以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る多層管は、樹脂を含む管状の第1の層と、樹脂と複数の繊維とを含む第2の層と、樹脂を含む第3の層とを備え、上記第1の層が、上記第2の層の内表面上に配置されており、上記第3の層が、上記第2の層の外表面上に配置されている。本発明に係る多層管では、上記第1の層が、内表面において、多層管の軸方向に沿って螺旋状の成形痕を有する。本発明に係る多層管では、上記平均値A、上記繊維X及び上記傾斜角度Biについて、上記平均値Aが40度以上80度以下であり、かつ、上記繊維Xの個数100%中、上記平均値Aと上記傾斜角度Biとの差の絶対値が22.5度以下である繊維の個数割合が50%を超える。
平均値A:第1の層の上記螺旋状の成形痕における螺旋方向の、多層管の軸方向から多層管の周方向に向けての傾斜角度の平均値を平均値Aとする。
繊維X:上記繊維自体の平均繊維径を平均繊維径Dとする。上記第2の層の多層管の軸方向に沿う断面において観察される上記繊維のそれぞれの断面での長さ方向の距離を距離Lとする。上記第2の層の多層管の軸方向に沿う断面において観察される上記繊維のうち、上記距離Lが上記平均繊維径Dの2倍以上である繊維を繊維Xとする。
傾斜角度Bi:上記繊維Xの多層管の軸方向から多層管の周方向に向けての傾斜角度を傾斜角度Biとする。
本発明に係る多層管では、上記の構成が備えられているので、耐圧性に優れる。
多層管の耐圧性をより一層高める観点からは、本発明に係る多層管では、上記第3の層が、外表面において、多層管の軸方向に沿って螺旋状の成形痕を有することが好ましい。
本発明に係る多層管の製造方法は、樹脂を含む管状の第1の層と、樹脂と複数の繊維とを含む第2の層と、樹脂を含む第3の層とを備え、上記第1の層が、上記第2の層の内表面上に配置されており、上記第3の層が、上記第2の層の外表面上に配置されている多層管の製造方法である。本発明に係る多層管の製造方法は、上記第1の層を形成するための第1の樹脂組成物と、上記第2の層を形成するための第2の樹脂組成物と、上記第3の層を形成するための第3の樹脂組成物とを金型に供給し、多層の管状体を得る、第1の成形工程を備える。本発明に係る多層管の製造方法は、上記金型の下流側に設置された回転引取機を用いて、上記多層の管状体を周方向にねじる、第2の成形工程を備える。本発明に係る多層管の製造方法では、上記第2の成形工程において、得られる多層管の上記第1の層の内表面に多層管の軸方向に沿って螺旋状の成形痕を形成する。本発明に係る多層管の製造方法では、上記第2の成形工程において、得られる多層管の上記第2の層中の上記繊維を、多層管の軸方向から多層管の周方向に向けて傾斜させる。
本発明に係る多層管の製造方法では、上記の構成が備えられているので、耐圧性に優れる多層管を製造することができる。本発明に係る多層管の製造方法では、特殊な金型を用いることなく、従来公知の金型を用いて多層管を製造することができるので、製造コストを低く抑えることができ、また、製造効率を高めることができる。
多層管の耐圧性をより一層高める観点からは、本発明に係る多層管の製造方法では、上記第2の成形工程において、得られる多層管の上記第3の層の外表面に多層管の軸方向に沿って螺旋状の成形痕を形成することが好ましい。また、このような多層管は、特殊な金型を用いることなく、従来公知の金型を用いて多層管を製造することができるので、製造コストを低く抑えることができ、また、製造効率を高めることができる。
以下、本発明に係る多層管について説明する。
図1(a)、図1(b)及び図1(c)は、本発明の一実施形態に係る多層管を示す図である。図1(b)は、図1(a)のI-I線に沿う図である。図1(c)は、図1(a)のII-II線に沿う図である。図1(a)は、側面断面図である。図1(b)は、平面断面図である。図1(c)は、平面図である。
図1に示す多層管11は、第1の層1と、第2の層2と、第3の層3とを備える。第1の層1は、第2の層2の内表面上に積層されており、第3の層3は、第2の層2の外表面上に積層されている。第1の層1は最も内側の層であり、第2の層2は中間層であり、第3の層3は最も外側の層である。第1の層1は、最内層であり、表面層である。第3の層3は、最外層であり、表面層である。第1の層1と、第2の層2と、第3の層3とはそれぞれ管状である。
多層管は、第1の層と第2の層との間に配置された他の層を有していてもよい。多層管は、第2の層と第3の層との間に配置された他の層を有していてもよい。多層管は、第1の層の内表面上に配置された他の層を有していてもよい。但し、第1の層は、表面層であることが好ましい。多層管は、第3の層の外表面上に配置された他の層を有していてもよい。但し、第3の層は、表面層であることが好ましい。
第1の層1は、内表面において、多層管の軸方向Xに沿って螺旋状の成形痕を有する。第1の層1における螺旋状の成形痕は、螺旋状に延びる凸部1aにより形成されている。第1の層1における螺旋状の成形痕は、後述するように、多層管11の製造工程において、多層の管状体を周方向にねじることによりできる成形痕である。第1の層1における螺旋状の成形痕は、目視にて識別可能である。
