〔第1実施形態〕
以下に、本発明に係る腐食管理システム、水処理装置、及び発電プラント、並びに腐食管理方法、並びに腐食管理プログラムの第1実施形態について、図面を参照して説明する。なお、腐食管理システムは、蒸気を生成するボイラ等への給水等の水の水質を管理する発電プラントであれば幅広く適用できるものである。本実施形態では、腐食管理システムを、発電プラントにおける排熱回収ボイラに適用する場合を例として説明する。
図1は、排熱回収ボイラ1の配管系統図である。排熱回収ボイラ1は、コンバインドサイクル発電プラント(GTCC)7に設置される。発電プラント7は、ガスタービン(不図示)と蒸気タービン3とを備えている。そして、ガスタービン(不図示)で発電機(不図示)を回転駆動して発電をするとともに、ガスタービン(不図示)で発生した排ガスは、排熱回収ボイラ1に供給されて蒸気を発生させる。蒸気は蒸気タービン3に供給されて、蒸気タービン3に連結した発電機(不図示)を回転駆動して発電を行う。
排熱回収ボイラ(ボイラ)1は、複数の排熱回収部を備える。なお、排熱回収部は1つとしても良い。複数の排熱回収部を設置する場合は、排熱回収部はそれぞれ異なる圧力の蒸気を発生させる。本実施形態においては、図1では、例えば3つの排熱回収部10a~10cが設置され、それぞれ相対的に高圧(排熱回収部10a)、中圧(排熱回収部10b)、低圧(排熱回収部10c)の蒸気を発生させる。
まず、発電プラント7に既設される給水系統について説明する。
排熱回収部10a~10cはそれぞれ、蒸気ドラム11a~11c、蒸発器12a~12c、節炭器13a~13c及び過熱器20a~20cを備える。蒸気ドラム11aと節炭器13aとが配管Lw4a~Lw4cにより連結される。蒸気ドラム11a~11cと蒸発器12a~12cとが、それぞれ配管Lw5-1a~Lw5-1c及びLw5-2a~Lw5-2cにより連結される。なお、図1では配管Lw5-2a~Lw5-2cをそれぞれ2つずつ設置した構成を示しているが、これに限定されず、配管Lw5-2a~Lw5-2cをそれぞれ1つずつとしてもよい。
復水器2は配管Lw1により低圧の排熱回収部10cの節炭器13cと接続する。復水器2から排出された復水(給水)は、配管Lw1の途中に設けられた復水ポンプ4によって節炭器13cに送給される。配管Lw1にバルブV3が設置される。
配管Lw1は中途位置で分岐し、配管Lw2が連結する。配管Lw2は配管Lw1に接続する。配管Lw2の途中に節炭器循環ポンプ5が設置されており、節炭器13cから排出された給水の一部が節炭器13cに供給される構成となっている。配管Lw2には、節炭器循環ポンプ5の上流側においてバルブV4が設置される。
配管Lw2はバルブV4の上流側の途中位置で分岐し、配管Lw3が連結する。配管Lw3にバルブV5が設置される。配管Lw3は更に途中位置でLw3-1とLw3-2とに分岐し、それぞれ節炭器13a、13bに接続する。配管Lw3-1及びLw3-2の途中に給水ポンプ14a、14bが設置され、節炭器13cから排出された給水が節炭器13a、13bに送給される。なお、上記ポンプは一体型として、1つのポンプから配管Lw3-1及び配管Lw3-2に給水が送給される構成としても良い。
蒸気系統は、蒸気ドラム11a~11cが、それぞれ途中に過熱器20a~20cが設置された配管Lv1a~Lv1cにより蒸気タービン3に連結される構成となっている。なお、図1において、配管Lv1bは過熱器20bの蒸気下流側で分岐し、配管Lv2が接続する。配管Lv2を通じて蒸気が、ガスタービンの冷却用としてガスタービン(不図示)に送給される。
図1では、節炭器13aの上流側で配管Lw3-1が分岐し、配管Lw6aが接続される。配管Lw6aは過熱器20aに連結され、過熱調整のために給水が過熱器20aに搬送されるように構成されている。また、節炭器13bの上流側で配管Lw3-2が分岐し、配管Lw6bが接続される。配管Lw6bは配管Lv1bの途中に向けられる再熱器21に連結され、過熱低減のために給水が再熱器21に搬送されるように構成されている。配管Lw6a及びLw6bにそれぞれバルブV6、V7が設置される。
次に、図1に示す排熱回収ボイラ1に適用される腐食管理システム31について説明する。なお、腐食管理システム31は、適用先を図1に示す構成の排熱回収ボイラ1に限定されず、蒸気を生成するボイラ等への給水等の水を水質を管理して使用する発電プラント7であれば幅広く適用可能である。発電プラント7では、水質異常によって腐食が発生する場合があり、例えば、排熱回収ボイラ1では、節炭器や給水系統における給水管などの配管において腐食(FAC)による減肉現象が発生する可能性がある。そこで、発電プラント7において腐食管理システム31を適用することで、腐食のより正確な評価を行う。
なお、発電プラント7では、定常運転時には、配管の腐食の発生及び進行を抑制する水質管理が行われているものとする。腐食を抑制する水質管理とは、例えば、High-AVT(高pH水処理)や、AVT等の注入する薬液(例えばアンモニア等)で水質を調整することによって腐食の発生及び進行を抑制する水質管理である。薬液は、例えば、図1のCの位置において注入される。すなわち、発電プラント7の運転状態が定常状態(過渡状態ではない)である場合においては、水質管理によって腐食の発生及び進行は短期間では評価できない程度の低い状況(理想的には腐食なし)に抑制されているものとする。なお、定常運転時におけるHigh-AVT等の水質管理については、水処理部(定常運転時水処理部、水処理装置)30において行われる。水処理部30では、定常運転時において水のpHが予め設定した値となるように薬液を注入して水質を調整し、腐食の発生及び進行を抑制するHigh-AVT等の水質管理を行う。すなわち、水処理部30は、発電プラント7の運転時において、所定の周期で水質を監視し、薬液注入等で定常運転時の水の水質を予め設定した状態とするような水処理を行っている。例えば、High-AVTを行う場合には、水のpHが9.7以上(更に好ましくは9.8以上)となるように薬液(アンモニア等)を注入する。なお、High-AVT等の腐食の発生及び進行を抑制する水質管理については、自動で行うこととしてもよく、手動で行うこととしてもよい。
例えば、High-AVTによって水のpHを上昇させることによって、図2に示すように、水のpH=a1(a1>a2>a3)の場合では、pH=a2やa3の場合と比較して、運転時間に対する腐食による減肉を効果的に抑制することが可能となる。a1は例えばpH=9.8から10であり、a3は例えばpH=9から9.5である。
図3は、腐食管理システム31が備える機能を示した機能ブロック図である。図3に示されるように、腐食管理システム31は、検出部32と、計測部33と、管理装置34とを備えている。なお、計測部33は、腐食監視対象の機器(水が流通する配管等)に対して設けられており、検出部32は、腐食監視対象の機器に流入する水の水質を検出するため、例えば腐食監視対象の機器における水流れの上流側に配置される。
