以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の略左側面図であり、図2は、図1に示された苗移植機1の略平面図である。
本明細書においては、図1および図2に矢印で示されるように、苗移植機1の進行方向となる側を前方(F)とし、特に断りがない限り、苗移植機1の進行方向に向かって左側を「左」(図面においてL)といい、その反対側を「右」(図面においてR)という。
図1および図2に示されるように、苗移植機1は、走行車両2と、走行車両2の後部に取り付けられた苗植付部63を備えている。
図1に示されるように、走行車両2は、走行車両2の略中央に配置されたメインフレーム3と、メインフレーム3の後端部に取り付けられ、機体幅方向に延びる後部フレーム6と、左右一対の前輪8および左右一対の後輪9(図2参照)を備えている。
図1および図2に示されるように、メインフレーム3の上方には、フロアステップ60が設けられ、フロアステップ60の上方には、走行車両2の前部に配置されたフロントカバー47と、フロントカバー47の後方に配置された操縦部49と、フロントカバー47に覆われ、苗移植機1を制御するコントローラ87と、操縦部49の後方に配置された操縦席48とが設けられている。
操縦部49は、走行車両2の操舵を行うステアリングハンドル56と、苗移植機1を操作するための操作部54を備えている。
図1および図2に示されるように、操縦席48の後方には、圃場に肥料を供給する施肥装置26が設けられている。
図1に示されるように、操縦席48の下方にはエンジン7が設けられており、エンジン7から出力された駆動力は、フロアステップ60の下方に設けられたベルト式動力伝達機構4および油圧式無段変速機25を介してミッションケース30に伝動された後に、ミッションケース30内の副変速機(図示せず)で変速されて、左右一対の前輪8および左右一対の後輪9への走行用の動力と、苗植付部63を駆動するための動力とに分けて伝動される。
走行用の動力は、ミッションケース30の左右に設けられた前輪8に伝動される他、左右の後輪ギアケース51を介して左右一対の後輪9に伝動され、その結果、走行車両2が前進または後進する。
また、後輪ギアケース51に伝動された駆動力の一部は、施肥装置26に伝達される。
一方、駆動用の動力は、走行車両2の後部に設けられた植付クラッチ(図示せず)に伝動され、植付クラッチが入れられた際に苗植付部63へ伝動される。
図1に示されるように、苗植付部63は、昇降リンク装置5を介して走行車両2に連結されている。昇降リンク装置5は、上部リンクアーム85および左右一対の下部リンクアーム86を備え、苗植付部63を昇降可能に構成されている。
上部リンクアーム85および下部リンクアーム86の前側の端部は、後部フレーム6に固定されたリンクベースフレーム10に取り付けられ、他端は苗植付部63の下部に位置する上下リンクアーム11に取り付けられている。
コントローラ87は、電子油圧バルブ(図1および図2には図示せず)を制御するように構成され、コントローラ87によって電子油圧バルブが制御され、昇降油圧シリンダ12が油圧で伸縮されると、上部リンクアーム85が上下に回動し、その結果、苗植付部63が、非作業位置(例えば、苗移植機1が圃場の枕地で転回するときなど、苗の植付けを行わないときに上昇される位置)まで上昇され、または圃場に苗を植付けるのに好適な作業位置まで下降される。なお、本実施態様においては、苗植付部63が非作業位置にあるときには、その下端部がメインフレーム3の底部と略同一の高さに位置し、苗植付部63が作業位置にあるときには、その下端部が接地する。
図1および図2に示されるように、苗植付部63は、土付きのマット状の苗(以下、「苗マット」という。)を載置する苗載置台65と、苗載置台65の後方かつ下方に設けられた4つの植付装置64を備えている。
4つの植付装置64は機体幅方向に並べて設けられ、各植付装置64は、前後方向に並ぶ左右二対の植付具69を備え、前側の植付具69と後ろ側の植付具69は、交互に、苗載置台65の下端部に位置する苗を取出し、圃場に植え付けるように構成されている。
図3は、図2に示された矢印αから見た施肥装置26の縦断面図である。
また、図4(a)は、施肥ホッパを除いた施肥装置26の略平面図であり、図4(b)は、施肥装置26の排出ダクトおよび8つの繰出装置の略正面図である。
一方、図5は、施肥装置26の施肥伝動機構の近傍の略正面図である。
施肥装置26は、図4(a)に示されるように、左端部に設けられたブロワ41と、三つ又のダクトによって構成され、左側の開口がブロワ41に接続されたエア切換管14と、エア切換管14の右前部の開口に接続されたエアチャンバー42と、エア切換管14の右後部の開口に接続され、エアチャンバー42の後方に配置された排出ダクト16と、圃場に供給する肥料を貯留する施肥ホッパ27(図3および図5参照)と、施肥ホッパ27の下方に設けられた8つの繰出装置34(図4(a)および図5参照、図3には1つのみ図示)と、各繰出装置34の下方にそれぞれ設けられ、エアチャンバー42に接続された8本の接続管38(図3参照、1本のみ図示)と、前方端部が各接続管38の後端部に接続され、苗植付部63(図1参照)の下部まで延びる計8本の施肥ホース62(図3および図5参照)と、繰出装置34を駆動するための施肥伝動機構100(図5参照)と、圃場への施肥量を調節する施肥量調節機構200(図4(a)参照)を備えている。
図4(a)に示されるように、ブロワ41は、ブロワモータ43と、吸気ダクト13を備え、ブロワモータ43が駆動されると、吸気ダクト13を通じて吸引されたエアが、エア切換管14内へ供給される。
三つ又のエア切換管14は、内部に切換弁15を備え、切換弁15は、エア切換管14内において、エアチャンバー42への空気の流路を閉じる姿勢と、排出ダクト16への空気の流路を閉じる姿勢とに切換え可能に構成されている。
切換弁15がエアチャンバー42への空気の流路を閉じる姿勢をとる場合には、ブロワ41から供給されたエアが、排出ダクト16内を右方へ通過し、切換弁15が排出ダクト16への空気の流路を閉じる姿勢をとる場合には、ブロワ41から供給されたエアが、エアチャンバー42内へ供給される。エアチャンバー42内へ供給されたエアは、図3に示された接続管38を介して、施肥ホース62内へ供給される。
一方、施肥ホッパ27の下方に設けられた8つの繰出装置34はそれぞれ、施肥ホッパ27の下部と排出ダクト16とを結ぶ排出通路(図示せず)を開閉する排出シャッタ17(図3参照)と、外周面に繰出溝37を有する繰出ロール35(図3参照)を備え、施肥ホッパ27の下部に貯留された肥料が、重力によって繰出溝37内に供給されるように構成されている。
施肥伝動機構100(図5参照)を介して、繰出装置34が駆動される際には、繰出ロール35を左右方向に貫通する孔(図示せず)に挿通された繰出軸36(図3参照)が回転され、このとき、繰出ロール35が回転されるので、繰出溝37内に供給された肥料が、繰出装置34の下方へ繰り出される。
繰出ロール35によって繰り出された肥料は、図3に示された接続管38内に供給される。このとき、接続管38内には、前方のエアチャンバー42からエアが供給されているので、接続管38内に供給された肥料が、施肥ホース62を通じて、圃場へ供給される。
一方、切換弁15が、エアチャンバー42への空気の流路を閉じる姿勢に切り換えられた場合には、これに連動して、各繰出装置34の排出シャッタ17が開き、施肥ホッパ27内に貯留された肥料が、排出ダクト16内へ落下する。
このとき、排出ダクト16内には、エアが供給されているから、施肥ホッパ27から落下した肥料が、排出ダクト16の右端部において、下方に向けて開口する排出口20(図4および図5参照)から排出される。したがって、排出口20の下方に、予め、袋を用意しておけば、施肥ホッパ27内に貯留された肥料を回収することができる。
ここに、従来の苗移植機の施肥装置に設けられた排出ダクトは、三つ又のエア切換管に接続された左端部から、排出口に至るまで、内径が略同一に構成されており、排出ダクトの右側へ、すなわち、下流側へ向かうほど、排出ダクトの内部を通過する肥料の量が多くなり、かつ、排出ダクトは、その下流側で、下方へ湾曲するため、最も下流側に位置する繰出装置に近接する箇所から下流側の部分において、肥料が詰まることがあった。
これに対して、本実施態様においては、排出ダクト16は、図4(b)に示されるように、8つの繰出装置34のうちの最も右側に位置する繰出装置34(第一の繰出装置)に近接する部分から、下方へ広がる形状を有する。換言すれば、図4(b)に示されるように、上流側(左側、図面右側)から略一定の高さ位置に構成されている排出ダクト16の下端部が、最も右側に位置する繰出装置34に近接する部分から、排出口20へ向けて、下方へ下がる形状をなしており、排出ダクト16の上下方向の内径が、最も右側に位置する繰出装置34に近接する部分から、排出口20に向かうにつれて増大するように構成されている。
すなわち、最も右側に位置する繰出装置34よりも上流側である左側において、排出ダクト16の縦断面が略円形をなし、最も右側に位置する繰出装置34に近接する部分から下流側においては、排出ダクト16の縦断面が上下方向に延びる楕円形状をなしている。
したがって、排出ダクト16において、最も下流側に位置する繰出装置34に近接する箇所より下流側の部分において、肥料が詰まる事態を防止することができる。
なお、作業者は、図5に示された排出レバー21を操作して、図4に示された切換弁15を、エアチャンバー42への空気の流路を閉じる姿勢と、排出ダクト16への空気の流路を閉じる姿勢とに切り換えることができる。したがって、圃場に肥料を供給する場合には、排出レバー21を操作して、切換弁15を、排出ダクト16への空気の流路を閉じる姿勢に切り換え、施肥ホッパ27内に貯留された肥料を排出する場合には、エアチャンバー42への空気の流路を塞ぐ姿勢に切り換えればよい。
一方、図1に示されたミッションケース30から後輪ギアケース51に伝動された走行用の駆動力は、その一部が、以下のように構成された施肥伝動機構100によって、繰出ロール35を回転駆動させる繰出軸36(図3参照)へ伝達される。
図5に示されるように、右側の後輪ギアケース51は、その上部に、施肥装置26への駆動力を伝達するか否かを切換える施肥クラッチ装置155を備え、施肥クラッチ装置155の左端部には施肥伝動出力軸105が設けられている。
