本発明のポリイソシアネート組成物は、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含有する。
キシリレンジイソシアネートとしては、1,2-キシリレンジイソシアネート(o-キシリレンジイソシアネート(o-XDI))、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-キシリレンジイソシアネート(m-XDI))、1,4-キシリレンジイソシアネート(p-キシリレンジイソシアネート(p-XDI))が、構造異性体として挙げられる。
これらキシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体とは、分子中に1つ以上のアロファネート基を含有するキシリレンジイソシアネートのアルコール変性体である。
キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体は、例えば、上記キシリレンジイソシアネートと、アルコールとをウレタン化反応させた後、アロファネート化触媒の存在下でアロファネート化反応させることにより、得ることができる。
より具体的には、この方法では、まず、キシリレンジイソシアネートとアルコールとを、ウレタン化反応させ、キシリレンジイソシアネートのウレタン化物を得る。
アルコールとしては、例えば、脂肪族アルコール、芳香族アルコールなどが挙げられ、好ましくは、脂肪族アルコールが挙げられる。脂肪族アルコールとしては、例えば、1価の脂肪族アルコール、2価の脂肪族アルコールなどが挙げられる。
1価の脂肪族アルコールとしては、例えば、直鎖状の1価脂肪族アルコール、分岐状の1価脂肪族アルコールなどが挙げられる。
直鎖状の1価脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール(ラウリルアルコール)、n-トリデカノール、n-テトラデカノール、n-ペンタデカノール、n-ヘキサデカノール、n-ヘプタデカノール、n-オクタデカノール(ステアリルアルコール)、n-ノナデカノール、エイコサノールなど、炭素数1~20の直鎖状1価脂肪族アルコールなどが挙げられる。
分岐状の1価脂肪族アルコールとしては、例えば、イソプロパノール、イソブタノール(イソブチルアルコール)、sec-ブタノール、tert-ブタノール、イソペンタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、イソオクタノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、5-エチル-2-ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2-ヘキシルデカノール、3,9-ジエチル-6-トリデカノール、2-イソヘプチルイソウンデカノール、2-オクチルドデカノール、その他の分岐状アルカノール(炭素数5~20)など、炭素数1~20の分岐状1価脂肪族アルコールなどが挙げられる。
2価の脂肪族アルコールとしては、例えば、メタンジオール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、その他の直鎖状のアルカン(C7~20)ジオールなどの直鎖状の2価脂肪族アルコール、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチルー1,3-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、その他の分岐状のアルカン(C7~20)ジオールなどの分岐状の2価脂肪族アルコール、例えば、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールAなどの脂環式の2価脂肪族アルコールなど、炭素数1~20の2価の脂肪族アルコールなどが挙げられる。
また、アルコールは、分子中に1つ以上のヒドロキシ基を有していれば、それ以外の分子構造は、本発明の優れた効果を阻害しない限り、特に制限されず、例えば、分子中に、エステル基、エーテル基、シクロヘキサン環、芳香環などを有することもできる。このようなアルコールとしては、例えば、上記脂肪族アルコールとアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)との付加重合物(2種類以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック重合物)であるエーテル基含有アルコール、上記脂肪族アルコールとラクトン(例えば、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトンなど)との付加重合物であるエステル基含有アルコールなどが挙げられる。
これらアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
アルコールとしては、好ましくは、脂肪族アルコールが挙げられ、アロファネート2分子体(後述)の含有割合を後述の範囲に調整する観点から、より好ましくは、1価の脂肪族アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、分岐状の1価脂肪族アルコールが挙げられる。
換言すれば、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、および/または、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体が、好ましくは、キシリレンジイソシアネートと脂肪族アルコール(より好ましくは、1価の脂肪族アルコール、さらに好ましくは、分岐状の1価脂肪族アルコール)との反応生成物を含む。
また、脂肪族アルコールとしては、好ましくは、炭素数が1~20の脂肪族アルコール、より好ましくは、炭素数が2~20の脂肪族アルコール、さらに好ましくは、炭素数が2~8の脂肪族アルコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、炭素数が2~6の脂肪族アルコールが挙げられる。
アルコールの配合割合は、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、1.0質量部以上、好ましくは、2.0質量部以上、より好ましくは、3.0質量部以上、より好ましくは、3.5質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
また、アルコールのヒドロキシ基に対する、キシリレンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、イソシアネート基過剰であり、例えば、5以上、好ましくは、10以上、より好ましくは、15以上、さらに好ましくは、20以上であり、例えば、1000以下、好ましくは、100以下、より好ましくは、50以下である。
また、必要に応じて、上記したアルコールと、例えば、チオール類、オキシム類、ラクタム類、フェノール類、βジケトン類などとを、適宜の割合で併用することができる。
ウレタン化反応における反応条件としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下において、反応温度が、例えば、室温(例えば、25℃)以上、好ましくは、40℃以上、より好ましくは、60℃以上であり、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下、より好ましくは、80℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.05時間以上、好ましくは、0.2時間以上、より好ましくは、1時間以上、さらに好ましくは、3時間以上であり、例えば、10時間以下、好ましくは、6時間以下、より好ましくは、4時間以下である。
また、上記ウレタン化反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類、有機金属化合物、カリウム塩などの公知のウレタン化触媒を、適宜の割合で添加してもよい。好ましくは、無触媒でウレタン化反応させる。
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
なお、ウレタン化触媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
次いで、この方法では、ウレタン化反応により得られる反応液に、アロファネート化触媒を配合し、キシリレンジイソシアネートとアルコールとの反応生成物を、アロファネート化反応させる。
アロファネート化触媒としては、例えば、ビスマス含有触媒が挙げられる。
ビスマス含有触媒は、ビスマスを含有していれば特に制限されないが、例えば、ビスマスのカルボン酸塩(カルボン酸ビスマス)が挙げられる。
カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オクチル酸、2-エチルヘキサン酸などの飽和脂肪族カルボン酸、例えば、シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸などの飽和単環カルボン酸、例えば、ビシクロ(4.4.0)デカン-2-カルボン酸などの飽和複環カルボン酸、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸などの不飽和脂肪族カルボン酸、例えば、ジフェニル酢酸などの芳香脂肪族カルボン酸、例えば、安息香酸、トルイル酸などの芳香族カルボン酸などが挙げられる。
これらカルボン酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。カルボン酸として、好ましくは、飽和脂肪族カルボン酸が挙げられる。
これらアロファネート化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
アロファネート化触媒として、アロファネート化時間を短縮し、ウレトジオン2分子体(ダイマー)の生成を抑制する観点から、好ましくは、ビスマス含有触媒、より好ましくは、カルボン酸ビスマスが挙げられる。
ビスマス含有触媒において、ビスマスの含有割合(Bi濃度)は、ビスマス含有触媒の固形分の総量に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、25質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、35質量%以下である。
なお、ビスマスの含有割合(Bi濃度)は、ビスマス含有触媒の固形分の総量(例えば、ビスマス金属およびカルボン酸の総量)に対するビスマス金属の質量割合であって、蛍光X線分析などにより、測定することができる。
また、アロファネート化触媒は、固形分100%として用いてもよく、また、アロファネート化触媒(好ましくは、ビスマス含有触媒)を有機溶媒に溶解させた触媒溶液を使用してもよい。
有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、アルキルエステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなど)、グリコールエーテルエステル類(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、極性非プロトン類(例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなど)などが挙げられる。有機溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
アロファネート化触媒(固形分)の添加割合は、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上、より好ましくは、0.01質量部以上であり、例えば、0.3質量部以下、好ましくは、0.2質量部以下、より好ましくは、0.1質量部以下である。
アロファネート化反応の反応条件としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下、反応温度が、0℃以上、好ましくは、20℃以上、より好ましくは、40℃以上、さらに好ましくは、60℃以上、とりわけ好ましくは、70℃以上であり、例えば、160℃以下、好ましくは、140℃以下、より好ましくは、120℃以下、さらに好ましくは、100℃以下である。また、反応時間が、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上、より好ましくは、5時間以上、さらに好ましくは、8時間以上であり、例えば、16時間以下、より好ましくは、14時間以下、さらに好ましくは、12時間以下である。
そして、上記のアロファネート化反応では、好ましくは、任意のタイミングで、触媒失活剤を添加し、反応を停止させる。触媒失活剤を添加するタイミングは、例えば、赤外分光法(IR法)により測定されるウレタン基/アロファネート基のIR比が、例えば、0.3以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下に到達した時点などである。
触媒失活剤としては、例えば、リン酸、カルボン酸(例えば、モノクロロ酢酸)、スルホン酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、オルトトルエンスルホン酸など)、スルホンアミド(例えば、パラトルエンスルホンアミド、オルトトルエンスルホンアミドなど)、ベンゾイルクロリドなどが挙げられる。触媒失活剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。また、触媒失活剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
これにより、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を得ることができる。
また、上記のウレタン化反応およびアロファネート化反応では、必要により、有機溶媒を、適宜の割合で配合することができる。
また、上記のウレタン化反応およびアロファネート化反応では、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、助触媒(例えば、有機亜リン酸エステルなど)などの公知の添加剤を添加することができる。添加剤として、好ましくは、酸化防止剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール(BHT)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのヒンダードフェノール系酸化防止剤、例えば、ビス(2,4-ジt-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイトなどのリン系酸化防止剤、例えば、2,5-チオフェンジイルビス(5-t-ブチルー1,3-ベンゾキサゾールなどのチオフェン系酸化防止剤などが挙げられる。
これら酸化防止剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。酸化防止剤として、好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
なお、添加剤の添加割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、添加剤を添加するタイミングは、特に制限されず、ウレタン化反応前のキシリレンジイソシアネートに添加してもよく、また、ウレタン化反応および/またはアロファネート化反応中の反応液に添加してもよく、さらには、ウレタン化反応およびアロファネート化反応後の反応液に添加してもよい。
そして、この方法では、上記アロファネート化反応の終了後、必要に応じて、得られる反応混合液から、未反応のキシリレンジイソシアネート(さらに、必要に応じて、触媒、反応溶媒および/または触媒失活剤など)を、例えば、薄膜蒸留(スミス蒸留)などの蒸留や、抽出などの公知の方法で除去する。好ましくは、未反応のキシリレンジイソシアネート(さらに、必要に応じて、触媒、反応溶媒および/または触媒失活剤など)を、薄膜蒸留(スミス蒸留)により除去する。
これにより、キシリレンジイソシアネートのアロファネートを含有するポリイソシアネート組成物が得られる。
このような、ポリイソシアネート組成物は、主成分として、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含有する。
なお、上記の方法において、キシリレンジイソシアネートのウレタン化反応およびアロファネート化反応では、反応条件によっては、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体に加え、その他のキシリレンジイソシアネート誘導体が副生成物として得られる。その他のキシリレンジイソシアネート誘導体は、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を除く誘導体であり、例えば、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、キシリレンジイソシアネートのウレトジオン2分子体(ダイマー)などが挙げられる。
つまり、ポリイソシアネート組成物は、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体と、その他のキシリレンジイソシアネート誘導体とを含有できる。
キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体は、キシリレンジイソシアネートのアロファネート2分子体、キシリレンジイソシアネートのアロファネート3分子体などに分類される。
なお、本発明において、キシリレンジイソシアネートの各誘導体は、複数のキシリレンジイソシアネートが特定結合種(基)を介して結合することによって形成され、特定結合種(基)の名称と、キシリレンジイソシアネートの数とによって表記される。
