請求項1に記載の発明は、複数の食器の表面側を上向きにして積み重ねた食器列から、その最上端にある一個の食器を掴んで順次分離して放出する食器の分離放出方法であって、前記食器の相対向する外周縁を掴む掴みチャックを固定したアームユニットを傾斜した位置と略水平位置との所定の角度範囲で繰り返し往復回動させる分離手段と、前記食器列の最上端にある食器を順次前記分離手段により掴んで分離可能な位置に食器列を上昇させる昇降手段と、を備え、前記アームユニットが傾斜した位置から略水平位置に回動したとき、前記掴みチャックが食器列の最上端にある食器の相対向する外周縁を掴んで食器列から分離し、前記アームユニットが略水平位置から傾斜した位置に回動したとき、前記掴んで分離した食器を前記掴みチャックから自重落下させて放出することを特徴とする食器の分離放出方法である。
これにより、複数の食器が積み重ねられた食器列の最上端に位置する食器の分離、放出をコンパクトな構成で順次高速で行うことができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、互いに隣り合う食器間の隙間に貯水した食器列の最上端にある食器から順次分離して放出することを特徴とする食器の分離放出方法である。
これにより、食器自体の重量に加え貯水による重量が加わり、総重量が増して掴みチャックからスムースで安定した自重落下をさせることができ放出時間を短縮することができる。さらに、互いに隣り合う食器間の隙間に貯水した水の緩衝作用により、掴みチャックによる食器への過度の押圧力を吸収し、食器の変形、破損を防止することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、食器列の最上端にある食器の表面側に注水して貯水し、この貯水した状態の食器を分離して放出することを特徴とする食器の分離放出方法である。
これにより、食器自体の重量に加え食器の表面側への注水、貯水による重量が加わり、総重量が増して掴みチャックからスムースで安定した自重落下をさせることができ放出時間を短縮することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、アームユニットが略水平位置から傾斜した位置に回動したとき、分離した食器の表面側に貯水した水量の内、少なくとも一部を排水することを特徴とする食器の分離放出方法である。
これにより、アームユニットが略水平位置から傾斜した位置に回動したとき、貯水した水が食器の表面側を流動して排水されることによって、汚れ成分の除去を促進することができる。
請求項5に記載の発明は、複数の食器の表面側を上向きにして積み重ねた食器列から、その最上端にある一個の食器を掴んで食器列から順次分離して放出する食器の分離放出装置であって、前記食器の相対向する外周縁を掴む掴みチャックを固定したアームユニットを傾斜した位置と略水平位置との所定の角度範囲で繰り返し往復回動させる分離手段と、食器列の最下端の食器を支持する受枠を昇降させる駆動源を有し、前記駆動源により、前記食器列の最上端にある食器を順次前記分離手段により掴んで分離可能な位置に食器列を上昇させる昇降手段と、を備え、前記分離手段は、食器の相対向する外周縁を掴む掴みチャックと、食器の相対向する外周縁を摺動自在とするガイドレールと、を有したアームユニットと、前記アームユニットを傾斜した位置と略水平位置との所定の角度範囲で往復回動させるリンク機構と、を備え、前記掴みチャックは、前記アームユニットが傾斜した位置から略水平位置に回動したとき、食器列の最上端にある食器の相対向する外周縁を掴んで食器列から分離し、前記アームユニットが略水平位置から傾斜した位置に回動したとき、前記掴みチャックで掴んだ食器を、前記掴みチャックおよびガイドレールに沿って摺動させて自重落下させて放出することを特徴とする食器の分離放出装置である。
これにより、複数の食器が積み重ねられた食器列の最上端に位置する食器の分離、放出をコンパクトな構成で順次高速で行うことができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、掴みチャックは、上面、下面、及び相対向面の間隔が下方ほど広がる傾斜面を有した可動爪と、前記可動爪の上面と下面を摺動自在に収納する収納本体と、前記可動爪を食器の相対向する外周縁に向けて付勢するばね部材を一対として相対向した位置に備え、前記可動爪は、アームユニットが略水平位置に向けて回動するとき、前記傾斜面が食器列の最上端にある食器の外周縁の上側に接触し、前記ばね部材の付勢力に抗して後退し、さらに前記上面と傾斜面の交点である先端部が食器の外周縁の下側に達したとき、前記ばね部材の付勢力により食器の外周縁の下側に入り込んで最上端にある食器の相対向する外周縁を掴んで食器列から分離することを特徴とする食器の分離放出装置である。
これにより、複数の食器の表面側を上向きにして積み重ねた食器列から、その最上端にある一個の食器を確実に掴んで順次分離することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の発明において、アームユニットは、その中間部にある第1の回動支点を挟んで一方端側に掴みチャックを有し、他方端側に第2の回動支点を有し、リンク機構は、前記アームユニットの第2の回動支点に一方端側を連結し、他方端側に第3の回動支点を有する第1の連結部材と、前記第3の回動支点に一方端側を連結し、他方端側を駆動源であるモータの回転軸に固定した第2の連結部材と、を備え、前記第2の連結部材の回転により、前記第1の連結部材と第2の連結部材とを回動自在とする前記第3の回動支点は、上死点と下死点を経て回転し、前記アームユニットは、前記第3の回動支点の上死点と下死点との変位に対応して、略水平位置と所定の傾斜した位置との範囲で往復回動することを特徴とする食器の分離放出装置である。
これにより、掴みチャックを有するアームユニットを所定角度傾斜した位置から略水平位置に回動させ、この略水平位置から所定角度傾斜した位置へ回動させて戻るまでの往復動作を1サイクルとして、この1サイクルを短時間で行うことができる。したがって、食器の分離、放出を高速で行うことができる。さらに、モータの回転速度、回転と停止等の駆動制御によって、アームユニットの回動状態を調節し、掴みチャックでの食器の掴み、および分離、放出を確実に行うことができる。
請求項8に記載の発明は、請求項5~7のいずれか1項に記載の発明において、アームユニットの所定角度傾斜した位置から略水平位置への回動時間よりも、略水平位置から所定角度傾斜した位置への回動時間をより長く設定することを特徴とする食器の分離放出装置である。
これにより、アームユニットの所定角度傾斜した位置への回動によって掴みチャックで掴んだ食器の自重落下により放出する時間をより長くとることができ、食器の放出をより確実なものとすることができる。
請求項9に記載の発明は、請求項5~8のいずれか1項に記載の発明において、アームユニットが略水平位置から傾斜した位置に達したとき、前記アームユニットが傾斜した位置に所定時間停止する待機時間を設けたことを特徴とする食器の分離放出装置である。
これにより、掴みチャックからの食器の分離、放出をより確実に行うことができる。
請求項10に記載の発明は、請求項5~9のいずれか1項に記載の発明において、アームユニットが傾斜した位置から略水平位置に達したとき、前記アームユニットが略水平位置よりも僅かに傾斜した位置方向へ回動した位置に所定時間停止する待機時間を設けたことを特徴とする食器の分離放出装置である。
これにより、アームユニットが略水平位置から所定角度傾斜した位置へ回動を開始するときの衝撃(反力)によって、掴みチャックで一旦掴んだ食器を脱落させずに、確実に掴むことができる。
請求項11に記載の発明は、請求項5~10のいずれか1項に記載の発明において、アームユニットが略水平位置から傾斜した位置に回動するとき、掴みチャックにより掴んだ食器の外周縁部に接触して自重落下を促進する押出し部材を備えたことを特徴とする食器の分離放出装置である。
これにより、食器は重力による落下力に加えて、掴みチャックで掴んだ食器の外周縁が押出し部材に当接摺動しながら押し出されて、掴んだ食器をより確実に放出することができる。
請求項12に記載の発明は、請求項5~11のいずれか1項に記載の発明において、掴みチャックによる掴み可能な位置における受枠の上の食器列の最上端にある食器の有無を検出する食器センサーを備え、前記食器センサーが、食器が有ることを検出したとき、前記受枠の上昇を停止させるとともに、アームユニットを傾斜した位置から水平位置への回動を開始させることを特徴とする食器の分離放出装置である。
これにより、食器列の最上端にある食器を掴みチャックによる掴み位置に保持した後、アームユニットを傾斜した位置から水平位置への回動を開始させるので、食器列の最上端にある食器から順次確実に掴んで分離することができる。
請求項13に記載の発明は、請求項5~12のいずれか1項に記載の発明において、アームユニットが傾斜した位置に回動したとき、掴みチャック部における食器の有無を検出する食器センサーを備え、前記掴みチャックから食器が自重により落下して前記食器センサーが食器の無いことを検出した後、前記アームユニットを略水平位置へ回動させることを特徴とする食器の分離放出装置である。
これにより、掴んだ食器が掴みチャックから確実に自重落下して放出されたこと検知した後、次の食器の掴み動作に入るので食器を一個ずつ確実に分離、放出することができる。
請求項14に記載の発明は、請求項5~13のいずれか1項に記載の発明において、アームユニットの往復回動により受枠の上の食器列の最下端にある食器を掴んで分離して前記受枠の上の食器が無くなったとき、前記受枠をさらに所定高さ上昇させ、前記所定高さ上昇時の前記受枠の有無を検出する受枠センサーを備え、前記受枠センサーが、前記受枠が有ることを検出した後、前記受枠を下降位置に下降させて停止させることを特徴とする食器の分離放出装置である。
これにより、受枠の上の食器列の全ての食器の分離、放出が終了した後、受枠を下降位置に下降、停止させ、速やかに分離すべき次の食器列の受枠の上への移載を行うことができる。
請求項15に記載の発明は、請求項5~14のいずれかに記載の食器の分離放出装置と、前記分離放出装置の前工程に位置して、複数の食器の表面を上向きに積み重ねた一つの自立した食器列を搬送しながら浸漬水を供給して、食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させる食器の浸漬装置と、前記分離放出装置の後工程に位置して、個々の食器の表裏面にノズルより洗浄水を噴射して汚れを除去する洗浄装置と、を備え、前記食器の浸漬装置、分離放出装置、及び洗浄装置を、食器の搬送方向が同一となるように配置して一つの洗浄レーンを構成したことを特徴とする食器洗浄システムである。
これにより、一連の構成要素を効果的に結合させ、食器に付着した汚れに水分を与えて湿潤させるに必要な時間を十分確保しつつ、複数の食器が積み重ねられた食器列の最上端に位置する食器の分離、放出を順次高速で行うことによって、単位時間当たりの食器の洗浄処理能力の向上を図ることができる。
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の発明において、浸漬装置、分離放出装置、及び洗浄装置により構成した一つの洗浄レーンを、食器の搬送方向と直交する方向に複数列併設したことを特徴とする食器洗浄システムである。
これにより、複数列の洗浄レーンを併設してもコンパクト化、設置の省スペース化を図り、種類の異なる食器を含め単位時間当たりの食器の洗浄処理数を増加させ、より多数の食器の洗浄を可能とする。
請求項17に記載の発明は、複数の食器の表面を上向きに積み重ねた一つの自立した食器列を搬送しながら浸漬水を供給して互いに隣り合う食器間の隙間に貯水し、食器に付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させる浸漬工程と、前記浸漬工程の後、前記互いに隣り合う食器間の隙間に貯水したままの状態で食器列の最上段にある食器を順次掴んで前記食器列から分離し、この分離した食器を傾斜させて自重落下により放出する分離放出工程と、前記分離放出工程により放出した食器を搬送しながら、食器の表裏面にノズルより洗浄水を噴射させて食器を洗浄する洗浄工程と、を備え、前記分離放出工程において、自重落下するときに分離した食器の表面側に貯水した水量のうち、少なくとも一部を傾斜した食器の下方となる表面側から排水することを特徴とする食器の洗浄方法である。
これにより、一連の工程を効果的に結合させ、食器に付着した汚れに水分を与えて湿潤させるに必要な時間を十分確保しつつ、複数の食器が積み重ねられた食器列の最上端に位置する食器の分離、放出を順次高速で行うことによって、単位時間当たりの食器の洗浄処理能力の向上を図ることができる。
さらに、分離放出工程において、自重落下するときに分離した食器の表面側に貯水した水量のうち、少なくとも一部を傾斜した食器の下方となる表面側から排水することによって、貯水した水が食器の表面側を流動し、汚れ成分の除去を促進することができる。
(食器洗浄システムの実施形態)
以下、本発明の一実施形態に係る食器の浸漬方法が実施される食器の浸漬装置、および食器の浸漬装置を備えた食器洗浄システム、並びに食器の洗浄方法について図1乃至図19を参照して説明する。さらに、他の実施形態の食器洗浄システムを図20乃至図22を参照して説明する。
先ず、本発明の一実施形態に係る食器洗浄システム100の基本的な構成を図1、図2を参照して説明する。本発明の一実施形態における食器洗浄システム100は、大きく分けて下記の各要素系から順次構成されている。
複数の食器Wの表面を上向きにして積み重ねた食器列WRを搬送しながら浸漬水を供給し、この浸漬水により複数の食器Wに付着した汚れ成分を湿潤させる浸漬工程を実施する浸漬装置200、
前記浸漬装置200により浸漬水で所定時間浸漬された食器列WRを上昇させる昇降手段400と、前記昇降手段400と連動して食器列WRから順次個々の食器Wを分離し放出する分離手段500を備えた分離放出工程を実施する分離放出装置300、
前記分離放出装置300に加え分離し放出された食器Wの表裏面を反転させる反転手段700を備えた分離反転工程を実施する分離反転装置600、
分離反転装置600から放出された個々の食器Wを搬送しながら表裏面に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄工程を実施する洗浄装置800、
前記洗浄装置800で洗浄された個々の食器Wを所定枚数積み重ね、かつ所定枚数積み重ねた食器Wを押し出して取り出しを可能とする食器整理工程を実施する食器整理装置900、
前記各々の装置、および全体を制御する制御装置1000、を備えている。
前記浸漬装置200、分離放出装置300を構成する昇降手段400、分離手段500、反転手段700、分離放出装置300に加え分離反転装置600を構成する反転手段700、洗浄装置800、食器整理装置900の各々は、被洗浄物である食器W(食器列WRを含む)の搬入側(食器搬送方向の上流側、投入側)から搬出側(食器搬送方向の下流側、取り出し側)への搬送方向に沿って略直線状に配置して一つの洗浄レーンSRを構成している。
なお、食器洗浄システム100の範囲としては、洗浄装置800から搬出される個々の洗浄後の食器Wを作業者が別設の作業台に移して積み重ねて整理することで、食器整理装置900を必ずしも備えなくともよいが、洗浄装置800で洗浄された個々の食器Wを所定枚数積み重ね、かつ所定枚数積み重ねた食器Wを押し出す作業の自動化を図る点で食器整理装置900を備えることが好ましい。
次に、食器洗浄システム100の基本的なシステムを構成する各要素系を順次説明する。
