JP7222047B1 - 配管コネクタ用アルミニウム合金押出材、その製造方法及び配管コネクタ - Google Patents
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Abstract
Description
アルミニウム廃材を10質量%以上含有する鋳造原料を用いて前記化学成分を有する鋳塊を鋳造し、
前記鋳塊を450℃以上620℃以下の温度に2時間以上保持して均質化処理を行い、
前記均質化処理後の前記鋳塊に、その温度が400℃以上550℃以下である間に熱間押出を行うことによりアルミニウム合金押出材を作製する、配管コネクタ用アルミニウム合金押出材の製造方法にある。
前記アルミニウム合金押出材の化学成分、構造およびその限定理由について説明する。
・Si:0.60質量%以上1.8質量%以下
前記押出材は、必須成分として0.60質量%以上1.8質量%以下のSiを含有している。Siは前記押出材の強度を向上させる作用を有している。前記押出材中のSiの含有量を0.60質量%以上とすることにより、前記押出材の強度を向上させることができる。また、前記押出材中のSiの含有量を0.60質量%以上とすることにより、鋳造原料中のアルミニウム廃材の比率を高めやすくすることができる。
前記押出材は、必須成分として1.5質量%超え3.0質量%以下のZnを含有している。Znは、前記押出材の自然電位を卑化する作用を有している。押出材中のZnの含有量を1.5質量%よりも多くすることにより、押出材の自然電位を配管に対して適度に低くし、押出材からなる配管コネクタを配管に対する犠牲陽極として機能させることができる。また、前記押出材中のZnの含有量を1.5質量%よりも多くすることにより、鋳造原料中のアルミニウム廃材の比率を高めやすくすることができる。
前記押出材は、必須成分として0.10質量%以上0.80質量%以下のCuを含有している。Cuは前記押出材の強度を向上させる作用を有している。前記押出材中のCuの含有量を0.10質量%以上、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上とすることにより、前記押出材の強度を向上させることができる。また、この場合には、鋳造原料中のアルミニウム廃材の比率を高めやすくすることができる。前記押出材中のCuの含有量が0.10質量%未満の場合には、押出材の強度の低下を招くおそれがある。また、この場合には、鋳造原料中のアルミニウム廃材の比率を高めることが難しくなるおそれがある。
前記押出材は、必須成分として0.50質量%以上1.8質量%以下のMnを含有している。Mnは前記押出材の強度を向上させる作用を有している。また、Mnは、前記押出材の製造過程において鋳塊中にAl-Mn-Si系金属間化合物やAl-Mn-Fe-Si系金属間化合物等を形成することができる。鋳塊中にこれらの金属間化合物を形成することにより、結晶粒界へのSiの偏析を抑制し、冷間加工時の割れの発生を抑制することができる。前記押出材中のMnの含有量を0.50質量%以上とすることにより、前記押出材の強度を向上させるとともに、冷間加工時の割れの発生を抑制することができる。
前記押出材は、必須成分として0質量%超え0.50質量%以下のMgを含有している。Mgは前記押出材の強度を向上させる作用を有している。前記押出材の強度をより高める観点からは、前記押出材中のMgの含有量は0.05質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましい。また、この場合には、鋳造原料中のアルミニウム廃材の比率をより高めやすくすることができる。
前記押出材中には、任意成分として、0質量%超え0.50質量%以下のFeが含まれていてもよい。Feは、前記押出材の強度を向上させる作用を有している。前記押出材の強度をより高める観点からは、前記押出材中のFeの含有量は0.05質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましく、0.15質量%以上であることがさらに好ましく、0.20質量%以上であることが特に好ましい。
前記押出材中には、0質量%超え0.10質量%以下のCr、0質量%超え0.10質量%以下のTi、0質量%超え0.10質量%以下のZr及び0質量%超え0.10質量%以下のVからなる群より選択される1種または2種以上の元素が任意成分として含まれていてもよい。これらの元素は、押出材の金属組織における結晶粒を微細化する作用を有している。結晶粒を微細化する効果をより高める観点からは、押出材中のこれらの元素の含有量は、各元素について0.01質量%以上であることがより好ましく、0.02質量%以上であることがさらに好ましく、0.03質量%以上であることが特に好ましい。
押出材中には、不可避的不純物として、前述した元素以外の元素が含まれていてもよい。不可避的不純物として含まれ得る元素としては、例えば、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、Ca(カルシウム)、Ni(ニッケル)、Sr(ストロンチウム)、Sn(スズ)、Bi(ビスマス)等が挙げられる。これらの元素の含有量は、例えば各元素について0.05質量%以下であればよい。また、不可避的不純物としての元素の含有量の合計は0.50質量%以下であればよい。
前記押出材の構造は特に限定されることはなく、種々の態様をとり得る。例えば、押出材は、配管を保持するための中空部を備えた筒状の断面形状を有していてもよい。また、押出材の長さや断面の外寸法は、所望する配管コネクタの用途に応じて適宜設定すればよい。
