JP7227814B2 - 車両制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、走行中に自動的にエンジンを停止する機能を有するAWD自動車に設けられる車両制御装置に関する。
例えば4輪の自動車において、前輪及び後輪を駆動する全輪駆動(AWD)システムを備えるとともに、前輪と後輪との少なくとも一方の駆動状態を、車両の走行状態に応じて変化させることが知られている。
また、このようなAWDシステムの制御を、制動時の車輪ロックに応じて周期的に制動力を減少させ、車輪の回転を復帰させるアンチロックブレーキ制御と協調させることが提案されている。
例えば、特許文献1には、前輪をエンジンにより駆動し、後輪をモータにより駆動するエンジン-電気ハイブリッド車両において、エンジンを停止して後輪のモータ駆動により走行している状態で、アンチロックブレーキ制御が介入した場合には、再加速時にAWDによる駆動力を得られるよう、再加速要求の入力を待たずにエンジンを再始動することが記載されている。
特許文献2には、後輪に伝達される駆動力を電磁弁により制御されるカップリングの締結力により調節可能なAWD自動車において、アンチロックブレーキ制御の介入時には、アンチロックブレーキ制御に不具合を与えないよう、後輪へのトルク伝達を行わないことが記載されている。
特開2010-149682号公報 特開2005-132300号公報
近年、車両の燃費をより向上する目的で、車両が例えば100km/h以上の高速走行中であっても、所定のエンジン停止条件を充足した場合には、エンジンを自動的に停止して惰性走行を行うことが提案されている。
このような走行中エンジン停止を行わない車両の場合には、アンチロックブレーキ制御が介入した場合に、車輪の回転を早期に回復させる目的でエンジンの出力トルクを増加させる制御が行われる。
しかし、走行中にエンジンを停止した状態で急制動が行われ、車輪ロックが生じた場合には、エンジンのトルクが車輪に伝達されないことから、車輪の回転を回復させるのに比較的長時間を要し、制動時の車両の操縦安定性が低下することが懸念される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、走行中にエンジンを停止した状態からの制動時の操縦安定性を向上した車両制御装置を提供することである。
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、エンジンと、前記エンジンの出力を車両の前輪に伝達する前輪駆動機構と、前記エンジンの出力を前記車両の後輪に伝達する後輪駆動機構と、前記前輪駆動機構と前記後輪駆動機構との拘束力を変更可能な拘束力可変機構と、前記前輪及び前記後輪に制動力を発生させる制動装置とを備える車両に設けられる車両制御装置であって、前記車両の走行中に所定のエンジン停止条件を充足した場合に前記エンジンを自動的に停止させるエンジン制御装置と、前記車両の走行中でありかつ前記エンジンの停止中に、所定の急制動条件を充足した場合に、前記拘束力可変機構の拘束力を増加させる拘束力制御装置とを備えることを特徴とする車両制御装置である。
これによれば、エンジンの停止中に行われた急制動に応じて、拘束力可変機構の拘束力を増加させることにより、前輪、後輪の一方で車輪ロックが生じた場合に、他方の車輪側から伝達される駆動力により車輪ロックからの早期回復を図ることができる。
また、車輪ロックが生じていない場合であっても、車輪ロックが生じることを未然に防止することができる。
請求項2に係る発明は、前記エンジン制御装置は、前記エンジンの停止中に前記急制動条件を充足した場合に、前記エンジンの再始動を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置である。
これによれば、車輪ロックが発生し、あるいは、車輪ロックが発生するリスクが高い場合に、直ちにエンジンを再始動し、エンジンのトルクを車輪に伝達することにより、車輪ロックからの回復あるいは車輪ロックの防止を図ることができる。
請求項3に係る発明は、前記拘束力制御装置は、前記エンジンの再始動が完了した後に前記拘束力可変機構の拘束力を低下させることを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置である。