なお、第1の層は、内表面において、螺旋状の成形痕を形成してない凸部等を有していてもよい。
多層管の耐圧性をより一層高める観点からは、第1の層における螺旋状の成形痕を形成している凸部の平均高さは、0mmを超え、好ましくは2mm以下、より好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1mm以下である。第1の層における螺旋状の成形痕を形成している凸部の平均高さは、2mm以上であってもよい。第1の層における螺旋状の成形痕を形成している凸部の平均高さは小さいほどよい。
第2の層は、繊維21を含む。繊維21は、一端21aと他端21bとを有する。繊維21は、多層管の軸方向Xから、多層管の周方向Yに向けて傾斜している。なお、図1(c)において、1つの繊維の配向方向を模式的に示した。
第3の層3は、外表面において、多層管の軸方向Xに沿って螺旋状の成形痕を有する。第3の層3における螺旋状の成形痕は、螺旋状に延びる凸部3aにより形成されている。第3の層3における螺旋状の成形痕は、後述するように、多層管11の製造工程において、多層の管状体を周方向にねじることによりできる成形痕である。第3の層3における螺旋状の成形痕は、目視にて識別可能である。
第1の層及び第3の層において、螺旋状の成形痕を形成している凸部は、突条であることが好ましい。螺旋状の成形痕を形成している凸部は、帯状であってもよい。
第1の層及び第3の層において、螺旋状の成形痕は、螺旋方向にて、全体が連なっていてもよく、部分的に途切れていてもよい。
第3の層3における螺旋状の成形痕を形成している凸部3aの平均高さは、凸部1aの平均高さよりも小さい。図1(a)及び図1(b)において、凸部3aは、図示していない。
第3の層における螺旋状の成形痕を形成している凸部の平均高さは、第1の層における螺旋状の成形痕を形成している凸部の平均高さよりも大きくてもよく、同一でもよく、小さくてもよい。
なお、第3の層は、外表面において、螺旋状の成形痕を形成してない凸部等を有していてもよい。
第3の層における螺旋状の成形痕を形成している凸部の平均高さは、0mmを超え、好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.1mm以下、更に好ましくは0.05mm以下である。第3の層における螺旋状の成形痕を形成している凸部の平均高さは、0.2mm以上であってもよい。第3の層における螺旋状の成形痕を形成している凸部の平均高さは小さいほどよい。第3の層における螺旋状の成形痕を形成している凸部の平均高さは、略0mmであることが最も好ましい。第3の層における螺旋状の形成痕は、例えば、擦り傷程度に視認されてもよい。
第1の層及び第3の層における螺旋状の成形痕を形成している凸部の高さは、螺旋方向と直交する方向における最大高さ位置にて測定される。凸部の高さは、凸部がある部分のみで測定される。凸部の平均高さは、例えば、螺旋方向に離れて任意に選択した50箇所以上の位置における高さを測定し、平均値を算出することにより求めることができる。凸部全体の高さを測定し、平均値を算出してもよい。
第1の層及び第3の層における螺旋状の成形痕を形成している凸部の高さは、非接触式三次元測定機を用いて測定することができる。
上記多層管は、第3の層の外表面において、上記螺旋状の成形痕を有していなくてもよい。上記多層管は、第3の層の外表面において、目視にて識別可能である上記螺旋状の成形痕を有していなくてもよい。上記第2の成形工程において、得られる多層管の上記第3の層の外表面に多層管の軸方向に沿って螺旋状の成形痕を形成した後、上記第3の層における螺旋状の成形痕を削るか、又は上記第3の層における螺旋状の成形痕を薄くする工程を行ってもよい。上記第2の成形工程において、得られる多層管の上記第3の層の外表面に多層管の軸方向に沿って螺旋状の成形痕を形成した後、上記第3の層における螺旋状の成形痕を削る工程を行うことで、多層管の外観を良好にすることができる。また、得られた多層管の外表面(第3の層の外表面)を研磨したり、研磨後に塗料を塗布したりすることにより、上記第3の層の外表面において螺旋状の成形痕を目視にて識別できなくすることができる。
図2は、多層管の第1の層における螺旋状の成形痕の傾斜角度を説明するための図である。
図2には、第1の層1の内表面において、螺旋状の成形痕を形成している凸部1aが示されている。Xは、多層管の軸方向であり、Yは、多層管の周方向であり、L1は、螺旋状の成形痕における螺旋方向である。上記螺旋状の成形痕における螺旋方向とは、上記螺旋状の成形痕における接線方向を意味する。第1の層における螺旋状の成形痕の傾斜角度Aiは、上記螺旋状の成形痕における螺旋方向と多層管の軸方向とがなす角度である。なお、図2に示すように、傾斜角度Aiは、軸方向Xの直線と螺旋方向L1の直線とがなす角度のうち、小さい方の角度を意味する。したがって、傾斜角度Aiは0度を超え90度未満である。
