JP2006045365A - ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)からなるフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】成形品製造後も安定的な柔軟性を兼ね備えた生分解性樹脂フィルムの提供。
【解決手段】 式(1):[−CHR−CH2−CO−O−](RはCn2n+1で表されるアルキル基で、n=1及び3)で示される、微生物から生産される、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート、)からなるフィルムであって、式(2):{(製造から2日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から90日間経過後の引張り伸び率(%))/製造から2日間経過後の引張り伸び率(%)}×100で示されるフィルムの製造から2日間経過後と90日間経過後の引張り伸び変化率(%)が40(%)以下であり、且つ、フィルムの製造から90日間経過後の引張り伸び率が50(%)以上であることを特徴とするフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)からなる生分解性樹脂フィルムに関する。
従来、プラスチックは加工や使用しやすさや、再利用の困難さ、衛生上の問題などから使い捨てされてきた。しかし、プラスチックが多量に使用、廃棄されるにつれ、その埋め立て処理や焼却処理に伴う問題がクローズアップされてきており、ゴミ埋め立て地の不足、非分解性のプラスチックスが環境に残存することによる生態系への影響、燃焼時の有害ガス発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境への大きな負荷を与える原因となっている。近年、プラスチック廃棄物の問題を解決できるものとして、生分解性プラスチックの開発が盛んになっている。一般的に生分解性プラスチックは、1)ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと記す)といった微生物生産系脂肪族ポリエステル、2)ポリ乳酸やポリカプロラクトン等の化学合成系脂肪族ポリエステル、3)澱粉や酢酸セルロース等の天然高分子物といった、3種類に大別される。化学合成系脂肪族ポリエステルのなかでもポリ乳酸、ポリカプロラクトンは耐熱性に問題があり、また、天然高分子物は非熱可塑性であることや耐水性に劣るといった問題がある。
一方、PHAは好気性、嫌気性下での分解性に優れ、燃焼時には有毒ガスを発生せず、植物原料を使用した微生物に由来するプラスチックで高分子量化が可能であり、地球上の二酸化炭素量を増大させない、カーボンニュートラルである、といった優れた特徴を有している。特に嫌気性下で分解する性質や、高分子量化が可能で有る点は特筆すべき性能である。該PHAは脂肪族ポリエステルに分類されるが、先に述べた化学合成系の脂肪族ポリエステルとは、ポリマーの性質が大きく異なる物である。
この様にPHAは天然成分からなり、廃棄物の問題が解決され、環境適合性に優れるため、包装材料、食器材料、建築・土木・農業・園芸材料、吸着・担体・濾過材等に応用可能な成形体が望まれている。
PHAの代表的なものとしてポリ(3−ヒドロキシブチレート)(以下、PHBと記す)が挙げられる。PHBに関しても、フィルムや繊維などの成形体への利用が検討されているが、PHBホモポリマーは結晶化度が高いため、固くて脆いという物性上の欠点があり、又、成形した直後は延性挙動を示すが、その後の老化による物性低下が著しく、柔軟性を有し、かつ品質が安定化した成形体を得るに至っていないのが実状である。
このような問題を解決すべく、数平均分子量50万以上のPHBを2倍以上の延伸倍率で延伸し、引張り伸び性を向上させることが開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、延伸することで引張り伸び性の向上は見られるものの、100(%)を超えるような高いレベルでの伸び性は得られておらず、又、成形体作製からの経日後の物性変化に関する記載は一切なく、安定的に高い柔軟性を有するレベルには至っていない。
更に、PHBの物性を改質する試みとしては、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバリレートをモノマーユニットとする共重合体(以下、PHBVと記す)を得るといった開示がある(特許文献2参照)。
しかしながら、PHBVについても、PHBよりは結晶性が低下するため、脆性は改善されるが、柔軟性が要求されるフィルム用途への適用には至っていない。
このような問題を解決すべく、PHBVに生分解性樹脂のポリカプロラクトンを配合してなる組成物で成形されてなるフィルムが提案されている。しかしながら、ポリカプロラクトンは、融点が約60℃と低く、また50℃を越えると、軟化がひどいため、PHBVにポリカプロラクトンを配合してもフィルムの脆性、柔軟性、及び成形性の改善には不充分であり、得られるフィルムはブロッキング、ベタツキ等が発生する傾向がある。
また、PHBV成形品の製造後に、PHBVの融解温度以下の温度で熱処理することで、経時的な物性変化を遅延させることが開示されている(特許文献3参照)。前記特許文献に記載の実施例によると、熱処理による経時的な物性変化に対する遅延効果はあるものの、長期的に見た場合、物性低下の傾向は見られる。更に、PHBVに可塑剤を配合した樹脂組成物を熱処理することで、初期の柔軟性レベルは向上するが、この場合も、経日的に物性低下の傾向は見られ、更に可塑剤を用いることによる、ブリードやベタツキ等の問題が挙げられる(特許文献4参照)。
