JP7219026B2 - 食後血糖値上昇抑制用組成物及びその製造方法 - Google Patents

食後血糖値上昇抑制用組成物及びその製造方法 Download PDF

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IPOD FERM BP-5445
本発明は、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)由来の多糖類を有効成分とする食後血糖値上昇抑制用組成物に関する。また、本発明は、前記食後血糖値上昇抑制用組成物の製造方法に関する。
厚生労働省の発表では、2015年の日本国内の糖尿病患者数は約316万人となり、糖尿病の疑いのあるヒトたちを含めると約2000万人と報告されている。さらに、糖尿病は先進国のみならず発展途上国においても蔓延しており、世界的にもますます大きな問題となっている。
でんぷんやショ糖などの消化・吸収される糖質を摂取すると血糖値が上昇するが、正常な場合はインスリンのはたらきにより食後2時間経つと正常値(110 mg/dL未満)に戻る。一方、糖尿病、または境界域のヒトでは、食後2時間でも血糖値が正常値に戻らない(食後高血糖)。そのような食後高血糖の状態が長く続くと、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中などの重症な合併症につながるリスクが高くなる。
したがって、食後の高血糖が糖尿病発症の危険因子であるだけでなく、心血管系疾患発症の危険因子と認識されている(非特許文献1)。
食後の高血糖を抑制するために、様々な医薬品が開発されてきた。α-グリコシダーゼ阻害薬であるアカルボース(非特許文献2)やボグリボース(非特許文献3)は、食後高血糖を抑制する医薬品として糖尿病患者の治療に広く使用されている。
一方、正常、または境界域のヒトが糖尿病の発症リスクを下げるために、食後の高血糖を抑制する様々な食品成分やサプリメントなども開発されてきた。
でんぷん由来の食物繊維である難消化性デキストリンは、食事とともに摂取すると、食事に含まれる炭水化物(でんぷん、ショ糖)の吸収を遅延させ、食後血糖値の上昇を緩やかにすることが報告されている(非特許文献4)。また、難消化性デキストリンは単独ではブドウ糖の吸収を抑制することはできないが、L-アラビノースとの併用により、でんぷん、ショ糖、ブドウ糖の摂取による血糖値上昇を抑制することができることが報告されている(特許文献1)。また以前より、水溶性難消化性多糖類が、血糖値上昇抑制効果を有することが報告されてきた(非特許文献5)。しかし、水溶性難消化性多糖類であればどんなものでもよい訳ではなく、その効果を有する難消化性多糖類は全体の一部であり、それらが有する抑制効果と物性(粘性)との間には、関連性はないことも報告されてきた(非特許文献6)。
様々な発酵食品に利用されている乳酸菌・ビフィズス菌は、食品としての日持ち向上や風味付与だけではなく、ヒトの健康増進に大きく貢献することで注目されている。乳酸菌・ビフィズス菌の中には多糖類を産生するものもあり、醗酵食品の物性付与や保健効果も有することが明らかとなっている。一方、乳酸菌・ビフィズス菌が産生する多糖自身が血糖値上昇抑制効果を有するか否かは不明である。多糖産生性のLactococcus lactis subsp. cremoris FC株で調製した醗酵乳が、マウスの血糖値上昇を抑制することが報告されている。しかしながら、その効果が多糖類によるものかは明らかではない。また、多糖を産生するその他の菌種でも同様に効果があるのかは不明である(非特許文献7)。
既に報告されている食後血糖値上昇抑制効果を有する食品素材を醗酵食品などに添加すれば、期待される効果を有する食品を製造することは可能である。しかしながら、この場合は、もともとの発酵食品が保有する風味や物性に与える影響が大きくなり、配合設計する上で大きな制約となることが課題であった。また、外部から新たな食品素材を添加することは、コスト上の問題も発生していた。
特開2005-289847
