本発明のブロックイソシアネートは、水分散型ブロックイソシアネートであり、例えば、水に分散させて使用される。ブロックイソシアネートでは、ポリイソシアネートのイソシアネート基がブロック剤によってブロックされている。つまり、ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネートとブロック剤との反応生成物を含み、好ましくは、ポリイソシアネートとブロック剤との反応生成物からなる。
(1)ポリイソシアネート
以下では、まず、ブロック剤によってブロックされる前のポリイソシアネートについて説明する。
ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体と、ポリオキシエチレン化合物との反応生成物(以下、親水性イソシアヌレート誘導体とする。)を含み、好ましくは、親水性イソシアヌレート誘導体からなる。
(1-1)キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体
キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、主として、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートを含む。また、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、後述するキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート化において、不可避的に副生するキシリレンジイソシアネートのイミノオキサジアジンジオン、および、未反応のキシリレンジイソシアネートの含有を許容する。
すなわち、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、例えば、92質量%以上のキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートと、6質量%以下のイミノオキサジアジンジオンと、2質量%以下の未反応のキシリレンジイソシアネートとを含み、好ましくは、それらからなる。
キシリレンジイソシアネートは、構造異性体として、1,2-キシリレンジイソシアネート(o-XDI)、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)、1,4-キシリレンジイソシアネート(p-XDI)を含む。キシリレンジイソシアネートの構造異性体は、単独使用または2種類以上併用されてもよい。
キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。つまり、キシリレンジイソシアネートは、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートを含み、さらに好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートからなる。
次に、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の調製方法、具体的には、アルコール類(後述)により変性されていないキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の調製方法について説明する。
キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を調製するには、キシリレンジイソシアネートを、イソシアヌレート化触媒の存在下において、イソシアヌレート化反応させる。
イソシアヌレート化触媒は、イソシアヌレート化を活性化する触媒であれば、特に限定されない。イソシアヌレート化触媒として、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、2級アミン共重合体(例えば、ジアルキルアミンなどの2級アミン、および、2級アミンと共重合可能な単量体(例えば、フェノール、ホルムアルデヒドなど)の重縮合物)などの3級アミン、例えば、2-ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのマンニッヒ塩基、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリブチルベンジルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム(別名:N-(2-ヒドロキシプロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム)、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウムなどのトリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸、ナフテン酸などのアルキルカルボン酸の金属塩(例えば、アルカリ金属塩、マグネシウム塩、スズ塩、亜鉛塩、鉛塩など)、例えば、アルミニウムアセチルアセトン、リチウムアセチルアセトンなどのようなβ-ジケトンの金属キレート化合物、例えば、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素などのフリーデル・クラフツ触媒、例えば、チタンテトラブチレート、トリブチルアンチモン酸化物などの有機金属化合物、例えば、ヘキサメチルシラザンなどのアミノシリル基含有化合物、二フッ化水素テトラブチルホスホニウムなどのハロゲン置換有機リン化合物などが挙げられる。イソシアヌレート化触媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
このようなイソシアヌレート化触媒のなかでは、好ましくは、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドが挙げられ、さらに好ましくは、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドが挙げられ、とりわけ好ましくは、テトラブチルアンモニウムのハイドロオキサイドが挙げられる。
イソシアヌレート化触媒(有効成分100質量%換算)の配合割合は、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.008質量部以上、さらに好ましくは、0.015質量部以上、例えば、0.1質量部以下、好ましくは、0.026質量部以下、さらに好ましくは、0.022質量部以下である。
なお、イソシアヌレート化触媒は、イソシアヌレート化反応の仕込み段階(初期)で全量を配合してもよく、イソシアヌレート化反応中に複数回に分けて追加してもよい。上記した配合割合は、イソシアヌレート化反応開始前(初期)に配合するイソシアヌレート化触媒の配合割合(仕込割合)とイソシアヌレート化反応中に追加するイソシアヌレート化触媒の配合割合(追加割合)との合計の配合割合である。
このようなイソシアヌレート化反応は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気において実施される。
また、イソシアヌレート化反応の反応温度は、例えば、20℃以上、好ましくは、40℃以上、さらに好ましくは、60℃以上、例えば、90℃以下、好ましくは、80℃以下である。反応圧力は、例えば、大気圧である。反応時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上、さらに好ましくは、2時間以上、例えば、12時間以下、好ましくは、10時間以下、さらに好ましくは、8時間以下である。
このようなイソシアヌレート化反応では、助触媒および安定剤を添加することができる。
助触媒として、例えば、有機亜リン酸エステルが挙げられ、より具体的には、脂肪族有機亜リン酸エステル、芳香族有機亜リン酸エステルなどが挙げられる。助触媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
脂肪族有機亜リン酸エステルとして、例えば、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイトなどのアルキルモノホスファイト、例えば、ジステアリル・ペンタエリスリチル・ジホスファイト、ジ・ドデシル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ジ・トリデシル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、トリペンタエリスリトール・トリホスファイトなどの脂肪族多価アルコールから誘導されたジ、トリあるいはテトラホスファイト、さらに、水添ビスフェノールAホスファイトポリマー(分子量2400~3000)などの脂環族ポリホスファイト、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスファイトなどが挙げられる。脂肪族有機亜リン酸エステルは、単独使用または2種以上併用することができる。
脂肪族有機亜リン酸エステルのなかでは、好ましくは、アルキルモノホスファイトが挙げられ、さらに好ましくは、トリデシルホスファイトが挙げられる。
芳香族有機亜リン酸エステルとして、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイトなどのアリールモノホスファイト、例えば、ジノニルフェニル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、テトラフェニル・テトラ・トリデシル・ペンタエリスリチル・テトラホスファイト、テトラフェニル・ジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの芳香族多価アルコールから誘導されたジ、トリあるいはテトラホスファイト、さらに、例えば、炭素数が1~20のジ・アルキル・ビスフェノールA・ジホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ・トリデシル)ホスファイトなどのビスフェノール系化合物から誘導されたジホスファイトなどが挙げられる。芳香族有機亜リン酸エステルは、単独使用または2種以上併用することができる。
芳香族有機亜リン酸エステルのなかでは、好ましくは、芳香族多価アルコールから誘導されるジ、トリあるいはテトラホスファイトが挙げられ、さらに好ましくは、テトラフェニル・ジプロピレングリコール・ジホスファイトが挙げられる。
助触媒の配合割合は、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.03質量部以上、例えば、0.1質量部以下、好ましくは、0.07質量部以下である。
安定剤として、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、より具体的には、2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェノール(別名:ジブチルヒドロキシトルエン、以下、BHTと略する場合がある。)、イルガノックス1010、イルガノックス1076、イルガノックス1135、イルガノックス245(以上、チバ・ジャパン社製、商品名)などが挙げられる。安定剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
