JP7212126B2 - 座席シート - Google Patents

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この発明は、第1の発泡樹脂からなるクッション材に第2の発泡樹脂からなるシートコア材を接合した座席シートを成形する発泡型と、この発泡型を使用した座席シートの製造方法とに関するものである。
図3に示すように、例えば車両用座席10は、乗員が腰掛ける座席シート12と、乗員が背中をもたせ掛けるシートバック15とからなる。なお、図3の車両用座席10は、化粧用の表皮シートを装着する前の状態で示してあるので、前記座席シート12およびシートバック15はウレタン等の発泡樹脂で成形したパッド自体が露出状態になっている。そして本発明は、前記座席シートを製造する発泡型および該発泡型を使用して該座席シートを製造する方法に関するものである。また、明細書では車両用の座席シートに特定して説明するが、本発明の用途は車両に限定されるものでなく、広く家庭や事務用の座席シートにも適用される。
特開平9-70330号公報 特開2010-259535号公報
例えば車両用の座席シート(シートパッド)12は、ウレタン等の発泡樹脂を成形した弾力性を有する素材で構成されている。しかし車両軽量化の要請に応えて、発泡樹脂基材からなるクッション材(以下、第1基材ともいう)よりも軽量な発泡樹脂基材からなるシートコア材(以下、第2基材ともいう)を該第1基材に接着等の手段で接合して一体化する傾向が増加している。ここで第1基材としては、例えば発泡ウレタンパッドが採用され、また第2基材としてはビーズ発泡体のEPP(発泡ポリプロピレン)や、同じくビーズ発泡体のポリスチレンフォーム(発泡スチロール)等が採用されている。図4は、車両後ろの座席シート12を反転して裏側を上にした状態を示す斜視図であって、乗員が腰掛ける部位で、該座席シート12における略全体の部分を第1基材14が占め、該第1基材14の裏側の必要個所に軽量の第2基材16が接合されて、シートパッド全体の軽量化を達成している。なお、座席シート12を車両のフレーム等(図示せず)に取り付けるには、前記第2基材16に埋設した金具等を介して前記フレーム等に装着するようになっている。
前述の第1基材14に第2基材16を接合した車両用座席シート12を製造するには、図5に概略的に示す発泡型18を使用する。すなわち図5の発泡型18は、前記第1基材14を成形する下型20と、該下型20に開閉自在に枢着した上型22とから構成され、前記上型22のキャビティ面に別の発泡型で所定形状に成形した第2基材16がセットされる。次いで、前記下型20のキャビティ20aに第1基材14の原料となるウレタン発泡樹脂原料が供給され、該下型20に対し前記上型22を閉じて型締めすることで、前記ウレタン発泡樹脂原料が発泡して第1基材14になり、これが前記第2基材16と接着することで前記座席シート12が一体成形される。このように座席シート12は発泡型18で成形されるが、図5に示すように、上型22に予めセットした第2基材16の端縁部16aの高さと、該発泡型18で後から発泡成形される第1基材14の端縁部14aの高さとの面位置が一致している場合、図6に示す不都合を生ずることがある。すなわち、発泡型18内で発泡して上昇するウレタン発泡樹脂原料が、該発泡型18における上型22と、例えば発泡ポリプロピレンからなる第2基材16との僅かな隙間に侵入して、該第2基材16の裏面にウレタン発泡樹脂の薄い膜が展延して固化してしまう。
このように、座席シート12における第2基材16の裏面に、ウレタン発泡樹脂の薄膜が広がって固化していると、前述した如く車両へ座席シート12を取り付ける際に、該第2基材16は車両床面のフレームに該ウレタン薄膜を介して接触するため、乗員の着座時や車両走行時にウレタン薄膜とフレームとが擦れ合って不快な異音を生じてしまう。この異音発生を防止するため、第2基材16の裏面に広がったウレタン薄膜の部位に不織布テープを貼る対策が採られるが、これは工程上の手間になる。また、座席シート12の成形後に、前記ウレタン薄膜を第2基材16から剥離することも行われるが、同じく無駄な手間が掛かってしまう。そこで、発泡型18による座席シート12の成形時にウレタン薄膜が第2基材16の裏面へ侵入しないように、前記上型22に第2基材16(発泡ポリプロピレン)をぴったりと合わせる必要がある。しかし、第2基材16も型成形品なので成形収縮や変形等を起こしやすく、このため第2基材16が上型型面から浮き上がってしまい金型型面との間に隙間が発生するのを防ぐことが難しい。