例えば、n分子(n:自然数)のキシリレンジイソシアネートが、特定結合種としてのアロファネート基を介して結合した誘導体は、アロファネートn分子体(n:自然数)と表記される。また、n分子(n:自然数)のキシリレンジイソシアネートが、特定結合種としてのイソシアヌレート基を介して結合した誘導体は、イソシアヌレートn分子体(n:自然数)と表記される。また、n分子(n:自然数)のキシリレンジイソシアネートが、特定結合種としてのウレトジオン基を介して結合した誘導体は、ウレトジオンn分子体(n:自然数)と表記される。
そして、アロファネート2分子体は、1分子の1価アルコールと2分子のキシリレンジイソシアネートとのアロファネート化反応による反応生成物である。
また、アロファネート3分子体は、2分子の1価アルコールと3分子のキシリレンジイソシアネートとのアロファネート化反応による反応生成物、および/または、1分子の2価アルコールと3分子のキシリレンジイソシアネートとのアロファネート化反応による反応生成物である。
アロファネート誘導体として、好ましくは、アロファネート2分子体が挙げられる。
換言すれば、ポリイソシアネート組成物は、主成分として、キシリレンジイソシアネートのアロファネート2分子体を含有する。
ポリイソシアネート組成物の総量に対して、キシリレンジイソシアネートのアロファネート2分子体の含有割合は、ポリイソシアネート組成物の保存安定性、ポリウレタン樹脂(後述)の平滑性、耐薬品性および接着性の観点から、50質量%以上、好ましくは、55質量%以上であり、72質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
とりわけ、ポリウレタン樹脂(後述)の平滑性の向上を図る観点から、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、キシリレンジイソシアネートのアロファネート2分子体の含有割合は、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、65質量%以上、さらに好ましくは、70質量%以上である。
また、ポリウレタン樹脂(後述)の耐薬品性および接着性の向上を図る観点から、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、キシリレンジイソシアネートのアロファネート2分子体の含有割合は、好ましくは、65質量%以下、より好ましくは、60質量%以下、さらに好ましくは、58質量%以下である。
また、ポリイソシアネート組成物において、キシリレンジイソシアネートのアロファネート2分子体の質量割合は、ポリイソシアネート組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、全ピークの面積に対する、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)400以上500未満の範囲にピークトップを有するピークの面積率(以下、Mn400-500面積率と称する場合がある。)として、求めることができる。
ポリイソシアネート組成物のMn400-500面積率は、ポリイソシアネート組成物の保存安定性、ポリウレタン樹脂(後述)の平滑性、耐薬品性および接着性の観点から、50%以上、好ましくは、55%以上であり、72%以下、好ましくは、70%以下である。
とりわけ、ポリウレタン樹脂(後述)の平滑性の向上を図る観点から、ポリイソシアネート組成物のMn400-500面積率は、好ましくは、60%以上、より好ましくは、65%以上、さらに好ましくは、70%以上である。
また、ポリウレタン樹脂(後述)の耐薬品性および接着性の向上を図る観点から、ポリイソシアネート組成物のMn400-500面積率は、好ましくは、65%以下、より好ましくは、60%以下、さらに好ましくは、58%以下である。
また、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体は、好ましくは、キシリレンジイソシアネートのアロファネート3分子体を含有している。
ポリイソシアネート組成物の総量に対して、キシリレンジイソシアネートのアロファネート3分子体の含有割合は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
とりわけ、ポリウレタン樹脂(後述)の平滑性の向上を図る観点から、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、キシリレンジイソシアネートのアロファネート3分子体の含有割合は、好ましくは、25質量%以下、より好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、15質量%以下である。
また、ポリウレタン樹脂(後述)の耐薬品性および接着性の向上を図る観点から、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、キシリレンジイソシアネートのアロファネート3分子体の含有割合は、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、26質量%以上である。
また、ポリイソシアネート組成物において、キシリレンジイソシアネートのアロファネート3分子体の質量割合は、ポリイソシアネート組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、全ピークの面積に対する、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)600以上880未満の範囲にピークトップを有するピークの面積率(以下、Mn600-880面積率と称する場合がある。)として、求めることができる。
ポリイソシアネート組成物のMn600-880面積率は、例えば、5%以上、好ましくは、10%以上であり、例えば、40%以下、好ましくは、30%以下である。
とりわけ、ポリウレタン樹脂(後述)の平滑性の向上を図る観点から、ポリイソシアネート組成物のMn600-880面積率は、好ましくは、25%以下、より好ましくは、20%以下、さらに好ましくは、15%以下である。
また、ポリウレタン樹脂(後述)の耐薬品性および接着性の向上を図る観点から、ポリイソシアネート組成物のMn600-880面積率は、好ましくは、15%以上、より好ましくは、20%以上、さらに好ましくは、26%以上である。
また、ポリイソシアネート組成物は、副成分として、キシリレンジイソシアネートのウレトジオン2分子体(ダイマー)を含有している場合がある。
なお、ウレトジオン2分子体(ダイマー)は、2分子のキシリレンジイソシアネートの2量化反応により得られる反応生成物である。
ポリイソシアネート組成物の総量に対して、キシリレンジイソシアネートのウレトジオン2分子体(ダイマー)の含有割合は、低温環境(5℃以下)における貯蔵安定性の観点から、12質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、8質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下、とりわけ好ましくは、2質量%以下であり、例えば、0質量%以上である。
また、ポリイソシアネート組成物において、キシリレンジイソシアネートのウレトジオン2分子体(ダイマー)の質量割合は、ポリイソシアネート組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、全ピークの面積に対する、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)300以上400未満の範囲にピークトップを有するピークの面積率(以下、Mn300-400面積率と称する場合がある。)として、求めることができる。
ポリイソシアネート組成物のMn300-400面積率は、低温環境(5℃以下)における貯蔵安定性の観点から、12%以下、好ましくは、10%以下、より好ましくは、8%以下、さらに好ましくは、5%以下、とりわけ好ましくは、2%以下であり、例えば、0%以上である。
また、ポリイソシアネート組成物は、好ましくは、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有しないか、または、イソシアヌレート誘導体の含有割合が比較的少量である。
なお、イソシアヌレート誘導体の主成分は、イソシアヌレート3分子体である。
換言すれば、ポリイソシアネート組成物は、好ましくは、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3分子体を含有しないか、または、イソシアヌレート3分子体の含有割合が比較的少量である。
なお、イソシアヌレート3分子体は、3分子のキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート化反応により得られる反応生成物である。
