(第1実施形態)
以下、印刷装置の一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示す印刷装置11は、例えば、大判サイズの長尺の媒体Mに印刷するラージフォーマットプリンターである。また、印刷装置11は、シリアル印刷方式のインクジェットプリンターでもある。印刷装置11は、筐体12と、媒体Mを支持する支持部20と、媒体Mを図1に矢印で示す方向に搬送する搬送装置25と、筐体12内で媒体Mに印刷を行う印刷部50とを備える。
以下の説明では、媒体Mの長手方向と直交する幅方向(図1では紙面と直交する方向)を走査方向Xとし、印刷部50が印刷を行う位置において媒体Mが搬送される方向を搬送方向Yとする。本実施形態において、走査方向X及び搬送方向Yは互いに交差(例えば、直交)する方向であって、いずれも鉛直方向Zと交差(例えば、直交)する方向である。なお、走査方向Xを幅方向Xという場合もある。
図1に示すように、支持部20は、媒体Mの搬送経路を形成する第1の支持部21、第2の支持部22及び第3の支持部23を有する。第2の支持部22の下側には吸引機構24が配置されている。吸引機構24が駆動されて発生する負圧は不図示の複数の吸引孔を介して第2の支持部22の面上に作用し、媒体Mは第2の支持部22の面上に吸着される。なお、第1~第3の支持部21~23は、不図示のヒーターにより加熱され、印刷後の媒体M上のインクの乾燥を促進させる。
図1に示すように、搬送装置25は、媒体Mを給送する給送部30と、給送された媒体Mを搬送方向Yに搬送する搬送部40と、印刷後の媒体Mを第3の支持部23の上面を搬送された後にロール状に巻き取る巻取部35とを備える。給送部30は、媒体Mがロール状に巻回されたロール体31を回転可能に支持する支持軸32Aを含む保持部32と、給送部30の動力源となる給送モーター33とを備える。給送モーター33が駆動されて支持軸32Aが回転することで、ロール体31から長尺状の媒体Mが繰り出される。
搬送部40は、給送部30から給送された媒体Mを挟持(ニップ)して搬送方向Yに搬送するローラー対41と、ローラー対41の動力源となる搬送モーター42とを備える。ローラー対41は、搬送方向Yにおいて吐出ヘッド53よりも上流側の位置に配置されている。ローラー対41は、フレーム43に支持された駆動ローラー45と、駆動ローラー45の回転に連れ回りして回転する従動ローラー46とを備える。搬送モーター42の動力により駆動ローラー45が回転駆動すると、ローラー対41は媒体Mを挟んで搬送する。
従動ローラー46は、駆動ローラー45に対する押圧力を変更可能な変更部47に支持されている。詳しくは、変更部47は、駆動ローラー45に対する従動ローラー46の押圧力を調整する後述する押圧力調整機構80(図2、図7)の一部を構成する。変更部47は、従動ローラー46の押圧力を段階的に変化させ、媒体Mの種類に応じた適切な押圧力に調整する。ローラー対41が媒体Mを挟むニップ力は、従動ローラー46の押圧力を変更する変更部47が、後述する駆動源の動力で駆動されることで調整される。また、変更部47は、従動ローラー46が駆動ローラー45を押圧する接触位置と駆動ローラー45から離間する離間位置とに従動ローラー46を変位させる変位機能を有する。この変位機能には、後述する操作レバー49をユーザーが操作して行う手動方式と、後述する押圧解除機構90(図2、図5)が電動で駆動されて行う電動方式とがある。この点で、変更部47は、電動方式の押圧解除機構90の一部を構成する。
また、図1に示す巻取部35は、巻取軸36Aを含む保持部36と、巻取軸36Aを回転させる巻取モーター37とを備える。印刷後の媒体Mにおける第3の支持部23と巻取部35との間の部分が、回動軸38Aを中心に回動するアーム38の先端部に支持されたテンションバー38Bにより押圧されることで、媒体Mに張力が付与される。巻取モーター37はテンションバー38Bの上限と下限とを検知する一対の検知器39の検知結果に基づき、テンションバー38Bが下限位置に達すると駆動されるとともに上限位置に達すると駆動停止される。巻取部35はテンションバー38Bにより張力が付与された媒体Mをロール状に巻き取る。
図1に示すように、印刷部50は、第2の支持部22と対向する位置に配置されている。印刷部50は、シリアル印刷方式であり、筐体12内に架設されたガイド軸51に沿って走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ52を備える。キャリッジ52における媒体Mの搬送経路と対向する下部には、媒体Mに対してインクを吐出する吐出ヘッド53が設けられている。キャリッジ52は、吐出ヘッド53を媒体Mの搬送方向Yと交差する幅方向Xに移動させる。吐出ヘッド53は、ローラー対41よりも搬送方向Yの下流側に位置する。
キャリッジ52は、キャリッジモーター55(図11を参照)の動力で走査方向Xに往復移動する。吐出ヘッド53はキャリッジ52と共に走査方向Xに移動する。キャリッジ52が走査方向Xに移動する過程で、吐出ヘッド53がノズルN(図4を参照)からインクを吐出することで、媒体Mに文字や画像が印刷される。また、印刷装置11は、筐体12内に制御部100を備える。制御部100は、図1に示す搬送装置25及び印刷部50を制御する。
図2に示すように、印刷装置11は、搬送部40を支持する幅方向Xに延びる長尺状の支持フレーム13を備える。支持フレーム13には、従動ローラー46を支持する支持部材の一例としての回動部材61(ローラーホルダー)を含む変更部47が、媒体Mの幅方向Xにほぼ一定ピッチで複数支持されている。各回動部材61は、搬送方向Yの下流側端部に複数(図2の例では2つ)の従動ローラー46を支持する。搬送部40は、媒体Mを搬送するための駆動ローラー45と、媒体Mの幅方向Xに並んだ複数の従動ローラー46とを有する。各回動部材61は、支軸14(図6を参照)を中心に回動自在に支持されている。回動部材61が支軸14を中心に回動することで、複数の従動ローラー46は、駆動ローラー45に対する接触と離間とが可能となっている。搬送部40は、媒体Mの幅方向Xに複数の従動ローラー46を有する。図2に示す例では、変更部47が、幅方向Xにほぼ一定のピッチで20個配置されている。20個の回動部材61は2つずつの従動ローラー46を支持する。図2に示す例では、最大幅の媒体M1が搬送される搬送領域FAには、40個の従動ローラー46が幅方向Xにほぼ一定のピッチで配列されている。
図2に示すように、支持フレーム13における幅方向Xに搬送領域FAの外側となる一端部(図2では右端部)には、媒体Mをセットする際にユーザーが操作する操作レバー49(メディアセットレバー)が設けられている。操作レバー49は、幅方向Xに延びる1本のレリース軸15の一端部に連結されている。レリース軸15は、幅方向Xにおいて搬送領域FAのほぼ全域に亘る長さを有する。レリース軸15上には全ての回動部材61と係合するカム65(図6を参照)が連結されている。操作レバー49をセット位置に操作すると、レリース軸15上のカム65の回転を介して複数の回動部材61が一方向に回動し、複数の従動ローラー46が一斉に上昇する。これにより駆動ローラー45と従動ローラー46の間に媒体Mをセットするために必要な隙間が確保される。ユーザーが、ローラー対41の隙間に媒体Mをセットした後、操作レバー49をニップ位置に操作すると、レリース軸15上のカム65の回転を介して複数の回動部材61が他方向に回動し、複数の従動ローラー46が一斉に下降する。回動部材61は、ばね73(図6を参照)により従動ローラー46を駆動ローラー45に押圧する方向に付勢されており、ローラー対41により媒体Mは所定の押圧力でニップされる。
印刷装置11は、最大幅の媒体M1をはじめとする幅の異なる複数サイズの媒体Mを搬送する。図2では、一例として同図に実線で示す最大幅の媒体M1と、同図に二点鎖線で示す他の幅の媒体M2との2種類の媒体を示す。最大幅の媒体M1は例えば64インチ幅であり、媒体M2は、例えば44インチ幅である。印刷装置11では、その他に、50インチ幅、36インチ幅及び24インチの幅の媒体Mが用いられる。