安定剤の配合割合は、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.02質量部以上、例えば、0.05質量部以下、好ましくは、0.03質量部以下である。
さらに、イソシアヌレート化反応では、必要に応じて、公知の添加剤を適宜の割合かつ任意のタイミングで添加してもよい。
公知の添加剤として、例えば、有機溶媒(後述)、触媒失活剤(例えば、リン酸、モノクロロ酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゾイルクロリドなど)などが挙げられる。
これによって、キシリレンジイソシアネートがイソシアヌレート化して、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートを生成する。
このようなイソシアヌレート化反応におけるイソシアネート基の転化率(イソシアヌレート転化率)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、25質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、33質量%以下である。なお、イソシアネート基の転化率は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる(以下同様)。
以上によって、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含む反応液(反応混合物)が調製される。
このようなイソシアヌレート化反応の反応液における遊離のイソシアネート基の濃度(イソシアネート基濃度)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、25質量%以上、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。なお、イソシアネート基濃度は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる(以下同様)。
反応液は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートに加えて、未反応のキシリレンジイソシアネートを含む。さらに、反応液は、上記した公知の添加剤などを含む場合がある。
そのため、イソシアヌレート化反応の反応液は、好ましくは、公知の精製方法により精製される。精製方法として、例えば、薄膜蒸留(スミス蒸留)、抽出などが挙げられ、好ましくは、薄膜蒸留が挙げられる。
薄膜蒸留により反応液を精製する場合、蒸留収率は、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、さらに好ましくは、50質量%以上、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。なお、蒸留収率は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。
以上によって、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体が調製される。
キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、アルコール類(後述)に変性されていないキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体である。以下において、アルコール類により変性されていないキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を、アルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体とし、アルコール類により変性されているキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体(後述)を、アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体として区別する。
アルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体は、主にイソシアヌレート一核体を含む。さらに、アルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体は、イソシアヌレート多核体を含むことができる。
イソシアヌレート一核体は、3分子のキシリレンジイソシアネートが1つのイソシアヌレート環を形成し、そのイソシアヌレート環が他のイソシアヌレート環と結合していない化合物であり、イソシアヌレート環を介するキシリレンジイソシアネートの3分子体(トリマー)である。
イソシアヌレート多核体は、イソシアヌレート一核体が他のイソシアヌレート一核体と結合している化合物である。イソシアヌレート多核体は、結合するイソシアヌレート一核体の個数に基づいて区別され、例えば、2つのイソシアヌレート一核体が結合するイソシアヌレート二核体、n個のイソシアヌレート一核体が結合するイソシアヌレートn核体などが挙げられる。
このようなイソシアヌレート誘導体をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量400~1000、好ましくは、600~900の間をピークトップとするピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率(以下、3分子体面積率とする。)が、イソシアヌレート誘導体の総量に対する、イソシアヌレート一核体の含有率に相当する。
イソシアヌレート誘導体における3分子体面積率は、例えば、25%以上、好ましくは、30%以上、例えば、70%以下、好ましくは、60%以下である。
なお、3分子体面積率は、後述する実施例に準拠して、イソシアヌレート誘導体の分子量分布を、示差屈折率検出器(RID)を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によって測定し、得られたクロマトグラム(チャート)におけるピーク面積比率として、算出することができる(以下同様)。
このようなイソシアヌレート誘導体におけるイソシアネート基の平均官能基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.2以上、例えば、4.0以下、好ましくは、3.5以下である。
また、イソシアヌレート誘導体における遊離のイソシアネート基の濃度(イソシアネート基濃度)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、15質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、35質量%以下である。
(1-2)アルコール変性キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体(アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体)
上記したキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、好ましくは、アルコール類により変性される。
イソシアヌレート誘導体がアルコール類により変性されると、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン樹脂原料の成膜性の向上を図ることができながら、塗膜の高湿条件下における耐膨張性の向上を確実に図ることができる。
アルコール類として、好ましくは、脂肪族アルコールが挙げられる。
脂肪族アルコールとして、例えば、1価の脂肪族アルコール、2価の脂肪族アルコール、3価の脂肪族アルコール、4価以上の脂肪族アルコールなどが挙げられる。脂肪族アルコールは、単独使用または2種以上併用することができる。
1価の脂肪族アルコールとして、例えば、直鎖状の1価脂肪族アルコール、分岐状の1価脂肪族アルコールなどが挙げられる。
直鎖状の1価脂肪族アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール(ラウリルアルコール)、n-トリデカノール、n-テトラデカノール、n-ペンタデカノール、n-ヘキサデカノール、n-ヘプタデカノール、n-オクタデカノール(ステアリルアルコール)、n-ノナデカノール、エイコサノールなどが挙げられる。
分岐状の1価脂肪族アルコールとして、例えば、イソプロパノール(別名:イソプロピルアルコール、IPA)、イソブタノール(別名:イソブチルアルコール、IBA)、sec-ブタノール、tert-ブタノール、イソペンタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、イソオクタノール、2-エチルヘキサノール(別名:2-エチルヘキシルアルコール、2-EHA)、イソノナノール、イソデカノール、5-エチル-2-ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2-ヘキシルデカノール、3,9-ジエチル-6-トリデカノール、2-イソヘプチルイソウンデカノール、2-オクチルドデカノール、その他の分岐状アルカノール(C(炭素数、以下同様)5~20)などが挙げられる。
2価の脂肪族アルコールとして、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール(1,3-PG)、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、その他の直鎖状のアルカン(C7~20)ジオールなどの直鎖状の2価脂肪族アルコール、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール(別名:1,3-ブタンジオール、1,3-BG)、1,2-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(MPD)、2,2,4-トリメチルー1,3-ペンタンジオール(TMPD)、3,3-ジメチロールヘプタン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、その他の分岐状のアルカン(C7~20)ジオールなどの分岐状の2価脂肪族アルコール、例えば、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールAなどの脂環式の2価脂肪族アルコールなどが挙げられる。
3価の脂肪族アルコールとして、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
4価以上の脂肪族アルコールとして、例えば、テトラメチロールメタン、D-ソルビトール、キシリトール、D-マンニトールなどが挙げられる。
このような脂肪族アルコールは、分子中に1つ以上のヒドロキシ基を有していれば、それ以外の分子構造は、本発明の優れた効果を阻害しない限り、分子中に芳香環を含有しないこと以外は特に制限されず、例えば、分子中に、エステル基、エーテル基、シクロヘキサン環などを有することもできる。
