JP7223279B2 - 全固体電池 - Google Patents
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Description
この種の全固体電池は、正極活物質層を有する正極と、負極活物質層を有する負極とが、固体電解質層を介在させつつ交互に積層されて構成された電極体を備えている。具体的には、例えば、特許文献1では、所定の硫化物系固体電解質ガラス粒子を含むシートを開示しており、当該シートを使用することによって、リチウム電池におけるリチウムイオン伝導性を向上させ、良好な電池性能を得ることができると記載されている。
また、固体電解質は、活物質層におけるイオン伝導性を向上させる目的で、正負極活物質層の構成材料としても使用される場合がある。
そこで、本発明は上記課題を解決すべく創出されたものであり、その目的とするところは、充放電時における電池反応がより活発になりやすい正極活物質層に所定の固体電解質を含ませることにより、正極活物質層におけるリチウムイオン伝導性の向上のみならず、反応抵抗の増大を抑制して優れた電池性能を有する全固体電池を提供することである。
まず初めに、ここで開示される全固体電池の全体構成について、図1を参照しつつ詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る全固体電池の電極体の構造を模式的に示した断面図である。
図1に示されるように、全固体電池1(ここでは全固体リチウムイオン二次電池)は、大まかにいって、シート状の正極20と負極40とが、正負極間に固体電解質層30を介在させつつ、所定の数だけ積層方向Zに積層されて構成された電極体10を備える電池である。また、電極体10は、図示しない所定の筐体(電池ケース)に収容されている。
筐体としては、高い物理的強度、放熱性等の観点から、金属製(例えばアルミニウム製)のものを好ましく使用することができる。あるいは、積載性や電池モジュール全体の重量が軽量になることから、ラミネートフィルムで構成されていてもよい。この場合の好適例として、2つの合成樹脂層の間にアルミニウム等の金属層を配置した三層構造を有するラミネートフィルムが挙げられる。
電極体10について、正極20は、正極集電体22と、その両面に形成された所定の正極活物質および固体電解質を含む正極活物質層24とを有する。また、負極40は、負極集電体42と、その両面に形成された所定の負極活物質および固体電解質を含む負極活物質層44とを有する。
固体電解質層30は、固体電解質等を含む層であり、イオン導電性を確保しつつ正負極間を絶縁するセパレータとして機能する層である。次に、積層電極体10を構成する各層について詳細に説明する。
正極集電体22は、この種の全固体電池の正極集電体として用いられるものを特に制限なく使用することができ、例えば、アルミニウム(例えばアルミニウム箔)が好ましい。
-正極活物質層-
正極活物質層24は、正極活物質、固体電解質、必要に応じて、導電助剤やバインダ等が含まれる。
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な材料であって、リチウム元素と一種または二種以上の遷移金属元素とを含むリチウム含有化合物を好適に用いることができる。具体的には、例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(具体的には、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)等のリチウム遷移金属酸化物、LiFePO4等のリチウム遷移金属リン酸化合物が挙げられる。正極活物質は、例えばリチウム(Li)、酸素(O)、チタン(Ti)、ジルコニア(Zr)、およびニオブ(Nb)等のうち1つまたは2つ以上の元素を含む被覆物により被覆されていてもよい。
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック(AB)等が挙げられる。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ブチルゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