施肥伝動出力軸105には、施肥伝動駆動ロッド96が上下に往復移動可能に取り付けられており、施肥伝動駆動ロッド96を介して、機体幅方向に延びる中継ロッド104に動力が伝達される。
中継ロッド104と施肥伝動駆動ロッド96との間には、揺動連結支点ピン94を支点として上下方向に揺動する連結プレート95(図3および図5参照)が配置され、中継ロッド104の右側端部には、サブ駆動ロッド98(図3および図5参照)が連結されている。
サブ駆動ロッド98の上端部には、前部および後部が繰出回動ピン101(図3参照)周りに上下方向に揺動する繰出回動アーム99(図3参照)の後端部が連結され、さらに、繰出回動アーム99の前端部と、繰出ロール35を回転駆動させる繰出軸36が、施肥駆動アーム97によって連結されている。
施肥伝動機構100を、以上のように構成することによって、後輪ギアケース51に伝動された走行用の駆動力の一部を、施肥クラッチ装置155(図5参照)が繋がれたときに、繰出軸36へ伝達することができる。
一方、施肥装置26の8つの各繰出装置34によって繰り出され、圃場へ供給される肥料の量は、施肥量調節機構200によって、以下のようにして、増加され、または減少される。
図6は、繰出回動ピン101の位置と繰出回動アーム99前部の揺動量との関係を示す説明図であり、図6(a)は、繰出回動ピン101が比較的後方に位置する場合の繰出回動アーム99前部の揺動量を示す説明図であり、図6(b)は、繰出回動ピン101が比較的前方に位置する場合の繰出回動アーム99前部の揺動量を示す説明図である。
図4に示されるように、施肥量調節機構200は、ボールネジ18と、ボールネジ18を回転させる施肥量調節モータ103と、ボールネジ18の表面に形成された螺旋状の溝に螺合するボールナット19を備えている。
図3に示されるように、ボールナット19には、繰出回動ピン101が取り付けられており、施肥量調節モータ103が駆動することによって、ボールナット19がボールネジ18上を前後方向に移動されると、図3および図6に示された繰出回動ピン101が、ボールナット19とともに、前後方向に移動される。
図6(a)および図6(b)に示されるように、繰出回動アーム99には、左右方向に貫通する長穴102が設けられており、この長穴102内を左右方向に貫通するように、繰出回動ピン101が配置されている。したがって、繰出回動アーム99は、繰出回動ピン101周りに、その前部が上下方向に揺動可能に構成されている。なお、繰出回動ピン101の径は、長穴102の上端部および下端部に当接する大きさに構成されている。
図6(a)に示されるように、施肥量調節モータ103の駆動によって、繰出回動ピン101が後方に移動されると、繰出回動ピン101がより前方に位置している場合(図6(b)参照)に比して、繰出回動アーム99前部の上下方向の揺動量が増大する。
繰出回動アーム99前部の上下方向の揺動量が増大すると、繰出回動アーム99の前端部に取り付けられた施肥駆動アーム97(図3参照)の回動量が増大し、回動に要する時間が長くなる。
その結果、図5に示された施肥伝動駆動ロッド96が、上下方向に往復移動される頻度に対して、図3に示された繰出軸36および繰出ロール35が一回転される頻度が少なくなるため、各繰出装置34において、一定の時間に繰り出される肥料の量が少なくなる。
これに対して、図6(b)に示されるように、施肥量調節モータ103の駆動によって、繰出回動ピン101が前方に移動されると、繰出回動ピン101がより後方に位置している場合(図6(a)参照)に比して、繰出回動アーム99前部の上下方向の揺動量が減少する。
繰出回動アーム99前部の上下方向の揺動量が減少すると、繰出回動アーム99の前端部に取り付けられた施肥駆動アーム97(図3参照)の回動量が減少され、回動に要する時間が短くなる。
その結果、図5に示された施肥伝動駆動ロッド96が、上下方向に往復移動される頻度に対して、図3に示された繰出軸36および繰出ロール35が一回転される頻度が多くなるため、各繰出装置34において、一定の時間に繰り出される肥料の量が多くなる。
このように、施肥量調節モータ103によって、繰出回動ピン101を前後方向に移動させることによって、施肥装置26の8つの各繰出装置34(図4参照)における肥料の繰出量を、増大させ、あるいは、減少させることができる。
図7は、図1に示された苗移植機1の制御系、検出系、入力系、表示系および駆動系のブロックダイアグラムである。
図7に示されるように、苗移植機1の制御系は、苗移植機1全体の動作を制御するコントローラ87と、制御プログラムなどが格納されたROM92および種々のデータが格納されるRAM91を備えている。
図7に示されるように、苗移植機1の検出系は、ステアリングハンドル56が操舵された角度を検出するステアリングセンサ58と、後輪ギアケース51に内装され、後輪6の回転数をカウントする後輪回転センサ29と、繰出ロール35が回転される量を検出する繰出検知センサ107を備えている。
図7に示されるように、苗移植機1は、入力系として機能する操作部54を備え、操作部54は、設定部として機能するモニタ22と、第一の操作部および第二の操作部として機能する施肥調整スイッチ31を備えている。また、モニタ22は、苗移植機1の表示系として機能するディスプレイ(図1ないし図7には図示せず)を備えている。
図7に示されるように、苗移植機1の駆動系は、操縦席48の下方に設けられたエンジン7と、苗植付部35が昇降される際に、昇降油圧シリンダ12を伸縮させる電子油圧バルブ88と、油圧式無段変速機25内のトラニオン軸(図示せず)の開度を調整するHSTサーボモータ150と、ミッションケース30内に設けられた副変速機構の状態を切換える副変速モータ152と、施肥量調節機構200のボールネジ18を回転させ、施肥装置26による圃場への施肥量を調節する施肥量調節モータ103と、施肥クラッチ装置155を作動させる施肥クラッチモータ123を備えている。
図8は、図1に示された操作部54のモニタ22を示す図面である。
モニタ22は、ステアリングハンドル56の下方に設けられ、図8に示されるように、ディスプレイ44と、ジョグダイヤル45と、ジョグダイヤル45の上部に設けられたプッシュスイッチ50と、スピーカー(図示せず)を備えている。
図8には、ディスプレイ44に、施肥装置26による圃場への施肥量を調節するための画面が表示された状態が示されており、本実施態様においては、ディスプレイ44に表示される画面で、施肥量を設定可能に構成されている。
具体的には、作業者によって、ジョグダイヤル45が時計回りに、または反時計回りに回転操作されると、施肥量の調節画面に設けられた施肥量設定部46に表示される施肥量の数値(単位:kg/10a)が増大され、または減少され、さらに、プッシュスイッチ50が押圧操作されると、圃場への施肥量が設定される。
以上のようにして、施肥量設定部46の数値が変更され、圃場への施肥量が設定されると、コントローラ87によって、施肥量調節手段として機能する施肥量調節モータ103が制御され、図6に示された繰出回動ピン101が、設定された施肥量に対応する前後位置に移動されるように構成されている。
したがって、作業者は、圃場へ肥料を供給しつつ、苗を植付ける作業を行う前に、予め、モニタ22のジョグダイヤル45およびプッシュスイッチ50を操作して、任意の施肥量に設定することができる。
実際の圃場においては、部分的に、施肥装置26によって供給される肥料の量を減らしたいという需要があったが、これまでは、このような需要を満たすことが困難であった。
すなわち、圃場の出入口の近傍で苗を植付け、肥料を供給する際には、他の場所と同程度に肥料を供給しても、肥料が水とともに流れてしまい、肥料が無駄になってしまうため、走行中に、一時的に(部分的に)、施肥装置26による施肥量を減らすことが望ましく、また、毎年、圃場内の同じ場所で、すなわち、土壌の肥沃度が高い場所や、作土が深い場所で、稲が育ち過ぎ、倒伏してしまうことがあるため、このような場所においても、一時的に(部分的に)、施肥量を減らすことが望ましい。
しかしながら、施肥量を減らしたい場所において、モニタ22のジョグダイヤル45およびプッシュスイッチ50を操作して、施肥量を減少させ、それ以降の植付け部分に肥料を供給する前に、施肥量を戻さないと、供給される肥料の量が、全体的に、少なくなってしまうため、施肥量を減らしたい場所を通り過ぎる時点で、変更前の施肥量に戻さないと、作業を終えた後に、再び、肥料を追加で供給する必要があり、大変面倒であった。
このような状況に照らして、本実施態様にかかる苗移植機1においては、図1および図2に示される操作部54に、施肥量を減少させる施肥調整スイッチ31が設けられており、以下のようにして、施肥調整スイッチ31を操作することによって、走行車両2の運転中においても、容易に、一時的に(部分的に)、施肥量を減少(減肥)させることができるように構成されている。
図9(a)は、苗移植機1の操作部54に設けられた施肥調整スイッチ31の近傍の略平面図であり、図9(b)は、施肥調整スイッチ31が操作され、施肥量が減少されたときに、ディスプレイ44に表示される画面を示す図面である。
施肥調整スイッチ31は、図8に示されたモニタ22の左右方向中央部よりも右側で、かつ、図9(a)に示されるように、エンジン7(図1参照)を始動させるキーシリンダー24の左方に設けられている。
図9(a)に示されるように、施肥調整スイッチ31は、その前部32および後部33をそれぞれ押圧可能に構成されており、以下のように、2方向の入力が可能に構成されている。
本実施態様においては、施肥調整スイッチ31の後部33が押圧操作される度に、モニタ22のジョグダイヤル45およびプッシュスイッチ50を操作して設定された施肥量から、5%ずつ減少されるように構成されている。
一方、施肥調整スイッチ31の前部32が押圧操作されると、施肥調整スイッチ31の後部33が押圧操作されて減少された施肥量が、減少される前の施肥量、すなわち、モニタ22上で設定された施肥量に戻されるように構成されている。
例えば、モニタ22上で、50kg/10aに設定された状態で、作業者によって、施肥調整スイッチ31の後部33が一度押圧操作されると、施肥量調節モータ103によって、図6に示された繰出回動ピン101が移動され、47.5kg/10aの量の肥料が、圃場に供給される状態に変更される。そして、以後、施肥調整スイッチ31の後部33が押圧される度に、45kg/10a、42.5kg/10a、40kg/10aというように、モニタ22上で設定された施肥量より、施肥量が5%ずつ減少されるように構成されている。