そのため、脂肪族アルコールは、例えば、上記1価の脂肪族アルコールとアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)との付加重合物(2種類以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック重合物)であるエーテル基含有1価脂肪族アルコール、上記1価の脂肪族アルコールとラクトン(例えば、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトンなど)との付加重合物であるエステル基含有1価脂肪族アルコールなどを含む。
このような脂肪族アルコールのなかでは、好ましくは、1価の脂肪族アルコールおよび2価の脂肪族アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、分岐状の1価脂肪族アルコールおよび分岐状の2価脂肪族アルコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、イソブタノールおよび1,3-ブチレングリコールが挙げられる。
また、1価の脂肪族アルコールと2価の脂肪族アルコールとを比較すると、より好ましくは、2価の脂肪族アルコールが挙げられる。つまり、アルコール類は、好ましくは、2価の脂肪族アルコール(分岐状の2価脂肪族アルコール、1,3-ブチレングリコール)を含み、さらに好ましくは、2価の脂肪族アルコール(分岐状の2価脂肪族アルコール、1,3-ブチレングリコール)からなる。
イソシアヌレート誘導体を変性するアルコール類が、2価の脂肪族アルコールを含むと、塗膜の耐溶剤性および耐候性の向上を確実に図ることができる。
次に、アルコール類により変性されるキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体(アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体)の調製方法について説明する。
アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体を調製する方法として、例えば、キシリレンジイソシアネートとアルコール類とをウレタン化反応させた後、その反応生成物をイソシアヌレート化反応させる方法や、上記のように、まず、アルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体を調製し、そのアルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体とアルコール類とをウレタン化反応させる方法などが挙げられる。
このような方法のなかでは、好ましくは、キシリレンジイソシアネートとアルコール類とをウレタン化反応させた後、その反応生成物をイソシアヌレート化反応させる方法が挙げられる。
具体的には、まず、キシリレンジイソシアネートとアルコール類とを配合し、キシリレンジイソシアネートとアルコール類とを、遊離のイソシアネート基が残存する割合でウレタン化反応させる。
アルコール類の水酸基に対する、キシリレンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、例えば、3以上、好ましくは、5以上、さらに好ましくは、15以上、例えば、600以下、好ましくは、500以下、さらに好ましくは、200以下、とりわけ好ましくは、100以下である。
アルコール類の配合割合は、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.10質量部以上、さらに好ましくは、0.50質量部以上、例えば、10質量部以下、好ましくは、8質量部以下、さらに好ましくは、3質量部以下である。
また、ウレタン化反応は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気において実施される。
反応温度は、例えば、室温(25℃)以上、好ましくは、40℃以上、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下である。反応圧力は、例えば、大気圧である。反応時間は、例えば、0.05時間以上、好ましくは、0.2時間以上、例えば、10時間以下、好ましくは、6時間以下、さらに好ましくは、2時間以下である。
このようなウレタン化反応では、上記した助触媒および上記した安定剤を上記した配合割合で添加することができ、必要に応じて、公知のウレタン化触媒を適宜の割合で添加してもよい。
さらに、ウレタン化反応では、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、必要に応じて、上記したアルコール類と、活性水素基含有化合物(例えば、チオール類、オキシム類、ラクタム類、フェノール類、βジケトン類など)とを併用することができる。
これによって、キシリレンジイソシアネートとアルコール類とがウレタン化反応して、キシリレンジイソシアネートとアルコール類との反応生成物(アルコール変性キシリレンジイソシアネート)を生成する。
このようなウレタン化反応におけるイソシアネート基の転化率(ウレタン転化率)は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.3質量%以上、さらに好ましくは、0.5質量%以上、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下である。
以上によって、アルコール変性キシリレンジイソシアネートを含む反応液(反応混合物)が調製される。
このようなウレタン化反応の反応液における遊離のイソシアネート基の濃度(イソシアネート基濃度)は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、さらに好ましくは、40質量%以上、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
このようなウレタン化反応の反応液は、未反応のキシリレンジイソシアネート(アルコール未変性キシリレンジイソシアネート)と、アルコール変性キシリレンジイソシアネートとを含む。
次いで、ウレタン化反応の反応液に、上記したイソシアヌレート化触媒を上記の配合割合で配合する。そして、キシリレンジイソシアネートおよびアルコール変性キシリレンジイソシアネートを、上記した反応条件において、イソシアヌレート化反応させる。
これによって、アルコール未変性キシリレンジイソシアネートがイソシアヌレート化反応して、アルコール無変性XDIイソシアヌレートを生成するとともに、アルコール変性キシリレンジイソシアネートがイソシアヌレート化反応して、アルコール変性XDIイソシアヌレートを生成する。なお、アルコール変性XDIイソシアヌレートについては、詳しくは後述する。
このようなイソシアヌレート化反応におけるイソシアヌレート転化率の範囲は、上記したイソシアヌレート転化率の範囲と同じである。
また、ウレタン転化率およびイソシアヌレート転化率の総和(イソシアネート基の転化率(反応率))は、例えば、15質量%以上、好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
以上によって、アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体を含む反応液(反応混合物)が調製される。
このようなイソシアヌレート化反応の反応液における遊離のイソシアネート基の濃度(イソシアネート基濃度)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、25質量%以上、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
イソシアヌレート化反応の反応液は、アルコール無変性XDIイソシアヌレートと、アルコール変性XDIイソシアヌレートとを含む。さらに、イソシアヌレート化反応の反応液は、キシリレンジイソシアネート、アルコール変性キシリレンジイソシアネート、上記した公知の添加剤などを含む場合がある。
そのため、イソシアヌレート化反応の反応液は、好ましくは、上記した精製方法により精製される。その蒸留収率の範囲は、上記した蒸留収率の範囲と同じである。
以上によって、上記したアルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体と、アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体とを含むイソシアヌレート誘導体が調製される。
アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体は、上記したアルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体とアルコール類との反応生成物である。アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体は、例えば、アルコール変性イソシアヌレート一核体、アルコール変性イソシアヌレート多核体などを含む。なお、以下において、アルコール類に変性されていないイソシアヌレート一核体およびイソシアヌレート多核体を、アルコール無変性イソシアヌレート一核体およびアルコール無変性イソシアヌレート多核体とする。
アルコール変性イソシアヌレート一核体は、少なくとも1つのアルコール類が結合するイソシアヌレート環を1つ有する。アルコール変性イソシアヌレート一核体は、例えば、アルコール変性キシリレンジイソシアネート(3-n)分子と、キシリレンジイソシアネートn分子とがイソシアヌレート環を形成する化合物であり、イソシアヌレート環を介するキシリレンジイソシアネートの3分子体である。なお、nは、0~2の整数である。
アルコール変性イソシアヌレート多核体は、イソシアヌレート環を2つ以上有し、それらイソシアヌレート環に少なくとも1つのアルコール類が結合する化合物である。アルコール変性イソシアヌレート多核体は、例えば、アルコール変性イソシアヌレート一核体と、少なくとも1つのアルコール変性イソシアヌレート一核体またはアルコール無変性イソシアヌレート一核体とが結合する化合物である。
より具体的には、アルコール類が1価の脂肪族アルコールである場合、アルコール変性イソシアヌレート多核体として、例えば、直接結合型アルコール変性イソシアヌレート多核体などが挙げられる。
直接結合型アルコール変性イソシアヌレート多核体は、アルコール変性イソシアヌレート一核体のイソシアネート基が、他のアルコール変性イソシアヌレート一核体またはアルコール無変性イソシアヌレート一核体を兼ねる化合物である。つまり、直接結合型アルコール変性イソシアヌレート多核体は、アルコール変性イソシアヌレート一核体のイソシアヌレート環と、アルコール変性イソシアヌレート一核体またはアルコール無変性イソシアヌレート一核体のイソシアヌレート環とが、1つのキシリレンジイソシアネート骨格を介して結合している。
また、アルコール類が2価の脂肪族アルコールである場合、アルコール変性イソシアヌレート多核体として、例えば、上記と同様の直接結合型アルコール変性イソシアヌレート多核体、架橋型アルコール変性イソシアヌレート二核体などが挙げられる。
架橋型アルコール変性イソシアヌレート二核体は、アルコール変性イソシアヌレート一核体のイソシアネート基と、アルコール変性イソシアヌレート一核体またはアルコール無変性イソシアヌレート一核体のイソシアネート基とが、2価の脂肪族アルコールの水酸基のそれぞれと反応して結合する化合物である。つまり、架橋型アルコール変性イソシアヌレート二核体は、アルコール変性イソシアヌレート一核体と、アルコール変性イソシアヌレート一核体またはアルコール無変性イソシアヌレート一核体とが、2価の脂肪族アルコールを介して結合している。