本発明は、第1基材であるクッション材に第2基材であるシートコア材を接合した座席シートを成形する際に、クッション材を構成する発泡樹脂がシートコア材の裏側にリークして該シートコア材の裏面に樹脂薄膜が形成されるのを未然に防止して、該樹脂薄膜に起因する異音の発生等をなくすると共に、後工程で樹脂薄膜を除去する無用の手間もなくするようにしたものである。
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため第1の発明は、
上型と下型とからなり、発泡樹脂からなるシートコア材をセットした前記上型で前記下型を閉成した後に、該下型に供給した発泡樹脂原料を発泡させてクッション材を成形することで、前記クッション材にシートコア材を接合した座席シートを製造する発泡型において、
前記上型のキャビティ面でかつ前記シートコア材の樹脂侵入不可領域より外方の対応部位に、該シートコア材を上型にセットして型締めするとシートコア材に食い込み可能な突片が形成され、
前記下型には上型へ向け突出して、型締め時に前記シートコア材に当接する支持部が形成され、
前記上型を型締めした際に、該上型にセットされている前記シートコア材に前記支持部が当接して、該シートコア材を上型に向け強制的に押圧するようになっていることを要旨とする。
この発明によれば、発泡型における上型を下型に対し閉じて型締めすると、上型にセットしたシートコア材を下型に設けた支持部が上へ押圧するので、シートコア材は上型に設けた突片に押し付けられる。これにより上型の突片がシートコア材に深く食い込むために、クッション材の発泡成形が進行しても前記突片により押し止められ、それより先へ発泡樹脂原料が侵入しない。
第2の発明では、前記突片は、前記シートコア材の周縁に沿って当接する連続した突条片として突出していることを要旨とする。
この発明によれば、上型のキャビティ面に設けられた突片は、該上型にセットしたシートコア材の周縁に沿って存在して、該シートコア材に食い込むから、樹脂侵入を不可とする領域を広く保護することができる。
第3の発明では、前記突片の先端は先細りに形成されて、該上型を下型に対し閉成した際に前記シートコア材に食い込むようになっていることを要旨とする。
この発明によれば、突片の先端を断面において先細りするよう形成してあるため、シートコア材へより食い込み易くなっている。
第4の発明では、前記突片は、前記上型に複数条設けられていることを要旨とする。
この発明によれば、突片を複数条設けることによって、発泡成形の発泡圧が大きい場合であっても、発泡樹脂原料の侵入を多段階で押し止めることができる。
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため第5の発明は、
上型と下型とからなる発泡型の内部で発泡樹脂原料を発泡させてクッション材を成形することにより、前記上型にセットした発泡樹脂からなるシートコア材に前記クッション材を接合させた座席シートを製造する方法において、
突片をキャビティ面に有する前記上型に対し前記シートコア材をセットして、前記突片を該シートコア材に近接させる工程と、
前記下型に前記クッション材となるべき発泡樹脂原料を供給する工程と、
前記シートコア材をセットした前記上型を、該上型へ向けて突出する支持部を有する下型に型締めして、前記支持部により前記シートコア材を上型に対し押圧させることで、前記突片の先端をシートコア材に食い込ませる工程とからなることを要旨とする。
この発明によれば、発泡型における上型を下型に対し閉じて型締めすると、上型にセットしたシートコア材を下型に設けた支持部が上へ押圧するので、シートコア材は上型に設けた突片に押し付けられる。これにより上型の突片がシートコア材に深く食い込むために、クッション材の発泡成形が進行しても前記突片により押し止められ、それより先へ発泡樹脂原料が侵入することがない。
本発明によれば、クッション材にシートコア材を接合させた座席シートを発泡型で成形する際に、上型に設けた突片がシートコア材に食い込んで発泡樹脂原料の侵入を阻止する障壁(バリア)になるため、クッション材となる発泡樹脂原料がシートコア材と上型のキャビティ面との隙間に侵入しても、発泡樹脂原料の侵入不可領域に樹脂薄膜が広がって固化することがない。このため、樹脂薄膜がシートコア材の裏側に広がって固化していることに起因する異音の発生や、該発泡樹脂の薄膜を除去するための無用の手間等が省かれる。
