以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る油圧制御装置の構成図である。同図に示す油圧制御装置10は、例えば、無段変速機(CVT)である変速機12を搭載する車両14に適用される。
油圧制御装置10は、車両14のエンジン16によって駆動され且つリザーバ18に貯留されたオイル(作動油)を汲み上げて圧送する第1ポンプ(メカポンプ)20を有する。第1ポンプ20の出力側には、第1ポンプ20から圧送されるオイルを第1オイルとして流す油路22が接続されている。油路22の途中には、スプール弁であるライン圧調整バルブ(調圧バルブ)24が設けられている。
油路22において、ライン圧調整バルブ24の下流側には、出力圧センサ(P1センサ)26が配設されている。出力圧センサ26は、油路22を流れる第1オイルの圧力(第1ポンプ20の出力圧)P1を逐次検出し、検出した出力圧P1を示す検出信号を後述する制御ユニット28に逐次出力する油圧センサである。また、油路22の下流側には、第1ポンプ20よりも小容量の第2ポンプ30が接続されている。
第2ポンプ30は、車両14に備わるモータ32の回転によって駆動され、且つ、油路22を介して供給された第1オイルを第2オイルとして出力する電動ポンプである。この場合、第2ポンプ30は、供給された第1オイルを加圧し、加圧した第1オイルを第2オイルとして圧送可能である。モータ32は、ドライバ34の制御により回転する。ドライバ34は、制御ユニット28から供給される制御信号に基づいてモータ32の駆動を制御する一方で、モータ32の駆動状態(例えば、第2ポンプ30の回転数(回転速度)Nepに応じたモータ32の回転数(回転速度)Nem)を示す信号を制御ユニット28に逐次出力する。第2ポンプ30、モータ32及びドライバ34によって電動ポンプユニット36が構成される。
一方、エンジン16のクランク軸38には、ACG(交流発電機)40が連結されている。ACG40は、エンジン16の駆動に伴うクランク軸38の回転によって発電する。ACG40によって発電された交流電力は、整流器42で整流され、バッテリ44に充電される。バッテリ44には、該バッテリ44の電圧Vを検出する電圧センサ46と、バッテリ44から流れる電流Iを検出する電流センサ48とが配設されている。電圧センサ46は、バッテリ44の電圧Vを逐次検出し、検出した電圧Vを示す検出信号を制御ユニット28に逐次出力する。電流センサ48は、バッテリ44から流れる電流Iを逐次検出し、検出した電流Iを示す検出信号を制御ユニット28に逐次出力する。ドライバ34は、バッテリ44からの電力供給によって駆動する。
第2ポンプ30の出力側には油路50が接続されている。油路50は、下流側で2つの油路50a、50bに分岐している。一方の油路50aは、レギュレータバルブ52a及び油路54aを介して、変速機12のベルト式の無段変速機構56を構成するドリブンプーリ56aに接続されている。他方の油路50bは、レギュレータバルブ52b及び油路54bを介して、無段変速機構56を構成するドライブプーリ56bに接続されている。
2つの油路22、50の間には、バイパス弁58が第2ポンプ30と並列に接続されている。バイパス弁58は、第2ポンプ30を迂回するように設けられた逆止弁であり、上流側の油路22から下流側の油路50の方向へのオイル(第1オイル)の流通を許容する一方で、下流側の油路50から上流側の油路22の方向へのオイル(第2オイル)の流通を阻止する。
また、油路54aには、ドリブンプーリ56aに供給されるオイルの圧力(ドリブンプーリ56aの側圧であるプーリ圧)PDNを検出する油圧センサとしての側圧センサ62が配設されている。
油路50から分岐する油路50cの下流側には、CRバルブ64が接続されている。CRバルブ64は、上流側が油路50cに接続され、下流側が油路66を介して2つの制御バルブ68a、68b、CPCバルブ70及びLCCバルブ72に接続されている。CRバルブ64は、減圧弁であって、油路50cから供給されるオイル(第2オイル)を減圧し、減圧したオイルを油路66を介して、各制御バルブ68a、68b、CPCバルブ70及びLCCバルブ72に供給する。
各制御バルブ68a、68bは、ソレノイドを有するノーマルオープン型の電磁弁であり、制御ユニット28から制御信号(電流信号)が供給されてソレノイドが通電している間、弁閉状態となり、一方で、ソレノイドが通電していない状態では、弁開状態となる。
一方の制御バルブ68aは、ドリブンプーリ56a用のソレノイドバルブであり、弁開状態では、CRバルブ64から油路66を介して供給されたオイルを、油路74aを介してレギュレータバルブ52aに供給すると共に、油路76a(図2参照)を介してライン圧調整バルブ24に供給する。なお、図1では、便宜上、油路76aの図示を省略している。
また、他方の制御バルブ68bは、ドライブプーリ56b用のソレノイドバルブであり、弁開状態では、CRバルブ64から油路66を介して供給されたオイルを、油路74bを介してレギュレータバルブ52bに供給すると共に、油路76b(図2参照)を介してライン圧調整バルブ24に供給する。なお、油路76bについても、図1では、便宜上、図示を省略している。
従って、一方のレギュレータバルブ52aは、制御バルブ68aから油路74aを介して供給されるオイルの圧力をパイロット圧とし、油路50、50aを介して供給されるオイルのライン圧PHが所定圧以上であれば、弁開状態となり、油路54aを介してドリブンプーリ56aに該オイルを供給する。また、他方のレギュレータバルブ52bは、制御バルブ68bから油路74bを介して供給されるオイルの圧力をパイロット圧とし、油路50、50bを介して供給されるオイルのライン圧PHが所定圧以上であれば、弁開状態となり、油路54bを介してドライブプーリ56bに該オイルを供給する。
なお、制御バルブ68aは、油路74a、76aに出力されるオイルの圧力を調整可能である。また、制御バルブ68bは、油路74b、76bに出力されるオイルの圧力を調整可能である。
CPCバルブ70は、上流側が油路66に接続され、下流側が油路78を介してマニュアルバルブ80に接続されている。CPCバルブ70は、前進クラッチ82a及び後進ブレーキクラッチ82b用のソレノイドバルブである。この場合、制御ユニット28から制御信号が供給されてソレノイドが通電している間、CPCバルブ70は、弁開状態となり、油路66、78を連通させ、オイルをマニュアルバルブ80に供給する。
マニュアルバルブ80は、上流側が油路78に接続され、下流側が油路84aを介して前進クラッチ82aに接続されると共に、油路84bを介して後進ブレーキクラッチ82bに接続されている。マニュアルバルブ80は、スプール弁であって、車両14の運転席近傍に設けられたレンジセレクタ86を運転者が操作し、P(駐車)、R(後進)、N(ニュートラル)、D(前進、ドライブ)等のシフトレンジのいずれかを選択したときに、選択されたシフトレンジに応じて、図示しないスプールが軸方向に所定量移動する。これにより、マニュアルバルブ80は、油路78を介して供給されるオイルを、油路84aを介して前進クラッチ82aに供給することで車両14の前進方向への走行を可能にするか、又は、油路84bを介して後進ブレーキクラッチ82bに供給することで車両14の後進方向への走行を可能にする。油路84aの途中には、該油路84aに供給されるオイルの圧力(クラッチ圧)を検出するクラッチ圧センサ88が設けられている。