図2において幅方向Xに搬送領域FAの外側となる一方側が、キャリッジ52の非印刷時の待機位置となるホーム位置HPとなっている。幅方向Xにおいて搬送領域FAに対してホーム位置HP側と反対側となる反ホーム位置AH側(図2では左側)の端部には、押圧機構の一例としての押圧力調整機構80の駆動系が配設されている。押圧力調整機構80の駆動系は、電動モーター81と、電動モーター81の動力を伝達する歯車機構82と、歯車機構82の出力軸と連結された状態で幅方向Xに延びる調整軸16とを有する。調整軸16は、幅方向Xにおいて搬送領域FAのほぼ全域に亘る長さを有する。押圧力調整機構80は、複数の従動ローラー46を一括で駆動ローラー45側に押し付ける。押圧力調整機構80は、電動モーター81の動力で従動ローラー46の押圧力を調整する。詳しくは、押圧力調整機構80は、電動モーター81の動力で調整軸16を回転させてカム65(図7、図8)を介して回動部材61を付勢するばね73の長さを調整することで、従動ローラー46の押圧力を複数段階に調整する。
また、図2に示すように、印刷装置11には、全ての変更部47に対して個別に従動ローラー46の押圧を解除するための押圧解除機構90が設けられている。押圧解除機構90は、複数の従動ローラー46のうち任意の従動ローラー46の押圧を解除可能である。変更部47には、従動ローラー46の押圧力を解除する押圧解除機構90の一部を構成するレリースカム機構91が設けられている。押圧解除機構90は、レリースカム機構91を個別に駆動することで、従動ローラー46の押圧の解除と押圧の付与とを回動部材61単位で個別に切り換える。
次に図3、図4を参照して、キャリッジ52、吐出ヘッド53及び従動ローラー46について説明する。キャリッジ52は、ガイド軸51等に走査方向Xに往復移動可能な状態で支持されるとともに、キャリッジモーター55(図12を参照)により駆動される不図示の無端状のタイミングベルト58の一部に固定されている。キャリッジ52はキャリッジモーター55が正逆転駆動されることで走査方向Xに往復移動する。
図4に示す例では、キャリッジ52の底面に吐出ヘッド53が搬送方向Yに位置をずらして2つ設けられている。吐出ヘッド53は、複数のノズルNが開口するノズル開口面53Aを有する。吐出ヘッド53は、複数のノズルNが搬送方向Yに並んで形成されるノズル列をインク色ごとに有する。図4に示す吐出ヘッド53は、インク色が、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及び黒(K)を含む5色の例であるが、インク色の数は、3色、4色、6色でもよい。また、キャリッジ52に設けられる吐出ヘッド53の数は、1つ又は3つ以上でもよい。
キャリッジ52の搬送方向Yの上流側には、幅方向Xに一定のピッチで配置された回動部材61の下流側端部に支持された複数の従動ローラー46が、幅方向Xに一定ピッチで並んで配置されている。変更部47は、回動部材61の回動方向における付勢力を変更することで従動ローラー46の押圧力の調整が可能となっている。
図3、図4に示すように、吐出ヘッド53を移動させるキャリッジ52には、媒体Mの浮き部MFを検知するセンサーの一例としての第1センサー56が設けられている。第1センサー56は、例えば変位センサーであり、印刷中に第2の支持部22上の支持面22Aに支持された媒体Mの部分を検知対象とし、媒体Mまでの距離に応じた検出値を含む検出信号を出力する。
図3、図4に示すように、第1センサー56は、媒体Mの搬送方向Yにおいて、吐出ヘッド53と従動ローラー46との間に位置する。第1センサー56は、搬送方向Yにおいて吐出ヘッド53よりも上流側、かつ従動ローラー46よりも下流側の範囲内の位置を検知する。詳しくは、第1センサー56は、従動ローラー46のニップ位置NPよりも下流側の位置を検出対象とする。図4に示すように、第1センサー56は、支持面22A上の媒体Mと対向する下面に検出部56Aを有する。検出部56Aから鉛直方向Zの下方に向かって出射された図3に示す検出光L1は、搬送方向Yにおいて従動ローラー46のニップ位置NPよりも下流側かつ吐出ヘッド53よりも上流側の位置となる検出位置で媒体Mの表面に照射される。図3及び図4に示す例では、第1センサー56は、下方へ向かって出射した検出光L1を走査方向Xに移動させながらその反射光を受光して媒体Mの表面までの距離を検出する。このため、検出光L1の走査ライン上に従動ローラー46などの部品が存在すると誤検知を招くので、従動ローラー46を外して検出対象エリアを設定している。よって、第1センサー56は、搬送方向Yにおいて従動ローラー46よりも下流側、かつ吐出ヘッド53よりも上流側の範囲内の位置を、検出対象とする。
第1センサー56は、例えば、媒体Mの表面までの鉛直方向Zの距離を検出する変位センサーである。第1センサー56は、例えば光を用いる方式であれば、光を出射してからその光が媒体Mに反射した反射光を受光するまでの時間が閾値よりも短ければ、媒体Mが浮いていると検出する。本実施形態では、第1センサー56は、吐出ヘッド53のノズル開口面53Aと第2の支持部22の支持面22Aとの距離であるプラテンギャップを管理するためにも用いられる。第1センサー56から吐出ヘッド53のノズル開口面53Aまでの鉛直方向Zの距離に、媒体種に応じたプラテンギャップを加えた値が、浮きのないときの媒体Mと第1センサー56との適正な距離となる。この適正な距離から、問題となる図3に二点鎖線で示す浮き部MFの最低高さ分の距離を減算した距離を閾値とする。制御部100は、第1センサー56が検出した媒体Mまでの検出距離が閾値未満になると、媒体Mの浮き部MFを検知したと判定する。なお、第1センサー56は、光を用いる方式に限らず、磁界又は音波を用いる方式の変位センサーでもよいし、媒体Mの浮き部MFを検知可能な他の方式のセンサーでもよい。
また、キャリッジ52には、媒体Mの幅方向Xの側端を検知する第2センサー57が設けられている。第2センサー57は、鉛直方向Zの下向きに検出光を出射し、その反射光を受光した光量の違いに基づき媒体Mの幅方向Xの側端を検知する。第2センサー57は、キャリッジ52が走査方向Xに移動する過程で媒体Mの幅方向Xの両側の側端を検知することで、媒体Mの幅の取得にも用いられる。また、第2センサー57が媒体Mの側端を検知した側端位置情報に基づいて、複数の従動ローラー46のうち、押圧解除機構90が媒体Mの押圧を解除する従動ローラー46を幅方向Xに順番に移動する過程における最終の従動ローラー46が決定される。
次に図5を参照して、押圧解除機構90の詳細な構成を説明する。図5に示すように、押圧解除機構90は、変更部47ごとにレリースカム機構91を備える。レリースカム機構91は、変更部47を構成する回動部材61の長手方向において従動ローラー46が支持される先端部と反対側となる上流側端部の近傍に配置されている。レリースカム機構91は、支持部91Aと、支持部91Aに支持された駆動源の一例としての電動モーター92と、電動モーター92の動力を伝達する歯車機構93(輪列)とを備える。歯車機構93は、電動モーター92の出力軸に連結された第1歯車93A、第1歯車93Aと噛合する第2歯車93B、及び第2歯車93Bと噛合する第3歯車93Cとを備える。各歯車93A~93Cは、支持部91Aにおいて電動モーター92と反対側の面に支持されている。第3歯車93Cは、電動モーター92の軸線と平行な状態で支持部91A及び支持部91Bに回転可能に支持された支軸94の一端部に固定されている。支軸94の他端部にはレリースカム95が固定されている。レリースカム95は、従動ローラー46を支持する回動部材61に対して回動部材61における従動ローラー46が支持される側とは反対側の位置に、複数の回動部材61のそれぞれに対応して複数設けられている。複数のレリースカム95を駆動させる複数の電動モーター92が設けられている。レリースカム95は、支軸94の回転半径方向に長い板状部材よりなり、その径方向外側の端面が平坦で、その平坦な端面の回転方向両端部が曲面となっている。
図5に示すように、電動モーター92には、その回転を検出可能な例えばロータリーエンコーダーよりなるエンコーダー74が設けられている。また、支軸94の回転の原点位置を検出する原点センサー75(図11を参照)を備える。制御部100は、原点センサー75が歯車93A~93Cのうち1つに設けられた不図示の原点位置マークを検知した時の回転角を原点として支軸94、つまりレリースカム95の回転角を管理する。なお、原点位置マークは、例えば孔又は凸部よりなる。