門脇孝、2009、糖尿病:診断と治療の進歩、日本内科学会雑誌、98:717-724 坂本敬子、田嶼尚子、2005、グルコシダーゼ阻害薬アカルボース、日本臨牀、63(増刊号2):451-456 中村二郎、2005、グルコシダーゼ阻害薬ボグリボース、日本臨牀、63(増刊号2):457-461 若林茂、1992、難消化性デキストリンの耐糖能に及ぼす影響 第I報:消化吸収試験および糖負荷試験による検討、日本内分泌学会誌、68:623-635 Jenkins, DJ.ら、1977、Decrease in postprandial insulin and glucose concentrations by guar and pectin、Annals of Internal Medicine、86(1):20-23 奥恒行、藤田温彦、細谷憲政、1983、グルコマンナン、プルランならびにセルロースの血糖上昇抑制効果の比較、日本栄養・食糧学会誌、36(4):301-303 Mori, M.,ら、Beneficial effect of viscous fermented milk on blood glucose and insulin responses to carbohydrates in mice and healthy volunteers: preventive geriatrics approach by "Slow Calorie", 2012, Geriatrics, DOI:10.5772/35426
したがって、乳酸菌が産生する多糖類自身に食後の血糖値上昇抑制効果を有することが期待されていた。そのような多糖類が見出せれば、その多糖類を産生する乳酸菌で発酵・製造した食品自身を食することで、食後の血糖値上昇抑制効果が期待できる。また、効果を有する多糖類の含有物や、乳酸菌の培養物、それらの処理物などを利用した新たな機能性食品の製造が可能となる。
非特許文献7では、Lactococcus lactis subsp. cremoris FC株で調製した醗酵乳が、マウスの血糖値上昇を抑制することが報告されているが、その効果が多糖類によるものかは明らかではない。また、多糖を産生するその他の菌種でも同様に効果があるのかについては、なんら示されていない。
本発明の課題は、食後血糖値の上昇を抑制する多糖類を産生する乳酸菌を見出し、当該乳酸菌が産生する多糖類の含有物、該乳酸菌の培養物、それらの処理物の少なくとも一つを含有することを特徴とする食後血糖値上昇抑制用組成物を提供することである。
本発明者らは、食後血糖値上昇抑制効果を有する多糖を産生する乳酸菌・ビフィズス菌を鋭意探索した結果、乳酸菌のラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)由来の多糖類に有効性を見出した。
すなわち、ラクトバチルス・ヘルベティカスの培養物から多糖類を調製し、その多糖類と麦芽糖を含む溶液、または麦芽糖のみを含む溶液をマウスに経口投与した後、経時的に血糖値を測定した。その結果、ラクトバチルス・ヘルベティカス由来の多糖類と麦芽糖を含む溶液を投与したマウスでは、麦芽糖のみを含む溶液を投与したマウスと比較して投与後の血糖値の上昇が抑制された。一方、ラクトバチルス・ヘルベティカスとは異なる菌種に由来する多糖類では、麦芽糖投与後の血糖値の上昇は抑制されなかった。
このように、本発明者らはラクトバチルス・ヘルベティカス由来の多糖類が食後血糖値の上昇抑制効果を有することを見出した。本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物では、糖尿病の発症、重篤な合併症である心血管系疾患の発症、そしてメタボリックシンドロームの発症を予防、改善することができる。
本発明によれば、新たな食後血糖値上昇抑制用組成物として、ラクトバチルス・ヘルベティカス由来の多糖類を有効成分とする食後血糖値上昇抑制用組成物を提供することができる。
Lactobacillus helveticus SBT2171(FERM BP-5445)由来の多糖類と麦芽糖をマウスに投与したときのマウスの血糖値の経時的な変化と曲線下面積である。 Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus SBT0098由来の多糖類と麦芽糖をマウスに投与したときのマウスの血糖値の経時的な変化と曲線下面積である。 Bifidobacterium longum SBT10802由来の多糖類と麦芽糖をマウスに投与したときのマウスの血糖値の経時的な変化と曲線下面積である。 Lactococcus lactis subsp. cremoris SBT0495由来の多糖類と麦芽糖をマウスに投与したときのマウスの血糖値の経時的な変化と曲線下面積である。 Streptococcus thermophilus SBT0113由来の多糖類と麦芽糖をマウスに投与したときのマウスの血糖値の経時的な変化と曲線下面積である。 ラクトバチルス・ヘルベティカス由来の多糖類とブドウ糖をマウスに投与したときの血糖値の経時的な変化である。 ラクトバチルス・ヘルベティカス由来の多糖類とショ糖をマウスに投与したときの血糖値の経時的な変化である。
本発明のラクトバチルス・ヘルベティカス由来の多糖類を有効成分とする食後血糖値上昇抑制用組成物、それを有する飲食品、医薬品について以下に詳細を説明する。