ポリイソシアネート組成物の総量に対して、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3分子体の含有割合は、例えば、5質量%以下、好ましくは、3質量%以下、より好ましくは、2質量%以下であり、例えば、0質量%以上である。
また、ポリイソシアネート組成物において、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート3分子体の質量割合は、ポリイソシアネート組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、全ピークの面積に対する、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)500以上600未満の範囲にピークトップを有するピークの面積率(以下、Mn500-600面積率と称する場合がある。)として、求めることができる。
ポリイソシアネート組成物のMn500-600面積率は、例えば、5%以下、好ましくは、3%以下、より好ましくは、2%以下であり、例えば、0%以上である。
また、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、その他のキシリレンジイソシアネート誘導体(好ましくは、ウレトジオン2分子体、および、必要によりイソシアヌレート3分子体)の含有割合の総量は、例えば、1質量%以上であり、例えば、10質量%以下、好ましくは、8質量%以下、より好ましくは、6質量%以下である。
一方、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体(アロファネート2分子体、アロファネート3分子体などのアロファネート多分子体の総量)の含有割合の総量は、例えば、90質量%以上、好ましくは、92質量%以上、より好ましくは、94質量%以上であり、例えば、99質量%以下である。
さらに、上記のアロファネート誘導体(アロファネート2分子体、アロファネート3分子体などのアロファネート多分子体)の総量に対して、アロファネート2分子体の含有割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、99質量%以上であり、例えば、98質量%以下である。また、アロファネート3分子体の含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上、より好ましくは、50質量%以上であり、例えば、40質量%以下である。
なお、面積率は、後述する実施例に準拠して、ポリイソシアネート組成物の分子量分布を、標準ポリエチレンの検量線に基づき、示差屈折率検出器(RID)を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によって測定し、得られたクロマトグラム(チャート)におけるピーク面積比率として、算出することができる。
ポリイソシアネート組成物において、イソシアネート基濃度(固形分100質量%)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、16質量%以上であり、例えば、45質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、35質量%以下である。
また、ポリイソシアネート組成物のイソシアネートモノマー濃度(未反応のキシリレンジイソシアネートの濃度)は、例えば、5質量%以下、好ましくは、2質量%以下、さらに好ましくは、1質量%以下である。
また、ポリイソシアネート組成物には、必要により、上記した有機溶媒を適宜の割合で添加して、固形分濃度を調整することができる。
ポリイソシアネート組成物の希釈液において、ポリイソシアネート組成物の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、100質量%以下である。
そして、上記のポリイソシアネート組成物では、キシリレンジイソシアネートのアロファネート2分子体の含有割合が、所定の範囲に調整されている。そのため、本発明のポリイソシアネート組成物によれば、平滑性、耐薬品性および接着性に優れたポリウレタン樹脂を得ることができる。
また、上記のポリイソシアネート組成物では、キシリレンジイソシアネートのウレトジオン2分子体の含有割合が、所定の範囲に調整されている。そのため、本発明のポリイソシアネート組成物は、低温環境(5℃以下)における貯蔵安定性にも優れる。
そして、上記のポリイソシアネート組成物の製造方法によれば、上記のポリイソシアネート組成物を得ることができる。
なお、ポリイソシアネート組成物は、親水基含有活性水素化合物と反応させることにより水性ポリイソシアネート組成物として得ることができる。
親水基含有活性水素化合物は、少なくとも1つの親水基と、少なくとも1つの活性水素基とを併有する化合物であって、親水基としては、例えば、アニオン性基(例えば、カルボキシ基(カルボン酸基)など)、カチオン性基、ノニオン性基(例えば、ポリオキシエチレン基など)が挙げられ、好ましくは、ノニオン性基が挙げられる。活性水素基としては、イソシアネート基と反応する基であって、例えば、水酸基、アミノ基、エポキシ基などが挙げられる。また、親水基含有活性水素化合物が水酸基とアミノ基とを併有する場合には、水酸基が親水基であり、アミノ基が活性水素基である。
親水基含有活性水素化合物として、より具体的には、カルボン酸基含有活性水素化合物、スルホン酸基含有活性水素化合物、水酸基含有活性水素化合物、親水基含有多塩基酸、ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物などが挙げられる。
カルボン酸基含有活性水素化合物としては、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2-ジメチロールブタン酸(DMBA)、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸、例えば、リジン、アルギニンなどのジアミノカルボン酸、または、それらの金属塩類またはアンモニウム塩類などが挙げられる。好ましくは、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA),2,2-ジメチロールブタン酸(DMBA)が挙げられる。
スルホン酸基含有活性水素化合物としては、例えば、エポキシ基含有化合物と酸性亜硫酸塩との合成反応から得られる、ジヒドロキシブタンスルホン酸、ジヒドロキシプロパンスルホン酸が挙げられる。また、例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノブタンスルホン酸、1,3-フェニレンジアミン-4,6-ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、ジアミノプロパンスルホン酸、3,6-ジアミノ-2-トルエンスルホン酸、2,
4-ジアミノ-5-トルエンスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、2-アミノエタンスルホン酸、N-(2-アミノエチル)-2-アミノブタンスルホン酸、または、それらスルホン酸の金属塩類またはアンモニウム塩類などが挙げられる。
水酸基含有活性水素化合物としては、例えば、N-(2-アミノエチル)エタノールアミンが挙げられる。
親水基含有多塩基酸としては、例えば、スルホン酸を含有する多塩基酸、より具体的には、5-スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4-スルホフタル酸、5-(p-スルホフェノキシ)イソフタル酸、5-(スルホプロポキシ)イソフタル酸、4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸、スルホプロピルマロン酸、スルホコハク酸、2-スルホ安息香酸、2,3-スルホ安息香酸、5-スルホサリチル酸、および、それらカルボン酸のアルキルエステル、さらには、それらスルホン酸の金属塩類またはアンモニウム塩類などが挙げられる。好ましくは、5-スルホイソフタル酸のナトリウム塩、5-スルホイソフタル酸ジメチルのナトリウム塩が挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物は、主鎖または側鎖にポリオキシエチレン基を含み、少なくとも1つの活性水素基を有する化合物である。
ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール(例えば、数平均分子量200~6000、好ましくは300~3000)、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(例えば、炭素数1~4のアルキル基で片末端封止したアルコキシエチレングリコールであって、数平均分子量200~6000、好ましくは300~3000)、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールが挙げられる。