なお、食器洗浄システム100を構成する各要素を、食器Wの搬入側から搬出側への搬送方向に沿って略直線状に配置して一つの洗浄レーンSRを構成している。本実施形態においては前記洗浄レーンSRを食器W(浸漬装置200においては食器列WR)の搬送方向と直交する方向に複数列の洗浄レーンSR1~SR4を併設した例を中心として説明する。なお、洗浄レーンSRの範囲内として、浸漬装置200は浸漬レーンとして位置付けされる。
浸漬装置200の基本的な構成を図1、図3乃至図10、図19を用いて説明する。
浸漬装置200は、食器Wの表裏面への洗浄水の噴射による洗浄工程を実施する洗浄装置800の前工程として、複数の食器Wの表面側を上向きにして積み重ねた食器列WRを搬送しながら浸漬水を供給し、この浸漬水により複数の食器Wに付着した汚れ成分を湿潤させる浸漬工程を実施する装置である。浸漬装置200は、主に搬送手段201、浸漬水供給手段220を備える。
搬送手段201は、食器列WRの搬送方向に所定ピッチごとに食器列WRの最下端にある食器Wの側面に係止する凸部材204を装着した無端状のチェーンコンベア203を有し、このチェーンコンベア203は二つのスプロケット208に懸架されている。一方のスプロケット208はその駆動軸209がスプロケット、チェーン等(図示なし)を介してモータ(駆動源)207により回転(図9参照)する。
さらに、搬送手段201は、チェーンコンベア203の両サイドに、食器列WRの最下端にある食器Wの底部を支持し、食器列WRの重量を受ける一対の支持レール205、食器列WRの最下端にある食器Wの側面位置を規制する一対のガイドレール206を有し、支持レール205間をチェーンコンベア203が回動するように構成されている。なお、支持レール205、ガイドレール206は、最下端にある食器Wの摺動抵抗を少なくするため、少なくとも食器Wとの接触面は滑り性の良い樹脂(滑り材)を用いる。
前記したように搬送手段201は、各々の洗浄レーンSR1~SR4ごとに併設されている。洗浄レーンSR1~SR4のチェーンコンベア203は、各々二つのスプロケット208に懸架されているとともに、各々の一方のスプロケット208は共通の回転軸である駆動軸209がモータ(駆動源)207により同期して回転(図9参照)する。
各々の洗浄レーンSR1~SR4ごとに備えたチェーンコンベア203は、食器Wの搬送方向に沿って、食器列WRの最下端にある食器Wの側面に係止する所定ピッチごとに有した凸部材204が、食器列WRの最下端にある食器Wを搬送方向に押動することにより、食器列WRが自立したまま食器Wの底部(底面)が一対の支持レール205上を摺動し、さらに最下端にある食器Wの側面位置を一対のガイドレール206で規制されながら摺動して移動し搬送される。
これにより、食器列WRはその搬送方向、および搬送方向と直交する方向の位置を所定の位置に保持されるとともに、食器列WRの自立姿勢を安定化させて搬送することができる。
学校給食を例にとると、被洗浄物である食器Wとしては表面側に凹部を有し、この表面側に食品を盛り付けるお椀、皿等の種類があり、これらはその用途に応じて丸形、四角等の形状、および外径、高さ(凹部の深さ)等のサイズの異なる種類の複数の食器を使用することが一般的である。例えば、ご飯、みそ汁等にはお椀を、おかず等の副食には凹部のより浅い皿を用い、トレイにお椀2個と皿2個とを載せ生徒一人分として給食を実施する場合がある。また、これらの食器Wは1クラスごとにまとめて食器篭に入れて搬送する。
食器列WRの搬入側から搬出側への搬送方向に沿って搬送手段201を略直線状に配置して洗浄レーンSRを備え、この洗浄レーンSRを複数列(SR1~SR4)併設した本実施形態の例においては、例えば、SR1、SR2の洗浄レーンには丸形状のお椀の食器列WRを、SR3、SR4の洗浄レーンには丸形状の皿の食器列WRを搬入して浸漬工程を実施する。
また、SR1~SR4の各々の洗浄レーンに搬入する食器Wは、各々の洗浄レーンごとに略同一の形状であり、さらに食器Wに形成された凹部の開口部の外周縁の外径のサイズを略同一とし、これら略同一の形状、サイズの食器Wごとに表面を上にして複数個積み重ね食器列WRとする。したがって各々の洗浄レーンSR1~SR4の食器列WRの高さは、積み重ねる食器Wの個数を同一としても各々異なる場合がある。
各々の洗浄レーンSR1~SR4において、積み重ねる食器Wの個数は、例えば20個として食器列WRを形成する。これは食器列WRがガイド棒等を必要とすることなく支持レール205上に自立して縦方向の姿勢を維持するとともに、チェーンコンベア203の食器列WRの最下端にある食器の側面に係止する凸部材204によって間欠搬送される際に安定した縦方向の姿勢を維持できることを条件として設定する。また、食器列WRの総重量、サイズ(特に高さ)等から積み重ね、移動、運搬時等の作業者の作業性、安定性等についても考慮し設定する。なお、積み重ねる食器Wの個数は一例であってこれに限定するものではない。
また、各々の洗浄レーンSR1~SR4において、食器列WRごとに積み重ねる食器Wの個数は異なってもよいが、個数を同数とすることが食器洗浄システム100として単位時間当たりの食器Wの洗浄処理数が最も多くなり洗浄効率を最大化することができる点で好ましい。
なお、特に学校給食においては喫食時に使用するトレイ、箸、スプーン等の洗浄ラインを食器洗浄システム100に併設することが好ましい。
図8に示すように、一つの洗浄レーンSRでの搬送方向における食器列間ピッチD(食器列WRの中心軸線間の距離)は、互いに隣り合う積み重ねた食器Wの直径(外径)方向の外周縁部同士が接触せず、かつ積み重ねたときの食器列WRの中心軸線が多少のずれを生じても外周縁同士が接触しないように考慮して食器列WRの外周縁同士の間を、例えば10~20ミリメートル離間するように食器列間ピッチDを設定する。
例えば食器Wの直径を200ミリメートルとし、食器列WRの外周縁部同士の間を例えば20ミリメートル離間させた場合、食器列間ピッチDは220ミリメートルとなる。なお、食器Wの直径、食器列間ピッチD、食器列WRの外周縁部同士の間隔等の寸法は一例であってこれに限定するものではない。
また、複数列の洗浄レーンSR1~SR4に各々異なる直径(外径)の食器Wを積み重ねた食器列WRを支持レール205上に載置して搬送する場合は、複数列の洗浄レーンSR1~SR4のうち、最も直径(外径)の大きい食器Wを積み重ねた食器列WRの食器列間ピッチDを基準として、この中心軸線に合わせて他の洗浄レーンSRの食器列WRの搬送方向と直交する方向の中心軸線を略同一とし、すべての洗浄レーンSR1~SR4の食器列間ピッチDを略同一とする。
各々異なる直径(外径)の食器Wを積み重ねた食器列WRのすべての洗浄レーンSR1~SR4の食器列間ピッチDを略同一とし、かつ食器列WRの搬送方向と直交する方向の中心軸線が略同一となるように、凸部材204が食器Wの側面を係止する搬送方向の位置を調整する。
各々のスプロケット208が共通の駆動軸209に固定され、駆動軸209がモータ(駆動源)207により回転(図9参照)する。これによって、複数列の洗浄レーンSR1~SR4のチェーンコンベア203は同期して回転し、複数列の洗浄レーンSR1~SR4にある食器列WRは食器列間ピッチDを1ピッチとして同期して間欠搬送される。
図19に示すように、アームセンサー211は、間欠搬送されるチェーンコンベア203の停止位置を制御するために設けられ、チェーンコンベア203を回動させるスプロケット208の駆動軸209に固定されたアーム210の位置を検出するものである。アーム210が、例えば180度回転(半回転)するごとに、チェーンコンベア203は所定の食器列間ピッチD分(1ピッチ)だけ回動される。アームセンサー211は、磁気により検知する近接センサーを用いればよい。アーム210が回転しアームセンサー211に重なったとき、アームセンサー211の検知信号によりモータ(駆動源)207を停止させる。このアーム210、アームセンサー211により間欠搬送制御手段を構成する。なお、アームセンサー211は磁気により検知するものに限定されず光センサー等を用いてもよい。
チェーンコンベア203の各々の停止位置における停止時間(浸漬タクトタイム)は例えば略30秒とし、食器列間ピッチD分(1ピッチ)だけ搬送する時間はごく短時間(例えば1秒)とする。
また、一つの洗浄レーンSRには搬送手段201上の搬送方向に食器列WRを例えば14列載置し、食器Wを20個積み重ねた食器列WRとすれば浸漬装置200内の搬送手段201上には最大で合計280個の数の食器Wが存在し、順次間欠搬送される。さらに、4列の洗浄レーンSR1~SR4を併設した場合は、4列の各々の搬送手段201上に最大で合計1120個の数の食器Wが存在し、順次間欠搬送される。これらの食器Wの総数を最大として後述する浸漬水供給手段220による浸漬水の供給を受け個々の食器Wが浸漬されることになる。
一つの食器列WRは、浸漬装置200内において、搬送手段201上の搬送方向に食器列WRを例えば14列載置した場合、一つの食器列WRは浸漬装置200内において、14回の停止と搬送を繰り返す間欠搬送をすることになり、順次搬入される全ての食器列WRが同様の動作を繰り返すことになる。
したがって、停止位置における停止時間を例えば30秒とした場合、一つの食器列WRは浸漬装置200内において、14回の停止回数と停止時間の30秒を乗じた値、すなわち少なくとも7分間に亘って浸漬水の供給を受けることになる。この7分間の浸漬時間に亘って食器Wに付着している汚れ成分が湿潤される。
なお、搬送手段201上に載置する食器列WRの数、間欠搬送の停止時間、搬送する時間等は一例であってこれに限定されるものではない。
なお、前記した浸漬時間は、搬送手段201上の搬送方向に載置される食器列WRの数(停止回数に相当)、間欠搬送時の停止時間によって、任意に調節、設定することができる。例えば停止時間を同じとした場合、食器列WRの数を増やせば浸漬時間が長くなり、食器列WRの数を減らせば浸漬時間が短くなる。
また、食器列WRの数を同じとした場合は、停止時間を長くすれば浸漬時間が長くなり、停止時間を短くすれば浸漬時間が短くなる。
すなわち、搬送手段201の間欠搬送による食器列WRの停止回数または停止時間により、食器Wに付着している汚れ成分に水分を与えて湿潤させる浸漬時間を設定することができる。食器Wに付着している様々な汚れ成分を十分に湿潤させるためには、種々の試験の結果少なくとも7分間の浸漬時間が必要であることが把握されているが、食器Wに付着している様々な汚れ成分の種類、汚れの付着量等から浸漬時間を最適に設定することができる。
搬送手段201の搬入側(搬送方向上流側)に、食器列WRの最下端にある食器Wの底部を支持する上面視でU字状のセット枠212を配置し、セット枠212上の食器列WRの最下端にある食器Wの底面を支持する面と一対の支持レール205の上面とを略同一高さとし、かつセット枠212のU字状の開口側を一対の支持レール205側に位置させる。
セット枠212には食器列WRの最下端にある食器Wの底面を支持する面と、食器Wの側面をガイドする面を形成し、セット枠212上に載置された食器列WRの位置を規制し、その自立した姿勢を安定化させるとともに、作業者の積み重ねた食器列WRのセット枠212上への載置を容易にすることができる。
セット枠212のU字状の開口部にチェーンコンベア203がスプロケット208の径に応じた曲率をもってセット枠212のU字状の開口部を回動する。セット枠212の上に食器列WRを載置したとき、チェーンコンベア203の凸部材204は載置された食器列WRの最下端にある食器Wの側面に係止した状態の位置にある。チェーンコンベア203の回動により凸部材204がセット枠212上に載置された食器列WRの最下端にある食器Wの側面に係止して押動し、食器列間ピッチD分間欠搬送して一対の支持レール205の上に引き込んで移載する。したがって、作業者が食器列WRを一対の支持レール205上に押し込む作業を不要とすることができる。
搬送手段201の搬出側(搬送方向下流側)に、食器列WRの最下端にある食器Wの底部を支持する上面視でU字状の受枠(受台)403を配置し、受枠403上の食器列WRの最下端にある食器Wの底面を支持する面と一対の支持レール205の上面とを略同一高さとし、かつ受枠403のU字状の開口側を一対の支持レール205側に位置させる。食器列間ピッチD分の間欠搬送により一対の支持レール205上に載置された食器列WRの最下端にある食器Wにチェーンコンベア203の凸部材204により一対の支持レール205上から受枠403上に押動して移載し、載置する。したがって、作業者が食器列WRを受枠403上に押し出す作業を不要とすることができる。
受枠403には食器列WRの最下端にある食器Wの底面を支持する面と、食器Wの側面をガイドする面とを形成し、受枠403上に載置された食器列WRの位置を規制し、その自立した姿勢を安定化させる。
受枠403のU字状の開口部にチェーンコンベア203がスプロケット208の径に応じた曲率をもって受枠403のU字状の開口部を回動する。食器列間ピッチD分の間欠搬送によりチェーンコンベア203の凸部材204が食器列WRを受枠403上に移載、載置されたとき、チェーンコンベア203の凸部材204は最下端にある食器Wの側面に係止した状態にあるが、受枠403の上昇により凸部材204は食器列WRの最下端にある食器Wの側面から離れて離間して係止が解除される。
なお本実施形態においては、受枠403は、浸漬装置200の次工程である分離放出装置300を構成する昇降手段400に有するものであるが、受枠403と同様の基本構成の食器列WRを受けて載置できる別部材(図示なし)を、昇降手段400とは関連させないで浸漬装置200の搬出側に設置し、この別途設置した受枠(受台)に移載、載置された食器列WRを作業者が取り出し、個々の食器Wに分離して洗浄装置に搬入する構成とすることもできる。
また、受枠403を支持レール205から離れる方向にスライドさせて凸部材204が食器列WRの最下端にある食器Wの側面から離れて離間して係止が解除されるように構成し、受枠(受台)に移載、載置された食器列WRを作業者が取り出し、個々の食器Wに分離して洗浄装置800に搬入する構成とすることもできる。
各洗浄レーンSR1~SR4において、食器Wの形状、サイズ等に対応させて一対の支持レール205の間隔、および一対のガイドレール206の間隔を変えるとともに、セット枠212、受枠(受台)403もこれに合わせて変える。
各洗浄レーンSR1~SR4のセット枠212上に食器列WRを載置した後、作業者が浸漬装置200の搬入側に設置された食器列投入スイッチ230を操作する。この操作により搬送手段201のモータ207を駆動し、チェーンコンベア203を回動させて食器列間ピッチDの1ピッチ分搬送する。次の食器列WRをセット枠212上に載置した後、食器列投入スイッチ230の操作を順次繰り返す。
また、例えば1日分(1ロット)の浸漬装置200に搬入する食器列WRが最終となったとき、この最終の食器列WRをセット枠212上に載置した後は、最終食器列投入スイッチ231を操作する。この操作により搬送手段201のモータ207を駆動し、チェーンコンベア203を回動させて食器列間ピッチDの1ピッチ分搬送する。この最終食器列投入スイッチ231を操作した後は、さらに最終の食器列WRが搬送手段201上で14回停止する間欠搬送を繰り返した後、15回目の食器列間ピッチDの1ピッチ分の搬送、停止により受枠403上に押動して移載、載置が完了するまで搬送手段201のモータ207の間欠駆動を継続する制御を行う。
前記最終食器列投入スイッチ231を操作した一定時間後であっても、浸漬装置200に食器列WRを搬入する必要が生じた場合には、最終食器列解除スイッチ232を操作し、セット枠212上に食器列WRを載置した後、次に食器列投入スイッチ230を再操作することによって、前記した動作を繰り返すことができるように構成、制御される。なお、食器列投入スイッチ230、最終食器列投入スイッチ231、最終食器列解除スイッチ232については図9に示す。なお、これらに関する詳細な運転動作は後述する。