検出部32は、発電プラント7において使用され、腐食監視対象の機器を流通する水の水質変化に関する情報を検出する。なお、本実施形態では、水質変化に関する情報として、発電プラント7において使用される水の鉄濃度に関する情報を用いる。図4に腐食の発生状況を示すように、水が流通する配管等を構成する炭素鋼(母材)の表面では、マグネタイト(Fe3O4)を主成分とするスケール層(マグネタイト層)を生成しており、鉄イオンFe2+と平衡状態となっている。このため、炭素鋼の腐食は、スケール層から境膜を介したFe2+の溶出(拡散)により進行する。すなわち、腐食が進行するとスケール層に減肉が発生するとともに、流通する水にFe2+の溶出されるため鉄濃度が上昇する。このように、水の鉄濃度と腐食(減肉)は相関関係を有しているため、配管の腐食の発生を推定するために、水質変化に関する情報として鉄濃度を用いることが効果的となる。後述する発電プラント7の起動停止時における水質変化で水質悪化することで、配管が定常運転時よりも大きな腐食を発生し、この腐食量を推定するためには、鉄濃度を用いることが効果的となる。
しかしながら、鉄濃度自体の検出には、手分析(1回/1週間)を要するため、高頻度に鉄濃度を検出することは限界があり困難である。そこで、水の鉄濃度に関する情報として、水の濁り度合を表す指標であり、水の鉄濃度と相関関係を有する濁度を用いる。濁度は、水の鉄濃度と正の相関を有しているため、予め実験等によって濁度と水の鉄濃度の関係を特定し、相関関係等より導出される近似式を設定しておくことで、濁度から水の鉄濃度を推定することが可能となる。すなわち、濁度であれば検出部32を用いて連続的に検出することができるため、濁度によって間接的に水の鉄濃度を高頻度で検出することが可能となる。なお、本実施形態では、水の鉄濃度を間接的に取り扱うために濁度を用いて各処理を行う場合について説明するが、水の鉄濃度と濁度の相関関係より導出される近似式を用いて、検出した濁度から水の鉄濃度を推定し、濁度に替えて推定した水の鉄濃度により各処理を実行することとしてもよい。
検出部32において検出された濁度は、後述する管理装置34において用いられる。
計測部33は、腐食監視対象の機器に対して設けられており、水が流通する配管において減肉量を計測する。計測部33は、本実施形態では、薄膜状超音波センサであり、具体的には薄膜UT(Ultrasonic Testing)センサである。薄膜UTセンサは、超音波センサであって、小型及び薄型である。このため、配管が保温材で覆われている場合であっても、配管と保温材との間において配管の外周面に対して直接接触もしくは近接して設置することができ、配管の保温材を取り付けた状態でも配管の肉厚(配管の径方向の厚さ)を計測することができる。すなわち、計測部33において連続的に配管の肉厚が計測することができるため、減肉量(初期肉厚-計測時の肉厚など所定期間での肉厚の差)を把握することができる。なお、一般的なUTセンサ等では、配管に常時設置することができないために連続的な計測ができないとともに、計測を行う場合には保温材を取り除くとともに計測終了後保温材を復旧する等の手間を要する。このため、計測部33としては、薄膜UTセンサを用いることが好ましい。なお、配管の肉厚(減肉量)を常時連続的にモニタリングすることが可能なセンサであれば、薄膜UTセンサに限らず用いることができる。
計測部33において計測された肉厚(減肉量)は、後述する管理装置34に送信されて、管理装置34の各処理に用いられる。
管理装置34は、濁度(水の鉄濃度)と、減肉量とに基づいて、水質の管理を行う。特に、管理装置34では、定常運転状態においてはHigh-AVT等の水質管理が行われており腐食の発生及び進行が短期間では評価できない程度の低い状況に抑制されていることを前提として、過渡運転状態となる起動停止時等における減肉量を評価し、起動停止の頻度(起動停止の回数)から水質評価及び水質管理を行う。起動停止時においては、機器の配管を流通する水の水質が変化しやすく一時的に悪化する(例えば起動時にpHが低下する)可能性があるため、定常運転状態の水質管理を前提として、起動停止時における減肉量を評価することで、より詳細に所定期間での起動停止の頻度状態から配管の減肉量を評価することが可能となる。
管理装置34は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
図3に示されるように、管理装置34は、評価部35と、減肉量推定部36と、寿命推定部37と、水質変化量推定部38と、異常判定部39と、pH更新部40とを備えている。
評価部35は、水質変化に関する情報と計測した減肉量とに基づいて、計測部33における計測下限値未満における減肉量と、水質変化に関する情報の積算値との対応関係(以下、単に「対応関係」という。)を評価する。これは、水質変化に関する情報は減肉速度と相関関係があることから、水質変化に関する情報の積算値は減肉量と相関関係があることによる。具体的には、発電プラント7の起動停止時においては、水質管理を行っていても水質悪化が発生し易いために、配管に定常運転時よりも大きな腐食が発生し易い。水質変化に関する情報としては、発電プラント7において使用される水の鉄濃度(濁度)に関する情報である。図5は、起動停止に伴う肉厚の変化と、水の鉄濃度(濁度)の変化を運転時間に対して示した図である。図5に示すように、発電プラント7の起動停止では、水の鉄濃度が増加する。水の鉄濃度が増加するということは腐食が進行しているため、起動停止時において、腐食現象が発生していることを示している。腐食現象は起動停止を行うたびに発生し、定常運転時には水質管理を行っており腐食の発生及び進行が短期間では評価できない程度の低い状況に抑制されているにも関わらず、起動停止の回数が多いと、配管の減肉が進行してしまう可能性がある。
しかしながら、1回の起動停止における減肉量は極少ない場合が多いため、計測部(薄膜UTセンサ)33における計測精度では正確な計測値を得られない可能性がある。すなわち、1回の起動停止に係る減肉量は計測部33の計測下限値未満(または分解能未満)となる場合があるため、1回の起動停止の計測部33の計測値から、1回の起動停止に係る減肉量を計測部33により正確に計測することが困難である。
そこで、評価部35は、水の鉄濃度(濁度)の積算値と、減肉量との対応関係を評価する。具体的には、評価部35は、計測下限値以上の配管の減肉量が計測された場合に、減肉量と、水質変化に関する情報の積算値(水の鉄濃度(濁度)の積算値)とを対応付け、回帰分析により対応関係を評価する。回帰分析は、例えば線形補間により実施される。
まず、評価部35は、予め設定された基準時点から、検出部32において検出された濁度(水の鉄濃度)を所定の周期で取得し、積算する。なお、基準時点とは、本実施形態では発電プラント7の管理者等によって予め設定されるものであり配管の腐食が発生していない時点、例えば竣工時や対象機器の交換時等である。例えば、基準時点は、図5の例における運転時間が0(零)の時点(腐食が発生しておらず初期肉厚となっている時点)に対応する。また、運転時間が0(零)の時点の初期肉厚を取得した以降では、基準時点は、次の機会に発電プラント7の管理者等によって配管の腐食量が確認された時点(腐食量の確認肉厚を入手した時点)としてもよい。