本発明では、第1の層において、上記螺旋状の成形痕における螺旋方向L1の、多層管の軸方向Xから多層管の周方向Yに向けての傾斜角度Aiの平均値を「平均値A」とする。
耐圧性を高める観点から、本発明に係る多層管では、上記平均値Aは、40度以上80度以下である。本発明に係る多層管の製造方法では、上記平均値Aが40度以上80度以下となるように多層管を得ることが好ましい。
耐圧性をより一層高める観点から、上記平均値Aは、好ましくは60度以上、より好ましくは65度以上である。上記平均値Aは80度に近いほどよい。
平均値Aは、螺旋方向に離れて任意に選択した50箇所以上の位置における傾斜角度Aiをそれぞれ測定し、平均値を算出することにより求めることができる。
図3は、多層管の第2の層における繊維の傾斜角度を説明するための図である。以下、図3を参照しつつ、上記繊維Xの個数100%中の上記平均値Aと上記傾斜角度Biとの差の絶対値が22.5度以下である繊維の個数割合を算出方法について説明する。
繊維Xは、以下の構成を満足する繊維である。
繊維X:上記繊維自体の平均繊維径を平均繊維径Dとする。上記第2の層の多層管の軸方向に沿う断面において観察される上記繊維のそれぞれの断面での長さ方向の距離を距離Lとする。上記第2の層の多層管の軸方向に沿う断面において観察される上記繊維のうち、上記距離Lが上記平均繊維径Dの2倍以上である繊維を繊維Xとする。
平均粒子径Dは、繊維自体の平均粒子径である。該平均繊維径Dは、多層管の製造前に繊維の繊維径を測定したり、多層管の第2の層から繊維を分離して、分離した繊維の繊維径を測定したりすることにより算出することができる。
図3には、第2の層2の多層管の軸方向に沿う断面において観察される繊維21と繊維211とが示されている。繊維21は、一端21aと他端21bとを有する。繊維211は、一端211aと他端211bとを有する。Xは、多層管の軸方向であり、Yは、多層管の周方向であり、L2は、繊維の配向方向である。
繊維21は、上記第2の層の多層管の軸方向に沿う断面での長さ方向の距離Lが上記平均繊維径Dの2倍以上である繊維である。繊維21は、上記繊維Xである。上記距離Lは、繊維21において、一端21aと他端21bとの距離である。
繊維211は、上記第2の層の多層管の軸方向に沿う断面での長さ方向の距離Lが上記平均繊維径Dの2倍未満である繊維である。繊維211は、上記繊維Xとは異なる。上記距離Lは、繊維211において、一端211aと他端211bとの距離である。
第2の層2の多層管の軸方向に沿う断面において観察される繊維は、繊維21(繊維X)と繊維211との内のどちらか一方に分類できる。
繊維21は、多層管の軸方向から多層管の厚み方向にむけて傾斜してないか、又は、ほとんど傾斜していない繊維である。繊維211は、多層管の軸方向から多層管の厚み方向に向けて傾斜していることによって、該繊維が点状又はほとんど点状に観察される繊維である。点状又はほとんど点状に撮影された繊維は、画像解析ソフトを用いて、繊維が多層管の軸方向から多層管の周方向に向けて傾斜している傾斜角度を正確に算出できないことがある。このため、本発明では、点状又はほとんど点状に観察される繊維に相当する繊維として、繊維Xとは異なる繊維を除いて、傾斜角度Biを算出する。
本発明では、繊維Xのみを用いて、繊維の傾斜角度Biを算出する。すなわち、本発明では、第2の層の多層管の軸方向に沿う断面において観察される繊維21(繊維X)と繊維211とのうち、繊維21(繊維X)のみを用いて繊維の傾斜角度Biを算出する。
傾斜角度Biは、繊維Xの多層管の軸方向から多層管の周方向に向けての傾斜角度である。傾斜角度Biは、第2の層の多層管の軸方向に沿う断面において観察される繊維21において、多層管の軸方向Xから多層管の周方向Yに向けて、繊維(繊維の配向方向)が傾斜している角度である。なお、図3に示すように、傾斜角度Biは、軸方向Xの直線と繊維の配向方向L2の直線とがなす角度のうち、小さい方の角度を意味する。従って、繊維の傾斜角度Biの最大値は90度である。なお、繊維が傾斜していない場合の傾斜角度Biは0度である。繊維の傾斜角度Biは90度以下である。
繊維の傾斜角度が0度である場合には、繊維の配向方向が多層管の軸方向と一致する。繊維の傾斜角度が90度である場合には、繊維の配向方向が多層管の周方向と一致する。
上記第2の層の多層管の軸方向に沿う断面において観察される繊維のうち、繊維Xの傾斜角度Biをそれぞれ算出する。本発明に係る多層管では、上記繊維Xの個数100%、上記平均値Aと上記傾斜角度Biとの差の絶対値が22.5度以下である繊維の個数割合が50%を超える。本発明に係る多層管の製造方法では、上記繊維Xの個数100%、上記平均値Aと上記傾斜角度Biとの差の絶対値が22.5度以下である繊維の個数割合が50%を超える多層管を得ることが好ましい。
本発明では、多層管の軸方向Xから多層管の周方向Yに向けての傾斜角度Biの平均値を「平均値B」とする。
耐圧性をより一層高める観点から、上記平均値Bは、好ましくは60度以上、より好ましくは65度以上である。上記平均値Bは大きいほどよい。