これによれば、エンジンの再始動が完了した後に拘束力可変機構の拘束力を低下させることにより、エンジンの再始動が未了な状態で前輪駆動機構と後輪駆動機構との拘束が弱まり、車両が不安定な状態になることを防止できる。
請求項4に係る発明は、前記拘束力制御装置は、前記エンジンの再始動動作が開始された後に前記拘束力可変機構の拘束力を低下させることを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置である。
これによれば、エンジンの再始動が短時間で行われることが確実である場合には、再始動動作の開始に応じて直ちに締結力可変機構の締結力を低下させることにより、締結力可変機構の締結力低下に時間応答遅れがある場合であっても、エンジンを運転しかつ締結力可変機構の締結力を低下させた通常の車両制御に早期に復帰させることができる。
請求項5に係る発明は、前記制動装置の制動力による前記前輪と前記後輪との少なくとも一方のロック又はその兆候に応じて、前記制動力を周期的に低下させるアンチロックブレーキ制御を行う制動制御部を備え、前記拘束力制御装置は、前記アンチロックブレーキ制御の実行時に前記急制動条件を充足したと判定することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両制御装置である。
これによれば、一般的な車両に通常設けられるアンチロックブレーキ装置を用い、新規なハードウェアの追加を必要としない簡単な構成により、車輪のロック又はその兆候に応じて、適切に上述した効果を得ることができる。
請求項6に係る発明は、車両の減速度を検出する減速度検出部を備え、前記拘束力制御装置は、前記減速度が所定の閾値以上である場合に前記急制動条件を充足したと判定することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両制御装置である。
請求項7に係る発明は、前記制動装置の制動力に相関するパラメータを検出する制動力検出部を備え、前記拘束力制御装置は、前記制動力に相関するパラメータが所定の閾値以上である場合に前記急制動条件を充足したと判定することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両制御装置である。
これによれば、車輪ロックに至らない状態(アンチロックブレーキ制御が介入しない状態)であっても、エンジン停止中の急制動時に拘束力可変機構の拘束力を増加させ、前輪駆動機構と後輪駆動機構との拘束力を高めることにより、車輪ロックを未然に防止して車両の安定性を確保することができる。
請求項8に係る発明は、前記前輪駆動機構は、前記エンジンの再始動後に前記エンジンと前記前輪とを直結する機能を有し、前記後輪駆動機構は、前記前輪駆動機構から前記拘束力可変機構を介して駆動力が伝達されることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の車両制御装置である。
これによれば、エンジンの再始動完了後の状態においては、前輪駆動機構を介してエンジンと前輪とを直結することにより、車輪ロックが生じやすい前輪にエンジンのトルクを伝達して前輪の車輪ロックを早期に回復し、あるいは前輪の車輪ロックを防止することができる。
また、エンジンの再始動前においては、拘束力可変機構の拘束力を増加させることにより後輪側から前輪側へ駆動力を伝達し、前輪の車輪ロックの回復、防止効果を得ることができる。
以上説明したように、本発明によれば、走行中にエンジンを停止した状態からの制動時の操縦安定性を向上した車両制御装置を提供することができる。
本発明を適用した車両制御装置の第1実施形態を有する車両の構成を模式的に示すブロック図である。 第1実施形態の車両制御装置において走行中エンジン停止状態から制動した場合の制御を示すフローチャートである。 本発明を適用した車両制御装置の第2実施形態において走行中エンジン停止状態から制動した場合の制御を示すフローチャートである。 本発明を適用した車両制御装置の第3実施形態において走行中エンジン停止状態から制動した場合の制御を示すフローチャートである。
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した車両制御装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の車両制御装置は、例えば、エンジンにより前輪、後輪を駆動するAWDシステムを有する4輪の乗用車等の自動車に設けられるものである。
