JP5421048B2 - 農業用ポリオレフィン系多層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

農業用ポリオレフィン系多層フィルムおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、使用時にフィルムの汚れの少ない農業用ポリオレフィン系多層フィルムであって、特に長期間にわたって紫外線遮蔽性が維持される農業用ポリオレフィン系多層フィルムおよびその製造方法に関するものである。
ハウス栽培用やトンネル栽培用の農業用フィルムとしては、従来、塩化ビニル系樹脂フィルムが主流を占めてきたが、高比重であるため、その取り扱いは高齢化している農作業従事者にとって重労働である。また、可塑剤のブリードに伴い塵埃が付着しやすいため、表面に特殊加工を施さない限り、経時的に光線透過性が低下してしまう。
一方、ポリオレフィン系樹脂フィルムは、塩化ビニル樹脂フィルムと比較した場合、低比重であるし加工しやすいため取り扱いやすく、可塑剤を必要としないので、使用中における光線透過性の低下が比較的少ない点においても塩化ビニル系樹脂フィルムより優れている。
さて、農作物の栽培と光質との関係は、従来から研究されており、紫外線を遮蔽するとある種の病害菌の繁殖が阻止されるとの報告がなされている(特許文献1)。また、紫外線を遮蔽するフィルムでピーマン、トマト、ニラ、キュウリ、メロン等の栽培に有効であるとの提案もされている(特許文献2〜5)。
さらに、このような用途に用いられる農業用フィルムとして、中間層にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を配合した紫外線遮蔽性農業用ポリオレフィン系多層フィルムも提案されている(特許文献6)。
特公昭53−47383号公報 特公昭55−10203号公報 特公昭55−12208号公報 特公昭56−46375号公報 特公昭57−59725号公報 特開2003−289727号公報
しかしながら、紫外線遮蔽性に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を配合した紫外線遮蔽性農業用ポリオレフィン系フィルムは、紫外線吸収剤が表面に移行し、その表面で結晶化して白く汚れるという欠点がある。さらに、表面が汚れることによって、光線透過性も低下してしまう。
したがって、370nm以下の波長の紫外線を実質的に遮蔽しつつ、紫外線吸収剤のフィルム表面への移行を抑制し、光線透過性の低下および紫外線吸収能の低下を防ぐことによって、長寿命化された農業用ポリオレフィン系多層フィルムを得ることを本発明の課題とする。
本発明者らは、中間層に配合したベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の移行を防止する添加剤としてハイドロカルマイト類を使用すること、さらに、前記中間層の両側の層には、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤と金属酸化物系紫外線吸収剤を併用して配合することで、汚れの少ない紫外線遮蔽性農業用ポリオレフィン系多層フィルムとすることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、少なくとも3層構造の農業用ポリオレフィン系多層フィルムにおいて、エチレン・酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.8〜4.5質量部とハイドロカルマイト類0.1〜1.0質量部を配合した中間層と、前記中間層の両側に、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、金属酸化物系紫外線吸収剤0.2〜0.8質量部とベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.02〜0.5質量部を配合した外層をそれぞれ設け、前記農業用ポリオレフィン系多層フィルムの単位面積あたりに含まれる前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と前記金属酸化物系紫外線吸収剤の合計量が0.5〜1.3g/m であり、370nm以下の波長の紫外線を実質的に遮蔽することを特徴とする農業用ポリオレフィン系多層フィルムである。
また、本発明は、前記外層の外側に、ポリオレフィン系樹脂を含む最外層をそれぞれ設けた農業用ポリオレフィン系多層フィルムである。
さらに、本発明は、前記各層にヒンダードアミン系光安定剤を0.1〜2.0質量部を配合した農業用ポリオレフィン系多層フィルムである。
また、本発明は、前記ポリオレフィン系樹脂が、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよびエチレン・酢酸ビニル共重合体の中から選ばれた少なくとも1種からなる農業用ポリオレフィン系多層フィルムであることが好ましい。
また、本発明は、前記農業用ポリオレフィン系多層フィルムの少なくとも一方の表面に、防曇性塗膜を設けた農業用ポリオレフィン系多層フィルムであることが好ましい。