耐圧性をより一層高める観点から、上記平均値Aと上記平均値Bとの差の絶対値は、好ましくは30度未満、より好ましくは30度以下、更に好ましくは25度以下、特に好ましくは20度以下、最も好ましくは0度である。
上記傾斜している繊維の個数割合、上記傾斜角度Bi及び傾斜角度Biの平均値Bは、多層管を多層管の軸方向にスライスし、得られた断面を走査型電子顕微鏡(例えば、日本電子社製「JSM-6701F」)で撮影し、撮影した顕微鏡写真から、繊維の配向方向と、多層管の軸方向とのなす角度を求めることにより、算出することができる。なお、上記走査型電子顕微鏡での撮影条件としては、例えば、蒸着厚み10nm、加速電圧15kV、倍率25倍の条件等が挙げられる。
上記第2の層の多層管の軸方向に沿う断面は、第2の層の外表面において多層管の軸方向に沿う断面であることが好ましい。
図4は、多層管の第3の層における螺旋状の成形痕の傾斜角度を説明するための図である。
図4には、第3の層3の外表面において、螺旋状の成形痕を形成している凸部3aが示されている。Xは、多層管の軸方向であり、Yは、多層管の周方向であり、L3は、上記螺旋状の成形痕における螺旋方向である。上記螺旋状の成形痕における螺旋方向とは、螺旋状の成形痕における接線方向を意味する。第3の層における螺旋状の成形痕の傾斜角度Ciは、上記螺旋状の成形痕における螺旋方向と多層管の軸方向とがなす角度である。なお、図4に示すように、傾斜角度Ciは、軸方向Xの直線と螺旋方向L3の直線とがなす角度のうち、小さい方の角度を意味する。したがって、傾斜角度Ciは0度を超え90度未満である。
本発明では、第3の層において、上記螺旋状の成形痕における螺旋方向L3の、多層管の軸方向Xから多層管の周方向Yに向けての傾斜角度Ciの平均値を「平均値C」とする。
耐圧性をより一層高める観点から、上記平均値Cは、好ましくは30度以上、より好ましくは60度以上、更に好ましくは65度以上、好ましくは90度未満である。上記平均値Cは大きいほどよい。
平均値Cは、螺旋方向に離れて任意に選択した50箇所以上の位置における傾斜角度Ciを測定し、平均値を算出することにより求めることができる。
耐圧性をより一層高める観点から、本発明に係る多層管では、上記平均値Aと上記平均値Cとの差の絶対値が20度以下であることが好ましい。耐圧性をより一層高める観点から、本発明に係る多層管の製造方法では、上記平均値Aと上記平均値Cとの差の絶対値が20度以下である多層管を得ることが好ましい。
耐圧性をより一層高める観点から、上記平均値Aと上記平均値Cとの差の絶対値は、好ましくは30度以下、より好ましくは25度以下、更に好ましくは20度以下、最も好ましくは0度である。したがって、上記平均値Aと上記平均値Cとは一致していることが最も好ましい。
上記第1の層は、樹脂を含む。上記第2の層は、樹脂を含む。上記第3の層は、樹脂を含む。第1の層に含まれている樹脂と、第2の層に含まれている樹脂と、第3の層に含まれている樹脂とは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。第1,第2,第3の層に含まれている樹脂はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、及び塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
耐圧性をより一層高める観点及び多層管を軽量にする観点からは、上記樹脂は、ポリオレフィン樹脂、又は塩化ビニル樹脂であることが好ましい。耐圧性をより一層高める観点からは、上記第1の層に含まれる樹脂が、ポリオレフィン樹脂であり、上記第2の層に含まれる樹脂が、ポリオレフィン樹脂であり、上記第3の層に含まれる樹脂が、ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。上記ポリオレフィン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ポリエチレンは、低密度ポリエチレンであってもよく、直鎖低密度ポリエチレンであってもよく、高密度ポリエチレンであってもよく、抗耐熱ポリエチレン(PE-RT)であってもよい。
上記ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンであってもよく、ランダムポリプロピレンであってもよく、ブロックポリプロピレンであってもよい。
耐圧性をより一層高める観点及び多層管を軽量にする観点からは、上記ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン又はポリプロピレンであることが好ましく、ポリエチレンであることがより好ましい。
上記ポリエチレンとしては、エチレンの単独重合体、及びエチレンを含むモノマーの共重合体等が挙げられる。上記ポリエチレンを構成するモノマーの50重量%以上(好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上)がエチレンであることが好ましい。