図1は、第1実施形態の車両制御装置を有する車両の構成を模式的に示すブロック図である。
図1に示すように、車両1は、エンジン10、トルクコンバータ20、ロックアップクラッチ30、前後進切替部40、バリエータ50、フロントディファレンシャル60、リアディファレンシャル70、トランスファクラッチ80等からなるパワートレーンを有する。
エンジン10は、車両の走行用動力源として用いられる内燃機関である。
エンジン10として、例えば、4ストロークのガソリンエンジンを用いることができる。
エンジン10は、その本体及び補器類をエンジン制御ユニット110によって制御され、ドライバのアクセル操作等に基づいて設定される要求トルクに応じた出力トルクを発生する。
トルクコンバータ20は、エンジン10の出力を前後進切替部40に伝達する流体継手である。
トルクコンバータ20は、車両が停止状態からエンジントルクを伝達可能な発進デバイスとしての機能を有する。
トルクコンバータ20は、エンジン10の出力軸と連結されたインペラ、前後進切替部40の入力軸と連結されたタービン、及び、これらの間に配置されたステータ等を有する。
ロックアップクラッチ30は、トルクコンバータ20に設けられ、インペラとタービンとの回転速度差を許容する非締結状態と、インペラとタービンとを拘束(直結)する締結状態とを切換可能なクラッチ装置である。
ロックアップクラッチ30の締結、非締結は、トランスミッション制御ユニット120により制御される。
前後進切替部40は、トルクコンバータ20とバリエータ50との間に設けられ、トルクコンバータ20とバリエータ50とを直結する前進モードと、トルクコンバータ20の回転出力を逆転させてバリエータ50に伝達する後退モードとを、トランスミッション制御ユニット120からの指令に応じて切り換えるものである。
前後進切替部40は、例えば、プラネタリギヤセット等を有して構成されている。
バリエータ50は、前後進切替部40から伝達されるエンジン10の回転出力を、無段階に変速する変速機構部である。
バリエータ50は、例えば、プライマリプーリ51、セカンダリプーリ52、チェーン53等を有するチェーン式無段変速機(CVT)である。
プライマリプーリ51は、車両の駆動時におけるバリエータ50の入力側(回生発電時においては出力側)に設けられ、エンジン10の回転出力が入力される。
セカンダリプーリ52は、車両の駆動時におけるバリエータ50の出力側(回生発電時においては入力側)に設けられている。
セカンダリプーリ52は、プライマリプーリ51と隣接しかつプライマリプーリ51の回転軸と平行な回転軸回りに回動可能となっている。
チェーン53は、環状に形成されてプライマリプーリ51及びセカンダリプーリ52に巻き掛けられ、これらの間で動力伝達を行うものである。
プライマリプーリ51及びセカンダリプーリ52は、それぞれチェーン53を挟持する一対のシーブを有するとともに、トランスミッション制御ユニット120による変速制御に応じて各シーブ間の間隔を変更することによって、有効径を無段階に変更可能となっている。
フロントディファレンシャル60は、バリエータ50から伝達される駆動力を、左右の前輪に伝達するものである。
フロントディファレンシャル60は、最終減速装置、及び、左右前輪の回転速度差を吸収する差動機構を備えている。
フロントディファレンシャル60と左右前輪のハブとの間には、駆動力を伝達する回転軸であるドライブシャフトが設けられている
バリエータ50とフロントディファレンシャル60との間は、歯車軸機構等を介して連動するよう直結されている。
この歯車軸機構、フロントディファレンシャル60、ドライブシャフト等は、本発明にいう前輪駆動機構として機能する。
リアディファレンシャル70は、バリエータ50からトランスファクラッチ80、図示しないプロペラシャフト等を介して伝達される駆動力を、左右の後輪に伝達するものである。
リアディファレンシャル70は、最終減速装置、及び、左右後輪の回転速度差を吸収する差動機構を備えている。
リアディファレンシャル70と左右後輪のハブとの間には、駆動力を伝達する回転軸であるドライブシャフトが設けられている。
プロペラシャフト、リアディファレンシャル70、ドライブシャフト等は、本発明にいう後輪駆動機構として機能する。