(a)は、本発明に係る発泡型における上型とシートコア材との関係を示す断面図であり、(b)は(a)に円形で囲んだ部位の拡大図である。 (a)~(b)は、本発明に係る座席シートの製造方法を段階的に示す概略説明図である。 (c)~(d)は、本発明に係る座席シートの製造方法を段階的に示す概略説明図である。 座席シートとシートバックとを備える車両用座席の概略斜視図であって、化粧用の表皮シートは取り去ってある。 座席シートを裏返した状態での斜視図であって、座席シートの基体をなすクッション材に軽量化のためのシートコア材が接合された状態を示している。 シートコア材をセットした上型により下型を閉じ、内部でクッション材になるべき樹脂原料を発泡させて座席シートを成形している状態を示す発泡型の縦断面図であって、クッション材の端縁部とシートコア材の端縁部とは同じ高さで隣接している。 図5に示す発泡型において、クッション材になるべき発泡樹脂原料の一部が上型とシートコア材との隙間に侵入して、シートコア材の端縁部におけるクッション材となるべき発泡樹脂の侵入不可領域まで、樹脂の薄膜が広がっている状態を説明した断面図である。
次に、本発明に係る発泡型および該発泡型を使用する座席シートの製造方法につき、好適な実施例を挙げて以下に説明する。なお、実施例に係る座席シートの基体的な構成は、図3~図6で説明した通りであるから、既出の部材については同一の符号を付して説明を省略する。また、第2基材16の「外方」とは、図1(b)において左側を指し、また「内方」とは右側を指すものとする。更に、前述した如く、座席シート12の「クッション材」を第1基材14と表記し、「シートコア材」を第2基材16と表記する。更に、車両用の座席シートを実施例として説明するが、本発明に係る座席シートのシートコア材および座席シートの製造方法は車両搭載に限られるものではなく、家庭用や事務用等の民生用途に広く適用し得るものである。
実施例に係る発泡型で製造される座席シート12は、例えばウレタン発泡樹脂を素材としていて、該座席シート12の基体をなす第1基材14と、この第1基材14の裏面の適所に接合した、例えばビーズ発泡ポリプロピレン(EPP)の第2基材16とからなる。この場合、前記第2基材16を構成する発泡ポリプロピレンの単位重量は、前記第1基材14を構成するウレタン発泡樹脂の単位重量よりも小さいものが選定使用される。図1(a)は、図5と同様に、発泡型18により座席シート12を発泡成形した状態を示すもので、上型22にセットした第2基材16と第1基材14とが接合している。図1(b)に拡大して示す発泡型18における上型22のキャビティ面には、下型20に向けて下方へ突出する突片24が形成されている。この突片24が形成される上型22におけるキャビティ面の位置は、図2A(b)に示す如く、前記第2基材16を上型22にセットした際に、該第2基材16における樹脂不可侵領域26(後述)よりも外方(左側)であって、かつ該第2基材16における端縁部16aの開放端より若干内方(右側)に設定される。
前記突片24の形状は、図2B(d)に拡大して示すように、断面が三角形の先細りに形成されているが、これは第2基材16に食い込み易い形状であれば良いので、例えば断面がナイフ刃状であっても良い。また、突片24は、前記上型22のキャビティ面であって、かつ前述した位置において、前記第2基材16の外周に沿って連続する突条片として形成される。前記突片24は、上型22にセットされる第2基材16における樹脂不可侵領域26に対応して形成されていれば良い。しかし、上型22のキャビティ面で前記第2基材16がセットされる部位の全周に、前記突片24を設けるようにしても良い。更に前記突片24を設ける数については、1本でも良いし、また図2B(d)に示すように2つ設けても良い。更には、3つ以上の複数条になるよう形成しても良い。
図2Aおよび図2Bに示すように、前記下型20におけるキャビティ20aの底面には、前記上型22へ向け上方に突出する支持部28が形成されている。この支持部28は、第2基材16をセットした上型22を下型20に対し型締めすると、該上型22が下型20に接近するにつれて該支持部28の先端が第2基材16に当接し、該第2基材16を上型22のキャビティ面へ向けて強制的に押し付けるものである。この支持部28による押し付けにより、前記突片24が第2基材16の対応部位へ確実に食い込むことになる。すなわち、前記発泡型18における下型20のキャビティ底部には、例えば断面が台形をなす支持部28が設けられて、前記上型22に向け突出している。前記支持部28の突出高さは、第2基材16をセットした上型22を下型20に向けて型締めした際に、該支持部28の先端が第2基材16に当接して、該第2基材16を上型22へ強制的に押し付け得る寸法に設定してある。