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、側鎖にポリオキシエチレン基を含み、2つ以上の活性水素基を有する化合物であって、次のように合成することができる。
すなわち、まず、ジイソシアネート(後述)と片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(例えば、炭素数1~4のアルキル基で片末端封止したアルコキシエチレングリコールであって、数平均分子量200~6000、好ましくは300~3000)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対して、ジイソシアネート(後述)のイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させ、必要により未反応のジイソシアネート(後述)を除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得る。
次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミンなど)とを、ジアルカノールアミンの2級アミノ基に対して、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートのイソシアネート基がほぼ等量となる割合でウレア化反応させる。
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールを得るためのジイソシアネートとしては、特に制限されず、公知のジイソシアネートを用いることができる。ジイソシアネートとして、より具体的には、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、1,4-または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート(IPDI))、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ノルボナン(NBDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
また、ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物として、さらに、例えば、エチレンオキサイドが付加した1価アルコール(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなど)、ポリオキシエチレン含有ソルビタンエステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンリシノレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエートなど)、ポリオキシエチレン含有アルキルフェノール類(例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなど)、ポリエチレングリコール含有高級脂肪酸エステル類(例えば、ポリエチレングリコールラウレート、ポリエチレングリコールオレエート、ポリエチレングリコールステアレートなど)なども挙げられる。
また、ポリイソシアネート組成物は、遊離のイソシアネート基がブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネートを含む。ブロックイソシアネートは、例えば、遊離のイソシアネート基とブロック剤とを反応させることにより、製造することができる。
ブロック剤としては、例えば、グアニジン系化合物、イミダゾール系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩、イミダゾリン系化合物、ピリミジン系化合物、ピペリジン系化合物、ピペリドン系化合物などが挙げられる。
グアニジン系化合物として、例えば、グアニジン、例えば、1-メチルグアニジンなどの1-アルキルグアニジン、例えば、1-フェニルグアニジンなどの1-アリールグアニジン、例えば、1,3-ジメチルグアニジンなどの1,3-ジアルキルグアニジン、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ(o-トリル)-グアニジンなどの1,3-ジアリールグアニジン、例えば、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジンなどの1,1-ジアルキルグアニジン、例えば、1,2,3-トリメチルグアニジンなどの1,2,3-トリアルキルグアニジン、例えば、1,2,3-トリフェニルグアニジンなどの1,2,3-トリアリールグアニジン、例えば、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなどの1,1,3,3-テトラアルキルグアニジン、例えば、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンなどが挙げられる。
イミダゾール系化合物として、例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-アミン-イミダゾールなどが挙げられる。
アルコール系化合物として、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、1-または2-オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、2-(ヒドロキシメチル)フラン、2-メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2-エトキシエタノール、n-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-エトキシエトキシエタノール、2-エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2-ブトキシエチルエタノール、2-ブトキシエトキシエタノール、N,N-ジブチル-2-ヒドロキシアセトアミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-モルホリンエタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、3-オキサゾリジンエタノール、2-ヒドロキシメチルピリジン、フルフリルアルコール、12-ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどが挙げられる。
フェノール系化合物として、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、s-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール、ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-s-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4-[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、2-ヒドロキシピリジン、2-または8-ヒドロキシキノリン、2-クロロ-3-ピリジノール、ピリジン-2-チオールなどが挙げられる。
活性メチレン系化合物として、例えば、メルドラム酸、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ-t-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸メチルn-ブチル、マロン酸エチルn-ブチル、マロン酸メチルs-ブチル、マロン酸エチルs-ブチル、マロン酸メチルt-ブチル、マロン酸エチルt-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t-ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネートなどのマロン酸ジアルキル、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-ブチル、アセト酢酸t-ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなどのアセト酢酸アルキル、例えば、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、シアノ酢酸エチルなどが挙げられる。
