JP7224199B2 - ミシンの制御方法及びミシンの制御装置 - Google Patents
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Description
例えば、伝達系がベルト機構である場合にベルトが経年劣化等により延びが生じたりすると予定されていた正確な動作の妨げとなるおそれがあった。
このため、従来のミシンは、ベルトの帯幅方向がミシンの上下方向に平行となるように配設することで、ミシンの側面から張力測定を容易にするような工夫が行われていた(例えば、特許文献1)。
負荷となる対象物に動力を付与するモーターと、
前記モーターから前記対象物に動力を伝達する伝達部と、
前記モーターと前記対象物との間に設けられたエンコーダーとを備えるミシンの制御方法において、
前記モーターの指令値と前記エンコーダーの出力から前記対象物と前記モーターから前記対象物までの伝達系とによる反力の推定値を算出し、
前記反力の推定値に基づいて、前記伝達部の異常の有無を判定することを特徴とする。
前記反力の推定値の周波数特性を求め、当該周波数特性から前記伝達部の異常の有無を判定することを特徴とする。
前記反力の推定値の大きさから前記伝達部の異常の有無を判定することを特徴とする。
負荷となる対象物に動力を付与するモーターと、
前記モーターから前記対象物に動力を伝達する伝達部と、
前記モーターと前記対象物との間に設けられたエンコーダーとを備えるミシンの制御装置において、
前記制御装置は、
前記モーターの指令値と前記エンコーダーの出力から前記対象物と前記モーターから前記対象物までの伝達系とによる反力の推定値を算出する反力算出部と、
前記反力の推定値に基づいて、前記伝達部の異常の有無を判定する判定部とを備えることを特徴とする。
前記判定部は、前記反力の推定値の周波数特性を求め、当該周波数特性から前記伝達部の異常の有無を判定する。
前記判定部は、前記反力の推定値の大きさから前記伝達部の異常の有無を判定することを特徴とする。
発明の実施形態として制御装置120を搭載したミシン100を例示する。
図1はミシン100の斜視図、図2は後述するミシン100の移動機構の斜視図である。
ミシン100は、被縫製物を保持する保持枠21を有し、その保持枠21が縫い針に対し相対的に移動することにより、保持枠21に保持された被縫製物に所定の縫製データに基づく縫い目を形成する、いわゆる電子サイクルミシンである。
ここで、後述する縫い針108が上下動を行う方向をZ軸方向(上下方向)とし、これと直交する一の方向をX軸方向(左右方向)とし、Z軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をY軸方向(前後方向)と定義する。
図1、図2に示すように、ミシン本体101は、外形が側面視にて略コ字状を呈するミシンフレーム102を備えている。このミシンフレーム102は、ミシン本体101の上部をなし、Y軸方向に延びるミシンアーム部102aと、ミシン本体101の下部をなし、Y軸方向に延びるミシンベッド部102bと、ミシンアーム部102aとミシンベッド部102bとを連結する立胴部102cとを有している。
このミシン本体101は、ミシンフレーム102内に動力伝達機構が配置され、回動自在でY軸方向に延びる主軸及び下軸(いずれも図示略)を有している。主軸はミシンアーム部102aの内部において回転可能に支持され、下軸(図示省略)はミシンベッド部102bの内部において回転可能に支持されている。
下軸(図示省略)の前端には、釜機構(図示省略)の外釜が設けられている。主軸と共に下軸が回転すると、外釜が回転し、縫い針108との協働により縫い目が形成される。
釜機構は、外釜と、外釜の内側でボビンを擁する内釜と、を備えている。釜機構の構成は周知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
ミシンアーム部102aの前端部には、縫い針108を下端部に保持した針棒108aが上下動可能に支持されている。ミシンアーム部102aの前端部内側において、主軸の前端に固定装備された針棒クランクと、針棒108aに固定装備された針棒抱きと、針棒クランクと針棒抱きと連結するクランクロッドとが設けられている。
即ち、上記主軸モーター2、主軸、針棒クランク、針棒抱き、クランクロッド、針棒108aは、縫い針108を上下動させる針上下動機構を構成している。
なお、針上下動機構は、周知の構成と同様のものなので、各構成についてはいずれも図示を省略している。
図1、図2に示すように、ミシンベッド部102b上には、針板110が配設されており、針板110上には移動機構20が設けられている。