本実施態様においては、このように施肥調整スイッチ31の後部33が押圧操作されることによって、モニタ22上で設定された施肥量から、最大で、50%まで施肥量を減少可能に構成されている。したがって、上述した例において、施肥調整スイッチ31の後部33が10回押圧操作され、50%減の状態である25kg/10aまで施肥量が減少された状態で、さらに、施肥調整スイッチ31の後部33が押圧操作された場合には、コントローラ87はその施肥量減少操作を無効にするように構成されている。
また、このとき、苗移植機1は、モニタ22のスピーカーからブザーを短音で「ピピピ」と鳴らして、作業者に、これ以上、施肥量を減少させることができない旨を警告するように構成されている。
さらに、本実施態様においては、施肥調整スイッチ31の後部33が押圧操作され、施肥量が減少されている間は、図9(b)に示されるように、モニタ22のディスプレイ44に、施肥量が減少中である旨と、そのときの施肥量の減少率が、常に表示されるように構成されている。
なお、図9(b)には、施肥調整スイッチ31の後部33が2回押圧操作され、その結果、モニタ22上で設定された施肥量より、施肥量が10%減少されたときの画面の状態が示されている。
さらに、本実施態様においては、施肥調整スイッチ31の後部33が押圧操作され、モニタ22上で設定された施肥量より、施肥量が5%ないし50%減少された状態で、施肥調整スイッチ31の前部32が押圧操作された場合には、上述のように、施肥量が、モニタ22上で設定された施肥量に戻されるように構成されている。
したがって、作業者は、圃場において、施肥量を減少したい場所を通過した後に、施肥調整スイッチ31の前部32を押圧操作することによって、施肥量が減少される前の施肥量に戻すことができる。
さらに、同様に、施肥調整スイッチ31の後部33が押圧操作され、モニタ22上で設定された施肥量より、施肥量が5%ないし50%減少された状態で、図1および図2に示された苗植付部63が、非作業位置に上昇された場合においても、施肥量が、モニタ22上で設定された施肥量に戻されるように構成されている。
ここに、圃場の枕地において、苗移植機1が転回される際には、通常、自動的に、または作業者によって、苗植付部63が非作業位置まで上昇される。
したがって、苗植付部63が非作業位置に上昇された場合には、施肥量が減少される前の状態に戻されるから、施肥調整スイッチ31の後部33が操作され、減肥された状態で、残りの圃場を最後まで走行してしまう事態を効果的に防止することができる。
さらに、本実施態様においては、図9(a)に示されたキーシリンダー24において、キーオフされ、エンジン7が停止された場合にも、施肥量が、モニタ22上で設定された施肥量に戻されるように構成されている。
本実施態様によれば、施肥調整スイッチ31の後部33が押圧操作される度に、モニタ22上で設定された施肥量から、施肥量が5%ずつ減少されるように構成されているから、作業者は、苗の植付け作業中に、施肥量を減らしたい場所で、施肥量を減少させたい割合に応じて、1回、または複数回にわたって施肥調整スイッチ31の後部33を押圧操作し、供給される肥料を減少させることによって、稲の倒伏を防ぐことができる。
さらに、本実施態様によれば、モニタ22のディスプレイ44の表示の状態に関わらず、施肥調整スイッチ31の後部33を押すだけで、施肥量を減少させることができるから、運転中であっても、圃場内の任意の場所において、容易に、かつ、短時間で、施肥量を減少させる操作を行うことができる。
また、本実施態様によれば、施肥調整スイッチ31の後部33を押圧操作するだけで、容易に、施肥装置26による圃場への施肥量を減少させることができるから、電気伝導度センサ、温度センサおよび超音波センサを走行車両2に設ける必要がなく、したがって、苗移植機1を安価に製作することができる。
さらに、本実施態様においては、施肥調整スイッチ31の後部33が操作され、施肥量が減少された状態で、施肥調整スイッチ31の前部32が押圧操作されると、施肥装置26による施肥量が、モニタ22上で設定された施肥量に戻されるように構成されているから、作業者は、施肥量を減少させたい場所を通過した後に、施肥調整スイッチ31の前部32を押圧操作することによって、容易に、かつ、短時間で、元の施肥量に戻すことができる。
また、本実施態様によれば、苗植付部63が、非作業位置に上昇された場合には、施肥装置26による施肥量が、モニタ22上で設定された施肥量に戻されるように構成されているから、圃場の枕地において、苗移植機1が転回され、苗植付部63が非作業位置に上昇されるときに、施肥装置26による施肥量が、モニタ22上で設定された施肥量に戻され、したがって、施肥量が減少された状態で、残りの圃場を最後まで走行してしまう事態を効果的に防止することができる。
さらに、本実施態様によれば、施肥量を減少させる際に用いる操作部材と、減少させた施肥量を元に戻したいときに用いる操作部材が、単一の操作部材である施肥調整スイッチ31で構成されているから、操作性が良い。
また、本実施態様においては、施肥装置26の排出ダクト16は、その排出口20に最も近い繰出装置34に近接する部分から、排出口20に向けて、排出ダクト16の下端部が下方に傾斜し、その結果、排出ダクト16の上下方向の内径が、排出口20に向かうにつれて増大するように構成されているから、排出口20に最も近い繰出装置34に近接する排出ダクト16の部分から、下流側の排出口20側において、肥料のつまりが発生する事態を防止することができる。
また、上述のように、排出口20に最も近い繰出装置34に近接する部分から、下流側にかけて、排出ダクト16の下端部が下方に傾斜することによって、上下方向の内径が増大するように構成されているが、通常、施肥装置26の排出ダクト16の排出口20は、排出ダクト16の上流側部分よりも下方に位置するように構成されており、肥料のつまりが発生するという事態を防止することを目的として、排出ダクト16の内径が、機体の前後方向もしくは左右方向に増大され、または排出ダクト16の上端部が上方に拡がる形状をなす場合のように、他の部材に干渉することがない。
図10は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の施肥装置26を示す図面であり、図10(a)は、施肥装置26の略右側面図である。
また、図10(b)は、施肥ホッパ26を除いた施肥装置26の略平面図であり、図10(c)は、施肥ホッパ26を除いた施肥装置26の略正面図である。
施肥装置26は、施肥ホッパ27(図10(a)参照)と、左右方向に並ぶ4つの繰出装置34と、施肥ホース40と、ブロワ41と、エア切換管14と、エアチャンバー42と、排出ダクト16と、肥料が排出される際に操作される排出レバー21(図10(c)参照)と、調節ハンドル166(図10(a)ないし図10(c)参照)と、目盛り197(図10(b)参照)を備えている。
本実施態様においては、図1ないし図9に示された前記実施態様の場合と異なり、施肥量調節モータ103ではなく、作業者によって、調節ハンドル166が回されることによって、施肥量を調節可能に構成されている。
図10(b)に示されるように、本実施態様においては、ブロワ41が、施肥装置26の左側の端部に、調節ハンドル166、排出レバー21および排出ダクト16の排出口20が、施肥装置26の右側の端部にそれぞれ、設けられている。さらに、本実施態様においては、肥料の試し繰出しを行う部分についても、施肥装置26の右側の端部に設けられており、施肥ホッパ27からの肥料の排出作業と、調節ハンドル166を用いた施肥量の調節と、肥料の比重の測定作業とを、すべて機体右側で行うことができるので、操作性が非常に良い。
図10(c)に示されるように、調節ハンドル166は、排出レバー21の前方で、かつ、左右方向内側、すなわち、左側に設けられており、このように配置することによって、調節ハンドル166が、排出レバー21でガードされ、調節ハンドル166の誤操作の防止が図られている。
また、調節ハンドル166は回転可能に、排出レバー21は前後方向に操作可能に構成されているので、互いに操作範囲が重なることがなく、操作性が良い。また、本実施態様においては、排出レバー21の直下に、排出ダクト16の排出口20が配置されているため、作業者は、排出レバー21を操作した直後に、排出口20に、容易に、肥料を回収する袋を用意することができる。
本実施態様にかかる苗移植機1においては、機体左右端部にそれぞれ、上下逆U字状をなす手摺り194(図10(a)には右側の手摺り194のみ図示)が設けられており、調節ハンドル166は、右側の手摺り194の左右方向内側(左側)で、かつ、図10(a)に示されるように、前後方向において、手摺り194の内側に設けられている。調節ハンドル166をこのように配置することによって、調節ハンドル166の誤操作を効果的に防止することができる。左右の手摺り194はそれぞれ、機体のフレームに取り付けられている。
図10(b)に示されるように、施肥装置26の施肥量は、目盛り197上に表示されるように構成され、調節ハンドル166が回転操作されると、針(図示せず)が目盛り197上を移動されることにより、施肥量の変化を確認可能に構成されている。
本実施態様においては、目盛り197は、上方から確認できるように、目盛り197および針は、上方に向けて配置されている。したがって、作業者は、機体上にいる場合、および機体から降りた場合のいずれにおいても、目盛り197を確認することができる。
図10(a)および図10(b)に示されるように、調節ハンドル166は、前方に向けられた状態(調節ハンドル166の回転軸が前後方向に延びる状態)で配置されており、したがって、作業者は、走行車両2を走行させながら、操縦席48から後方に手を伸ばして、調節ハンドル166を回転操作することができる。
また、本実施態様においては、調節ハンドル166が回転操作された際に、その駆動力を伝達する伝達駆動部材(図示せず)が、施肥装置26の右側の端部に配置されている。したがって、作業者がメンテナンスを行う際に、容易に、これらの部材をメンテナンスすることができる。なお、伝達駆動部材は、カバー156によって覆われている。