このように、PHA類であるPHBやPHBVを例に取ると、これら樹脂自体の結晶化度が高く、脆い性質であるため、高い柔軟性を有し、且つ、ブリードやベタツキ等の問題が無く安定的にその柔軟性を維持した、生分解性PHAフィルムは未だかつて見られていない。
又、更に柔軟性を有する、PHA類として、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシヘキサノエートをモノマーユニットとする共重合体であるPHBHを用いたフィルムに関する開示がある(特許文献5参照)。ここでは、PHBHの共重合体組成比がポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=95/5、92/8(mol/mol)のPHBHを用い、使い捨て吸収製品のバックシートやトップシートを得る。又、PHBHについて、可溶溶媒により、組成比の異なるPHBHを分別、抽出し、それらの機械的性質、結晶性などに関しての報告がある(非特許文献1参照)。ここでは、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=98/2〜87/13(mol/mol)のPHBHフィルムの引張り伸び性について記されており、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=98/2(mol/mol)では、数%レベルの伸び率(%)に対し、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=87/13(mol/mol)では、60%レベルの伸び率(%)が得られている。一方、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)比率が低いPHBHでは、フィルム作製直後からの伸び率の低下が認められる。しかしながら、ここでは、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)比率が高いPHBHに関して、一般的な柔軟な延性についての記載はあるが、経日後の物性変化などに関する詳細な記載はなく、初期の柔軟性と共に経日的にその柔軟性を確保することが出来るかどうかについては、見出していない。
特開平10−176070号公報 特開昭63−269989号公報 特表平9−501449号公報 特表平9−504808号公報 US−5990271 Biomacromolecules 2002, 3,1006−1012
本発明は、成形品製造後も安定的な柔軟性を兼ね備えた生分解性樹脂フィルムを得る事を目的とした。また、様々なフィルム用途、特に使い捨て製品において使用することが可能であり、また、廃棄処分手段のひとつとしての生分解性、すなわち、微生物などによる分解も可能な、使用後廃棄処分がしやすい環境適合性に優れたPHBH組成物を用いたフィルム及び、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、樹脂そのものに柔軟性を有する、PHBHに着目し、更にフィルム製造から経日的にフィルムの延性を追跡した結果、PHBH共重合成分の組成比が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=92/8〜80/20(mol/mol)であるPHBHフィルムについて、安定的な柔軟性を有することがわかり、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第1は、式(1):[−CHR−CH2−CO−O−](RはCn2n+1で表されるアルキル基で、n=1及び3)で示される、微生物から生産される、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート、略称:PHBH)からなるフィルムであって、式(2):{(製造から2日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から90日間経過後の引張り伸び率(%))/製造から2日間経過後の引張り伸び率(%)}×100で示されるフィルムの製造から2日間経過後と90日間経過後の引張り伸び変化率(%)が40(%)以下であり、且つ、フィルムの製造から90日間経過後の引張り伸び率が50(%)以上であることを特徴とするフィルムに関する。好ましい実施態様としは、式(2)で示される引張り伸び変化率(%)が0〜30(%)であることを特徴とする上記記載のフィルムに関する。より好ましくは、PHBHフィルムの製造から90日間経過後の引張り伸び率が100(%)以上であることを特徴とする上記記載のフィルム、更に好ましくはPHBHの共重合成分の組成比が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=92/8〜80/20(mol/mol)であることを特徴とする上記記載のフィルム、に関する。
本発明により、成形品製造後も安定的な柔軟性を兼ね備えた生分解性樹脂フィルムができた。これを用いることで、例えば食品用途では、食品袋類(食品貯蔵用袋、サンドウィッチ袋、再シール可能なZiploc(登録商標)型の袋、ゴミ袋など)、収縮性包装材料(たとえば食品用ラップ、消費者製品用ラップ、パレットおよび/またはクレート用ラップなど)、食品基材へのラミネートフィルムなど、これらを含めたさまざまなフィルム用途、特に使い捨て製品において使用することが可能であり、また、使用後の廃棄処分がしやすく環境適合性に優れている。