ここで開示される全固体電池において、正極活物質層24に含まれる固体電解質はLi元素、P元素、および、S元素を含む。当該固体電解質は、Li元素、P元素、および、S元素を主成分とするが、例えば、Cl、Br、および、I等のハロゲン元素を含んでいることが好ましい。また、この固体電解質は、例えば、Al、B、Si、Ge等の元素を含んでもよく、Li元素、P元素、および、S元素のみからなる固体電解質であってもよい。具体的には、例えば、Li2S-P2S5系、Li2S-B2S3系等のガラスもしくはガラスセラミックス、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-SiS2等のLi2Sとハロゲン化リチウム(例えばLiCl、LiBr、LiI)とから構成されるLi2Sベースの固溶体、Li10GeP2S12等が挙げられる。これらの固体電解質を単独あるいは2種類以上を選択して使用してもよい。
なお、Li2S-P2S5系の固体電解質としては、以下の式(1)によってあらわされる固体電解質を用いることが好ましい。
XLi2S-(1-X)P2S5 (1)
ここで、式(1)中、0.65≦X≦0.80であることが好ましい。
さらに、例えば、作業性の観点から、固体電解質は十分に柔らかいことが好ましい。具体的には、例えば、弾性係数(ヤング率)が0.08~30GPa(より好ましくは0.08~20GPa)である。
固体電解質は、Li元素、P元素、および、S元素、ならびに、上述するハロゲン元素やその他所望する任意の元素を含む原料を混合し、所定の合成処理を行うことにより得ることができる。
Li元素を含有する原料としては、例えば、Liの硫化物(具体的には、例えば、Li2S等)、ハロゲン化リチウム(具体的には、例えば、LiCl、LiBr、LiI等)、および、リチウムリン酸塩(具体的には、例えば、Li3PO4等)等が挙げられる。P元素を含む原料としては、例えば、Pの単体、Pの硫化物(具体的には、例えば、P2S5等)、および、上述したリチウムリン酸塩等が挙げられる。S元素を含有する原料としては、例えば、Sの単体、上述したLiの硫化物、Pの硫化物等が挙げられる。ハロゲン元素を含有する原料としては、例えば、上述したハロゲン化リチウムが挙げられる。その他、任意の元素を含む原料としては、例えば、Si、SiS2、Li4SiO4、Al2S3、GeS2、B2S3、Li4GeO4、LiBO2、および、LiAlO3等が挙げられる。
上記原料の混合、および、上記合成処理の方法としては、この種の固体電解質の製造に使用される方法を適宜採用することができ、特に限定されない。具体的には、例えば、ボールミル、振動ミル等のメカニカルミリング法、溶融急冷法等が挙げられる。なお、固体電解質の製造方法自体は、本発明を特徴づけるものではないため詳細な説明は省略する。
固体電解質の組成は、例えば、ラマン分光法により分析することができる。図2には、後述する実施例に係る全固体電池の正極活物質層に含まれる固体電解質を測定したラマンスペクトルのピークを波形分離した図を示している。
ラマン分光分析の装置としては、市販のラマン分光光度計(例えば、日本分光株式会社のNRS-3100等)を使用することができる。測定条件としては、例えば、励起レーザ波長が532nm、分解能が4cm-1、減光率が0.6、露光時間が120秒であることが好ましい。また、測定回数は例えば5回程度であるとよい。
上述のような固体電解質についてラマン分光分析を行うと、図2に示されるように、ラマンシフト400cm-1付近(具体的には、おおよそ330cm-1から450cm-1の間)に特徴的なピークが検出される。検出されたピークの形状が左右非対称である場合、複数成分の混合ピークとして同定される。ラマン分光法により測定されたピークは、装置専用の波形解析ソフト等を用いることによって、個別のピークとして波形分離して解析することができる。具体的には、例えば、(A)425cm-1を中心とするPS4 3-、(B)415cm-1を中心とするP2S7 4-、および、(C)390cm-1を中心とするP2S6 4-の3種類のピークに波形分離することができる。
ここで、上述のように波形分離で得られた3種類のピークの総面積(A+B+C)に対する面積比(%)はそれぞれ、(A)50%以上100%以下、(B)0%以上50%以下、および(C)0%以上5%未満であることが好ましい。正極活物質層に含まれる固体電解質の構成成分は上記範囲にあることによって、例えば、リチウムイオン伝導性が低いP2S6 4-の面積比を0%以上5%未満にすることによって、正極活物質層におけるリチウムイオン伝導性を向上させることができる。さらには、正極活物質層における反応抵抗の増大を抑制することができる。これは、P2S6 4-のような成分を所定量含ませることによって、リチウム伝導パスおよび電子伝導パスが良好な部分に優先的にリチウムイオンおよび電子の移動を促進させることができるためであると考えられる。なお、固体電解質のリチウムイオン伝導度は、室温(25℃)において、例えば、1×10-5S/cm以上、さらには、1×10-4S/cm以上であるとよい。