移動機構20は、針板110の上側に重ねて配置された保持枠21及び下板22と、保持枠21を昇降可能に支持する土台23と、土台23及び下板22をX軸方向に沿って滑動可能に支持する第一可動部24と、土台23及び下板22を、第一可動部24を介してY軸方向に沿って滑動可能に支持する第二可動部25とを備えている。
下板22は、平面視で保持枠21とほぼ同じ大きさであって、保持枠21と同様に矩形に広く開口している。
保持枠21は、土台23により下板22に対して昇降可能であり、下降状態で下板22と保持枠21とで被縫製物を挟んだ状態で保持することができる。そして、保持枠21と下板22の開口部分の内側で被縫製物に対する縫製作業が行われる。
X軸モーター245は、スプライン軸244を介してプーリ243を回転駆動し、タイミングベルト242を介して土台23及び下板22をX軸方向に任意に移動位置決めすることができる。
スプライン軸244は、第二可動部25により、土台23及び下板22にY軸方向に沿った移動動作が付与された場合には、スプライン軸244に沿ってプーリ243が滑動し、Y軸方向に沿った土台23及び下板22の移動を許容することができる。
Y軸モーター255は、歯車機構254を介してプーリ253を回転駆動し、タイミングベルト252を介して第一可動部24のレール241と共に土台23及び下板22をY軸方向に任意に移動位置決めすることができる。
ペダルRは、ミシン100の起動、縫製の開始、保持枠21の昇降動作等を実行させる操作ペダルである。
ペダルRには、踏み込み操作位置を検出するためのセンサーが組み込まれており、センサーからの出力信号がペダルRの操作信号として後述する制御装置120に入力される。
制御装置120は、その操作位置に応じた操作信号によって、ミシン100の起動、その他の各動作を実行する制御を行う。
図3は制御装置120を含むミシン100の制御系のブロック図である。
ミシン100は、その全体構成を制御するための制御装置120を備えている。
制御装置120は、ミシン100全体を統括的に制御するCPU(central processing unit)121と、各種の処理又は制御を行うためのプログラムが格納されたプログラム用メモリ122と、各種のデータ、縫製パターンデータ124等が格納されたデータ用メモリ123と、主軸モーター2を制御する主軸モーター駆動回路125と、X軸モーター245を駆動させるX軸モーター駆動回路126と、Y軸モーター255を駆動させるY軸モーター駆動回路127とを備えている。
X軸モーター245には、負荷となる対象物である保持枠21,下板22及び土台23に対して移動力を付与するために、伝達部として、タイミングベルト242、プーリ243及びスプライン軸244等が介在している。
そして、X軸モーター245から対象物に到るまでの間に、エンコーダー246が設けられている。なお、ここではX軸モーター245の出力軸にエンコーダー246が設けられ、その軸角度を検出する。エンコーダー246は、検出信号をCPU121に入力する。
Y軸モーター255には、負荷となる対象物である保持枠21,下板22及び土台23に対して移動力を付与するために、伝達部として、タイミングベルト252、プーリ253、歯車機構254及び第一可動部24のレール241等が介在している。
そして、Y軸モーター255から対象物に到るまでの間に、エンコーダー256が設けられている。なお、ここではY軸モーター255の出力軸にエンコーダー256が設けられ、その軸角度を検出する。エンコーダー256は、検出信号をCPU121に入力する。
操作パネル300は、ユーザーによる操作入力が行われ、操作パネル300から入力された各種データや操作信号は、制御装置120に入力される。
なお、操作パネル300は、液晶表示パネルからなる表示部301と当該表示部301の表示画面上に設けられたタッチセンサー302とを備えて構成されており、液晶表示パネルに表示される各種操作キー等をタッチ操作することにより、タッチパネルがタッチ指示された位置を検出し、検出した位置に応じた操作信号を制御装置120に出力するようになっている。
Y軸モーター255の制御系は主にモーター部420と機械系430とオブザーバー部410から構成されている。
モーター部420は、Y軸モーター255の系統を示し、機械系430は、Y軸モーター255から伝達部を含む保持枠21等の対象物の系統を示している。
伝達要素404では、電流指令値IrefにY軸モーター255のトルク定数Ktが乗算され、Y軸モーター255の出力トルクの値が出力される。
加え合わせ点405では、Y軸モーター255の出力トルクに対して、Y軸モーター255、負荷となる対象物及び伝達部の総合的な負荷に基づく反力トルクTreacが減じられる。
伝達要素423では、モーター速度θ・mがさらに積分されて、モーター軸位置θmが出力される。また、モーター速度θ・mは、エンコーダー246により検出され、伝達要素421と伝達要素423の間の引き出し点422からオブザーバー部410にも入力される。
