以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
図1に示されるように、光学デバイス1は、支持部(固定部)2と、第1可動部3と、第2可動部(支持部)4と、一対の第1トーションバー(第1連結部)5,6と、一対の第2トーションバー(第2連結部)7,8と、磁界発生部9と、を備えている。支持部2、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1トーションバー5,6及び一対の第2トーションバー7,8は、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板によって一体的に形成されている。つまり、光学デバイス1は、MEMSデバイスとして構成されている。SOI基板は、一対のシリコン層と、一対のシリコン層の間に配置された絶縁層と、を有している。支持部2は、一対のシリコン層及び絶縁層によって構成されており、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1トーションバー5,6及び一対の第2トーションバー7,8は、一方のシリコン層によって構成されている。光学デバイス1では、互いに直交するX軸(第1軸線)及びY軸(第1軸線に垂直な第2軸線)のそれぞれの周りに、ミラー面(光学面)10を有する第1可動部3が揺動させられる。光学デバイス1は、例えば光通信用光スイッチ、光スキャナ等に用いられる。光学デバイス1は、MEMS技術(パターニング、エッチング等)を用いて製造される。
磁界発生部9は、例えばハルバッハ配列がとられた永久磁石等によって構成されている。磁界発生部9は、例えば、平面視においてX軸及びY軸のそれぞれに対して45度傾斜した向きDの磁界を発生させ、後述するコイル14に作用させる。なお、「平面視において」とは、「ミラー面10に垂直な方向から見た場合に」との意味であり、換言すれば、「X軸及びY軸に垂直な方向から見た場合に」との意味である。磁界発生部9が発生させる磁界の向きDは、平面視においてX軸及びY軸に対して45度以外の角度で傾斜していてもよい。
支持部2は、例えば、平面視において四角形状の外形を有し、枠状に形成されている。支持部2は、磁界発生部9に対してX軸及びY軸に垂直な方向における一方側に配置されている。支持部2は、第1可動部3及び第2可動部4等を支持している。第1可動部3は、磁界発生部9から離間した状態で、支持部2の内側に配置されている。第1可動部3は、平面視においてX軸及びY軸のそれぞれに関して対称な形状を有している。第1可動部3は、本体部3aと、環状部3bと、一対の連結部3cと、を有している。
本体部3aは、平面視において円形状を呈しているが、楕円形状、四角形状、菱形状等の任意の形状に形成されてもよい。平面視における本体部3aの中心Pは、X軸とY軸との交点と一致している。本体部3aにおける磁界発生部9とは反対側の表面には、例えばアルミニウムからなる金属膜によって円形状のミラー面10が設けられている。ミラー面10は、当該表面における略全面に設けられているが、当該表面の一部に設けられてもよい。環状部3bは、平面視において本体部3aを囲むように環状に形成されている。環状部3bは、平面視において八角形状の外形を有しているが、円形状、楕円形状、四角形状、菱形状等の任意の外形を有していてもよい。一対の連結部3cは、Y軸上における本体部3aの両側に配置され、本体部3aと環状部3bとを互いに連結している。
第2可動部4は、枠状に形成されており、磁界発生部9から離間した状態で、第1可動部3を囲むように支持部2の内側に配置されている。第2可動部4は、一対の第1接続部41A,41Bと、一対の第2接続部42A,42Bと、一対の第1直線状部43A,43Bと、一対の第2直線状部44A,44Bと、一対の第3直線状部45A,45Bと、一対の第4直線状部46A,46Bと、を有している。第2可動部4は、平面視においてX軸及びY軸のそれぞれに関して対称な形状を有している。以下の説明において、X軸又はY軸に関して対称とは、平面視における対称をいう。
第1接続部41A,41Bは、X軸に平行なX軸方向における第1可動部3の両側に位置している。すなわち、各第1接続部41A,41Bは、平面視において第1可動部3とX軸方向に対向する部分を有している。各第1接続部41A,41Bは、Y軸方向に沿って延在している。
第2接続部42A,42Bは、Y軸に平行なY軸方向における第1可動部3の両側に位置している。すなわち、各第2接続部42A,42Bは、平面視において第1可動部3とY軸方向に対向する部分を有している。各第2接続部42A,42Bは、X軸方向に沿って延在している。平面視における各第2接続部42A,42Bの内縁は、Y軸方向に窪む凹部51を有しており、平面視における各第2接続部42A,42Bの外縁は、Y軸方向に突出する凸部52を有している。凹部51及び凸部52は、平面視においてY軸上に位置している。
第1直線状部43A,43Bは、X軸方向における第2接続部42Aの両側に位置し、第2接続部42Aに接続されている。各第1直線状部43A,43Bは、X軸方向に沿って延在している。第1直線状部43A,43Bは、Y軸に関して互いに対称に配置されている。第2直線状部44A,44Bは、X軸方向における第2接続部42Bの両側に位置し、第2接続部42Bに接続されている。各第2直線状部44A,44Bは、X軸方向に沿って延在している。第2直線状部44A,44Bは、Y軸に関して互いに対称に配置されている。
第3直線状部45A,45Bは、各第1直線状部43A,43Bに対して第2接続部42Aとは反対側に位置し、第1直線状部43A,43Bと第1接続部41A,41Bとに接続されている。第3直線状部45Aは、平面視において、X軸及びY軸のそれぞれに対して45度傾斜した方向に沿って延在している。第3直線状部45Bは、第3直線状部45Aに対してY軸に関して対称に延在している。
第4直線状部46A,46Bは、各第2直線状部44A,44Bに対して第2接続部42Bとは反対側に位置し、第2直線状部44A,44Bと第1接続部41A,41Bとに接続されている。第4直線状部46Aは、第3直線状部45Aに対してX軸に関して対称に延在している。第4直線状部46Bは、第4直線状部46Aに対してY軸に関して対称に延在すると共に、第3直線状部45Bに対してX軸に関して対称に延在している。
第1トーションバー5,6は、X軸上における第1可動部3の両側に配置されている。第1トーションバー5,6は、第1可動部3がX軸周りに(X軸を中心線として)揺動可能となるように、X軸上において第1可動部3(環状部3b)と第2可動部4とを互いに連結している。第1トーションバー5,6は、後述するように、第2可動部4及び第2トーションバー7,8を介して支持部2に接続されている。つまり、第1トーションバー5,6は、第1可動部3がX軸周りに揺動可能となるように、第1可動部3と支持部2とを互いに連結しているとみなすこともできる。第1トーションバー5,6は、第1接続部41A,41Bにおいて第2可動部4に接続されている。各第1トーションバー5,6は、第1可動部3がX軸周りに揺動する際に捩れ変形する。各第1トーションバー5,6は、ミラー面10に平行な平面に沿って延在する板状を呈している。各第1トーションバー5,6の全体は、X軸上に位置している。