また、評価部35は、計測部33によって取得された配管の減肉量を取得する。なお、計測部33より計測時における配管の肉厚が取得される場合には、基準時点における配管の肉厚(本実施形態では初期肉厚)から取得された肉厚を減算し、減肉量を取得することとしてもよい。基準時点では配管の肉厚は初期肉厚となっており、減肉量は0(零)である。また、1回の起動停止では、減肉量は少ない状況であり、計測部33における計測下限値に達しない場合がある。しかしながら、起動停止が複数回行われることで、配管の腐食が進み、減肉量が計測部33の計測下限値以上となる。評価部35は、計測部33によって計測下限値以上の減肉量が計測された場合に、計測された配管の減肉量の値は正確に計測されたものであるとして取得する。
そして、評価部35では、基準時点からの配管の減肉量を示す計測部33において計測された配管の減肉量(計測下限値以上)と、該基準時点からの濁度の積算値とを対応づける。具体的には、図6に示すように、計測された配管の減肉量と濁度の積算値とを対応付け、点P(計測点)として設定する。そして評価部35は、計測下限値以上の値として計測された減肉量と、濁度の積算値とを対応づけた点と初期点(減肉量が零であり、濁度の積算値が零である点)とを例えば線形補間(一次補間)などの回帰分析を行って結ぶ。なお、点Pと初期点との間の補間は、計測部33における計測下限値未満における減肉量と水質変化に関する情報(濁度)の積算値との対応関係がわかればよいため、線形補間に限定されない。これにより、減肉量と濁度の積算値とが対応関係として評価でき、特に、計測部33の計測下限値未満の領域においても、濁度の積算値(濁度を時間積分した値。一定期間内における濁度の総積算量)から減肉量を推定することが可能となる。例えば、図6において、濁度の積算値がD1である場合には、減肉量W1(計測部33における計測下限値未満の減肉量)を推定することが可能となる。
換言すると、評価部35は、基準時点における配管の初期減肉量及び初期濁度積算値と、基準時点からの減肉量であって計測部33により計測された減肉量及び基準時点からの濁度の積算値とに基づいて、計測部33における計測下限値未満の領域を補間して、減肉量と濁度の積算値との対応関係を設定する。
評価部35において設定された減肉量と濁度の積算値との対応関係は、後述する減肉量推定部36や水質変化量推定部38等において用いられる。
減肉量推定部36は、評価部35において設定した減肉量と濁度の積算値との対応関係に基づいて、一回分の起動停止における減肉量(以下、「起動停止減肉量」という。)を推定して、後述する配管の余寿命の推定で使用する。具体的には、減肉量推定部36は、起動停止一回分における濁度の積算値を用いて、対応関係により対応する起動停止一回分の減肉量を特定し、起動停止減肉量として推定する。起動停止一回分における濁度の積算値とは、例えば、図5に示すように、起動停止期間が終了して定常運転が開始されてから次に実施された起動停止期間が終了するまでにおいて検出された濁度の積算値である。
なお、定常運転期間においては水質管理が行われており、腐食の発生及び進行が短期間では評価できない程度の低い状況に抑制されているので、鉄濃度がほとんど零(腐食がほとんどない)とみなしてもよい。これにより、起動停止一回分における濁度の積算値として、起動停止期間における濁度の積算値とすることができる。また、起動停止期間が終了して定常運転が開始されてから次に実施された起動停止期間が終了するまでにおいて検出された濁度の積算値(または起動停止期間における濁度の積算値)の複数回分を平均することによって、起動停止一回分における濁度の積算値を設定することとしてもよい。これによって、濁度の積算値から起動停止減肉量を推定することができる。
さらに、評価部35において設定された減肉量と濁度の積算値との対応関係に基づいて起動停止減肉量を推定することに限定されずに、評価部35において設定された減肉量と起動停止回数から起動停止減肉量を推定してもよい。評価部35で、基準時点からの減肉量を示す計測部33において計測された減肉量(計測下限値以上)と、該基準時点からの起動停止回数を対応づける。減肉量推定部36は、減肉量と起動停止回数から、起動停止一回分の起動停止減肉量を推定することができる。より厳密には、起動停止減肉量は、起動停止期間の長さによって、起動停止時の鉄濃度増加、腐食の進行状況が異なる可能性があることから、濁度の積算値(または起動停止期間における濁度の積算値)の複数回分を平均することによって、起動停止一回分における濁度の積算値を用いた評価が、より好ましい。
減肉量推定部36において推定された起動停止減肉量は、後述する寿命推定部37において使用される。
寿命推定部37は、起動停止減肉量及び予め計画された起動停止の予定に基づいて、余寿命を推定する。WSS(週間起動停止)やDSS(日間起動停止)では、起動停止が予め計画されている。すなわち、起動停止減肉量で、1回あたりの起動停止に係る配管の減肉量がわかるため、配管の許容最大減肉量(初期肉厚から許容最小肉厚を減算した肉厚)に達するまでの起動停止回数(許容起動停止回数)を見積もることができる。そして、起動停止の予定から、許容起動停止回数分の起動停止が実施可能な期間(余寿命)を推定することが可能となる。
寿命推定部37では、本来では計測部33における計測下限値未満であった起動停止減肉量を減肉量推定部36により推定した値を用いて、腐食監視対象の機器の配管の肉厚が許容最小肉厚(許容最大減肉量)に達するまでの余寿命を推定することができるため、より正確に配管の余寿命を推定することが可能となる。
また、寿命推定部37では、腐食監視対象の機器の配管の余寿命と予定されている更新時期とを比較することにより、更新時期までに配管の肉厚が許容最小肉厚に達する可能性があるか否かを判定する。具体的には、寿命推定部37は、寿命推定時点に余寿命を加えた推定限界時期と、予め計画された更新時期とを比較し、推定限界時期が更新時期よりも後であれば、更新時期までに配管の肉厚が許容最小肉厚に達する可能性が低いと判定し、推定限界時期が更新時期よりも前であれば、更新時期までに配管の肉厚が許容最小肉厚に達する可能性が高いと判定する。
さらに、寿命推定部37において、更新時期までに配管の肉厚が許容最小肉厚に達する可能性が高いと判定された場合には、水質調整で水質の改善行うことで寿命延長をさせるため、pH更新部40による処理が実行される。
水質変化量推定部38は、一回分の起動停止における水質変化に関する情報(起動停止水質変化量)を推定して、後述する異常判定に使用する。なお、本実施形態では、水質変化に関する情報を濁度としているため、一回分の起動停止における濁度の変化量(一回分の起動停止に係る濁度の積算値)を推定する。起動停止一回分における濁度の積算値とは、例えば、図5に示すように、起動停止期間が終了して定常運転が開始されてから次に実施された起動停止期間が終了するまでにおいて検出された濁度の積算値である。なお、定常運転期間においては水質管理が行われており、鉄濃度がほとんど零とみなしてもよいので、起動停止一回分における濁度の積算値として、起動停止期間における濁度の積算値としてもよい。また、起動停止期間が終了して定常運転が開始されてから次に実施された起動停止期間が終了するまでにおいて検出された濁度の積算値(または起動停止期間における濁度の積算値)の複数回分を平均することによって、起動停止一回分における濁度の積算値を設定することとしてもよい。なお、水質変化量推定部38において推定した起動停止水質変化量を用いて、減肉量推定部36では、起動停止減肉量を推定することとしてもよい。