図5に示すように、変更部47を構成する回動部材61の長手方向において従動ローラー46と反対側となる端部には、支軸94を中心に回転したレリースカム95が当接して押し下げ可能な当接部63が形成されている。
レリースカム95が図10に二点鎖線で示す退避位置から同図に実線で示す押込位置まで回動することで、レリースカム95が回動部材61の当接部63が押し下げる。図10に示すように、レリースカム95が回動部材61の当接部63を押し下げることによって、回動部材61が支軸14を中心に同図における二点鎖線で示す押圧位置から同図に実線で示す非押圧位置まで回動し、従動ローラー46が所定量持ち上がる。この結果、従動ローラー46の媒体Mに対する押圧力が解除される。
制御部100は、原点センサー75がレリースカム95の原点位置を検知したときに電動モーター92の回転を検出するエンコーダー74の検出信号のパルスエッジを計数する不図示のカウンターをリセットする。制御部100は、カウンターの計数値によりレリースカム95の回転角を検出する。制御部100は、電動モーター92を制御して原点センサー75が検知した原点を基準に、レリースカム95を押込位置に対応する回転角に調整することで、従動ローラー46の押圧を解除する。
例えば、図5に示された例では、3つのレリースカム機構91のうち一番右側のレリースカム機構91を構成するレリースカム95が押込位置に配置され、レリースカム95が当接部63を押し下げている。当接部63が押し下げられている回動部材61が先端部に支持する従動ローラー46は押し上げられ、従動ローラー46の押圧が解除されている。また、左側2つのレリースカム機構91を構成するレリースカム95は、どちらも押込位置以外の退避位置にあるため、ばね73の付勢力により回動部材61が上流側端部を引き上げる方向へ回動付勢されており、先端部に支持される従動ローラー46が駆動ローラー45を押圧する。
なお、図2において、電動モーター81の駆動により歯車機構82を介して調整軸16が回転し、調整軸16と共にカム66が回動することでアーム部材71が回動し、ばね73の伸び量が段階的に切り替わる。従動ローラー46の押圧力が3段階のうち調整軸16の回転角に応じた値に調整される。
次に、図6~図9を参照して、変更部47及びレリースカム機構91の構成を説明する。図6に示すように、回動部材61は、支軸14を中心に回動可能に支持されている。回動部材61は、搬送方向Yにおける下流側端部に従動ローラー46を回転自在に支持する。支軸14、レリース軸15及び調整軸16は、図2に示す支持フレーム13に回転可能に支持されている。搬送方向Yにおいて支軸14より上流となる位置にレリース軸15が回転可能に支持されるとともに、搬送方向Yにおいてレリース軸15より上流となる位置に調整軸16が回転可能に支持されている。レリース軸15の一端部には、図2に示す操作レバー49が不図示の動力伝達機構を介して連結されている。操作レバー49の回転操作力はレリース軸15を回転させ、レリース軸15の回転によって複数の変更部47が一斉に駆動される。これにより、操作レバー49をレリース位置に操作すると、従動ローラー46が上昇し、駆動ローラー45と従動ローラー46との間に図6に示す隙間が確保され、操作レバー49をニップ位置に操作すると、図7、図8に示すように従動ローラー46が下降し媒体Mが押圧される。
図6に示すように、変更部47は、係合凹部64を介して支軸14に回動可能に取り付けられた回動部材61と、回動部材61に対して基端部が回動可能に支持されたアーム部材71と、伸長することにより押圧力を発生させるばね73と、レリース軸15に取り付けられた第1カム65と、調整軸16に取り付けられた第2カム66とを有する。
アーム部材71は、回動部材61の長手方向において支軸14と第2カム66との間となる位置に設けられたピン72を中心に回動部材61に対して回動自在な状態で支持されている。回動部材61における搬送方向Yの上流側端部には延設部62が上流側へ向かって延びている。アーム部材71は、回動部材61において延設部62の上方に位置する。
延設部62の上流側端部と、アーム部材71の上流側端部との間には、ばね73が掛装されている。すなわち、ばね73の第1端(下端)が延設部62に掛止され、ばね73の第2端(上端)がアーム部材71の上流側端部に掛止されている。延設部62の先端部には、レリースカム95が当接可能な当接部63が形成されている。つまり、回動部材61のうち回動中心である支軸14に対して従動ローラー46と反対側の端部に当接部63が設けられている。
回動部材61は、支軸14よりも搬送方向Yの上流側となる位置に、第1カム65と係合可能な係合部67を有する。第1カム65は操作レバー49の操作によってレリース軸15が回転することより、図6に示す回転角と図7に示す回転角とに配置される。第1カム65が図6に示す回転角にあるとき、ローラー対41は媒体Mを挟持不能な隙間を開けた非挟持状態(レリース状態)となる。一方、第1カム65が図7に示す回転角にあるとき、ローラー対41は媒体Mを挟持可能な挟持状態(ニップ状態)となる。
次に、図7、図8を参照して、押圧力調整機構80が変更部47によって従動ローラー46を駆動ローラー45に対して押し付ける押圧力を調整する機構について説明する。本例では、ばね73には引張りばねを用いている。特に、無荷重の状態でもコイル同士が密着する方向の初張力を持つ引張りコイルばねが好ましい。この場合、ばね73は、初張力により最も収縮した状態が自然長となっており、初張力を超える荷重をかけなければ自然長から伸長しない。
第2カム66は、調整軸16からの距離が連続的に変化するカム面66Aを有し、そのカム面66Aがアーム部材71の基端部と先端部との間となる位置の部分に接触する。アーム部材71は、第2カム66の回転によりカム面66Aとの当接位置が変化することにより、基端部に挿通されたピン72を中心に先端部がばね73を伸縮させる方向に変位するように回動する。
このとき、アーム部材71は、第2カム66から押圧力を受ける部分を力点PE、基端部を支点PF、先端部を作用点PLとする梃子として機能する。アーム部材71では、力点PEが支点PFと作用点PLの間にあるので、力点PEの変位は、それよりも大きな変位となって作用点PLでばね73の第2端を変位させ、ばね73を伸縮させる。
そして、図7に示すように、従動ローラー46が挟持位置にあるとき、アーム部材71が第2カム66の押圧力を受けてばね73を伸長させることにより、回動部材61の先端部分に支持された従動ローラー46が駆動ローラー45に媒体Mを押し付ける押圧力が発生する。ばね73が伸長したときの付勢力が従動ローラー46の押圧力となるので、ばね73が伸長するに連れて、従動ローラー46の押圧力が強くなる。つまり、第2カム66の回転角の変化によってばね73が伸びるほど、ローラー対41が媒体Mを挟持するニップ力が強くなる。
従動ローラー46が挟持位置にある状態のもとで、第2カム66が回転してアーム部材71の回動角度が変化すると、ばね73の長さが段階的に変化する。本実施形態では、ばね73の長さが3段階に変化することにより、印刷中に媒体Mを搬送するときの従動ローラー46の押圧力が媒体Mの種類に応じて設定される。また、印刷開始前に媒体Mをセットするときの従動ローラー46の押圧力を、その媒体Mが印刷中に搬送されるときの従動ローラー46の押圧力よりも弱く設定してもよい。
例えば、バナー紙など、薄い又はコシの弱い媒体Mの場合、変更部47が従動ローラー46の押圧力として複数段階のうち弱い力を選択することが好ましい。また、例えばポリ塩化ビニル樹脂のフィルムなど、厚い又はコシの強い媒体Mの場合、変更部47が従動ローラー46の押圧力として複数段階のうち強い力を選択することが好ましい。さらに厚さ又はコシの強さが、これらの中間の媒体Mの場合、変更部47がローラー対41の押圧力として複数段階のうち中間の強さの力を選択することが好ましい。なお、第2カム66の回転角の調整によってばね73の長さを3段階以上の複数段階に変化させ、従動ローラー46の押圧力を3段階以上の複数段階に調整してもよい。