さらに、上述のように、本実施態様においては、調節ハンドル166が、右側の手摺り194の左右方向内側で、かつ前後方向内側に配置されているため、作業者は、機体から降りている場合には、機体左右方向外側、すなわち、右側から、上下逆U字状をなす右側の手摺り194の中に手を差し入れて、調節ハンドル166を操作することができる。
図11は、図10に示された実施態様にかかる左右一対の線引きマーカー23を示す図面であり、図11(a)は、走行車両2および左右一対の線引きマーカー23を示す略背面図である。
また、図11(b)は、左側の線引きマーカー23の線引き体の近傍の略左側面図であり、図11(c)は、左側の線引きマーカー23の線引き体の近傍の略背面図である。
図11(a)に示されるように、左右一対の線引きマーカー23はそれぞれ、走行車両2に取り付けられたマーカーロッド57と、マーカーロッド57の左右方向外側の端部に取り付けられた線引き体61と、識別剤を貯留するポンプ108と、左右方向内側の端部がポンプ108に接続され、マーカーロッド57に沿うように延びる案内パイプ52を備えている。
マーカーロッド57は、走行車両2に取り付けられた基端部59と、基端部59の左右方向外側の端部から下方へ延びる線引き体取付部61を備えている。
図11(a)において矢印付きの一点鎖線で示されるように、左右一対の線引きマーカー23は、前後方向に延びる軸(図示せず)周りに、上下方向に揺動可能に構成され、基端部59が略水平な姿勢をとるとき(以下、基端部59が略水平な姿勢をとり、線引き体53が圃場に接地するときの線引きマーカー23の姿勢を「作用姿勢」といい、線引き体53が上方に揺動されて、圃場に接地しないときの線引きマーカー23の姿勢を「非作用姿勢」という。)に、線引き体53が圃場に接地される。そして、線引き体53が圃場に接地された状態で、走行車両2が走行すると、線引き体53が圃場上で回転されることによって、圃場に線を引くことが可能に構成されている。
しかしながら、圃場の状態によっては、線引き体53が圃場上を回転された跡が圃場上に残りにくく、苗移植機1が転回された後に、線引き体53によって形成された跡を視認できず、苗移植機1を適切なラインで直進走行させることができないことがあった。
このような状況に照らして、本実施態様においては、ポンプ108に貯留された識別剤を、案内パイプ52内を通して、線引き体53の後方、すなわち線引き体53が通過した圃場の部分に供給可能に構成されている。
具体的には、線引きマーカー23が、非作用姿勢から作用姿勢へ切換えられたときに、ポンプ108から識別剤から噴射され、噴射された識別剤が、案内パイプ52内を左右方向外側へと移動される。
図11(b)または図11(c)に示されるように、案内パイプ52は、マーカーロッド57の基端部59の左右方向外側の端部において、下方、かつ、線引き体53の外周に沿って、線引き体53の後方に延びるように構成されている。したがって、案内パイプ52内を左右方向外側へ流された識別剤は、線引き体53の後方に配置された案内パイプ52の吐出口62から、圃場へ供給される。さらに、案内パイプ52をこのように配置することによって、案内パイプの損傷を防止し、識別剤を安定的に圃場上に供給することができる。
このように、線引きマーカー23が作用姿勢をとるときに、吐出口62から、識別剤が供給され続けることによって、圃場の畔際で苗移植機1が転回された後に、前の列を走行した際に供給された識別剤による線状の跡を、容易に視認することができるから、適切なラインで苗移植機1を走行させ、苗を適切な間隔で圃場上に植え付けることができる。
なお、識別剤は、圃場上の線引きマーカー23の回転跡が残りやすくする薬剤や、苗の植付け作業が終了した後に、自然と色が消える(分解される)ような着色剤によって構成することができる。
図12は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の制御系、検出系、駆動系、表示系、入力系および通信系のブロックダイアグラムである。
図12に示されるように、苗移植機1の制御系は、苗移植機1全体の動作を制御するコントローラ87と、制御プログラムなどが格納されたROM92および種々のデータが格納されるRAM91を備えている。
図12に示されるように、苗移植機1の検出系は、ステアリングハンドル56が操舵された角度を検出するステアリングセンサ58と、後輪ギアケース51に内装され、後輪6の回転数をカウントする後輪回転センサ29と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機130と、土壌センサ114と、苗植付部63の各植付装置ごとに、動力を伝達するか否かを切り換える畔クラッチ(図示せず)の入切を検出する畔クラッチセンサ113を備えている。GNSS受信機130は、測位衛星から受信したデータをコントローラ87に出力するように構成されている。
図12に示されるように、土壌センサ114は、電気伝導度センサ115と、深度センサ116と、圃場の温度を計測する温度センサ117を備えている。深度センサ116は、超音波センサによって構成され、圃場表面までの距離、すなわち、圃場の深さを検出する。
コントローラ87は、圃場の各位置において、電気伝導度センサ115、深度センサ116および温度センサ117からの出力信号に基づき、施肥装置26による圃場への施肥量を逐次調節可能に構成されている(可変施肥)。
図12に示されるように、苗移植機1の駆動系は、操縦席48の下方に設けられたエンジン7と、ステアリングハンドル56を回転させる操舵モータ201と、苗植付部35が昇降される際に、昇降油圧シリンダ12を伸縮させる電子油圧バルブ88と、油圧式無段変速機25内のトラニオン軸(図示せず)の開度を調整するHSTサーボモータ150と、ミッションケース30内に設けられた副変速機構の状態を切換える副変速モータ152と、施肥量調節機構200のボールネジ18を回転させ、施肥装置26による圃場への施肥量を調節する施肥量調節モータ103を備えている。
図12に示されるように、苗移植機1は、表示系および入力系として機能するモニタ22を備えている。作業者は、モニタ22上で苗移植機1の種々の情報を確認し、苗移植機1の状態を設定することができる。モニタ22はステアリングハンドル56の近傍に設けられている。
図12に示されるように、苗移植機1の通信系は、苗移植機通信部131と、タブレット型のパーソナルコンピュータにより構成された端末112を備え、苗移植機通信部131と端末112は、Bluetooth接続により、相互にデータを送受信することができる。端末112はタッチパネル式のディスプレイ(図示せず)を備えている。
本実施態様にかかる苗移植機1においては、GNSS受信機130からの出力信号に基づき、コントローラ87によって操舵モータ201が制御されることによって、ステアリングハンドル56の自動直進アシスト(自動操舵)が可能に構成されている。
ここに、本実施態様においては、基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインの始点は、ステアリングハンドル56の自動操舵が行われていないときに、更新され続け、自動操舵が行われているときには、始点の更新が停止されるように構成されている。
さらに、本実施態様にかかる苗移植機1においては、作業者は、施肥装置26によって圃場へ肥料を供給する前に、予め、端末112と苗移植機通信部131との間でデータの送受信が行われるアプリケーションを用いて、端末112上で、可変施肥を行うにあたって必要な情報、すなわち、施肥装置26によって肥料を供給する圃場名、圃場の単位面積当たりの施肥量(基本施肥量)、肥料の比重、試し繰出量および減肥率を設定することができる。
図13(a)は、図12に示された苗移植機1の端末112のディスプレイに表示される「可変施肥設定画面」を示す図面であり、図13(b)は、「肥料選択画面」を示す図面である。
図13(a)に示されるように、「可変施肥設定画面」には、画面上部に配置された接続状態表示部142と、可変施肥を行うにあたって必要な情報を、モニタ22と端末112のどちらで設定可能な状態であるかを示す操作設定状態表示部143と、GNSS受信機130によって受信された電波の強度を表示する電波強度表示部144と、施肥装置26によって肥料を供給する圃場名を設定する圃場名設定部135と、圃場名設定部135の右方に設けられた検索スイッチ137と、供給される肥料の情報が表示される肥料情報表示部136と、画面右側に配置され、田植えを開始する際に押圧操作される田植開始スイッチ141と、田植開始スイッチ141の下方に配置され、主要な操作画面以外の画面へ遷移する複数のスイッチを有する画面遷移スイッチ群145が設けられている。
本実施態様においては、端末112と苗移植機通信部131との接続状態が、接続状態表示部142に、「未接続」「接続済」「応答なし」の3種類のいずれかの文字列で示され、「未接続」または「応答なし」である場合には、端末112は、圃場名設定部135、肥料情報表示部136、検索スイッチ137および田植開始スイッチ141の押圧操作を受け付けない。なお、本実施態様においては、端末112は、接続状態表示部142、操作設定状態表示部143および電波強度表示部144をディスプレイに常時表示するように構成されている。
操作設定状態表示部143には、可変施肥を行うにあたって必要な情報を、モニタ22上で設定可能な「本機モード」と、端末112上で設定可能な「タブレットモード」の2つのうち、現在どちらのモードに設定されているかが表示される。「本機モード」においては、端末112は、圃場名設定部135、肥料情報表示部136、検索スイッチ137および田植開始スイッチ141の押圧操作を受け付けない。
圃場名設定部135においては、施肥装置26によって肥料を供給する圃場名を、以下の3つの方法によって設定可能に構成されている。
具体的には、すでに端末112に登録されている圃場リストから設定する方法と、圃場名をテキストで入力する方法(新規作成)と、以下に説明を加える検索スイッチ137を用いて設定する方法によって、圃場名が設定される。このように、3つの方法によって圃場名を設定可能に構成することによって、状況に応じて、方法を使い分けることができ、したがって、圃場名を速やかに設定することができる。