第1トーションバー5は、X軸に沿って延在すると共に一定の幅を有する直線状部5aと、直線状部5aの両端に接続された一対の拡幅部5bと、を有している。第1トーションバー5は、一方の拡幅部5bにおいて第1可動部3に接続され、他方の拡幅部5bにおいて第2可動部4に接続されている。平面視において、一方の拡幅部5bの幅は、第1可動部3に近づくほど広がっており、他方の拡幅部5bの幅は、第2可動部4に近づくほど広がっている。各拡幅部5bの一対の縁は、互いに向けて凸となるように湾曲している。各拡幅部5bは、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1トーションバー5と第1可動部3又は第2可動部4との接続部に作用する応力の緩和のために設けられている。なお、一対の拡幅部5bの少なくとも一方が設けられていなくてもよい。第1トーションバー5における或る部分の幅とは、第1トーションバー5の延在方向に垂直な方向における長さ(本実施形態ではY軸方向における長さ)を意味する。この点は第1トーションバー6についても同様である。
第1トーションバー6は、第1トーションバーに対してY軸に関して対称に配置されている。すなわち、第1トーションバー6は、X軸に沿って延在すると共に一定の幅を有する直線状部6aと、直線状部6aの両端に接続された一対の拡幅部6bと、を有している。第1トーションバー6は、一方の拡幅部6bにおいて第1可動部3に接続され、他方の拡幅部6bにおいて第2可動部4に接続されている。平面視において、一方の拡幅部6bの幅は、第1可動部3に近づくほど広がっており、他方の拡幅部6bの幅は、第2可動部4に近づくほど広がっている。各拡幅部6bの一対の縁は、互いに向けて凸となるように湾曲している。各拡幅部6bは、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1トーションバー6と第1可動部3又は第2可動部4との接続部に作用する応力の緩和のために設けられている。なお、一対の拡幅部5bの少なくとも一方が設けられていなくてもよい。
本実施形態では、第1トーションバー5とは、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に作用する応力が、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1トーションバー5に作用する最大応力の90%以上となる部分までをいう。換言すれば、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1可動部3又は第2可動部4に作用する応力は、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1トーションバー5に作用する最大応力の90%よりも小さい。同様に、第1トーションバー6とは、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に作用する応力が、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1トーションバー6に作用する最大応力の90%以上となる部分までをいう。図1では、各第1トーションバー5,6と第1可動部3及び第2可動部4との間の境界の例が一点鎖線Bで示されている。
第2トーションバー7,8は、Y軸上における第2可動部4の両側に配置されている。第2トーションバー7,8は、第2可動部4がY軸周りに(Y軸を中心線として)揺動可能となるように、Y軸上において第2可動部4と支持部2とを互いに連結している。第2トーションバー7,8は、第2接続部42A,42Bにおいて第2可動部4に接続されている。各第2トーションバー7,8は、第2可動部4がY軸周りに揺動する際に捩れ変形する。各第2トーションバー7,8は、平面視において蛇行して延在している。各第2トーションバー7,8は、複数の直線状部11と、複数の折り返し部12と、を有している。複数の直線状部11は、それぞれY軸方向に沿って延在し、X軸方向に並んで配置されている。複数の折り返し部12は、隣り合う直線状部11の両端を交互に連結している。
図1及び図2に示されるように、光学デバイス1は、一対のコイル14,15と、一対のソフトニング部材16,17と、第1配線21と、第2配線22と、第3配線23と、第4配線24と、第1外部端子25と、第2外部端子26と、第3外部端子27と、第4外部端子28と、4対のワイヤ29と、を更に備えている。各コイル14,15は、第1可動部3を囲むように第2可動部4に設けられ、平面視において渦巻き状を呈している。各コイル14,15は、X軸及びY軸を含む平面に沿って配置されている。各コイル14,15は、第1可動部3の周りに複数回巻回されている。一対のコイル14,15は、平面視において第2可動部4の幅方向に互い違いに並ぶように、配置されている。
図1では、コイル14,15が配置されている配置領域R1がハッチングで示されている。各コイル14,15は、第1接続部41A,41B及び各直線状部43A~46Bにおいて、第1接続部41A,41B及び各直線状部43A~46Bの延在方向に沿って延在している。第1接続部41A,41B及び各直線状部43A~46Bにおいて、配置領域R1の外縁は、第1接続部41A,41B及び各直線状部43A~46Bの外縁に沿っており、配置領域R1の内縁は、第1接続部41A,41B及び各直線状部43A~46Bの内縁に沿っている。
図3は、図2に示されるII-II線に沿っての断面図である。図3に示されるように、第2可動部4には、各コイル14,15に対応する形状を有する溝31が設けられている。溝31の内面上には絶縁層32が設けられ、絶縁層32上には絶縁層33が設けられている。各コイル14,15は、絶縁層32,33を介して溝31内に配置されている。各コイル14,15は、第2可動部4に埋め込まれたダマシン配線である。各コイル14,15は、例えば、銅(Cu)又は金(Au)等の金属材料からなる。
絶縁層34は、コイル14,15及び絶縁層33を覆うように設けられている。絶縁層34上には絶縁層35が設けられている。各絶縁層32~35は、例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等からなる。各絶縁層32~35は、支持部2、第1可動部3、第2可動部4、第1トーションバー5,6及び第2トーションバー7,8の表面(磁界発生部9とは反対側の表面)を覆うように一体的に形成されている。