アミン系化合物として、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、2,2,4-または2,2,5-トリメチルヘキサメチレンアミン、N-イソプロピルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビス(3,5,5-トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルメチルアミン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルプロピルアミン、t-ブチルブチルアミン、t-ブチルベンジルアミン、t-ブチルフェニルアミン、2,2,6-トリメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、(ジメチルアミノ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン、6-メチル-2-ピペリジン、6-アミノカプロン酸などが挙げられる。
イミン系化合物として、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンなどが挙げられる。
オキシム系化合物として、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt-ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4-ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3-エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n-アミルケトンオキシム、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2-ヘプタノンオキシムなどが挙げられる。
カルバミン酸系化合物として、例えば、N-フェニルカルバミン酸フェニルなどが挙げられる。
尿素系化合物として、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などが挙げられる。
酸アミド系(ラクタム系)化合物として、例えば、アセトアニリド、N-メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、ピロリドン、2,5-ピペラジンジオン、ラウロラクタムなどが挙げられる。
酸イミド系化合物として、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミドなどが挙げられる。
トリアゾール系化合物として、例えば、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
ピラゾール系化合物として、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、3,5-ジ-t-ブチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾールなどが挙げられる。
メルカプタン系化合物として、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどが挙げられる。
重亜硫酸塩として、例えば、重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。
イミダゾリン系化合物として、例えば、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。
ピリミジン系化合物として、例えば、2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンなどが挙げられる。
ピペリジン系化合物として、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
ピペリドン系化合物として、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンなどが挙げられる。
これらブロック剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
そして、ブロックイソシアネートは、遊離のイソシアネート基を有するポリイソシアネート組成物とブロック剤とを、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基に対してブロック剤が過剰となる割合で配合し、公知の条件で反応させることにより、得ることができる。
また、上記のポリイソシアネート組成物は、遊離のイソシアネート基がブロック剤によりブロックされるとともに、水に分散または溶解された水性ブロックイソシアネートとして用いることもできる。
水性ブロックイソシアネートを製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、まず、ポリイソシアネート組成物における遊離のイソシアネート基の一部がブロック剤によりブロックされたポリイソシアネート組成物(以下、部分ブロックイソシアネートとする。)を製造し、その後、部分ブロックイソシアネートの遊離のイソシアネート基(ブロック剤によりブロックされずに残るイソシアネート基)と、上記した親水基含有活性水素化合物とを反応させる方法が挙げられる。
この方法では、まず、ポリイソシアネート組成物の遊離のイソシアネート基の一部とブロック剤とを反応させ、部分ブロックイソシアネートを製造する。
ブロック剤としては、例えば、上記したブロック剤と同様のブロック剤が挙げられる。
そして、部分ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネート組成物とブロック剤とを、ブロック剤に対してポリイソシアネート組成物のイソシアネート基が過剰となる割合で配合し、公知の条件で反応させることにより、得ることができる。
次いで、この方法では、部分ブロックイソシアネートの遊離のイソシアネート基(イソシアネート基の残部)と、親水基含有活性水素化合物とを反応させる。
そして、水性ブロックイソシアネートは、部分ブロックイソシアネートと親水基含有活性水素化合物とを、部分ブロックイソシアネートの遊離のイソシアネート基に対して親水基含有活性水素化合物が過剰となる割合で配合し、公知の条件で反応させることにより、得ることができる。
そして、上記ポリイソシアネート組成物は、低温環境下における貯蔵安定性に優れ、また、平滑性、耐薬品性および接着性に優れたポリウレタン樹脂を得ることができるため、ポリウレタン樹脂の製造において、好適に用いられる。
ポリウレタン樹脂の形態としては、特に制限されないが、好ましくは、2液硬化型ポリウレタンが挙げられる。換言すれば、上記ポリイソシアネート成分は、2液硬化型ポリウレタンの硬化剤として、好適に用いられる。
2液硬化型ポリウレタンは、硬化剤と主剤とがそれぞれ独立したパッケージとして調製され、それらが使用時に配合されることによりポリウレタン樹脂(硬化塗膜など)を形成する樹脂組成物である。
なお、ポリイソシアネート組成物は、必要により上記した有機溶媒などに溶解され、硬化剤として調製される。
2液硬化型ポリウレタンの主剤は、例えば、ポリオール成分を含有する。ポリオール成分としては、低分子量ポリオールおよび高分子量ポリオールが挙げられる。
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量300未満、好ましくは、400未満の化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、アルカン(C7~20)ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量300以上、好ましくは、400以上、さらに好ましくは、500以上の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、酸変性ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
これらポリオール成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリオール成分として、好ましくは、高分子量ポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリエーテルポリオール、酸変性ポリエステルポリオール、アクリルポリオールが挙げられる。とりわけ、塗料(後述)におけるポリオール成分としては、アクリルポリオールが挙げられ、接着剤(後述)におけるポリオール成分としては、ポリエーテルポリオールおよび酸変性ポリオールの混合物が挙げられる。
なお、ポリオール成分は、必要により上記した有機溶媒などに溶解され、主剤として調製される。
そして、2液硬化型ポリウレタンは、硬化剤および主剤を使用時に配合し、混合撹拌することにより、塗料(2液硬化型塗料)、接着剤(2液硬化型接着剤)などとして好適に用いられる。
より具体的には、まず、上記主剤と上記硬化剤とをそれぞれ用意し、使用直前に主剤と硬化剤とを混合して、2液硬化型ポリウレタン樹脂(塗料、接着剤)を調製し、その2液硬化型ポリウレタン樹脂を、被塗物または被着物に塗布する。
主剤および硬化剤の配合割合は、例えば、主剤(ポリオール成分)中の水酸基に対する、硬化剤(ポリイソシアネート組成物)中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)として、例えば、0.5~1.5、好ましくは、0.8~1.2となる割合である。