油路22からライン圧調整バルブ24を介して分岐する油路90には、該油路90を介して第1オイルが供給される低圧系の油圧作動部が接続される。油路90の下流側には、低圧系の油圧作動部としてTCレギュレータバルブ104、オイルウォーマ106が接続されており、また、潤滑対象として変速機12の潤滑系108が接続されている。TCレギュレータバルブ104は、油路110を介してLCCバルブ72に接続されると共に、下流側にロックアップクラッチ112を内蔵するトルクコンバータ114が接続されている。
LCCバルブ72は、ロックアップクラッチ112用のソレノイドバルブであり、制御ユニット28から制御信号が供給されてソレノイドが通電している間、弁開状態となり、油路66、110を連通させ、オイルをTCレギュレータバルブ104に供給する。TCレギュレータバルブ104は、スプール弁であって、LCCバルブ72から油路110を介して供給されるオイルの圧力に応じて、図示しないスプールが軸方向に作動することにより、油路90を介して供給される第3オイルを減圧し、減圧した第3オイルをトルクコンバータ114及びロックアップクラッチ112に供給する。
オイルウォーマ106は、油路90から供給される第3オイルを所定温度に暖め、暖めた第3オイルを無段変速機構56を構成するプーリシャフト56c、ベアリング56d及びベルト56eに供給する。また、潤滑系108は、変速機12を構成するベアリングやギヤ等の各種の潤滑対象である。
油圧制御装置10は、エンジン回転数センサ116、油温センサ118、車速センサ120、アクセルセンサ122及び制御ユニット28をさらに有する。エンジン回転数センサ116は、第1ポンプ20の回転数Nmpに応じたエンジン16のエンジン回転数Newを逐次検出し、検出したエンジン回転数New(回転数Nmp)を示す検出信号を制御ユニット28に逐次出力する。油温センサ118は、第1オイル又は第2オイルの温度(油温)Toを逐次検出し、検出した油温Toを示す検出信号を制御ユニット28に逐次出力する。車速センサ120は、車両14の車速Vsを逐次検出し、検出した車速Vsを示す検出信号を制御ユニット28に逐次出力する。アクセルセンサ122は、運転者が操作する図示しないアクセルペダルの開度を逐次検出し、検出した開度を示す検出信号を制御ユニット28に逐次出力する。
制御ユニット28は、変速機12を制御するTCU(トランスミッション・コントロール・ユニット)、又は、エンジン16を制御するECU(エンジン・コントロール・ユニット)として機能するCPU等のマイクロコンピュータである。そして、制御ユニット28は、図示しない記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、油圧制御装置に対する各種の制御を実施する。
〔ライン圧調整バルブ24〕
図2は、ライン圧調整バルブ24の構成図である。ライン圧調整バルブ24は、第1スプール92a及び第2スプール92bを内蔵するスプール弁である。第1スプール92aは、比較的長尺の断面略I字状の弁体であって、ライン圧調整バルブ24の内部で、軸方向(図2の左右方向)に沿って配置されている。第2スプール92bは、第1スプール92aよりも短尺の断面略Y字状のスプールであって、ライン圧調整バルブ24の内部で、前記軸方向に沿って、第1スプール92aの右側に配置されている。この場合、第1スプール92aと第2スプール92bとの間には、第1弾性部材94aが介挿され、第1弾性部材94aは、第1スプール92aを図1の左方向に付勢する。また、第2スプール92bは、該第2スプール92bの右側に配置された第2弾性部材94bによって第1スプール92a側に付勢される。
ライン圧調整バルブ24は、第1~第7ポート96a~96gを有する。第1ポート96a及び第2ポート96bは、ライン圧調整バルブ24の外周面の中央部分に互いに対向するように設けられている。また、第1ポート96a及び第2ポート96bは、ライン圧調整バルブ24の内周面側に軸方向回りに形成された図示しない溝等により、第1スプール92aの位置に関わりなく連通し、油路22の一部を構成する。この場合、第1ポート96aは、ライン圧調整バルブ24における第1オイルの入口ポートであり、第2ポート96bは、第1オイルの出口ポートである。
そして、ライン圧調整バルブ24の外周面における第2ポート96bの位置を中心として、図2の左側には、第2ポート96bから離間するように、第3ポート96c及び第4ポート96dが順に設けられ、一方で、図2の右側には、第2ポート96bから離間するように、第5~第7ポート96e~96gが順に設けられている。
第3ポート96cは、第2ポート96bの左側に隣接して設けられており、油路90が接続されている。第4ポート96dは、ライン圧調整バルブ24の左端部に設けられ、油路98を介して、油路50に接続されている。第5ポート96eは、第2ポート96bの右側に隣接して設けられており、油路100を介して、油路50に接続されている。なお、図1では、便宜上、各油路98、100の図示を省略している。第6ポート96fは、第5ポート96eの右側に設けられており、油路76bに接続されている。第7ポート96gは、ライン圧調整バルブ24の右端部に設けられ、油路76aに接続されている。
従って、第4ポート96d及び第5ポート96eには、それぞれ、油路50を流れるライン圧PHのオイル(第1オイル又は第2オイル)が、油路98、100を介して供給される。また、第6ポート96fには、制御バルブ68bから油路76bを介してオイルが供給される。さらに、第7ポート96gには、制御バルブ68aから油路76aを介してオイルが供給される。
第1スプール92aの外周面において、第1ポート96a及び第2ポート96bに対向する部分に溝を軸方向回りに形成することにより、第1ポート96aに対向する部分が凹部102aとして形成されると共に、第2ポート96bに対向する部分が凹部102bとして形成される。また、第1スプール92aの外周面において、第3ポート96cに対向する部分に溝を軸方向回りに形成することにより、凹部102aに隣接する凹部102cと、凹部102bに隣接する凹部102dとが形成される。
そして、ライン圧調整バルブ24では、第4ポート96dに供給されるオイルの圧力(ライン圧PH、出力圧P1)は、第6ポート96f及び第7ポート96gに供給されるオイルの圧力よりも高いが、バルブのオイル接触面積が異なるため、釣り合っており、その釣り合い点よりも高いオイルの圧力が第4ポート96dに供給されると、第1スプール92aは、ライン圧PHにより、第1弾性部材94aの弾性力や、第6ポート96fに供給されるオイルの圧力に抗して、図2の右方向に移動する。これにより、凹部102cと第1ポート96aとが連通し、第1ポート96a、凹部102c、102d、第3ポート96cを介して、油路90に第1オイルを流すことが可能となる。なお、ライン圧調整バルブ24において、油路90を流れる第1オイルの圧力は、油路22を介して第2ポンプ30及びバイパス弁58に流れる第1オイルの出力圧P1よりも低い場合がある。そのため、以下の説明では、油路90を流れる第1オイルを第3オイルと呼称する場合がある。
次に、以上のように構成される本実施形態に係る油圧制御装置10の動作について説明する。ここでは、主として、後述する第1ポンプ30の出力圧P1又はライン圧PH(推定値)を用いて、制御ユニット28がモータ32に対するフィードバック制御を行うことにより、第2ポンプ30を駆動制御する場合について説明する。