ソフトニング部材16は、平面視において第1トーションバー5とコイル14,15との間に位置するように、第2可動部4の第1接続部41Aに設けられている。ソフトニング部材17は、平面視において第1トーションバー6とコイル14,15との間に位置するように、第2可動部4の第1接続部41Bに設けられている。図1では、ソフトニング部材16,17が配置されている配置領域R2がハッチングで示されている。ソフトニング部材16,17の詳細については後述する。
各外部端子25~28は、例えば支持部2に設けられた電極パッドであり、絶縁層35から外部に露出している。外部端子25~28には、それぞれ、一対のワイヤ29が電気的に接続されている。各ワイヤ29は、光学デバイス1から外部に引き出されている。外部端子25~28は、それぞれ、光学デバイス1の外部に配置された駆動源等とワイヤ29を介して電気的に接続されている。
第1配線21は、コイル14の内側端部と第1外部端子25とに電気的に接続されている。第1配線21は、コイル14の内側端部から第2トーションバー7を介して第1外部端子25まで延在している。第2配線22は、コイル14の外側端部と第2外部端子26とに電気的に接続されている。第2配線22は、例えばY軸上においてコイル14の外側端部に接続されている。第2配線22は、コイル14の外側端部から第2トーションバー8を介して第2外部端子26まで延在している。このように、コイル14は、光学デバイス1の外部と電気的に接続されている。
第3配線23は、コイル15の内側端部と第3外部端子27とに電気的に接続されている。第3配線23は、コイル15の内側端部から第2トーションバー7を介して第3外部端子27まで延在している。第4配線24は、コイル15の外側端部と第4外部端子28とに電気的に接続されている。第4配線24は、例えばY軸上においてコイル15の外側端部に接続されている。第4配線24は、コイル15の外側端部から第2トーションバー8を介して第4外部端子28まで延在している。このように、コイル15は、光学デバイス1の外部と電気的に接続されている。
以上のように構成された光学デバイス1では、各外部端子25,26及び各配線21,22を介してコイル14にリニア動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部9が発生する磁界との相互作用によってコイル14にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力と第2トーションバー7,8の弾性力とのつり合いを利用することで、Y軸周りにミラー面10(第1可動部3)を第2可動部4と共にリニア動作させることができる。
一方、各外部端子27,28及び各配線23,24を介してコイル15に共振動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部9が発生する磁界との相互作用によってコイル15にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力に加え、共振周波数での第1可動部3の共振を利用することで、X軸周りにミラー面10(第1可動部3)を共振動作させることができる。具体的には、X軸周りにおける第1可動部3の共振周波数に等しい周波数の駆動信号がコイル15に入力されると、第2可動部4がX軸周りに当該周波数で僅かに振動する。この振動が第1トーションバー5,6を介して第1可動部3に伝わることにより、第1可動部3をX軸周りに当該周波数で揺動させることができる。なお、第1可動部3の静止時には、各第1トーションバー5,6の全体がX軸上に位置しているが、第1可動部3の揺動時には、各第1トーションバー5,6の一部のみがX軸上に位置していてもよい。例えば、第1可動部3に設けられたリブ等によって、第1可動部3の重心がX軸よりも下側(磁界発生部9側)に位置する場合、第1可動部3は静止時の位置よりも下側の位置において揺動する。この場合、第1可動部3の揺動時には、各第1トーションバー5,6における支持部2との接続部のみがX軸上に位置する。或いは、第1可動部3の揺動時に各第1トーションバー5,6の全体がX軸上に位置していてもよいし、第1可動部3の静止時に各第1トーションバー5,6の一部のみがX軸上に位置していてもよい。
続いて、ソフトニング部材16,17の詳細について説明する。図2に示されるように、ソフトニング部材16は、複数(本実施形態では4本)のダミー配線部16aを有している。複数のダミー配線部16aは、それぞれY軸方向に沿って延在し、X軸方向に並んで配置されている。4本のダミー配線部16aにおいては、第1トーションバー5に近いダミー配線部16aほど、長さが長くなっている。換言すれば、X軸方向に隣り合うダミー配線部16aにおいて、第1トーションバー5側に位置するダミー配線部16aの長さは、コイル14,15側に位置するダミー配線部16aの長さよりも長い。これにより、ソフトニング部材16をコイル14,15の屈曲形状に沿うように配置することができ、ソフトニング部材16の配置領域を確保することができる。更に、第1トーションバー5の延在方向に垂直な方向におけるダミー配線部16aの長さが長いほど、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に作用する応力が小さい位置にまでダミー配線部16aを配置することができ、後述するソフトニング特性の大きさの調整を容易化することができる。各ダミー配線部16aの幅は、互いに等しい。各ダミー配線部16aは、例えば、コイル14,15と同一の金属材料からなる。各ダミー配線部16aは、コイル14,15を構成する金属材料とは異なる金属材料によって構成されてもよく、例えば銅、金、タングステン(W)又はアルミニウム(Al)等によって構成されてもよい。なお、図2では、説明の便宜上、コイル14,15及びソフトニング部材16,17にハッチングが付されているが、図2は断面を示すものではない。
ソフトニング部材16は、平面視において、第2可動部4のうち、コイル14,15と第1トーションバー5,6との間に延在する部分4aに配置されている。本実施形態では、部分4aは、第2可動部4におけるコイル14,15よりも内側の部分であり、コイル14,15と第1トーションバー5,6との間に環状に延在している。換言すれば、ソフトニング部材16は、平面視においてコイル14,15よりも内側且つ第1トーションバー5,6よりも外側に位置するように、第2可動部4に設けられている。ここで、「内側」及び「外側」は、平面視における本体部3aの中心P(第1可動部3の中心、ミラー面10の中心)を基準として定義される。「ソフトニング部材16がコイル14,15よりも内側に位置する」とは、本体部3aの中心Pからソフトニング部材16までの距離が、中心Pからコイル14,15までの距離(中心P及びソフトニング部材16を通る直線に沿っての距離)よりも小さいことを意味し、「ソフトニング部材16が第1トーションバー5,6よりも外側に位置する」とは、中心Pからソフトニング部材16までの距離が、中心Pから第1トーションバー5,6までの距離よりも大きいことを意味する。