さらにまた、本発明は、エチレン・酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.8〜4.5質量部とハイドロカルマイト類0.1〜1.0質量部を配合した中間層と、前記中間層の両側に、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、金属酸化物系紫外線吸収剤0.2〜0.8質量部とベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.02〜0.5質量部を配合した外層を含み、前記農業用ポリオレフィン系多層フィルムの単位面積あたりに含まれる前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と前記金属酸化物系紫外線吸収剤の合計量を0.5〜1.3g/m とし、少なくとも3層からなるポリオレフィン系多層フィルムを、共押出インフレーション成形により製造したことを特徴とする農業用ポリオレフィン系多層フィルムの製造方法である。
本発明は、農業用ポリオレフィン系多層フィルムの中間層に配合したベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の移行を防止する添加剤としてハイドロカルマイト類を配合し、さらに、前記中間層の両側の層にベンゾフェノン系紫外線吸収剤と金属酸化物系紫外線吸収剤を併用して配合することにより、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の吹き出しによる汚れが少なく、良好な紫外線遮蔽性を長期的に継続して備える農業用ポリオレフィン系多層フィルムを得ることができる。また、該外層の外側にベンゾフェノン系紫外線吸収剤を配合した最外層をそれぞれ設けることにより、さらに長寿命化を実現した農業用ポリオレフィン系多層フィルムを得ることができる。またさらに、該農業用ポリオレフィン系多層フィルムの少なくとも一方の表面に、防曇性塗膜を設けることにより、防曇性の良好な農業用ポリオレフィン系多層フィルムを得ることができる。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、少なくとも3層からなるが、5層構造のものがより好ましい。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの各層に使用されるポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体を挙げることができる。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その中でも、特に密度0.910〜0.935g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンが好ましい。これらのポリエチレンは単独で用いてもよいし2種以上混合して用いてもよい。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムにおいて、中間層のポリオレフィン系樹脂は酢酸ビニル含有量が10〜20重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことがより好ましい。この範囲であると、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤との相容性が良好で、ブリードしにくく、かつ、柔軟性が良好で、取り扱いしやすい。
該中間層に配合されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−アミル−5’−イソブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−プロピルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(1,1,3,3−テトラメチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどがあり、具体的には、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN328(以上、チバ・ジャパン社製)、SEESORB703、SEESORB704、SEESORB709(以上、シプロ化成社製)、Viosorb550、Viosorb583、Viosorb591(以上、共同薬品社製)等が挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、0.8〜4.5質量部、好ましくは1.5〜4.0質量部の範囲である。この配合量が0.8質量部以上であれば長期の紫外線吸収性が十分であり、4.5質量部を以下であると表面への移行が少なくフィルムの汚れも少ないため好ましい。
本発明において前記中間層にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と共に配合されるハイドロカルマイト類としては、次の一般式CaAl(OH)・nHOまたはXCaO・Al・CaA2/a・nHOで示される。式中、Aはa価の陰イオン、x,y,z,m,nは正数、aは1または2であり、2x+3y=z+a×mを満足する。Xは、3〜6の正数を示す。陰イオンAとしては、Cl,ClO4−,CO 2−,HPO 2−,HPO 2−,[(CHCOO)2−,[C(COO)2−等があげられる。ハイドロカルマイト類は、具体的には、CaAl(OH)24(CO・12HO,CaAl(OH)14(HPO・4HO,4CaO・Al・CaCO・10HO等が挙げられる。勝田化工株式会社、日本化学工業株式会社から市販されている。