トランスファクラッチ80は、バリエータ50からリアディファレンシャル70へ駆動力を伝達する後輪駆動機構の途中に設けられ、これらの間の動力伝達経路を接続又は切断するものである。トランスファクラッチ80は、本発明の拘束力可変機構として機能する。
トランスファクラッチ80は、例えば、接続時の締結力(伝達トルク容量・前輪駆動機構と後輪駆動機構との拘束力)を無段階に変更可能な電磁式の湿式多板クラッチである。
トランスファクラッチ80の締結力(拘束力)は、トランスミッション制御ユニット120によって制御されている。
トランスファクラッチ80は、締結力を変更することによって、前後輪の駆動トルク配分を調節可能となっている。
また、トランスファクラッチ80は、車両の旋回時や、エンジン運転中におけるアンチロックブレーキ制御、車両挙動制御などの実行時に、前後輪の回転速度差を許容する必要がある場合には、締結力を低下(開放)させスリップさせることによって回転速度差を吸収する。
さらに、トランスファクラッチ80は、エンジン10が走行中に停止している状態からの急制動時に、車輪ロックの防止又は回復を図るため、エンジン10の再始動が行われるまでの間一時的に締結力を増加する制御が行われる。
この点については、後に詳しく説明する。
車両1は、さらにエンジン制御ユニット110、トランスミッション制御ユニット120、挙動制御ユニット130、環境認識ユニット140等を有する。
エンジン制御ユニット110は、エンジン10及びその補器類を統括的に制御するものである。
エンジン制御ユニット110は、図示しないアクセルペダルの操作量等に基づいて、ドライバ要求トルクを設定するとともに、エンジン10の実際の出力トルクがドライバ要求トルクと一致するよう、エンジン10及びその補機類を制御する。
また、エンジン制御装置110は、車両1の走行中に、所定のエンジン停止条件が充足した場合に、エンジン10を自動的に停止して車両1を惰性走行させる走行中エンジン停止制御機能を備えている。
エンジン停止条件として、例えば、以下のものがあげられる。
(1)ドライバ要求トルクが0(アクセルペダルが全戻し状態)である。
(2)車速が予め設定された所定の範囲内。
(3)操舵装置のステアリング舵角が所定の閾値以下。
(4)車体に作用する左右方向、前後方向の加速度が所定の閾値以下。
(5)環境認識ユニット140が検出した先行車との車間距離が所定の閾値以上。
エンジン10の停止は、例えば、燃料噴射及び点火を停止することにより行う。
エンジン10が走行中に停止された場合には、トランスミッション制御ユニット120は、エンジン10の出力軸の回転速度低下を許容するため、ロックアップクラッチ30を解放する。
また、エンジン制御ユニット110は、これらの条件の一部又は全部が非充足となった場合には、直ちに燃料噴射及び点火を再開し、エンジン10の再始動を行う。
トランスミッション制御ユニット120は、ロックアップクラッチ30、前後進切替部40、バリエータ50、トランスファクラッチ80等を統括的に制御するものである。
トランスミッション制御ユニット120は、例えばドライバ要求トルク、車速等の車両の走行状態に応じて、ロックアップクラッチ30の締結力、バリエータ50における変速比、トランスファクラッチ80の締結力(拘束力)等を制御する。
トランスミッション制御ユニット120は、本発明の拘束力制御装置として機能する。
また、トランスミッション制御ユニット120は、ドライバによる走行レンジ選択操作に応じて、前後進切替部40の前進状態(Dレンジ)、後退状態(Rレンジ)、中立状態(Nレンジ)、パーキングロック状態(Pレンジ)を切り換える。
挙動制御ユニット130は、車両の液圧式サービスブレーキを統括的に制御する制動制御装置である。
挙動制御ユニット130は、ハイドロリックユニット131を制御する機能を有する。
ハイドロリックユニット131は、マスタシリンダ132から供給されるブレーキフルード液圧を、各車輪のホイルシリンダ133毎に個別に増減させる機能を備えている。
マスタシリンダ132は、ドライバによる図示しないブレーキペダルの踏込み操作に応じて、ブレーキフルードのマスタ液圧を発生させる加圧装置である。
マスタシリンダ132には、エンジン10の吸気管負圧を利用したブレーキブースタ(真空倍力装置)が設けられる。
ハイドロリックユニット131は、ブレーキフルードを加圧するモータポンプ、及び、各車輪のホイルシリンダ133の液圧を個別に制御するための各種電磁弁(加圧弁、減圧弁、保持弁等)を備えている。