<油圧制御装置10の基本的な動作>
上記のフィードバック制御の動作説明に先立ち、油圧制御装置10の基本的な動作について説明する。この基本的な動作では、主として、リザーバ18から第1ポンプ20等を介して無段変速機構56にオイルを供給する油圧系統の動作について説明する。
先ず、エンジン16の駆動に起因して第1ポンプ20が駆動を開始すると、第1ポンプ20は、リザーバ18のオイルを汲み上げ、汲み上げたオイルを第1オイルとして圧送を開始する。これにより、第1オイルは、第1ポート96a及び第2ポート96bを介して油路22を流れる。出力圧センサ26は、油路22を流れる第1オイルの圧力(出力圧)P1を逐次検出し、検出結果を示す信号を制御ユニット28に出力する。また、エンジン回転数センサ116は、エンジン回転数Newを逐次検出し、検出結果を示す信号を制御ユニット28に逐次出力する。
この場合、モータ32は駆動していないため、油路22を流れる第1オイルは、図3(a)で模式的に図示するように、太線のラインに沿って、バイパス弁58を介して油路50に流れる。これにより、第1オイルは、油路50、98を介して第4ポート96dに供給され、且つ、油路50、100を介して第5ポート96eに供給されると共に、油路50、50cを介してCRバルブ64に供給される。CRバルブ64は、供給された第1オイルを減圧し、減圧した第1オイルを油路66を介して制御バルブ68a、68bにそれぞれ供給する。
ここで、制御ユニット28から制御バルブ68a、68bのソレノイドに予め制御信号(電流値IDN、IDR)が供給され、制御バルブ68a、68bは、弁閉状態にある。そこで、各ソレノイドへの制御信号の供給を停止すると、制御バルブ68a、68bは、弁閉状態から弁開状態に切り替わる。これにより、制御バルブ68aは、油路74aを介してレギュレータバルブ52aにオイルを供給すると共に、油路76aを介して第7ポート96gにオイルを供給する。また、制御バルブ68bは、油路74bを介してレギュレータバルブ52bにオイルを供給すると共に、油路76bを介して第6ポート96fにオイルを供給する。
レギュレータバルブ52aは、油路74aを介して供給されたオイルの圧力をパイロット圧とし、第1オイルの圧力が所定圧以上であれば、連通状態となり、該第1オイルを油路54aを介してドリブンプーリ56aに供給する。側圧センサ62は、ドリブンプーリ56aに供給される第1オイルの圧力(側圧でもあるプーリ圧PDN)を逐次検出し、検出結果を示す信号を制御ユニット28に逐次出力する。
一方、レギュレータバルブ52bは、油路74bを介して供給されたオイルの圧力をパイロット圧とし、第1オイルの圧力(ライン圧PH)が所定圧以上であれば、連通状態となり、該第1オイルを油路54bを介してドライブプーリ56bに供給する。
なお、ライン圧調整バルブ24では、第4ポート96dに第1オイルが供給され、制御バルブ68bから第6ポート96fにオイルが供給されると共に、制御バルブ68aから第7ポート96gにオイルが供給されている。この場合、第1オイルの圧力(ライン圧PH、出力圧P1)は、各制御バルブ68a、68bからのオイルの圧力よりも高いので、第1スプール92aは、ライン圧PHにより、第1弾性部材94aの弾発力や該オイルの圧力に抗して、図2の右方向に移動する。これにより、凹部102cと第1ポート96aとが連通し、第1ポート96a、凹部102c、102d、第3ポート96c及び油路90を介して、第1オイルを第3オイルとして潤滑系108等の低圧系に供給することが可能となる。
このように、第1ポンプ20が駆動している状態において、制御ユニット28からドライバ34に制御信号を供給すると、該ドライバ34は、制御信号に基づいてモータ32を駆動させ、第2ポンプ30を駆動させる。これにより、第2ポンプ30は、油路22を流れる第1オイルを第2オイルとして出力する。
そして、第2オイルが油路50を流れ、第2オイルの流量(第2ポンプ30の吐出流量)が第1オイルの流量(第1ポンプ20の吐出流量)を上回ると、バイパス弁58では、油路50側のオイルの圧力(ライン圧PH)が油路22側のオイルの圧力(出力圧P1)よりも高くなる。これにより、バイパス弁58は弁閉状態となり、図3(a)に示す第1ポンプ20からバイパス弁58及び油路50を介した無段変速機構56等への第1オイルの供給が、図3(b)で太線に示すように、第2ポンプ30から油路50を介した無段変速機構56等への第2オイルの供給に切り替わる。この結果、第1オイルの油路50への流通が阻止されると共に、無段変速機構56等に対する第2ポンプ30による第2オイルの圧送が行われる。第2オイルは、油路50、98を介して第4ポート96dに供給され、油路50、100を介して第5ポート96eに供給されると共に、CRバルブ64に供給される。なお、ドライバ34は、モータ32のモータ回転数Nem(第2ポンプ30の回転数Nep)を示す信号を制御ユニット28に逐次出力する。
CRバルブ64は、供給された第2オイルを減圧し、減圧した第2オイルを油路66を介して制御バルブ68a、68bにそれぞれ供給する。制御バルブ68aは、弁開状態であるため、油路74aを介してレギュレータバルブ52aにオイルを供給すると共に、油路76aを介して第7ポート96gにオイルを供給する。また、制御バルブ68bも、弁開状態であるため、油路74bを介してレギュレータバルブ52bにオイルを供給すると共に、油路76bを介して第6ポート96fにオイルを供給する。
この結果、レギュレータバルブ52aは、油路74aを介して供給されたオイルの圧力をパイロット圧として、第2オイルをドリブンプーリ56aに供給する。側圧センサ62は、ドリブンプーリ56aに供給される第2オイルの圧力(側圧PDN)を逐次検出して制御ユニット28に出力する。一方、レギュレータバルブ52bは、油路74bを介して供給されたオイルの圧力をパイロット圧とし、第2オイルをドライブプーリ56bに供給する。
このように、加圧された第2オイルがドリブンプーリ56a及びドライブプーリ56bに供給されるので、第1オイルの圧力(出力圧)P1を低下させて、第1ポンプ20の負荷を軽減させることができる。この場合、ライン圧調整バルブ24の第4ポート96dに供給される第2オイルの圧力(ライン圧PH)をパイロット圧として、第1スプール92aが図2の右方向に移動し、第1ポート96aと凹部102cとの開度(開口面積)が大きくなることによって、出力圧P1を低下させることができる。
また、ライン圧調整バルブ24では、第6ポート96f及び第7ポート96gにオイルがそれぞれ供給されている。この場合、ライン圧PHが該オイルの圧力よりも高いので、第1スプール92aは、第1弾性部材94aの弾性力やオイルの圧力に抗して、図2の右方向にさらに移動する。これにより、凹部102bと第5ポート96eとが連通すると、油路22と油路100とが連通する。この結果、油路100に供給される第2オイルの圧力(ライン圧PH)の上昇が抑えられ、該ライン圧PHを所定圧に維持することが可能となる。
ここで、第2ポンプ30を作動して当該第2ポンプ30から第2オイルを供給する状態について詳細に説明する。なお、以下では、第2ポンプ30を作動して当該第2ポンプ30から第2オイルを供給する状態を「サーボ状態」という。