ソフトニング部材16は、コイル14,15とは異なり、外部と電気的に接続されていない。つまり、ソフトニング部材16は、外部から電気的に独立している。一方、ソフトニング部材16の各ダミー配線部16aは、コイル14,15と同一の構成(形状、材料等)を有している。つまり、ダミー配線部16aは、コイル14,15と同一の構成を有するが、外部と電気的に接続されていないダミー配線である。ダミー配線部16aは、コイル14,15の形成と同時に(並行して)形成され得る。これにより、光学デバイス1の製造工程を簡単化することができる。
図3に示されるように、各ダミー配線部16aは、第2可動部4に設けられた溝36内に埋め込まれている。溝36は、各ダミー配線部16aに対応する形状を有している。溝36は、溝31と同一の断面形状を有している。つまり、各ダミー配線部16aは、各コイル14,15と同一の断面形状を有している。各ダミー配線部16aは、絶縁層32,33を介して溝36内に配置されており、絶縁層34,35によって覆われている。
ソフトニング部材17は、ソフトニング部材16に対してY軸に関して対称に配置されており、ソフトニング部材16と同一の構成を有している。すなわち、ソフトニング部材17は、ソフトニング部材16のダミー配線部16aと同一の構成を有する複数(本実施形態では4本)のダミー配線部を有している。ソフトニング部材17のダミー配線部は、第2可動部4に設けられた溝内に埋め込まれている。ソフトニング部材17は、平面視において、第2可動部4のうち、コイル14,15と第1トーションバー5,6との間に延在する部分4aに配置されている。ソフトニング部材17は、外部と電気的に接続されていない。
図4は、ハードニング特性及びソフトニング部材を説明するためのグラフである。図5は、ハードニング特性及びソフトニング部材が振れ角の制御特性に及ぼす影響を説明するためのグラフである。一般に、弾性変形する部材は、符号L1で示されるように、捩れ角度に対してばね定数が一定である特性を有する。一方、本実施形態のように断面矩形状の第1トーションバー5,6は、符号L2で示されるように、捩れ角度の増加に従ってばね定数が増加するハードニング特性を有する。
各第1トーションバー5,6がハードニング特性を有していると、下記のとおり、第1可動部3の振れ角、すなわちミラー面10の振れ角の制御特性が低下する場合がある。第1可動部3の揺動は、下記の式(1)の運動方程式で表すことができる。式(1)において、θはミラー面10の振れ角、jは第1可動部3の慣性モーメント、c(θ)は系の粘性力、k(θ)は第1トーションバー5,6のばね定数、T(θ,t)は第1可動部3に作用するトルクである。
この場合、ばね定数k(θ)は、下記の式(2)のように近似することができる。式(2)において、k
0はばね定数の大きさを表すパラメータ、βは非線形性の大きさを表すパラメータである。パラメータβが正である場合、第1トーションバー5,6がハードニング特性を有することを意味する。パラメータβが負である場合、第1トーションバー5,6が、捩れ角度の増加に従ってばね定数が減少するソフトニング特性を有することを意味する。
図5に示されるように、振れ角θの周波数特性は、パラメータβの符号に応じて変化する。周波数特性は、パラメータβが正である場合(符号L2)、パラメータβがゼロである場合(符号L1)に比べて、周波数のプラス側に向けて傾く。周波数特性は、パラメータβが負である場合(符号L3)、パラメータβがゼロである場合(符号L1)に比べて、周波数のマイナス側に向けて傾く。これらの傾きの程度は、パラメータβの絶対値が大きくなるに従って大きくなる。
第1トーションバー5,6がハードニング特性を有し、周波数特性が傾いている場合、駆動周波数(共振周波数)の微小な変化によって振れ角θが大きく変化してしまうため、振れ角θの制御特性が低下するおそれがある。ミラー面10の揺動を高速化するためにはパラメータk0を大きくする必要があり、パラメータk0を大きくした場合には、第1トーションバー5,6のハードニング特性が振れ角θの制御特性に及ぼす影響が顕著となる。
そこで、光学デバイス1では、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制するために、上述したソフトニング部材16,17が設けられている。ソフトニング部材16,17は、塑性変形する材料からなるため、捩れ角度の増加に従ってばね定数が減少するソフトニング特性を有する。ソフトニング部材16及びソフトニング部材17には、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に応力が作用する。ソフトニング部材16,17のソフトニング特性により、第1トーションバー5,6のハードニング特性の少なくとも一部を相殺することができる。
ここで、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制するためには、ソフトニング部材16,17は、第1可動部3の揺動時に応力が作用する位置に配置される必要がある。そのため、ソフトニング部材16,17は、平面視において、第2可動部4の部分4aに、すなわちコイル14,15よりも内側に配置されている。これは、コイル14,15は、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に作用する応力が比較的小さくなる位置に配置されているが、第2可動部4におけるコイル14,15よりも内側の領域には、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に所定量以上の応力が作用するためである。
より具体的には、ソフトニング部材16,17は、第1可動部3がX軸周りに揺動した際にソフトニング部材16,17に作用する最大応力が、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1トーションバー5,6に作用する最大応力の1/20倍以上となる位置に、配置されている。これにより、ソフトニング部材16,17によって第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を効果的に抑制することができる。
一方、ソフトニング部材16,17に不具合が生じるのを抑制して信頼性を確保するためには、ソフトニング部材16,17は、第1可動部3の揺動時に過大な応力が作用しない位置に配置される必要がある。そのため、ソフトニング部材16,17は、平面視において、第2可動部4の部分4aに、すなわち第1トーションバー5,6よりも外側に配置されている。これは、第1トーションバー5,6には第1可動部3がX軸周りに揺動した際に比較的大きな応力が作用するためである。