負極集電体42は、この種の全固体電池の負極集電体として用いられるものを特に制限なく使用することができ、例えば、銅(例えば銅箔)が好ましい。
-負極活物質層-
負極活物質層44は、正極活物質、固体電解質、必要に応じて、導電助剤やバインダが含まれる。
負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な天然黒鉛(石墨)や人工黒鉛などの黒鉛系材料、SiおよびSnならびにこれらの化合物が挙げられる。
導電助剤およびバインダとしては上述のものを適宜使用することができる。
負極活物質層44に含まれる固体電解質は、特に限定されない。正極活物質層24に含まれる固体電解質と同じものでもよいが、異なる種類の固体電解質でもよい。
例えば、Li2S-SiS2系、Li2S-P2S3系、Li2S-P2S5系、Li2S-GeS2系、Li2S-B2S3系、Li3PO4-P2S5系、Li4SiO4-Li2S-SiS2系、等のガラスもしくはガラスセラミックス、LiBr-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2S5、LiBr-LiI-Li2S-P2S5等のLi2Sとハロゲン化リチウム(例えばLiCl、LiBr、LiI)とから構成されるLi2Sベースの固溶体が挙げられる。
固体電解質層30は、従来の全固体電池と同様、種々の固体電解質を含む。固体電解質層30には、固体電解質の他に、種々の任意の部材および材料を含ませることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のキャリアシート、および、必要に応じて正負極活物質層と同様にバインダを含ませることができる。
-固体電解質-
固体電解質層に含まれる固体電解質は、特に限定されない。正極活物質層24に含まれる固体電解質と同じものでもよいが、異なる種類の固体電解質でもよい。
上述した部材および材料を用いて、従来公知の方法によって全固体電池1を構築する。
具体的には、例えば、正極活物質層24、負極活物質層44、固体電解質層30それぞれの形成は、従来のこの種の電池と同様、上述した各種成分を適当な溶媒(例えば、水系溶媒、NMP等の有機溶媒等)に分散させてペースト(スラリー)状組成物を調製し、正極集電体22または負極集電体42上に当該ペースト(スラリー)状組成物を塗布し、乾燥させ、適当な圧力(例えば5MPa~300MPa程度)でプレスすることにより、形成することができる。
そして、正極活物質層24が形成された正極20、負極活物質層44が形成された負極40、正極集電体22または負極集電体42上に形成された固体電解質層30を交互に積層することにより電極体10を作製することができる。
得られた電池組立体を初回充電処理、さらには初回放電処理を行い、所望によりさらに適当なエージング処理を施すことによって、目的の全固体電池1(本実施形態では全固体リチウムイオン二次電池)を製造することができる。
以下に説明するプロセスにより、実施例および比較例の計2種類の全固体リチウムイオン二次電池を製造した。
<実施例>
-正極活物質層に含ませる固体電解質の調製-
Li元素、P元素、および、S元素、ならびに、Cl元素およびBr元素を含む原料を混合して合成処理を行うことによって、正極活物質層に含ませる固体電解質を得た。そして、固体電解質の組成をラマン分光法により解析した。測定装置としては、ラマン分光光度計(日本分光株式会社のNRS-3100)を使用した。測定条件は、励起レーザ波長が532nm、分解能が4cm-1、減光率が0.6、露光時間が120秒、測定回数が5回であった。当該5回の測定によって得られたラマンスペクトルの一例を図2に示す。
各々の測定回ごとに得られたラマンスペクトルの330cm-1から450cm-1の間に検出されたピークを、波形分離ソフトを用いて波形分離した。即ち、波形分離ソフトによってPS4 3-(A),P2S7 4-(B),P2S6 4-(C)の3種類のピークに分離し、それぞれのピーク面積および総面積(A+B+C)に対する面積比を算出した。
