温で溶媒を蒸発させ、さらに1日間、40℃で乾燥させた。その後のフィルムサンプルを1日目として測定に使用した。その後は、真空乾燥機中、室温で保存し、7日目、30日目、60日目の測定を行った。
上記3HH組成比率が異なる5種類のPHBHを、クロロフォルム溶液からキャストし、1日間、室温で溶媒を蒸発させ、さらに1日間、40℃で乾燥させた。その後のフィルムサンプルを1日目として測定に使用した。その後は、真空乾燥機中、室温で保存し、7日目、30日目、60日目の測定を行った。
<引っ張り試験>
上記キャストフィルムから試験片を切り出し、サンプル厚み0.1mm、ゲージ間距離22.25mm、引っ張り速度20mm/min、室温で引っ張り試験機(島津製作所 型式:EZ Test)を用いて引っ張り試験を行い、破断時の伸び率を、n数5で平均値として求めた。
上記キャストフィルムから試験片を切り出し、サンプル厚み0.1mm、ゲージ間距離22.25mm、引っ張り速度20mm/min、室温で引っ張り試験機(島津製作所 型式:EZ Test)を用いて引っ張り試験を行い、破断時の伸び率を、n数5で平均値として求めた。
<結晶化度の測定>
X線回折装置((株)リガク ロータフレックス RU−200)を用い、X線源としてNiフィルターしたCuKα線(λ=0.154nm、40kV、200mA)を用い、角度範囲2θ:5〜60°、スキャンスピード1.0°/minで広角X解回折測定をした。得られた広角X解回折測定結果から、Vonk法で計算して結晶化度を求めた。
X線回折装置((株)リガク ロータフレックス RU−200)を用い、X線源としてNiフィルターしたCuKα線(λ=0.154nm、40kV、200mA)を用い、角度範囲2θ:5〜60°、スキャンスピード1.0°/minで広角X解回折測定をした。得られた広角X解回折測定結果から、Vonk法で計算して結晶化度を求めた。
<結晶周期の距離の測定>
広角X線回折と同様の装置を用い、角度範囲2θ:0.1〜3.4°、ステップ0.004°、各ステップ20秒で小角X線回折測定をした。得られた小角X線回折測定結果から、計算により結晶周期の距離を求めた。
広角X線回折と同様の装置を用い、角度範囲2θ:0.1〜3.4°、ステップ0.004°、各ステップ20秒で小角X線回折測定をした。得られた小角X線回折測定結果から、計算により結晶周期の距離を求めた。
<結晶化度の変化に対する引っ張り伸び率の変化率>
上記で得られた、1日目の結晶化度、伸び率、30日目の結晶化度、伸び率をもとに、式(1):{(製造から1日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から30日間経過後の引張り伸び率(%))/(製造から30日間経過後の結晶化度(%)−製造から1日間経過後の結晶化度(%))}で示される、シート製造から1日間経過後と30日間経過後の結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率を求めた。
上記で得られた、1日目の結晶化度、伸び率、30日目の結晶化度、伸び率をもとに、式(1):{(製造から1日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から30日間経過後の引張り伸び率(%))/(製造から30日間経過後の結晶化度(%)−製造から1日間経過後の結晶化度(%))}で示される、シート製造から1日間経過後と30日間経過後の結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率を求めた。
以上、得られた結果を表1にまとめて示す。また、1日目、30日目の結晶化度と伸び率の関係をグラフにプロットしたものを図1に示す。
1日間経過後と30日間経過後の結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率が20以下であり、30日経過後の結晶化度が45%以下である実施例1〜3においては、60日目においても100%以上の高い伸び率を示しており、長期の経時においても変化が小さく安定した柔軟性を有するフィルムが得られることがわかる。一方、1日間経過後と30日間経過後の結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率が20以上であり、30日経過後の結晶化度が45%を超える比較例1〜2においては、60日目における伸び率は7〜73%と小さく、長期の経時変化が大きく、伸び性や柔軟性の低下が大きいフィルムしか得られないことがわかる。
Claims (7)
- 生分解性(3−ヒドロキシアルカノエート)共重合体からなるシートであって、
式(1):{(製造から1日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から30日間経過後の引張り伸び率(%))/(製造から30日間経過後の結晶化度(%)−製造から1日間経過後の結晶化度(%))}
で示される、シート製造から1日間経過後と30日間経過後の結晶化度の変化に対する引張り伸び率の変化率が20以下であり、且つ、シート製造から60日間経過後の引張り伸び率が100(%)以上であることを特徴とする生分解性樹脂シート。 - 式(1)で示される引張り伸び率の変化率が10以下である請求項1記載のシート。
- シート製造から60日間経過後の引張り伸び率が150(%)以上である請求項1または2に記載のシート。
- シート製造から30日間経過後の結晶化度が45%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のシート。
- シート製造から1日間経過後の結晶周期の距離が6.5nm以上である請求項1〜4のいずれかに記載のシート。
- 前記生分解性(3−ヒドロキシアルカノエート)共重合体が、(3−ヒドロキシブチレート)繰り返し単位および(3−ヒドロキシヘキサノエート)繰り返し単位からなるポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]である請求項1〜5のいずれかに記載のシート。
- 前記ポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]の繰り返し単位の構成比が、(3−ヒドロキシブチレート)単位/(3−ヒドロキシヘキサノエート)単位=92/8〜80/20(mol/mol)の範囲である請求項6記載のシート。
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