図13(a)に示された検索スイッチ137が押圧操作されると、すでに登録されている複数の圃場の中から、GNSS受信機130によって取得した位置データに基づき、苗移植機1の最寄りの圃場を自動的に検索し、圃場名設定部135に、最寄りの圃場の名前を表示するように構成されている。
このように、「可変施肥設定画面」上で、検索スイッチ137がアイコンを用いて示されていることによって、小さい表示スペースであっても、作業者は、かかるスイッチが、圃場を検索するためのスイッチであることを明確に理解することができる。
また、本実施態様においては、図13(a)に示されるように、「可変施肥設定画面」上で、検索スイッチ137の領域内に、アイコンとともに「圃場検索」の文字列が表示されているが、圃場名設定部135を押圧操作され、その結果表示される「圃場名編集画面」(図示せず)においては、かかるアイコンとともに「最寄りの圃場を検索」の文字列が、その領域内に示された検索スイッチ137が表示されるように構成されている。すなわち、「可変施肥設定画面」と、「圃場名編集画面」において、それぞれの検索スイッチ137の領域に、同一のアイコンが表示されることによって、領域に表示される文字列が異なっていても、同一の機能を発揮するスイッチであることを作業者に認識させることができる。
図13(a)に示されるように、肥料情報表示部136は、選択された肥料の名称を表示する肥料名表示部138を備えており、肥料名表示部138が押圧操作されると、端末112のディスプレイの表示が、図13(b)に示された「肥料選択画面」に遷移するように構成されている。
図13(b)に示されるように、「肥料選択画面」には、マスターデータ(農薬マスター)としてすでに登録されている肥料名を表示する肥料リスト表示部139と、肥料リスト表示部139内に表示された複数の肥料の中から、押圧操作によって選択された肥料に関する情報を表示する被選択肥料情報表示部140と、選択された肥料に設定し、「可変施肥設定画面」に遷移する(戻る)ための決定スイッチ125が設けられている。
図13(b)に示されるように、被選択肥料情報表示部140には、選択された肥料の「比重(設定値)」、「試し繰出量」、「比重(試し繰出)」およびすでに登録されている「メモ」についての情報が表示されるように構成されている。したがって、作業者は、決定スイッチ125を押圧操作して、図13(a)に示された肥料情報表示部136を確認することなく、図13(b)に示された「肥料選択画面」の被選択肥料情報表示部140を確認することで、「比重(設定値)」、「試し繰出量」、「比重(試し繰出)」および「メモ」についての情報を把握することができる。
肥料リスト表示部139に表示された複数の肥料の中から、任意の肥料が選択された状態で、作業者によって、決定スイッチ125が操作され、「可変施肥設定画面」に画面が遷移された際には、肥料情報表示部136に、選択された肥料の比重および試し繰出量が自動的に表示されるように構成され、操作性の向上が図られている。
図14(a)は、図12に示された苗移植機1の端末112のディスプレイに表示される「基本施肥量を設定する画面」を示す図面である。
本実施態様においては、端末112は、「可変施肥設定画面」上で、肥料情報表示部136内の「基本施肥量」と表示された箇所が押圧操作されると、図14(a)に示された「基本施肥量を設定する画面」をディスプレイに表示するように構成されている。
図14(a)に示されるように、「基本施肥量を設定する画面」においては、設定される施肥量を表する施肥量表示部126と、設定される施肥量を増減するためのスライダー121と、増加スイッチ118および減少スイッチ119が設けられている。
「基本施肥量を設定する画面」においては、スライダー121を左右にスライド(ドラッグ)させるか、または増加スイッチ118と減少スイッチ119を押圧操作することによって、設定する施肥量の値を増減可能に構成され、スライダー121または増加スイッチ118および減少スイッチを用いて設定された値は、施肥量表示部126に直ちに表示される。
このように、スライダー121と、増加スイッチ118および減少スイッチ119をいずれも操作可能に構成されていることによって、スライダー121をスライドさせて施肥量を大まかに設定した後に、増加スイッチ118または減少スイッチ119を押圧操作して施肥量を微調整することができる。
また、スライダー121を用いて施肥量を増減させる場合には、増加スイッチ118または減少スイッチ119を何度も押圧操作することなく、容易かつ直感的に施肥量を増減させることができる。
一方、増加スイッチ118または減少スイッチ119を押圧操作して、施肥量を増減させる場合には、スライダー121を使用する場合に比して、施肥量の数値を容易に微調整することが可能である。
本実施態様においては、増加スイッチ118または減少スイッチ119を押圧操作して、増加または減少する変化量を、変化量切換えスイッチ124を押圧操作して切換え可能に構成されている。
具体的には、変化量切換えスイッチ124が押圧操作される度に、増加スイッチ118または減少スイッチ119が一度押圧操作されたときの施肥量の変化量が、1kg単位と0.1kg単位との間で切換えられる。
変化量切換えスイッチ124が操作された結果、増加スイッチ118または減少スイッチ119の操作によって、施肥量が1kg単位で増加または減少されるよう設定されている場合には、増加スイッチ118の表示領域内に「+1」と表示され、減少スイッチ119の表示領域内に「-1」と表示される。
これに対して、増加スイッチ118または減少スイッチ119の操作によって、施肥量が0.1kg単位で増加または減少されるよう設定されている場合には、増加スイッチ118の表示領域内に「+0.1」と表示され、減少スイッチ119の表示領域内に「-0.1」と表示される。
スライダー121、または増加スイッチ118もしくは減少スイッチ119を用いて、所望の施肥量に設定された後に、図14(a)に示された決定スイッチ124が押圧操作されることによって、はじめて、端末112の記憶部(図示せず)に、設定された施肥量のデータが書き込まれ、その後に、設定された施肥量のデータが苗移植機通信部131へ送信されるように構成されている。すなわち、決定スイッチ124が押圧操作されるまでは、端末112の記憶部に、施肥量の設定値に関するデータは書き込まれず、苗移植機通信部131への設定された施肥量のデータの送信も行われない。このように構成することによって、実際に、施肥装置26による施肥量が誤って変更される事態の防止が図られている。
図14(a)に示されるように、「基本施肥量を設定する画面」の右上部には、「×」によって表される「閉じるスイッチ127」が設けられており、閉じるスイッチ127が押圧操作されることによって、「基本施肥量を設定する画面」が閉じられるように構成されている。
ここに、スライダー121または増加スイッチ118もしくは減少スイッチ119を用いて、施肥量の設定値が変更された場合で、決定スイッチ124が操作されることなく、閉じるスイッチ127が操作された場合には、端末112は、ディスプレイに、施肥量が変更されていない旨と、「基本施肥量を設定する画面」を閉じるか否かを問う旨と、「はい」のスイッチおよび「いいえ」のスイッチをそれぞれダイアログボックス内に表示するように構成されている。
このとき、「はい」のスイッチが押圧操作された場合には、端末112は、記憶部に、設定された施肥量のデータを書き込むことなく、「基本施肥量を設定する画面」を閉じ、「いいえ」のスイッチが押圧操作された場合には、ダイアログボックスの表示をなくし、ディスプレイ上に、「基本施肥量を設定する画面」を再び表示する。このように構成することによって、作業者に、決定スイッチ124の操作を促すことができる。
以上、図14(a)に示された「基本施肥量を設定する画面」における表示と操作について詳細に説明を加えたが、同様にして、肥料情報表示部136内の「比重」および「試し繰出量」と表示された箇所が押圧操作され、その結果表示された「比重を設定する画面」および「試し繰出量を設定する画面」においても、作業者は、同様にして、スライダー121、増加スイッチ118、減少スイッチ119、変化量切換えスイッチ124、決定スイッチ124および閉じるスイッチ27を操作して設定し、または設定画面を閉じることができる。
一方、図14(b)は、端末112のディスプレイに表示される「減肥率を設定する画面」を示す図面である。
本実施態様においては、端末112は、「可変施肥設定画面」上で、肥料情報表示部136内の「減肥率」と表示された箇所が押圧操作されると、図14(a)に示された「減肥率を設定する画面」をディスプレイに表示するように構成されている。
図14(b)に示されるように、「減肥率を設定する画面」においては、設定される減肥率を表する減肥率表示部132と、増加スイッチ118および減少スイッチ119が表示されている。
作業者は、増加スイッチ118または減少スイッチ119を押圧操作することによって、減肥率を増加させ、または減少させることができる。
図14(b)に示されるように、「減肥率を設定する画面」の下部には、左から、減肥なしスイッチ129と、標準スイッチ128と、決定スイッチ124が設けられている。
減肥なしスイッチ129が押圧操作されると、減肥率1ないし3がすべて0%に設定される。したがって、作業者は、減肥率1ないし3の各項目を、減少スイッチ119を何度も押圧操作して0%まで減少させることなく、減肥なしスイッチ129を一度押圧操作することによって、容易かつ短時間で、減肥率1ないし3を0%に設定することができる。
一方、標準スイッチ129が押圧操作されると、図14(b)に示されるように、減肥率1ないし3がそれぞれ、一般的に広く用いられている減肥率である30%、20%、10%に設定される。したがって、作業者は、減肥率1ないし3の各項目を、増加スイッチ118または減少スイッチ119を押圧操作することなく、減肥なしスイッチ129を一度押圧操作することによって、容易かつ短時間で、かかる減肥率に設定することができる。
以上のようにして、増加スイッチ118、減少スイッチ119、減肥なしスイッチ129または標準スイッチ129を用いて、所望の減肥率に設定された後に、図14(a)に示された決定スイッチ124が押圧操作されることによって、はじめて、端末112の記憶部に、設定された減肥率のデータが書き込まれ、その後に、設定された減肥率のデータが苗移植機通信部131へ送信されるように構成されている。すなわち、決定スイッチ124が押圧操作されるまでは、端末112の記憶部に、減肥率の設定値に関するデータは書き込まれず、設定された減肥率のデータが苗移植機通信部131へ送信されない。このように構成することによって、減肥率が誤って設定される実態の防止が図られている。