伝達要素434では、反力トルクTreacに対して伝達部及び対象物の負荷イナーシャJlが乗算されて対象物の加速度θ・・lが出力される。
また、反力トルクTreacは、伝達要素432と伝達要素434の間の引き出し点433から前述した加え合わせ点405にも入力される。
伝達要素436では、対象物の加速度θ・・lに対して二階積分されて負荷位置θlが求められ、前述した加え合わせ点431に入力される。
オブザーバー部410の伝達要素412は、引き出し点403から入力される電流指令値Irefに対してY軸モーター255のトルク定数推定値Ktnを乗算し、Y軸モーター255の出力トルクの値を出力する。
また、オブザーバー部410の伝達要素413は、引き出し点422から入力されるエンコーダー246の検出によるモーター速度θ・mに対して、Y軸モーター255のモーターイナーシャの推定値Jmn(ノミナル値)を乗算し、微分する。
そして、加え合わせ点414において、伝達要素412の出力に対して伝達要素413の出力の差分値が求められ、低速フィルタ415に入力される。
低速フィルタ415は、いわゆるローパスフィルターであり、加え合わせ点414から出力された差分値に対して、機械周波数、揺れ周波数、その他のノイズ成分を除去して、反力トルクの推定値T^reacを出力する。
伝達要素416は、反力トルクの推定値T^reacに対して反力フィードバックゲインKrを乗算し、加え合わせ点402に入力する。加え合わせ点402では、電流指令値Irefに対して、反力トルクの推定値T^reacと反力フィードバックゲインKrの乗算値をフィードバックして減算する。
ここで、上記制御装置120のCPU121が実行する移動機構20の異常検出処理について説明する。
移動機構20では、前述したように、第一可動部24のX軸モーター245から負荷となる対象物(保持枠21,下板22及び土台23等)に対して、伝達部であるタイミングベルト242等を介して移動の動力伝達を行っている。
また、同様に、移動機構20では、第二可動部25のY軸モーター255から負荷となる対象物(保持枠21,下板22及び土台23等)に対して、伝達部であるタイミングベルト252等を介して移動の動力伝達を行っている。
駆動パターンは、ピッチ(縫い長さ)及び主軸モーター2の速度を基に算出される。
駆動パターンは、被縫製物から針抜けの後に保持枠21及び下板22が動作し、被縫製物に針落ちの前に保持枠21及び下板22の動作が完了するように設定されている。
例えば、ミシンの設計条件によっては、Y軸の規定張力400Nに対し、実際の張力が100N低下して300Nである場合、最大で針落ち位置が0.4mmもズレを生じる。0.2mm以上のズレは目視で容易に確認できるレベルであり、縫い品質の著しい低下を生じることになる。
即ち、CPU121は、異常検出処理において、オブザーバー部410で求められる反力トルクの推定値T^reacをモニタリングし、その結果からタイミングベルト242,252の張力低下を検出している。
図5において、横軸は周波数[Hz]、縦軸は反力トルクの推定値T^reacと反力フィードバックゲインKrの乗算値を乗じた電流振幅(単位[A])を示している。
図5において、ラインl1はY軸モーター255のタイミングベルト252の張力が適正張力(300N)である場合のモニター値、ラインl2はY軸モーター255のタイミングベルト252の張力が低張力(200N)である場合のモニター値である。
例えば、矢印K1は適正張力300Nにおける共振周波数236[Hz]を示し、矢印K2は低張力200Nでの共振周波数194[Hz]を示している。
適正張力300Nにおける共振周波数236[Hz]の帯域では適正張力300Nの電流振幅(ラインl1)は低張力200Nに比べ大きくなる。
また、低張力200Nの共振周波数194[Hz]の帯域では逆に低張力200Nの電流振幅(ラインl2)が適正張力300Nを上回っている。
なお、共振周波数は、タイミングベルト252の線密度、張力、振動する長さによって変動するが、振動する長さは土台23の取り付け部分からプーリ253までの長さで計算している。
なお、閾値は、張力低下により電流振幅[A]の値に変動が生じる他の周波数について設定しても良い。また、閾値は下限値を定める場合を例示しているが、上限値を閾値として定めても良い。
そして、X軸モーター245及びY軸モーター255のそれぞれについて、取得した反力トルクの推定値T^reac(又は各々の反力フィードバックゲインKrを乗算した値)をフーリエ変換し、X軸モーター245及びY軸モーター255のそれぞれについて定められた周波数(例えば、それぞれのタイミングベルト242,252の適正張力時の共振周波数)における反力トルク値又は電流値(電流振幅等とする)と予め定められた閾値とを比較し、当該閾値より低い値を示した場合に、タイミングベルト242又は252について張力の低下が生じていると判断する。