図6~図8に示すように、レリースカム機構91のレリースカム95は、印刷前と印刷中において基本的に回動部材61の当接部63と接触しない実線で示す退避位置に配置される。印刷中において第1センサー56が媒体Mの浮き部MFを検知して、従動ローラー46の押圧の解除が必要になると、レリースカム95は、図8に実線で示す退避位置から、図8に二点鎖線で示す押込位置に駆動される。図10に示すように、レリースカム95が、同図に二点鎖線で示す退避位置から同図に実線で示す押込位置に回動することで、レリースカム95は、回動部材61の当接部63を押し下げる。このため、回動部材61は、図10に実線で示す位置から同図に二点鎖線で示す位置まで支軸14を中心に回動する。
図9に示すように、カム65と回動部材61との間にはガタによる隙間があるので、レリースカム95は回動部材61の当接部63をガタによる隙間の分だけ押し下げることができる。この隙間分の押し下げによって従動ローラー46の押圧力が解除される。媒体Mを幅方向Xに複数箇所で押圧する複数の従動ローラー46のうち、任意の従動ローラー46の押圧を解除できる。このときの従動ローラー46の押圧力の解除は、媒体Mをニップする押圧力が少し残っていてもよい。つまり、媒体Mをニップするローラー対41のニップ力を媒体Mに生じた浮き部MFを幅方向Xに移動できる程度に従動ローラー46の押圧力を弱められればよく、押圧力は必ずしも零である必要はない。
次に、図11を参照して、印刷装置11の電気的構成について説明する。図11に示すように、制御部100は、CPU101(中央処理装置)、ASIC102(Application Specific IC、特定用途向けIC)、RAM103及び不揮発性メモリー104を備える。制御部100の出力端子には、吐出ヘッド53、キャリッジモーター55、給送モーター33、搬送モーター42、巻取モーター37、電動モーター81及び電動モーター92が電気的に接続されている。制御部100の入力端子には、リニアエンコーダー54、エンコーダー48、第1センサー56、第2センサー57、原点センサー75及びエンコーダー74が電気的に接続されている。
不揮発性メモリー104には、印刷装置11を制御するためのプログラムが記憶されている。本例では、プログラムの1つとして、図12にフローチャートで示す媒体浮き解消制御を含む印刷制御を実行するためのプログラムPRが含まれる。そして、制御部100は、不揮発性メモリー104から読み出したプログラムPRを実行して媒体浮き解消制御を行いつつ印刷制御を行う。
制御部100は、電動モーター81の動力で押圧力調整機構80を駆動させる。制御部100は、電動モーター81の回転を検出する不図示のエンコーダーの検出パルスのパルスエッジを不図示のカウンターにより原点位置を基準に計数する。制御部100は、カウンターの計数値に基づき調整軸16に支持されたカム66の回転角を調整することで、従動ローラー46の押圧力を媒体Mの種類に応じた値に調整する。
制御部100は、第1センサー56が媒体Mの浮き部MFを検知すると、電動モーター92の動力で押圧解除機構90を駆動させる。制御部100は、第1センサー56が浮き部MFを検知した時のキャリッジ52の位置を基に、押圧を解除すべき従動ローラー46を支持する回動部材61を決定する。制御部100は、電動モーター92を駆動させて、決定した回動部材61に対応するレリースカム機構91を駆動させる。
制御部100は、原点センサー75がレリースカム95の原点位置を検知したときに不図示のカウンターをリセットする。制御部100は、電動モーター92の回転を検出するエンコーダー74の検出信号のパルスエッジをカウンターで計数する。制御部100は、カウンターの計数値に基づき電動モーター92の回転位置を制御してレリースカム95を退避位置と押込位置とに切り替える。制御部100は、決定した回動部材61に対応するレリースカム機構91のレリースカム95を退避位置から押込位置に配置することで、従動ローラー46の押圧を解除する。
次に、印刷装置11の作用を説明する。
ユーザーは搬送部40に対して媒体Mをセットする際は、操作レバー49をレリース位置に操作して、ローラー対41の隙間を開けた非挟持状態(図6参照)とし、ロール体31から引き出した媒体Mの先端部を手動でローラー対41の隙間に挿入する。ユーザーは操作レバー49をニップ位置に操作して媒体Mを駆動ローラー45と従動ローラー46との間にニップさせる。
ユーザーによる印刷開始操作に基づき制御部100が印刷開始を指示すると、給送部30から媒体Mが給送され、その給送された媒体Mは、支持部20の上面よりなる搬送経路に沿って搬送される。媒体Mは複数の従動ローラー46により押圧されることで、走査方向Xの複数箇所でローラー対41によってニップされる。
印刷開始から印刷終了までの間、制御部100は、不揮発性メモリー104から読みだした図12のフローチャートで示されるプログラムを実行する。以下、制御部100がプログラムを実行して行う媒体浮き解消制御について説明する。
ステップS11では、制御部100は、媒体Mの幅を検出する。制御部100は、印刷開始に先立ち、キャリッジ52を走査方向Xに1往復移動させ、第2センサー57により媒体Mの幅方向Xの両側の側端を検知する。制御部100は、リニアエンコーダー54の検出パルスのパルスエッジを不図示のカウンターにより計数することで、ホーム位置HPを原点とするキャリッジ52の走査方向Xの位置を検出する。制御部100は、第2センサー57が媒体Mの側端を検知した時のキャリッジ52の位置を基に媒体Mの側端位置を取得する。そして、制御部100は、媒体の幅方向Xの両側の側端位置から媒体の幅を取得する。制御部100は、媒体Mの幅に関する情報として、幅方向Xの両側の2つの側端位置を規定する2つの側端位置情報を不揮発性メモリー104の所定記憶領域に記憶する。なお、媒体Mの側端位置情報は、キャリッジ52が走査方向Xに移動する過程で吐出ヘッド53がインクの吐出を開始する印刷開始位置を決めるために使用される。また、制御部100は、この側端位置情報を利用して、媒体Mの押圧を解除する従動ローラー46を幅方向Xに順番に移動させる過程で、押圧を解除する最終の従動ローラー46に対応するレリースカム機構91の位置を特定するためにも使用される。
ステップS12では、制御部100は、印刷を開始する。制御部100は、キャリッジモーター55、吐出ヘッド53、給送モーター33及び搬送モーター42等を駆動制御し、キャリッジ52と共に走査方向Xに移動する吐出ヘッド53による1走査分の印刷と、次の記録位置まで媒体Mを搬送するローラー対41による搬送動作とを略交互に行って、媒体Mに画像等を印刷する。すなわち、ローラー対41の搬送方向Yの下流側の印刷領域PAでは、キャリッジ52が走査方向Xに往復移動しその移動過程で吐出ヘッド53がインクを吐出することで、1走査分の印刷が行われる。1走査分の印刷を終わると、制御部100は、給送モーター33及び搬送モーター42を駆動し、媒体Mを次の記録位置まで搬送する。制御部100は、印刷の開始に伴って媒体Mの浮き検出を開始する。すなわち、制御部100は、キャリッジ52と共に走査方向Xに移動する第1センサー56による媒体Mの検出を開始する。
吐出ヘッド53から吐出されたインクを付着させて画像等が印刷される媒体Mが薄紙であったり、薄紙でなくてもベタ印刷など媒体の単位面積当たりのインクの付着量が多い印刷が行われたりする場合、媒体Mがインクを吸収して大きく膨張する。特に昇華転写用の媒体Mにおいては水系インクを利用し、媒体Mへのインクの打ち込み量の割に媒体のインク許容量が小さいことが多い。そのため、インクを吸収した媒体Mが膨張し、媒体Mに皺又はうねり等の浮き部MFが生ずることが多々ある。
印刷中の媒体Mは幅方向Xに並ぶ複数の従動ローラー46と駆動ローラー45とによって複数箇所でニップされる。媒体Mはインクの吸収によって膨張しようとして弛みが発生するが、従動ローラー46の押圧力でニップされた箇所で媒体Mの弛みの幅方向Xへの移動が阻止される。そのため、媒体Mのインクの吸収で膨張した部分には皺又はうねりが発生し、皺又はうねりが搬送方向Yの上流側へ伝播する。この結果、媒体Mにおける搬送方向Yに従動ローラー46と吐出ヘッド53との間の部分に皺又はうねりの伝播による浮き部MFが生じる。印刷中の媒体Mは複数の従動ローラー46と駆動ローラー45とによって幅方向Xに複数箇所でニップされたままであると、印刷中の媒体Mに生じた浮き部MFは消滅しにくい。媒体Mに生じた浮き部MFは、正常な媒体Mの表面位置よりも高く位置するため、吐出ヘッド53と接触する虞がある。