また、上記したウレタン化反応および/またはイソシアヌレート化反応では、アルコール変性キシリレンジイソシアネートおよび/またはアルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体と、キシリレンジイソシアネートおよび/またはアルコール変性キシリレンジイソシアネートとが反応して、アロファネートを生成する場合がある。この場合、イソシアヌレート誘導体は、アロファネートを含む。
アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体を含むイソシアヌレート誘導体の3分子体面積率は、イソシアヌレート誘導体の総量に対する、アルコール無変性イソシアヌレート一核体の含有率と、アルコール変性イソシアヌレート一核体の含有率と、上記した3分子からなるアロファネートの含有率との総量に相当する。
アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体を含むイソシアヌレート誘導体における3分子体面積率は、例えば、30%以上、好ましくは、35%以上、例えば、60%以下、好ましくは、55%以下、さらに好ましくは、52%以下である。
また、アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体を含むイソシアヌレート誘導体におけるイソシアネート基の平均官能基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.2以上、例えば、4.0以下、好ましくは、3.5以下である。
また、アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体を含むイソシアヌレート誘導体における遊離のイソシアネート基の濃度(イソシアネート基濃度)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、15質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、35質量%以下、さらに好ましくは、25質量%以下である。
また、アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体を含むイソシアヌレート誘導体におけるアルコール類の変性量は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、さらに好ましくは、0.7質量%以上、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下、さらに好ましくは、10.0質量%以下である。なお、アルコール類の変性量は、イソシアヌレート誘導体におけるキシリレンジイソシアネートの質量部に対するアルコール類の質量部の比率(質量比率)であって、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。さらに、アルコール類の変性量は、例えば、特許6161788号公報の[0086]段落に記載されるように、1H-NMR測定により算出することもできる。
アルコール類の変性量が上記下限以上であると、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン樹脂原料の成膜性の向上を図ることができながら、塗膜の高湿条件下における耐膨張性の向上を確実に図ることができる。アルコール類の変性量が上記上限以下であると、塗膜の耐候性の向上を確実に図ることができながら、塗膜の高湿条件下における耐膨張性の向上を確実に図ることができる。
また、イソシアヌレート誘導体には、必要に応じて、スルホンアミド基を含有する化合物を、適宜の割合で添加することができる。
スルホンアミド基を含有する化合物として、例えば、芳香族スルホンアミド類、脂肪族スルホンアミド類などが挙げられる。スルホンアミド基を含有する化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
芳香族スルホンアミド類として、例えば、ベンゼンスルホンアミド、ジメチルベンゼンスルホンアミド、スルファニルアミド、o-およびp-トルエンスルホンアミド、ヒドロキシナフタレンスルホンアミド、ナフタレン-1-スルホンアミド、ナフタレン-2-スルホンアミド、m-ニトロベンゼンスルホンアミド、p-クロロベンゼンスルホンアミドなどが挙げられる。
脂肪族スルホンアミド類として、例えば、メタンスルホンアミド、N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジメチルエタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド、N-メトキシメタンスルホンアミド、N-ドデシルメタンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-1-ブタンスルホンアミド、2-アミノエタンスルホンアミドなどが挙げられる。
また、イソシアヌレート誘導体は、必要により、有機溶媒で希釈することにより、イソシアヌレート誘導体の希釈液として調製することができる。
有機溶媒として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
(1-2)ポリオキシエチレン化合物
ポリオキシエチレン化合物は、少なくとも3つ連続したエチレンオキシド基と、イソシアネート基と反応可能な活性水素基(例えば、水酸基、アミノ基など)とを有する。
ポリオキシエチレン化合物として、例えば、ポリオキシエチレン基含有ポリオール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレンジアミンなどが挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有ポリオールとして、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレントリオール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体(例えば、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンコポリマージオールあるいはトリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマージオールあるいはトリオール、ポリプロピレングリコールの末端にエチレンオキサイドを付加重合させたプルロニックタイプのポリプロピレングリコールあるいはトリオールなど)などが挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとして、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンなどが挙げられる。
片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとして、例えば、炭素数1~20のアルキル基で片末端封止したアルコキシポリエチレングリコール(ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル)などが挙げられ、具体的には、メトキシポリエチレングリコール(ポリ(オキシエチレン)メチルエーテル)、エトキシポリエチレングリコール(ポリ(オキシエチレン)エチルエーテル)などが挙げられる。
片末端封鎖ポリオキシエチレンジアミンとして、例えば、炭素数1~20のアルコキシ基で片末端封止したポリオキシエチレンジアミンなどが挙げられる。
このようなポリオキシエチレン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリオキシエチレン化合物として、好ましくは、ポリオキシエチレン基含有ポリオール、および、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールが挙げられ、さらに好ましくは、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、アルコキシポリエチレングリコール(ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル)が挙げられ、特に好ましくは、メトキシポリエチレングリコールが挙げられる。
このようなポリオキシエチレン化合物の数平均分子量は、例えば、200以上、好ましくは、300以上、例えば、2000以下、好ましくは、1000以下である。なお、ポリオキシエチレン化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定できる。
(1-3)ポリイソシアネートの調製
次に、ポリイソシアネートの調製について説明する。
ポリイソシアネートは、上記したように、イソシアヌレート誘導体とポリオキシエチレン化合物との反応生成物(親水性イソシアヌレート誘導体)を含む。
親水性イソシアヌレート誘導体を含むポリイソシアネートを調製するには、上記したイソシアヌレート誘導体と、上記したポリオキシエチレン化合物とを、遊離のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
イソシアヌレート誘導体の遊離のイソシアネート基に対する、ポリオキシエチレン化合物の活性水素基の当量比(活性水素基/NCO)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、例えば、0.30以下、好ましくは、0.20以下である。
ポリオキシエチレン化合物の配合割合は、イソシアヌレート誘導体100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、さらに好ましくは、25質量部以上、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下、さらに好ましくは、55質量部以下である。
また、イソシアヌレート誘導体とポリオキシエチレン化合物との反応は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気において、例えば、上記した有機溶媒の存在下において実施される。
このような有機溶媒のなかでは、好ましくは、グリコールエーテルエステル類が挙げられ、さらに好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
有機溶媒の添加割合は、イソシアヌレート誘導体100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下である。
反応温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、70℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、110℃以下である。反応圧力は、例えば、大気圧である。反応時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上、例えば、120時間以下、好ましくは、72時間以下である。