ここではまず、サーボ状態における各値の変化を説明するにあたって、サーボ状態における第2ポンプ30の目標回転数NAの算出について説明する。第2ポンプ30の目標回転数NAの算出においては、まず、制御ユニット28でライン圧PHの推定値が算出されると共に、第3オイルの圧力(以下、「低油圧」という。)P3の推定値が算出される。
<ライン圧PHの推定>
図4は、ライン圧PHの推定値の算出手順を示すブロック図である。制御ユニット28は、制御バルブ68aのソレノイドに供給する制御信号である電流値IDNと、制御バルブ68bのソレノイドに供給する制御信号である電流値IDRとを用い、予め記憶されている各種のマップを参照して、ライン圧PHの推定値を算出する。
制御ユニット28は、側圧(プーリ圧)PDN等を指令値として、該指令値に応じたライン圧PH(推定ライン圧PH)を推定する。
ドリブンプーリ56aの側圧PDNは、油路50から油路50a、レギュレータバルブ52a及び油路54aを介してドリブンプーリ56aに供給されるオイルの圧力である。側圧PDNは、制御バルブ68aから油路74aを介してレギュレータバルブ52aに供給されるオイルの圧力(パイロット圧)に応じて調整可能である。一方、ドライブプーリ56bの側圧PDRは、油路50から油路50b、レギュレータバルブ52b及び油路54bを介してドライブプーリ56bに供給されるオイルの圧力である。側圧PDRは、制御バルブ68bから油路74bを介してレギュレータバルブ52bに供給されるオイルの圧力(パイロット圧)に応じて調整可能である。
そこで、制御ユニット28は、予め記憶されている3Dマップを参照し、制御バルブ68aのソレノイドに供給される制御信号(電流値IDN)に応じた側圧PDNの推定値(指令値としての推定側圧PDNe)を求める。また、制御ユニット28は、予め記憶されている他の3Dマップを参照し、制御バルブ68bのソレノイドに供給される制御信号(電流値IDR)に応じた側圧PDRの推定値(指令値としての推定側圧PDRe)を求める。
各3Dマップは、第1オイル又は第2オイルの油温To毎に作成された電流値IDN、IDRと推定側圧PDNe、PDReとの関係を示す3次元マップである。従って、制御ユニット28は、現在の油温To及び電流値IDN、IDRに応じた推定側圧PDNe、PDReを、3Dマップから特定する。
次に、制御ユニット28は、特定した2つの推定側圧PDNe、PDReのうち、高い油圧値を目標側圧PDmとして決定する。次に、制御ユニット28は、予め記憶されている1Dマップを参照し、目標側圧PDmに応じたライン圧PHの目標値PHtを特定する。1Dマップは、目標側圧PDmとライン圧PHとの関係を示す1次元マップである。
最後に、制御ユニット28は、目標値PHtに所定量のマージンを加えた値をライン圧PHの推定値(推定ライン圧PH)として決定する。
<低油圧P3の推定>
制御ユニット28は、予め記憶されている変速機12の油圧系統の各構成要素に応じた複数のマップを参照することにより、油路90を介して、TCレギュレータバルブ104、オイルウォーマ106及び潤滑系108に供給される第3オイルの圧力(低油圧)P3を推定する。
変速機12の油圧系統を構成する各構成要素の特性がマップとして予め記憶されている。そこで、制御ユニット28は、予め記憶されている各構成要素の特性のマップを用いて、低油圧P3(推定値P3e)を推定する。
具体的に、制御ユニット28は、ライン圧PHの推定値と、CPCバルブ70に供給する制御信号の電流値ICPCとを用いて、CRバルブ64を通過するオイルの圧力PCRを推定する。この場合、制御ユニット28は、温度毎に圧力PCRを求め、求めた圧力PCRの特性をマップとして設定する。
次に、制御ユニット28は、圧力PCRのマップと、LCCバルブ72のソレノイドに供給する制御信号の電流値ILCCとを用いて、TCレギュレータバルブ104を通過するオイルの圧力PLCCを推定する。圧力PLCCは、ロックアップクラッチ112に供給されるオイルの圧力でもある。この場合、制御ユニット28は、温度毎に圧力PLCCを求め、求めた圧力PLCCの特性をマップとして設定する。
次に、制御ユニット28は、電流値IDN、IDR及び側圧PDN、PDRのマップから、油路50、50a、50bを介してドリブンプーリ56a及びドライブプーリ56bに至る油圧経路のリーク量を求める。また、制御ユニット28は、電流値ILCCのマップからLCCバルブ72のリーク量を求めると共に、電流値ICPCのマップからCRバルブ64のリーク量及びCPCバルブ70のリーク量を求める。
さらに、制御ユニット28は、ドリブンプーリ56a及びドライブプーリ56bのプーリ室の面積と、ドリブンプーリ56a及びドライブプーリ56bの回転数とから、変速動作中の無段変速機構56に供給すべき第2オイルの流量(ドリブンプーリ56a及びドライブプーリ56bの変速流量)を算出する。
そして、制御ユニット28は、ドリブンプーリ56a及びドライブプーリ56bに至る油圧経路のリーク量と、LCCバルブ72のリーク量と、CPCバルブ70のリーク量と、CRバルブ64のリーク量と、変速流量と、ドリブンプーリ56a及びドライブプーリ56bのリーク量とを加算して、第2ポンプ30からドリブンプーリ56a及びドライブプーリ56bに至る高圧の油圧系統に供給すべきオイルの流量QPHを算出する。
次に、制御ユニット28は、第1ポンプ20からの第1オイルの吐出流量から、流量QPHを減算することにより、油路90を介して低圧系に供給される第3オイルの流量Q3を算出する。
次に、制御ユニット28は、TCレギュレータバルブ104を通過するオイルの圧力PLCCと、第3オイルの流量Q3とに基づいて、第1オイル又は第2オイルの油温Toに応じた低油圧P3の推定値を算出する。
図5は、第2ポンプ30の目標回転数NAの算出手順を示すブロック図である。第2ポンプ30の目標回転数の算出では、図5に示すように、ライン圧PHの推定値151と油温センサ118で検出した油温152とを用いて、必要流量算出部153で油圧作動部である無段変速機構56に必要なオイルの流量(必要流量)154を算出する。また、ライン圧PHの推定値155と低油圧P3の推定値156とを用いて、差圧算出部157でそれらの差圧ΔP(=ライン圧PH-低油圧P3)の推定値158を求める。また、出力圧センサ26で検出した出力圧P1の検出値159と低油圧P3の推定値160とを用いて、F/B量算出部162でフィードバック量163を算出する。そして、加算部164で差圧ΔPの算出値158にフィードバック量163を加算することでそれらの加算値165を算出し、この加算値165と必要流量154とを用いて、回転数算出部166で第2ポンプ30の目標回転数NAを算出する。
F/B量算出部162でのフィードバック量の算出について詳細に説明する。図6は、出力圧センサ26が検出した出力圧P1を用いて、差圧ΔPに対するフィードバック制御を行う制御ユニット28内の処理を図示した説明図である。すなわち、図6は、第2ポンプ30の回転数の上昇に伴う出力圧P1の変化量を制御ユニット28にフィードバックさせることにより、低油圧P3の推定値を目標値として、出力圧P1をフィードバック制御する制御手法である。
制御ユニット28は、ライン圧PHの推定値が推定されると共に、低油圧P3の推定値が推定される場合に、ライン圧PHの推定値から低油圧P3の推定値を減算して差圧ΔPの指令値ΔPi(=PHe-P3e)を生成する。また、制御ユニット28は、ライン圧PHの推定値から、出力圧センサ26が検出した出力圧P1を減算することにより、差圧ΔPの推定値ΔPe(=PHe-P1)を算出する。