上記ポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体、及びプロピレンを含むモノマーの共重合体等が挙げられる。上記ポリプロピレンを構成するモノマーの50重量%以上(好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上)がプロピレンであることが好ましい。
第1の層100重量%中、上記樹脂の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、好ましくは100重量%以下である。上記樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、多層管の耐圧性をより一層高めることができる。
第2の層100重量%中、上記樹脂の含有量は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、好ましくは90重量%未満、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。上記樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、多層管の耐圧性をより一層高めることができる。
第3の層100重量%中、上記樹脂の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、好ましくは100重量%以下である。上記樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、多層管の耐圧性をより一層高めることができる。
上記第2の層は、繊維を含む。上記繊維は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記繊維は、無機繊維であってもよく、有機繊維であってもよい。
上記無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、シリコン・チタン・炭素複合繊維、ボロン繊維、及び金属繊維等が挙げられる。
上記有機繊維としては、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、及びポリアミド繊維等が挙げられる。
耐圧性をより一層高める観点からは、上記繊維は、ガラス繊維であることが好ましい。
上記繊維の平均繊維長(繊維自体の平均繊維長)は、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、更に好ましくは500μm以上、好ましくは1500μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは800μm以下である。上記繊維の平均繊維長が上記下限以上であると、多層管の耐圧性をより一層高めることができる。上記繊維の平均繊維長が上記上限以下であると、上記繊維が特定の方向に配置しやすくなる。
上記平均繊維長は、1本の繊維の繊維長を求め、複数の繊維の繊維長を平均することにより求められる。上記繊維長は、上記繊維を直線状にした場合の上記繊維の一端と他端との距離である。
上記繊維の平均繊維径(繊維自体の平均繊維径D)は、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは9μm以上、好ましくは17μm以下、より好ましくは13μm以下、更に好ましくは11μm以下である。上記繊維の平均繊維径が上記下限以上であると、多層管の耐圧性をより一層高めることができる。上記繊維の平均繊維径が上記上限以下であると、上記繊維が特定の方向に配置しやすくなる。
上記平均繊維径Dは、1本の繊維の繊維径を求め、複数の繊維の繊維径を平均することにより求められる。
第2の層100重量%中、上記繊維の含有量は、好ましくは0重量%を超え、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。上記繊維の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、多層管の耐圧性をより一層高めることができる。
上記多層管は、必要に応じて、各種の添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、相溶化剤、安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、顔料及び可塑剤等が挙げられる。上記多層管では特に、相溶化剤を用いることが好ましい。上記添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記相溶化剤としては特に限定されず、マレイン酸変性ポリオレフィン、シラン変性ポリオレフィン、及び塩素化ポリオレフィン等が挙げられる。なお、これらの相溶化剤は、上記ポリオレフィン樹脂に含まれない。上記相溶化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記安定剤としては特に限定されず、熱安定剤、及び熱安定化助剤等が挙げられる。