挙動制御ユニット130は、例えば、アンダーステアやオーバーステア等の挙動発生時に、左右車輪の制動力差を発生させて挙動を抑制する方向のヨーモーメントを発生させる挙動制御を行う。
また、挙動制御ユニット130は、車速センサ134の出力に基づいて、制動時における車輪のロック又はその兆候を検出した場合に、当該車輪のホイルシリンダ133のブレーキフルード液圧を周期的に低下させて車輪の回転の回復を図るアンチロックブレーキ制御を行う。
本明細書、特許請求の範囲において、車輪のロックとは、車輪の制動により車輪回転速度が車両の走行速度に対して極端に低下しあるいはゼロとなり、タイヤ踏面が路面に対して滑走(スリップ)状態にあることを指すものとする。
車速センサ134は、各車輪が取り付けられるハブ部に設けられ、車輪の回転速度に応じた車速信号を発生する。
環境認識ユニット140は、自車両前方の環境を認識するものである。
環境認識ユニット140は、例えば、ステレオカメラ141を備え、自車両前方を走行する他車両の有無及び、他車両が存在する場合には自車両に対する相対位置を逐次検出可能となっている。
ステレオカメラ141は、撮像範囲を車両前方に向けかつ車幅方向に離間して配置された1対の撮像装置(カメラ)と、左右の撮像装置がそれぞれ撮像した画像に公知のステレオ画像処理を施す画像処理装置とを有する。
これらの各ユニットは、それぞれCPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス等を有して構成されている。
また、これらの各ユニットは、例えば車載LANシステムの一種であるCAN通信システム等を介して、相互に通信し、必用な情報の伝達が可能となっている。
これらの各ユニットは、協働して第1実施形態の車両制御装置を構成する。
以下、第1実施形態の車両制御装置の動作について説明する。
図2は、第1実施形態の車両制御装置において走行中エンジン停止状態から制動した場合の制御を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS01:走行中エンジン停止実行中判断>
エンジン制御ユニット110は、車両1の走行中にエンジン10を停止した状態であるか否かを判別する。
走行中エンジン停止状態である場合はステップS02に進み、その他の場合は一連の処理を終了(リターン)する。
<ステップS02:ABS制御介入判断>
挙動制御ユニット130は、上述したアンチロックブレーキ制御が介入(実行)しているか否かを判別する。
挙動制御ユニット130は、アンチロックブレーキ制御が介入している場合には、ABS制御オン信号をエンジン制御ユニット110、トランスミッション制御ユニット120に伝達する。
アンチロックブレーキ制御が介入している場合は、急制動条件を充足したものとしてステップS03に進み、その他の場合は一連の処理を終了(リターン)する。
<ステップS03:トランスファクラッチ締結>
トランスミッション制御ユニット120は、トランスファクラッチ80の締結力(拘束力)を、車両の通常走行時に用いられる締結力に対して増加させる。
例えば、トランスファクラッチ80の締結力を、実用上利用可能な最大締結力とすることができる。
その後、ステップS04に進む。
<ステップS04:燃料噴射・クランキング実行>
エンジン制御ユニット110は、エンジン10の再始動動作を行う。
エンジン制御ユニット110は、エンジン10への燃料噴射及び点火を再開するとともに、エンジン10の出力軸を外部から強制的に回転させるクランキングを開始する。
クランキングは、例えば、ロックアップクラッチ30を締結して車輪側からの駆動力を伝達して行う構成としてもよい。また、図示しないスタータモータを用いてクランキングを行ってもよい。
その後、ステップS05に進む。
<ステップS05:エンジン完爆判定>
エンジン制御ユニット110は、エンジン10の再始動が完了したか否かを判別する完爆判定を行う。
例えば、エンジン10の出力軸の回転速度が、予め設定された閾値を所定時間以上にわたって超過した場合に、完爆判定を成立させることができる。
完爆判定が成立した場合はステップS06に進み、その他の場合はステップS05を繰り返す。
<ステップS06:トランスファクラッチ解放>
トランスミッション制御ユニット120は、トランスファクラッチ80の締結力(拘束力)を、ステップS03において増加させた状態から低下させる。