すなわち、水質変化量推定部38において、一回分の起動停止に係る濁度の積算値を推定することによって、発電プラント7の運転実績としての一回分の起動停止に係る濁度の積算値の基準値を設定することができる。
水質変化量推定部38において推定された起動停止水質変化量(一回分の起動停止に係る濁度の積算値)は、後述する異常判定部39において使用される。
異常判定部39は、検出部32によって検出した水質変化に関する情報が、健全な発電プラント7で推定され設定された起動停止水質変化量よりも大きい値を示す場合に、水の水質が異常であると判定する。すなわち、異常判定部39では、水質変化量推定部38において起動停止水質変化量(一回分の起動停止に係る濁度の積算値)が設定された後において、起動停止のたびに、起動停止水質変化量に基づいて異常判定を行う。
具体的には、異常判定部39は、水質変化量推定部38において設定した起動停止水質変化量(一回分の起動停止に係る濁度の積算値)を取得し、起動停止水質変化量の誤差や変動分を付加して基準値として設定する。そして、異常判定部39は、検出部32より検出された濁度を取得し、起動停止があった場合に、一回分の起動停止に係る濁度の積算値を取得する。そして、取得した一回分の起動停止に係る濁度の積算値と、基準値とを比較し、取得した一回分の起動停止に係る濁度の積算値が基準値以上となっていた場合に、水質異常と判定する。すなわち、取得した一回分の起動停止に係る濁度の積算値が基準値以上となっていた場合には、基準値の設定前と比較して濁度が増加する事象が発生したと推定できるため、適切に水質を調整するために水質異常と判定する。起動停止水質変化量の誤差や変動分の付加した基準値は、発電プラント7の規模や運用状況により、例えば水質変化量推定部38において設定した起動停止水質変化量の1.5倍から5倍の間の適当な値としてもよい。
異常判定部39において、水質異常と判定された場合には、水質調整で水質改善を行うことで寿命延長されるため、pH更新部40による処理が実行される。
pH更新部40は、水質管理にあたり水質調整で水質改善を行うことで寿命延長するためのpH目標値を更新する。具体的には、水におけるpH、溶存酸素、及び鉄濃度(濁度)の少なくともいずれか1つが、予め設定された管理目標範囲外である場合に、水におけるpH目標値を更新する。pH更新部40では、pH、溶存酸素、及び鉄濃度の少なくともいずれか1つが用いられればよい。本実施形態では、pH、溶存酸素、及び鉄濃度のすべてを用いる場合について説明する。なお、pH更新部40におけるpH更新の詳細なフローは、後段において、図8及び図9を用いて詳述する。
pH更新部40における処理の概要としては、まず、水におけるpHが管理目標範囲外である場合に、水における酸電気伝導率(CC)が所定の目標範囲内であるか否かを判定し、酸電気伝導率が目標範囲内である場合に、pH目標値を更新し、酸電気伝導率が目標範囲外である場合に、水質異常の原因を不純物混入と特定して是正処理をする。
そして、pH更新部40は、水におけるpHが管理目標範囲内である場合に、溶存酸素(DO)に基づく判定に移行する。
pH更新部40は、水における溶存酸素が管理目標範囲外である場合に、復水器2の真空度が規定真空度範囲内であり、純水装置の酸素除去率が規定除去率範囲内であり、脱酸素剤が使用されていない場合に、pH目標値を更新する。なお、復水器2の真空度が規定真空度範囲外である場合や、純水装置の酸素除去率が規定除去率範囲外である場合、脱酸素剤が使用されている場合には、pH目標値を更新することによらず、他の是正処理が行われる。
そして、pH更新部40は、水における溶存酸素が管理目標範囲内である場合に、鉄濃度(濁度)に基づく判定に移行する。
pH更新部40は、水における鉄濃度が管理目標範囲外である場合に、pH目標値を更新し、水における鉄濃度が管理目標範囲内である場合に、鉄濃度と、計測部33において計測した濁度とに基づいて、予め設定した鉄濃度と濁度との相関関係より導出される近似式を補正する。すなわち、鉄濃度が管理目標範囲内であることが判定された場合には、pH、溶存酸素、及び鉄濃度が管理目標範囲内であるため、正常な状態とみなして、鉄濃度と濁度との相関関係より導出される近似式を更新する。これにより、検出した濁度を用いてより高精度に鉄濃度を推定することが可能となる。
そして、pH更新部40は、pH、溶存酸素、及び鉄濃度の少なくともいずれか1つが予め設定された管理目標範囲外である場合に、水が流通する機器における水が接触する銅もしくは銅合金使用の有無に応じて、pH目標値を更新する。銅もしくは銅合金は、熱交換器6の配管材料や配管中のパッキン部分などで使用される場合があり、高いpHでは銅もしくは銅合金に腐食が発生する場合がある。このため、銅もしくは銅合金を用いている機器が多いほど、更新して設定するpH目標値は、銅もしくは銅合金が無いものに比較して低く設定される。
このように、pH目標値が更新されると、更新されたpH目標値に基づいて水質調整が行われる。水質調整については、更新されたpH目標値に基づいて、水に対して注入する薬液を管理する水処理部30を設けておき、自動的に水質管理が行われることとしてもよいし、更新されたpH目標値に基づいて手動で水質調整を行うこととしてもよい。水処理部30を設ける場合には、腐食管理システム31(管理装置34)と薬液注入装置42とを備える水処理部30を発電プラント7に対して設け、例えば図1のCの位置から薬液を注入し水質管理を行う。
次に、上述の腐食管理システム31による評価について図7を参照して説明する。本実施形態では腐食監視対象の機器の配管に対して、図7に示すフローでは、発電プラント7が竣工または更新工事等が行われ、計測対象の配管の肉厚が運転時間が0(零)の時点の初期肉厚(減肉が発生していない状態)となっており、評価の開始指示があった場合(基準時点)に実行される。また、運転時間が0(零)の時点の初期肉厚を取得した以降では、基準時点は、次の機会に発電プラント7の管理者等によって配管の腐食量が確認された時点(腐食量の確認肉厚を入手した時点)としてもよい。
まず、計測部33において配管の計測した減肉量を取得する(S101)。なお、計測部33において、肉厚が取得される場合には、基準時点の配管の初期肉厚から計測した配管の肉厚を減ずることによって減肉量を算出する。すなわち、S101における配管の減肉量とは、基準時点(初期肉厚)に対する減肉量である。
次に、取得された配管の減肉量が、計測部33における計測下限値以上であるか否かを判定する(S102)。なお、計測部33では、計測下限値未満の値であっても、出力する可能性があるが、出力された値は、信頼性が低いため、S102では、計測下限値以上の値が計測されたか否かを判定している。計測下限値は、使用する計測部33の仕様に応じて予め設定される。配管の減肉量が計測部33における計測下限値以上でない場合(S102のNO判定)には、S101が再度実行される。