前記ハイドロカルマイト類の配合量は、樹脂100質量部に対して、0.1〜1.0質量部の範囲である。0.1質量部以上であればベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のフィルム表面への移行を抑える効果が良好で、1.0質量部以下であればフィルムの透明性が良好である。
本発明において前記中間層の両側に配置される外層には、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤および金属酸化物系紫外線吸収剤の2種類の紫外線吸収剤が配合される。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤のみを配合する場合、所望の紫外線吸収性を得られる量を配合すると、フィルム表面への移行が多すぎるため、フィルムの透明性を損なってしまう。一方、金属酸化物系紫外線吸収剤のみを配合する場合、所望の紫外線吸収性を得られる量を配合すると、フィルム表面の移行はみられないが、HAZEが大きくなり過ぎてしまう。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンなどがあり、具体的には、CHIMASSORB81(チバ・ジャパン社製)、SEESORB101、SEESORB101S、SEESORB102、SEESORB103、SEESORB105(以上、シプロ化成社製)、Viosorb110、Viosorb111、Viosorb130(以上、共同薬品社製)等が挙げられる。
金属酸化物系紫外線吸収剤としては、平均粒径が20〜400nmの酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等が挙げられる。
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、0.02〜0.5質量部の範囲が好ましい。また、前記金属酸化物系紫外線吸収剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、0.2〜0.5質量部の範囲が好ましい。いずれについても、所定の配合割合の範囲内であれば、長期の紫外線吸収性に優れ、透明性およびHAZEも良好である。
本発明において農業用ポリオレフィン系多層フィルムを5層構造とすることができる。その場合、最外層に必要に応じてベンゾフェノン系紫外線吸収剤を、樹脂100質量部に対して、0.5質量部までの割合で配合することができる。最外層を設けることによって、多層フィルム表面への紫外線吸収剤の移行がさらに緩やかになるため、長期の紫外線吸収性が良好である。さらに、最外層にベンゾフェノン系紫外線吸収剤を配合することによって、紫外線吸収性を向上することができる。
本発明において、370nm以下の波長の紫外線を実質的に遮蔽するとは、370nmにおける全光線透過率が5%未満であることを意味している。この条件を満たすためには、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と金属酸化物系紫外線吸収剤の合計量が、一定量以上含有されていなければならない。具体的には上記した配合量であれば良いが、さらに、農業用ポリオレフィン系多層フィルムの単位面積あたりに含まれるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と金属酸化物系紫外線吸収剤の合計量が0.5〜1.3g/mであることが好ましい。該紫外線吸収剤の合計量が0.5以上であれば、所望の紫外線吸収性が得られるし、1.3以下であれば、HAZEへの悪影響が少ない。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムにおいて使用されるヒンダードアミン系光安定剤は、従来農業用フィルムに慣用されていたものの中から任意に選ぶことができる。たとえば2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−4−ベンゾエート、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケ−ト、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)ホスファイト、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−2,4−ジオキソ−スピロ[4,5]デカン、トリ−(4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)−アミン、1,2,3,4−テトラ(4−カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)ブタン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)−4−スピロ−2’−(6’,6’−ジメチルピペリジン)−4’−スピロ−5’’−ヒダントイン、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−3−n−オクチル−スピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどを挙げることができる。具体的には、TINUVIN770、TINUVIN780、TINUVIN144、TINUVIN622、CHIMASSORB944、CHIMASSORB119(以上、チバ・ジャパン社製)、MARK LA−57、MARK LA−62、MARK LA−63、MARK LA−67、MARK LA−68(以上、ADEKA社製)、CYASORB UV−3529、CYASORB UV−3581、CYASORB UV−3853(以上、サイテック社製)等が挙げられる。