ステップS13では、制御部100は、媒体Mの浮きを検知したか否かを判断する。印刷中においては、第1センサー56は、キャリッジ52と共に走査方向Xに移動するため、媒体Mの幅方向Xのほぼ全域を検出対象とし、媒体Mの表面までの距離を検出する。本例では、第1センサー56は、搬送方向Yにおいて吐出ヘッド53よりも上流側、かつ従動ローラー46よりも下流側の位置において、媒体Mの表面までの距離を検出する。第1センサー56は、媒体Mの表面までの距離に応じた検出値を含む検出信号を出力する。制御部100は、第1センサー56からの検出信号に基づく検出距離が閾値未満に小さくなったか否かを判断する。検出距離が閾値以上であるうちは、媒体Mは浮き部MFのない正常であると判断し、検出距離が閾値未満になると、媒体Mに浮き部MFが発生した異常であると判断する。制御部100は、第1センサー56により媒体Mの浮き部MFを検知した場合はステップS15に進み、浮き部MFを検知していなければ、ステップS25に進む。印刷中であり(ステップS25で否定判定)、かつ押圧解除中でなれば(ステップS26で否定判定)、ステップS13に戻るため、印刷中は浮き部MFを検知する(S13で肯定判定)まで、このステップS13の判定処理を継続する。
ステップS14では、制御部100は、浮き位置を検出する。すなわち、浮きを検知した時点のキャリッジ52の位置を検出することで浮き位置を検出する。キャリッジ位置は、リニアエンコーダー54の検出パルスのパルスエッジを計数するカウンターの計数値を基に浮き位置を取得する。すなわち、第1センサー56が浮きを検出した時点のカウンターの計数値から浮き位置を取得する。浮き位置は、キャリッジ52の原点位置からの距離として取得される。
ステップS15では、制御部100は、押圧解除対象の従動ローラー46を決定する。浮き位置は、原点位置から浮き位置までの距離を示す計数値である。よって、浮き位置を規定する計数値で示される距離から、原点位置から1番目の回動部材61の幅中心までの距離を減算して、1番目の回動部材61の幅中心を基準とする距離を求める。この距離は、1番目の回動部材61の幅中心位置が「0」、2番目の回動部材61の幅中心位置が「Pk」、3番目の回動部材61の幅中心位置が「2・Pk」、・・・、N番目の回動部材61の幅中心位置が「(N-1)・Pk」となる。この距離を回動部材61のピッチPkの値で割り算すると、その商の値から、ホーム位置HP側から何番目の回動部材61が浮き位置に最も近いかが分かる。例えば、商をQとすると、0≦Q<0.5であれば1番目、0.5≦Q<1.5であれば2番目、1.5≦Q<2.5であれば3番目となる。こうして押圧解除対象の従動ローラー46を支持する回動部材61を決定することで、押圧解除対象の従動ローラー46を決定する。このため、決定した回動部材61の当接部63をレリースカム95により押し下げれば、押圧解除対象の従動ローラー46の押圧の解除が可能となる。
ステップS16では、制御部100は、従動ローラー46の押圧を解除する。制御部100は、電動モーター92を駆動させ、押圧解除対象の従動ローラー46を支持する回動部材61に対応するレリースカム機構91を駆動させることで、浮き部MFの位置に最も近い従動ローラー46の押圧を解除する。制御部100は、原点センサー75が検知した原点を基準とするカウンターの計数値が目標の回転角に応じた値に達するまで電動モーター92を駆動して停止する。これにより幅方向Xにおいて媒体Mに生じた浮き部MFに最も近い従動ローラー46を支持する回動部材61の当接部63が、図9、図10に示すように、レリースカム95により押し下げられる。この結果、浮き部MFに最も近い一対の従動ローラー46の押圧が解除される。
浮き部MFに最も近い一対のローラー対41によるニップが解除されたことによって、媒体Mの浮き部MFは幅方向Xに移動し易くなる。特に、ローラー対41が媒体Mを搬送する過程で浮き部MFは幅方向Xの一方側へ移動する。このとき、押圧が解除される従動ローラー46の数は、回動部材61の1つ分の複数(例えば2個)に限られる。よって、ローラー対41による媒体Mの搬送力は確保される。
ステップS17では、制御部100は、媒体Mの浮きを検知したか否かを判断する。制御部100は、第1センサー56が浮き部MFを検知している間は、ステップS18~ステップS23の処理を行って、浮き部MFの移動に追従させて押圧解除対象の従動ローラー46を移動させる制御を行う。このため、浮き部MFを検知していれば、ステップS18に進む。従動ローラー46の押圧解除により浮き部MFが消滅又は閾値未満に縮小すると、解除中の従動ローラー46の押圧を復帰させる設定となっている。つまり、押圧を解除すべき従動ローラー46を浮き部MFの移動に追従して移動させることで、浮き部MFが消滅又は閾値未満に縮小して、浮き部MFを検知しなくなると、ステップS24に進む。
ステップS18では、押圧解除中の従動ローラー46は媒体の端部位置であるか否かを判断する。浮き部MFの移動に追従して押圧を解除する従動ローラー46を幅方向Xに順番に移動させる方向の最終の従動ローラー46、つまり媒体Mの端部位置で押圧を解除する従動ローラー46である場合は、押圧解除対象の従動ローラー46を媒体Mの端部よりも外側へは移動させない。このため、押圧解除中の従動ローラー46が媒体Mの端部位置に対応する位置にあれば、押圧解除対象の従動ローラー46の移動の必要がない。このため、制御部100は、不揮発性メモリー104から媒体Mの側端位置情報を読み出し、側端位置情報に基づき押圧解除中の従動ローラー46は媒体の端部位置であるか否かを判断する。押圧解除中の従動ローラー46が媒体Mの端部位置でなければステップS19に進み、媒体Mの端部位置であればステップS25に進む。
ステップS19では、制御部100は、浮き位置を検出する。この処理は、ステップS14と同様の処理である。すなわち、制御部100は、検知した浮き部MFの位置を、浮き部MFを検知した時のキャリッジ52の位置から検出する。
次のステップS20では、制御部100は、浮きの移動方向・移動距離を算出する。第1センサー56は、媒体Mに浮き部MFがあるとき、キャリッジ52の往路と復路で浮き部MFを検出する。つまり、第1センサー56は、キャリッジ52の一走査ごとに浮き部MFを検出する。このとき、前回の一走査における浮き位置をX1、今回の一走査における浮き位置をX2とする。制御部100は、X1-X2=Aを計算する。制御部100は、A<0であれば、浮き部MFの移動方向MDを反ホーム位置AHに向かう第1方向とし、A>0であれば、浮き部MFの移動方向MDをホーム位置HPに向かう第2方向と判定する。また、制御部100は、移動距離Lxを、Lx=Σ|X1-X2|により算出する。すなわち、制御部100は、従動ローラー46の押圧を前回解除した時の浮き部MFの位置から浮き部MFが幅方向Xに移動した一走査毎の移動距離ΔX=|X1-X2|を累積して移動距離Lxを算出する。
ステップS21では、制御部100は、押圧解除対象の従動ローラー46を決定する。すなわち、制御部100は、前回、従動ローラー46の押圧を解除した時の浮き部MFの位置から移動方向MDへ移動距離Lxだけ移動した現在の浮き部MFの位置を算出する。そして、制御部100は、現在の浮き部MFの位置から押圧解除対象の従動ローラー46を決定する。この場合、制御部100は、以下のように押圧解除対象の従動ローラー46を決定してもよい。例えば、浮き部MFが回動部材61の幅中心に達した位置で移動距離Lxをリセットすることで、浮き部MFの移動距離Lxを回動部材61の幅中心からの移動距離Lxとして算出する。そして、制御部100は、移動距離Lxが回動部材61の幅方向Xのピッチの1/2以上の値になると、押圧解除対象の従動ローラー46を支持する回動部材61に対して移動方向MDに1つ隣の回動部材61が支持する従動ローラー46を押圧解除対象に決定する。つまり、制御部100は、現在の押圧解除中の従動ローラー46を支持する回動部材61に対して移動方向MDに1つ隣の回動部材61を決定する。また、制御部100は、移動距離Lxが回動部材61の幅方向Xのピッチの1/2未満であるうちは、押圧解除中の従動ローラー46を維持し、押圧解除対象を変更しない。