(食後血糖値上昇抑制用組成物)
本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物は、ラクトバチルス・ヘルベティカス由来の多糖類を含む組成物を用いることができる。
(食後血糖値上昇抑制用組成物の製造方法)
本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物の有効成分であるラクトバチルス・ヘルベティカス由来の多糖類の製造方法について説明する。
本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物の有効成分であるラクトバチルス・ヘルベティカス由来の多糖類は、ラクトバチルス・ヘルベティカスを培養することによって得ることができる。
培養に用いる菌は、ラクトバチルス・ヘルベティカスに属する菌であればどのようなものでもよいが、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171株が好ましい。ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171株は、ナチュラルチーズの成熟過程で優勢になり、熟成チーズの風味形成に影響を及ぼす乳酸菌である。したがって、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171株を利用した醗酵乳や乳酸菌飲料が製造可能であり、該乳酸菌の産生する多糖類を含む飲食品の製造が可能である。つまり、該乳酸菌の産生する多糖類を多く含有する飲食品を食することで、食後血糖値の上昇を抑制することも可能となる。ラクトバチルス・ヘルベティカス菌は、本発明の効果が得られる限りにおいて、単独で培養してもよく、他の菌と共培養してもよい。
本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物は、ラクトバチルス・ヘルベティカスの分泌物に含まれる多糖類を有効成分として用いる。多糖類とは、単糖類(グルコース及びマンノースなど)及び小糖類(二糖類、及びオリゴ糖など)以外の糖類を意味する。本発明の多糖類は、単糖が3以上、又は10以上結合したものであることができる。本明細書において「多糖類」には、多糖類に他の物質(タンパク質、脂質等)が結合しているものも含まれる。
培養に用いる培地は、ラクトバチルス・ヘルベティカスに属する菌を培養できるものであればどのようなものでもよい。ヒトが摂取するのであれば食品由来成分からなるものが好ましく、また、培養により得られた多糖類の純度を調整して用いる場合は、固体培地よりも液体培地が好ましい。
培養条件は、ラクトバチルス・ヘルベティカスに属する菌が多糖を産生するような条件であればどのようなものでもよい。後述する多糖の定量法と組み合わせて、得ようとする多糖の量や培養設備に応じて所望の条件を設定すれば良い。具体的には、培養温度は、例えば20℃~60℃、20℃~50℃、又は20℃~45℃である。培養時間は、例えば1時間~1週間、4時間~72時間、又は8時間~48時間である。培養速度及び製造効率の観点から、20℃~50℃で4時間~72時間、好ましくは20℃~45℃で8時間~48時間培養することが好ましい。
以下に、食後血糖値上昇抑制用組成物に用いる多糖類の製造方法を説明する。以下では、ラクトバチルス・ヘルベティカスに属する菌としてラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171、培地として脱脂乳培地を用い、得られた多糖を精製する態様を一例として示す。
滅菌した脱脂乳にラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171を接種し、37℃で一晩培養する。培養物にトリクロロ酢酸を最終濃度10%となるように添加し、1時間、室温で攪拌する。遠心によって得た上清に2倍量の冷エタノールを加え、4℃で一晩静置する。遠心によって得られた沈殿物を冷70%エタノールで2回洗浄した後、沈殿物を超純水に溶解し、3日間超純水に対して透析する。透析内液にDNase IとRNaseを添加し、37℃で6時間インキュベートすることで含まれる核酸を分解する。続いて、Proteinase Kを添加して37℃で16時間インキュベートし、含まれるタンパク質を分解する。加熱処理により酵素を不活性化し、遠心によって不溶物を除去した後に2倍量の冷エタノールを加え、4℃で一晩静置する。遠心によって得られた沈殿物を冷70%エタノールで2回洗浄した後、超純水に溶解し、3日間透析する。透析内液の凍結乾燥で得られた粉末が、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171株の産生する多糖類である。