配管の減肉量が計測部33における計測下限値以上である場合(S102のYES判定)には、計測部33において計測下限値以上の減肉量が計測されたとして、S105へ移行する。
また、S101と平行して検出部32により検出された水質変化に関する情報として濁度を取得する(S103)。そして、取得した濁度を積算する(S104)。すなわち、S104では、取得された濁度を基準時点から積算した値を算出している。
そして、S102において計測下限値以上の減肉量が取得され、S104において濁度の積算値が算出された後に、減肉量と濁度の積算値との対応関係を評価する(S105)。すなわち、図6に示すような、計測部33における計測下限値未満においても減肉量を推定できるように水質変化に関する情報(濁度)の積算値との対応関係から評価する。
次に、一回分の起動停止における減肉量(起動停止減肉量)を推定する(S106)。起動停止減肉量は、本実施形態では起動停止一回分における濁度の積算値を用いて、S105において設定した対応関係に基づいて推定する。
次に、起動停止減肉量及び予め計画された起動停止の予定に基づいて、配管の余寿命を推定する(S107)。すなわち、1回の起動停止に係る配管の減肉量と、将来の起動停止の計画とにより、配管がいつ減肉量が許容最大減肉量に達するかを推定している。
次に、配管の余寿命が更新時期(次回更新時期)よりも前か否かを判定する(S108)。すなわち、更新時期までに腐食が進み、寿命を迎えてしまうか否かを判定している。換言すると、更新時期までに、腐食により許容最小肉厚(許容最大減肉量)に達してしまうか否かを判定している。
配管の余寿命が次回更新時期よりも前でないと判定された場合(S108のNO判定)には、S101及びS103が再度実行される。S101及びS103が再度実行される場合には、さらに減肉量の計測(S101)及び濁度の取得(S103)が行われ、S105において対応関係が更新され、再度の評価が行われる。
配管の余寿命が更新時期よりも前であると判定された場合(S108のYES判定)には、水質が異常となっている可能性があるため、S111の水質チェックへ移行する。
なお、S105の処理後においては、一回分の起動停止における水質変化に関する情報(起動停止水質変化量)を推定する処理(S109)も行われる。本実施形態において、起動停止水質変化量は、一回分の起動停止における濁度の積算値である。すなわち、S109では、発電プラント7の運転実績としての一回分の起動停止に係る濁度の積算値に起動停止水質変化量の誤差や変動分を付加して基準値を設定している。
次に、起動停止があった場合に、一回分の起動停止に係る濁度の積算値を取得し、取得した濁度の積算値が設定した基準値を超過しているか否かを判定する(S110)。取得した濁度の積算値が設定した基準値を超過していない場合(S110のNO判定)には、S101及びS103が再度実行される。
取得した濁度の積算値が設定した基準値を超過している場合(S110のYES判定)には、水質が異常となっている可能性があるため、S111の水質チェックへ移行する。
S111は、配管の余寿命が更新時期よりも前であると判定された場合(S108のYES判定)や、取得した濁度の積算値が設定した基準値を超過している場合(S110のYES判定)に実行される。
S111では、水質異常の原因特定を行い、原因に応じて水質管理におけるpH目標値を更新する。なお、S111の詳細な処理については図8及び図9を用いて後述する。
そして、更新されたpH目標値を用いて、水のpHを直接的に調整する(S112)。すなわち、更新されたpH目標値に基づいて、水処理部30を設けておき、自動的に薬液注入装置42を構成する薬液注入ポンプ(例えばアンモニア等の注入用ポンプなど)を制御し、薬液注入量(例えばアンモニア等の注入量)を変更する。更新されたpH目標値に基づいて手動で水質調整を行うこととしてもよい。そして、S101及びS103が再度実行される。
または、更新されたpH目標値を用いて、水のpHを段階的に調整することとしてもよい(S113及びS114)。すなわち、現在のpHとpH目標値の間の範囲を所定の分割数で分割してΔpH目標値を算出し、現在のpHにΔpH目標値を加算した値を目標値として設定し、設定した目標値に基づいて水のpHを調整する(S113)。すなわち、設定した目標値に基づいて薬液注入ポンプを制御し、薬液注入量を変更する。そして、所定期間後(例えば1週間)において水質確認(例えば濁度(鉄濃度))を行い、水質が改善されている(例えば濁度の減少)か否かを判定し(S114)、改善されていない場合(S114のNO判定)に、S113においてさらにΔpH目標値を加算して目標値を更新し上記の処理を実行する。なお、改善されている場合(S114のYES判定)には、S101及びS103が再度実行される。
なお、S112の処理は、配管の余寿命が更新時期よりも前である判定された場合(S108のYES判定)に実行されることが好ましく、S113-S114の処理は、取得した濁度の積算値が設定した基準値を超過している場合(S110のYES判定)に実行されることが好ましい。S112の処理及びS113-S114の処理のどちらを実行するか選択されてもよい。
なお、図7のフローでは、濁度を用いる場合について説明したが、濁度と鉄濃度の相関関係より導出される近似式を用いて、検出された濁度から鉄濃度を推定し、鉄濃度を用いて各処理を行うこととしてもよい。
次に、上述の図7における水質チェック処理の詳細について図8及び図9を参照して説明する。図8及び図9に示すフローは、図7のS111が実行される場合に処理を実行する。S111が実行される場合とは、配管の余寿命が更新時期よりも前である判定された場合(S108のYES判定)や、取得した濁度の積算値が設定した基準値を超過している場合(S110のYES判定)であり、水質に異常が発生している可能性があると推定された場合である。なお、pH、酸電気伝導率(以下、「CC」という。)、溶存酸素(以下、「DO」という。)を計測するための計測器が、発電プラント7における水循環系統における所定位置に設けられているものとする。例えば、計測器は、腐食監視対象の機器の配管(肉厚測定対象機器)における水流れの上流側等に設けられる。
まず、pHの計測値を取得する(S201)。そして、pHの計測値が管理目標範囲内であるか否かを判定する(S202)。管理目標範囲は、水質管理においてpHが変化可能な許容範囲として予め設定されている。pHの計測値が管理目標値内でなければ(S202のNO判定)、CCの計測値を取得する(S203)。そして、CCが目標範囲内であるか否かを判定する(S204)。目標範囲は、水質管理においてCCが変化可能な許容範囲として予め設定されている。CCが目標範囲内でない場合(S204のNO判定)には、水質異常の原因を不純物混入として特定し、是正処置を行う(S205)。是正処置とは、例えば、不純物混入箇所の補修等である。CCが目標範囲内である場合(S204のYES判定)には、S301へ移行する。