図14(b)に示されるように、「減肥率を設定する画面」においても、「基本施肥量を設定する画面」と同様に、その右上部に、「×」によって表される「閉じるスイッチ127」が設けられており、閉じるスイッチ127が押圧操作されることによって、減肥率を設定する画面が閉じられるように構成されている。
ここに、増加スイッチ118、減少スイッチ119、減肥なしスイッチ129または標準スイッチ129を用いて、減肥率が設定された場合で、決定スイッチ124が操作されることなく、閉じるスイッチ127が操作された場合には、端末112は、「基本施肥量を設定する画面」の場合と同様に、ディスプレイに、減肥率が変更されていない旨と、「減肥率を設定する画面」を閉じるか否かを問う旨と、「はい」のスイッチおよび「いいえ」のスイッチをそれぞれ、ダイアログボックスに表示するように構成されている。
このとき、「はい」のスイッチが押圧操作された場合には、端末112は、記憶部に、設定された減肥率のデータを書き込むことなく、ディスプレイに「可変施肥設定画面」を表示し、「いいえ」のスイッチが押圧操作された場合には、ダイアログボックスの表示をなくし、ディスプレイ上に、減肥率を設定する画面を再び表示する。このように構成することによって、作業者に、決定スイッチ124の操作を促すことができる。
一方、図14(c)は、「可変施肥設定画面」に表示されるダイアログボックスを示す図面である。
一般的に、施肥装置によって圃場に供給される施肥量は、湿度や施肥装置の状態によって、わずかに変動する。また、可変施肥においては、圃場の各位置に適切な量の肥料を供給するために、肥料の精度の高い比重の値を入力することが非常に重要である。
したがって、本実施態様においては、端末112は、ディスプレイに、図13(a)に示された「可変施肥設定画面」(可変施肥に必要な情報、すなわち、圃場、基本施肥量、比重、試し繰出量および減肥率などを設定する画面)を表示する際には、その都度、図14(c)に示されたダイアログボックスを表示し、作業者に、繰出確認(肥料の試し繰出し)を行うことを促すように構成されている。
図14(c)に示されるように、ダイアログボックスの下部には、確認スイッチ133が設けられており、確認スイッチ133が押圧されると、はじめて、かかるダイアログボックスを非表示にし、「可変施肥設定画面」において、可変施肥に必要な情報を設定可能に構成されている。
確認スイッチ133の上方には、チェックボックス134が設けられており、チェックボックス134を押圧操作されて、その結果、図14(c)に示されるように、チェックボックス134にチェックマークが表示された状態で、確認スイッチ133が押圧操作されることによって、以後、「可変施肥設定画面」において、図14(c)に示されたダイアログボックスが表示されないように構成されている。このように構成することによって、可変施肥が行われるにあたって、施肥装置26の使い方を正しく理解している作業者に、ダイアログボックスに対して煩わしさを感じさせる事態の防止が図られている。
ここに、作業者が、自身の農作業に関する情報を、インターネットに接続されたサーバーに入力し、必要な時に、その情報を確認することができる「アグリノート」というサービスが存在し、従来の苗移植機においては、「アグリノート」と連携された際には、「アグリノート」内で予め計画された比重の値が端末に設定され、作業者が端末上で比重を変更できない場合があった。
これに対して、本実施態様においては、「アグリノート」と連携されたときには、図14(c)に示されたダイアログボックスに、「比重(試し繰出)を優先する」を選択可能なラジオボタンを別途表示し、「比重(試し繰出)を優先する」が選択された場合には、試し繰出量の値を端末112上で設定(変更)可能に構成されている。したがって、より精度の高い可変施肥を行うことが可能になる。
さらに、作業者が、通常、肥料の比重の値を端末上で設定する際には、肥料袋に記載された比重の値を設定する場合と、施肥装置の試し繰出しによって、肥料の比重を計算して設定する場合があるが、本実施態様においては、「比重」の項目に対して数値の設定が行われた場合には、「比重(設定値)」と表示し、「試し繰出量」の項目に対して数値の設定が行われた場合には、「比重(試し繰出)」と表示するように構成されている。このように構成することによって、設定された比重の値が、いずれの方法によって設定されたものであるかを確認することができる。なお、図13(a)には、「試し繰出量」が押圧され、「試し繰出量を設定する画面」上で数値が設定され、その結果、「可変施肥設定画面」に「比重(設定値)」と表示された状態が示されているが、「比重を設定する画面」において数値の設定が行われた場合には、上述のように、「可変施肥設定画面」には「比重(設定値)」と表示される。
以上のようにして、可変施肥が行われる前に、作業者によって、必要な情報が端末112上で設定された後に、図13(a)に示された田植開始スイッチ141が押圧操作されると、端末112は、苗移植機1の可変施肥作業の状態が1つにまとめられた「可変施肥作業画面」をディスプレイに表示するように構成されている。
図15(a)は、図12に示された苗移植機1の端末112のディスプレイに表示される「可変施肥作業画面」を示す図面であり、図15(b)は、「作業実績作成画面」を示す図面である。
図15(a)に示されるように、「可変施肥作業画面」には、その上部に配置された接続状態表示部142、操作設定状態表示部143および電波強度表示部144と、肥料情報表示部136と、基準値の計測状態を示す基準値計測状態表示部146と、画面下部に配置された施肥量グラフ表示部147、作土深グラフ表示部148および肥沃度グラフ表示部149と、画面右側に配置され、田植えを中断する際に押圧操作される田植中断スイッチ153と、田植終了が終了する際に押圧操作される田植終了スイッチ154と、基準値を手動計測する際に押圧操作される手動計測開始スイッチ167と、画面遷移スイッチ群145が設けられている。
図13(a)に示された「可変施肥設定画面」と同様に、「可変施肥作業画面」の上部には、接続状態表示部142と、操作設定状態表示部143および電波強度表示部144が表示されており、画面が遷移されても、常に必要な情報が、略同一の位置に表示されるから、新規の作業者であっても、必要な情報を容易に把握することができる。
操作設定状態表示部143には、「可変施肥設定画面」の場合と同様に、「本機モード」と、「タブレットモード」のいずれに設定されているかが表示され、「本機モード」においては、端末112は、肥料情報表示部136、田植終了スイッチ154、手動計測開始スイッチ167および田植開始スイッチ141の押圧操作を受け付けない。
本実施態様においては、可変施肥が行われるにあたって、田植開始スイッチ141が押圧操作された後に、基準値が取得されていない間(条件1)は、基準値計測状態表示部146に「基準値未計測」の文字列が表示され、基準値が手動で計測されている間(条件2)は、「基準値手動計測中(中速で走行してください」の文字列が表示され、基準値が自動で計測されている間(条件3)は、「基準値自動計測中」の文字列が表示され、基準値がすでに計測された後(条件4)においては、「基準値計測済」の文字列が表示される。このように構成することによって、現在の基準値の計測状態を容易に把握することができる。
一方、田植中断スイッチ153が押圧操作された場合(条件5)には、基準値計測状態表示部146に「作業中断」の文字列が表示される。したがって、作業者は、このとき、田植作業のデータが記録されない状態であることを認識することができる。
これらの条件1ないし5が同時に複数にわたって満たされた場合には、端末112は、優先順位が高いものから、条件5、条件4、条件3、条件2、条件1の順番で、いずれか一つの文字列を基準値計測状態表示部146に表示するように構成されている。また、条件1ないし5のいずれも満たさない場合には、基準値計測状態表示部146に何も表示されない。
なお、基準値の計測(ティーチング)とは、土壌センサ114を用いて、圃場の所定区間の電気伝導度、水温および圃場の深さを測定する作業をいい、可変施肥作業を行うにあたり、基準となる施肥量を事前に設定するため、ティーチングを行う必要がある。
図15(a)に示されるように、本実施態様においては、施肥量グラフ表示部147、作土深グラフ表示部148および肥沃度グラフ表示部149が「可変施肥作業画面」にすべて表示されるように構成されている。したがって、施肥量、作土深および肥沃度の表示を切り換える手間がなく、視認性および操作性の向上が図られている。
さらに、本実施態様においては、施肥量グラフ表示部147、作土深グラフ表示部148および肥沃度グラフ表示部149の各表示部が押圧操作されると、押圧された表示部147、148または149に、現在から過去3分間にわたる施肥量、作土深または肥沃度の計測値が示された折れ線グラフが表示され、他の2つの表示部には棒グラフで現在の計測値が表示される。すなわち、作業者は、施肥量、作土深および肥沃度の各項目のうち、必要に応じて押圧操作した項目のみを、折れ線グラフで確認することができる。なお、図15(a)には、施肥量グラフ表示部147が押圧操作されて、現在から過去3分間にわたる施肥量が折れ線グラフで表示された状態が示されている。
一方、肥料情報表示部136に表示された「基本施肥量」、「比重」または「試し繰出量」の各項目が押圧操作されると、「基本施肥量を設定する画面」「比重を設定する画面」または「試し繰出量を設定する画面」が表示される。すなわち、田植開始スイッチ141が押圧操作された後においても、基本施肥量、比重または試し繰出量の各値を変更することができる。
施肥装置26による可変施肥作業が終了した際には、作業者は、図15(a)に示された田植終了スイッチ154を操作することによって、端末112のディスプレイの表示を、可変施肥作業についての情報を入力する「作業実績作成画面」(図15(b)参照)へ遷移させることができる。