そして、制御装置120のCPU121は、タイミングベルト242又は252について張力の低下が生じていると判断した場合には、例えば、操作パネル300の表示部301において、タイミングベルト242又は252のいずれかを特定して張力低下が生じていることを示す報知画面を表示するよう報知処理を行う。
これにより、タイミングベルト242又は252の張力低下が生じた場合でも、保持枠21の移動動作の精度低下を抑え、縫製品質の向上を図ることができる。
また、その場合、張力低下が制御パラメータの変更でカバーできる範囲を逸脱した場合に、表示部301における張力低下を報知するよう制御しても良い。ここでカバーできる範囲とは、予め定めた保持枠21の精度基準内となる範囲をいう。
上記ミシン100では、制御装置120が、X軸モーター又はY軸モーター255の指令値とエンコーダー246又は256の出力から対象物による反力及びモーターから対象物までの伝達系による反力の推定値T^reacを算出し、当該反力の推定値T^reacに基づいて、伝達部の異常の有無であるタイミングベルト242,252の張力低下を判定している。
これにより、動力の伝達系の異常の発生について、負担の大きな検査作業を行うことなく容易に検出することが可能となる。
また、動力の伝達系の異常の発生を検出するので、保持枠21等を精度良く動作させることができ、縫い品質の高く維持することが可能となる。
異常検出処理の対象として、X軸モーター245,Y軸モーター255を例示したが、これらのモーターに限らず、モーターと対象物との間にエンコーダーが設けられていれば、ミシンモーターや他の用途に使用されるモーターについても、異常検出処理の対象とすることが可能である。
また、これにより、異常検出処理を実行するミシンは、X軸モーター245,Y軸モーター255を備えていない電子サイクル縫いミシン以外のあらゆるミシンにも適用可能である。
3 エンコーダー
20 移動機構
21 保持枠
22 下板
23 土台
24 第一可動部
25 第二可動部
100 電子サイクルミシン(ミシン)
120 制御装置
122 プログラム用メモリ
123 データ用メモリ
124 縫製パターンデータ
242,252 タイミングベルト
243 プーリ
244 スプライン軸
245 X軸モーター
246,256 エンコーダー
253 プーリ
254 歯車機構
255 Y軸モーター
256 エンコーダー
300 操作パネル
301 表示部
302 タッチセンサー
410 オブザーバー部
420 モーター部
430 機械系
Iref 電流指令値
T^reac 反力トルクの推定値
Treac 反力トルク
Claims (6)
- 負荷となる対象物に動力を付与するモーターと、
前記モーターから前記対象物に動力を伝達する伝達部と、
前記モーターと前記対象物との間に設けられたエンコーダーとを備えるミシンの制御方法において、
前記モーターの指令値と前記エンコーダーの出力から前記対象物と前記モーターから前記対象物までの伝達系とによる反力の推定値を算出し、
前記反力の推定値に基づいて、前記伝達部の異常の有無を判定することを特徴とするミシンの制御方法。 - 前記反力の推定値の周波数特性を求め、当該周波数特性から前記伝達部の異常の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載のミシンの制御方法。
- 前記反力の推定値の大きさから前記伝達部の異常の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載のミシンの制御方法。
- 負荷となる対象物に動力を付与するモーターと、
前記モーターから前記対象物に動力を伝達する伝達部と、
前記モーターと前記対象物との間に設けられたエンコーダーとを備えるミシンの制御装置において、
前記制御装置は、
前記モーターの指令値と前記エンコーダーの出力から前記対象物と前記モーターから前記対象物までの伝達系とによる反力の推定値を算出する反力算出部と、
前記反力の推定値に基づいて、前記伝達部の異常の有無を判定する判定部とを備えることを特徴とするミシンの制御装置。 - 前記判定部は、前記反力の推定値の周波数特性を求め、当該周波数特性から前記伝達部の異常の有無を判定することを特徴とする請求項4に記載のミシンの制御装置。
- 前記判定部は、前記反力の推定値の大きさから前記伝達部の異常の有無を判定することを特徴とする請求項4に記載のミシンの制御装置。
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