ステップS22では、制御部100は、押圧解除対象の従動ローラー46が変更になったか否かを判断する。押圧解除対象の従動ローラー46が変更になればステップS23に進み、押圧解除対象の従動ローラー46が変更にならなければステップS25に進む。つまり、押圧解除対象の従動ローラー46が変更にならなければ、押圧解除対象の従動ローラー46が維持される。
ステップS23では、制御部100は、押圧解除対象の従動ローラー46を変更する。すなわち、それまで押圧解除中の従動ローラー46の押圧を復帰するとともに、押圧解除対象の変更先の従動ローラー46の押圧を解除する。詳しくは、制御部100は、それまで押圧解除中の従動ローラー46を支持する回動部材61に対応するレリースカム機構91を構成する電動モーター92を駆動し、レリースカム95を押込位置から退避位置へ回動させることで、従動ローラー46の押圧を復帰させる。これと同時並行で、制御部100は、移動方向MD側に1つ隣の回動部材61に対応するレリースカム機構91を構成する電動モーター92を駆動し、レリースカム95を退避位置から押込位置に回動させることで、従動ローラー46の押圧を解除する。この結果、押圧を解除する従動ローラー46が、浮き部MFの移動に追従して回動部材61の1つ分だけ移動方向MDへ移動する。
印刷中(S25で否定判定)かつ押圧解除中(S26で肯定判定)であるうちは、制御部100は、ステップS17~S23の処理を繰り返す。このため、浮き部MFの幅方向Xへの移動に追従して、押圧解除対象の従動ローラー46が移動する。
本実施形態の印刷装置11では、図2に示すように、印刷中に媒体Mに皺又はうねり等により生じた浮き部MFが、第1センサー56により検知されると、幅方向Xにおいて媒体Mの浮き部MFの位置に最も近い従動ローラー46の押圧が解除される。このため、媒体Mの浮き部MFは、幅方向Xの一方側へ移動する。このとき、浮き部MFが移動する方向は、皺又はうねりが解消され易い方向へ移動する。多くは、浮き部MFの位置から媒体Mの両側の側端のうち近い方向の側端に向かう方向へ移動する。例えば、図2に示す浮き部MFが、同図に太線矢印で示す反ホーム位置AH側へ向かう第1方向D1へ移動し始めると、この浮き部MFの第1方向D1への移動に追従して、レリースカム95が押込位置に駆動されるレリースカム機構91が1つずつ順番に移動する。この結果、浮き部MFに追従して押圧解除対象の従動ローラー46が幅方向Xに順番に移動する。すなわち、押圧解除機構90は、押圧解除対象の従動ローラー46を、浮き部MFに追従して幅方向Xに中央部から端部に向かって移動させる。こうして媒体Mに生じた浮き部MFの移動が促進され、浮き部MFは媒体M1の端部まで移動することで消滅又は縮小する。このとき、押圧解除対象の従動ローラー46が媒体M1の反ホーム位置AH側の端部位置に達すると、押圧解除対象の従動ローラー46のそれ以上の移動は停止される。
一方、例えば、図2に示す浮き部MFが同図に二点鎖線矢印で示すホーム位置HP側へ向かう第2方向D2へ移動し始めると、この浮き部MFの第2方向への移動に追従して、レリースカム95が押込位置に駆動されるレリースカム機構91が1つずつ順番に移動する。この結果、浮き部MFに追従して押圧解除対象の従動ローラー46が幅方向Xに順番に移動する。すなわち、押圧解除機構90は、押圧解除対象の従動ローラー46を、浮き部MFに追従して幅方向Xに中央部から端部に向かって移動させる。こうして媒体Mに生じた浮き部MFの移動が促進され、浮き部MFは媒体M1の端部まで移動することで消滅又は縮小する。このとき、押圧解除対象の従動ローラー46が媒体M1のホーム位置HP側の端部位置に達すると、押圧解除対象の従動ローラー46のそれ以上の移動は停止される。
また、媒体M1よりも幅の小さい媒体M2である場合、図2に示す浮き部MFが、同図に一点鎖線矢印で示す第1方向D1へ移動するのに追従して押圧解除対象の従動ローラー46が順番に移動し、押圧解除対象の従動ローラー46が媒体M1の端部位置に達すると、押圧解除対象の従動ローラー46のそれ以上の移動は停止される。こうして浮き部MFは媒体M2の端部まで移動して消滅又は縮小する。浮き部MFが閾値未満に縮小又は消滅すると、第1センサー56は浮き部MFを検知しなくなる。この場合、ステップS17において、キャリッジ52の一走査の過程で浮きを検知しなくなるので、制御部100の処理はステップS24に進むことになる。
ステップS24では、制御部100は、解除中の従動ローラーを押圧する。制御部100は、電動モーター92を駆動させ、押圧解除中の従動ローラー46の押圧を復帰させる。詳しくは、制御部100は、解除中の従動ローラー46を支持する回動部材61に対応するレリースカム機構91の電動モーター92を駆動し、レリースカム95を、図9、図10に実線で示す押込位置の回動角から、図10に二点鎖線で示す退避位置の回動角まで回動させ、この回動途中にレリースカム95による当接部63の押し下げを解除する。この結果、ばね73の付勢力により回動部材61が支軸14を中心に回動し、従動ローラー46の押圧が復帰する。媒体Mは、その幅内の全ての従動ローラー46に押圧され、複数のローラー対41によりニップされた強い搬送力で搬送される。なお、ステップS24で解除中の従動ローラー46の押圧の復帰により、ステップS26では押圧解除中でなくなる。
こうして印刷中は、浮き部MFが生じる度に、浮き部MFの移動に追従して押圧が解除される従動ローラー46が順番に移動することで、浮き部MFの幅方向Xへの移動がスムーズに進む。浮き部MFが媒体Mの幅方向Xの端部に至ることで消滅するか、浮き部MFが媒体Mの幅方向Xの端部に至る過程で閾値未満に小さく縮小する。よって、浮き部MFが、吐出ヘッド53のノズル開口面53Aに衝突して発生する吐出ヘッド53の破損、媒体Mがノズル開口面53Aに擦れて発生するインク汚れ、ノズルN内のインクのメニスカスの破壊に起因するインク吐出不良による印刷ミス、媒体Mの浮き部MFに起因する印刷ずれなどを回避できる。
なお、媒体Mの幅方向Xの一部だけを印刷するときは、キャリッジ52が媒体Mの幅全域の一部の範囲しか移動しないため、第1センサー56が媒体Mの幅全域を検出しなくなる。しかし、少なくとも印刷中に行われるフラッシングを含む吐出ヘッド53のメンテナンスの際は、幅方向Xの端部に位置するフラッシングボックス(液体受容部)に対応する位置までキャリッジ52は移動するので、キャリッジ52のこの種のメンテナンス時の移動過程で媒体Mの幅全域について浮き部MFの有無を検出できる。例えば、メンテナンス時のキャリッジ52の移動過程で浮き部MFを検知して従動ローラー46の押圧を解除した場合、次に浮き部MFの検知位置までキャリッジ52が移動して浮き部の縮小又は消滅を確認するまでは、従動ローラー46を押圧解除状態に維持することが好ましい。
上記第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)印刷装置11は、インクを媒体Mに吐出する吐出ヘッド53と、媒体Mを搬送するための駆動ローラー45と媒体Mの幅方向Xに並んだ複数の従動ローラー46を有する。また、印刷装置11は、複数の従動ローラー46を一括で駆動ローラー45側に押し付ける押圧力調整機構80(押圧機構の一例)と、複数の従動ローラー46のうち任意の従動ローラー46の押圧を解除する押圧解除機構90を備える。よって、媒体Mのいずれかの箇所に浮きが発生した場合に、複数の従動ローラー46のうち浮きの位置に最も近い任意の従動ローラー46の押圧を解除することで、その浮きを媒体Mの端部側へ逃がすことができる。この結果、印刷中に発生した媒体Mの浮きを印刷しながら消滅又は縮小させることができる。例えば、媒体Mの浮きに起因する吐出ヘッド53と媒体Mとの接触を防ぐことが可能となる。吐出ヘッド53の媒体Mとの接触に起因する破損、又は印刷品質の低下を抑えることができる。
(2)押圧解除機構90は、従動ローラー46を支持する回動部材61に対して回動部材61における従動ローラー46が支持される側とは反対側の位置に、複数の回動部材61のそれぞれに対応して設けられた複数のレリースカム95と、複数のレリースカム95を駆動させる複数の電動モーター92とを備える。回動部材61における従動ローラー46が支持される側とは反対側の当接部63を、レリースカム95によって押すことによって従動ローラー46の押圧を解除する。よって、複数の電動モーター92と複数のレリースカム95とを用いることで、任意の従動ローラー46の押圧を解除できる。