次に、制御ユニット28は、指令値ΔPiから推定値ΔPeを減算することにより偏差Δe(=ΔPi-ΔPe)を求める。求めた偏差Δeは、比例積分要素(PI制御)に通され、指令値ΔPiと加算される。つまり、制御ユニット28は、偏差Δeを指令値ΔPiに対するフィードバック量としてフィードバック制御を行う。
この場合、Δe=ΔPi-ΔPe=(PHe-P3e)-(PHe-P1)=P1-P3eである。従って、制御ユニット28は、出力圧P1が低油圧P3の推定値となるように、指令値ΔPiに対するフィードバック制御を行う。次に、制御ユニット28は、第1オイル又は第2オイルの油温Toも考慮して、フィードバック制御後の指令値ΔPiを調整する。その後、必要流量Qと、調整後の指令値ΔPiとを用いて、第2ポンプ30に対する回転数の指令値を算出する。
図7は、サーボ状態における各値の変化を説明するためのタイミングチャートである。このタイミングチャートでは、出力圧P1、ライン圧PH(推定値)、低油圧P3(推定値)、第2ポンプ30の作動状態(作動/停止及び作動モード)、第2ポンプ30の目標回転数NA及び実回転数NBの経過時間tに対する変化を示している。
図7のタイミングチャートにおいて、時点t11以前は第2ポンプ30が停止している。この状態では、第1ポンプ20からバイパス弁58及び油路50を介して、無段変速機構56に第1オイルが供給される(図3(a)参照)。そのため、油路50を流れる第1オイルの圧力である出力圧P1はライン圧PHと等しい(出力圧P1=ライン圧PH)。また、低油圧P3は、ライン圧PH及び出力圧P1よりも低い(ライン圧PH>低油圧P3、出力圧P1>低油圧P3)。
そして、時点t11において第2ポンプ30が作動すると、その後、第2ポンプ30から油路50を介した無段変速機構56への第2オイルの供給(図3(b)参照)に切り替わる。従って、図3(b)に示す状態となった後は、第2オイルの圧力がライン圧PHとなる。
ここで、油圧制御装置10の制御ユニット28は、経過時間tに対して、第2ポンプ30の実回転数NB(第2ポンプ30のトルク)が上昇するように、ドライバ34を介してモータ32を制御する。それにより、第2ポンプ30の実回転数NBの上昇に伴って、第2ポンプ30から吐出される第2オイルの流量が徐々に増加する。この結果、時点t11以降、経過時間tに伴って出力圧P1を徐々に低下させることができる。
そして、第2ポンプ30の作動状態(サーボ状態)では、初期モード(INIモード)、フィードバックモード(F/Bモード)、固定モード(FIXモード)の各モードを順に経ることで第2ポンプ30の運転が行われる。初期モードでは、時点t11に第2ポンプ30の目標回転数NAが上昇し、それに伴い実回転数NBが目標回転数NAに追従して次第に上昇する。なお、この初期モードでは、第2ポンプ30の目標回転数NAは、油圧作動部での消費に必要な流量のみを吐出可能な回転数(図5の必要流量154のみに対応する目標回転数)であるため、初期モードの間は出力圧P1の低下は生じない。第2ポンプ30の実回転数NBが目標回転数NAに一致したと判断したら初期モードを終了する。
初期モードに続くフィードバックモードでは、第2ポンプ30の実回転数NBが次第に上昇することで出力圧P1が低油圧P3に向けて低下してゆく。それと共に、第2ポンプ30の回転数のフィードバック制御が行われる。すなわち、制御ユニット28は、出力圧センサ26が検出した出力圧P1と、ライン圧PHの推定値と、低油圧P3の推定値とを用いて、第2ポンプ30の回転数のフィードバック制御を行う。このフィードバックモードでは、第2ポンプ30の実回転数NBの上昇に伴う出力圧P1の変化量を制御ユニット28にフィードバックさせることにより、低油圧P3を目標値として出力圧P1をフィードバック制御する。
この結果、例えば、各圧力の規定値と実際の圧力値との誤差や、第2ポンプ30の吐出性能のバラツキに起因して、オープン制御の目標回転数(図5に示す差圧ΔP(=ライン圧PH-低油圧P3)の算出値158に対応する目標回転数)を用いて出力圧P1を低油圧P3にまで低下させることができなくても、時点t12以降のフィードバックモードにおいて、フィードバック量(図5のF/B量163)を加えた目標回転数を用いることで、出力圧P1を低油圧P3にまで低下させることができる。
時点t13にフィードバックモードが終了すると、その時点で出力圧P1が低油圧P3にまで低下し(P1≒P3)、その後、出力圧P1は、低油圧P3に維持される(固定モード)。すなわち、固定モードでは、第2ポンプ30の回転数が略一定に保持されることでP1≒P3の状態が維持される。その後、時点t14に第2ポンプ30の運転が停止すると、第2ポンプ30の目標回転数NAが停止回転数(≒0)となり、実回転数NBもそれに追従して低下して次第に停止回転数となる。それにより、時点t14以降、出力圧P1がライン圧PHに向けて次第に上昇してゆく。上記のような第2ポンプ30の作動により、出力圧P1が低下した状態では、第1ポンプ20の仕事量が削減され、車両14の燃費の向上が見込める。
ここで、第2ポンプ30の運転条件について説明する。本実施形態の油圧制御装置では、車両の走行状態判定と第2ポンプ30の性能限界判断とに基づいてそれぞれ第2ポンプ30の作動許可/不許可を判断するようになっている。
車両の走行状態判定では、具体的には、車両の走行状態として、例えば、変速機(無段変速機)の変速指示モードがキックダウンモード、マニュアルモード、パドルモードになっていること、アクセル開度の変化量が閾値以上、変速機のレシオ(実レシオ)の変化量が閾値以上、ドライブプーリ56b又はドリブンプーリ56aの指示圧が閾値以上、車両の走行している路面が低摩擦係数路(低μ路)又は悪路であること、車両が氷上でスピンしたこと、変速機のシフトチェンジでステップシフトが行われたことなどの場合には、第2ポンプ30の油圧や流量が高油圧・大流量となるおそれがあるとして、第2ポンプ30の運転を不許可とする。
また、第2ポンプ30の性能限界の判断では、第2ポンプ30の運転状態が、出力圧P1と低油圧P3とが等しい状態(出力圧P1=低油圧P3)を実現できる作動可能範囲内にあるか否かを判断することで行われる。図8は、第2ポンプ30の性能限界の判断において第2ポンプ30の作動許可/不許可の領域を示すグラフ(マップ)である。同図のグラフでは、横軸に第2ポンプ30の流量(必要流量)を取り、縦軸に第2ポンプ30の要求油圧(ΔP=ライン圧PH-低油圧P3)を取っている。このグラフ(マップ)は、ある油温における一例を示すもので、実際には、油温毎に応じて異なる複数のグラフ(マップ)が用意されている。図8に示す領域Yが第2ポンプ30の作動を許可する範囲(作動許可領域)であり、それ以外の領域である領域Zが第2ポンプ30の作動を不許可とする範囲(作動不許可領域)である。必要流量と要求油圧の関係から定まる状態が、例えば図8の点X1の状態であれば、第2ポンプ30の作動を許可し、点X2の状態であれば、第2ポンプ30の作動を不許可とする。