また、必要に応じて、上記の有機溶剤を添加して、主剤および硬化剤の粘度を調整する。有機溶剤の添加量は、特に制限されず、適宜調整される。なお、有機溶剤は、主剤に添加されてもよく、硬化剤に添加されてもよく、また、主剤および硬化剤の混合時に添加されてもよく、さらには、主剤および硬化剤の混合物に添加されてもよい。
そして、主剤および硬化剤の混合物は、例えば、スプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコート法、フローコート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、ダイレクトコート法などの任意の方法により、被着体に塗布される。
被着物としては、特に制限されず、例えば、各種建材および各種積層フィルムが挙げられる。より具体的には、プラスチックフィルム、金属箔、金属蒸着フィルムなどの包装材料、FRP、鋼材などの土木材料などが挙げられる。
そして、主剤および硬化剤の混合物が乾燥および硬化することにより、ポリウレタン樹脂(硬化塗膜、接着層など)が得られる。
このようなポリウレタン樹脂は、上記のポリイソシアネート組成物を用いて製造されるため、平滑性、耐薬品性および接着性に優れる。そのため、上記のポリウレタン樹脂およびポリイソシアネート組成物は、各種産業分野において、好適に用いられる。
また、ポリウレタン樹脂としては、上記に限定されず、例えば、活性エネルギー線の照射により硬化するポリウレタン組成物(以下、硬化性ポリウレタン樹脂組成物)の硬化物も挙げられる。
硬化性ポリウレタン樹脂組成物は、例えば、エチレン性不飽和基を含むウレタン樹脂(未硬化樹脂)を含有している。
ウレタン樹脂(未硬化樹脂)は、例えば、特開2016-190948の記載に準拠して、上記のポリイソシアネート組成物と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物とを少なくとも反応させる、および/または、上記のポリイソシアネート組成物と、ポリオールと、エチレン性不飽和基およびヒドロキシル基を含有するヒドロキシル基含有不飽和化合物とを反応させることにより、得ることができる。
そして、得られた硬化性ポリウレタン樹脂組成物を、被着体(被塗物)の表面に塗工して皮膜を形成し、その後、活性エネルギー線を照射することにより、硬化物としてポリウレタン樹脂が得られる。
なお、活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の照射量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
このようなポリウレタン樹脂も、上記のポリイソシアネート組成物を用いて製造されるため、平滑性、耐薬品性および接着性に優れる。そのため、上記のポリウレタン樹脂およびポリイソシアネート組成物は、各種産業分野において、好適に用いられる。
なお、ポリウレタン樹脂を製造する場合においては、必要に応じて、さらに、公知の添加剤、例えば、可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤、離型剤、触媒、さらには、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などを、適宜の割合で配合することができる。これら添加剤は、ポリウレタン樹脂の原料成分の合成時に添加してもよく、あるいは、原料成分の混合時に添加してもよく、さらには、原料成分の混合物に添加してもよい。
そして、上記のポリウレタン樹脂は、例えば、塗料、接着剤、熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)、熱硬化性ポリウレタン樹脂、粘着剤、水性樹脂、光学用樹脂(レンズなど)、活性エネルギー硬化性樹脂、フォーム用樹脂(軟質フォーム、硬質フォームなど)各種マイクロカプセル、プラスチックレンズ、人工および合成皮革、RIM成形品、スラッシュパウダー、弾性成形品(スパンデックス)、柔軟ゲル、ロボット材料、モビリティー材料、ヘルスケア材料、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の基材樹脂など、各種産業分野において、好適に用いられる。
次に、本発明を、製造例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
また、各製造例および各準備例で採用される測定方法を下記する。
<GPC測定>
ポリイソシアネート組成物のサンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定し、得られたクロマトグラム(チャート)における各ピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率を求めた。
そして、ポリスチレン換算分子量400~500の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn400-500面積率)を、キシリレンジイソシアネートのアロファネート2分子体の含有割合とした。
また、ポリスチレン換算分子量300~400の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn300-400面積率)を、ウレトジオン2分子体の含有割合とした。
また、ポリスチレン換算分子量600~880の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn600-880面積率)を、アロファネート3分子体の含有割合とした。
さらに、ポリスチレン換算分子量500~600の範囲にピークトップを有するピークの面積率(Mn500-600面積率)を、イソシアヌレート3分子体の含有割合とした。
なお、GPC測定においては、サンプルを約0.04g採取し、メタノールでメチルウレタン化させた後、過剰のメタノールを除去し、テトラヒドロフラン10mLを添加して溶解させた。そして、得られた溶液を、以下の条件でGPC測定した。
(1)分析装置 : Alliance(Waters)
(2)ポンプ : Alliance 2695(Waters)
(3)検出器 : 2414型示差屈折検出器(Waters)
(4)溶離液 : Tetrahydrofuran
(5)分離カラム :Plgel GUARD + Plgel 5μmMixed-C×3本(50×7.5mm,300×7.5mm)
メーカー ; Polymer Laboratories
品番 ; PL1110-6500
(6)測定温度 : 40℃
(7)流速 : 1mL/min
(8)サンプル注入量 : 100μL
(9)解析装置 : EMPOWERデータ処理装置(Waters)
・システム補正
(1)標準物質名 : Polystyrene
(2)検量線作成方法 : 分子量の異なるTOSOH社製 TSKstandard Polystyreneを用い、リテンションタイムと分子量のグラフを作成。
(3)注入量、注入濃度 : 100μL、 1mg/mL
なお、実施例1のポリイソシアネート組成物のゲルパーミエーションクロマトグラムを図1に示す。
<Bi濃度>
アロファネート化触媒中のビスマスの含有割合(Bi濃度)を、以下の条件で、蛍光X線分析により求めた。
すなわち、JIS M 8230(1994)記載の標準ビスマス溶液を用いてスペクトリス社製 卓上XRF装置Epsilon4を用いて検量線を作成し、触媒中ビスマス濃度を算出した。
<粘度>
ポリイソシアネート組成物の粘度を、以下の条件で測定した。
すなわち、JIS K 7117-1(1999)記載のブルックフィールド形回転粘度計のB形で、25℃におけるサンプルの粘度を温調下で測定した。
<IR比>
ウレタン基/アロファネート基のIR比を、以下の条件で測定した。
すなわち、日本分光社製FT/IR-4100を用いてサンプルを測定し、3430cm-1付近の高さと、ウレタン基ピークと3270cm-1付近のアロファネート基ピークの高さとを、それぞれ算出し、ウレタン基/アロファネート基のIR比を測定した。
実施例1
撹拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、1,3-キシリレンジイソシアネート(三井化学社製、m-XDI(以下、m-XDI-1))100質量部と、イソブタノール(IBA)15.8質量部(当量比NCO/OH=5)と、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト(酸化防止剤)0.06質量部と、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](酸化防止剤)0.06質量部とを仕込み、75℃で3.5時間、ウレタン化反応させた。これにより、ウレタン化物を得た。