(3)押圧解除機構90は、複数の従動ローラー46のうち押圧を解除する従動ローラー46を、媒体Mの幅方向Xに中央部から端部に向かって移動させる。よって、媒体Mの幅方向Xの中央部に生じた浮きを徐々に媒体Mの端部に向かって移動させ、最終的に媒体Mの端部に逃がすことが可能となる。この結果、印刷中に発生した媒体Mの浮きを印刷しながら消滅又は縮小させることができる。
(4)印刷装置11は、吐出ヘッド53を移動させるキャリッジ52に設けられ媒体Mの浮き部MFを検知可能な第1センサー56を備える。押圧解除機構90は、第1センサー56により媒体Mの浮き部MFが検知されると駆動される。よって、印刷のために吐出ヘッド53を移動させるキャリッジ52の移動により第1センサー56が媒体Mの浮き部MFを検知できるので、印刷中にリアルタイムに精度よく媒体Mの浮き部MFを検知できる。浮き部MFを検知すれば押圧解除機構90が駆動されるので、媒体Mの端部へ浮き部MFを逃がすことができる。この結果、吐出ヘッド53と媒体Mの擦れを可及的に低減できる。
(5)第1センサー56は、媒体Mの搬送方向Yにおいて、吐出ヘッド53と従動ローラー46との間に位置する。よって、媒体Mに浮き部MFが発生しやすい箇所を第1センサー56が検出対象とするので、第1センサー56が浮き部MFを検知すれば、可及的に素早く媒体Mの浮き部MFを消滅又は縮小させることができる。
(第2実施形態)
次に、図13を参照して第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、複数のレリースカム機構91を、共通の駆動源で駆動させる点が、前記第1実施形態と異なる。その他の構成は第1実施形態と同様であるため、異なる点について詳細に説明する。
図13に示すように、搬送部40には、従動ローラー46の押圧を回動部材61の単位で個別に解除可能なレリースカム機構91を複数備えた押圧解除機構90が設けられている。レリースカム機構91は、幅方向Xに一定のピッチで配置された回動部材61における従動ローラー46が支持される側と反対側となる位置に、複数の回動部材61のそれぞれに対応して複数設けられている。押圧解除機構90は、複数のレリースカム機構91を駆動させるモーターの一例としての電動モーター92と、電動モーター92を媒体Mの幅方向Xに移動させる移動機構110とを備える。詳しくは、押圧解除機構90は、電動モーター92を搭載するキャリッジ111と、キャリッジ111を幅方向Xに移動させる移動機構110とを備える。
移動機構110は、支持フレーム13の幅方向Xの一端部に配設された電動モーター112と、支持フレーム13の幅方向Xの両端部に支持された一対のプーリー113(一方のみ図示)と、一対のプーリー113に巻き掛けられた無端状のタイミングベルト114と、キャリッジ111を幅方向Xに移動可能に案内するガイド軸115とを備える。電動モーター112の出力軸は一方のプーリー113に連結されている。また、キャリッジ111は、タイミングベルト114の一部に固定されている。電動モーター112が正転駆動されることで、キャリッジ111はガイド軸115に沿って幅方向Xの一方側に移動し、電動モーター112が逆転駆動されることで、キャリッジ111はガイド軸115に沿って幅方向Xの他方側に移動する。
図13に示すように、キャリッジ111は、ガイド軸115に沿って幅方向Xに移動可能な本体部116と、本体部116の先端部に揺動可能に連結された可動部117とを備える。本体部116には、モーターの一例としての電動モーター92と、電動モーター92の動力で回転する歯車列118とが配設されている。また、可動部117には、本体部116側の歯車列118と噛合する歯車列119が配設されている。可動部117は本体部116に対して歯車列118と歯車列119との噛合状態を保持した状態で揺動可能に連結されている。歯車列119は、動力伝達経路の下流端位置に出力歯車120を有している。
図13に示すように、レリースカム機構91は、前記第1実施形態と異なり、個別の駆動源を備えていない。駆動源を個別に備えない点以外の構成は、第1実施形態におけるレリースカム機構91と基本的に同様である。すなわち、レリースカム機構91は、支持部91Aに配設された歯車機構93と、歯車機構93を構成する1つの歯車93Cに連結された支軸94と、支軸94に固定されたレリースカム95とを備える。レリースカム95は、従動ローラー46を支持する回動部材61に対して回動部材61における従動ローラー46が支持される側とは反対側の位置に、複数の回動部材61のそれぞれに対応して複数設けられている。電動モーター92は、複数のレリースカム95を駆動させる共通の駆動源である。
歯車機構93のうちキャリッジ111の移動経路と対向する側の1つの歯車が、キャリッジ111側の出力歯車120と噛合可能な入力歯車121となっている。歯車機構93の入力歯車121に回転が入力されると、支軸94の回転によりレリースカム95が回動する。レリースカム95は、前記第1実施形態と同様に、回動部材61の当接部63と接触しない退避位置と、当接部63を押し下げる押込位置とに配置されるように回動する。
キャリッジ111が幅方向Xに移動することで出力歯車120を、複数のレリースカム機構91のうち選択された1つのレリースカム機構91を構成する入力歯車121に噛合させることが可能である。キャリッジ111が幅方向Xに移動するときに出力歯車120は、目標以外の入力歯車121と衝突しないように入力歯車121から少し離れた移動経路を移動する。キャリッジ111は、目標のレリースカム機構91と対応する位置に停止する状態で電動モーター92が駆動されると、歯車列118,119の回転と共に可動部117がレリースカム機構91に近づく側へ回動して出力歯車120と入力歯車121とが噛合する機構を含む。なお、押圧力調整機構80は、電動モーター81(図2を参照)の動力で、調整軸16の端部に固定された歯車83が回転することで駆動される。
印刷装置11の電気的構成は、図11に示す第1実施形態と基本的に同様であり、電動モーター92が1つであることと、追加された1つの電動モーター112が制御部100に電気的に接続されている点が異なる。制御部100は、原点センサー75が原点を検知した時にリセットされる不図示のカウンターにより、電動モーター92の回転を検出するエンコーダー74の検出信号のパルスエッジを計数することでレリースカム95の回転角を取得する。制御部100は電動モーター92を制御してレリースカム95を目標の回転角に位置制御することで、レリースカム95を押込位置と退避位置とに切り替える。
また、制御部100は、第1センサー56が浮き部MFを検知すると、その浮き部MFに最も近い従動ローラー46を押圧解除対象に決定する。制御部100は、押圧解除対象に決定した従動ローラー46を支持する回動部材61を決定する。制御部100は、電動モーター112を駆動制御し、その決定した回動部材61と対応するレリースカム機構91と対向する位置までキャリッジ111を移動させて停止させ、その停止位置で電動モーター92を駆動する。これにより出力歯車120と入力歯車121とが噛合するとともに、その動力により歯車列118,119及び歯車機構93を介して支軸94が回転し、レリースカム95が回動する。レリースカム95が退避位置から押込位置に回動することで、回動部材61の当接部63を押し下げ、従動ローラー46の押圧が解除される。
第2実施形態では、従動ローラー46の押圧を解除する機構が、前記第1実施形態と異なるだけで、浮き部MFに追従して押圧解除対象の従動ローラー46を幅方向Xに順番に移動させる制御内容については前記第1実施形態と同様である。
制御部100は、従動ローラー46の押圧を解除する押圧解除制御、押圧解除対象の従動ローラー46を、浮き部MFの移動方向MDの1つ隣の回動部材61が支持する従動ローラー46へ変更する変更制御、及び浮き部MFを検知しなくなると、押圧解除中の従動ローラー46の押圧を復帰させる押圧復帰制御を行う。このように制御部100は、キャリッジ111の駆動源である電動モーター112と、複数のレリースカム機構91に共通の電動モーター92とを駆動制御し、上記の押圧解除制御、変更制御、及び押圧復帰制御を行う。