このように、上記の車両の走行状態判定と第2ポンプ30の性能限界判断とに基づいて第2ポンプ30が使用領域外となった場合にその作動が不許可と判断される。したがって、第2ポンプ30を運転している状態で上記の車両の走行状態判定又は第2ポンプ30の性能限界判断に基づいて第2ポンプ30の作動が不許可と判断された場合には、第2ポンプ30の運転を停止する制御が行われる。また、それ以外にも、第2ポンプ30を運転している状態で第2ポンプ30が故障と判断された場合にも第2ポンプ30を停止する制御が行われる。さらに、それら以外にも、通常の車両の走行状態で、例えば変速機のシフトポジションが前進走行用のポジションから後進走行用のポジションに切り替えられた場合や、アクセル開度が0となった場合にも第2ポンプ30を停止する制御が行われる。したがって、第2ポンプ30を停止させる制御を行う態様としては、〔1〕第2ポンプ30の故障による停止、〔2〕通常の運転状態での停止、〔3〕第2ポンプ30が使用領域外となった場合の停止、の3つの態様がある。以下では、これら3つの態様それぞれにおける第2ポンプ30の停止制御について詳細に説明する。
図9は、第2ポンプ30が故障と判断された場合に第2ポンプ30を停止する制御における各値の変化を示すタイミングチャートである。同図のタイミングチャートでは、第2ポンプ30の故障判断フラグ、第2ポンプ30の作動フラグ、第2ポンプ30の目標回転数NAと実回転数NB、ライン圧PH(推定値)、出力圧P1、バイパス弁58の状態(開/閉)判断フラグ、第2ポンプ30の目標回転数と実回転数の一致判断フラグ、それぞれの経過時間tに対する変化を示している。なお、これらタイミングチャート上の値の種類については、後述の図10、図11でも同様である。
第2ポンプ30が故障と判断された場合に第2ポンプ30を停止する制御では、図9に示すように、時点t31に第2ポンプ30が故障と判断されて故障判断フラグが0(正常)から1(故障)となることで、第2ポンプ30の作動フラグが1(作動)から0(停止)に変化する。これにより、第2ポンプ30の目標回転数NAが停止回転数N2(≒0)となる。ここでは、故障による停止のため迅速に第2ポンプ30を停止する必要がある。したがって、第2ポンプ30の目標回転数NAは、時点t31の時点で直ちに停止回転数N2となるようにしている。それにより、時点t31以降、第2ポンプ30の実回転数NBが次第に低下してゆく。その一方で、出力圧P1が次第に上昇してゆく。そして時点t32において出力圧P1がライン圧PHに略一致する値まで上昇したと判断することで、バイパス弁58の状態判断が閉状態から開状態となる。なお、出力圧P1がライン圧PHに略一致する値まで上昇したとの判断は、出力圧P1がライン圧PHの推定値よりも所定量少ない値である油圧所定値U1を超えたことをもって判断する。その後、時点t32に第2ポンプ30の実回転数NBが停止回転数N2となることで、目標回転数NAと実回転数NBとの一致判断がされる。なお、この第2ポンプ30が故障と判断された場合に第2ポンプ30を停止する制御では、時点t31に第2ポンプ30を停止させるための強制タイマーTM1が作動する。この強制タイマーTM1は、安全のために設けられているもので、そのカウントアップの時点で、万一、第2ポンプ30の実回転数NBが停止回転数N2まで低下していなかった場合(目標回転数NAと実回転数NBの一致判断がされていない場合)に第2ポンプ30を強制的に停止させるためのものである。
図10は、通常の運転状態で第2ポンプ30を停止する制御における各値の変化を示すタイミングチャートである。通常の運転状態で第2ポンプ30を停止する制御では、同図に示すように、時点t41に第2ポンプ30の停止が判断されて第2ポンプ作動フラグが1(作動)から0(停止)に変化する。これにより、時点t41以降、第2ポンプ30の目標回転数NAが徐々に低下する。ここでの目標回転数NAの低下の割合(傾き)は、後述する第2ポンプ30が使用領域外となった場合の停止よりも小さな割合(傾き)である。そして、目標回転数NAの低下に伴い実回転数NBも低下してゆく。また、時点t41には強制タイマーTM1も作動する。その後、時点t42に出力圧P1がライン圧PHの推定値よりも所定量少ない値である油圧所定値U2を超えることでライン圧PHに略一致する値まで上昇したと判断すると、タイマーTM2がカウントダウンを開始する。時点t43にタイマーTM2がカウントアップすることで、バイパス弁58の状態判断が閉状態から開状態となる。それと共に、第2ポンプ30の目標回転数NAが待機回転数N1まで低下する。ここでの待機回転数N1は、停止回転数N2よりも若干大きな値で、第2ポンプ30が実質的に停止しない最低回転数である。ここで、上記の待機回転数N1を設けた理由は、当該待機回転数N1を経ることで、停止回転数N2に対する実回転数NBの追従を確認してから停止回転数N2に移行できるので、より安定的に実回転数NBを停止回転数N2まで低下させることができるようになるためである。
その後、第2ポンプ30の実回転数NBが目標回転数NAに向けて次第に低下してゆき、時点t44に第2ポンプ30の実回転数NBが目標回転数NAよりも所定量多い値である所定回転数N3以下となることでタイマーTM3が作動し、時点t45においてタイマーTM3がカウントアップすることで目標回転数NAが停止回転数N2(≒0)まで低下する。また、その時点で目標回転数NAと実回転数NBの一致判断がされる。この判断は、第2ポンプ30の実回転数NBと待機回転数N1との差が所定回転数N3以下となったこと、及びその時点からカウントダウンを開始するタイマーTM3のカウントアップを条件として一致と判断される。
このように、通常の運転状態で第2ポンプ30を停止する場合は、第2ポンプ30の目標回転数NAを徐々に低下させる制御を行う。そして、その低下の割合(傾き)は、後述する第2ポンプ30が使用領域外となった場合よりも小さな割合(傾き)である。これは、第2ポンプ30の回転数を徐々に低下させ、かつ比較的小さな割合で低下させることで、第2ポンプ30を急激に停止する場合と比較して、第2ポンプ30の作動により無段変速機構56などの油圧作動部に供給する油圧の急激な低下を抑制することで、車両の燃費を向上させることができるためである。また、第2ポンプ30の停止指示から実際に停止するまでの間に第2ポンプ30の復帰(再始動)指示を受ける場合があり、その場合に第2ポンプ30を迅速に復帰させることができるようにするためでもある。
図11は、第2ポンプ30が使用領域外となった場合に第2ポンプ30を停止する制御における各値の変化を示すタイミングチャートである。第2ポンプ30が使用領域外となった場合に第2ポンプ30を停止する制御では、同図に示すように、時点t51に第2ポンプ30が使用領域外になったと判断されて、使用領域判断フラグが1(領域内)から0(領域外)に変化する。それに伴い、時点t52において、第2ポンプ30の停止が判断されて第2ポンプ作動フラグが1(作動)から0(停止)に変化する。これにより、時点t52以降、第2ポンプ30の目標回転数NAが徐々に低下する。ここでの低下の割合は、図10の通常の運転状態で第2ポンプ30を停止する場合よりも大きな割合(傾き)である。そして、目標回転数NAの低下に伴い実回転数NBも低下してゆく。また、時点t52には強制タイマーTM1も作動する。その後、時点t53に出力圧P1がライン圧PHの推定値よりも所定量少ない値である油圧所定値U3を超えたことでタイマーTM2が作動し、時点t54にタイマーTM2がカウントアップし、かつ、出力圧P1がライン圧PHに略一致する値まで上昇したことで、バイパス弁58の状態判断が閉状態から開状態となる。それと共に、第2ポンプ30の目標回転数NAが待機回転数N1まで低下する。ここでの待機回転数N1は停止回転数N2よりも若干大きな値で、第2ポンプ30が実質的に停止しない最低回転数である。その後、第2ポンプ30の実回転数NBが目標回転数NAに向けて次第に低下してゆき、時点t55に第2ポンプ30の実回転数NBが目標回転数NAよりも所定量多い値である所定回転数N3以下となることでタイマーTM3が作動し、時点t56においてタイマーTM3が経過することで目標回転数NAが停止回転数N2(≒0)まで低下する。また、その時点で目標回転数と実回転数の一致判断がされる。この一致判断は、図10の通常の運転状態で停止する場合と同様、第2ポンプ30の実回転数NBと待機回転数N1との差が所定回転数N3以下となったこと、及びその時点からカウントダウンを開始するタイマーTM3のカウントアップを条件として一致と判断される。その後、第2ポンプ30の実回転数NBが目標回転数NA(停止回転数N2)に向けて低下してゆき、第2ポンプ30が停止する。