次に、図13、図14、図16を用いて、浸漬水供給手段220を説明する。
浸漬水供給手段220は、食器列WRの搬送方向で、食器列WRの上方で水平方向に配置された複数のノズル管221と、このノズル管221に浸漬水を下方に噴射する複数のノズル222を備え、前記ノズル管221は複数列の洗浄レーンSR1~SR4にある食器列WR1~WR4に亘って浸漬水を噴射できるように管長方向を食器列WRの搬送方向に対して直交する方向とし、かつ食器列WRの搬送方向に複数配置されている。
また、食器列WRの搬送方向で、食器列WRの側方に配置された複数のノズル管223と、このノズル管223に浸漬水を側方に噴射する複数のノズル224を備え、前記ノズル管223は複数列の洗浄レーンSR1~SR4にある食器列WR1~WR4ごとに浸漬水を噴射できるように管長方向を食器列WRと同方向(縦方向)とし、且つ食器列WRの搬送方向に複数配置されている。
なお、ノズル管221に加えノズル管223を備えるようにしたが、ノズル管221のノズル222から円錐形状に浸漬水を噴射させることによって、食器列WRの側面に直接到達する浸漬水を形成させ、ノズル管223をなしとしノズル管221のみ備える構成としてもよい。
図1に示すように、搬送手段201の下方位置に浸漬水を所定量貯水するタンク225を配置し、タンク225内の浸漬水を、供給経路を介してノズル管221、223に供給するポンプ228を備える。ノズル管221の複数のノズル222、ノズル管223の複数のノズル224から噴射された浸漬水はタンク225内に落下して回収され循環使用する。
また、後述する浸漬装置200の後工程として備える分離放出装置300の昇降手段400、分離手段500、反転手段700の回転ドラムユニット701の下方位置で、これらの部分で食器Wから排水、落下する浸漬に使用された浸漬水を受ける水受け226、227を配置している。水受け226、227で受けた浸漬水は順次タンク225に落下し回収され循環使用する。
なお、図示していないが、タンク225には浸漬水(例えば清水)を供給する経路と、タンク225内の浸漬水の水位を所定のレベルに保つために水位検出手段を備える。またタンク225内の浸漬水の温度を所定の温度、例えば40~50度Cに昇温する加熱手段、洗剤を供給する洗剤供給手段、ポンプ228の吸入側に汚れ成分を除去するフィルタ等を備える。
浸漬水の昇温、洗剤供給によって食器Wに付着した汚れ成分の湿潤効果を向上させ、かつ洗浄装置800での汚れ成分の除去をより確実なものとすることができる。また、フィルタによって、より清浄化した浸漬水をノズルから噴射し、汚れ成分の湿潤効果をより向上させることができる。
なお、図示していないが、搬送手段201、浸漬水供給手段220を覆う外郭部材(カバー)を設けてトンネル状として浸漬室を形成し、浸漬水の外部への飛散防止、浸漬水の放熱を抑制して温度低下を防ぐとともに、浸漬室を高湿度の状態として食器Wに付着した汚れ成分の湿潤効果を向上させ、且つ洗浄装置800における汚れ成分の除去をより確実なものとすることができる。
なお、複数列の洗浄レーンSR1~SR4に亘って一つのタンク225、およびポンプ228を備えるものとし、前記ノズル管221は複数列の洗浄レーンSR1~SR4にある食器列WR1~WR4に亘って浸漬水を噴射できるように管長方向を食器列WRの搬送方向に対して直交する方向とし、且つ食器列WRの搬送方向に複数配置されている。これによって、複数列の洗浄レーンSR1~SR4を構成しても、構成要素の共通化、簡略化、および制御系統の統一化を図ることができる。
次に、浸漬装置200の運転動作を説明する。実施形態に基づいて洗浄レーンを4列とした構成をベースとして説明する。
(浸漬水充填ステップ)
先ず、タンク225内に浸漬水(例えば清水)を所定の水位レベルになるまで供給する。このとき必要に応じてタンク225内に浸漬水を供給した後、この浸漬水に洗剤を供給するとともに、高温蒸気供給等による加熱手段により浸漬水の温度を所定の温度、例えば40~50度Cに昇温する。
(浸漬水噴射ステップ)
次に、ポンプ228を駆動しタンク225内の浸漬水を、供給経路を介してノズル管221、223に供給し、ノズル222、ノズル224から噴射を開始させる。ノズル222、ノズル224から噴射した浸漬水は、タンク225内に落下して貯水され循環使用する。
(食器列セット枠載置ステップ)
この後、各洗浄レーンSR1~SR4に予め所定個数(たとえば20個)表面を上向きにして積み重ね自立した各々の食器列WR1~WR4を搬送手段201の搬入側に有するセット枠212上に載置する。
(食器列搬入開始ステップ)
最初に浸漬装置200に搬入する食器列WR1~WR4のセット枠212上への載置が終了した後、食器列投入スイッチ230(図9参照)を作業者が押動の操作を行い、この操作信号によって搬送手段201のモータ207が駆動を開始する。モータ207の駆動によりスプロケット208が回転し、各々のチェーンコンベア203が回動する。このときチェーンコンベア203に有する凸部材204が食器列WR1~WR4の最下段に位置する食器Wの側面に当接してセット枠212上から支持レール205上に押動して移載する。
(間欠搬送開始ステップ)
食器列WR1~WR4をセット枠212上から支持レール205上に押動して移載する際、駆動軸209とともに回転するアーム210が、略180度回転した状態となるときアーム210の一方端側がアームセンサー211に近接し、これをアームセンサー211が検知しモータ207の駆動を停止するように制御される。このとき食器列間ピッチD分、チェーンコンベア203が回動して支持レール205上に例えば略30秒間停止する制御を行う。また食器列間ピッチD分の搬送時間(チェーンコンベア203の回動時間)は例えば略1秒に設定している。
食器列WR1~WR4はセット枠212上から支持レール205上に押動して移載されたとき、ノズル222、ノズル224から噴射される浸漬水の供給を受け始める。
(食器列連続搬入ステップ・浸漬ステップ)
この後、再びセット枠212上に2番目に搬入する食器列WR1~WR4を載置し、載置を終了した後、食器列投入スイッチ230を作業者が押動操作を行い、この操作信号によって搬送手段201のモータ207の駆動を開始させる。前記した各々のチェーンコンベア203が回動しチェーンコンベア203に有する凸部材204が食器列WR1~WR4の最下段に位置する食器Wの側面に当接してセット枠212上から支持レール205上に押動して移載する。以降、この作業、操作を順次繰り返す。
(停止時間優先ステップ)
2番目の食器列WR1~WR4を載置しセット枠212上から支持レール205上に押動して移載する状態において、セット枠212上に2番目の食器列WR1~WR4の載置を終了し、食器列投入スイッチ230を作業者が押動操作を行っても最初の食器列WR1~WR4が支持レール205上に30秒間の停止時間を経過していなければモータ207の駆動を開始させないで30秒の停止時間経過後にモータ207の駆動を開始させる制御を行う(停止優先制御)。前記した各々のチェーンコンベア203が回動しチェーンコンベア203に有する凸部材204が2番目の食器列WR1~WR4の最下段に位置する食器Wの側面に当接してセット枠212上から支持レール205上に押動して移載する。このときアームセンサー211の検知により食器列間ピッチD分チェーンコンベア203が回動して支持レール205上に略30秒間停止する。
また、セット枠212上に2番目の食器列WR1~WR4の載置を終了し、食器列投入スイッチ230を作業者が押動操作を行ったとき、最初の食器列WR1~WR4が支持レール205上に30秒間の停止時間を経過していれば、即モータ207の駆動を開始させる。前記した各々のチェーンコンベア203が回動しチェーンコンベア203に有する凸部材204が2番目の食器列WR1~WR4の最下段に位置する食器Wの側面に当接してセット枠212上から支持レール205上に押動して移載する。このときアームセンサー211の検知により食器列間ピッチD分チェーンコンベア203が回動して支持レール205上に略30秒間停止する。
既に浸漬水の噴射を受けている最初の食器列WR1~WR4に続いて、2番目の食器列WR1~WR4はセット枠212上から支持レール205上に押動して移載されたとき、ノズル222、ノズル224から噴射される浸漬水の供給を受け始める。
搬入する三番目以降の食器列WR1~WR4も前記したと同様の動作を繰り返し、順次食器列WR1~WR4の浸漬装置200への搬入(投入)を繰り返す。
(最終食器列投入ステップ)
順次食器列WR1~WR4の浸漬装置200への搬入を繰り返し、例えば1日分(1ロット)の浸漬装置200に搬入する食器列WR1~WR4が最終となったとき、この最終の食器列WR1~WR4をセット枠212上に載置した後には、最終食器列投入スイッチ231(図9参照)を操作する。この操作により搬送手段201のモータ207を駆動し、チェーンコンベア203を回動させて食器列間ピッチDの1ピッチ分搬送する。
このとき、最終食器列投入スイッチ231を操作しても最初、および2番目以降の食器列WR1~WR4の搬入と同様に、最終の食器列WR1~WR4の一つ前の食器列WR1~WR4が支持レール205上に30秒間の停止していなければモータ207の駆動を開始させないで30秒停止時間経過後にモータ207の駆動を開始させる制御を行う。
また、最終の食器列WR1~WR4の一つ前の食器列WR1~WR4が支持レール205上に30秒間の停止時間を経過していれば、即モータ207の駆動を開始させる。前記した各々のチェーンコンベア203が回動しチェーンコンベア203に有する凸部材204が2番目の食器列WR1~WR4の最下段に位置する食器Wの側面に当接してセット枠212上から支持レール205上に押動して移載する。
順次投入し食器列WR1~WR4は食器列間ピッチD分ずつ間欠搬送され停止位置に14回停止しながら合計略7分間に亘って噴射される浸漬水の供給を受ける。したがって、浸漬水の供給を受ける浸漬装置200内に最大14列の食器列WR1~WR4の各々に存在することになる。
最初の食器列WR1~WR4は浸漬装置200内で浸漬水を受けながら14回の間欠搬送された後、次の間欠搬送(15回目)により受枠403上に移載される。この後順次投入された食器列WR1~WR4も同様に14回の間欠搬送をされた後、次の間欠搬送により受枠403上に移載される。
前記したように間欠搬送において、停止回数を14回、停止時間を30秒とすれば各々の食器列WRは最少でも略7分間に亘って噴射される浸漬水の供給を受け汚れ成分を湿潤させることになる。
洗浄レーンSR1~SR4のいずれかの洗浄レーンSRにおいて、前記最終の食器列WRが他の洗浄レーンSRよりも早く搬入終了する場合には、最後となる最終の食器列WRが搬入される洗浄レーンSRを基準として最終食器列投入スイッチ231を操作する。
また、最終食器列投入スイッチ231を操作した一定時間後であっても、浸漬装置200に食器列WRを搬入する必要が生じた場合には、最終食器列解除スイッチ232(図9参照)を操作し、セット枠212上に食器列WRを載置した後、次に食器列投入スイッチ230を操作することによって、前記した動作を繰り返すことができる。
さらに、浸漬工程を実施すべき食器Wの状況に応じて例えば、4つ(複数)の洗浄レーンSR1~SR4の使用を最大として、例えば任意の数の洗浄レーンSRを選択して使用も可能であって、このときも前記したと同様の食器列WRの搬入、間欠搬送、搬出の運転動作、制御を行う。なお、実施形態においては4つの洗浄レーンSR1~SR4を備えた例として説明したが、これに限定するものではない。
浸漬装置200に搬入した最終の食器列WR1~WR4が14回間欠搬送され、次の間欠搬送(15回目)により受枠403上に移載された後、チェーンコンベア203、ポンプ228の駆動を停止する。
なお、浸漬装置200による浸漬工程の後工程である分離放出装置300、分離反転装置600との関連におけるチェーンコンベア203による食器列WR1~WR4の間欠搬送の制御方法については後述する。
次に、食器列WRの搬送手段201による搬送状態を説明する。浸漬装置200に搬入される食器列WR1~WR4の各々は、最下端にある食器Wの底部が一対の支持レール205上に載置されるとともに、最下端にある食器Wの両側面は一対のガイドレール206によって搬送方向と直交する方向の位置を規制され、さらにチェーンコンベア203に装着した凸部材204が最下端にある食器Wの搬送方向の側面(搬送方向上流側)に当接し、チェーンコンベア203の回動にともなって凸部材204により自立した食器列WRの全体を搬送する。このとき、食器列WRの全重量の掛かる最下端にある食器Wの底部が一対の支持レール205上を摺動し、さらに最下端にある食器Wの両側面は一対のガイドレール206に沿って摺動する。
これによって食器列WRは、自立姿勢を維持するための例えば食器Wの外周縁部の3か所以上を支持するガイド棒等を用いることなく、一対の支持レール205、一対のガイドレール206に沿って安定した自立姿勢を維持したまま搬送することができる。
また、食器列WRへ噴射した浸漬水が一対の支持レール205、一対のガイドレール206の摺動面を濡らして滑りやすくなり、食器Wとの摺動抵抗を減少させてより安定した自立姿勢を維持したまま搬送することができる。なお、一対の支持レール205、一対のガイドレール206の少なくとも食器Wとの摺動面は滑り性の良い樹脂等とすることによって、より一層食器Wとの摺動抵抗を減少させてより安定した自立姿勢を維持したまま搬送することができる。
次に、浸漬装置200における食器列WRに噴射した浸漬水を供給し、食器Wに付着した汚れを湿潤させる状態を、図6を用いて説明する。
食器列WRの最上端の食器Wよりも上方からノズル管221のノズル222から下方に向けて噴射された浸漬水は、先ず最上端の食器Wの表面側(凹部)に貯水され、この貯水された浸漬水は食器Wの外周縁に沿って溢れ水として流下し、下方に位置する互いに隣り合う食器Wの外周縁の上下方向の間隔から積み重ねて互いに隣り合う食器W間の隙間に流入し、順次この隙間に貯水されていく。
このとき、ノズル222から下方に向けて噴射された浸漬水の量をより多くした場合は、先ず最上端の食器Wの表面側(凹部)に貯水された後、外周縁から溢れて落下流束を形成して各々の外周縁に沿って食器列WRの最下端の食器Wまで短時間で達する。この浸漬水の落下流束から分岐して下方に位置する互いに隣り合う食器Wの外周縁の間隔から積み重ねて互いに隣り合う食器W間の隙間に流入し、より短時間で貯水される。
互いに隣り合う食器W間の隙間に流入貯水されるとともに連続して噴射される浸漬水によって互いに隣り合う食器W間の隙間に貯水した浸漬水の一部が常に入れ替わる状態となる。これによって汚れ成分の湿潤が促進されるとともに汚れの一部が剥離して除去される作用も生じ、予備洗浄作用も生じ食器洗浄システム100全体としての洗浄効果、洗浄効率をより高めることができる。
ノズル管221のノズル222から浸漬水を下方に向けて広角度に噴射することによって、浸漬水の一部が食器列WRの側方側からも直接食器Wの全体の外周縁に達し、互いに隣り合う食器W間の各隙間への貯水がより早くなるとともに外周縁部の汚れの除去も促進される。
さらに、縦方向のノズル管223のノズル224から浸漬水を水平方向から食器列WRの各食器Wに噴射する構成を加えた構成の場合は、浸漬水が食器列WRの側方側からも直接食器Wの全体の外周縁に達し、互いに隣り合う食器W間の隙間への貯水がより早くなるとともに外周縁部の汚れの除去も促進される。なお、縦方向のノズル管223は構成の簡略化を図る点から必要に応じて設ければよい。
ノズル管221のノズル222から、またはノズル管223のノズル224から食器列WRに噴射された浸漬水は搬送手段201に流下した後、タンク225内に落下して貯水され再びポンプ228によって圧送され循環使用する。これによって、タンク225内に貯留させておく浸漬水の量を必要最小限とすることができ節水を図ることができる。またポンプ228の能力制御によって食器列WRに供給する浸漬水の供給量を最適に調節することができる。