前記ヒンダードアミン系光安定剤の配合量は、各層の樹脂100質量部に対して、0.1〜2質量部、好ましくは0.2〜1.5質量部の範囲の量で用いることが好ましい。0.1質量部以上であれば、十分な光安定性が得られ、耐候性が良好であり、また2質量部以下であれば効果は十分であり、かつ、コストも抑えられる。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、防曇性を付与するため、防曇剤を配合することも可能であるが、防曇剤の移行に伴い紫外線吸収剤の移行が起こるので、防曇性を重視して防曇剤の配合量を増やすと紫外線吸収剤の移行を促進してしまい、好ましくない。農業用ポリオレフィン系多層フィルムに配合する場合、どの層に配合しても良いが、防曇剤の配合総量が、該多層フィルムの樹脂成分の総量100質量部に対して0.5質量部以下とすることが好ましい。また、農業用ポリオレフィン系多層フィルムに防曇剤を配合するしないにかかわらず、農業用ポリオレフィン系多層フィルムの少なくとも一方の表面に、無機コロイドゾルと熱可塑性樹脂バインダを主成分とする防曇性塗膜を設けることが好ましい。
該防曇性塗膜を形成する無機コロイドゾルは、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられる。シリカゾルとしては、球状あるいは鎖状のコロイド状シリカなどが挙げられ、平均粒子径5〜100nm、好ましくはl0〜50nmのものが使用される。たとえば、スノ−テックス20、スノーテックスXL、スノーテックスUP(日産化学工業社製)などが挙げられる。また、アルミナゾルとしては、5〜200nmのコロイド粒子の大きさを持つ球状、羽毛状、棒状のアルミナ水和物を挙げることができ、たとえば、アルミナゾル−100、アルミナゾル−200(日産化学工業社製)などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂バインダとしては、ウレタン系樹脂又はアクリル系樹脂を用いることができる。ウレタン系樹脂としては、たとえばアクリル変性ウレタン樹脂、特にアニオン性のアクリル変性ウレタン樹脂である、ボンタイターHUX−401(ADEKA社製)などが挙げられ、またアクリル系樹脂としては、ネオクリルA−614(DSM Neoresins社製)などが挙げられる。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの各層には、本発明の目的を損なわない範囲で、保温剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、熱安定剤、ブロッキング防止剤、着色剤などの各種添加剤を配合することができる。保温剤としては、ハイドロタルサイト類、リチウム・アルミニウム複合水酸化物塩、リチウム・アルミニウム・マグネシウム複合水酸化物塩、タルク、アルミノケイ酸塩等が挙げられる。透明性、分散性等からハイドロタルサイト類が好ましい。また、滑剤としては、たとえば、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール酸バリウム、有機亜リン酸エステルのようなキレータ、エポキシ樹脂、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアロアミド、エルカ酸アミドなどの脂肪酸アミドや、固体状の高級アルコール、グリセリン脂肪酸エステルなどがある。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物や、硫黄化合物系のものが用いられる。
本発明における農業用ポリオレフィン系多層フィルムの中間層の厚みは、20〜70μmの範囲で、その他の層は10〜40μmの範囲が好ましく、フィルム全体としては、60〜200μmの範囲が好ましい。
以下、本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの製造方法について説明する。農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、たとえばポリオレフィン系樹脂に各種添加剤を配混合したのち、押出成形法によってペレットを調製したのち、共押出インフレーション成形法により所定層厚となるようにフィルム成形することにより、製造することができる。この際のペレットの調製は、ポリオレフィン系樹脂成分と各種配合成分とをそれぞれ所定の割合で配合し、リボンブレンダ、バンバリミキサ、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、単軸又は二軸押出機、ロールなどの配合機や混練機を用いて均質に配合した組成物を線状に押出成形し、数mmの長さにカットすることによってペレットを調製する。
また、防曇性塗膜を設ける場合、たとえば上記方法によって得られた農業用ポリオレフィン系多層フィルムの塗膜形成面にコロナ放電、プラズマ照射、電子線照射等の処理をしたのち、樹脂バインダ、ゾル物質及び所望によりシリコーン系界面活性剤を混合して得られた水性エマルション組成物を、浸せき法あるいはグラビアコータ、リバースロールコータ、エアナイフコータなどによるコーティング法などを用いて塗布し、50〜150℃程度の温度で熱風乾燥して形成する。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各成分の使用量を示す部は質量部であり、また、農業用ポリオレフィン系多層フィルムの性能は次のようにして求めた。