得られた多糖類の糖含量は、一般的な糖含量の測定に用いられるフェノール硫酸法により測定できる。
(食後血糖値上昇抑制効果の評価)
本発明のラクトバチルス・ヘルベティカス由来の多糖による食後血糖値上昇抑制効果は、でんぷん、マルトデキストリン、麦芽糖、ショ糖、乳糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖のうちいずれかを投与した場合と、これら糖質のうちいずれかと該乳酸菌の多糖類を投与した場合における血糖値の経時的な変化、または得られた血糖値の経時的な変化(曲線)から求められる曲線下面積を比較し、多糖類の投与により血糖値の上昇が抑制された場合に、本発明の食後血糖値上昇抑制効果があると評価することができる。
上述のとおり、本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物は、ラクトバチルス・ヘルベティカスを培養することにより得ることができるが、培養されたものをそのまま本発明の有効成分として用いても、培養物中の多糖類の純度を所望のものに調製したうえで用いることもできる。すなわち、本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物は、ラクトバチルス・ヘルベティカス菌体(生菌体又は死菌体)と共に用いてもよく、又は多糖類のみを抽出して食品等に添加することもできる。
製剤化に際しては製剤上許可されている賦型剤、安定剤、矯味剤などを適宜混合して濃縮、凍結乾燥するほか、加熱乾燥して粉末にしてもよい。これらの乾燥物、濃縮物、ペースト状物も含有される。また、ラクトバチルス・ヘルベティカスが産生する多糖の血糖値上昇抑制効果を妨げない範囲で、賦型剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、懸濁剤、コーティング剤、その他の任意の薬剤を混合して 製剤化することもできる。剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤などが可能であり、これらを食前または食事とともに経口的に投与することが望ましい。
本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物は、食前食後または食事とともに、例えば食前60分~食後5分の間に摂取することで、食後血糖値上昇抑制効果を達成し得るので、血糖値上昇抑制用飲食品としても使用することができる。本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物は、食後血糖値上昇抑制用飲食品として食事とともに経口投与することが好ましい。また、血糖値を上昇させる糖分などの栄養素・成分と予め混合して用いることが好ましい。本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物は、ラクトバチルス・ヘルベティカスをスターターとして含む発酵乳又はチーズのように内部において有効成分である多糖類を発生させる飲食品と、多糖類を外部から添加する飲食品の両方を含む。本発明の食後血糖値上昇抑制用飲食品の形態としては、食後の血糖値の上昇抑制効果を妨げない範囲でどのようなものでもよく、当該乳酸菌の産生した多糖類自体、および当該乳酸菌の培養物、培養して得られた醗酵乳、チーズ自体、さらにこれらの多糖類、醗酵乳、チーズなどを素材として使用し、パンやスナック菓子、ケーキ、プリンなどにしてもよく、飲料、発酵乳、麺類、ソーセージなどの飲食品、さらには、各種粉乳のほか、乳幼児食品、栄養組成物などに配合することも可能である。
本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物の効果を発揮させるためには、成人の場合、該乳酸菌の産生した多糖類の量として0.01~10g摂取を食前または食事とともに摂取することが望ましい。例えば、液体の場合には、0.1~250mg/mLとすることが好ましく、固体の場合には、0.1~500mg/gとすることが好ましい。また、本発明の血糖値上昇抑制用組成物を配合して、医薬品に使用する場合も一日の投与量にあわせて適宜調節すればよい。乳酸菌の産生する多糖類は、古来、醗酵乳やチーズに含まれるものであり、本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物は安全性に問題は無いという特徴がある。