pHの計測値が管理目標値内であれば(S202のYES判定)、DOの計測値を取得する(S206)。そして、DOの計測値が管理目標範囲内であるか否かを判定する(S207)。管理目標範囲は、水質管理においてDOが変化可能な許容範囲として予め設定されている。DOの計測値が管理目標値内でなければ(S207のNO判定)、復水器2の真空度を取得し、復水器2の真空度が規定真空度範囲内であるか否かを判定する(S208)。復水器2の真空度が規定真空度範囲内でない場合(S208のNO判定)には、是正処理を行う(S209)。是正処理とは、例えば、配管のフランジ接合部、各弁やポンプのグランドの手直しを行い空気のリークを防止する処置である。
復水器2の真空度が規定真空度範囲内である場合(S208のYES判定)には、純水装置の酸素除去率(脱酸素状況)が規定除去率範囲内であるか否かを判定する(S210)。純水装置の酸素除去率が規定除去率範囲内でない場合(S210のNO判定)には、是正処理を行う(S211)。是正処理とは、例えば、配管のフランジ接合部、各弁やポンプのグランドの手直しを行い空気のリークを防止する処置である。
純水装置の酸素除去率が規定除去率範囲内である場合(S210のYES判定)には、発電プラント7において脱酸素剤(例えばヒドラジン)が使用されているか否かを判定する(S212)。脱酸素剤の使用状況については、予め発電プラント7の管理者等によって設定される。
脱酸素剤が使用されている場合(S212のYES判定)には、脱酸素剤の注入量を調整(例えば注入量を増加)し(S213)、S206へ移行する。脱酸素剤の調整は、S207において、DOが管理目標値内となるように調整される。脱酸素剤が使用されていない場合(S212のNO判定)には、S301へ移行する。
DOの計測値が管理目標値内である場合(S207のYES判定)には、鉄濃度を取得する(S214)。鉄濃度は、手分析によって取得される。そして、鉄濃度が管理目標範囲内であるか否かを判定する(S215)。管理目標範囲は、水質管理において鉄濃度が変化可能な許容範囲として予め設定されている。鉄濃度が管理目標値内でなければ(S215のNO判定)、S301へ移行する。鉄濃度が管理目標値内であれば(S215のYES判定)、鉄濃度と濁度との相関関係を、新たに手分析により取得した鉄濃度を用いて鉄濃度と濁度より導出される近似式の更新を行い(S216)、S101及びS103が再度実行される。
S301以降の処理では、水質管理において用いるpH目標値を更新する。
S301以降の処理では、水が流通する機器における水が接触する銅もしくは銅合金の使用の有無に応じて、pH目標値を更新する。本実施形態では、S301では、熱交換器6に銅合金が使用されており、復水器2に銅合金が使用されているか否かを判定する(S301)。熱交換器6に銅合金が使用されており、復水器2に銅合金が使用されている場合(S301のYES判定)には、第1範囲(pH=8.5~9.4)で、設備仕様に基づいてpH目標値を更新する(S302)。設備仕様とは、発電プラント7において循環されている水の総量および薬液注入装置42の注入可能量等である。
熱交換器6に銅合金が使用されており、復水器2に銅合金が使用されている場合でない場合(S301のNO判定)には、熱交換器6に鋼が使用されており、復水器2に銅合金が使用されているか否かを判定する(S303)。熱交換器6に鋼が使用されており、復水器2に銅合金が使用されている場合(S303のYES判定)には、第2範囲(pH=9.2~9.6)で、設備仕様に基づいてpH目標値を更新する(S304)。
熱交換器6に鋼が使用されており、復水器2に銅合金が使用されている場合でない場合(S303のNO判定)には、第3範囲(pH=9.3~10.3)で、設備仕様に基づいてpH目標値を更新する(S307)。
このように、水が流通する機器における水が接触する配管に、銅もしくは銅合金の使用の有無に応じて、使用される銅合金が少ないほど、pH目標値が高くなるように設定されることで、pH目標値を適切に設定することが可能となる。
次に、更新したpH目標値への調整に関して、減肉速度が加速している状況にあるか否かを推定する(減肉速度の加速状況推定)。すなわち、更新されてpH目標値へ調整を行う前に、減肉速度の加速状況を推定し、pH目標値へ調整を行うことで十分に減肉が抑制されるかを確認する。このため、更新したpH目標値への調整に関し、pH調整のための適正な規定回数Nを設定および/または次回のpH調整までの適正な期間ΔTを設定する(S308)。具体的には、プラント運転時間、起動停止回数、pH調整の回数、pH調整までの期間等の情報(過去の実績データ)をデータベースより取得し、規定回数N及び/または期間ΔTを設定する。規定回数Nとは、pH調整の頻度が多いか少ないかを評価するための指標であり、当該プラントのpH調整の実績(回数)や類似プラントの実績(回数)を参考にプラント運転時間または起動開始回数からプラントの劣化状況を加味して設定される。例えば、1年間の調整回数平均値に誤差や変動分を付加して規定回数Nを設定する。期間ΔTも、pH調整の頻度が多いか少ないかを評価するための指標であり、当該プラントのpH調整の実績(期間)や類似プラントの実績(期間)を参考にプラント運転時間または起動開始回数からプラントの劣化状況を加味して推定した期間に誤差や変動分を付加して設定される。このように、規定回数N及び期間ΔTは、過去の実績データに基づいて設定される。
次に、加速減肉カーブを設定する(S309)。加速減肉カーブとは、図10に示すように、時間経過に対する配管の肉厚の変化を示す特性(予測傾向)である。加速減肉カーブは、過去所定期間において取得した情報(プラント運転時間、起動停止回数、pH調整の回数、pH調整までの期間、配管の減肉量)、類似プラントの実績情報(プラント運転時間、起動停止回数、所定期間内のpH調整の回数、pH調整までの期間)、pH目標値、pH目標値の上限、およびpHを段階的に調整する場合は分割数とpHを段階的に調整する所定期間等の情報に基づいて、将来における配管の肉厚と起動停止を含めた運転時間との関係を予測して設定される。将来における配管の肉厚と時間との関係を予測には、過去データベースまたは類似プラントの実機データベースから将来の配管の肉厚変化の傾向を推定することができれば、回帰分析やAIによる機械学習等のさまざまな手法を適用することができる。
そして、計測部33および計測部33により関連する部位で同様の減肉が予想される部位の更新時期を前倒しする必要があるか否かを判定する(S310)。具体的には、所定期間内のpH調整回数(当該プラントの現状である減肉状況、劣化状況を考慮)が、S308において設定した規定回数N(過去(当該プラント、類似プラント)の実績データを考慮)以上であるか否かを判定する(第1判定)。また、前回pH調整してから新たにpH目標値を更新した期間(当該プラントの現状である減肉状況、劣化状況を考慮)が、S308において設定した期間ΔT(過去(当該プラント、類似プラント)の実績データを考慮)未満であるか否かを判定する(第2判定)。さらに、S307において更新したpH目標値へ調整後において、所定期間内に配管の肉厚が許容最小肉厚を下回るか否かを判定する(第3判定)。なお、第3判定においては、S307において更新したpH目標値へ調整後における加速減肉カーブを予想し、該加速減肉カーブに基づいて、所定期間内に配管の肉厚が許容最小肉厚を下回るか否かが判定される。すなわち、所定期間内に配管の肉厚が許容最小肉厚を下回る場合には、pH調整によって減肉抑制が十分に行えない可能性が高い状態となる。そして、第1判定、第2判定及び第3判定の少なくともいずれか1つが肯判定である場合(所定期間内のpH調整回数≧規定回数Nの場合、及び/または今回のpH調整までの期間<期間ΔTの場合、及び/または更新したpH目標値へ調整後に所定期間内に配管の肉厚<許容最小肉厚の場合)には(S310のYES判定)、当該発電プラント7や類似発電プラントの運転や調整の実績を外れているために速やかに運転停止が望ましい状況と判断して、発電プラント7を停止して、メンテナンスを行う(S311)。