反応の終了は、例えば、滴定法により測定されるイソシアネート量が変化しなくなることによって、判断できる。
なお、無溶媒下において、イソシアヌレート誘導体とポリオキシエチレン化合物とを反応させることもできる。
これによって、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体(アルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体および/またはアルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体)のイソシアネート基と、ポリオキシエチレン化合物の活性水素基とが反応して、2つ以上の遊離のイソシアネート基が残存する親水性イソシアヌレート誘導体が生成する。
以上によって、親水性イソシアヌレート誘導体を含むポリイソシアネートが調製される。
イソシアヌレート誘導体が、アルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体を含み、アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体を含まない場合、親水性イソシアヌレート誘導体は、アルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体とポリオキシエチレン化合物との反応生成物(アルコール無変性親水性イソシアヌレート誘導体)を含み、アルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体とポリオキシエチレン化合物との反応生成物(アルコール変性親水性イソシアヌレート誘導体)とを含まない。この場合、ポリイソシアネートは、アルコール無変性親水性イソシアヌレート誘導体に加えて、例えば、未反応のアルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体を含むことができる。
また、イソシアヌレート誘導体が、アルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体およびアルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体を含む場合、親水性イソシアヌレート誘導体は、アルコール無変性親水性イソシアヌレート誘導体と、アルコール変性親水性イソシアヌレート誘導体とを含む。この場合、ポリイソシアネートは、アルコール無変性親水性イソシアヌレート誘導体およびアルコール変性親水性イソシアヌレート誘導体に加えて、例えば、未反応のアルコール無変性XDIイソシアヌレート誘導体および/または未反応のアルコール変性XDIイソシアヌレート誘導体を含むことができる。
ポリイソシアネートにおける親水性イソシアヌレート誘導体の含有割合(固形分換算)は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
ポリイソシアネートにおける遊離のイソシアネート基の平均官能基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.2以上、例えば、4.0以下、好ましくは、3.5以下である。
ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基濃度(固形分換算)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、7質量%以上、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下である。
ポリイソシアネートにおけるエチレンオキシド基の含有量(固形分換算)は、15質量%以上、好ましくは、18質量%以上、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、22質量%以下である。なお、ポリイソシアネートにおけるエチレンオキシド基の含有量は、後述する実施例に記載の方法に準拠して算出できる。
ポリイソシアネートにおけるエチレンオキシド基の含有量が上記範囲内であれば、優れた水分散性を確保できながら、塗膜に優れた高湿条件下における耐膨張性を付与することができる。
また、ポリイソシアネートにおけるアルコール類の変性量は、例えば、0.07質量%以上、好ましくは、0.14質量%以上、例えば、6.0質量%以下、好ましくは、5.4質量%以下である。なお、ポリイソシアネートにおけるアルコール類の変性量は、下記式により算出することができる。
ポリイソシアネートにおけるアルコール類の変性量(質量%)=イソシアヌレート誘導体におけるアルコール類の変性量(質量%)×ポリオキシエチレン化合物の仕込量(質量部)/親水性イソシアヌレート誘導体の仕込量(質量部)×100
また、一般的には、イソシアヌレート誘導体におけるアルコール類の変性量同様、1H-NMR測定により算出することもできる。
(2)ブロック剤
ブロック剤は、イソシアネート基と反応可能な活性基を有し、上記したポリイソシアネートの遊離のイソシアネート基と反応して潜在イソシアネート基を形成する。つまり、ブロックイソシアネートは、ブロック剤によりブロックされている潜在イソシアネート基を含む。
ブロック剤として、例えば、特開2017-82208号公報に記載の第1ブロック剤および第2ブロック剤が挙げられ、具体的には、グアニジン系化合物、イミダゾール系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩、イミダゾリン系化合物、および、ピリミジン系化合物などが挙げられる。ブロック剤は、単独使用または2種併用することができる。
グアニジン系化合物として、例えば、グアニジン、例えば、1-メチルグアニジンなどの1-アルキルグアニジン、例えば、1-フェニルグアニジンなどの1-アリールグアニジン、例えば、1,3-ジメチルグアニジンなどの1,3-ジアルキルグアニジン、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ(o-トリル)-グアニジンなどの1,3-ジアリールグアニジン、例えば、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジンなどの1,1-ジアルキルグアニジン、例えば、1,2,3-トリメチルグアニジンなどの1,2,3-トリアルキルグアニジン、例えば、1,2,3-トリフェニルグアニジンなどの1,2,3-トリアリールグアニジン、例えば、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなどの1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン、例えば、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンなどが挙げられる。
イミダゾール系化合物として、例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-アミン-イミダゾールなどが挙げられる。
アルコール系化合物として、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、1-または2-オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、2-(ヒドロキシメチル)フラン、2-メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2-エトキシエタノール、n-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-エトキシエトキシエタノール、2-エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2-ブトキシエチルエタノール、2-ブトキシエトキシエタノール、N,N-ジブチル-2-ヒドロキシアセトアミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-モルホリンエタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、3-オキサゾリジンエタノール、2-ヒドロキシメチルピリジン、フルフリルアルコール、12-ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどが挙げられる。
フェノール系化合物として、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、s-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール、ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-s-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4-[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、2-ヒドロキシピリジン、2-または8-ヒドロキシキノリン、2-クロロ-3-ピリジノール、ピリジン-2-チオールなどが挙げられる。
活性メチレン系化合物として、例えば、メルドラム酸、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ-t-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸メチルn-ブチル、マロン酸エチルn-ブチル、マロン酸メチルs-ブチル、マロン酸エチルs-ブチル、マロン酸メチルt-ブチル、マロン酸エチルt-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t-ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネートなどのマロン酸ジアルキル、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-ブチル、アセト酢酸t-ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなどのアセト酢酸アルキル、例えば、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、シアノ酢酸エチルなどが挙げられる。
アミン系化合物として、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、2,2,4-または2,2,5-トリメチルヘキサメチレンアミン、N-イソプロピルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビス(3,5,5-トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルメチルアミン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルプロピルアミン、t-ブチルブチルアミン、t-ブチルベンジルアミン、t-ブチルフェニルアミン、2,2,6-トリメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、(ジメチルアミノ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン、6-メチル-2-ピペリジン、6-アミノカプロン酸などが挙げられる。