本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物では、好ましくは、食後15分まで、食後30分まで、又は食後60分までの血糖値上昇レベルを有意に抑制することができる。本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物は、好ましくは、食後血糖値上昇抑制用組成物を投与した対象において、投与しなかった対象と比較して、血漿中グルコース濃度を5分の3~3分の2に抑制することができる。本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物は、好ましくは、食後血糖値上昇抑制用組成物を投与した健康な対象において、投与30分後であっても血漿中グルコース濃度を正常値(140mg/dL未満)に維持することができる。
本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物は、安全性に問題は無く、どのような対象に対しても投与することが可能である。例えば、乳児、幼児、未成年、成人、及び65歳以上の高齢者等に対して投与することができる。また、健常人に対しても投与することができるが、糖尿病や心血管系疾患発症を発症する可能性のある対象又は既に発症している対象に対しても投与することができる。ヒト以外の動物には、飼料として与えることも可能である。
(食後血糖値上昇抑制用組成物の製造方法)
本発明の食後血糖値上昇抑制用組成物の製造方法は、ラクトバチルス・ヘルベティカスを培養する工程を含む。培養後、必要に応じて、産生された多糖類を抽出して食後血糖値上昇抑制用組成物を得る工程及び/又は産生された多糖類を濃縮する工程等を含んでもよい。
〔実施例1〕乳酸菌・ビフィズス菌の産生する多糖類の調製方法
使用した5種類の菌株を、表1に示した。前培養した各菌株の培養物を1000 mLの脱脂乳に3%播種し、表1に示した温度と時間にて培養した。培養後、培養物に100% (wt/vol) トリクロロ酢酸(Wako)を最終濃度10%となるように添加し、1時間、室温で攪拌した。遠心(18,480×g, 10min, 10℃)によって得た上清に2倍量の冷エタノールを加え、4℃で一晩静置した。遠心(5,251×g, 10min, 4℃)によって得られた沈殿物を冷70%エタノールで2回洗浄した後、沈殿物を超純水に溶解し、3日間透析(スペクトラ/ポア6、MWCO 3.5-5kDa)した。終濃度2μg/mL(1mM のMgCl2を含む50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5))となるようにDNase I(Roche社製; #11 284 932 001)とRNase(Sigma社製; R4875-100MG)を添加して、37℃で6時間インキュベートした。続いて、終濃度が200μg/mLとなるようにProteinase K(Sigma社製; P6556-100MG)を添加し、37℃で16時間インキュベートした。90℃、10分間の加熱処理により酵素を不活性化した後に遠心(47,900×g, 10min, 10℃)によって不溶物を除いた。上清に2倍量の冷エタノールを加え、4℃で一晩静置した。遠心(5,251×g, 10min, 4℃)によって得られた沈殿物を冷70%エタノールで2回洗浄した後、超純水に溶解し、3日間透析した。透析内液を凍結乾燥し、多糖類を得た。得られた多糖類の糖含量は、フェノール硫酸法によってブドウ糖換算で測定した。
Figure 0007219026000001
〔実施例2〕乳酸菌・ビフィズス菌の産生する多糖類の構成糖分析
各菌株の培養物から得られた2 mgの多糖類を、ねじ口ガラス試験管に分取した。これに2 Nの2 mLのトリフルオロ酢酸を加え、121℃で1.5 h加熱した。ガラス試験管を冷却した後、窒素を吹き付けることで乾固させた。乾固物を0.5mLの超純水に溶解した後、0.45μmのフィルターでろ過したものを分析用サンプルとした。得られた分析用サンプルをそれぞれ10倍から500倍に希釈した後、HPLC分析に供した。HPLCはDIONEX ICS-5000DPシステムを用いた。カラムはCarboPac PA1、検出器は電気化学検出器(パルスドアンペロメトリックモード)、移動相は20mM 水酸化ナトリウム水溶液でisocraticに流速1 mL/minで15min溶出した。単糖の標準品として、フコース(Fuc)、L-ラムノース(Rha)、D-ガラクトサミン(GalN)、D-グルコサミン(GlcN)、D-ガラクトース(Gal)、D-グルコース(Glc)、D-マンノース(Man)を用いた。濃度既知の各単糖を用いて作成した検量線から、サンプル中の各単糖の濃度を求めた。結果は表2に示した。
Figure 0007219026000002