以上のように、本実施形態の浸漬装置200は、複数の食器Wを積み重ねて(例えば20個)食器列WRとし、この複数の食器列WR(例えば14列)を一つの洗浄レーンSRの搬送手段201上の搬送方向に載置し、搬送手段201で搬送しながら食器列WRの互いに隣り合う食器W間に貯水した浸漬水によって食器Wに付着した汚れ成分を湿潤させる。
このように上下方向の空間を活用して複数の食器Wを積み重ねて食器列WRを形成し、かつ搬送手段201上の搬送方向に互いに近接させて複数の食器列WRを載置することによって、上下方向、食器列WRの搬送方向、および搬送方向と直交する方向の必要な空間を最少として、この空間に食器Wを高密度に収納することができる。これによって浸漬装置200全体をコンパクトに構成することができるとともに、設置する際の省スペース化を図ることができる。
また、洗浄レーンSRを複数備えた浸漬装置200の構成とすれば、互いに隣り合う洗浄レーンSR間の食器列WRの搬送方向と直交する方向の必要な空間も最少として、この全体の空間に多数の食器Wを高密度に収納することができる。これによって、より多数の食器Wの浸漬を同時に行うことができ、浸漬装置200全体をコンパクトに構成することができるとともに、設置する際の省スペース化を図ることができる。
従来は、食器Wの個々、または食器列WRを食器篭等に入れて浸漬槽に貯水した浸漬水中に所定時間に亘って水没させる浸漬方法が主であった。これに対して本実施形態の浸漬装置200においては、浸漬水中への水没させるのでなく、搬送手段201上の解放された大気中(空間、水中外)に複数の食器Wを積み重ねて食器列WRを形成してこれを搬送しながら浸漬水を噴射し各々の食器列WRの互いに隣り合う食器W間に貯水した浸漬水によって食器Wに付着した汚れ成分を湿潤させるものである。
これによって、個々の食器Wの浸漬作用を安定化させるとともに、食器列WRの浸漬装置200への搬入、搬出の作業が簡略され作業性、安全性の向上が図れ、浸漬に必要最小限の浸漬水となり節水を図ることができる。
以上のように、本実施形態の浸漬装置200は、食器Wに付着した汚れに水分を与えて湿潤させるに必要な時間を十分確保しつつ、コンパクト化、設置の省スペース化を図り、大量の食器Wの浸漬を可能とする。
次に、図1、2、図9~図19を用いて浸漬装置200により浸漬水で所定時間浸漬された食器列WRを上昇させる昇降手段400と、前記昇降手段400と連動して食器列WRから順次個々の食器Wを分離し放出する分離手段500を備えた分離放出工程を実施する分離放出装置300の構成を説明する。さらに、分離放出装置300に反転手段700を加えた分離反転装置600の構成を説明する。
分離放出装置300を構成する食器列WRを上昇させる昇降手段400は、固定部材401に固定した駆動源であるモータ402、このモータ402の回転軸と一体化されて回転する縦方向の昇降用ネジ棒404を有する。さらに、食器列WRの最下端の食器Wが載置される受枠(受台)403と、受枠403と一体となった雌ねじ体403aが昇降用ネジ棒404と螺合して、昇降用ネジ棒404の回転により雌ねじ体403aを介して受枠403が昇降する。受枠403の上昇にともなって食器列WRの全体を上昇させる。
なお、モータ402には、受枠403の上下方向の所定位置の設定の容易性、および非駆動(非通電)時に昇降用ネジ棒404の回転を防止するブレーキ機構(図示なし)を内蔵したステッピングモータを用いることが好ましい。
また、受枠(受台)403が昇降用ネジ棒404を中心軸として回動しないようにするため、食器Wの半周側に昇降用ネジ棒404と並行配置された2本のスライド軸(ガイド棒)405を有する。なお、スライド軸405の外周表面は食器Wの外周縁との滑り性、食器Wへのメタルマークの形成を防止するためスライド軸405の少なくとも外周表面は樹脂であることが好ましい。
さらに、スライド軸405の外周表面は、受枠403上に食器列WRを載置したとき、および昇降動作時に各食器Wの外周縁がスライド軸405の外周表面に沿って摺動し、食器列WRの自立姿勢を安定化させる機能を合わせ持つものである。
受枠403は、前記したように搬送手段201の搬出側(搬送方向の下流側)に位置し、食器列WRの最下端にある食器Wの底部を支持する上面視でU字状として、食器列WRの最下端にある食器Wの底面を支持する面と一対の支持レール205の上面とを略同一高さとし、かつ受枠403のU字状の開口側を一対の支持レール205側に位置させる。食器列間ピッチD分の間欠搬送により一対の支持レール205上に載置された食器列WRの最下端にある食器Wにチェーンコンベア203の凸部材204が係止し、一対の支持レール205上から受枠403上に押動して移載、載置する。
受枠403には食器列WRの最下端にある食器Wの底面を支持する面と、食器Wの側面をガイドする面を形成し、受枠403上に載置された食器列WRの位置を規制し、その自立した姿勢を安定化させる。
チェーンコンベア203がスプロケット208の径に応じた曲率をもって、受枠403のU字状の開口部を回動する。食器列間ピッチD分の間欠搬送により、受枠403上に移載、載置された後は、受枠403が上昇するとき食器列WRの最下端にある食器Wの側面が、チェーンコンベア203の凸部材204から上方に離れて離間して係止が解除され、食器列WRは受枠403上に静止する。
また、受枠403が上昇にともなって食器列WRの全体を上昇させる際に食器列WRの自立した姿勢を維持するため、前記食器Wの半周側の外周縁を支持する2本のスライド軸405と対向する半周側に食器列ガイド406(図15(a)を参照)を設け、これによって2本のスライド軸405と合わせ、受枠403の上の食器列WRの上昇時の自立した姿勢を維持するとともに、食器列WRの中心軸のずれを抑制することができる。
さらに、昇降手段400には、食器列間ピッチD分の間欠搬送により一対の支持レール205上に載置された食器列WRの最下端にある食器Wにチェーンコンベア203の凸部材204により一対の支持レール205上から受枠403上に押動して移載、載置する位置にあることを検知する受枠センサー(下降位置検知手段)407を設けている(図10、図14、図17、図18、図19を参照)。この受枠センサー407には、例えば磁気式近接センサーを用い受枠403と一体化されたセンサー感知部材403bと近接したときスイッチがON状態となり、食器列WRをチェーンコンベア203の凸部材204により一対の支持レール205上から受枠403上に押動して移載、載置してもよい位置であるかを検知して制御を行う。
また、受枠403上に載置した食器列WRを上昇させ、後述する分離手段500により食器列WRの最下端の食器W(分離すべき最後の食器W)の受枠403からの分離が終了し、受枠403上の残食器Wの有無を検知する食器センサー(掴み位置検知手段)410が、受枠403上に残食器Wが無いことを検知した後、この位置から受枠403を所定距離上昇させて停止させ、この停止位置において受枠センサー(上限位置検知手段)408が受枠403と一体化されたセンサー感知部材403bと近接したときスイッチがON状態となり、モータ402を上昇させるときの昇降用ネジ棒404の方向の回転とは逆方向に回転させる制御を行い、受枠403を前記一対の支持レール205上から受枠403上に押動して移載、載置する下降位置まで下降させる(図14参照)。
食器センサー410は、例えば、一対の発光素子と受光素子から構成され、食器Wが有りのとき受光素子への光が遮断され、食器Wが無のとき受光素子へ光が到達し、食器Wの有無を検知する光センサーである。
なお、受枠センサー407、受枠センサー408、食器センサー410は、洗浄レーンSR1~SR4の個々に独立して設置された各々の昇降手段400ごとに設けられている。
また受枠403が、チェーンコンベア203の凸部材204により一対の支持レール205上から受枠403上に押動して移載、載置してもよい下降位置にあるとき、受枠403上の食器列WRの有無を検知する一対の発光素子と受光素子から構成された食器センサー409を設けている。この食器センサー409は、食器列WRの内、最下端の食器Wを検知し、かつ洗浄レーンSR1~SR4の個々に設置された昇降手段400の全ての受枠403上の食器Wの有無を検知する。
この食器センサー409が洗浄レーンSR1~SR4の個々に設置された昇降手段400の全ての受枠403上に食器Wが無いことを検知したとき、搬送手段201で搬送される後続の食器列WRをチェーンコンベア203の凸部材204により一対の支持レール205上から各々の受枠403上に押動して移載、載置してもよいとの検知信号を制御装置1000に送る。食器センサー409が、食器Wが有ることを検知したときは、チェーンコンベア203の回動動作を待機させ、食器Wが無いことを検知してからチェーンコンベア203の回動動作を開始してもよいとの検知信号を制御装置1000に送る。
また、食器センサー409は、洗浄レーンSR1~SR4の個々に設置された昇降手段400の全ての受枠403上に食器Wが無いことを検知して受枠403上に食器列WRを移載、載置したとき、この受枠403上に食器列WRが有ることを検知し、各々の受枠403を上昇させてもよいとの検知信号を制御装置1000に送る。
次に、図1、2、図10~図19を用いて前記昇降手段400と連動して食器列WRの上から順次個々の食器Wを分離し放出する分離手段500の構成を説明する。
アームユニット501は、両サイドに有するアーム502、503の一方側を連結アーム504で連結して構成し、アーム502、503の略中間部には各々アーム軸受505を装着している。
この各々アーム軸受505には支点軸506を貫通させ、軸受507に支持された支点軸506を回動支点としてアームユニット501が回動する。
連結アーム504には固定部材508、さらに固定部材508に固定部材509aが一体されている。さらに、固定部材508には固定部材509bが収納本体511に連接して固定されている。
固定部材509aには所定の長さを有する一対の収納本体511が固定され、この相対向する収納本体511の相対向する側の凹部内に摺動可能に可動爪512が収納されている。
可動爪512の上面512a、下面512bを形成し、この上面512aと下面512b間に下方向に傾斜した傾斜面512cが形成されており、上面512a、下面512bが収納本体511の凹部内を摺動する。なお、後述するが上面512aと傾斜面512cとの頂点部が食器Wの相対向する外周縁の下側に入り込み掴んで分離するものである。
なお、可動爪512の摺動方向(長手方向)の中心位置は、食器列WRの最上端の食器Wの中心軸線と略同一とさせている。
収納本体511の凹部内にばね部材(付勢手段)513を収納し、可動爪512を相対向する方向(内側方向)に付勢する。なお、図示しないが、ばね部材513により可動爪512を相対向する方向(内側方向)に付勢したとき、可動爪512の摺動による移動距離を制限して収納本体511の凹部内に留めるストッパー部を収納本体511に備える。
可動爪512の上面512aと対向する固定部材509aの下面には上ガイドレール(ガイドレール)514を有し、さらに上ガイドレール514は固定部材509bの長さまで位置している。また、固定部材509bには上ガイドレール514と対向して下ガイドレール(ガイドレール)515を設けている。上ガイドレール514と可動爪512の上面512aとの間隔、および上ガイドレール514と固定部材509bに設けた下ガイドレール515との間隔に食器Wの相対向する外周縁が支持され摺動自在となっている。
前記した一対の収納本体511、可動爪512、ばね部材513により各々の掴みチャック510a~510dを構成し、図11(b)に示すように、洗浄レーンSR1~SR4に沿って、各々の掴みチャック510a~510dをアームユニット501に併設し、掴みチャックユニット510としている。なお、図12はアームユニット501に一つの掴みチャックユニット510aを備えた例として記載したものである。
洗浄レーンSR1~SR4ごとに備える各々の掴みチャック510a~510dは、食器Wの形状、外周縁の径等に応じて、相対向する収納本体511の相対向する側の凹部内を摺動可能にした可動爪512間の距離や、形状を変える。
次に、主に図10、図11(b)を用いて、掴みチャックユニット510を有するアームユニット501を往復回動させるアーム回動機構520の構成を説明する。
モータ(駆動源)521により回転するモータ回転軸522に有するスプロケット523と軸受525に支持された回転軸524に有するスプロケット526同士にチェーン527を懸架し、回転軸524を回転させる。回転軸524の両端部に所定長さの回転レバー528(第2の連結部材)の一端側を固定し、回転レバー528の他方端側は回転軸524を中心軸として回転する。なお、モータ521にはブレーキ手段を内蔵したステッピングモータを用いることが好ましい。
回転レバー528の他方端側は所定長さの連結レバー530(第1の連結部材)の一方端側とジョイント529(第3の回動支点)により回動自在に連結されている。また、連結レバー530(第1の連結部材)の他方端側は、アーム502、503の一方端側(掴みチャックユニット510の反対側)とジョイント531(第2の回動支点)により回動自在に連結されている。さらに、アーム軸受505により支持された支点軸506(回動支点軸、第1の回動支点)を中心としてアーム502、503の掴みチャックユニット510を有する他方端側が自由端として回動する。
アーム502、503、支点軸506(回動支点軸、第1の回動支点)、連結レバー530(第1の連結部材)、ジョイント531(第2の回動支点)、回転レバー528(第2の連結部材)、ジョイント529(第3の回動支点)の各々によりリンク機構532を構成している。このリンク機構532によって、掴みチャックユニット510を有するアームユニット501を略水平位置から傾斜した位置までの所定の角度範囲(例えば略45度)で往復回動させるものである。動作については後述する。
また、分離手段500には図15、図17に示すように、固定フレーム533に支持固定され、各々の掴みチャック510a~510dに対応して押出し部材540を備える。この押出し部材540は、掴みチャック510a~510dで掴んだ食器Wの落下放出を促進させる機能を有する。
モータ521、リンク機構532、軸受507、525等は、図17に示すように、固定フレーム541に固定されている。
図15、図18に示すように、掴みチャックユニット510で掴んでアームユニット501が略水平位置から傾斜した位置に回動したとき、掴んだ食器Wが掴みチャックユニット510の位置に残っているかの有無を検知する一対の発光素子と受光素子から構成された食器センサー550を設けている。この食器センサー550は、洗浄レーンSR1~SR4に有する掴みチャック510a~510dの各々に設置されている。
アームユニット501が傾斜した位置で食器センサー550が掴みチャックユニット510の位置に食器Wが無いことを検知したとき、アームユニット501を略水平位置に回動してもよいとの検知信号を制御装置1000に送る。また、食器センサー550が掴みチャックユニット510の位置に食器Wが有ることを検知したままのときは、アームユニット501の略水平位置への回動を停止させたままで待機するよう検知信号を制御装置1000に送る。
図15に示すように、各々の昇降手段400の受枠403上に載置した食器列WRの最上端に位置する食器Wの表面側に注水する注水管570を設けている。この注水管570は、一端が最上端に位置する食器Wの表面側に向けて開口して位置し、他端は給水源(図示なし)に連通している。給水源としては、後述する洗浄装置800のポンプ813の吐出経路に連通させ、洗浄水(仕上げ洗浄水)の一部を供給させる構成となっている。