上記熱安定剤としては特に限定されず、有機錫系安定剤、鉛系安定剤、カルシウム-亜鉛系安定剤、バリウム-亜鉛系安定剤、及びバリウム-カドミウム系安定剤等が挙げられる。上記有機錫系安定剤としては、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、及びジブチル錫ラウレートポリマー等が挙げられる。上記安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱安定化助剤としては特に限定されず、エポキシ化大豆油、りん酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、及びゼオライト等が挙げられる。上記熱安定化助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記滑剤としては特に限定されず、内部滑剤、及び外部滑剤が挙げられる。上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、及びビスアミド等が挙げられる。上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。上記外部滑剤としては特に限定されず、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、及びモンタン酸ワックス等が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記加工助剤としては特に限定されず、アクリル系加工助剤等が挙げられる。上記アクリル系加工助剤としては、重量平均分子量が10万~200万であるアルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体等が挙げられ、具体的には、n-ブチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体、及び2-エチルヘキシルアクリレート-メチルメタクリレート-ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。上記加工助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、及びアクリルゴム等が挙げられる。上記衝撃改質剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、α-メチルスチレン系、及びN-フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。上記耐熱向上剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記酸化防止剤としては特に限定されず、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。上記紫外線吸収剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記光安定剤としては特に限定されず、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。上記光安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記充填剤としては特に限定されず、炭酸カルシウム、及びタルク等が挙げられる。上記充填剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記顔料としては特に限定されず、有機顔料及び無機顔料が挙げられる。上記有機顔料としては、アゾ系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、スレン系有機顔料、及び染料レーキ系有機顔料等が挙げられる。上記無機顔料としては、酸化物系無機顔料、クロム酸モリブデン系無機顔料、硫化物・セレン化物系無機顔料、及びフェロシアニン化物系無機顔料等が挙げられる。上記顔料は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記可塑剤は、成形時の加工性を高める目的で添加されていてもよい。可塑剤の添加により成形体の耐熱性が低下することがあるため、可塑剤の添加量は少ない方が好ましい。上記可塑剤としては特に限定されず、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、及びジ-2-エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。上記可塑剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本発明に係る多層管は、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層とは異なる層を備えていてもよい。例えば、本発明に係る多層管は、上記第3の層の外表面上に、塗料が塗布された着色層を備えていてもよい。