本発明は、式(1):[−CHR−CH2−CO−O−](RはCn2n+1で表されるアルキル基で、n=1及び3)で示され、微生物から生産される、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート、略称:PHBH)からなるフィルムであって、フィルムの製造から2日間経過後と90日間経過後の引張り伸び変化率(%)(式(2))が40(%)以下であり、かつ、フィルム製造90日間経過後の引張り伸び率が50(%)以上であることを特徴とするフィルム及び、その製造方法に関する。
<PHBH>
本発明におけるPHBHとは、式(1):[−CHR−CH2−CO−O−](ここで、RはCn2n+1で表されるアルキル基で、n=1及び3)の繰り返し構造を有する脂肪族ポリエステル共重合体である。
PHBHの共重合成分のモノマー組成比が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)(以下、3HBと記す)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)(以下、3HHと記す)=92/8〜80/20(mol/mol)であることが好ましく、3HB/3HH=86/14〜80/20(mol/mol)がより好ましい。PHBH中の3HB組成比の上限は92mol%が好ましく、90mol%がより好ましく、86mol%がさらに好ましい。3HBの組成比の下限は、80mol%が好ましく、86mol%がより好ましい。一般に、3HHの組成比が高いほど、結晶化度は低くなり、PHBHのポリマー特性としては、より柔軟な傾向にあり、3HB/3HHが92/8より大きいとPHBHの柔軟性が不足する場合がある。またPHBH中の3HB/3HHが80/20より小さいと、結晶化度の低下と共に、結晶融解温度も低くなる傾向にあり、耐熱性が要求される用途に適さない場合がある。又、PHBH中の3HB/3HHが92/8を超えると結晶化度が上昇しすぎて、樹脂が脆くなる場合がある。
本発明におけるPHBHは、微生物から生産する方法または化学合成法のいずれの方法によって得られてもよく、特に限定されるものではない。中でも、油脂を原料として微生物を培養することでPHBHを得ることができる点、化学合成法に比べてプロセスが簡単でコストも安価であるという点で、微生物から生産されたPHBHが好ましい。また、微生物から生産されるPHBHは、化学合成法で得られるPHBHに比べて、PHBHの分子量分布が広く、3HBおよび3HHが適度に不均一に重合している点で好ましい。さらに、化学合成法によって得られるPHBHは、未反応のモノマー成分や使用した重合開始剤、乳化重合の場合には乳化剤などが、PHBH中に残存して物性が低下する可能性があるので、好適ではない。
前記PHBHを生産する微生物としては、細胞内にPHBHを蓄積する微生物であれば特に限定されず、A.lipolytica、A.eutrophus、A.latusなどのアルカリゲネス属(Alcaligenes)、シュウドモナス属(Pseudomonas)、バチルス属(Bacillus)、アゾトバクター属(Azotobacter)、ノカルディア属(Nocardia)、アエロモナス属(Aeromonas)などの菌があげられる。なかでも、PHBHを効率よく生産するという点で、特にAeromonas caviae(アエロモナス属)などの菌株、さらにはPHA合成酵素群の遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32(FERM BP-6038)(J.Bacteriol., 179, 4821-4830頁(1997))などがより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にPHBHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。なお、この形質転換体(FERM BP-6038)は、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。
本発明のPHBHの結晶融解温度は、3HB/3HH=92/8(mol/mol)で140±20(℃)、3HB/3HH=90/12(mol/mol)で120±30(℃)、3HB/3HH=83/17(mol/mol)で110±30(℃)である。
本発明のPHBHの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1×104〜3×106の範囲内のものを使用する。Mwが1×104より小さい場合は、PHBHの溶融張力が劣り、押出加工時のラインスピード改善効果などが得られない場合がある。また、Mw>3×106の場合は溶融粘度が高すぎて押出機に負荷がかかる場合があり、その様な樹脂を培養すること自体生産性が悪く、得られる樹脂が高価格となるため好ましくない。ただし、分子量が高すぎる場合でも、加熱温度と時間を適宜調整することによって、適当な分子量に調整することが可能である。
<PHBHからなるフィルム>