なお、食器Wの表面側に注水する水としては、浸漬装置200のポンプ228の吐出経路に注水管570を連通させ、浸漬水の一部を供給してもよいし、上水道(水道水)経路に注水管570を連通させて清水を供給してもよい。
次に、図11、図15、図16、図17を用いて分離反転装置600に備える反転手段700の構成を説明する。
回転ドラムユニット701は、洗浄レーンSR1~SR4に有する分離手段500の各々に設置されている各々の回転ドラム701a~701dを連接して一体化して構成されている。各々の回転ドラム701a~701dには、側壁702、中心側から放射状に設けた複数の仕切壁703を有し、これらによって区画された複数の食器収納空間704を形成している。食器収納空間704は分離手段500から分離し放出された個々の食器Wを受け取り、回転ドラム701a~701dの回転により食器Wの表面側を下向きに反転させ、反転後の食器Wを食器収納空間704から自重落下させて放出する。また、食器収納空間704は回転ドラム701a~701dの円周方向に等分した位置に4個形成されている。
食器収納空間704は収納される食器Wの外周縁の径、高さ(深さ)に応じて、2つの側壁702間の距離、中心側から放射状に設けた複数の仕切壁703間の距離によって各々最適寸法に設定する。また、食器収納空間704の円周方向の寸法は、ほぼ食器Wの全体が食器収納空間704内に入り込むよう設定する。
次に、回転ドラムユニット701を回転させるドラム駆動部705を説明する。
アーム回動機構520に有するモータ521のモータ回転軸522に固定したスプロケット706と支点軸506に固定したスプロケット707にチェーン708を懸架し、モータ521の回転により、図15に示すように回転ドラムユニット701を矢印方向に回転(右回転)させる。
アームユニット501の回動と回転ドラムユニット701の回転は、アーム回動機構520に有するモータ521を同一の駆動源として駆動する。
また、アームユニット501の回動支点(第1の回動支点)となる支点軸506に、回転ドラムユニット701の中心部を固定し、回転ドラムユニット701は支点軸506と一体となって回転する。さらに、アームユニット501の往復回動と回転ドラムユニット701の間欠回転(例えば略45度ごと)は、同一の駆動源であるモータ521の回転によって同期して駆動される。
なお、アームユニット501の回動と回転ドラムユニット701の回転は、アーム回動機構520に有するモータ521を同一の駆動源として駆動としたが、アームユニット501の回動の駆動源と、回転ドラムユニット701の駆動源とは、別々の駆動源として駆動させてもよい。その場合においても、アームユニット501の回動と回転ドラムユニット701の回転とは同期させる。
また、図1に示すように、回転ドラム701a~701dの回転により食器Wの表面側を下向きに反転させ、反転後の食器Wを食器収納空間704から自重落下させて放出する位置に食器落下ガイド710を設けている。この食器落下ガイド710によって、放出された食器Wを食器収納空間704から次の工程である洗浄装置800のコンベア802上に安定した姿勢で移載することができる。
また、食器落下ガイド710上に放出された食器Wが残っているかの有無を検知する一対の発光素子と受光素子から構成された食器センサー720を設けている。この食器センサー720は洗浄レーンSR1~SR4に有する食器落下ガイド710全体に亘って食器Wの有無の検知を行う。
食器センサー720が食器落下ガイド710上に食器Wが無いことを検知したとき、アームユニット501が傾斜した位置から略水平位置への回動、およびアームユニット501と同期駆動される回転ドラムユニット701の回転をしてもよいとの検知信号を制御装置1000へ送る。また、食器センサー720が食器落下ガイド710上に食器Wが有ることを検知したままのときは、アームユニット501が傾斜した位置から略水平位置への回動、およびアームユニット501と同期駆動される回転ドラムユニット701の回転を開始しないようにとの検知信号を制御装置1000へ送る。
次に、分離放出装置300と、これと関連して動作する分離反転装置600の運転動作を説明する。先ず、食器Wの分離放出運転、分離反転運転を開始するときの初期(待機)状態を説明する。
分離放出装置300を構成する昇降手段400に有する受枠403の位置は、食器列WRの最下端にある食器Wの底面を支持する面と一対の支持レール205の上面とを略同一高さとした下方に位置させた状態とする。この下方位置での停止状態(待機状態)は受枠403が浸漬装置200の一対の支持レール205上に載置された食器列WRの移載、載置を可能とする位置である。
このとき、全洗浄レーンSR1~SR4に位置する各々の受枠403に設けた受枠センサー感知部材403bが受枠センサー407に近接しており、各々の受枠センサー407は、受枠403が前記下方位置に有ることを検知している。さらに食器センサー409は受枠403上に食器Wが無いことを検知している。これらによって、一対の支持レール205上に載置された食器列WRの受枠403への移載、載置を可能とする状態で待機している。
次に、分離放出装置300を構成するアームユニット501、分離放出装置300に加え分離反転装置600を構成する回転ドラムユニット701の基本的な待機状態を説明する。
図15(c)、図16(c)に示すように、掴みチャックユニット510を有するアームユニット501は、所定角度(例えば略45度)傾斜した位置で待機する状態となっている。
このとき、回転軸524に固定されたリンク機構532を構成する回転レバー528と連結レバー530のジョイント529が下死点(最下点)にあり、連結レバー530の一方端とアーム502、503のジョイント531が押し下げられた下死点(最下点)にある。
これによって、アーム502、503は支点軸506(回動支点軸、第1の回動支点)を中心として掴みチャックユニット510を有するアームユニット501の他方端側が押し上げられ、アームユニット501全体が傾斜した位置で待機状態となっている。
また、このとき反転手段700の回転ドラムユニット701は、掴みチャックユニット510から落下放出される食器Wの受け入れを可能とする食器収納空間704が掴みチャックユニット510と同方向である傾斜した位置で待機状態となっている。
また、食器センサー550は、掴みチャック510a~510dの各々に食器Wが無いことを検知している。また、食器落下ガイド710上に放出された食器Wが残っているかの有無を検知する食器センサー720が洗浄レーンSR1~SR4に有する食器落下ガイド710の全体に亘って食器Wが無いことを検知している(図15(c)、図19参照)。
これらの食器センサー550、食器センサー720が、食器Wが無いことを検知しているとき、次の動作であるアームユニット501を傾斜した位置から略水平位置(食器Wの掴み位置)への回動を可能とする制御を行う。
次に、掴みチャックユニット510を有するアームユニット501、回転ドラムユニット701の前記待機状態である所定角度傾斜した位置から略水平位置へ変化する状態を説明する。
モータ521を駆動させ、チェーン527を介して回転軸524に固定された回転レバー528が回転し、回転レバー528と連結レバー530のジョイント529が上死点(最上点)に変化し、連結レバー530の一方端とアーム502、503のジョイント531が押し上げられた上死点(最上点)に変化する。
これによって、アーム502、503は支点軸506(回動支点軸、第1の回動支点)を中心として掴みチャックユニット510を有するアームユニット501の他方端側が押し下げられ、アームユニット501全体が傾斜した位置から略水平位置に略45度回動した位置に変化する。
また、このとき反転手段700の回転ドラムユニット701の待機状態の位置にあった最初の食器収納空間704が略45度、図15に示す太線矢印方向に回転(右回転)し、次の食器収納空間704がアームユニット501と同方向の状態となっている。
次に、食器列WRの最上端の食器Wから順次分離し放出、および反転される動作を説明する。
なお、ここでは浸漬装置200において最初に搬入された食器列WR(一番目の食器列)が所定の浸漬時間を経過している状態として説明する。
(受枠上への食器列の移載、載置チェックステップ)
浸漬装置200から昇降手段400の受枠403上に食器列WRを移載、載置前段階において、センサー感知部材403bが受枠センサー407に近接しており、各々の受枠センサー407が、受枠403が下方位置に有ることを検知している。さらに食器センサー409が受枠403上に食器Wが存在していないことを検知している。これらによって、一対の支持レール205上に載置された食器列WRの受枠403への移載、載置を可能とする状態で待機している。
(食器列移載、載置ステップ)
一対の支持レール205上に載置された食器列WRの移載、載置を可能とする下方位置にある受枠403上に、浸漬装置200のチェーンコンベア203を食器列間ピッチD分だけ間欠搬送して一対の支持レール205上に載置された食器列WR(一番目の食器列)を移載、載置する。
(食器列上昇、掴み位置停止ステップ)
洗浄レーンSR1~SR4の全ての受枠403上に食器列WRの移載、載置が終了したとき、食器センサー409が受枠403上に食器Wが存在していることを検知する。この検知信号によって、昇降手段400のモータ402を駆動し、受枠403を食器列WRとともに上昇させる。上昇させる過程で食器列WRの最上端に位置する食器Wを食器センサー410が検知したときモータ402の駆動を停止し、食器列WRの最上端の食器Wの高さ方向の位置(掴み位置)を保持する。
(アームユニット水平位置への回動ステップ)
さらに、食器列WRの最上端に位置する食器Wを食器センサー410が検知したとき、モータ521を駆動し掴みチャックユニット510を有するアームユニット501が所定角度傾斜(例えば略45度)した位置で待機する状態からアームユニット501を略水平位置に回動させる。
アームユニット501全体が略水平位置に回動する過程、略水平位置に達したときにおける食器列WRの最上端に位置する食器Wの分離状態を、図13を用いて説明する。
図13(a)と(b)の状態となって、掴みチャックユニット510に有する一対の可動爪512の傾斜面512cが最上端に位置する食器Wの相対向する外周縁に当接して押圧し始める。
さらなる押圧によって可動爪512は付勢手段であるばね部材513の付勢力に抗して後退(食器Wの外周縁から互いに離れる方向)していく。
(最上端の食器掴みステップ)
さらに、アームユニット501が回動し略水平位置に達して可動爪512の上面512aと傾斜面512cの頂点部が食器Wの外周縁の下面を越えたとき、図13(c)に示すように、可動爪512はばね部材513の付勢力によって内側(食器Wの外周縁に近づく方向)に押圧され、可動爪512の上面512aと傾斜面512cの頂点部が最上端に位置する食器Wの外周縁と直下の食器Wの外周縁との間に入り、最上端に位置する食器Wの外周縁の下面を支持して掴んだ状態となる。
(アームユニット傾斜位置への回動ステップ)
アームユニット501が回動し略水平位置で最上端に位置する食器W(一番目の食器W)を掴んだ後、アームユニット501を傾斜位置へ回動させることによって、図13(d)に示すように、最上端に位置する食器Wを食器列WRから分離する。
このとき、食器Wが浸漬水で濡れていることによって、食器Wの外周縁と可動爪512の特に傾斜面512cとの摺動抵抗が減少し、よりスムースな掴み、分離動作を行うことができる。
また、食器列WRの各食器W間に浸漬水が貯水され互いに隣り合う食器Wの上側に位置する食器Wは若干の浮力を受けており、一対の可動爪512の傾斜面512cが最上端に位置する食器Wの外周縁に当接して押圧するとき、貯水された浸漬水の緩衝作用により、押圧時の食器Wへの過度の押圧力を吸収し、食器Wの変形、破損を防止する作用効果を有する。
次に、アームユニット501が回動して傾斜位置へと変化し、掴んで分離した食器Wを放出する過程を図15、図16を用いて説明する。
(掴みチャックからの食器放出ステップ)
図15(b)、図16(a)は、アームユニット501が略水平位置から次第に回動し、アームユニット501の傾斜角度が増していく過程を示し、掴みチャック510a~510dで掴んだ食器Wは自重により落下をし始める。さらに傾斜角度が増していくと、図16(b)に示すように、食器Wは重力による落下力に加えて、掴みチャック510a~510dで掴んだ食器Wの外周縁が押出し部材540に当接摺動しながら回転ドラム701a~701dの各々の食器収納空間704側へ押し出される。
(食器収納空間への放出、収納ステップ)
図15(c)、図16(c)に示すように、アームユニット501が所定の傾斜角度に変化していくとき、掴んだ食器Wは、アームユニット501の傾斜と連動して回転する回転ドラム701a~701dの各々の食器収納空間704内へ落下して放出される。このとき食器センサー550は、掴みチャック510a~510d部に食器Wが有ることを検知している状態から落下、放出によって食器Wが無いことを検知する状態となる。
アームユニット501が傾斜位置から略水平位置へと回動するのと同期して、回転ドラムユニット701は、図15に示す太線矢印方向に45度右回転する。
さらに、アームユニット501が略水平位置から傾斜位置へと回動するのと同期して、回転ドラムユニット701は、図15に示す太線矢印方向に45度右回転する。
つまり、アームユニット501を傾斜した位置から略水平位置へ、略水平位置から傾斜した位置へ回動する1サイクル動作を行うと、これに同期して回転ドラムユニット701は、図15に示す太線矢印方向に90度右回転することとなる。
特に、アームユニット501が略水平位置から傾斜位置へと回動するのと同期して、回転ドラムユニット701は、図15に示す太線矢印方向に45度右回転することにより、掴みチャックユニット510から放出される食器Wが、アームユニット501が略水平位置から傾斜位置へと回動中のどのタイミングで放出されても、回転ドラムユニット701の食器収納空間704で受け取ることができる。食器の種類、食器に付着している汚れ等により、掴みチャック510a~510dでの摺動状態が変化し、食器Wが放出されるタイミングが異なっても、放出される食器Wを確実に回転ドラムユニット701の食器収納空間704で受け取ることができる。
アームユニット501の傾斜と連動、同期して回転ドラム701a~701dが回転するので、アームユニット501が所定の傾斜位置に達する過程において掴んだ食器Wの一部が自重落下をし始めても回転ドラム701a~701dの各々の食器収納空間704内へ収納可能な状態となっており、掴みチャック510a~510dで掴んだ食器Wの各々の食器収納空間704内への放出を安定化させるとともに、掴みチャック510a~510dから食器収納空間704内への放出、移載を極めて短時間で行うことができる。
アームユニット501の傾斜によって掴みチャック510a~510dで掴んだ食器Wが自重落下していく過程において、食器Wの相対向する外周縁は可動爪512の上面512aと上ガイドレール514、さらに固定部材509bに有する下ガイドレール515と上ガイドレール514にガイドされて摺動し、したがって食器Wを安定して自重落下させていくことができる。
さらにこのとき、食器W自体の重量に加え貯水した浸漬水の重量が加わり、総重量が増して重力による落下力が大きくなるとともに、食器Wの相対向する外周縁が可動爪512の上面512aと上ガイドレール514、さらに固定部材509bに有する下ガイドレール515と上ガイドレール514にガイドされて摺動しながら自重落下する際、食器Wは浸漬水で濡れていることによって摺動抵抗が減少する。
これらによって、よりスムースで安定した食器Wの自重落下をさせることができ、落下速度も増して放出時間を短縮させることができる。