第1判定、第2判定及び第3判定のいずれも肯判定でない場合(S310のNO判定)には、直ちに発電プラント7を停止する必要はないと推定し、図7におけるS112またはS113の処理へ移行して更新したpH目標値に基づいて水質調整を行う。
このようにして、濁度(鉄濃度)に基づく配管の微小肉厚の評価に基づいてpH調整が実行される。
以上説明したように、本実施形態に係る腐食管理システム、水処理装置、及び発電プラント、並びに腐食管理方法、並びに腐食管理プログラムによれば、例えば腐食監視対象の機器の配管の微小な減肉量の評価を行うことができる。定常運転時において配管の腐食の発生及び進行が短期間では評価できない程度の低い状況に抑制する水質管理(例えば、High-AVT)が行われている発電プラント7では、定常運転時には腐食は低い状況に抑制されるものの、起動停止時では水質が一時的に悪化する可能性がある。起動停止の回数に応じて水質悪化に伴う腐食は進行するが、1回の起動停止に伴う減肉量は少なく、計測部33(例えば薄膜UTセンサ)で計測可能な計測下限値未満となる場合が多い。1回の起動停止の計測部33の計測値から、1回の起動停止に伴う配管の腐食の発生及び進行による減肉量を評価することが困難であるため、1回の起動停止に伴う減肉量を評価することが困難であった。そこで、計測部33によって水が流通する配管における減肉量を計測するとともに、水の水質変化に関する情報を検出して積算することで、水質変化に関する情報の積算値と計測した減肉量との対応関係を評価することが可能となる。すなわち、水質変化に関する情報の積算値と減肉量とを対応づけることができるため、対応関係に基づいて、1回の起動停止に伴う減肉量や、計測される水質変化に関する情報の積算値に対する減肉量の推定など、計測部33の計測下限値によらず、配管の減肉量を推定することが可能となる。
また、鉄濃度は起動停止時において変化しやすいパラメータであるため、水質変化に関する情報として鉄濃度に関する情報を用いることで、より正確に減肉量との対応関係を得ることが可能となる。鉄濃度は手分析を行わなければならないが、鉄濃度と相関関係を有する濁度は水の濁り度合を表す指標として手分析によらずに発電プラント7に設置した計器により取得することができるため、鉄濃度と濁度の相関関係より導出される近似式を設定することで、より効率的に、濁度を介して鉄濃度を把握することが可能となる。
また、水質変化に関する情報(例えば濁度)の積算値と減肉量との対応関係に基づくことで、一回分の起動停止における配管の減肉量(起動停止減肉量)を推定することができ、計測部33の計測下限値によらず減肉量を推定することが可能となる。定常運転時において配管の腐食の発生及び進行が短期間では評価できない程度の低い状況に抑制する水質管理が行われることを前提として、起動停止減肉量と予め計画された起動停止の予定とに基づくことにより、将来の起動停止に伴う配管の減肉量を推定することが可能となる。このため、腐食が発生している配管の余寿命を推定することができ、点検や交換時期等をより適切に設定することが可能となる。
また、水質変化に関する情報(例えば濁度)の積算値と減肉量との対応関係に基づくことで、一回分の起動停止における水質変化に関する情報(起動停止水質変化量)を推定することができ、起動停止に伴う水質変化の度合いを把握することができる。起動停止水質変化量の推定後において、検出部32によって検出した水質変化に関する情報が健全な発電プラント7で推定し設定した起動停止水質変化量に起動停止水質変化量の誤差や変動分を付加して基準値を設定して、この基準値よりも大きい値を示す場合には、水質の異常を判定することが可能となる。
また、pH、溶存酸素、及び鉄濃度(濁度)の少なくともいずれか1つを用いることで、水質異常を効率的に判定することができる。このため、pH、溶存酸素、及び鉄濃度(濁度)の少なくともいずれか1つが管理目標範囲外である場合には、pH目標値を更新して水質調整で水質改善を行うことで、配管の腐食の進行を抑制して寿命延長をするこが可能となる。
pHが管理目標範囲外である場合に、酸電気伝導率が所定の目標範囲内であるか否かを判定することによって、効率的に原因を切り分けすることが可能となる。すなわち、酸電気伝導率が目標範囲内である場合にはpH目標値を更新することによって速やかに腐食の進行を抑制し、酸電気伝導率が目標範囲外である場合には、水質異常の原因を不純物混入と特定することで、適切な処置(例えば不純物混入箇所の補修等)を行うことが可能となる。
溶存酸素が管理目標範囲外である場合に、復水器2の真空度、純水装置の酸素除去率、及び脱酸素剤の使用の有無に基づくことで、効率的にpH目標値の更新によって水質異常が抑制可能な状況か否かを判定し、適切な処理を行うことが可能となる。なお、例えば復水器2の真空度が規定真空度範囲外である場合や、純水装置の酸素除去率が規定除去率範囲外である場合、脱酸素剤が使用されている場合には、pH目標値の更新ではなく、他の是正処置による対応によって効率的に水質異常が抑制される。
鉄濃度(濁度)が管理目標範囲内である場合に、鉄濃度と計測した濁度とに基づいて鉄濃度と濁度との相関関係より導出される近似式することにより、鉄濃度と濁度との相関関係を発電プラント7に合わせてより適切な状態とすることが可能となる。相関関係より導出される近似式が更新されることで、計測可能な濁度から手分析を要する鉄濃度をより正確に推定することが可能となる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る腐食管理システム、水処理装置、及び発電プラント、並びに腐食管理方法、並びに腐食管理プログラムについて説明する。
上述した第1実施形態では、定常運転時ではHigh-AVT等の水処理によって腐食監視対象の機器の配管の腐食の発生及び進行が短期間では評価できない程度の低い状況に抑制されており、定常運転時においては鉄濃度(濁度)は管理値未満となる場合を想定していた。一方、本実施形態では、定常運転時においても腐食監視対象の機器の配管には、想定外の腐食が発生し、腐食の発生及び進行が加速する場合について説明する。以下、本実施形態に係る腐食管理システム、水処理装置、及び発電プラント、並びに腐食管理方法、並びに腐食管理プログラムについて、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
