JP7210401B2 - フィルム及び積層体 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1には、誘電損失の低減を目的とし、シリル基を含むエポキシ樹脂と、硬化剤と、シリカなどの無機フィラーとを含む絶縁樹脂組成物が記載されている。
また、次世代移動通信システムへの適用を考慮すると、従来の基板材料では、高周波における誘電特性が不十分となる可能性が高い。
すなわち、本発明の一態様は、下記のフィルム及び積層体である。
周波数1GHzにおける比誘電率が3以下であり、
周波数1GHzにおける誘電正接が0.005以下であり、
マイクロ波配向計で測定した分子配向度(MOR)の値が1~1.1の範囲であるフィルム。
<2>前記熱可塑性樹脂が液晶ポリエステルであり、
前記液晶ポリエステルが、ナフタレン構造を含む構造単位を有する、前記<1>に記載のフィルム。
<3>前記ナフタレン構造を含む構造単位の含有量が、前記液晶ポリエステル中の構造単位の合計量100モル%に対して40モル%以上である請求項2に記載のフィルム。
<4>前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される構造単位、下記式(2)で表される構造単位、及び下記式(3)で表される構造単位を有する、前記<2>又は<3>に記載のフィルム。
(1)-O-Ar1-CO-
(2)-CO-Ar2-CO-
(3)-O-Ar3-O-
(Ar1は、2,6-ナフタレンジイル基、1,4-フェニレン基、又は4,4’-ビフェニリレン基を表す。
Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、2,6-ナフタレンジイル基、2,7-ナフタレンジイル基、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、又は4,4’-ビフェニリレン基を表す。
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。)
<5>昇温速度5℃/分の条件で50~100℃の温度範囲において求められた線膨張係数が85ppm/℃以下である、前記<1>~<4>のいずれか一つに記載のフィルム。
<6>金属層と、前記金属層上に積層された前記<1>~<5>のいずれか一つに記載のフィルムと、を備える積層体。
<7>前記金属層を構成する金属が銅である、前記<6>に記載の積層体。
図1は、実施形態のフィルム11の構成を示す模式図である。
実施形態のフィルムは、熱可塑性樹脂を含み、周波数1GHzにおける比誘電率が3以下であり、周波数1GHzにおける誘電正接が0.005以下であり、マイクロ波配向計で測定した分子配向度(MOR)の値が1~1.1の範囲であるものである。
上記規定を満たすフィルムは、電子部品用フィルムとして好適な品質を有する。当該品質基準としては、上記の、比誘電率、誘電正接、及び分子配向度(フィルムの等方性)であり、その他、厚さ、および外観(孔又は貫通孔の発生の有無)が考慮される。
一例として、フィルムの比誘電率及び誘電正接の値は、熱可塑性樹脂の種類により制御可能である。また、一例として、フィルムの等方性の程度は、フィルムの製造方法により制御可能である。
本明細書において、「誘電特性」とは、比誘電率と誘電正接に関する特性をいう。
上記のフィルムの上記比誘電率の値の数値範囲の一例としては、2.3以上3以下であってもよく、2.4以上2.9以下であってもよく、2.5以上2.8以下であってもよく、2.5以上2.7以下であってもよく、2.5以上2.6以下であってもよい。
上記のフィルムの上記誘電正接の値の数値範囲の一例としては、0.0003以上0.005以下であってもよく、0.0005以上0.004以下であってもよく、0.0007以上0.003以下であってもよく、0.0007以上0.002以下であってもよく、0.0007以上0.001以下であってもよい。
なお、フィルムの周波数1GHzにおける比誘電率、及び誘電正接は、インピーダンスアナライザーを用いた容量法にて、実施例に記載の条件で測定することができる。
実施形態のフィルムは、上記線膨張係数において、MDの線膨張係数とTDの線膨張係数の差(MD>TDの場合はMD-TD、TD>MDの場合はTD-MD)が、2ppm/℃以下であることが好ましく、1ppm/℃以下であることがより好ましい。キャスト法により製膜されたルフィルムにおいて、MDとは、分散液の塗工方向とする。上記の線膨張係数の差の計算のとおり、実際は、異なる方向における線膨張係数が判明すればよいので、フィルムのMDとTDが不明である場合は、フィルムの任意の方向をMDとし、それと90°交わる方向をTDとした時、それぞれの方向の線膨張係数の差が最も大きくなる様に方向を設定すればよい。
上記数値範囲を満たす実施形態のフィルムは、線膨張の等方性に優れ、縦方向及び横方向の寸法安定性が高い。
以下、実施形態のフィルムが含んでもよい、液晶ポリエステルの詳細について説明する。
液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物に由来する構造単位のみを有する全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
なお、本明細書において「由来」とは、原料モノマーが重合するために、重合に寄与する官能基の化学構造が変化し、その他の構造変化を生じないことを意味する。
1)(i)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、(ii)芳香族ジカルボン酸と、(iii)芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの。
2)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの。
3)(i)芳香族ジカルボン酸と、(ii)芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合させてなるもの。