〔実施例3〕乳酸菌・ビフィズス菌の産生する多糖溶液の粘度測定
25mLチューブ(IWAKI, Cat. No. 2363-025)に各0.5%多糖溶液を入れ、測定直前まで37℃の恒温器内に静置した。多糖溶液の粘度は、B型粘度計(東機産業社製:VISCOMETER TVB-10)を用いて測定した。ローターはSpindle No.M2(推奨粘度範囲:10~1000cP)を用い、回転速度60rpmで30秒後の粘度を測定した。結果は表2に示した。
〔試験例1〕食後血糖値上昇抑制効果の評価方法
ICRマウス (7~12週齢、オス:日本クレア社)を試験前日から16時間絶食させ、試験当日の絶食時体重に群間で差がないように2群に分けた(n=12/群)。コントロール群(Control群)には麦芽糖溶液(150 mg/mL)を10μl/gマウス体重で投与し、多糖類投与群にはマルトース溶液(150 mg/mL)と多糖溶液(15 mg/mL)の混合溶液を10μl/gマウス体重で投与した。採血はガラス毛細管(Drummond Scientific社製, 2-000-044-H, ヘパリンコート済)を用いて尾静脈から0min(絶食時)および糖負荷後15, 30, 60, 120, 180minと経時的に採取した。血液を遠心し、血漿中のグルコース濃度をグルコースCII-テストワコー(Wako)を用いて測定した。結果を図1~5に示す。
ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171株由来の多糖類と麦芽糖の混合液、または麦芽糖のみの溶液をマウスに経口投与した結果、投与15分、30分、および60分後の血糖値の上昇レベルは、多糖類の投与により統計的に有意に抑制された。また、曲線下面積についても、SBT2171株由来の多糖を投与したほうが、多糖を投与しない場合よりも有意に低下した。一方、他の4種類の菌株から調製した多糖では、麦芽糖投与後の血糖値の上昇を抑制する効果は認められなかった。これらの結果から、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171株由来の多糖類は、麦芽糖投与後の血糖値の上昇を抑制する効果があることが明らかとなった。また、麦芽糖ではなく、グルコース又はショ糖を用いた場合にも、SBT2171株由来の多糖類は、投与後の血糖値の上昇を抑制する効果を示した(図6及び7)。
〔実施例4〕サプリメントの製造
実施例1で得られた多糖類粉末30gに、ビタミンCとクエン酸の等量混合物40g、グラニュー糖100g、コーンスターチと乳糖の等量混合物60gを加えて混合した。混合物をスティック状袋に詰め、本発明の食後血糖値上昇抑制用サプリメントを製造した。
〔実施例5〕飲料の製造
表3に示した配合により原料を混合し、容器に充填した後、加熱殺菌して、本発明の食後血糖値上昇抑制用飲料を製造した。
Figure 0007219026000003
〔実施例6〕医薬品(カプセル剤)の製造
表4に示した配合により原料を混合し、造粒により顆粒状とした後、空カプセルに10mgずつ充填して、本発明の食後血糖値上昇抑制用医薬品を含むカプセル剤を製造した。
Figure 0007219026000004
本発明によれば、ラクトバチルス・ヘルベティカス由来の多糖類を有効成分とする新たな食後血糖値上昇抑制用組成物、及び該多糖類を有効成分とする食後血糖値上昇抑制用飲食品又は医薬品を提供することが可能となった。

Claims (2)

  1. ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171(FERM BP-5445)株由来の多糖類を有効成分とする食後血糖値上昇抑制用組成物であって、多糖類がガラクトースとグルコースから構成され、ガラクトースとグルコースのモル比が1:1.8である前記組成物。
  2. ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171(FERM BP-5445)株由来の多糖類を有効成分とする食後血糖値上昇抑制用組成物の製造方法であって、以下の工程を含む前記製造方法。
    (1)脱脂乳を含む培地にラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171(FERM BP-5445)株を接種して培養液を得る工程
    上記工程(1)で得られた培養液からタンパク質を除去又は酵素で分解する工程
    )タンパク質を除去又は酵素で分解した培養液にエタノールを添加して多糖類を含む画分を沈殿させる工程
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