図15(b)に示されるように、「作業実績作成画面」には、その上部に配置された接続状態表示部142、操作設定状態表示部143および電波強度表示部144と、圃場への苗の植付面積を表示する植付面積表示部177と、植付面積表示部177の下方に配置された圃場名設定部135と、薬剤入力部178と、苗の植付作業の間に使用された苗箱の数を表示する苗箱数入力部177と、苗の植付作業の間に使用された苗箱の数を自動的に算出するのに必要な種々の情報を入力する苗箱数計算部179を備えている。
本実施態様においては、苗移植機1は、GNSS受信機130からの出力信号に基づき、苗植付部63によって苗の植付けが行われた圃場の形状および面積を算出し、算出された面積が、「作業実績作成画面」の植付面積表示部177に表示されるように構成されている。苗の植付けが行われた面積(植付面積)が算出される際には、苗移植機1の型式に関するデータに基づき、植付条数が判定され、さらに、畔クラッチが切られた場所においては、植付けが有効な条数の植付面積のみが合算されて、植付面積が算出される。なお、植付面積表示部177に表示される植付面積は、苗移植機1の後輪回転センサ29からの出力信号によっても、算出することができる。
また、本実施態様においては、使用された苗箱数と、使用された除草剤および施薬剤についての名称、基本使用量、基本使用量の単位および使用総量が、自動的に、または作業者によって、入力され、作業実績としてこれらの情報を保存可能に構成されている。
まず、以下に、苗植付部63によって苗の植付けが行われた時に使用された苗箱数(圃場全体での合計の苗箱使用枚数)を、苗箱数入力部176に入力する方法につき、詳細に説明を加える。
苗箱数入力部176に苗箱数を入力する方法としては、作業者が、手動で数字を苗箱数入力部176に直接、自身が数えた苗箱数を入力する方法と、苗箱数計算部179内に表示される植付株数入力部183、苗取量入力部184および横送り回数入力部185にそれぞれ、植付株数、苗取量または横送り回数が作業者によって入力され、入力された植付株数、苗取量および横送り回数に基づき、端末112によって、自動的に苗箱使用枚数が計算され、苗箱数入力部176に自動的に入力される方法が用意されている。
端末112によって、苗箱数入力部176に自動的に苗箱数を入力させるには、まず、作業者によって、植付株数入力部183に1坪当たりの植付株数が、苗取量入力部184に苗取量(苗マットに対する1回の縦掻き取り量)が、横送り回数入力部185に横送り回数(1枚の苗マットの機体幅方向への送り回数)がそれぞれ入力される必要がある。
本実施態様においては、植付株数入力部183、苗取量入力部184および横送り回数入力部185を押圧操作し、作業者によって各数値が手入力されるように構成されている。また、植付株数入力部183、苗取量入力部184および横送り回数入力部185の右側には、ドロップダウン180、181および182が設けられており、各ドロップダウン180、181または182が押圧操作されて、表示されるピッカーダイアログ(図示せず)内で、植付株数、苗取量および横送り回数の各数値を押圧操作によって選択することも可能に構成されている。したがって、作業者は、苗箱数計算部179を用いて、端末112に自動的に苗箱数を計算させる際に必要な情報を、容易に入力し、または変更することができる。
ここに、本実施態様においては、苗移植機1の機種(型式)に応じて、適切な植付株数の候補のみを、植付株数入力部183のピッカーダイアログ内に表示するように構成されている。したがって、植付株数が誤入力されることを抑制することができる。なお、型式は、端末112に登録されたデータに基づき、または機体から型式に関するデータが端末112へ送信されることによって、判定可能に構成することができる。
なお、植付株数、苗取量および横送り回数を、センサによって検出し、植付株数入力部183、苗取量入力部184および横送り回数入力部185に自動的に入力されるように構成してもよい。このように構成することによって、作業者による誤入力を防止し、手間を減らすことが可能になる。また、センサによって検出されたデータに基づき、植付株数入力部183、苗取量入力部184および横送り回数入力部185に自動的に入力された後であっても、ピッカーダイアログにより入力、または手入力を可能にすることによって、センサの故障などの理由から、誤った植付株数、苗取量または横送り回数が入力された場合であっても、入力された数値を、作業者が修正することができる。
以上のようにして、植付株数、苗取量および横送り回数が入力されると、端末112は、まず、1反(10a)当たりの苗箱使用枚数(苗箱、苗マット使用枚数)を算出する。1反当たりの苗箱使用枚数は、1反あたりの植付株数/苗箱1枚での植付株数×1.15によって算出され、1反あたりの植付株数は、1000m2/(株間×条間)によって算出され、株間は1坪当たりの株数から算出(判定)され、苗箱1枚での植付株数は、苗取量と横送り回数から算出(判定)される。算出された1反当たりの苗箱使用枚数は、反当たり苗箱数表示部186に表示される。
1反(10a)当たりの苗箱使用枚数を算出した後に、作業者によって、自動算出スイッチ189が押圧操作されると、端末112は、1反当たりの苗箱使用枚数に、植付面積表示部177に表示された作業面積を積算することによって、圃場全体での合計の苗箱使用枚数を算出し、算出された値(枚数)を圃場当たり苗箱数表示部187に表示し、苗箱数入力部176に入力するように構成されている。このように、反当たりと1圃場全体での1圃場全体での苗箱使用枚数がそれぞれ表示されることによって、苗箱数入力部176に、作業者が直接数値を入力する際の目安とすることができる。
なお、以上のようにして、苗箱数入力部176に入力される苗箱数を算出するのに必要な植付株数、苗取量および横送り回数が入力される苗箱数計算部179および自動算出スイッチ189は、苗箱数計算部オンオフ切換え部188が押圧操作されることによって、「作業実績作成画面」上に表示されない状態に切換え可能に構成されている。
また、本実施態様においては、端末112は、植付株数入力部183、苗取量入力部184および横送り回数入力部185に最後に入力された植付株数、苗取量および横送り回数のデータを保存し、次回に作業実績の作成が行われる際に、保存されたデータを自動的に植付株数入力部183、苗取量入力部184および横送り回数入力部185に入力するように構成されている。したがって、作業者は、作業実績を作成する度に、これらの値を入力する必要がない。
さらに、端末112は、図15(a)に示された田植終了スイッチ154が操作され、「作業実績作成画面」に移行された際に、以上のようにして自動的に入力された植付株数、苗取量および横送り回数のデータと、このとき、GNSS受信機130からの出力信号に基づき、新たに算出された植付面積(植付面積表示部177に表示される数値)とを用いて、圃場全体の苗箱使用数が自動的に算出され、苗箱数入力部176に、入力されるように構成されている。したがって、植付株数、苗取量および横送り回数の数値が作業者によって変更されていなければ、自動算出スイッチ189が押圧操作されることなく、自動的に、苗の植付作業に用いられた苗箱数が入力されるので、操作性が良い。
また、保存された植付株数、苗取量および横送り回数のデータは、自動的に植付株数入力部183、苗取量入力部184および横送り回数入力部185に入力されないように設定可能に構成されている。したがって、誤った植付株数、苗取量または横送り回数の数値が設定される事態を防止することができる。
さらに、苗の植付作業中に、植付株数、苗取量または横送り回数が途中で変更された場合には、端末112は、各条件での苗箱使用枚数を算出した後に、各苗箱使用枚数を合算して、圃場全体での苗箱使用枚数を、圃場当たり苗箱数表示部187および苗箱数入力部176に表示し、または入力するように構成されている。したがって、途中で植付株数、苗取量または横送り回数が変更された場合であっても、圃場全体での苗箱使用枚数を正確に算出することができる。なお、本実施態様にかかる苗移植機1は、作業者によって操縦されることによって、圃場に苗を植付け可能に構成されているが、苗移植機を、無人のロボット田植機(苗移植機)として構成し、予め設定されたデータに基づき、植付株数、苗取量および横送り回数を、自動で切り換えて、1圃場の作業を実行可能としてもよい。このように構成することによって、圃場内で、都度、作業者によって、植付株数、苗取量または横送り回数の変更の操作がされる必要がなくなる。
図15(b)に示されるように、薬剤入力部178は、使用された除草剤に関する情報を入力するための除草剤入力部190と、使用された施薬剤(殺虫剤および殺菌剤を含む)に関する情報を入力するための施薬剤入力部191を備えている。
本実施態様においては、作業者によって、除草剤入力部190の基本使用量入力部169および施薬剤入力部191の基本使用量入力部173に、手動で、基本使用量の数値を入力し、基本使用量の単位を、ピッカーダイアログに表示される種々の単位の中から、作業者によって選択されることによって、除草剤単位設定部168および施薬剤単位設定部172設定可能に構成されている。
さらに、本実施態様においては、端末112に保存されたマスターデータ(「アグリサポート農薬マスタ」)の中から、作業者によって、作業に用いた除草剤が選択されると、マスターデータ内の選択された除草剤の薬剤名が、除草剤名入力部192に、基本使用量が基本使用量入力部169に、基本使用量の単位が除草剤単位設定部168にそれぞれ、自動的に入力(設定)されるように構成されている。
また、同様に、作業者によって、端末112に保存されたマスターデータの中から、作業に用いた施薬剤(殺虫剤および殺菌剤を含む)が選択されると、マスターデータ内の選択された施薬剤の薬剤名が施薬剤名入力部193に、基本使用量が基本使用量入力部173に、基本使用量の単位が施薬剤単位設定部72にそれぞれ、自動的に入力(設定)されるように構成されている。
さらに、作業者によってマスターデータの中から選択され、その結果、薬剤入力部178に自動的に入力された薬剤名、基本使用量およびその単位は、作業者によって、除草剤入力部190および施薬剤入力部191上で修正可能に構成されている。したがって、マスターデータが誤っている場合には、作業者は、除草剤入力部190および施薬剤入力部191に自動的に入力されたデータを修正することができる。なお、除草剤単位設定部168および施薬剤単位設定部72に、基本使用量の単位を入力し、または修正する場合には、作業者は、ピッカーダイアログ(図示せず)に表示される種々の単位の中から、使用した薬剤に対する適切な単位を押圧操作して選択することによって、基本使用量の単位を入力し、または修正することができる。