より具体的には、ソフトニング部材16,17は、第1可動部3がX軸周りに揺動した際にソフトニング部材16,17に作用する最大応力がソフトニング部材16,17の降伏応力(降伏点)よりも小さくなる位置に、配置されている。更に、ソフトニング部材16,17は、第1可動部3がX軸周りに揺動した際にソフトニング部材16,17に作用する最大応力が、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1トーションバー5,6に作用する最大応力の1/2倍以下となる位置に、配置されている。これにより、ソフトニング部材16,17に不具合が生じるのを抑制することができる。
以上説明したように、光学デバイス1では、ソフトニング特性を有するソフトニング部材16,17が、平面視において、第2可動部4のうち、コイル14,15と第1トーションバー5,6との間に延在する部分4aに配置されている。これにより、ソフトニング部材16,17に過大な応力が作用するのを回避しつつ、第1トーションバー5,6のハードニング特性の少なくとも一部をソフトニング部材16,17のソフトニング特性によって相殺することができる。よって、光学デバイス1によれば、第1可動部3の揺動を高速化した場合又は振れ角を増加させた場合でも、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制することができると共に、信頼性を確保することができる。更に、ソフトニング部材16,17が外部と電気的に接続されていないため、ソフトニング部材16,17の設計の自由度を向上することができる。
また、光学デバイス1では、第2トーションバー7,8が、第2可動部4がY軸周りに揺動可能となるように、第2可動部4と支持部2とを互いに連結している。これにより、第2可動部4を第1可動部3と共にY軸周りに揺動させることができる。
また、光学デバイス1では、ソフトニング部材16,17は、第1可動部3がX軸周りに揺動した際にソフトニング部材16,17に作用する最大応力が、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1トーションバー5,6に作用する最大応力の1/20倍以上となる位置に、配置されている。これにより、ソフトニング部材16,17によって第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を効果的に抑制することができる。
また、光学デバイス1では、ソフトニング部材16,17は、第1可動部3がX軸周りに揺動した際にソフトニング部材16,17に作用する最大応力がソフトニング部材16,17の降伏応力よりも小さくなる位置に、配置されている。これにより、ソフトニング部材16,17に不具合が生じるのを効果的に抑制することができ、信頼性を一層向上することができる。
また、光学デバイス1では、一対のソフトニング部材16,17が、平面視において、Y軸(第1可動部3の中心を通り且つX軸に垂直な直線)に関して互いに対称に配置されている。これにより、一対のソフトニング部材16,17によって第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を一層効果的に抑制することができる。更に、重量バランスを均一化することができる。
また、光学デバイス1では、ソフトニング部材16,17が金属からなる。これにより、ソフトニング部材16,17によって第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響をより一層効果的に抑制することができる。
また、光学デバイス1では、ソフトニング部材16,17が、溝36内に埋め込まれている。これにより、例えばソフトニング部材16,17が第2可動部4の表面上に配置される場合と比べて、大きな体積を有するソフトニング部材16,17を小さなスペースに配置することができ、光学デバイス1を小型化することができる。
また、光学デバイス1は、コイル14,15を駆動素子として備える。このような光学デバイス1においても、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制することができると共に、信頼性を確保することができる。
また、光学デバイス1では、上述した従来技術とは異なり、第1トーションバー5,6の少なくとも一部がX軸に位置しているため、第1可動部3の揺動時に第1トーションバー5,6に対して捩り応力以外の応力が局所的に作用するのを抑制することができ、第1トーションバー5,6に不具合が生じるのを抑制することができる。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限られない。図6(a)に示される第1変形例のように光学デバイス1が構成されてもよい。第1変形例では、本体部3a及びミラー面10は、楕円形状を呈している。環状部3bは、平面視において長方形状の外形を有している。第2可動部4は、平面視において長方形状の外形を有している。第1トーションバー5は、直線状部5aと、直線状部5aと第1可動部3とに接続された拡幅部5bと、を有している。直線状部5aにおける拡幅部5bとは反対側の端部は、第2可動部4に直接に接続されている。第1トーションバー6は、直線状部6aと、直線状部6aと第1可動部3とに接続された拡幅部6bと、を有している。直線状部6aにおける拡幅部6bとは反対側の端部は、第2可動部4に直接に接続されている。各第2トーションバー7,8は、Y軸方向に沿って直線状に延在している。
ソフトニング部材16,17は、上記実施形態と同様に、平面視において、第2可動部4のうち、コイル14,15と第1トーションバー5,6との間に延在する部分4aに配置されている。このような第1変形例によっても、上記実施形態と同様に、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制することができると共に、信頼性を確保することができる。なお、図6(a)では、光学デバイス1の構成が簡略化されて示されており、例えば、配線21~24、外部端子25~28及びワイヤ29は省略されている。
図6(b)に示される第2変形例のように光学デバイス1が構成されてもよい。第2変形例では、コイル15が第1可動部3の環状部3bに設けられている。第2変形例は、その他の点については第1変形例と同一である。第2変形例においても、コイル14,15に作用するローレンツ力を利用することで、X軸及びY軸のそれぞれの周りにミラー面10を揺動させることができる。このような第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制することができると共に、信頼性を確保することができる。