次いで、ウレタン化物を含む反応液に、アロファネート化触媒としてのXK-628(商品名、楠本化成社製、カルボン酸ビスマス、ビスマス含有割合31質量%)を0.06質量部添加し、90℃で11時間、アロファネート化反応させ、ウレタン結合のアロファネート結合への変換がほぼ完了したことを確認し(ウレタン基/アロファネート基のIR比率が0.1以下)、オルトトルエンスルホンアミド(反応停止剤)0.10質量部を添加してアロファネート化反応を停止させた。
得られた反応液から、薄膜蒸留装置(真空度:0.05kPa、温度150℃)により、未反応のイソブタノールおよび1,3-キシリレンジイソシアネートを留去(除去)し、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含むポリイソシアネート組成物を得た。得られたポリイソシアネート組成物中のキシリレンジイソシアネートのアロファネート2分子体、アロファネート3分子体およびイソシアネート2量体(ダイマー)の割合を、表1に示す。
実施例2~8および比較例1~5
表1に示す処方および反応条件に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含むポリイソシアネート組成物を得た。
なお、実施例2~5では、イソブタノール(IBA)の添加量を変更した。
また、実施例6では、イソブタノール(IBA)に代えて、2-エチルヘキサノール(2HEA)を添加した。
また、実施例7では、実施例1において薄膜蒸留装置(真空度:0.05kPa、温度150℃)で留去された未反応の1,3-キシリレンジイソシアネート(以下、m-XDI-2)を、m-XDI-1に代えて使用した。
また、実施例8では、アロファネート化触媒として、XK-628(商品名、楠本化成社製、カルボン酸ビスマス、ビスマス含有割合31質量%)に代えて、XK-628(商品名、楠本化成社製、カルボン酸ビスマス、ビスマス含有割合31質量%)とネオスタンU-600(商品名、日東化成製、カルボン酸ビスマス、ビスマス含有割合18質量%)との1:1(質量比)混合物(ビスマス含有割合25質量%)を、0.06質量部添加した。
また、比較例1~2では、イソブタノール(IBA)の添加量を変更した。
また、比較例3では、1,3-キシリレンジイソシアネートに代えて、ヘキサメチレンジイソシアネート(三井化学製)を用いた。
また、比較例4では、実施例1に対して、アロファネート化反応時間を、11時間から23時間に延ばした。
また、比較例5では、アロファネート化触媒として、XK-628(商品名、楠本化成社製、カルボン酸ビスマス、ビスマス含有割合31質量%)に代えて、ネオスタンU-600(商品名、日東化成製、カルボン酸ビスマス、ビスマス含有割合18質量%)を、0.06質量部添加した。また、アロファネート化反応時間を、11時間から23時間に延ばした。
<評価>
1.貯蔵安定性の評価
各ポリイソシアネート組成物を、比較的低温である5℃で24時間保管した。そして、保管後のポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性を、目視により確認し、以下の方法で評価した。評価の基準を下記する。
○:無色透明であった。
△:薄い白濁が観察された。
×:濃い白濁が観察された。
2.ポリウレタン樹脂の評価
(1)塗料
(1-1)ポリウレタン樹脂の製造
ベースコート層が形成された基材を準備し、そのベースコート層の上に、クリアコート層として、各ポリイソシアネート組成物を用いてポリウレタン層を形成した。
より具体的には、ポリイソシアネート(商品名:タケネートD-170N、イソシアネート基含有率20%)と、アクリルポリオール(商品名:オレスターQB1528T、水酸基価120mgKOH/g)とを、ポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が1.0となる割合で配合した。
さらに、得られた混合物に、粘度が30~50mPa・sとなるように酢酸ブチルを添加し撹拌した。
次いで、この混合液をJIS G 3313(2017)およびJIS K 5600-1-4(1999)に準拠した標準試験板(種類:電気亜鉛めっき鋼板、ぶりき板およびガラス板)(以下、試験板と略する。)に膜厚が約15μmになるようにスプレー塗装し、80℃で5分間乾燥した。
これにより、ベースコート層が形成された基材を作成した。
その後、クリアコートとして、各実施例および各比較例で得られたポリイソシアネート組成物と、アクリルポリオール(商品名:オレスターQC414T、水酸基価120mgKOH/g)とを、ポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が1.0となる割合で配合した。
さらに、得られた混合物に、粘度が30~50mPa・sとなるように酢酸ブチルを添加した。
次いで、ジブチル錫ジラウレート(ウレタン化触媒、和光純薬製)を、アクリルポリオールの固形分に対して50ppmとなるように配合し撹拌した。
次いで、得られた混合液を、膜厚が約35μmになるように、ベースコート層の表面にスプレー塗装し、80℃で30分間乾燥した。その後、乾燥塗膜を、23℃、相対湿度55%の室内にて、7日間静置した。
これにより、クリアコート層として、ポリウレタン樹脂を得た。
(1-2)平滑性
ポリウレタン樹脂の平滑性を、BYK-Gardner社製Wave-scan dualにて、Short wave(Sw)モードおよびLong wave(Lw)モードそれぞれで評価した。その結果を、表1に示す。
なお、SwおよびLwの数値が小さいほど、ポリウレタン樹脂の表面が平滑である。
(1-3)耐薬品性
ガーゼにメチルエチルケトンを含浸させ、ポリウレタン樹脂の表面を、1000g荷重をかけて往復させた。ポリウレタン樹脂が剥離または破けるまでの往復回数を耐薬品性として評価した。その結果を、表1に示す。
(2)接着剤
(2-1)ラミネートフィルムの製造
各ポリイソシアネート組成物を、硬化剤として準備した。
また、主剤としてのポリオール成分を、以下の方法で調製した。
すなわち、イソフタル酸283g、1,3-ブタンジオール352g、ネオペンチルグリコール191gを反応器に仕込み、窒素気流下190~220℃でエステル化反応させた。その後、所定の水を留出後、アジピン酸124g、セバシン酸172g、チタンテトラブトキシド0.01gを加え、窒素気流下180~220℃でエステル化反応させることにより、ポリエステルジオールを得た。ポリエステルジオールの平均官能基数は2.0であり、水酸基当量は250であった。
その後、得られたポリエステルジオール75.0gに、無水トリメリット酸5.8gを加えて、150℃で部分的に末端酸変性した酸変性体と、ポリオキシプロピレントリオール(グリセリンを開始剤としたプロピレンオキサイド付加体、水酸基価530)17.1gとを均一に混合することによりポリオール成分を得た。ポリオール成分の平均官能基数は2.29であり、水酸基当量は231、酸価は33、カルボキシル基当量は1650であった。
そして、各ポリイソシアネート組成物(硬化剤)と、ポリオール成分(主剤)とを、ポリイソシアネート組成物:ポリオール成分=100:50(質量比)で準備し、2液硬化型接着剤とした。
また、ポリイソシアネート組成物(硬化剤)と、ポリオール成分(主剤)とを混合した。
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムおよびアルミニウム箔の複合フィルムのアルミニウム箔側の表面に、無溶剤ラミネータ(岡崎機械工業社製、ノンソルラミネーターTNS-400-200)を用いて、上記の混合物を塗工(塗工温度50℃、塗工量約3.5g/m2)した。
その後、塗工面に、未延伸ポリプロピレンフィルム(厚み70μm、パイレンフィルム-CTP1146(東洋紡績社製))を貼り合わせて、ラミネートフィルムを得た。
また、得られたラミネートフィルムを50℃、3日間養生し、接着剤を硬化させた。
(2-2)常態密接着強度
ラミネートフィルムの、アルミニウム箔/未延伸ポリプロピレンフィルム間の接着強度を、25℃環境下、試験片幅15mm、引張速度300mm/min、T型剥離試験により測定した。その結果を、表1に示す。
(2-3)レトルト後の接着強度
ラミネートフィルムを、135℃で20分間、0.35MPaの加圧下で、8rpmにて回転させながら熱水殺菌した(レトルト試験)。
そして、レトルト試験の直後、アルミニウム箔/未延伸ポリプロピレンフィルム間の接着強度を、25℃環境下、試験片幅15mm、引張速度300mm/min、T型剥離試験により測定した。
また、レトルト試験の後、25℃で1週間放置した。その後、アルミニウム箔/未延伸ポリプロピレンフィルム間の接着強度を、25℃環境下、試験片幅15mm、引張速度300mm/min、T型剥離試験により測定した。
さらに、レトルト試験の後、25℃で8週間放置した。その後、アルミニウム箔/未延伸ポリプロピレンフィルム間の接着強度を、25℃環境下、試験片幅15mm、引張速度300mm/min、T型剥離試験により測定した。
これらの結果を、表1に示す。
なお、表1中、「デラミ」とは、未延伸ポリプロピレンフィルムの表層で剥離が生じ、接着性が十分ではなかったことを示す。