また前記したように、各々の昇降手段400の受枠403上に載置した食器列WRの最上端に位置する食器Wの表面側に注水する注水管570を設けている。これより順次分離する最上端に位置する食器Wの表面側には浸漬装置200において貯水した浸漬水に加えて注水されることになり、食器Wの表面側の凹部は常に満水となって外周縁から溢れ水となって下方に位置する食器Wの外周縁に流下する状態となる。
これによって、常に順次分離する最上端に位置する食器Wの表面側は満水状態となることから、食器W自体の重量に、貯水した浸漬水と注水管570からの注水した水の重量が加わり、総重量がさらに増して位置エネルギーが増大し、落下しようとする力が大きくなる。したがって、さらにスムースで安定した食器Wの自重落下をさせることができ、落下速度も増して放出時間を短縮させることができる。また比較的軽量な食器Wを用いた場合であっても、総重量が増してスムースで安定した食器Wの自重落下をさせることができる。
また、最上端に位置する食器Wの表面側の凹部は常に満水となって外周縁から溢れ水となって下方に位置する食器Wの外周縁に流下する状態となることから、分離工程においても食器列WRの互いに隣り合う食器W間の隙間に貯水されている浸漬水の流動、入れ替わりを促進して汚れ成分への浸漬作用の効果をより発揮させることができる。
さらに、最上端に位置する食器Wの表面側の凹部は常に満水となるとともに、継続して注水管570から供給されて流動化することから、表面側の汚れ成分の一部を除去することができる。注水管570からは、後述する洗浄装置800のポンプ813の吐出経路に連通させ、汚れ成分を含まない仕上げ洗浄水の一部を供給することによって、食器Wの表面側の洗浄効果をより発揮させることができる。
アームユニット501が略水平位置から傾斜した位置に回動するとき、アームユニット501の傾斜にあわせて食器Wが傾斜する。傾斜した食器Wは掴みチャックユニット510を摺動して自重落下するとき、および食器Wが掴みチャックユニット510から放出されて回転ドラム701の食器収納空間704へ自重落下するときに、食器Wの表面側に貯水されている浸漬水は、傾斜した食器Wの下方となる表面側から少なくとも一部が排水される。そして、この排水にともなう浸漬水の流動によって、汚れの一部が除去される作用を生じさせることができる。なお、この排水は水受け226、227を介してタンク225へ流動落下する。
また、順次分離する最上端に位置する食器Wの表面側には浸漬装置200において貯水した浸漬水に加えて注水管570から注水されて貯水され、食器Wの表面側の凹部は常に満水状態で掴みチャックユニット510で分離され、アームユニット501が略水平位置から傾斜した位置に回動するとき、傾斜した食器Wの下方となる表面側から排水される排水量が増加する。これにより、この排水にともなう流動により汚れ成分の除去をより促進させることができる。
なお、食器Wとしては、樹脂成型された樹脂食器や、焼成された磁器食器等を用いればよいが、本実施形態の食器洗浄システム100では、所定の重量があり、食器Wの表面側および裏面側が滑らかで滑り性が良く、摺動させたときに食器Wの表面が削れることのない磁器食器(強化磁器食器を含む)を用いることが好ましい。
次に、食器列WRの一番目の次に位置する二番目の食器Wを分離し放出する状態を説明する。
(食器列再上昇、掴み位置停止ステップ)
食器列WRの最上端に位置する食器W(一番目)を掴みチャック510a~510dから回転ドラム701a~701dの各々の食器収納空間704側へ押し出されるとき、食器センサー550は発光素子から受光素子へ光が導通し掴みチャック510a~510d部分に食器Wが無いことを検知し、この検知信号により昇降手段400のモータ402を駆動し受枠403を上昇させる。受枠403の上昇にともない食器センサー410が二番目の食器Wが有ることを検知してモータ402の駆動を停止させ、二番目の食器Wを掴み位置に保持する。
(アームユニット水平位置への回動ステップ)
この後、モータ521を駆動し掴みチャックユニット510を有するアームユニット501が所定角度傾斜した位置で待機する状態から再びアームユニット501を略水平位置に回動させる。
アームユニット501を略水平位置に達したときの二番目の食器Wの掴み、分離放出状態(最上端の食器掴みステップ、掴みチャックユニット510からの食器放出ステップ、食器収納空間への放出、収納ステップ)は、前記した食器列WRの最上端(一番目)に位置する食器Wの分離放出状態と同様にして行われる。例えば、食器列WRに20個の食器Wを積み重ねたときは、20回の食器Wの分離動作を順次繰り返し行う。
なお、食器列WRの最後の食器Wを掴みチャックユニット510が掴んでアームユニット501が傾斜した位置に回動して食器収納空間704に自重落下させた後も、アームユニット501を傾斜した位置から略水平位置へ、略水平位置から傾斜した位置へ回動する1サイクルを、2サイクル連続して繰り返す動作を行う。この2サイクルのアームユニット501の往復回動時には回転ドラムユニット701も同期して略180度回転する。この回転ドラムユニット701の回転中に、回転ドラムユニット701の食器収納空間704内に既に収納されている2個の食器Wを反転させるとともに食器収納空間704内から放出する動作を実施する。
アームユニット501が傾斜位置にある状態において食器センサー550が掴みチャック510a~510d部に食器Wが有ることを検知したままの状態のときは、アームユニット501を傾斜位置で待機させ、掴みチャック510a~510d部で食器Wが落下しない要因を取り除き、食器センサー550が食器Wの無いことを検知した後、アームユニット501を傾斜位置から略水平位置へ回動させる。
次に、食器Wの表裏面を反転させる過程を図15、図16を用いて説明する。
掴みチャック510a~510dで掴んで分離し放出した食器Wは、アームユニット501の回動と同期(連動)して間欠回転する回転ドラム701a~701dの各々の食器収納空間704内へ順次放出、移載されていく。各々の食器収納空間704内へ放出、移載された食器Wは、回転ドラム701a~701dの回転により順次食器Wの表面側を下向きに反転させ、反転後の食器Wを食器収納空間704から自重落下させて放出する。アームユニット501が傾斜した位置にあるとき、この傾斜した位置と反対側(180度)の位置が回転ドラム701a~701dへの放出位置となる(図15(c)参照)。
反転後の食器Wを放出する位置に有する食器落下ガイド710上を摺動させて、既に駆動状態にある次の工程の洗浄装置800のコンベア802上に移載する。食器Wは上下からその表裏面に洗浄水が噴射され洗浄を開始する。このときコンベア802の食器Wの搬送速度は、食器落下ガイド710上を自重落下する食器Wの速度よりも速く設定してある。これによって食器落下ガイド710上での食器Wの滞留を防止するとともに、コンベア802上において互いに隣り合う食器W間に所定の間隔を与えて食器W同士の重なりを防止し確実な洗浄を可能とする。なお、洗浄装置800の基本構成動作は後述する。
また、各々の食器落下ガイド710上に放出された食器Wが残っているかの有無を検知する一対の発光素子と受光素子から構成された食器センサー720を設けているが、この食器センサー720が洗浄レーンSR1~SR4に有する食器落下ガイド710全体に亘って食器Wが無いことを検知した後、アームユニット501を傾斜した位置から略水平位置へ回動させる。
食器センサー720が食器落下ガイド710上に食器Wが有ることを検知したまま状態のときは、アームユニット501を傾斜した位置で待機させる。そして、食器落下ガイド710部に滞留する要因を取り除いて食器Wが無いことを検知した後、アームユニット501を傾斜した位置から略水平位置へ回動させる。
(食器列順次間欠搬送ステップ)
一つの食器列WRの全ての食器Wの分離放出動作を終了した後、次に間欠搬送されてくる食器列WRを昇降手段400の受枠403に移載し、同様の分離放出動作を最終食器列WRまで繰り返す。
掴みチャックユニット510を有するアームユニット501を所定角度傾斜した位置(待機位置、放出位置)から略水平位置(掴み位置)に回動させ、この略水平位置から所定角度傾斜した位置へ回動させて戻るまでの往復動作を1サイクルとし、この1サイクルの動作時間は、モータ521の回転速度の設定によりリンク機構532を介して例えば略1.5秒とする。これによって、食器列WRの最上端に位置する食器Wの一個ずつを1.5秒という短時間、高速での分離放出を可能とし、例えば、食器列WRに積み重ねた食器Wを20個とした場合、一つの食器列WRは30秒の時間で全ての食器Wの分離放出の動作を終了する。なお、アームユニット501の往復動作の1サイクル時間は略1.5秒に限定するものではない。
また、1サイクルにおけるアームユニット501の傾斜した位置で高速で分離放出された食器Wは、アームユニット501の往復回動と同期して回転する回転ドラムユニット701の食器収納空間704に1.5秒間隔で収納される。さらに、アームユニット501の傾斜した位置と反対側に位置する食器収納空間704から、表裏面を反転され表面側が下向きとなった食器Wが洗浄装置800のコンベア802上に移載されていく。すなわち、連続した分離状態においては、アームユニット501の回動と回転ドラムユニット701の回転とは互いに同期駆動されているため、食器列WRの最上端の食器Wの掴み、分離から洗浄装置800のコンベア802上へ1.5秒間隔で移載されていくことになる。
アームユニット501の1サイクル動作時間は、モータ521の回転速度によって設定できるが、さらにモータ521は常に回転を継続し、かつ回転速度を一定とすればリンク機構532により、アームユニット501の回動は所定角度傾斜した位置、略水平位置(掴み位置)で瞬時反転することになる。
(アームユニットの傾斜した位置待機ステップ)
アームユニット501の傾斜した位置から略水平位置へ瞬時反転させずに、アームユニット501の傾斜した位置に達したとき、モータ521の回転を一時停止する制御を行うことによって、アームユニット501が傾斜した位置に留まる時間、すなわち待機時間を制御することができる。
この待機時間は例えば略0.05秒とし掴みチャックユニット510部での食器Wの分離、放出時間、食器収納空間704への収納時間等を基に設定する。この待機時間を設けることによって掴みチャックユニット510部からの分離放出、回転ドラムユニット701への放出、収納を確実に行うことができる。
(アームユニットの略水平位置待機ステップ)
また、掴みチャックユニット510を有するアームユニット501の略水平位置から傾斜した位置へ瞬時反転させ、アームユニット501が略水平位置よりも僅かに傾斜した位置方向へ回動した位置でモータ521の回転を一旦停止する制御を行う。この一旦停止による待機時間は例えば略0.1秒とし、掴みチャックユニット510での食器Wの掴みをより確実に行うための時間として設定する。前記待機時間が経過した後、モータ521を回転させてアームユニット501を略水平位置から傾斜した位置へ回動させる。
前記したように、掴みチャックユニット510に有する一対の可動爪512の傾斜面512cが最上端に位置する食器Wの相対向する外周縁に当接して押圧し、さらなる押圧によって可動爪512は付勢手段であるばね部材513の付勢力に抗して後退(食器Wの外周縁から互いに離れる方向)していく。
さらに、アームユニット501が回動し略水平位置に達して可動爪512の上面512aと傾斜面512cの頂点部が食器Wの外周縁の下面を越えたとき、可動爪512はばね部材513の付勢力によって内側(食器Wの外周縁に近づく方向)に押圧され、可動爪512の上面512aと傾斜面512cの頂点部が最上端に位置する食器Wの外周縁と直下の食器Wの外周縁との間に入り、最上端に位置する食器Wの外周縁の下面を支持して掴んだ状態となる(図13(a)~(c)参照)。
掴みチャックユニット510に有する一対の可動爪512が、ばね部材513の付勢力に抗して後退(食器Wの外周縁から互いに離れる方向)した後、可動爪512はばね部材513の付勢力によって押圧されて内側(食器Wの外周縁に近づく方向)に戻りきるまでに若干の時間が必要となる。
前記したアームユニット501が略水平位置よりも僅かに傾斜した位置方向へ回動した位置でのモータ521の回転の一旦停止による待機時間は、可動爪512はばね部材513の付勢力による戻り時間を確実に確保し、これによって食器Wを確実に掴んだ後、アームユニット501が略水平位置から所定角度傾斜した位置へ回動を開始するときの衝撃(反力)によって、一旦掴んだ食器Wを脱落させずに、確実に掴むことができる。
さらに、アームユニット501が略水平位置よりも僅かに傾斜した位置方向へ回動した位置でモータ521の回転の一旦停止させたとき、食器列WRの最上端に位置する食器Wは下方の二番目に有る食器Wよりも僅かに上昇した状態にある。
この状態のとき、食器列WRの最上端に位置する食器Wから下方の二番目に有る食器Wの外周縁から可動爪512の傾斜面512c、および上面512aと傾斜面512cの頂点部が離れて、可動爪512はばね部材513の付勢力によって押圧されて内側(食器Wの外周縁に近づく方向)に確実に戻りきり、これによって最上端に位置する食器Wをより確実に掴むことができる。
アームユニット501が傾斜した位置に留まる時間、アームユニット501が略水平位置に留まる時間である前記各々の待機時間を含めてアームユニット501が往復動作する1サイクルの動作時間を例えば略1.5秒とするものである。
また、モータ521の回転速度の制御によって、掴みチャックユニット510を有するアームユニット501の所定角度傾斜した位置(待機位置、放出位置)から略水平位置(掴み位置)への回動速度と、この略水平位置から所定角度傾斜した位置への回動速度の各々を個別に制御することもできる。
アームユニット501が往復動作する1サイクルの動作時間を例えば略1.5秒としたまま、掴みチャックユニット510に掴んだ食器Wが無い状態での、アームユニット501の所定角度傾斜した位置から略水平位置への回動時間よりも、掴みチャックユニット510に掴んだ食器Wが有る状態での、アームユニット501の略水平位置から所定角度傾斜した位置への回動時間をより長く設定する。
これによって、アームユニット501が往復動作する1サイクルの動作時間を例えば1.5秒に維持したまま、アームユニット501の所定角度傾斜した位置への回動によって掴みチャックユニット510で掴んだ食器Wの自重落下による放出する時間、および回転ドラムユニット701の食器収納空間704への収納する時間をより長くとることができ、食器収納空間704への食器Wの収納をより確実なものとすることができる。
また、受枠403上に載置した食器列WRを上昇させ、分離手段500により食器列WRの最下端の分離すべき最後の食器Wの受枠130からの分離が終了し、受枠403上の残食器Wの有無を検知する食器センサー410(掴み位置検知手段)が、受枠403上に残食器Wが無いことを検知した後、この位置から受枠403を所定距離上昇させて停止させる。この停止位置において、受枠センサー408(上限位置検知手段)が受枠403と一体化されたセンサー感知部材403bと近接したとき、受枠センサー408が検知信号を出し、モータ402の回転を、受枠403を上昇させるときの昇降用ネジ棒404の回転の方向とは逆方向に回転させる制御を行い、受枠403を前記一対の支持レール205上から受枠403上に押動して移載、載置する下降位置まで下降させる(図14参照)。
食器列WRの最上端の分離すべき最後の食器W(最上端の食器W)の分離が終了してから、受枠403を一対の支持レール205上から移載、載置する下降位置まで下降させるまでの時間は、例えば略2秒である。なお、受枠403の下降は、アームユニット501が略水平位置から傾斜した位置への回動開始とほぼ同時に開始している。
次いで、受枠403が下降位置まで下降した後、これを受枠センサー407が検知するとともに食器センサー409が受枠403上に食器Wが無いことを検知し、浸漬装置200の搬送手段201であるチェーンコンベア203を1ピッチ(食器列間ピッチD)分だけ回動させ、次の食器列WRを一対の支持レール205上から受枠403上に移載、載置する。