図7(a)に示される第3変形例のように光学デバイス1が構成されてもよい。上記実施形態では、X軸及びY軸のそれぞれの周りに第1可動部3が揺動させられたが、第3変形例では、X軸周りのみに第1可動部3が揺動させられる。第3変形例では、第2連結部は、第2トーションバー7,8のように捩れ変形可能なものでなくてもよく、第2可動部4を振動させることによってX軸周りに第1可動部3が揺動可能となるように(第2可動部4が少なくともX軸周りに振動可能となるように)、第2可動部4と支持部2とを互いに連結するものであればよい。
このような第2連結部の設計自由度は比較的高い。例えば、第2連結部は、図7(a)に示されるように、Y軸上における第2可動部4の両側に配置され、Y軸上において第2可動部4と支持部2とに接続された一対の部材7A,8Aであってもよい。或いは、第2連結部は、Y軸上及び/又はY軸上以外の位置において第2可動部4と支持部2とに接続された複数対の部材であってもよい。或いは、第2連結部は、X軸上における第2可動部4の両側に配置され、X軸上において第2可動部4と支持部2とに接続された一対の部材であってもよい。第3変形例では、コイル15が設けられていない。コイル14への駆動信号の入力により、第1可動部3をX軸周りに揺動させることができる。第3変形例は、その他の点については第1変形例と同一である。このような第3変形例によっても、上記実施形態と同様に、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制することができると共に、信頼性を確保することができる。更に、第2可動部4を振動させることによって第1可動部3を揺動させることができる。
図7(b)に示される第4変形例のように光学デバイス1が構成されてもよい。第4変形例では、ソフトニング部材16,17は、平面視において、第1可動部3のうち、ミラー面10と第1トーションバー5,6との間に延在する部分3dに配置されている。この例では、部分3dは、本体部3aにおけるミラー面10よりも外側の部分、環状部3b、及び、一対の連結部3cに相当する。換言すれば、ソフトニング部材16,17は、平面視においてミラー面10よりも外側且つ第1トーションバー5,6よりも内側に位置するように、第1可動部3に設けられている。具体的には、ソフトニング部材16,17は、環状部3bのうち、X軸方向における本体部3aの両側に位置する部分に設けられている。ソフトニング部材16,17は、平面視においてミラー面10と第1トーションバー5,6との間に位置している。第4変形例は、その他の点については第1変形例と同一である。
第4変形例では、ソフトニング特性を有するソフトニング部材16,17が、平面視において、第1可動部3のうち、ミラー面10と第1トーションバー5,6との間に延在する部分3dに配置されている。これにより、ソフトニング部材16,17に過大な応力が作用するのを回避しつつ、第1トーションバー5,6のハードニング特性の少なくとも一部をソフトニング部材16,17のソフトニング特性によって相殺することができる。よって、第4変形例によっても、上記実施形態と同様に、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制することができると共に、信頼性を確保することができる。
図8(a)に示される第5変形例のように光学デバイス1が構成されてもよい。第5変形例では、コイル15が第1可動部3の環状部3bに設けられている。ソフトニング部材16,17は、平面視において、第1可動部3のうち、ミラー面10と第1トーションバー5,6との間に延在する部分3dに配置されている。具体的には、ソフトニング部材16,17は、平面視において、第1可動部3のうち、コイル15と第1トーションバー5,6との間に延在する部分3eに配置されている。この例では、部分3eは、第1可動部3におけるコイル15よりも外側の部分であり、コイル15と第1トーションバー5,6との間に環状に延在している。換言すれば、ソフトニング部材16,17は、平面視においてコイル15よりも外側且つ第1トーションバー5,6よりも内側に位置している。ソフトニング部材16,17は、平面視においてコイル15と第1トーションバー5,6との間に位置している。第5変形例は、その他の点については第4変形例と同一である。第5変形例においても、コイル14,15に作用するローレンツ力を利用することで、X軸及びY軸のそれぞれの周りにミラー面10を揺動させることができる。
このような第5変形例によっても、ソフトニング部材16,17が、平面視において、第1可動部3のうち、ミラー面10と第1トーションバー5,6との間に延在する部分3dに配置されているため、ソフトニング部材16,17に過大な応力が作用するのを回避しつつ、第1トーションバー5,6のハードニング特性の少なくとも一部をソフトニング部材16,17のソフトニング特性によって相殺することができる。その結果、上記実施形態と同様に、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制することができると共に、信頼性を確保することができる。更に、第5変形例では、ソフトニング部材16,17が平面視において、第1可動部3のうち、コイル15と第1トーションバー5,6との間に延在する部分3eに配置されているため、ソフトニング部材16,17に過大な応力が作用するのを確実に回避しつつ、第1トーションバー5,6のハードニング特性の少なくとも一部をソフトニング部材16,17のソフトニング特性によって効果的に相殺することができる。
図8(b)に示される第6変形例のように光学デバイス1が構成されてもよい。第6変形例では、第3変形例と同様に、X軸周りのみに第1可動部3が揺動させられる。第6変形例においても、第2連結部は、第2トーションバー7,8のように捩れ変形可能なものでなくてもよく、第2可動部4を振動させることによってX軸周りに第1可動部3が揺動可能となるように(第2可動部4が少なくともX軸周りに振動可能となるように)、第2可動部4と支持部2とを互いに連結するものであればよい。第6変形例は、その他の点については第4変形例と同一である。このような第5変形例によっても、上記実施形態と同様に、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制することができると共に、信頼性を確保することができる。
図9(a)に示される第7変形例のように光学デバイス1が構成されてもよい。第7変形例の光学デバイス1は、第2可動部4及び第2トーションバー7,8を備えていない。第7変形例では、第1トーションバー5,6は、第1可動部3と支持部2とを直接に互いに連結している。コイル14は設けられておらず、コイル15のみが第1可動部3の環状部3bに設けられている。ソフトニング部材16,17は、平面視において、第1可動部3のうち、コイル15と第1トーションバー5,6との間に延在する部分3eに配置されている。第1可動部3は、コイル15のローレンツ力によってX軸周りのみに揺動させられる。第7変形例は、その他の点については第4変形例と同一である。このような第5変形例によっても、上記実施形態と同様に、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制することができると共に、信頼性を確保することができる。