例えば、トランスミッション制御ユニット120は、トランスファクラッチ80の締結力が不可避的に生じるフリクションと同等となる解放状態とすることができる。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)エンジン10の停止中に行われた急制動に応じて、トランスファクラッチ80の締結力を増加させることにより、前輪、後輪の一方で車輪ロックが生じた場合に、他方の車輪側から伝達される駆動力により車輪ロックからの早期回復を図ることができる。
(2)車輪ロックが発生した場合に、直ちにエンジン10を再始動し、エンジン10のトルクを車輪に伝達することにより、車輪ロックからの回復を図ることができる。
(3)エンジン10の再始動が完了した後に、トランスファクラッチ80の締結力を低下させることにより、エンジン10の再始動が未了であり回転が不安定な状態で前輪駆動機構と後輪駆動機構との拘束が弱まり、車両1が不安定な状態になることを防止できる。
(4)トランスファクラッチ80の締結力増加制御を、アンチロックブレーキ制御の介入に応じて行うことにより、一般的な車両で用いられる装置や信号を利用した簡単な構成により、適切に上述した効果を得ることができる。
(5)前輪駆動機構を介してエンジン10と前輪とを直結することにより、エンジン10の再始動後に、車輪ロックが生じやすい前輪にエンジン10のトルクを伝達して前輪の車輪ロックを早期に回復することができる。
また、エンジン10の再始動が完了する前においては、トランスファクラッチ80の締結力を増加させることにより、後輪側から前輪側へ駆動力を伝達し、前輪の車輪ロックの回復効果を得ることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した車両制御装置の第2実施形態について説明する。
以下説明する各実施形態において、従前の実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図3は、第2実施形態の車両制御装置において走行中エンジン停止状態から制動した場合の制御を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS11:走行中エンジン停止実行中判断>
エンジン制御ユニット110は、車両1の走行中にエンジン10を停止した状態であるか否かを判別する。
走行中エンジン停止状態である場合はステップS12に進み、その他の場合は一連の処理を終了(リターン)する。
<ステップS12:ABS制御介入判断>
挙動制御ユニット130は、上述したアンチロックブレーキ制御が介入(作動)しているか否かを判別する。
アンチロックブレーキ制御が介入している場合は、急制動条件を充足したものとしてステップS13に進み、その他の場合は一連の処理を終了(リターン)する。
<ステップS13:トランスファクラッチ締結>
トランスミッション制御ユニット120は、トランスファクラッチ80の締結力(拘束力)を、車両の通常走行時に用いられる締結力に対して増加させる。
その後、ステップS14に進む。
<ステップS14:燃料噴射・クランキング実行>
エンジン制御ユニット110は、エンジン10への燃料噴射及び点火を再開するとともに、エンジン10の出力軸を外部から強制的に回転させるクランキングを開始する。
その後、ステップS15に進む。
<ステップS15:トランスファクラッチ解放>
トランスミッション制御ユニット120は、トランスファクラッチ80の締結力(拘束力)を、ステップS13において増加させた状態から低下させる。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果((3)項に記載したものを除く)に加えて、エンジン10の再始動が短時間で行われることが確実である場合には、再始動動作の開始に応じて直ちにトランスファクラッチ80の締結力を低下させることにより、トランスファクラッチ80の締結力低下に時間応答遅れがある場合であっても、エンジン10を運転しかつトランスファクラッチ80の締結力を低下させた通常の車両制御に早期に復帰させることができる。
<第3実施形態>
次に、本発明を適用した車両制御装置の第3実施形態について説明する。
図4は、第3実施形態の車両制御装置において走行中エンジン停止状態から制動した場合の制御を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS21:走行中エンジン停止実行中判断>