なお、チェーンコンベア203を1ピッチ(食器列間ピッチD)分だけ回動させる時間は略1秒である。
さらに、下降位置にある受枠403上に次の食器列WRを移載、載置した後、食器センサー409が食器列WRの最下端の食器Wが有ることを検知し、モータ402を駆動させて受枠403を上昇させ最上端の食器Wを食器センサー410が検知して受枠403の上昇を停止するまでの時間(掴み位置まで上昇させる時間)は、例えば略1秒である。
これにより、一つの食器列WRの全数の食器Wが分離された後、次の食器列WRの最上端の食器Wの分離を開始されるまでの時間は、前記した受枠403を下降位置まで下降させる時間(略2秒)、次の食器列WRを一対の支持レール205上から下降した受枠403上に移載、載置する時間(略1秒)、受枠403を再び掴み位置まで上昇させる時間(略1秒)の各々を合計した略4秒となる。
したがって、一つの食器列WRの全数の食器Wが分離された後、次の食器列WRの最上端の食器Wの分離を開始されるまでの必要時間を最少として連続的に食器Wの分離、放出、および反転動作を行うことができる。
アームユニット501を例えば略1.5秒という極短時間で往復動作(1サイクル)させることによって、一つ食器列WRに積み重ねられた食器Wを、高速で分離、放出し、さらには反転を実行し、かつ一つの食器列WRの全数の食器Wが分離された後、次の食器列WRの最上端の食器Wの分離を開始されるまでの必要時間も最少となることから、浸漬装置200で所定の浸漬時間を経た食器列WRから順次連続的に食器Wの分離、放出、および反転動作を行うことができる。
順次、高速で連続的に分離、放出された食器W、および反転された食器Wは、次の工程である洗浄装置800のコンベア802へ移載、載置され洗浄水の表裏面への噴射により洗浄されていく。アームユニット501の往復動作(1サイクル)を略1.5秒、一つの食器列WRの全数の食器Wが分離された後、次の食器列WRの最上端の食器Wの分離を開始されるまでの必要時間を略4秒とした場合、一つの洗浄レーンSRにおける1時間当たりの食器Wの洗浄処理数は略2118個となり、多数の食器Wの洗浄を行うことができる。さらに、4列の洗浄レーンSR1~SR4とした場合には、この4倍の食器Wの洗浄処理数が、1時間当たりの食器Wの洗浄処理数となる。なお、洗浄装置800の構成、動作については後述する。
なお、前記したように、食器列WRの最後の食器Wを掴みチャック510a~510dが掴んでアームユニット501が傾斜した位置に回動して食器収納空間704に自重落下させた後も、アームユニット501を傾斜した位置から略水平位置へ、略水平位置から傾斜した位置へ回動する1サイクルを、2サイクル連続して繰り返す動作を行う。このアームユニット501が2サイクル連続して繰り返す動作時間は、略3秒となり、この動作時間内に食器列WRの最後の食器Wを分離した後の受枠403の下降位置への下降動作を実施する制御を行う。
なお、複数列の洗浄レーンSR1~SR4の全てにおいて、積み重ねる食器Wの個数を同数(例えば20個)とした食器列WRから順次分離、放出させる場合は、洗浄レーンSR1~SR4の食器列WRの全数の食器Wが分離、放出される時間は同一となり、さらに、次の食器列WRの最上端の食器Wの分離を開始されるまでの時間も同一となる。
しかし、複数列の洗浄レーンSR1~SR4のいずれか、例えばSR1の洗浄レーンにおいて、積み重ねる食器Wの個数が少ない(例えば18個)食器列WRとした場合、この食器列WRから全数の食器Wが分離される時間は、他の洗浄レーンSRの20個の食器列から全数の食器Wが分離される時間より短くなり、SR1の洗浄レーンの受け枠403を先行させて一対の支持レール205上から移載、載置する下降位置まで下降させて、他の洗浄ラインSR2~SR4の洗浄レーンの受け枠403が下降位置まで下降するまで待機させる。
洗浄レーンSR1~SR4の全ての受け枠403が下降位置まで下降した後、次の食器列WRを浸漬装置200の一対の支持レール205上から下降した受枠403上に移載、載置し、最上端の食器Wの分離を開始するように制御するものである。
これによって、積み重ねる食器Wの個数が少ない食器列WRとした洗浄レーンSR1においては、受枠403を待機させる時間に相当する分(食器W2個分)、食器Wの分離、放出の処理数が減少することになる。したがって、各々の洗浄レーンSR1~SR4において、食器列WRごとに積み重ねる食器Wの個数は異なってもよいが、個数を同数とすることが食器洗浄システム100として単位時間当たりの食器Wの洗浄処理数が最も多くなり洗浄効率を最大化することができる点で好ましい。
浸漬装置200、分離放出装置300、分離反転装置600、洗浄装置800で洗浄レーンSRを構成する食器洗浄システム100においては、浸漬装置200での食器列WRへの浸漬水の供給による食器Wの表面側の貯水による汚れ成分の十分な湿潤化作用、および貯水された浸漬水の流下、浸漬水の入れ替わりによる一部汚れの除去作用、分離放出装置300、分離反転装置600における食器Wに貯水されている浸漬水の流動、排水による汚れの除去作用により予備洗浄される。これによって、洗浄装置800での食器Wの表裏面への洗浄水の噴射による洗浄によって残った汚れを確実に除去することができる。
また、食器列WRからの食器Wの分離放出装置300、および分離放出装置300をベースとした分離放出方法においては、昇降手段400、分離手段500を含めて、食器列WRの中心軸線と掴みチャック510a~510dを有するアームユニット501で掴んで放出するときの食器Wの中心軸線が、食器Wの搬送方向に沿って略直線状に構成したこと、および食器列WRの最上端の食器Wを掴んで食器列WRから食器Wを上方に分離し、この分離直後から、ただちに食器Wを自重落下させることができる。
これにより、積み重ねられた食器Wの分離、放出を高速で行うことができる。さらに、平面視で洗浄レーンSRに沿った食器Wの搬送方向、およびこの搬送方向と直交する方向の必要スペース(必要な距離)が最小となり、食器Wの分離放出装置300の設置床面積を小さくして、コンパクト化することができる。さらに、分離放出装置300を食器Wの搬送方向と直交する方向に複数列併設した場合においてもコンパクト化することができる。
また、食器列WRからの食器Wの分離反転装置600、および分離反転装置600をベースとした分離反転方法においては、昇降手段400、分離手段500、反転手段700を含めて、食器列WRの中心軸線と掴みチャック510a~510dを有するアームユニット501で掴んで放出し、反転させるときの食器Wの中心軸線が、食器Wの搬送方向に沿って略直線状に構成したこと、および食器列WRの最上端の食器Wを掴んで食器列WRから食器Wを上方に分離し、この分離直後から、ただちに食器Wを自重落下させて反転させることができる。
これにより、積み重ねられた食器Wの分離、放出および反転を高速で行うことができる。さらに、平面視で洗浄レーンSRに沿った食器Wの搬送方向、およびこの搬送方向と直交する方向の必要スペース(必要な距離)が最小となり、食器Wの分離反転装置600の設置床面積を小さくして、コンパクト化することができる。さらに、分離反転装置600を食器Wの搬送方向と直交する方向に複数列併設した場合においてもコンパクト化することができる。
また、浸漬装置200と昇降手段400との連接構成においても、食器列WRを支持レール205上に自立して縦方向の姿勢で搬送し、その自立した姿勢のまま昇降手段400へと移載して、移載した食器列WRの最上端の食器Wを順次分離していくことができる。これにより、無駄なスペースを生じることがなく、浸漬装置200と分離放出装置300、および浸漬装置200と分離反転装置600を含めて省スペースとなりコンパクト化することができる。
次に、図1を用いて分離反転装置600から放出された個々の食器Wを搬送しながら表裏面に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄工程を実施する洗浄装置800の構成を説明する。
洗浄装置800は主に、分離反転装置600から放出された個々の食器Wを搬送する搬送手段801と、この搬送される個々の食器Wの表裏面に洗浄水を噴射する洗浄水供給手段810を備える。
搬送手段801は、各々の洗浄レーンSR1~SR4に併設され、各々の無端状のコンベア802が共通の回転軸として各々二つのスプロケット803に懸架されている。
なお図示していないが、各々の一方のスプロケット803は共通の回転軸である駆動軸がモータ(駆動源)により同期して回転する。
コンベア802は、洗浄水供給手段810から噴射された洗浄水が通過可能であり、食器Wの表面側を下向きとした個々の食器Wの表面側を支持し連続的に搬送する。
なお、図示していないが、コンベア802は食器Wの搬送方向と直交する方向を規制するガイド部材、および上向きの洗浄水の噴射による個々の食器Wの浮き上がりを防止するため、食器Wの裏面側の位置を規制するガイド部材を備えて、これによって個々の食器Wを各々の洗浄レーンSR1~SR4に搬送方向に沿って略直線状に搬送する。
洗浄水供給手段810は、食器Wの搬送方向で、食器Wの上方および下方で水平方向に配置された複数のノズル管811と、このノズル管811に洗浄水を上方および下方に噴射する複数のノズル812を備え、前記ノズル管811は供給経路から分岐して複数列の洗浄レーンSR1~SR4にある食器Wに亘って洗浄水を噴射できるように、管長方向を食器Wの搬送方向に対して直交する方向とし、かつ食器Wの搬送方向に複数配置されている。
図1に示すように、搬送手段801の下方位置に洗浄水を所定量貯水するタンク814を配置し、タンク814内の洗浄水を、供給経路を介してノズル管811に供給するポンプ813を備える。ノズル管811の複数のノズル812から噴射された洗浄水は、タンク814内に落下して回収され循環使用する。
なお、図示していないが、タンク814には洗浄水(例えば清水)を供給する経路と、タンク814内の洗浄水の水位を所定のレベルに水位検出手段を備える。また、タンク814内の洗浄水の温度を、所定の温度、例えば40~60度Cに昇温する加熱手段、洗剤を供給する洗剤供給手段、ポンプ813の吸入側に汚れ成分を除去するフィルタ等を備える。
洗浄水の昇温、洗剤供給によって食器Wに付着した汚れ成分の洗浄効果を向上させ、汚れ成分の除去をより確実なものとすることができる。また、フィルタによって、循環使用する洗浄水をより清浄化して洗浄水をノズル812から噴射し、汚れ成分の除去効果をより向上させることができる。
複数列の洗浄レーンSR1~SR4に亘って一つのタンク814、およびポンプ813を備えるものとし、これによって、複数列の洗浄レーンSR1~SR4を構成しても、構成要素の共通化、簡略化、および制御系統の統一化を図ることができる。
なお、図示していないが、搬送手段801、洗浄水供給手段810を覆う外郭部材(カバー)を設けてトンネル状として洗浄室を形成し、洗浄水の外部への飛散防止、洗浄水の放熱を抑制して温度低下を防ぐとともに、洗浄室を高湿度の状態として食器Wに付着した汚れ成分の除去をより確実なものとすることができる。また、洗浄装置800の食器Wの搬送方向には本洗浄ゾーン、およびすすぎ洗浄ゾーンを備えており、さらに単位時間当たりの洗浄処理能力に対応させて搬送手段801の搬送方向の長さ、洗浄水供給手段810のノズル812の数、配置を設定する。
次に、洗浄装置800の運転動作を説明する。先ずは実施形態に基づいて洗浄レーンを4列とした構成をベースとして説明する。
(洗浄水充填ステップ)
先ず、タンク814内に洗浄水(例えば清水)を所定の水位レベルになるまで供給する。このとき必要に応じてタンク814内に洗浄水を供給した後、この洗浄水に洗剤を供給するとともに、高温蒸気供給等による加熱手段により洗浄水の温度を所定の温度、例えば40~60度Cに昇温する。
(洗浄水噴射ステップ)
次に、ポンプ813を駆動しタンク814内の洗浄水を、供給経路を介してノズル管811に供給し、ノズル812から噴射を開始させる。ノズル812から噴射した洗浄水は、タンク814内に落下して貯水され循環使用する。
(洗浄ステップ)
コンベア802を駆動し、分離反転装置600の回転ドラム701a~701dの食器収納空間704から表面側を下向きにしてコンベア802上に落下放出された食器Wはコンベア802で搬送されながら表裏面に洗浄水の噴射を受け、付着した汚れが除去される。なお、搬送方向の洗浄ゾーンの一部に配置したノズル812には高速、および低速の水流を噴出させてキャビテーション噴流を生じさせるものを用いれば、洗浄効果をより高めることができる。
前記したように、反転後の食器Wを放出する位置に有する食器落下ガイド710上を摺動させて、既に駆動状態にあるコンベア802上に移載する。このときコンベア802の食器Wの搬送速度は、食器落下ガイド710上を自重落下する食器Wの速度よりも速く設定してある。これによって食器Wは食器落下ガイド710上からコンベア802上に引き込まれる状態となり、食器落下ガイド710上での食器Wの滞留を防止するとともに、コンベア802上の搬送方向において互いに隣り合う食器W間に所定の間隔を与えて食器W同士の重なりを防止して確実な洗浄を行うことができる。
洗浄された個々の食器Wは順次食器整理装置900に自重落下していく。
次に、図1を用いて前記洗浄装置800で洗浄された個々の食器Wを所定枚数積み重ね、かつ所定枚数積み重ねた食器Wを取り出し可能とする食器整理工程を実施する食器整理装置900の構成、運転動作を説明する。なお、食器整理装置900は洗浄レーンSR1~SR4の各々に備えているものである。
食器整理装置900は、洗浄装置800から搬送されてきた食器Wを受け入れ、保持し、かつ食器Wの移送をガイドする傾斜したホルダー904と、食器Wを1枚ずつ整理位置に押出す押し板905を有したスタッカー901と、整理位置に所定枚数積み重ねられた食器Wを取出し可能な取出し位置に押出す押出爪906とを備える。
ホルダー904は、搬送されてきた自重落下する食器Wを受け入れる下段の受入れ位置と、受入れ位置よりも食器Wの移送方向前方(搬出側)にあって食器Wを積み重ねて整理する中段の整理位置と、整理位置よりも食器Wの移送方向前方にあって、積み重ねて整理した食器Wを取り出す上段の食器Wの取出し位置とを有する。
さらに、食器整理装置900は、食器Wを積み重ねて整理する中段の整理位置に食器Wを保持する第1保持爪907と、食器Wを取出し位置に保持する第2保持爪908とを備える。押し板905はスタッカー用の押し板の駆動手段902により駆動され、押出爪906は押出爪用の駆動手段903により駆動される。取出し位置に保持された所定枚数(例えば20個)の積み重ねられた食器Wは、作業者によって任意に取り出される。
スタッカー用の押し板905の駆動手段902は、受入れ位置に押し板905を駆動させて食器Wを中段の整理位置に押し出す。そして、自重落下する食器Wを例えば一対の発光素子と受光素子からなる食器センサー(図示なし)の検知により、食器Wが所定枚数(例えば20個)に達したとき、押出爪用の駆動手段903を駆動させて、所定枚数積み重ねた食器Wの全体を上段の食器Wの取出し位置に押し出す。
また、食器整理装置900は、スタッカー用の押し板905の駆動手段902によるスタッカー901の押し板905の動作と押出爪用の駆動手段903による押出爪906の動作は、各々独立した動作を可能とし、スタッカー用の押し板の駆動手段902の動作中であっても押出爪用の駆動手段903の動作を可能とし、洗浄装置800から搬送されてきた食器Wを一時滞留させることなく、さらには洗浄装置800のコンベア802を一時停止させることなく連続して受入れ位置へ食器Wを自重落下させることができる。
なお、本実施形態の食器洗浄システムにおいては、洗浄装置800の後工程に食器整理装置900を備えているが、これに替えて、洗浄装置800から放出される食器Wを受ける搬送路の構成を備えて所定個数ごとに取出してもよい。