図9(b)は、参考例に係る光学デバイス1Aの平面図である。参考例の光学デバイス1Aは、第2可動部4及び第2トーションバー7,8を備えていない。参考例では、第1トーションバー5,6が第1可動部3と支持部2とを直接に互いに連結している。コイル14は設けられておらず、コイル15のみが第1可動部3の環状部3bに設けられている。ソフトニング部材16は、支持部2のうち、外部端子27と第1トーションバー5との間に延在する部分2aに配置されており、ソフトニング部材17は、外部端子28と第1トーションバー6との間に延在する部分2bに配置されている。換言すれば、ソフトニング部材16,17は、支持部2に設けられた外部端子27,28よりも内側、且つ第1トーションバー5,6よりも外側に位置するように、第2可動部に設けられている。これは、外部端子27,28は、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に作用する応力が比較的小さくなる位置に配置されているが、支持部2における外部端子27,28よりも内側の領域には、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に所定量以上の応力が作用するためである。
ソフトニング部材16,17は、第1可動部3がX軸周りに揺動した際にソフトニング部材16,17に作用する最大応力が、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1トーションバー5,6に作用する最大応力の1/20倍以上となる位置に、配置されている。ソフトニング部材16,17は、第1可動部3がX軸周りに揺動した際にソフトニング部材16,17に作用する最大応力がソフトニング部材16,17の降伏応力よりも小さくなる位置に、配置されている。更に、ソフトニング部材16,17は、第1可動部3がX軸周りに揺動した際にソフトニング部材16,17に作用する最大応力が、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1トーションバー5,6に作用する最大応力の1/2倍以下となる位置に、配置されている。第1可動部3は、コイル15のローレンツ力によってX軸周りのみに揺動させられる。光学デバイス1Aは、その他の点については第1変形例に係る光学デバイス1と同一である。このような参考例によっても、上記実施形態と同様に、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制することができると共に、信頼性を確保することができる。
他の変形例として、上記実施形態では、Y軸周りに第1可動部3及び第2可動部4をリニア動作させたが、Y軸周りに第1可動部3及び第2可動部4を共振動作させてもよい。上記実施形態では、第2可動部4に一対のコイル14,15が設けられていたが、第2可動部4に1本のコイルのみが設けられてもよい。この場合でも、当該コイルへの駆動信号の入力により、X軸及びY軸のそれぞれの周りにミラー面10を揺動させることができる。上記実施形態において、起電力を測定するための起電力モニタコイルが第2可動部4に設けられてもよいし、温度を測定するための温度センサコイルが支持部2に設けられてもよい。
上記実施形態では、ミラー面10の駆動が電磁力によって行われていたが、ミラー面10の駆動は、圧電素子によって行われてもよい。この場合、駆動素子としてコイル14,15に代えて例えば圧電膜が設けられる。或いは、ミラー面10の駆動は、静電力によって行われてもよい。この場合、駆動素子としてコイル14,15に代えて例えば静電櫛歯が設けられる。これらの変形例によっても、上記実施形態と同様に、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制することができると共に、信頼性を確保することができる。圧電素子は、例えば、第2可動部4のうち、第2接続部42A,42B、第1直線状部43A,43B及び第2直線状部44A,44Bに配置されてもよい。この場合、第2可動部4のうち、圧電素子と第1トーションバー5,6との間に延在する部分は、第1接続部41A,41B、第3直線状部45A,45B、及び第4直線状部46A,46Bである。
或いは、駆動素子は、磁石であってもよい。この場合、ミラー面10は、ムービングマグネット方式によって駆動され得る。この場合、駆動素子は外部と電気的に接続されなくてもよい。ムービングマグネット方式では、例えば、光学デバイス1が備えるコイルにより発生させられた磁界が磁石に作用することにより、磁石が設けられた可動部(第1可動部及び/又は第2可動部)が動作し、その結果、ミラー面10が駆動される。すなわち、光学デバイスは、支持部と、光学面を有する第1可動部と、第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、第1可動部が第1軸線周りに揺動可能となるように、第1可動部と第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、第2可動部と支持部とを互いに連結する第2連結部と、第2可動部に設けられた駆動素子としての磁石と、ソフトニング特性を有し、第1可動部が第1軸線周りに揺動した際に応力が作用するソフトニング部材と、を備え、ソフトニング部材は、光学面に垂直な方向から見た場合に、第2可動部のうち、駆動素子と第1連結部との間に延在する部分に配置され、外部と電気的に接続されていなくてもよい。或いは、光学デバイスは、支持部と、光学面を有する第1可動部と、第1可動部を囲む枠状の第2可動部と、第1軸線に沿って延在すると共に第1可動部に接続された直線状部を有し、第1可動部が第1軸線周りに揺動可能となるように、第1可動部と第2可動部とを互いに連結する第1連結部と、第2可動部と支持部とを互いに連結する第2連結部と、第2可動部に設けられた駆動素子としての磁石と、ソフトニング特性を有し、第1可動部が第1軸線周りに揺動した際に応力が作用するソフトニング部材と、を備え、ソフトニング部材は、光学面に垂直な方向から見た場合に、第2可動部のうち、駆動素子と直線状部との間に延在する部分に配置され、外部と電気的に接続されていなくてもよい。或いは、光学デバイスは、支持部と、光学面を有する第1可動部と、第1可動部が第1軸線周りに揺動可能となるように、第1可動部と支持部とを互いに連結する第1連結部と、支持部及び第1可動部の少なくとも一方に設けられた駆動素子としての磁石と、ソフトニング特性を有し、第1可動部が第1軸線周りに揺動した際に応力が作用するソフトニング部材と、を備え、ソフトニング部材は、光学面に垂直な方向から見た場合に、第1可動部のうち、光学面と第1連結部との間に延在する部分に配置され、外部と電気的に接続されていなくてもよい。