本発明の実施形態としては、プラスティック製品であるフィルムが例示できる。本明細書の「フィルム」とは、長さと厚さの比が大きく、幅と厚さの比が大きい、非常に薄い連続的な一片を意味する。厚さの明確な上限についての条件はないが、好ましい上限は1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.2mm以下、特に好ましくは0.1mm以下である。下限については、フィルムとして製造できる厚みであれば、特に制限はない。
また、本発明のPHBHからなるフィルムの引張り伸び性の指標として、JIS K 7127規格(プラスチック引張特性の試験方法)、即ち試験温度23℃、湿度50%下での引張り試験により測定する、破断するまでの引張り伸び率(%)を用いる。試験片を上下つかみ具で挟んだ状態を0(%)の引張り伸び率(%)とし、試験前の上下つかみ具間の距離分伸びた場合、100(%)の引張り伸び率(%)である。
本発明のPHBHからなるフィルムについて、製造した後、直ちに23℃、湿度50%下に放置し、2日間経過したフィルムと、同条件下、90日間経過したフィルムを用いて引張り試験を行い、それらの引張り伸び変化率(%)を算出した。ここで引張り伸び変化率(%)とは、フィルム製造後、2日間経過したフィルムの引張り伸び率(%)に対し、90日間経過したフィルムの引張り伸び率(%)の変化する割合の絶対値(%)を指し、式(2):{(製造から2日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から90日間経過後の引張り伸び率(%))/製造から2日間経過後の引張り伸び率(%)}×100で示される。
本発明では、引張り伸び変化率が、好ましくは40(%)以下であり、より好ましくは30(%)以下、更に好ましくは10(%)以下、最も好ましくは0(%)である。引張り伸び変化率が大きいと、フィルム製造直後からの物性変化が大きいことを意味し、不安定な物性であり、好ましくない。また本発明のPHBHからなるフィルムの引張り伸び率(%)は、フィルム製造後、90日間経過した時点で、50(%)以上であることが好ましく、より好ましくは100(%)以上である。
本発明のPHBHからなるフィルムは、一般に、3HHの組成比が高いほど、結晶化度は低くなり、PHBHのポリマー特性としては、柔軟性が得られる傾向であるが、長期的に柔軟性が維持されたままであることのメカニズムに関しては、定かではない。しかしながら、3HHの組成比が高くなるにつれて、結晶化度が低下し、その一方、結晶以外のアモルファス量が増えるため、フィルム製造直後からの二次的な結晶化成長に伴う、老化の現象が見られないものと推察する。そして本発明のPHBH共重合成分の組成比が、3HB/3HH=92/8〜80/20(mol/mol)からなるPHBHを用いることで、フィルム製造から90日間経過後の引張り伸び率(%)が50(%)以上であり、かつ、上記引張り伸び変化率(%)が40(%)以下である、安定的な柔軟性を兼ね備えたPHBHを得ることができる。
<PHBHからなるフィルムの製造方法>
本発明により得られるフィルムは、特に限定される方法でなく、適宜必要に応じて製造できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの汎用熱可塑性プラスティックをフィルム成形する場合に用いられる溶融押出法が挙げられるが、押出機の先端に必要に応じて、狭いスリット状の間隔を持った幅の広いT型ダイ(T型ダイ法)や、リング状の間隔を持ったリングダイ(インフレーション法)等を付けてフィルム成形する方法が挙げられる。また、塩化ビニル樹脂やポリエチレンオキサイド樹脂をフィルム成形する場合に良く用いられるカレンダー法によるフィルム成形が挙げられる。カレンダー成形とは、ロールの間で樹脂を圧延してフィルムを作る方法であるが、ロールの配置が異なることにより、直線型3本ロールタイプ、逆Lタイプ、Zタイプ等があり、必要に応じて、ロールのタイプを選ぶことができる。
また、溶媒を用いたキャスト法やエマルジョン法、その他樹脂との積層によるラミネート法や共押出法などの方法が挙げられるが、必要に応じてこれら方法を用いても良い。その他、縦横二方向あるいは、そのいずれか一方方向に引き伸ばして延伸配向させることも可能であり、汎用プラスティックフィルム成形時に実施させる何れの加工方法を用いても良い。
本発明のフィルムの厚みは、適宜必要に応じて、調整することができるが、更に柔軟性を付与させるために、柔軟性を有する樹脂層などとの積層を組み合わせて、厚みを調整することも可能である。
本発明のPHBHには、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤、無機系または有機系粒子、ガラス繊維、ウイスカー、雲母などの充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤その他の副次的添加剤を含有することができる。
次に本発明の生分解性樹脂組成物およびその製造方法について実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、特に断らない限り「部」は重量部を、「%」は重量%を表す。実施例で実施した評価方法は以下の通りである。結果はまとめて表1に示した。
<フィルムの引張り試験>
実施例、比較例で得られたフィルムを用い、2号形ダンベル形状に打ち抜き加工した後、INSTRON 5582型試験機(インストロン社製)を用い、JIS K 7127規格(プラスティックの引張特性の試験方法)に準拠して引張り伸び率を測定した。その際、試験温度23℃、湿度50%下、試験速度:50mm/min、掴み具:1kN容量エアーチャック、つかみ具間距離:80mmにて、引張り伸び率を測定する。