エンジン制御ユニット110は、車両1の走行中にエンジン10を停止した状態であるか否かを判別する。
走行中エンジン停止状態である場合はステップS22に進み、その他の場合は一連の処理を終了(リターン)する。
<ステップS22:車両減速度判断>
挙動制御ユニット130は、車速センサ134の出力に基づいて算出される走行速度(車速)の推移に基づいて、車両1の減速度を算出する。
車両1の減速度が予め設定された閾値以上である場合は、急制動条件を充足したものとしてステップS23に進み、その他の場合は一連の処理を終了(リターン)する。
<ステップS23:トランスファクラッチ締結>
トランスミッション制御ユニット120は、トランスファクラッチ80の締結力(拘束力)を、車両の通常走行時に用いられる締結力に対して増加させる。
その後、ステップS24に進む。
<ステップS24:燃料噴射・クランキング実行>
エンジン制御ユニット110は、エンジン10への燃料噴射及び点火を再開するとともに、エンジン10の出力軸を外部から強制的に回転させるクランキングを開始する。
その後、ステップS25に進む。
<ステップS25:エンジン完爆判定>
エンジン制御ユニット110は、エンジン10の再始動が完了したか否かを判別する完爆判定を行う。
例えば、エンジン10の出力軸の回転速度が、予め設定された閾値を所定時間以上にわたって超過した場合に、完爆判定を成立させることができる。
完爆判定が成立した場合はステップS26に進み、その他の場合はステップS25を繰り返す。
<ステップS26:トランスファクラッチ解放>
トランスミッション制御ユニット120は、トランスファクラッチ80の締結力(拘束力)を、ステップS23において増加させた状態から低下させる。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
以上説明した第3実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果((4)項に記載のものを除く)と同様の効果に加えて、車輪ロックに至らない状態であっても、エンジン10の停止中の急制動時にトランスファクラッチ80の締結力を増加させ、前輪駆動機構と後輪駆動機構との拘束力を高めることにより、車輪ロックを未然に防止して車両1の安定性を確保することができる。
(変形例)
本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)車両制御装置及び車両の構成は、上述した各実施形態に限定されることなく、適宜変更することが可能である。
例えば、各実施形態の車両制御装置において複数のユニット等により実現されている機能を、単一のユニット等に集約してもよい。一方、各実施形態において単一のユニット等により実現されている機能を、複数のユニット等に分割してもよい。
また、エンジン、変速機の種類なども特に限定されない。
(2)各実施形態の車両のAWDシステムは、エンジンを前輪駆動機構とを直結し、後輪駆動機構を前輪駆動機構から締結力可変機構(トランスファクラッチ)を介して駆動するFWDベースの構成としているが、AWDシステムの構成はこれに限らず、適宜変更することができる。
例えば、後輪駆動機構をエンジンと直結し、前輪駆動機構を後輪駆動機構から締結力可変機構を介して駆動するRWDベースの構成としてもよい。
また、前輪駆動機構と後輪駆動機構との回転速度差を吸収するためにベベルギヤ式、プラネタリギヤ式などの機械式センターディファレンシャルを有するフルタイムAWDシステムにおいて、センターディファレンシャルの前輪側出力部と後輪側出力部との回転速度差を拘束する電磁式、油圧式等のクラッチを有するものであってもよい。
(3)各実施形態において、車両は、一例としてエンジンのみを走行用動力源とするものであったが、本発明はこれに限らず、エンジン及び電動モータの出力をそれぞれ車輪に伝達することが可能なエンジン-電気ハイブリッド車両にも適用することができる。
(4)第1、第2実施形態においては、エンジンを走行中に停止した状態でのアンチロックブレーキ制御の介入時に急制動条件を充足したものとし、第3実施形態においては車両減速度が閾値以上となった場合に急制動条件を充足したものとして、トランスファクラッチ80の締結力を増加させているが、これに限らず、他の手法により急制動条件を判別してもよい。