或いは、光学デバイスは、支持部と、光学面を有する第1可動部と、第1軸線に沿って延在すると共に第1可動部に接続された直線状部を有し、第1可動部が第1軸線周りに揺動可能となるように、第1可動部と支持部とを互いに連結する第1連結部と、支持部及び第1可動部の少なくとも一方に設けられた駆動素子としての磁石と、ソフトニング特性を有し、第1可動部が第1軸線周りに揺動した際に応力が作用するソフトニング部材と、を備え、ソフトニング部材は、光学面に垂直な方向から見た場合に、第1可動部のうち、光学面と直線状部との間に延在する部分に配置され、外部と電気的に接続されていなくてもよい。或いは、光学デバイスは、支持部と、光学面を有する第1可動部と、第1可動部が第1軸線周りに揺動可能となるように、第1可動部と支持部とを互いに連結する第1連結部と、支持部及び第1可動部の少なくとも一方に設けられた駆動素子としての磁石と、ソフトニング特性を有し、第1可動部が第1軸線周りに揺動した際に応力が作用するソフトニング部材と、を備え、ソフトニング部材は、第1可動部に設けられ、外部と電気的に接続されていなくてもよい。
上記実施形態では、第1トーションバー5,6を、「第1可動部3がX軸周りに揺動した際に作用する応力が、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1トーションバー5,6に作用する最大応力の90%以上となる部分まで」と定義した。しかし、上記実施形態において、第1トーションバー5は直線状部5aのみからなり、各拡幅部5bについては第1可動部3又は第2可動部4に含まれるとみなすこともできる。同様に、第1トーションバー6は直線状部6aのみからなり、各拡幅部6bについては第1可動部3又は第2可動部4に含まれるとみなすこともできる。この場合、各直線状部5a,6aは、第1可動部3及び第2可動部4に直接に接続されている。ソフトニング部材16,17は、平面視において、第2可動部4のうち、コイル14,15と直線状部5a,6aとの間に延在する部分4aに配置されている。換言すれば、ソフトニング部材16,17は、平面視においてコイル14,15よりも内側且つ直線状部5a,6aよりも外側に位置するように、第2可動部4に設けられている。第1~第3変形例及び参考例においても、ソフトニング部材16,17は、平面視において、第2可動部4のうち、コイル14,15と直線状部5a,6aとの間に延在する部分4aに配置されている。換言すれば、ソフトニング部材16,17は、平面視においてコイル14,15よりも内側且つ直線状部5a,6aよりも外側に位置している。更に、第4変形例において、各第1トーションバー5,6は、直線状部と、直線状部と第2可動部4との間に接続された拡幅部と、を有し、当該直線状部は、第1可動部3に直接に接続されていてもよい。この構成において、ソフトニング部材16,17は、平面視において、第1可動部3のうち、ミラー面10と当該直線状部との間に延在する部分に配置されていてもよい。この場合でも、上記実施形態と同様に、第1トーションバー5,6のハードニング特性の影響を抑制することができると共に、信頼性を確保することができる。
各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。例えば、ソフトニング部材16は、樹脂材料によって構成されていてもよい。ただし、顕著な塑性特性を示し、且つ降伏応力が高いことから、ソフトニング部材16は銅からなることが好ましい。ソフトニング部材16は、1本のダミー配線部16aのみを有していてもよい。ダミー配線部16aは、コイル14,15と同一の構成を有していなくてもよく、例えば、第2可動部4の表面上に配置されてもよいし、コイル14,15とは異なる断面形状を有していてもよい。すなわち、ソフトニング部材16は、ソフトニング特性を有し、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に応力が作用するものであればよい。これらの点はソフトニング部材17についても同様である。
ソフトニング部材16,17は、第2可動部4におけるコイル14,15が設けられた表面とは反対側の表面(磁界発生部9側の表面)に設けられていてもよい。一対のソフトニング部材16,17の一方のみが設けられていてもよい。ソフトニング部材は、複数対設けられていてもよい。例えば、上記実施形態において、第2可動部4にソフトニング部材16,17が設けられるだけでなく、第4変形例と同様に第1可動部3にもソフトニング部材が設けられていてもよい。
第2可動部4は、平面視において略円形状、略楕円形状、略四角形状又は略菱形状等の外形を有していてもよい。環状部3bが設けられず、第1トーションバー5,6が本体部3aに直接に接続されていてもよい。上記実施形態では、第1連結部が板状の第1トーションバー5,6によって構成されていたが、第1連結部の形状は限定されず、棒状等の任意の形状であってよい。第1トーションバー5,6は、平面視において蛇行して延在する蛇行部を有していてもよい。一対の拡幅部5bの双方が設けられていなくてもよく、一対の拡幅部6bの双方が設けられていなくてもよい。第2トーションバー7,8は、第2可動部4がY軸周りに揺動可能となるように、Y軸上以外の位置において第2可動部4と支持部2とを互いに連結していてもよい。第1可動部3は、ミラー面10以外の光学面を有するものであってもよく、例えば回折格子面を有していてもよい。上記実施形態では、一対のコイル14,15が互い違いに並ぶように配置されていたが、平面視においてコイル14,15の一方が他方の内側に配置されていてもよい。3本以上のワイヤ29が各外部端子25~28に接続されていてもよい。
上記実施形態及び変形例において、ソフトニング部材16,17が降伏応力を有しない場合、降伏応力に代えて0.2%耐力が用いられてもよい。つまり、ソフトニング部材16,17は、第1可動部3がX軸周りに揺動した際にソフトニング部材16,17に作用する最大応力がソフトニング部材16,17の0.2%耐力よりも小さくなる位置に、配置されていてもよい。第1可動部3がX軸周りに揺動した際にソフトニング部材16,17に作用する最大応力がソフトニング部材16,17の0.2%耐力又は降伏応力よりも小さい場合、例えば、第1可動部3を通常の振れ角(±1度以上±20度以下程度)又は共振周波数で1万回揺動させたときに、ソフトニング部材16,17の断面積の増加率(揺動前に対する揺動後の断面積の比)が10%以下となる。或いは、第1可動部3を1000時間揺動させたときに、ソフトニング部材16,17の断面積の増加率が10%以下となる。なお、降伏応力及び0.2%耐力は、例えば、JIS Z 2241に準じた方法で測定されてもよい。