(他の実施形態)
次に、食器洗浄システム100の他の実施形態を図20~図22を用いて説明する。図1に示す実施形態と基本的に異なるところは、反転手段700を無くし、分離放出装置300で分離し放出された食器Wを洗浄装置800へ搬送し、洗浄水供給手段810から噴射された洗浄水により洗浄を行うようにしたものである。なお、洗浄水供給手段810は図1に示す構成と同一の構成とする。
この洗浄装置800のコンベア804は並行する側面視で山谷形状の多数の食器保持部材であるリンク804a同士が連結され、一対のリンク804a同士は棒状体805により無端チェーン状に連結されたものである。
コンベア804はスプロケット808に懸架されており、スプロケット808が駆動手段であるモータ(図示なし)により駆動されコンベア804を回動させる。
また、スプロケット808は、並行するリンク804a間に対応して突部806を有し、この突部806は、リンク804aの谷形状部間に支持されている食器Wをコンベア804の下流端にて押し出す機能を有する。
また、分離放出装置300と洗浄装置800との間には、分離放出装置300で分離し放出された食器Wを洗浄装置800のコンベア804へガイドする食器シュート560を備えている。コンベア804、食器シュート560は、各々の洗浄レーンSR1~SR4に備えている。
この実施形態において、分離放出装置300は、食器Wは表面側を上向きにしたままコンベア804上に放出、落下させる。放出、落下された食器Wの外周縁下方部が、コンベア804のリンク804aの谷形状部間に嵌まり込み、食器Wは、その表面側を斜め上向き状態で搬送されつつ、洗浄装置800のノズル812(図1参照)から噴射される洗浄水により洗浄される。洗浄された食器Wは、コンベア804により搬送され、その下流端において、図22(a)(b)(c)に示されるように、スプロケット808の突部806により押し出され、食器シュート809上に放出される。食器シュート809上に放出された食器Wは、例えば作業者が所定個数ごとに食器篭等に収納し搬送される。
(食器洗浄システムの実施形態の変形例)
以上のように本実施形態の食器洗浄システム100は構成されるが、各装置と手段とを各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別に構成し、以下の(1)~(4)に記載のように、制御装置1000により、各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別に運転動作させることも可能である。
(1)浸漬装置200の搬送手段201を各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別に構成し、各洗浄レーンSR1~SR4毎に搬送手段201により、間欠搬送における食器列WRの停止時間と搬送速度とを制御する。
(2)分離反転装置600の分離放出装置300を各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別に構成し、各洗浄レーンSR1~SR4毎に食器列WRから最上端の食器Wを分離する速度を制御する。
(3)分離反転装置600の反転手段700を各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別に構成し、各洗浄レーンSR1~SR4毎に食器Wの表面側を下向きに反転させるタイミングを制御する。
(4)洗浄装置800の搬送手段801を各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別に構成し、各洗浄レーンSR1~SR4毎に搬送手段801により食器Wを搬送する速度を制御する。
上記(1)~(4)について、以下、具体的に説明する。
(1)浸漬装置の搬送手段について
図1に示す食器洗浄システム100では、浸漬装置200の搬送手段201を構成するチェーンコンベア203が懸架されるスプロケット208が、すべての洗浄レーンSR1~SR4で共通の駆動軸209に固定されて同期して回動するよう構成したものを示した。この構成に代えて、図7および図9に示す各チェーンコンベア203が懸架されるすべてのスプロケット208の駆動軸209を各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別に構成し、各チェーンコンベア203の一方のスプロケット208を駆動させるモータ207も同様に各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別に備える構成としてもよい。
この構成において、各洗浄レーンSR1~SR4毎に食器列WRを搬送するときの間欠搬送における停止時間とチェーンコンベア203の搬送速度を個別に調整できるようにする。また、食器列WRの搬入を各洗浄レーンSR1~SR4毎に制御するため、食器列投入スイッチ230、最終食器列投入スイッチ231、および最終食器列解除スイッチ232は、各洗浄レーンSR1~SR4毎に設けるのが好ましい。
上記のように構成した浸漬装置200においては、各洗浄レーンSR1~SR4毎に間欠搬送における停止時間とチェーンコンベア203の搬送速度とを調整することにより、食器列WRの浸漬時間を変更し、各洗浄レーンSR1~SR4毎に食器Wに付着した汚れの量や質に合わせた浸漬工程を行うことができる。
また、図8に示したように、支持レール205上に載置して搬送される食器列WRは、すべての洗浄レーンSR1~SR4で同じ間隔である食器列間ピッチDだけ離間させて搬送するものを示したが、それに代えて、食器列間ピッチDを、チェーンコンベア203に設けた凸部材204の位置及び数量を変更することにより、各洗浄レーンSR1~SR4毎に食器Wのサイズに合わせて変更してもよい。
食器列間ピッチDを最小とした場合は、浸漬装置200に搬入することのできる食器Wの数を増やすことができ、停止時間及び/または食器列間ピッチD分の搬送時間を短くすることにより、単位時間あたりに処理することのできる食器Wの数を最大化することができる。また、間欠搬送における停止時間と食器列間ピッチD分の搬送時間とをそのままとすることにより、全体としての浸漬時間を長くして、食器Wの洗浄力を向上させることができる。
(2)分離反転装置の分離放出装置について
図1に示す食器洗浄システム100では、分離放出装置300に設けた昇降手段400の受枠403で、各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別に食器列WRを上昇させ、上昇させた食器列WRの最上端の食器Wをアームユニット501によりすべての洗浄レーンSR1~SR4で同時に分離するよう構成したものを示した。この構成に代えて、図10に示す回転ドラムユニット701と、回転ドラムユニット701に接続されたアームユニット501やアーム回動機構520等を各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別とし、受枠403に載置され上昇させた食器列WRの最上端の食器Wを各洗浄レーンSR1~SR4毎に、それぞれのタイミングで分離するよう構成してもよい。
上記のように構成した分離放出装置300においては、いずれかの洗浄レーンSRで食器列WRの最上端の食器Wの分離が停止したとき、他の洗浄レーンSRでの食器列WRからの最上端の食器Wの分離を継続して行うことができ、単位時間当たりの食器Wの処理数を安定化させることができる。
また、食器列WRに積み重ねた食器Wの積み重ねの間隔(積み重ね間隔)が各洗浄レーンSR1~SR4で異なっている場合、各洗浄レーンSR1~SR4で昇降手段400で食器列WRの最上端の食器Wを分離した後に、食器列WRを分離可能な位置に上昇させるためにかかる時間が異なる。そのため、すべての洗浄レーンSR1~SR4で同じ数だけ食器Wを積み重ねても、食器列WRからすべての食器Wを分離するタイミングが各洗浄レーンSR1~SR4毎に異なる。そのような場合でも、各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別のタイミングで食器列WRから食器Wを分離することができるため、単位時間あたりに食器洗浄システム100全体で処理することのできる食器Wの処理数を最適化することができる。
さらに、例えば、所定の洗浄レーンSRに搬入する食器Wが衝撃に弱い材質、例えば磁器により製造されている場合、所定の洗浄レーンSRのアームユニット501を所定角度傾斜した位置から略水平位置まで回動させるときの速度を遅くし、掴みチャック510a~510dが食器列WRの最上端の食器Wに接触するときの衝撃を弱くして、食器Wの破損等を防止することができる。
また、所定の洗浄レーンSRに搬入する食器Wが衝撃に強い材質、例えば樹脂により製造されている場合、所定の洗浄レーンSRのアームユニット501を所定角度傾斜した位置から略水平位置まで回動させるときの速度を速くし、掴みチャック510a~510dが食器列WRの最上端の食器Wを食器列WRから分離する時間を短縮することができる。
(3)分離反転装置の反転手段について
図1に示す食器洗浄システム100では、すべての洗浄レーンSR1~SR4で連接し、一体化して構成した回転ドラムユニット701により、すべての洗浄レーンSR1~SR4で食器Wの表面側を下向きに反転させるタイミングを同期させるよう構成したものを示した。この構成に代えて、図10および図11に示す、反転手段700の回転ドラム701a~701dを各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別に構成して、回転ドラム701a~701dを回動させるアーム回動機構520等を各洗浄レーンSR1~SR4毎に設け、各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別のタイミングで食器Wの表面側を下向きに反転させるようにしてもよい。
また、前述の、(2)に記載した分離反転装置600の分離放出装置300と、(3)に記載した分離反転装置600の反転手段700とを組み合わせた構成としてもよい。この場合、アームユニット501の略水平位置から所定角度傾斜した位置まで回動させる速度を各洗浄レーンSR1~SR4毎に個別に制御することができるとともに、各洗浄レーンSR1~SR4毎に回転ドラム701a~701dの回転速度を個別に制御することができる。
これにより、各洗浄レーンSR1~SR4毎に、アームユニット501から回転ドラム701a~701dの食器収納空間704への食器Wの自重落下による速度を早くして、単位時間当たりの食器Wの処理数を増やすこと、または自重落下による速度を遅くして、衝撃を和らげることができる。加えて、各洗浄レーンSR1~SR4毎に回転ドラム701a~701dの食器収納空間704から洗浄装置800の搬送手段801へと食器Wを放出するときの速度を早くして、単位時間当たりの食器Wの処理数を増やすこと、または放出するときの速度を遅くして、衝撃を和らげることができる。
そして、例えばいずれかの洗浄レーンSRでは衝撃に対して弱い食器W、例えば磁器製の食器Wを洗浄し、他の洗浄レーンSRでは衝撃に強い食器W、例えば樹脂製の食器Wを洗浄したとき、各洗浄レーンSR1~SR4毎に、単位時間当たりの食器Wの処理数、及び食器Wに与える衝撃を調整して、効果的に食器Wを洗浄することができる。つまり、各洗浄レーンSR1~SR4毎に、単位時間あたりの食器Wの処理数を最大化しつつ、効果的に洗浄することができる。
また、前述の、(1)に記載した浸漬装置200の搬送手段201と、(2)に記載した分離反転装置600の分離放出装置300と、(3)に記載した分離反転装置600の反転手段700とを組み合わせた構成としてもよい。この場合、各洗浄レーンSR1~SR4毎に浸漬装置200で間欠搬送における個別の停止時間と食器列間ピッチD分の搬送速度で食器列WRを搬送して浸漬工程を行い、分離反転装置600で個別のタイミングで食器列WRの最上端の食器Wを分離して食器Wの表面側を下向きに反転させる構成となる。
これにより、各洗浄レーンSR1~SR4毎に浸漬装置200に順次搬入し、回転ドラム701a~701dの食器収納空間704へと放出された食器Wの表面側を下向きに反転させることができるため、単位時間あたりに食器洗浄システム100全体で処理することのできる食器Wの処理数を最適化することができる。
(4)洗浄装置の搬送手段について
図1に示す食器洗浄システム100では、洗浄装置800に備える搬送手段801のコンベア802が懸架されるスプロケット803の駆動軸(符号なし)は、すべての洗浄レーンSR1~SR4で共通とする1本の駆動軸とし、すべての洗浄レーンSR1~SR4で下向きの食器Wを同じ速度で搬送するよう構成したものを示した。この構成に代えて、スプロケット803の駆動軸を各洗浄レーンSR1~SR4毎に独立したものとし、各洗浄レーンSR1~SR4毎に搬送手段801を個別に駆動させることができるようにしてもよい。
このように構成した洗浄装置800によれば、各洗浄レーンSR1~SR4毎に搬送手段801で食器Wを搬送する速度を個別に制御して、各洗浄レーンSR1~SR4毎に食器Wの材質による付着した汚れの落ちやすさや、食器Wに付着した汚れの量や質に合わせた洗浄を行うことができる。
さらに、前述の、(1)に記載した浸漬装置200の搬送手段201と、(2)に記載した分離反転装置600の分離放出装置300と、(3)に記載した分離反転装置600の反転手段700と、(4)に記載した洗浄装置800の搬送手段801とを組み合わせた構成としてもよい。この場合、各洗浄レーンSR1~SR4毎に、食器Wに付着した汚れの量や質に合わせて調整した浸漬時間により浸漬工程を行い、食器Wの材質に合わせた食器列WRの最上端の食器Wの分離、放出、および反転を行い、洗浄装置800の搬送手段801へと放出して、食器Wの材質による付着した汚れの落ちやすさや、食器Wに付着した汚れの量や質に合わせた洗浄を行うことができる。
つまり、各洗浄レーンSR1~SR4毎に食器Wの材質や食器Wに付着する汚れの量や質に合わせて洗浄を行うことができ、洗浄性を向上させることができる。それと同時に、食器Wの材質に合わせて、分離反転装置600での食器Wの分離や反転、放出の速さを設定し、食器Wの破損等を抑制することができる。そして、様々な食器Wの組み合わせに対応できる食器洗浄システム100とすることができる。
また、浸漬装置200の搬送手段201による食器列WRの間欠搬送における停止時間と搬送速度、分離反転装置600でのアームユニット501の回動の速さや、回転ドラム701a~701dの回転の速さ、及び洗浄装置800の搬送手段801による食器Wの搬送速度は、各洗浄レーンSR1~SR4毎に制御装置1000に有する記憶部(図示なし)に少なくとも1個記憶させ、再び呼び出して各洗浄レーンSR1~SR4毎に使用してもよい。
これにより、各洗浄レーンSR1~SR4毎に食器Wの材質や食器Wに付着する汚れの量や質に合わせて洗浄を行うことができ、洗浄性を向上させることができる。それと同時に、食器Wの材質に合わせて、分離反転装置600での食器Wの分離や反転、放出の速さを設定し、食器Wの破損等を抑制することができる。また、制御装置1000に有する記憶部に記憶させた設定は、全洗浄レーンSR1~SR4を含む複数の洗浄レーンSRで一括して設定できるようにしてもよい。
本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、浸漬装置200、分離反転装置600における、昇降手段400、分離手段500、反転手段700、洗浄装置800等は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意の変形構成を採用し得る。また、被洗浄物として食器Wを例として説明したが、容器等にも適用することができる。