4)(i)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、(ii)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重合させてなるもの。
ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
2価の芳香族炭化水素基を含む構造単位を有する液晶ポリエステルとしては、
下記式(1)で表される構造単位、下記式(2)で表される構造単位、及び下記式(3)で表される構造単位を有するもの、又は
下記式(2)で表される構造単位、及び下記式(3)で表される構造単位を有するもの、
が挙げられる。
(1)-O-Ar1-CO-
(2)-CO-Ar2-CO-
(3)-O-Ar3-O-
(Ar1、Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す。
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。)
2価のナフタレン構造を含む構造単位を有する液晶ポリエステルとしては、例えば、
下記式(1)で表される構造単位、下記式(2)で表される構造単位、及び下記式(3)で表される構造単位を有するもの、又は
下記式(2)で表される構造単位、及び下記式(3)で表される構造単位を有するもの、
が挙げられる。
(1)-O-Ar1-CO-
(2)-CO-Ar2-CO-
(3)-O-Ar3-O-
(Ar1、Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基を表す(ただし、複数あるAr1、Ar2及びAr3の少なくとも一つはナフチレン基である)。
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。)
液晶ポリエステルが、上記式(2)で表される構造単位、及び上記式(3)で表される構造単位を有し、複数あるAr2及びAr3の少なくとも一つはナフチレン基である場合、複数あるAr2の少なくとも一つがナフチレン基であることが好ましい。
液晶ポリエステルにおける、ナフタレン構造を含む構造単位の含有量は、液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して90モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましい。ナフタレン構造を含む構造単位の含有量が上記上限値以下であることにより、液晶ポリエステルを生産する時の反応安定性を確保できる。
上記のナフタレン構造を含む構造単位の含有量の値の数値範囲の一例としては、40モル%以上90モル%以下であってもよく、50モル%以上80モル%以下であってもよく、60モル%以上80モル%以下であってもよい。
液晶ポリエステルは、上記式(1)~(3)で表される構造単位のうち、上記式(2)で表される構造単位及び上記式(3)で表される構造単位からなるものであってもよく、上記式(1)~(3)で表される全ての種類の構造単位からなるものであってもよい。
(1)-O-Ar1-CO-
(2)-CO-Ar2-CO-
(3)-O-Ar3-O-
(Ar1は、Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、ナフタレンジイル基、フェニレン基、又はビフェニリレン基を表す。
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。)
下記式(1)で表される構造単位、下記式(2)で表される構造単位、及び下記式(3)で表される構造単位を有する液晶ポリエステル。
(1)-O-Ar1-CO-
(2)-CO-Ar2-CO-
(3)-O-Ar3-O-
(Ar1は、2,6-ナフタレンジイル基、1,4-フェニレン基、又は4,4’-ビフェニリレン基を表す。
Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、2,6-ナフタレンジイル基、2,7-ナフタレンジイル基、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、又は4,4’-ビフェニリレン基を表す。
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。)
(1)-O-Ar1-CO-
(2)-CO-Ar2-CO-
(3)-O-Ar3-O-
(Ar1はナフタレンジイル基を表し、Ar2はナフタレンジイル基又はフェニレン基を表し、Ar3はフェニレン基を表す。
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。)
また、液晶ポリエステルにおける構造単位(2)の含有量の割合は、液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して、10モル%以上35モル%以下が好ましく、15モル%以上30モル%以下がより好ましく、17.5モル%以上27.5モル%以下がさらに好ましい。
また、液晶ポリエステルにおける構造単位(3)の含有量の割合は、液晶ポリエステル中の全構造単位の合計量100モル%に対して、10モル%以上35モル%以下が好ましく、15モル%以上30モル%以下がより好ましく、17.5モル%以上27.5モル%以下がさらに好ましい。
また、液晶ポリエステルにおける、構造単位(2)の含有量と構造単位(3)の含有量とは、等しいことが好ましいが、含有量が異なる場合は、構造単位(2)と構造単位(3)の含有量の差は、5モル%以下が望ましい。
液晶ポリエステルにおいて、構造単位(2)のうち、Ar2が2,6-ナフタレンジイル基であるものの含有量が、Ar2が2,6-ナフタレンジイル基であるもの及びAr2が1,4-フェニレン基であるものの合計量に対して、例えば2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位の含有量が、2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位及びテレフタル酸に由来する構造単位の合計量に対して、0.5モル倍以上が好ましく、0.6モル倍以上がより好ましい。