第1の層の厚みの、第1の層と第2の層と第3の層との合計の厚みに対する比(R1)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。上記比(R1)が上記下限以上であると、クリープ性能がより一層良好になる。上記比(R1)が上記上限以下であると、寸法安定性がより一層良好になる。
第2の層の厚みの、第1の層と第2の層と第3の層との合計の厚みに対する比(R2)は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.3以上、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.8以下である。上記比(R2)が上記下限以上であると、耐圧性がより一層高くなる。上記比(R2)が上記上限以下であると、寸法安定性がより一層良好になる。
第3の層の厚みの、第1の層と第2の層と第3の層との合計の厚みに対する比(R3)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。上記比(R3)が上記下限以上であると、クリープ性能、及び施工性がより一層良好になる。上記比(R3)が上記上限以下であると、寸法安定性がより一層良好になる。
なお、第1,第2,第3の層の厚みは、平均厚みを表す。成形痕を有する層においては、層の厚みは、成形痕が存在する部分を含めて、平均厚みが算出される。
耐圧性をより一層高める観点からは、上記多層管のSDR(standard dimension ratio)は、好ましくは8.5以上、より好ましくは9以上、好ましくは16以下、より好ましくは12以下である。
上記多層管は、内部に流体が流れる配管の構成部材として好適に用いることができる。上記多層管には、高圧(例えば1.6MPa以上)の流体を流すことができる。上記多層管は、消火管、プラント配管、排水配管、又は薬液配管の構成部材として好適に用いることができ、消火管の構成部材としてより好適に用いることができる。
以下、本発明に係る多層管の製造方法について説明する。
本発明に係る多層管の製造方法は、樹脂を含む管状の第1の層と、樹脂と複数の繊維とを含む第2の層と、樹脂を含む第3の層とを備え、上記第1の層が、上記第2の層の内表面上に配置されており、上記第3の層が、上記第2の層の外表面上に配置されている多層管の製造方法である。本発明に係る多層管の製造方法は、上述した多層管の製造方法である。
図5は、本発明に係る多層管の製造方法を説明するための図である。
製造装置50は、金型51と、第1の水槽52と、第2の水槽53と、回転引取機54と、切断機55とを備える。金型51は、多層の管状体を成形することができる多層金型である。回転引取機54は、金型51から押し出された多層の管状体を引き取ることができ、かつ引取部を周方向に回転させることにより該多層の管状体を周方向にねじることができる装置である。
本発明に係る多層管の製造方法は、上記第1の層を形成するための第1の樹脂組成物と、上記第2の層を形成するための第2の樹脂組成物と、上記第3の層を形成するための第3の樹脂組成物とを金型51に供給し、多層の管状体を得る、第1の成形工程を備える。
上記第1の成形工程においては、第1,第2,第3の樹脂組成物を金型51に供給した後、溶融押出することで、多層の管状体を成形することができる。上記多層の管状体では、上記繊維(繊維の配向方向)が多層の管状体の軸方向に沿って配向していることが好ましい。上記多層の管状体では、上記繊維(繊維の配向方向)が該管状体の軸方向から該多層の管状体の周方向に向けて傾斜していないことが好ましい。上記多層の管状体では、上記繊維(繊維の配向方向)が多層の管状体の軸方向から該多層の管状体の周方向に向けて傾斜している場合に、傾斜角度は、好ましくは45度未満、より好ましくは15度未満、更に好ましくは10度以下、特に好ましくは5度以下である。
上記繊維の配向方向を多層の管状体の軸方向に沿って配向させる方法、又は多層の管状体における上記繊維の傾斜角度を上記上限以下(上記上限未満)に制御する方法としては以下の方法が挙げられる。(1)第1の水槽の入り口に設置されているフォーミングチューブの内径を、金型から押し出された管状体の外径よりも小さくする方法。(2)金型から押し出された溶融樹脂が冷却水槽のフォーミングチューブで冷却固化するまでに管をねじることによって繊維の配向方向を制御する方法。
上記第1の成形工程において、金型の温度は、使用する樹脂の種類によって適宜変更可能である。
本発明に係る多層管の製造方法は、金型51の下流側に設置された回転引取機54を用いて、上記多層の管状体を周方向にねじる、第2の成形工程を備える。上記第2の成形工程において、上記多層の管状体は、金型51と第1の水槽52との間において、周方向にねじられる。第1の層に螺旋状の成形痕を効果的に形成し、耐圧性を効果的に高める観点からは、上記多層の管状体を引き取りながらねじることが好ましい。
上記回転引取機の回転角度は、成形口径、流速、及び回転引取速度を参考に所定の値に設定される。