図12に示すフローチャートにおけるステップS22で押圧解除対象が変更された場合、ステップS23で押圧解除対象の従動ローラー46を変更する処理が、前記第1実施形態と異なる。すなわち、第2実施形態におけるステップS23では、制御部100は、電動モーター92駆動してレリースカム95を押込位置から退避位置へ退避させて押圧解除中の従動ローラー46の押圧を復帰させた後、電動モーター112を駆動してキャリッジ111を浮き部MFの移動方向MDに1つ隣のレリースカム機構91と対向する位置まで移動させる。続いて制御部100は、キャリッジ111を停止させた位置で電動モーター92を駆動してレリースカム95を押込位置まで回動させ、浮き部MFの移動方向MDに1つ隣の回動部材61の当接部63を押し下げることで押圧解除対象の従動ローラー46を移動させる。
以上詳述したように、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態の効果(1),(3)~(5)の他に、以下に示す効果を更に得ることができる。
(6)押圧解除機構90は、回動部材61における従動ローラー46が支持される側とは反対側に、複数の回動部材61のそれぞれに対応して設けられた複数のレリースカム95と、複数のレリースカム95を駆動させる共通の電動モーター92と、電動モーター92を媒体Mの幅方向Xに移動させる移動機構110とを備える。よって、少ない数の電動モーター92,112により印刷装置11の構成が簡単となる。
(7)キャリッジ111を幅方向Xに移動させる駆動源である電動モーター112と、複数のレリースカム機構91に対して共通の駆動源である電動モーター92との2つの電動モーターで済むので、電動モーター92をレリースカム機構91の個々に備えた前記第1実施形態の構成に比べ、押圧解除機構90の構成を簡単にすることができる。
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・前記第1実施形態では、従動ローラー46の押圧を解除する回動部材61ごとに電動モーター92を設けたが、複数のレリースカム機構91間で駆動源としての電動モーター92を共通にしてもよい。例えば、複数のレリースカム95を共通に支持する1本の支軸94を電動モーター92の動力で回転させる。支軸94には、複数のレリースカム95が回転角(位相角)を互いに異ならせた状態で固定されている。制御部100は、第1センサー56が浮き部MFを検知すると、電動モーター92を制御して所望のレリースカム95を押込位置に配置可能な回転角に支軸94を制御し、所望の従動ローラー46の押圧を解除する。そして、制御部100は、電動モーター92を制御して支軸94の回転角を制御することで、浮き部MFの移動に追従させて従動ローラー46の押圧を解除する。支軸は1本に限らず、複数の回動部材61ごとに1本ずつ支軸94を設け、1本の支軸94につき1つの電動モーター92を設ける構成でもよい。これらの構成によれば、従動ローラー46の押圧を解除する駆動源である電動モーター92の数が少なく済み、押圧解除機構90が簡単な構成で済む。
・第1センサー56は、搬送方向Yにおいて吐出ヘッド53と同じ位置に配置されてもよい。例えば、第1センサー56をキャリッジ52において走査方向Xに吐出ヘッド53の隣の位置に配置してもよい。
・一度に2つの従動ローラー46の押圧を解除してもよい。すなわち、搬送力を確保できる限りにおいて、同時に押圧を解除する従動ローラー46の数は、回動部材61単位で2つでもよい。例えば、複数の浮き部MFが同時に存在する場合は、それぞれの浮き部MFに追従させて押圧解除対象の従動ローラー46を個別に移動させてもよい。
・従動ローラー46は、全てを幅方向X1列に配列する1列配置としたが、搬送方向Yの異なる二位置に1列ずつ配列してもよい。
・回動部材61のうち回動中心に対して従動ローラー46と同じ側の部分を、例えば下側から上方に向かって押し上げることで、従動ローラー46の押圧を解除してもよい。また、回動部材61のうち回動中心に対して従動ローラー46と同じ側の部分を、引き上げてもよい。
・第1センサー56をキャリッジ52に設けたが、本体フレームに設けてもよい。例えば、搬送領域FAの幅方向Xの両側に、第1センサーを構成する発光部と受光部を設け、発光部から幅方向Xへ出射した光線を浮き部MFが遮って受光部が受光しなくなることで、浮き部MFを検知する構成とする。
・第1センサー56は、第2の支持部22に埋設して媒体Mの裏面を検出する構成でもよい。媒体Mの皺やうねり等の浮き部MFは第1センサー56からの距離が遠くなるので、第1センサー56が媒体Mまでの距離が閾値を超えたときに浮き部MFを検知する構成とすればよい。
・第1センサー56は、光学式センサー等の非接触センサーに限らず、媒体Mの浮き部MFを検知できる限りにおいて、接触式センサーでもよい。
・印刷装置は、印刷部50としてライン印刷方式を採用するラインプリンターでもよい。ライン印刷方式の吐出ヘッド53は、幅方向Xに媒体最大幅よりも若干長い長尺状を有するラインヘッドであり、印刷モードに応じた定速度で搬送される媒体Mに対して1ライン分のインクを一斉に吐出して印刷を行う。例えば、第1センサー56を媒体Mの幅方向の複数箇所に配置したり、第1センサー56を媒体Mの幅方向Xに移動可能な走査式とし、印刷中において定期又は不定期に第1センサー56を走査させることで浮き部MFを検出したりする。この構成によれば、印刷装置11がラインプリンターであっても、印刷中に媒体Mの皺又はうねり等の浮き部MFを消滅又は縮小させることができる。
・第1センサー56は無くてもよい。例えば印刷中において定期的又は不定期に媒体Mを押圧する従動ローラー46の押圧を解除してもよい。この場合、媒体Mの幅方向Xに中央部から端部に向かって押圧解除対象の従動ローラー46を順番に移動させるのが好ましい。
・第2センサー57は無くてもよい。例えば、印刷装置11が印刷条件情報として取得する媒体サイズ情報から媒体Mの側端位置を特定し、その側端位置を基に媒体Mの端部位置の従動ローラー46を特定する。押圧解除対象の従動ローラー46が、その特定した端部位置の従動ローラー46に達したら、押圧解除対象の従動ローラー46のそれ以上の移動は行わない。
・押圧力調整機構80は無くてもよい。つまり、操作レバー49をニップ位置に操作したときに一段階の押圧力で従動ローラー46が押圧される構成であってもよい。この場合、変更部47から、調整軸16、第2カム66及びアーム部材71を廃止し、回動部材61、回動部材61を付勢するばね73、操作レバー49のレリース軸15及び第1カム65等により構成される機構により、押圧機構の一例が構成される。
・押圧解除機構90の駆動源は、モーターに限定されない。例えば、ソレノイド、電動シリンダー、その他のアクチュエーターでもよい。
・媒体Mは、ロール状媒体に限定されず、所定長さのカット紙などの枚葉媒体でもよい。A0サイズ、B0サイズ、A4サイズ等の規格サイズの媒体でもよい。この種の枚葉媒体でも、媒体Mの皺やうねりによる浮き部MFが生じた場合に、押圧を解除する従動ローラー46を浮き部MFに追従させて順番に移動させることで、浮き部MFを消滅又は縮小させることができる。
・媒体浮き解消制御を含む印刷制御を行う制御部100は、プログラムを実行するコンピューターによりソフトウェアで実現する構成の他、例えばFPGA(field-programmable gate array)やASIC(Application Specific IC)等の電子回路(例えば半導体集積回路)によりハードウェアで実現したり、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現したりしてもよい。
・媒体は、用紙に限定されず、合成樹脂製のフィルムやシート、布、不織布、ラミネートシートなどでもよい。なお、合成樹脂製のフィルムやシートであっても、インクが溶剤系インクであれば、媒体は膨潤するため、皺やうねり等の浮き部が発生し得る。
・液体は、有色インクに限定されず透明インクでもよい。また、液体は、染料インク、顔料インク、溶剤系インクでもよいし、さらに紫外線の照射により硬化する紫外線硬化性インクでもよい。要するに、液体は、印刷のために媒体に吐出された液体が媒体を膨張又は収縮させて、媒体に皺又はうねり等の浮きを生じさせる液体であればよい。
・吐出ヘッドは、インクジェット式の吐出ヘッド53に限らず、例えば定量の液体を吐出するディスペンサーでもよい。