ここで、図11に示す第2ポンプ30が使用領域外となった場合に第2ポンプ30を停止する制御において時点t52~時点t53の間に第2ポンプ30の目標回転数NAを徐々に低下させる際の目標回転数NAの変化率(傾き)は、図10に示す通常の運転状態で第2ポンプ30を停止する制御において時点t41~時点t42の間に第2ポンプ30の目標回転数NAを徐々に低下させる際の目標回転数NAの変化率(傾き)よりも大きな変化率(傾き)である。これは、第2ポンプ30が使用領域外となった場合には、通常の運転状態と比較してより早く第2ポンプ30を停止させることで、無段変速機構56などの油圧作動部に必要な油圧を確保(保障)する必要があるためである。
また、図10に示す通常の運転状態の場合や図11に示す使用領域外となった場合に、図9に示す第2ポンプ30が故障の場合のように目標回転数NAを(一度に)停止回転数N2(≒0)まで低下させずに徐々に低下させるようにしているのは、サーボ状態から直ちに第2ポンプ30の目標回転数NAを停止回転数N2(≒0)とすると、サーボ状態を終了する過程(第1状態から第2状態への遷移の過程)で図7の符号Aに示す点線のラインのように、ライン圧PH(無段変速機構56に供給されるオイルの油圧)が一時的に低下する事象が発生するため、このライン圧PHの低下量を極力小さな量に抑えるための制御として行われているものである。
このように、上記の油圧制御装置では、第2ポンプ30の停止によって上記の第2状態から第1状態に切り替わる際、図7の符号Aに示す点線のラインのように、ライン圧PH(無段変速機構56に供給されるオイルの油圧)が一時的に低下する事象が発生するおそれがある。
そこで、本実施形態では、このようなライン圧PHの一時的な低下により、無段変速機構56に供給される油圧(プーリ側圧)の低下(側圧低下)が生じることを防止するための制御として、上記のように第2ポンプ30の回転数を徐々に低下させる制御のほか、無段変速機構56のドリブンプーリ56aに供給する油圧に所定量の補正油圧を加算する制御(以下、この制御を「側圧補正制御」という。)を行うようにしている。以下、この側圧補正制御について説明する。
この側圧補正制御は、先に説明した第2ポンプ30の性能限界判断に基づいて第2ポンプ30の作動が不許可と判断された場合に実施される。すなわち、第2ポンプ30の流量と差圧の関係が、図8に示す領域Y以外の領域となった場合に実施される。図12は、無段変速機(CVT)56に必要なオイルの流量(必要流量)と第2ポンプ30の(吐出量の)性能限界との関係を示す図で、同図(a)は、無段変速機構56の必要流量が第2ポンプ30の性能限界よりも低い場合、同図(b)は、無段変速機構56の必要流量が第2ポンプ30の性能限界よりも高い場合である。第2ポンプ30の作動が性能限界判断に基づいて許可される領域(図8の領域Y)では、図12(a)に示すように、無段変速機構56に必要なオイルの流量が第2ポンプ30の性能限界よりも低い。その一方で、第2ポンプ30の作動が不許可と判断される領域(領域Y以外の領域)では、図12(b)に示すように、無段変速機構56に必要なオイルの流量が第2ポンプ30の性能限界よりも高くなる。そのため、領域Y以外の領域では、第2ポンプ30の作動によって無段変速機構56に必要なオイルの流量を供給できないので、その分のオイルの流量・油圧を側圧補正制御で補う必要がある。
なお、側圧補正制御を行うのは第2ポンプ30の性能限界判断に基づいて第2ポンプ30の作動が不許可と判断された場合であるため、その場合の第2ポンプ30を停止させる制御としては、図11に示す第2ポンプ30が使用領域外である場合の制御が行われる。
図13は、側圧補正制御の概要を説明するための油圧回路図の一部を示す図で、(a)は側圧補正制御を行わない場合、(b)は側圧補正制御を行う場合を示す図である。同図(a)に示すように、第2ポンプ30を停止する際に生じる現象の流れは次のようになっている。〔1-1〕第2ポンプ30の回転数が低下する。〔1-2〕ライン圧PHが低下しライン圧調整バルブ24の第4ポート96d及び第5ポート96eに流入するオイルの流量が減少する。〔1-3〕ライン圧調整バルブ24の第1スプール92aが図の左方へ移動する。〔1-4〕ライン圧調整バルブ24の第3ポート96cが閉じて第1ポンプ20の出力圧P1が上昇する。〔1-5〕バイパス弁58が開き、第2状態から第1状態に切り替わる。上記のように、〔1-1〕で第2ポンプ30の回転数が低下してから、〔1-4〕で調圧バルブの第3ポート96cが閉じて出力圧P1が上昇するまでの間、すなわち出力圧P1が応答(回復)する過程でライン圧PHの低下が生じるおそれがある。
その一方で、側圧補正制御を行う場合の流れは次のようになる。〔2-1〕第2ポンプ30の回転数が低下する。〔2-2〕側圧補正制御を実施する。〔2-3〕ライン圧調整バルブ24の第1スプール92aが図の左方へ移動する。〔2-4〕ライン圧調整バルブ24の第3ポート96cが閉じて第1ポンプ20の出力圧P1が上昇する。〔2-5〕バイパス弁58が開き、第2状態から第1状態に切り替わる。このように、〔2-1〕で第2ポンプ30の回転数が低下したタイミングで〔2-2〕側圧補正制御を実施する。これにより、図13(a)の〔1-2〕で生じていたライン圧PHの低下、が発生せずに済むようになる。したがって、〔2-1〕で第2ポンプ30の回転数が低下してから、〔2-4〕で調圧バルブの第3ポート96cが閉じて出力圧P1が上昇するまでの間、すなわち出力圧P1が応答(回復)する過程でのライン圧PHの低下を防止することができる。
ここでの側圧補正制御は、具体的には、制御バルブ68aに対する指示油値を変更することで、制御バルブ68aからレギュレータバルブ52aに供給される油圧に補正油圧を加算する。そして、制御バルブ68aからレギュレータバルブ52aに供給される油圧の一部はライン圧調整バルブ24にも供給されるため、この側圧補正制御を行うと、当該側圧補正制御で加算された補正油圧の一部が第7ポート96gを介してライン圧調整バルブ24に供給される。この油圧は、ライン圧調整バルブ24の第1スプール92a及び第2スプール92bを図の左方向に付勢する。そのため、上記の〔2-3〕において、第1スプール92aを左向きにより迅速に移動させることが可能となる。これにより、第1ポート96aと凹部102cとの開度(開口面積)が早期に小さくなることによって、出力圧P1をより早く回復させることができる。したがって、そのことによってライン圧PH圧の低下(側圧低下)を防止することができる。