周方向にねじられた上記多層の管状体は、第1の水槽52及び第2の水槽53において冷却され、固化される。この結果、多層管が得られる。次いで、回転引取機54を通過し、切断機55において所定の長さに切断される。この結果、所定の長さの多層管が得られる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
以下の樹脂及び繊維を用意した。
(樹脂)
高密度ポリエチレン(PE100グレード第三世代ポリエチレン)
(繊維)
ガラス繊維(平均繊維長:0.5mm、平均繊維径D:0.013mm)
(実施例1)
第1の層(最内層)を形成するための第1の樹脂組成物として、高密度ポリエチレンを用いた。第2の層(中間層)を形成するための第2の樹脂組成物として、高密度ポリエチレン80重量%とガラス繊維20重量%とを混合した混合材料を用いた。混合後、第2の組成物中のガラス繊維の平均繊維長は500μmであった。第3の層(最外層)を形成するための第3の樹脂組成物として、高密度ポリエチレンを用いた。
3層の管状の成形体を得ることができる金型(設定温度220℃)に、得られた第1,第2,第3の樹脂組成物を供給した。次いで、押出量100kgf/hで押出成形することで、第1,第3の層に高密度ポリエチレンを含み、第2の層に高密度ポリエチレンとガラス繊維とを含み、ガラス繊維が管状体の軸方向から管状体の周方向に向けて傾斜していない3層の管状体を得た。得られた3層の管状体は、SDRが11であり呼び径が100であった。
回転引取機を軸に対して74゜回転となるように設定し、3層の管状体を引き取りながら周方向にねじった。次いで、第1の水槽及び第2の水槽で冷却固化して、3層の多層管を得た。
得られた多層管は、第1の層の内表面に多層管の軸方向に沿って凸部によって螺旋状の成形痕が形成しており、第2の層中の繊維が、多層管の軸方向から多層管の周方向に向けて傾斜しており、第3の層の外表面に多層管の軸方向に沿って凸部によって螺旋状の成形痕が形成していた。また、得られた多層管は、外径が114mmであり、SDRが11であり、各層の厚みの比(第1の層の平均厚み:第2の層の平均厚み:第3の層の平均厚み)が1:2:1であった。
(実施例2)
回転引取機を軸に対して60゜回転となるように設定したこと以外は、実施例1と同様にして多層管を得た。
(実施例3)
回転引取機を軸に対して70゜回転となるように設定したこと以外は、実施例1と同様にして多層管を得た。
(比較例1)
ガラス繊維を用いなかったこと、3層の管状体をねじらなかったこと以外は、実施例1と同様にして多層管を得た。
(比較例2)
ガラス繊維を用いたこと、3層の管状体をねじらなかったこと以外は、比較例1と同様にして多層管を得た。
(評価)
(1)傾斜角度の平均値A,C
得られた多層管において、第1の層(最内層)及び第3の層(最外層)における螺旋状の成形痕の傾斜角度を算出し、傾斜角度の平均値A及び平均値Cを求めた。
(2)傾斜している繊維の個数割合、及び傾斜角度の平均値B
実施例3で得られた多層管において、第2の層(中間層)の外表面を切り出し、多層管の軸方向に第2の層をスライスし、得られた断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した。画像解析ソフトを用いて、顕微鏡写真に撮影された繊維のうち、一端と他端との距離Lがm繊維自体の平均繊維径D(0.013mm)の2倍以上である繊維Xのみを選択した。繊維Xについて、傾斜角度Biをそれぞれ求めた。求めた傾斜角度Biから、傾斜角度の平均値Bを算出した。また、繊維Xの個数100%中、平均値Aと傾斜角度Biとの差の絶対値が22.5度以下である繊維の個数割合を算出した。
(3)耐圧性
得られた多層管に、昇圧速度0.11MPa/秒で水圧を負荷し、多層管にひび又は割れが生じるまでの破壊水圧を求めた。また、図6は、実施例1-3及び比較例1,2で得られた多層管における螺旋状の成形痕の傾斜角度の平均値Aと破壊水圧との関係を示す図である。
[耐圧性の判定基準]
〇:破壊水圧が6.4MPa以上
×:破壊水圧が6.4MPa未満
多層管の構成及び結果を表1に示す。
なお、(3)耐圧性の評価における判定基準は、多層管が、使用耐圧が1.6MPaである消火配管に用いられることを想定して設定した判定基準である。消火配管では最高使用圧力の4倍以上の破壊水圧基準が求められている。本発明に係る多層管を消防配管として用いる場合には、昇圧速度0.11MPa/秒で水圧を負荷した際の破壊水圧が6.4MPaであることが好ましいが、その他の用途で用いる場合には、該破壊水圧は6.4MPa以下であってもよい。例えば、上記多層管を、水配管、排水配管、又は薬液配管として用いる場合には、上記破壊水圧は6.4MPa以下であってもよい。また、多層管のSDRも適宜変更可能であり、例えば、SDRが8.5であってもよく、SDRが11であってもよい。
また、上述した各層の厚み比及び押出量等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。また、金型での配向の工夫により、螺旋状の成形痕の径角度及び繊維の傾斜角度が実施例で示す傾斜角度より小さくても本発明の効果を発揮することができる。