図2A(b)に示すように、前記第2基材16の端縁部16aの内側には、第1基材14になる発泡樹脂が侵入するのを不可とする樹脂侵入不可領域26が広がっている。ここで樹脂侵入不可領域26とは、座席シート12のシートコア材(第2基材)16に関して、先に説明したように、座席シート12を車両床面のフレームに取り付ける場合に、第2基材16が該フレームに直接当接する部位や、後工程で表皮シートを座席シート12に外掛けする際の係止具(図示せず)の装着溝が存在する領域をいう。例えば、樹脂侵入不可領域26に前記装着溝が凹設されている場合、仮に第1基材14の発泡樹脂が侵入して該装着溝に溜まって固化すると、この固化した発泡樹脂を装着溝から取り出す手間を要してしまうので、この領域26への第1基材14の発泡樹脂の侵入を不可としておく必要がある。このように上型に突片24を設け、また下型に支持部28を設けたことにより、前記発泡型18で第1基材14を発泡成形する際に、突片24が第2基材16に深く食い込むことになる。このため、第1基材14の原料となる発泡樹脂が第2基材16の樹脂侵入不可領域26へ侵入しようとしても、該第2基材16に食い込んだ前記突片24が図1(b)に示す如く障壁になって、侵入することがない。
そこで、先に述べた構成を有する発泡型18を使用して座席シート12を発泡成形する方法を、図2A(a)~図2B(d)を参照して説明する。図2A(a)に示す発泡型18には、上型22のキャビティ面に前述した突片24が設けられ、また下型20におけるキャビティ20aの底面には、前述した支持部28が設けられている。図2A(b)に示すように、別工程で発泡成形された第2基材16を、開放状態にある上型22におけるキャビティ面の所要位置にセットする。このとき、上型22のキャビティ面には前記突片24が僅かな距離だけ下方へ突出しているため、該上型22にセットされた第2基材16は該突片24の先端に接触するに止まり、該上型22のキャビティ面に密着するには到っていない。これは、例えばビーズ発泡ポリプロピレン(EPP)を材質とする第2基材16は、或る程度の剛性と硬度とを有するため、該第2基材16を上型22のキャビティ面にセットする際の押圧力では、前記突片24を第2基材16の裏面に食い込ませることができないからである。
このように上型22のキャビティ面に第2基材16をセットした後、図2B(c)に示すように、下型20のキャビティ20aへ第1基材14を成形するための発泡樹脂原料30、例えば前述したウレタン発泡樹脂原料を供給する。
次いで、図2B(d)に示すように、上型22を下型20に対し閉成して型締めを行う。このとき、上型22が下型20に向け閉じるにつれて、該下型20のキャビティ20aから上方へ突出している支持部28が第2基材16へ接近して、最終的に当接するに到る。上型22は更に閉じて下型20に完全に型締めされるが、この過程で下型20の前記支持部28は第2基材16を押圧することになる。このため、上型22の突片24に接して該上型22から僅かに浮いていた第2基材16は、前記支持部28により強制的に押されて突片24の先端を食い込ませ、該上型22のキャビティ面に密着するに到る。すなわち、図2B(d)の拡大図に示すように、第2基材16における端縁部16aの外周縁より内側で、かつ前記樹脂不可侵領域26より外側の部位に、前記突片24が食い込んでいる。従って、型締めした発泡型18の内部で第1基材14になるべく発泡した発泡樹脂原料は、大きな発泡圧を伴ってキャビティ20aを上昇するが、第2基材16と上型22のキャビティ面との隙間に樹脂原料が侵入しようとしても、前記突片24の存在により更なる侵入は阻止される。このため、樹脂不可侵領域26にウレタンの樹脂原料が侵入して広がる恐れがない。
12 座席シート(シートパッド),14 クッション材(第1基材),
16 シートコア材(第2基材),18 発泡型,20 下型,22 上型,
24 突片,26 樹脂侵入不可領域(樹脂不可侵領域),28 支持部

Claims (2)

  1. 発泡樹脂で形成されたシートコア材に発泡樹脂で形成されたクッション材が接合されている座席シートであって、
    前記シートコア材は、前記クッション材より単位重量の小さい発泡体で形成され、
    前記クッション材は、前記シートコア材の座面側を覆うと共に当該シートコア材の少なくとも一側面の下端まで延在するように設けられ、
    前記クッション材の座面側から前記シートコア材に至るように穴が形成されると共に、当該シートコア材の裏面において前記クッション材で覆われた側面の下端縁側に溝が形成されている
    ことを特徴とする座席シート。
  2. 前記シートコア材は、ビーズ発泡成形体であることを特徴とする請求項1記載の座席シート。
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