図14は、側圧補正制御における補正油圧の算出手順を示すブロック図である。ここでは、側圧補正量算出部203は、ライン圧PHの推定値201と無段変速機構56のレシオ202とを用いて側圧補正量(トルク)を算出する。この側圧補正量(トルク)は、図15に示すようなレシオごとに作成されたライン圧PH(推定値)と側圧補正量との関係を示す3次元マップを用いて、当該3次元マップ上の値を検索することで算出される。そして、この算出した側圧補正量に対して側圧補正実施判断部204で側圧補正実施判断の結果を加味することで入力トルクの値が決定される。なお、側圧補正実施判断部204で加味する側圧補正実施判断の結果は、先の図8と図12及びそれらの説明で示した条件で判断した結果である。そして、決定された入力トルクの値からプーリ推力算出部205で必要推力が算出され、当該必要推力の値からプーリ油圧算出部206で必要油圧の値が算出される。
図16は、側圧補正制御を行う際の各値の変化を示すタイミングチャートである。同図のタイミングチャートでは、第2ポンプ30の目標回転数NAと実回転数NB、側圧補正量M、ライン圧PH,第1ポンプ20の出力圧P1それぞれの経時変化を示している。ここでは、時点t14(図7の時点t14に対応)に第2ポンプ30の目標回転数NAが停止回転数N2(≒0)になることで、それ以降、実回転数NBが徐々に低下してゆく。そして、時点t14に側圧補正量Mが0から所定値M1となる。この所定値M1は、先の図14及びその説明で示した手順で算出した値である。そして、時点t14~t15の間、第2ポンプ30の実回転数NBが徐々に低下する一方、出力圧P1が次第に上昇してライン圧PHに近づく。その後、時点t15に側圧補正制御を終了する。この側圧補正制御の終了時点は、第2ポンプ30が停止し、かつバイパス弁58が開いたことで判断する。すなわち、第2ポンプ30が停止していれば第2ポンプ30の作動状態に移行する(戻る)ことは無いため、側圧補正制御を終了する。
また、図16の時点t14~時点t15の間のように、側圧補正制御を実施している間は側圧補正量を一定の値(所定値M1)に保つように制御する。これは、仮に、側圧補正制御の実施中に、第2ポンプ30が回転している状態で側圧補正量を低下させると、図2に示すライン圧調整バルブ24の第1スプール92aが図の右側に押し戻されることで第3ポート96cが開き油路90を介してオイルが流出する。これにより、出力圧P1が低下して第2ポンプ30の作動状態に戻ってしまうため、そのことを防止する必要があるからである。
以上説明したように、本実施形態の油圧制御装置によれば、第1ポンプ20と無段変速機構56などの油圧作動部との間に、モータ32によって駆動される第2ポンプ30及びバイパス弁58が並列に接続され、第1ポンプ20からバイパス弁58を介して油圧作動部に第1オイルを供給する第1状態と、第1ポンプ20から供給される第1オイルを第2ポンプ30で加圧し、加圧した第1オイルを第2オイルとして油圧作動部に供給する第2状態とを切替可能な油圧制御装置において、第2状態において第2ポンプ30を停止させる際、第2ポンプ30の目標回転数NAを徐々に低下させる制御を行うと共に、通常の運転状態で第2ポンプ30を停止させる場合と、第2ポンプ30が使用領域外と判断された際に第2ポンプ30を停止させる場合とで、第2ポンプ30の目標回転数NAの低下の割合を異ならせるようにしている。
そしてこの場合、通常の運転状態で第2ポンプ30を停止させる場合と比較して、第2ポンプ30が使用領域外と判断された際に停止させる場合の方が第2ポンプ30の目標回転数NAの低下の割合が大きくなるようにしている。
本実施形態の油圧制御装置によれば、通常の運転状態で第2ポンプ30を停止させる場合には、第2ポンプ30の回転数の低下の割合をより小さくすることで車両の燃費を向上させることができる。その一方で、第2ポンプ30が使用領域外と判断された場合には、通常の運転状態で停止させる場合と比較して第2ポンプ30の目標回転数NAの低下の割合を大きくすることで、油圧作動部の油圧機能を保証するために第2ポンプ30の回転数を早目に下げることが可能となる。このように、通常の運転状態で第2ポンプ30を停止させる場合と第2ポンプ30が使用領域外と判断された場合に第2ポンプ30を停止させる場合とで第2ポンプ30の回転数の低下の割合を異ならせるようにしたことで、車両の燃費の向上と油圧作動部の油圧機能の保障との両立を図ることができる。
また、本実施形態の油圧制御装置では、第2ポンプ30が使用領域外であるか否かの判断は、第2ポンプ30の吐出可能なオイルの油圧と、無段変速機構56などの油圧作動部に供給されるオイルの圧力値であるライン圧PHの推定値と第1ポンプ20からより低圧で作動する他の油圧作動部であるトルクコンバータ114や潤滑系108に供給されるオイルの圧力値である低油圧P3の推定値との差圧、との大小関係に基づいて行われるようにしており、第2ポンプ30の吐出可能なオイルの油圧がライン圧PHの推定値と低油圧P3の推定値との差圧以下の場合に、第2ポンプ30が使用領域外であると判断している。
第2ポンプ30の吐出可能なオイルの油圧が、上記のライン圧PHの低油圧P3の推定値との差圧以下の場合は、第2ポンプ30の作動によって当該差圧分の油圧を賄うことができないため、第2ポンプ30の作動によりエネルギー効率を改善できないおそれがある。そのためここでは、そのような場合には第2ポンプ30を使用領域外と判断することでより早期に第2ポンプ30を停止させる制御を行うようにしている。
また、本実施形態の油圧制御装置では、第2ポンプ30における第1オイルの吸入側のオイルの圧力である出力圧P1を検出する出力圧センサ26を備え、この出力圧センサ26が検出した出力圧P1が無段変速機構56などの油圧作動部に供給されるオイルの圧力値であるライン圧PHの推定値と略一致する値まで増加したとの判断に基づいて、第2ポンプ30の目標回転数NAを徐々に低下させる制御を終了し、第2ポンプ30の目標回転数NAを実質的な停止回転数N2まで低下させるようにしている。
出力圧センサ26が検出した出力圧P1が油圧作動部に供給されるライン圧PHの推定値と略一致する値まで増加したと判断した場合、第1ポンプ20の運転のみで油圧作動部に必要な油圧を賄うことができる状態となっているため、その場合は、第2ポンプ30の目標回転数NAを実質的な停止回転数N2まで低下させることで、第2ポンプ30の目標回転数NAを徐々に低下させる制御を終了するようにしている。これにより、第2ポンプ30の停止時期を適切に判断できるようになり、車両の燃費向上に寄与することが可能となる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、本発明でいう第2ポンプの目標回転数を徐々に低下させる制御とは、経過時間に伴い目標回転数が低下するものであれば、その低下の具体的な態様は上記実施形態に示すものに限らず、様々な態様であってよい。すなわち、制御の始点と終点間の区間で常に以前よりも目標回転数が低下しているものであればよく、その具体的な態様は、経過時間に対して目標回転数が直線的に低下するものには限らず、段階的に低下するものや、それらが組み合わさったものなどであってもよい。