前記押出材は、前述したように、熱交換器の配管を接続するための配管コネクタとして好適な特性を有している。それ故、前記押出材からなる配管コネクタは、優れた性能を有している。また、前記押出材からなる配管コネクタは、配管に対する犠牲陽極として機能することができるため、配管の腐食を長期間に亘って抑制することができる。
前記アルミニウム合金押出材を作製するに当たっては、まず、前記化学成分を有する鋳塊を鋳造する。鋳塊の鋳造方法は特に限定されることはなく、DC鋳造やCC鋳造などの公知の鋳造方法を採用することができる。
前記アルミニウム合金押出材及びその製造方法の実施例を以下に説明する。本例のアルミニウム合金押出材は、Si:0.60質量%以上1.8質量%以下、Cu:0.10質量%以上0.80質量%以下、Mn:0.50質量%以上1.8質量%以下、Mg:0質量%超え0.50質量%以下及びZn:1.5質量%超え3.0質量%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有している。
本例では、実施例1と同様の製造方法により条材を作製し、諸特性の評価を行う。具体的には、実施例1と同様の製造方法により、表2に示すアルミニウム合金からなる幅35mm、厚み3.0mmの条材を作製する。強制空冷により熱間押出直後の条材に焼入れを施した後、焼入れが完了した時点から72時間後に、条材を175℃の温度に5時間保持して焼き戻しを行う。以上により、条材を質別記号T5で表される質別に調質し、表2に示す試験材S1~S2を得ることができる。
アルミニウム合金押出材の製造性は、鋳塊を熱間押出する際の押出圧力及び冷間加工後の試験材の外観に基づいて評価することができる。押出圧力は、押出比や押出により得られる断面形状によって変化するため、実用合金との相対比較により評価することが好ましい。表2の「押出圧力」欄における記号「A」は、A6063合金を熱間押出する際の押出圧力に対する前記鋳塊を熱間押出する際の押出圧力の増加率が25%以下であることを示し、記号「B」は押出圧力の増加率が25%を超えることを示す。また、同表の「外観」欄における記号「A」は、試験材に冷間加工を施して厚みを1.0mmまで減少させた場合に、冷間加工後の試験材に割れが生じていないことを示し、記号「B」は冷間加工後の試験材に割れが生じたことを示す。
アルミニウム合金押出材の機械的特性は、試験材の引張強さに基づいて評価することができる。具体的には、各試験材の押出方向における中央部からJIS Z2241:2011に規定された5号試験片を採取した後、JIS Z2241:2011に準拠した方法により試験片の引張試験を行う。そして、引張試験により得られた試験力-変位曲線に基づいて引張強さを算出する。表2に各試験材の引張強さを示す。
試験材の犠牲防食効果は、自然電位に基づいて評価することができる。試験材の自然電位を測定するに当たっては、まず、試験材を切断して自然電位測定用の小片を準備する。この小片の表面に、電解液と接触させる測定部及びポテンショスタットに接続する端子部が露出するようにして電気絶縁性のシーラントを塗布する。
試験材R3中のMnの含有量は前記特定の範囲よりも少ないため、試験材R3の二次加工性は試験材S1~S2に比べて劣っている。
試験材R4中のMgの含有量は前記特定の範囲よりも多いため、試験材R4の熱間押出における押出加工性は試験材S1~S2に比べて劣っている。
Claims (5)
- Si:0.60質量%以上1.8質量%以下、Cu:0.10質量%以上0.80質量%以下、Mn:0.50質量%以上1.8質量%以下、Mg:0質量%超え0.50質量%以下及びZn:1.5質量%超え3.0質量%以下を含み、さらに、Fe:0質量%超え0.50質量%以下、Cr:0質量%超え0.10質量%以下、Ti:0質量%超え0.10質量%以下、Zr:0質量%超え0.10質量%以下及びV:0質量%超え0.10質量%以下からなる群より選択される1種または2種以上の元素を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる化学成分を有する、配管コネクタ用アルミニウム合金押出材。
- 前記配管コネクタ用アルミニウム合金押出材中のSiの含有量とZnの含有量との合計が2.2質量%以上である、請求項1に記載の配管コネクタ用アルミニウム合金押出材。
- 請求項1または2に記載の配管コネクタ用アルミニウム合金押出材からなる配管コネクタ。
- 請求項1または2のいずれか1項に記載の配管コネクタ用アルミニウム合金押出材の製造方法であって、
アルミニウム廃材を10質量%以上含有する鋳造原料を用いて前記化学成分を有する鋳塊を鋳造し、
前記鋳塊を450℃以上620℃以下の温度に2時間以上保持して均質化処理を行い、
前記均質化処理後の前記鋳塊に、その温度が400℃以上550℃以下である間に熱間押出を行うことにより前記配管コネクタ用アルミニウム合金押出材を作製する、配管コネクタ用アルミニウム合金押出材の製造方法。 - 前記アルミニウム廃材には、Si:0.50質量%以上、Fe:0.10質量%以上、Cu:0.10質量%以上、Mn:0.50質量%以上、Mg:0.05質量%以上、Zn:0.10質量%以上からなる群より選択される1種または2種以上の元素を含むアルミニウム合金からなるスクラップ、自動車用熱交換器のスクラップまたは自動車用熱交換器に用いられるアルミニウム合金クラッド材のスクラップのうち少なくとも1種のスクラップが含まれている、請求項4に記載の配管コネクタ用アルミニウム合金押出材の製造方法。
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