例えば、ブレーキ装置の制動力に相関するパラメータを検出し、このパラメータが所定の閾値以上となった場合に急制動条件を充足したと判定してもよい。
制動力に相関するパラメータとして、例えば、ブレーキフルードのホイルシリンダ液圧、マスタシリンダ液圧、ブレーキペダルの踏込み量(ストローク)、踏力等を用いることができる。
また、車両の減速度を検出する手法も、車速センサの出力を用いるものに限らず、例えば車体の前後加速度センサを用いるなど、他の手法を用いてもよい。
1 車両 10 エンジン
20 トルクコンバータ 30 ロックアップクラッチ
40 前後進切替部 50 バリエータ
51 プライマリプーリ 52 セカンダリプーリ
53 チェーン 60 フロントディファレンシャル
70 リアディファレンシャル 80 トランスファクラッチ
110 エンジン制御ユニット 120 トランスミッション制御ユニット
130 挙動制御ユニット 131 ハイドロリックユニット
132 マスタシリンダ 133 ホイルシリンダ
134 車速センサ 140 環境認識ユニット
141 ステレオカメラ

Claims (8)

  1. エンジンと、
    前記エンジンの出力を車両の前輪に伝達する前輪駆動機構と、
    前記エンジンの出力を前記車両の後輪に伝達する後輪駆動機構と、
    前記前輪駆動機構と前記後輪駆動機構との拘束力を変更可能な拘束力可変機構と、
    前記前輪及び前記後輪に制動力を発生させる制動装置と
    を備える車両に設けられる車両制御装置であって、
    前記車両の走行中に所定のエンジン停止条件を充足した場合に前記エンジンを自動的に停止させるエンジン制御装置と、
    前記車両の走行中でありかつ前記エンジンの停止中に、所定の急制動条件を充足した場合に、前記拘束力可変機構の拘束力を増加させる拘束力制御装置と
    を備えることを特徴とする車両制御装置。
  2. 前記エンジン制御装置は、前記エンジンの停止中に前記急制動条件を充足した場合に、前記エンジンの再始動を行うこと
    を特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
  3. 前記拘束力制御装置は、前記エンジンの再始動が完了した後に前記拘束力可変機構の拘束力を低下させること
    を特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
  4. 前記拘束力制御装置は、前記エンジンの再始動動作が開始された後に前記拘束力可変機構の拘束力を低下させること
    を特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
  5. 前記制動装置の制動力による前記前輪と前記後輪との少なくとも一方のロック又はその兆候に応じて、前記制動力を周期的に低下させるアンチロックブレーキ制御を行う制動制御部を備え、
    前記拘束力制御装置は、前記アンチロックブレーキ制御の実行時に前記急制動条件を充足したと判定すること
    を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両制御装置。
  6. 車両の減速度を検出する減速度検出部を備え、
    前記拘束力制御装置は、前記減速度が所定の閾値以上である場合に前記急制動条件を充足したと判定すること
    を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両制御装置。
  7. 前記制動装置の制動力に相関するパラメータを検出する制動力検出部を備え、
    前記拘束力制御装置は、前記制動力に相関するパラメータが所定の閾値以上である場合に前記急制動条件を充足したと判定すること
    を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両制御装置。
  8. 前記前輪駆動機構は、前記エンジンの再始動後に前記エンジンと前記前輪とを直結する機能を有し、
    前記後輪駆動機構は、前記前輪駆動機構から前記拘束力可変機構を介して駆動力が伝達されること
    を特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の車両制御装置。
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