イミン系化合物として、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンなどが挙げられる。
オキシム系化合物として、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt-ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4-ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3-エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n-アミルケトンオキシム、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2-ヘプタノンオキシムなどが挙げられる。
カルバミン酸系化合物として、例えば、N-フェニルカルバミン酸フェニルなどが挙げられる。
尿素系化合物として、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などが挙げられる。
酸アミド系(ラクタム系)化合物として、例えば、アセトアニリド、N-メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、ピロリドン、2,5-ピペラジンジオン、ラウロラクタムなどが挙げられる。
酸イミド系化合物として、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミドなどが挙げられる。
トリアゾール系化合物として、例えば、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
ピラゾール系化合物として、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、3,5-ジ-t-ブチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾールなどが挙げられる。
メルカプタン系化合物として、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどが挙げられる。
重亜硫酸塩として、例えば、重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。
イミダゾリン系化合物として、例えば、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。
ピリミジン系化合物として、例えば、2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンなどが挙げられる。
このようなブロック剤のなかでは、好ましくは、オキシム系化合物およびピラゾール系化合物が挙げられ、さらに好ましくは、メチルエチルケトオキシムおよび3,5-ジメチルピラゾールが挙げられ、とりわけ好ましくは、3,5-ジメチルピラゾールが挙げられる。
つまり、ブロック剤は、好ましくは、ピラゾール系化合物および/またはオキシム系化合物を含み、さらに好ましくは、3,5-ジメチルピラゾールおよび/またはメチルエチルケトオキシムを含み、とりわけ好ましくは、3,5-ジメチルピラゾールを含む。また、ブロック剤は、好ましくは、ピラゾール系化合物(3,5-ジメチルピラゾール)および/またはオキシム系化合物(メチルエチルケトオキシム)からなる。
ブロック剤がピラゾール系化合物および/またはオキシム系化合物を含むと、塗膜に、優れた機械特性、耐溶剤性、耐候性、および、高湿条件下における耐膨張性をより確実に付与できる。とりわけ、ブロック剤がピラゾール系化合物を含むと、塗膜の耐候性および高湿条件下における耐膨張性の向上をより一層図ることができる。
ブロック剤の解離温度は、例えば、150℃以下、好ましくは、140℃以下、例えば、60℃以上である。なお、ブロック剤の解離温度は、以下の方法により測定できる(以下同様)。
ブロックイソシアネートをシリコンウェハーに塗布し、加熱しながらIR測定によってイソシアネート基が再生する温度を観察する。なお、再生したイソシアネート基を観察できない場合には、公知のポリオールと混合し、その混合物をシリコンウェハーに塗布し、加熱しながらIR測定によってポリオールの水酸基が反応する温度を観察することにより、ブロック剤の解離温度を測定できる。
(3)ブロックイソシアネートの製造
次に、ブロックイソシアネートの製造について説明する。
ブロックイソシアネートを製造するには、上記したポリイソシアネートと、上記したブロック剤とを反応させる。
ポリイソシアネートのイソシアネート基に対する、ブロック剤におけるイソシアネート基と反応可能な活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)は、例えば、0.2以上、好ましくは、0.5以上、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、さらに好ましくは、1.1以下である。
また、ポリイソシアネートとブロック剤との反応は、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気において実施される。
反応温度は、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下である。反応圧力は、例えば、大気圧である。反応時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
これにより、ブロック剤によりブロックされた潜在イソシアネート基が生成される。
なお、ブロック剤が2種以上併用される場合、2種以上のブロック剤を同時にポリイソシアネートと反応させてもよく、2種の第2ブロック剤を逐次的にポリイソシアネートと反応させてもよい。
また、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法などを採用し、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって判断できる。
また、上記の反応は、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。溶剤として、例えば、上記した有機溶媒、可塑剤などが挙げられる。溶剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
可塑剤として、例えば、特開2017-82208号公報の[0109]段落~[0117]段落に記載される可塑剤などが挙げられる。可塑剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
以上によって、ポリイソシアネートのイソシアネート基がブロック剤にブロックされた、ブロックイソシアネートが調製される。
ポリイソシアネートが、アルコール無変性親水性イソシアヌレート誘導体を含み、アルコール変性親水性イソシアヌレート誘導体を含まない場合、ブロックイソシアネートは、アルコール無変性親水性イソシアヌレート誘導体とブロック剤との反応生成物を含む。
また、ポリイソシアネートが、アルコール無変性親水性イソシアヌレート誘導体およびアルコール変性親水性イソシアヌレート誘導体を含む場合、ブロックイソシアネートは、アルコール無変性親水性イソシアヌレート誘導体およびブロック剤の反応生成物と、アルコール変性親水性イソシアヌレート誘導体およびブロック剤の反応生成物とを含む。
なお、ブロックイソシアネートは、水分散可能なブロックイソシアネートであり、水や有機溶媒を含まない。
このようなブロックイソシアネートにおけるエチレンオキシド基の含有量(固形分換算)は、例えば、11.3質量%以上、好ましくは、13.5質量%以上、例えば、22.5質量%以下、好ましくは、18.8質量%以下である。なお、ブロックイソシアネートにおけるエチレンオキシド基の含有量は、下記式により算出することができる。
ブロックイソシアネートにおけるエチレンオキシド基の含有量(質量%)=親水性ポリイソシアヌレート誘導体におけるポリオキシエチレン化合物の含有量(質量%)×親水性ポリイソシアヌレート誘導体の仕込量(質量部)/[親水性ポリイソシアヌレート誘導体の仕込量(質量部)+ブロック剤の仕込量(質量部)]×100。
また、ブロックイソシアネートにおけるアルコール類の変性量は、例えば、0.075質量%以上、好ましくは、0.13質量%以上、例えば、4.5質量%以下、好ましくは、4.1質量%以下である。なお、ブロックイソシアネートにおけるアルコール類の変性量は、下記式により算出することができる。
ブロックイソシアネートにおけるアルコール類の変性率(質量%)=親水性ポリイソシアヌレート誘導体におけるアルコール類の含有量(質量%)×親水性ポリイソシアヌレート誘導体の仕込量(質量部)/[親水性ポリイソシアヌレート誘導体の仕込量(質量部)+ブロック剤の仕込量(質量部)]×100。
<ポリウレタン塗料>
このようなブロックイソシアネートは、例えば、ポリウレタン樹脂原料などの公知の樹脂原料として用いることができ、好ましくは、二液型ポリウレタン樹脂原料として好適に用いられる。
二液型ポリウレタン樹脂原料は、上記したブロックイソシアネートを含むポリイソシアネート成分としてのA剤と、ポリオール成分としてのB剤とを備える。そして、二液型ポリウレタン樹脂原料は、別々に調製されるA剤(硬化剤)およびB剤(主剤)を使用直前に配合するものである。
ポリイソシアネート成分は、上記したブロックイソシアネートが水に分散されて調製される。つまり、ポリイソシアネート成分は、上記したブロックイソシアネートと、水とを含む。
ポリイソシアネート成分におけるブロックイソシアネートの含有割合は、適宜変更されるが、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
なお、ポリオール成分において、マクロポリオール(後述)が水に分散されている場合、ポリイソシアネート成分において、ブロックイソシアネートは水に分散されなくてもよい。
ポリオール成分は、例えば、マクロポリオールを含み、好ましくは、マクロポリオールが水に分散されて調製される。つまり、ポリオール成分は、マクロポリオールと、水とを含む。
マクロポリオールは、数平均分子量が250以上、好ましくは、400以上、例えば、10000以下の高分子量ポリオールである。
マクロポリオールとして、例えば、ポリエステルポリオール、植物油系ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ウレタン変性ポリオールなどが挙げられる。マクロポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
ポリエステルポリオールとして、例えば、多塩基酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸など)と低分子量ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなど)とのエステル化反応物などが挙げられる。