結果を表1に示す。なお、表1中に記載される面積比は、5回の測定によって得られた面積比の平均値である。
また、当該固体電解質のイオン伝導度は4.5×10-3S/cmであった。
正極活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LNCM)と、上記固体電解質と、バインダとしてPVdFと、導電助剤としてABとを、LNMC:固体電解質:バインダ:導電助剤=84.7:12.6:0.6:2.1の割合となるように量り取り、これらの材料を、超音波ホモジナイザー(SMT社製、UH-50)を用いて溶媒(NMP)に分散させることで正極ペーストを調製した。このペーストを、正極集電体の片面に塗布し、乾燥させたものにプレス処理することにより正極活物質層を形成し、正極とした。
-負極の作製-
負極活物質粉末としてSiと、固体電解質としての硫化物固体電解質と、バインダとしてSBRと、導電助剤としてABとを、Si:固体電解質:バインダ:導電助剤=55:40:0.6:4.4の割合となるように量り取り、これらの材料を、超音波ホモジナイザーを用いて溶媒(NMP)に分散させることで負極ペーストを調製した。このペーストを負極集電体の片面に塗布し、乾燥させたものにプレス処理することにより負極活物質層を形成し、負極とした。
固体電解質として硫化物固体電解質粉末と、バインダとを、99.4:0.6の割合で口量し、溶媒中に分散させることで固体電解質ペーストを調製した。このペーストを、上記で用意した活物質層の表面に塗布し、乾燥させることにより固体電解質層を形成した。そして、用意した各電極の活物質層間を固体電解質層で絶縁するように重ねて電極体を作製した。
-全固体電池の作製-
そして、上記電極体を、2枚のラミネートフィルムで挟み込み、全周縁部を熱溶着することで実施例に係るサンプル電池を作製した。
そして、所定の条件で初回充電処理、初回放電処理、および、エージング処理を施し、上記サンプル電池を使用可能状態とした。
-正極活物質層に含ませる固体電解質の調製-
PS4 3-(A),P2S7 4-(B),P2S6 4-(C)の3種類のピークの、総面積(A+B+C)に対するそれぞれの面積比が表1中に示されるものとなるように原料を選択したこと以外は実施例と同様の手法で、比較例の正極活物質層に含ませる固体電解質を調製した。
上記固体電解質のイオン伝導度は3.6×10-3S/cmであった。
-全固体電池の作製-
正極活物質層に含ませる固体電解質として上記のものを使用した以外は実施例と同様の手法で使用可能状態の比較例に係るサンプル電池を作製した。
上記エージング処理を行った各サンプル電池を温度25℃にて、SOCが90%~0%となるまで定電流(CC)放電させた。
次いで、サンプル電池を所定の電圧となるまでCC充電し、続いて所定時間定電圧(CV)充電した。そして、25℃における直流内部抵抗(direct current internal resistance;DICR)を測定した。即ち、各サンプル電池に対し、0.01C~2Cの間の所定の電流値でそれぞれ10秒間ずつ放電および充電を行い、放電開始から10秒後の電圧を測定した。このときの電流値(X軸)および電圧値(Y軸)を直線回帰し、当該直線の傾きから、25℃におけるサンプル電池のDICR(Ω)を求めた。
結果を表1に示す。
10 電極体
20 正極
22 正極集電体
24 正極活物質層
30 固体電解質層
40 負極
42 負極集電体
44 負極活物質層
Z 積層方向
Claims (1)
- 正極活物質層を有する正極と、負極活物質層を有する負極とが、固体電解質層を介在させつつ交互に積層されて構成された電極体を備える全固体電池であって、
前記正極活物質層は、Li元素、P元素、S元素、Cl元素、および、Br元素を含む固体電解質を含んでおり、
前記固体電解質についてのラマンスペクトルの330cm-1から450cm-1の間に存在するピークを波形分離した際、
(A)425cm-1を中心とするPS4 3-,
(B)415cm-1を中心とするP2S7 4-,および、
(C)390cm-1を中心とするP2S6 4- ,
の3種類のピークの総面積(A+B+C)を100%としたときの各ピークの面積比(%)はそれぞれ、(A)50%以上100%以下、(B)0%以上50%以下、および(C)0%以上5%未満である、
ことを特徴とする、全固体電池。
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