水処理部30は、定常運転時において、検出部32から濁度を取得し、取得した濁度が、鉄濃度の管理値に対応する濁度(濁度管理値)以上となった場合に、pH目標値を変更し、配管の腐食を抑制する水質管理(例えば、High-AVT)にあたり水質調整で水質改善を行うことで寿命延長を行う。このような処理により、図12のように、腐食監視対象の機器の配管に、定常運転時における想定外の腐食加速がある場合であっても、濁度が管理値以上となることが抑制される。なお、第1形態では、定常運転時ではHigh-AVT等の水処理によって腐食の発生及び進行が短期間では評価できない程度の低い状況に抑制されていることを前提としていたため、水処理部30では、定常運転時において適切に設定されたpH目標値となるように薬液注入を調整することとしていたが、第1実施形態においても水処理部30において濁度管理値に基づくpH目標値の調整を行うこととしてもよい。
すなわち、本実施形態では、pH更新部40においてpH目標値の更新が行われるとともに、定常運転時における想定外の腐食加速の発生により、水処理部30においてもpH目標値の更新が行われる。
このように想定外の腐食加速が発生した場合、図12に示すように、配管の腐食の進行が抑制されず、時間の経過とともにpH調整の頻度が増加する場合がある(腐食加速)。このような場合には、定常運転時においても無視できないほどの配管の腐食が進行することとなるため、腐食加速がない場合と比較して、時間経過に伴う配管の腐食の進行が早くなる。図12において、L1は腐食加速がない場合における配管の肉厚変化を示しており、L2は腐食加速がある場合における配管の肉厚変化を示している。腐食加速がない場合には、起動停止に実施状況に応じて腐食監視対象の機器の配管の肉厚が許容最小肉厚(許容最大減肉量)に達するまでの余寿命を推定できるが、腐食加速があると、腐食速度が進むため、配管の余寿命の評価が困難となる。
そこで、本実施形態における腐食管理システム31では、図11に示すように寿命予測部41を備える。すなわち、寿命推定部37は腐食加速がない場合における配管の余寿命を推定するのに対し、寿命予測部41では、腐食加速がある場合における配管の余寿命を推定する。
寿命予測部41は、過去所定期間における起動停止時及び定常運転時における発電プラント7の運転データおよび類似プラントの実績に基づいて、配管の減肉傾向を予測し、予め設定された許容最大減肉量に達するまでの寿命を予測する。具体的には、まず、寿命予測部41は、予測を行う前まで発電プラント7の(過去所定期間)に取得された過去運転データおよび類似プラントの実績を取得してデータベースに保管する。過去運転データは、起動停止時及び定常運転時のデータを含んでいる。具体的には、過去運転データは、pHの計測値、鉄濃度(濁度)、pH調整の回数、pH調整の期間、起動停止回数等である。なお、腐食に関係する発電プラント7の運転状態を示すデータであれば上記に限定されない。特に、発電プラント7の運転時間、起動停止回数、鉄濃度(濁度)、pHの測定値、pH調整の回数、pH調整の期間、配管の減肉量が用いられることが好ましい。
そして、寿命予測部41は、データベースに保管された発電プラント7の過去運転データおよび類似プラントの実績に基づいて、腐食に関係する発電プラント7の運転状態を示す過去運転データおよび類似プラントの実績に類似した特性を統計的に選択することで、将来の肉厚変化(腐食減肉カーブ)を予測する。過去運転データおよび類似プラントの実績には、起動停止時及び定常運転時の両方における腐食に関係するデータを含んでいるため、図12のような腐食加速がある場合であっても、過去運転データおよび類似プラントの実績から選択した類似した特性と比較することで、腐食加速の影響を考慮して、配管の肉厚変化(減肉傾向)を予測することが可能となる。
過去運転データおよび類似プラントの実績に基づく将来の配管の肉厚変化の予測については、寿命予測部41で今回評価している発電プラント7の運転状態を示す各種データ間の相互関係の変化傾向が、データベースに保管された過去運転データおよび類似プラントでの運転状態を示す各種データ間の相互関係の変化傾向と類似した特性を示すものを選択する。運転状態を示す各種データのなかで、優先的に各種データ間の相互変化傾向の類似性を判断したい運転状態には、類似性を判断する得点に重みを設けることで、最も得点の高い類似した特性を示す運転状態であるデータベースの事例を選択して、このときの配管の腐食速度(減肉速度)を推定値として採用する。本実施形態では、例えば、鉄濃度(濁度)とpHの測定値の関係に他よりも大きな重み付けを行い、濃度(濁度)とpHの測定値の相互関係に重みを置いて最も類似する運転状態であるデータベースのデータの事例を選択して、このときの配管の腐食速度(減肉速度)を推定値として採用する。この配管の腐食速度(減肉速度)を推定値に基づいて、配管の将来の肉厚変化を予測する(推定時点)。なお、回帰分析やAIによる機械学習を適用することも可能である。例えば、過去運転データおよび類似プラントの実績に基づくことによって、肉厚変化を、L2-1やL2-2、L2-3のように更新し、より的確な将来の肉厚変化を予測することが可能となる。
このように、寿命予測部41では、データベースに保管された過去運転データおよび類似プラントの実績に基づいて配管の肉厚変化(減肉傾向)が予測される。なお、寿命予測部41では、予め設定した周期で更新された過去運転データおよび類似プラントの実績を取得してデータベースに保管し、配管の肉厚変化(減肉傾向)を更新する。このため、腐食加速の状況変化にも対応して、配管の肉厚変化(減肉傾向)を都度に予測することが可能となる。
そして、寿命予測部41では、予測した配管の肉厚変化に基づいて、予め設定された許容最小肉厚に達するまでの配管の余寿命を予測する。換言すると、寿命予測部41では、予測した減肉傾向に基づいて、予め設定された許容最大減肉量に達するまでの余寿命を予測する。
図12のように配管の肉厚変化が予測されると、配管の肉厚が許容最小肉厚となる時期(限界時期)が予測可能となる。このため、寿命予測部41では、肉厚が許容最小肉厚となる時期を予測することで配管の余寿命を予測する。
このように、寿命予測部41において、起動停止時及び定常運転時のデータを含んでいる過去運転データおよび類似プラントの実績に基づいて、腐食加速が発生した場合でも類似の運転データの特性を持つデータを探し出して配管の肉厚変化(減肉傾向)を予測することで、予寿命を予測することができる。より的確に配管の余寿命を予測することができるため、より安全に更新時期等を計画することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態に係る腐食管理システム、水処理装置、及び発電プラント、並びに腐食管理方法、並びに腐食管理プログラムによれば、過去所定期間における起動停止時の発電プラントの運転データだけでなく、過去所定期間における定常運転時の発電プラントの運転データおよび類似プラントの実績も用いることによって、定常運転時における一時的な水質異常による想定外の腐食加速がある場合の状況も考慮して、配管の減肉傾向を予測することができる。このため、減肉量が予め設定された許容最大減肉量に達するまでの余寿命をより的確に予測することが可能となる。
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。なお、各実施形態を組み合わせることも可能である。