植物油系ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤とする、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12-ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸の縮合反応物などが挙げられる。
ポリカプロラクトンポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤とするラクトン類(例えば、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンなど)の開環重合物などが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤とするアルキレンオキシドの開環重合物などが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物などが挙げられる。
アクリルポリオールとして、例えば、ヒドロキシル基含有アクリレートと、そのヒドロキシル基含有アクリレートと共重合可能な共重合性ビニルモノマーとの共重合体などが挙げられる。
ウレタン変性ポリオールは、例えば、上記したマクロポリオールと公知のポリイソシアネートとの反応生成物であって、例えば、ポリエステルタイプのポリウレタンポリオール、ポリエーテルタイプのポリウレタンポリオール、ポリカーボネートタイプのポリウレタンポリオール、ポリアクリルタイプのポリウレタンポリオール、ポリエステルポリエーテルタイプのポリウレタンポリオールなどが挙げられる。
このようなマクロポリオールのなかでは、好ましくは、アクリルポリオールが挙げられる。
また、必要に応じて、イソシアネート成分(硬化剤)およびポリオール化合物(主剤)のいずれか一方またはその両方に、例えば、反応溶媒、触媒、エポキシ樹脂、塗工性改良剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、増粘剤、沈降防止剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤などの添加剤を適宜配合することができる。添加剤の配合量は、その目的および用途により適宜決定される。
このような二液型ポリウレタン樹脂原料では、その使用時において、ポリイソシアネート成分(硬化剤)とポリオール成分(主剤)とを配合する。
ポリイソシアネート成分(硬化剤)とポリオール成分(主剤)との配合割合は、例えば、マクロポリオールの水酸基に対する、ブロックイソシアネートの潜在イソシアネート基の当量比(潜在イソシアネート基/水酸基)が、例えば、0.1以上、好ましくは、0.5以上、例えば、5以下、好ましくは、3以下となる割合である。
そして、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との混合物は、公知の塗工方法(例えば、スプレー塗工、ディップコート、スピンコート、回転霧化塗工、カーテンコート塗工など)により、被塗物に塗工され、乾燥されることにより塗膜を形成する。その後、塗膜は、加熱により硬化され、必要に応じて熟成される。
加熱温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。
以上によって、ブロックイソシアネートを含む二液型ポリウレタン樹脂原料から、塗膜(硬化塗膜、ポリウレタン樹脂)が形成される。このような塗膜は、とりわけ、高湿条件下における耐膨張性に優れている。なお、高湿条件とは、所定温度における相対湿度が70%以上である条件を意味する。
そのため、二液型ポリウレタン樹脂原料は、とりわけ、高湿条件に曝される用途に好適に利用される。より具体的には、二液型ポリウレタン樹脂原料の用途として、塗料原料(例えば、食品包装インキ用塗料原料など)、接着剤原料(例えば、食品包装用フィルムや紙、プラスチックボトル、缶、瓶などの包装資材用接着剤原料など)などが挙げられる。
<作用効果>
上記したブロックイソシアネートは、ポリイソシアネートがブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであって、ポリイソシアネートが、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体と、ポリオキシエチレン化合物との反応生成物を含み、ポリイソシアネートにおけるエチレンオキシド基の含有量が上記範囲内である。
そのため、優れた水分散性を確保できながら、塗膜(ポリウレタン樹脂)に高湿条件下における耐膨張性を付与できる。
また、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体は、好ましくは、アルコール類により変性されている。
そのため、ブロックイソシアネートの水分散性の向上を図ることができながら、塗膜(ポリウレタン樹脂)の高湿条件下における耐膨張性の向上を図ることができる。
また、イソシアヌレート誘導体におけるアルコール類の変性量は、好ましくは、上記下限以上である。そのため、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン樹脂原料の成膜性の向上を図ることができながら、塗膜(ポリウレタン樹脂)の高湿条件下における耐膨張性の向上を確実に図ることができる。
また、イソシアヌレート誘導体におけるアルコール類の変性量は、好ましくは、上記上限以下である。そのため、塗膜(ポリウレタン樹脂)の耐候性の向上を確実に図ることができながら、塗膜(ポリウレタン樹脂)の高湿条件下における耐膨張性の向上を確実に図ることができる。
また、イソシアヌレート誘導体を変性するアルコール類は、好ましくは、2価の脂肪族アルコールを含む。そのため、塗膜(ポリウレタン樹脂)の耐溶剤性および耐候性の向上をより一層確実に図ることができる。
また、ブロック剤は、好ましくは、ピラゾール系化合物および/またはオキシム系化合物を含む。そのため、塗膜(ポリウレタン樹脂)に、優れた機械特性、耐溶剤性、耐候性、および、高湿条件下における耐膨張性をより一層確実に付与できる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
また、各実施例および各比較例において採用される測定方法および算出方法を下記する。
<蒸留収率>
イソシアヌレート誘導体の蒸留収率は、反応液(蒸留前液)およびイソシアヌレート誘導体(蒸留後液)の質量をそれぞれ測定し、下記式により反応液の質量に対するイソシアヌレート誘導体の質量の割合を算出することにより求めた。
イソシアヌレート誘導体の蒸留収率(質量%)=(イソシアヌレート誘導体の質量(質量部)/反応液の質量(質量部))×100
<アルコール類の変性量(アルコール変性量)>
反応液におけるアルコール類の比率(質量部)は、キシリレンジイソシアネートの仕込質量100質量部に対するアルコール類の仕込質量として算出した。また、イソシアヌレート誘導体におけるアルコール変性量(イソシアヌレート誘導体のアルコール変性量)は、下記式により算出した。
イソシアヌレート誘導体のアルコール変性量(質量%)=(反応液におけるアルコール類の比率(質量部)/蒸留収率(質量%))×100
<イソシアネート基濃度、および、イソシアネート基の転化率(反応率)>
仕込液、反応液およびイソシアヌレート誘導体のイソシアネート基濃度を、JIS K-1556(2006年)のn-ジブチルアミン法に準拠してそれぞれ測定した。また、仕込液のイソシアネート基濃度に対する、反応液またはイソシアヌレート誘導体のイソシアネート基濃度の減少率を算出することにより、イソシアネート基の転化率(反応率)を求めた。
なお、アルコール類の配合後かつイソシアヌレート化触媒の配合前におけるイソシアネート基の転化率がウレタン転化率であり、イソシアヌレート化触媒の配合後におけるイソシアネート基の転化率が、イソシアヌレート転化率である。
<3分子体面積率>
イソシアヌレート誘導体のサンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定し、得られたクロマトグラム(チャート)において、ポリスチレン換算分子量400~1000の間をピークトップとするピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率から、3分子体面積率を求めた。
なお、3分子体面積率は、下記装置において得られたクロマトグラム(チャート)において、保持時間26.8分から27.1分の間をピークトップとするピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率でもある。
GPC測定においては、サンプル約0.04g採取し、メタノールでメチルウレタン化させた後、過剰のメタノールを除去し、テトラヒドロフラン10mLを添加して溶解させた。そして、得られた溶液を、以下の条件でGPC測定した。
(1)分析装置 : Alliance(Waters社製)
(2)ポンプ : Alliance 2695(Waters社製)
(3)検出器 : 2414型示差屈折検出器(Waters社製)
(4)溶離液 : Tetrahydrofuran
(5)分離カラム :Plgel GUARD + Plgel 5μmMixed-C×3本(50×7.5mm,300×7.5mm)メーカー;Polymer Laboratories社製、品番;PL1110-6500
(6)測定温度:40℃
(7)流速:1mL/min
(8)サンプル注入量、注入濃度 : 100μL、1mg/mL
(9)解析装置 : EMPOWERデータ処理装置(Waters社製)
・システム補正
(1)標準物質名 : Polystyrene
(2)検量線作成方法 : 分子量の異なるTOSOH社製 TSKstandard Polystyreneを用い、リテンションタイム(保持時間)と分子量とのグラフを作成。
<エチレンオキシド基含有率>
反応生成物におけるエチレンオキシド基含有率は、下記式により算出した。
エチレンオキシド基含有率(質量%)=ポリオキシエチレン化合物の仕込量(質量部)/[ポリイソシアネートのイソシアヌレート誘導体(比較例3~4ではトリメチロールプロパンアダクト体)の仕込量(質量部)+ポリオキシエチレン化合物の仕込量(質量部)]×100
<イソシアヌレート誘導体の調製>
調製例1
温度計、攪拌装置、窒素導入管および冷却管が装着された反応器に、窒素雰囲気下において、表1に示す処方となるように、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI、三井化学社製)と、酸化防止剤(2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェノール、BHT、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)と、助触媒(テトラフェニル・ジプロピレングリコール・ジホスファイト、有機亜リン酸エステル、商品名:JPP-100、城北化学工業社製)とを仕込んだ。なお、この仕込液におけるイソシアネート基濃度は、44.7質量%であった。
次いで、この仕込液に、固形分換算が表1に示す処方となるように、イソシアヌレート化触媒として、テトラブチルアンモニウムのハイドロオキサイド(TBAOH)の37質量%溶液を配合した後、表1に示す反応条件(反応開始温度、到達最高温度および反応時間)にて、イソシアヌレート化反応させた。