<柔軟性評価>
上記に従って測定した実施例、比較例で得られたフィルムの引張り伸び率が柔軟性を示す指標であり、特に引張り伸び率が大きく、良く伸びる程柔軟であり、本発明の効果を示すものである。
<引張り伸び変化率(%)の求め方>
本実施例、比較例で得られたフィルムを、製造直後に温度23℃・湿度50%下で放置し、2日間経過後のものと、90日間経過後のものに関して、上記方法に従って引張り試験を行った。尚、引張り伸び変化率(%)とは、以下に示す式に基づき、割合をパーセント(%)表示した。そして、式(2):{(製造から2日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から90日間経過後の引張り伸び率(%))/製造から2日間経過後の引張り伸び率(%)}×100、に従って引張り伸び変化率(%)を算出した。引張り伸び変化率(%)が小さいと、製造直後からの安定的な物性を確保した状態であり、本発明の効果を示すものである。
<生分解性評価>
実施例、比較例で得られた樹脂フィルムを、長さ115×幅25(mm)のダンベル状に切り出し、深さ10cmの土中に埋めて6ヶ月後、形状変化を観察し、生分解性を以下の基準で評価した。○:形状が確認できないほど分解、△:かなりの部分分解されているが、形状は何とか確認できる、×:ほとんど形状に変化なく、分解していない。
(実施例1) PHBHからなるフィルムの作製及び評価
微生物として、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32(J.Bacteriol.,179,4821(1997))を用いて生産された、PHBH(共重合組成比、3HB/3HH=88.4/11.6(mol/mol))を、加熱ロール機で加熱溶融し、厚み0.3mmのフィルムを得た。得られたフィルムは、前記評価法に従い、各物性値を測定した。評価結果は表1に示す。
Figure 2006045365
(実施例2) PHBHからなるフィルムの作製及び評価
実施例1と同様にして得た、PHBH(共重合組成比、3HB/3HH=83.2/16.8(mol/mol))を用い、加熱ロール機で加熱溶融し、厚み0.3mmのフィルムを得た。前記評価法に従い、各物性値を測定した。評価結果は表1に示す。
(比較例1) PHBからなるフィルムの作製及び評価
PHB(三菱ガス化学製、ビオグリーン、Tmb=176℃)を用い、加熱ロール機で加熱溶融し、厚み0.3mmのフィルムを得た。前記評価法に従い、各物性値を測定した。評価結果は表1に示す。
(比較例2) PHBHからなるフィルムの作製及び評価
実施例1と同様にして得た、PHBH(共重合組成比、3HB/3HH=96.8/3.2(mol/mol))を用い、加熱ロール機で加熱溶融し、厚み0.3mmのフィルムを得た。前記評価法に従い、各物性値を測定した。評価結果は表1に示す。
実施例1〜2により得られるフィルムは、フィルム製造から90日間経過後において、引張り伸び率(%)が400(%)を超える、高い柔軟性を有し、かつ、引張り伸び変化率(%)は5(%)以下と、長期間安定した伸び率を維持した、安定的な柔軟性を兼ね備えた生分解性樹脂フィルムを得ることができた。それに対し、比較例1は、フィルム製造から90日間経過後において、引張り伸び率(%)が5(%)と柔軟性が低いフィルムであり、かつ、引張り伸び変化率(%)も50(%)と引張り伸びの低下率が著しく、本発明の実施例とし比較し、安定的な柔軟性を兼ね備えたフィルムを得ることはできていない。また比較例2は、引張り伸び変化率(%)については、29(%)と本発明の範囲を満足するレベルであるが、フィルム製造から90日間経過後の引張り伸び率(%)は10(%)と、柔軟性を得るレベルには至っていない。また、実施例、比較例ともフィルムの生分解性については良好であった。

Claims (4)

  1. 式(1):[−CHR−CH2−CO−O−](RはCn2n+1で表されるアルキル基で、n=1及び3)で示される、微生物から生産される、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート、略称:PHBH)からなるフィルムであって、式(2):{(製造から2日間経過後の引張り伸び率(%)−製造から90日間経過後の引張り伸び率(%))/製造から2日間経過後の引張り伸び率(%)}×100で示されるフィルムの製造から2日間経過後と90日間経過後の引張り伸び変化率(%)が40(%)以下であり、且つ、フィルムの製造から90日間経過後の引張り伸び率が50(%)以上であることを特徴とするフィルム。
  2. 式(2)で示される引張り伸び変化率(%)が0〜30(%)であることを特徴とする請求項1記載のフィルム。
  3. PHBHフィルムの製造から90日間経過後の引張り伸び率が100(%)以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム。
  4. PHBHの共重合成分の組成比が、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)=92/8〜80/20(mol/mol)であることを特徴とする請求項1〜3何れかに記載のフィルム。
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