また、本実施態様においては、端末112は、除草剤入力部190および施薬剤入力部191に最後に入力された除草剤および施薬剤の情報をマスターデータに保存し、次回に作業実績の作成が行われる際、すなわち、田植終了スイッチ154が押圧操作され、「作業実績作成画面」へ移行された際に、端末112は、保存されたデータを自動的に除草剤入力部190および施薬剤入力部191に入力するように構成されている。したがって、作業実績を作成する度に、作業者が、除草剤および施薬剤のデータを入力する必要がなく、操作性が良い。
さらに、以上のようにして自動的に入力された除草剤および施薬剤の基本使用量とその単位と、苗箱使用枚数(苗箱数入力部176に入力された数値)または植付面積(植付面積表示部177に表示される数値)とを用いて、端末112は、除草剤の使用総量および施薬剤の使用総量をそれぞれ、自動的に算出し、除草剤入力部190内および施薬剤入力部191内にそれぞれ設けられた使用総量入力部170,174に、算出された使用総量を自動的に入力するように構成されている。
具体的には、図15(b)に示されるように、苗の植付作業時に使用された苗箱数が苗箱数入力部176に、使用された施薬剤の基本使用量が施薬剤入力部191内の基本使用量入力部173に、基本使用量単位を設定する施薬剤単位設定部172内で単位が「g/箱」に、それぞれ入力(設定)された状態で、再計算スイッチ175が押圧操作されると、苗箱数入力部176に入力された苗箱数と、基本使用量入力部173に入力された基本使用量とが端末112によって自動的に乗算され、その結果、算出された施薬剤の使用総量が、自動的に使用総量入力部174に入力されるように構成されている。
一方、使用された施薬剤の基本使用量が基本使用量入力部173に、基本使用量単位を設定する施薬剤単位設定部172内で単位が「kg/10a」、「ml/10a」または「l/10a」に、それぞれ入力(設定)された状態で、再計算スイッチ175が押圧操作されると、植付面積表示部177に表示された植付面積と、基本使用量入力部173に入力された基本使用量とが端末112によって自動的に乗算され、その結果、算出された施薬剤の使用総量が、自動的に使用総量入力部174に入力されるように構成されている。
したがって、基本使用量が、箱単位で設定される施薬剤と、圃場面積単位で設定される施薬剤のいずれが使用された場合においても、自動的に、施薬剤の使用総量が使用総量入力部174に入力されるので、作業者が施薬剤の使用総量を計算し、使用総量入力部174に入力する手間を省くことができる。
さらに、同様にして、使用された除草剤の基本使用量が基本使用量入力部169に、基本使用量単位を設定する除草剤単位設定部168内で単位が「kg/10a」、「ml/10a」または「l/10a」に、それぞれ入力(設定)された状態で、再計算スイッチ171が押圧操作されると、植付面積表示部177に表示された植付面積と、基本使用量入力部169に入力された基本使用量とが端末112によって自動的に乗算され、その結果、算出された除草剤の使用総量が、自動的に使用総量入力部170に入力されるように構成されている。したがって、作業者が除草剤の使用総量を計算し、使用総量入力部170に入力する手間を省くことができる。
本実施態様においては、施薬剤および除草剤の薬剤名、基本使用量とその単位、および使用総量が、薬剤入力部178に自動的に入力される機能は、作業者によって、端末112上で入切可能に構成され、かかる自動入力機能が切られている(機能が発揮されないように設定されている)場合には、再計算スイッチ171および175は「作業実績作成画面」上に表示されない。
したがって、作業者が、自動的に入力された薬剤のデータを、修正する必要があるにもかかわらず、すべてのデータの入力が正しく行われたものと誤って判断してしまう事態を防止することができる。
また、本実施態様においては、上述のように、再計算スイッチ171および175が押圧操作されることによって、使用総量を使用総量入力部170および174に自動的に入力可能に構成されているが、再計算スイッチ171および175が操作されていなくても、自動的に、基本使用量とその単位および植付面積または苗箱使用枚数に基づき、自動的に、用総量入力部170および174に入力可能に構成してもよい。
さらに、本実施態様においては、「アグリノート」と連携されたときには、圃場に応じて事前に登録されている設定値(株間、苗取量および横送り回数など)が自動的に端末112に設定(入力)されるように構成されている。
ここに、「アグリノート」と連携され、自動的に設定された株間、苗取量および横送り回数などの設定値と、実際の機体情報が異なる場合には、端末112上に設定が異なる旨を表示し、作業者に通知するように構成されている。また、このとき、端末112と機体とがBluetoothにより接続されていない場合、すなわち、接続状態表示部142に「未接続」または「応答なし」と表示されている場合には、モニタ22上に、設定が異なる旨を表示し、作業者に通知するように構成されている。なお、通知については、「アグリノート」と連携されたときから、起算して、所定の時間が経過した時点で、または、所定の距離にわたって、苗の植付け作業が行われた時点で、株間、苗取量および横送り回数などの設定値が適切に状態になっていない場合に、「アグリノート」の発報システム、または「ISEKIリモート」の発報システムを利用して、管理者(経営者)に通知するように構成してもよい。
また、本実施態様においては、「アグリノート」と連携されたときには、モニタ22に、その圃場での苗箱準備枚数を入力するための専用の入力画面が表示され、作業者によって入力されたデータが、「アグリノート」の発報システム、または「ISEKIリモート」の発報システムを利用して、管理者(経営者)に通知されるように構成されている。したがって、管理者は、今、圃場にどれほどの数の苗箱が準備されているのかを把握することができる。
さらに、本実施態様においては、現在の苗移植機1の苗箱使用枚数を、随時、「アグリノート」の発報システム、または「ISEKIリモート」の発報システムを用いて、管理者に通知されるように構成されている。
また、圃場に準備されている苗箱数が、予め「アグリノート」に登録されている情報に基づいて計算される1圃場の苗箱使用予定枚数を超えている場合を除き、圃場に準備されている苗箱数と、現在の苗移植機1の苗箱使用枚数との差が、苗移植機1の条数×2枚分、すなわち、苗植付部63の苗載置台65に満載される量の苗箱数未満になった時点で、「アグリノート」の発報システム、または「ISEKIリモート」の発報システムを利用して、管理者に通知される。したがって、管理者は、圃場に苗が足りなくなる前に、苗箱を準備することができる。さらに、この通知の際には、モニタ22上に、苗箱準備枚数を入力するための専用の入力画面が、再び表示されるように構成されている。したがって、苗の植付け作業の途中で到着した苗箱の枚数を、追加で入力することができる。
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、図1ないし図9に示された実施態様においては、図4(b)に示されるように、施肥量調節モータ103によって施肥量を調節可能に構成された施肥装置26の排出ダクト16の下流部分の内径を増大させ、肥料の詰まりの発生を防止可能に構成されているが、図10に示された実施態様においても、同様に、排出ダクト16の下流部分を同様に、排出ダクト16を、排出口20に最も近い繰出装置34に近接する部分から、排出口20に向けて、排出ダクト16の上下方向の内径を増大させるように構成してもよい。
また、図1ないし図9に示された実施態様においては、図4(b)に示されるように、排出ダクト16の縦断面が、その上流部分において略円形をなし、下流部分において略楕円形をなすように構成されているが、排出ダクト16の縦断面が略円形、または略楕円形をなすことは必ずしも必要でなく、排出ダクト16の内径が、排出口20の近傍において、上流部分よりも増大するように構成されていれば、肥料の詰まりを防止することができる。
さらに、図1ないし図9に示された実施態様においては、施肥調整スイッチ31の後部33が押圧操作される度に、モニタ22のジョグダイヤル45およびプッシュスイッチ50を操作して設定された施肥量から、5%ずつ減少されるように構成されているが、施肥調整スイッチ31の後部33が押圧操作されるときに施肥量が減少される割合は、必ずしも5%に限定されるものではなく、施肥調整スイッチ31の後部33が押圧操作される度に、3%ずつ減少され、または10%ずつ減少されるように構成されてもよく、さらに、モニタ22上で、施肥量が減少される割合を、作業者によって設定可能に構成されてもよい。
また、図1ないし図9に示された実施態様においては、施肥調整スイッチ31が操作される場合を除いて、常に、モニタ22上で設定された施肥量の肥料が圃場に供給されるように構成されているが、施肥調整スイッチ31が設けられる苗移植機1の施肥装置26を、このように構成することは必ずしも必要でなく、土壌センサ114を用いて、逐次施肥量を変更可能に構成された可変施肥が可能な施肥装置に対して、施肥調整スイッチ31を設けてもよい。
さらに、図1ないし図9に示された実施態様においては、図4(b)に示されるように、排出ダクト16の下流部分において、その下端部が、排出口20に向けて、緩やかに下方へ傾斜するように構成されているが、排出ダクト16の下端部がこのように緩やかに下方に傾斜するように構成することは必ずしも必要でなく、排出口20に最も近い繰出装置34に近接する部分から、排出口20に向けて、直線的に下方に傾斜するように構成してもよい。
また、図10および図11に示された実施態様においては、走行車両2に、調節ハンドル166によって施肥量を調節可能に構成された施肥装置26と、識別剤を圃場に滴下することが可能に構成された左右一対の線引きマーカー23が設けられているが、識別剤を滴下可能な左右一対の線引きマーカー23は、必ずしも調節ハンドル166によって施肥量を調節可能に構成された施肥装置26が設けられた走行車両2に取り付けられる必要はなく、図3に示された施肥量調節モータ103によって施肥量が調節可能に構成された施肥装置26が設けられた走行車両2に取り付けられてもよい。