次いで、得られた反応液を、薄膜蒸留装置(温度150℃、真空度50Pa)に通液して、未反応のキシリレンジイソシアネートなどを除去し、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体(XDIヌレート)を調製した。なお、蒸留収率を表1に示す。
また、この反応におけるイソシアネート基の転化率(すなわちイソシアヌレート転化率)、イソシアヌレート誘導体におけるアルコール変性量、イソシアネート基濃度および3分子体面積率を表1に示す。
調製例2~7
温度計、攪拌装置、窒素導入管および冷却管が装着された反応器に、窒素雰囲気下において、表1に示す処方となるように、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-XDI、三井化学社製)と、表1に示す酸化防止剤と、表1に示す助触媒とを仕込んだ。なお、ウレタン化反応の仕込液におけるイソシアネート基濃度を表1に示す。
次いで、この仕込液に、表1に示す処方となるように、アルコール類を加えて、表1に示す反応条件(反応温度および反応時間)にて、ウレタン化反応させた。なお、1,3-ブタンジオールの水酸基に対する、1,3-キシリレンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)を表1に示す。
次いで、反応液を60℃に降温した。このときのウレタン化反応後の反応液のイソシアネート基濃度を表1に示す。
次いで、この反応液に、固形分換算が表1に示す一次添加量となるように、イソシアヌレート化触媒として、テトラブチルアンモニウムのハイドロオキサイド(TBAOH)の37質量%溶液を反応液に配合し、イソシアヌレート化反応させた。その後、反応液に、固形分換算が表1に示す二次添加量となるように、上記のTBAOHのメタノール溶液を追加し、反応開始から表1に示す反応時間の経過後、イソシアヌレート化反応を終了させた。なお、イソシアヌレート化反応の反応開始温度および到達最高温度と、イソシアヌレート化反応後の反応液のイソシアネート基濃度とを表1に示す。
次いで、得られた反応液を、薄膜蒸留装置(温度150℃、真空度50Pa)に通液して、未反応のキシリレンジイソシアネートなどを除去し、アルコール類により変性されたキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体(XDIヌレート)を調製した。なお、蒸留収率を表1に示す。
この反応におけるイソシアネート基の転化率(ウレタン転化率およびイソシアヌレート転化率)、イソシアヌレート誘導体におけるアルコール変性量、イソシアネート基濃度および3分子体面積率を表1に示す。
表1の略号の詳細を下記する。
m-XDI:1,3-キシリレンジイソシアネート(三井化学社製)、
1,3-BG:1、3-ブタンジオール、東京化成工業社製、
IBA:イソブチルアルコール、東京化成工業社製、
JPP-100:テトラフェニル・ジプロピレングリコール・ジホスファイト(芳香族有機亜リン酸エステル、城北化学工業社製、商品名)、
JP-310:トリデシルホスファイト(脂肪族有機亜リン酸エステル、城北化学工業社製、商品名)、
BHT:2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェノール(別名:ジブチルヒドロキシトルエン、BHT、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)ヒンダードフェノール系酸化防止剤)、
Irg1076:イルガノックス1076(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チバ・ジャパン社製、商品名)、
TBAOH:テトラブチルアンモニウムのハイドロオキサイド。
<その他のイソシアネート誘導体の準備>
調製例8
タケネートD-170N(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート誘導体、固形分100質量%、イソシアネート基含有量20.7%、三井化学社製)を、イソシアネート誘導体として準備した。
調製例9
タケネートD-110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体、イソシアネート基含有量11.5質量%、固形分75質量%、溶媒:酢酸エチル、三井化学社製)を、イソシアネート誘導体として準備した。
<ブロックイソシアネートの調製>
実施例1~10および比較例1~6
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量2Lの反応器に、室温(25℃)において、表2に示す各調製例のイソシアネート誘導体(イソシアヌレート誘導体またはその他のイソシアネート誘導体)500質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA、溶媒)110質量部とを仕込み、さらに、反応生成物におけるエチレンオキシド基含有率(EO%)が表2に示す値となるように、数平均分子量1000のポリ(オキシエチレン)メチルエーテル(メトキシポリエチレングリコール、MePEG1000、ポリオキシエチレン化合物)を仕込んだ。
次いで、この仕込液を90℃に加熱して、イソシアネート誘導体とポリ(オキシエチレン)メチルエーテルとを、残存イソシアネート量に変化が無くなるまでウレタン化反応させた。
以上によって、親水性イソシアネート誘導体(反応生成物)のPMA溶液を調製した。
親水性イソシアネート誘導体(反応生成物)におけるエチレンオキシド基含有率、親水性イソシアネート誘導体のPMA溶液の固形分濃度、および、親水性イソシアネート誘導体のPMA溶液のイソシアネート基濃度を表2に示す。
次いで、ポリイソシアネートのPMA溶液735質量部に、PMA441質量部を添加して撹拌した後、表2に示すブロック剤を、親水性イソシアネート誘導体が有するイソシアネート基と等量となるように添加した。
その後、イソシアネート基とブロック剤とを、40℃で2時間反応させた。その後、FT-IRスペクトルを測定することで、イソシアネート基が消失していることを確認した。
以上によって、ブロックイソシアネートのPMA溶液を調製した。ブロックイソシアネートのPMA溶液の固形分濃度は、60質量%であった。
次いで、ブロックイソシアネートのPMA溶液500質量部に、室温(25℃)において水550質量部を数回に分けて分割装入した後、減圧条件下において、それらの混合液からPMAを留去して、ブロックイソシアネートの水分散液(ポリイソシアネート成分)を調製した。この水分散液の固形分濃度は、40質量%であった。
なお、ブロックイソシアネートの水分散液を、25℃において24時間静置した後、目視にて、ブロックイソシアネートの水分散性を下記の基準により評価した。固形分の分離(沈降)が起きていない均一な状態のものを○、分離物(沈降物)が観察される状態のものを×とした。その結果を表2に示す。
<ポリウレタン塗料組成物の調製>
アクリルポリオール(商品名:RE4788、三井化学社製)を水に分散した分散液(ポリオール成分)を準備した。
次いで、各実施例および各比較例のブロックイソシアネートの水分散液(ポリイソシアネート成分)を、アクリルポリオール分散液(ポリオール成分)に、アクリルポリオールの水酸基とブロックイソシアネートの潜在イソシアネート基とが等量となるように加えて、30分間攪拌することによって、ポリウレタン塗料組成物を調製した。なお、最終的なポリウレタン塗料組成物の固形分濃度は、30質量%であった。
<評価>
1.成膜性試験
上記のように調製したポリウレタン塗料組成物を、100μmのアプリケーターにより、亜鉛めっき鋼板上に塗布して、23℃で3時間乾燥した後、150℃で30分硬化させた。その後、硬化させた塗膜を、23℃、相対湿度55%で7日間熟成した。
そして、塗膜の成膜性を下記の基準で評価した。
塗膜全体が割れ・すじ状が無く均一な膜を〇とし、塗膜の表面が一部ひび割れやすじ状な膜を△とした。
2.碁盤目試験
上記の成膜性試験と同様にして、亜鉛めっき鋼板上に塗膜を形成した。また、亜鉛めっき鋼板をブリキ板に変更したこと以外は、上記の成膜性試験と同様にして、ブリキ板上に塗膜を形成した。
次いで、各塗膜が形成されたブリキ板および亜鉛めっき鋼板を用いて、JIS K5600-5-6に基づいて、各塗膜の密着性を、テープ剥離後の密着部位の個数により下記の基準で評価した。
剥離せず密着した個数が25の場合は○、10より多く25未満の場合は△、10以下の場合は×とした。その結果を表2に示す。表2では、25マス中に剥離せずに密着した個数を読み取り、「密着した個数/25」として記載した。
3.MEKラビング試験
亜鉛めっき鋼板をブリキ板に変更したこと以外は、上記の成膜性試験と同様にして、ブリキ板上に塗膜を形成した。そして、硬化させた各塗膜をメチルエチルケトン(MEK)に浸したガーゼでこすり、目視により塗膜表面に剥がれや削れが生じるまでの回数を測定し、下記の基準で評価した。
ラビング回数が200回以上のものを○、ラビング回数が100回以上200回未満のものを△、ラビング回数が100回未満のものを×とした。その結果を表2に示す。
4.耐侯性試験
亜鉛めっき鋼板をPMMA板に変更したこと以外は、上記の成膜性試験と同様にして、PMMA板上に塗膜を形成した。そして、硬化させた各塗膜を、促進耐候性試験機(デューパネル光コントロールウェザーメーター、スガ試験機社製)にて、昼間(60℃×相対湿度10%×4時間×光照射)、夜間(50℃×相対湿度95%×4時間×光照射なし)のサイクルで600時間処理した。処理前後の塗膜を色差計(SE2000、日本電色工業社製)にて測定し、処理前後の色差(ΔE)を下記の基準で評価した。
ΔEが5.0未満を○、ΔEが5.0以上10.0未満を△、ΔEが10.0以上を×とした。その結果を表2に示す。
5.鉛筆硬度試験
上記の成膜性試験と同様にして、亜鉛めっき鋼板上に塗膜を形成した。そして、塗膜の鉛筆硬度をJIS K5600-5-4に基づいて測定し、下記の基準で評価した。
鉛筆硬度がHB以上を○、鉛筆硬度がB以下を×とした。その結果を表2に示す。
6.湿熱膨張率
各実施例および各比較例のブロックイソシアネートの水分散液(ポリイソシアネート成分)を、ポリウレタンポリオールの水分散液(ポリオール成分、W-5661、固形分35質量%、三井化学社製)に、ポリウレタンポリオール/ブロックイソシアネートの固形分比が5/3となるように加えて、30分間攪拌することによって、ポリウレタン塗料組成物を調製した。ポリウレタン塗料組成物は、最終的な固形分濃度が30質量%となるように、水で希釈して濃度調整した。
次いで、ポリウレタン塗料組成物を、100μmのアプリケーターにより、ポリプロピレン板上に塗布して、23℃で3時間乾燥した後、150℃で30分硬化させた。その後、硬化させた塗膜を、23℃、相対湿度55%で7日間熟成した。
次いで、塗膜が形成されたポリプロピレン板から、試験片(20mm×20mm)を切り出し、NETZSCH社製TMA-4000SEにて、温度25℃、湿度80%、3時間の条件下での湿熱膨張率を測定して、下記の基準で評価した。
湿熱膨張率が2.0%未満を○、湿熱膨張率が2.0%以上3.0未満を△、湿熱膨張率が3.0%以上を×とした。その結果を表2に示す。
表2中の略号の詳細を下記する。なお、表1と重複するものについては省略する。
DMP:3,5-ジメチルピラゾール、東京化成工業社製、
MEKO:メチルエチルケトオキシム、東京化成工業社製、
MePEG1000:ポリ(オキシエチレン)メチルエーテル、数平均分子量1000、東邦化学工業社製。