(1)紫外線遮蔽性:分光光度計により多層フィルムの370nmの全光線透過率を測定した。
◎: 透過率が、2%未満
○: 透過率が、2%以上、5%未満
△: 透過率が、5%以上、10%未満
×: 透過率が、10%以上
(2)暴露後の紫外線遮蔽性:サンシャインウェザオメータにより、2000時間暴露した後、分光光度計により多層フィルムの370nmの全光線透過率を測定した。
◎: 透過率が、5%未満
○: 透過率が、5%以上、10%未満
△: 透過率が、10%以上、15%未満
×: 透過率が、15%以上
(3)耐白化性:1Nの水酸化カルシウム水溶液を40℃に保温し、その中に多層フィルムの試験片を1日浸漬した後、目視にてフィルム表面の吹き出しの状態を確認する。
◎: 吹き出し無し
○: 吹き出しは若干あるが、ふき取った前後でその差が確認できる
△: あきらかに吹き出しが確認できる
×: フィルムを通して景色が見えない程の吹き出しがある
(4)HAZE:製造直後の多層フィルムをJIS K 7105に準拠してHAZE値を測定した。
◎: HAZE値が、15%未満
○: HAZE値が、15%以上、20%未満
△: HAZE値が、20%以上、25%未満
×: HAZE値が、25%以上
[実施例1]
農業用ポリオレフィン系多層フィルムの中間層として、酢酸ビニル含有量が15重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA15)100質量部に対し、ハイドロカルマイト類0.2質量部およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(UVA−1)1.0質量部を配合した組成物をペレット加工して中間層用ペレットを得た。外層として、線状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)100質量部に対し、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(UVA−2)0.2質量部および金属酸化物系紫外線吸収剤(UVA−3)0.5質量部を配合した外層用ペレットを得た。これらのペレットを用いて共押出インフレーション成型機により、2種3層のチューブ状多層フィルムを成形した。多層フィルムの厚み100μm、厚みの比率は、外層/中間層/外層=1/3/1である。
一方アニオン性アクリル変性ポリウレタン系エマルション[ボンタイターHUX−401:ADEKA社製、商品名]40質量部、コロイダルシリカ[スノーテックス20:日産化学工業社製、商品名、平均粒径15nm、水分散型]80質量部及びポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤[L−77:日本ユニカー製、商品名]0.5質量部からなる水性エマルション組成物を調製した。次いで、上記方法によって得られたチューブ状多層フィルムを偏平形状に折り畳み、チューブ外面をコロナ処理装置で処理したのち、前記水性エマルション組成物の入った槽に浸せきし、スクイズロールにより余分の水性エマルション組成物を除去したのち、120℃の縦型の温風乾燥炉をとおし、厚さ2μmの防曇性塗膜を形成した。これらのフィルム試料について、物性を評価した結果を表1に示す。
[実施例2および比較例1〜5]
前記実施例1と同様に表1に示す添加剤を配合した各ペレットを用い、共押出インフレーション成型機により、2種3層のチューブ状多層フィルムを成形した。次いで、実施例1と同様に、チューブ外面をコロナ処理装置で処理したのち、実施例1で用いた水性エマルション組成物の入った槽に浸せきし、スクイズロールにより余分の水性エマルション組成物を除去したのち、120℃の縦型の温風乾燥炉をとおし、厚さ2μmの防曇性塗膜を形成した。これらのフィルム試料について、物性を評価した結果を表1に示す。
[実施例3〜4、比較例6〜10]
前記実施例1と同様に表2に示す樹脂成分および添加剤を配合した各ペレットを用い、共押出インフレーション成型機により、最外層2がチューブの外面となるよう5種5層のチューブ状多層フィルムを成形した。次いで、該チューブ外面をコロナ処理装置で処理したのち、実施例1と同様に水性エマルション組成物の入った槽に浸せきし、スクイズロールにより余分の水性エマルション組成物を除去したのち、120℃の縦型の温風乾燥炉をとおし、厚さ2μmの防曇性塗膜を形成した。これらのフィルム試料について、物性を評価した結果を表2に示す。多層フィルムの厚み100μm、厚みの比率は、最外層1/外層1/中間層/外層2/最外層2=1/1/1/1/1である。
なお、実施例1〜4および比較例1〜10の各層には、樹脂成分100質量部あたり、ヒンダードアミン系光安定剤を0.4質量部配合した。実施例および比較例で用いた樹脂成分および添加剤は次のとおり。
LDPE : 高圧法低密度ポリエチレン樹脂(日本ユニカー社製、「NCU−8133」、密度:0.923g/cm
LLDPE : 線状低密度ポリエチレン樹脂(プライムポリマー社製、「0138NK」、密度:0.916g/cm
EVA15 : 酢酸ビニル含有量15重量%,エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(日本ユニカー社製、「NCU−3758」、密度:0.94g/cm
UVA−1 : ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、「TINUVIN−326」)
UVA−2 : ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(シプロ化成社製、「SEESORB−102」)
UVA−3 : 金属酸化物系紫外線吸収剤、酸化亜鉛系(堺化学社製、「FINEX−50S−LP2」)
ハイドロカルマイト : 炭酸塩系(勝田化工社製、「C−13」)
以上の結果から、実施例1〜4の多層フィルムは、いずれもHAZEが小さく、耐白化性に優れ、紫外線遮蔽性が長期間にわたって持続することが分かる。一方、比較例のハイドロカルマイトを含有しない多層フィルムは、耐白化性が劣り、紫外線遮蔽性が経時的に低下していくことが分かる。逆にハイドロカルマイトが多すぎるとHAZEが大きくなってしまう。以上の結果から、本発明のフィルムは、HAZEが小さく、耐白化性に優れ、紫外線遮蔽性の効果が製造直後から長期間にわたり持続し、農業用被覆材として優れることが分った。
本発明の農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、紫外線遮蔽性および透明性が良好であり、長期展張後においても、その特性に大きな変化がない。したがって、農業用フィルムとして性能かつ経済性の高いものとして有用である。特に、紫外線を遮蔽する環境下で栽培されるピーマン、トマト、ニラ、キュウリ、メロン等の栽培に有効に使用することができる。

Claims (7)

  1. 少なくとも3層構造の紫外線遮蔽性農業用ポリオレフィン系多層フィルムにおいて、
    エチレン・酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.8〜4.5質量部とハイドロカルマイト類0.1〜1.0質量部を配合した中間層と、前記中間層の両側に、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、金属酸化物系紫外線吸収剤0.2〜0.8質量部とベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.02〜0.5質量部を配合した外層をそれぞれ設け、前記農業用ポリオレフィン系多層フィルムの単位面積あたりに含まれる前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と前記金属酸化物系紫外線吸収剤の合計量が0.5〜1.3g/m であり、370nm以下の波長の紫外線を実質的に遮蔽することを特徴とする農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
  2. 前記外層の外側に、ポリオレフィン系樹脂を含む最外層をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
  3. 前記各層にヒンダードアミン系光安定剤を0.1〜2.0質量部を配合したことを特徴とする請求項1または2に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
  4. 前記ポリオレフィン系樹脂が高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよびエチレン・酢酸ビニル共重合体の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
  5. 前記農業用ポリオレフィン系多層フィルムの少なくとも一方の表面に防曇性塗膜を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
  6. エチレン・酢酸ビニル共重合体100質量部に対して、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.8〜4.5質量部とハイドロカルマイト類0.1〜1.0質量部を配合した中間層と、前記中間層の両側に、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、金属酸化物系紫外線吸収剤0.2〜0.8質量部とベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.02〜0.5質量部を配合した外層を含み、前記農業用ポリオレフィン系多層フィルムの単位面積あたりに含まれる前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と前記金属酸化物系紫外線吸収剤の合計量を0.5〜1.3g/m とし、少なくとも3層からなるポリオレフィン系多層フィルムを共押出インフレーション成形により製造したことを特徴とする農業用ポリオレフィン系多層フィルムの製造方法。
  7. 前記外層の外側に、ポリオレフィン系樹脂を含む最外層をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項6に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルムの製造方法。
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