その際、前記各モノマーとしては、溶融重縮合を速やかに進行させるため、そのエステル形成性誘導体を用いることが好ましい。
非プロトン性溶媒に可溶な液晶ポリエステルとしては、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位、4’-ヒドロキシアセトアニリドに由来する構造単位、及びイソフタル酸に由来する構造単位からなる液晶ポリエステルであってよい。
(X)成分は、非プロトン性溶媒に可溶な液晶性ポリエステルである。ここで、「非プロトン性溶媒に可溶である」とは、下記の試験を行うことにより確認できる。
液晶性ポリエステルを非プロトン性溶媒中で120℃から180℃の温度で、1時間から6時間撹拌した後、室温(23℃)まで冷却する。次いで、5μmのメンブレンフィルター及び加圧式のろ過機を用いてろ過をした後、メンブレンフィルター上の残留物を確認する。この時、固形物が確認されない場合を非プロトン性溶媒に可溶と判断する。
より具体的には、液晶性ポリエステル1質量部を、非プロトン性溶媒99質量部中で、140℃で、4時間の条件で撹拌した後、23℃まで冷却する。次いで、5μmのメンブレンフィルター及び加圧式のろ過機を用いてろ過をした後、メンブレンフィルター上の残留物を確認する。この時、固形物が確認されない場合を非プロトン性溶媒に可溶と判断する。
但し、前記式(X1)で示される構造単位、前記式(X2)で示される構造単位及び前記式(X3)で示される構造単位の合計含有量は100モル%を超えない。
(X1) -O-Ar1-CO-
(X2) -CO-Ar2-CO-
(X3) ―X-Ar3-Y-
(X1~X3において、Ar1は、1,4-フェニレン基、2,6-ナフタレンジイル基、又は4,4’-ビフェニレン基を表わす。Ar2は、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、又は2,6-ナフタレンジイル基を表わす。Ar3は、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表わす。Xは-NH-であり、Yは、-O-又はNH-を表わす。)
フェノール性水酸基のエステル形成性誘導体としては、例えば、フェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成しているもの等が挙げられる。
アミノ基のアミド形成性誘導体としては、例えばアミノ基がカルボン酸類とアミドを形成しているもの等が挙げられる。
構造単位(X1)の含有量は、(X)成分を構成する全構造単位の含有量に対して、30モル%以上80モル%以下であり、40モル%以上70モル%以下であることが好ましく、45モル%以上65モル%以下であることがより好ましい。
構造単位(X1)が多いと溶媒への溶解性が著しく低下する傾向があり、少なすぎると液晶性を示さなくなる傾向がある。すなわち、構造単位(X1)の含有量が上記範囲内であると、溶媒への溶解性が良好であり、液晶性を示し易くなる。
構造単位(X2)の含有量は、(X)成分を構成する全構造単位の含有量に対して、10モル%以上35モル%以下が好ましく、15モル%以上30モル%以下がより好ましく、17.5モル%以上27.5モル%以下が特に好ましい。構造単位(X2)が多すぎると、液晶性が低下する傾向があり、少ないと溶媒への溶解性が低下する傾向がある。すなわち、構造単位(X2)の含有量が上記範囲内であると、液晶性が良好であり、溶媒への溶解性も良好となる。
これらの触媒の中で、N,N-ジメチルアミノピリジン、N-メチルイミダゾール等の窒素原子を少なくとも2個含む複素環状化合物が好ましく使用される(特開2002-146003号公報参照)。
前記触媒は、通常、モノマー類の投入時に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、前記触媒を除去しない場合にはそのままエステル交換を行なうことができる。
液晶性ポリエステルの製造は、例えば、回分装置、連続装置などを用いて行うことができる。
液晶性ポリエステル(X)を粉末状とする場合は、体積平均粒径が100~2000μmであることが好ましい。粉末状の液晶性ポリエステル(X)の体積平均粒径は、乾式ふるい分け法(例えば、(株)セイシン企業製RPS-105)により測定することができる。
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸940.9g(5.0モル)、4’-ヒドロキシアセトアニリド377.9g(2.5モル)、イソフタル酸415.3g(2.5モル)及び無水酢酸867.8g(8.4モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、撹拌しながら、室温(23℃)から140℃まで60分間かけて昇温し、140℃で3時間還流させる。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から300℃まで5時間かけて昇温し、300℃で30分間保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温(23℃)まで冷却する。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状の液晶性ポリエステル(X-1)を得ることができる。この液晶性ポリエステル(X-1)の流動開始温度は、193.3℃であってよい。
液晶性ポリエステル(X)8質量部を、N-メチルピロリドン(沸点(1気圧)204℃)92質量部に加え、窒素雰囲気下、140℃で4時間攪拌して、液晶性ポリエステル溶液(X’)を調製することができる。この液晶性ポリエステル溶液(X’)の粘度は、955mPa・sであってよい。
実施形態のフィルムの製造方法によれば、等方性に優れたフィルムを製造可能である。
実施形態のフィルムの製造方法によれば、誘電特性及び等方性に優れたフィルムを製造可能である。
実施形態のフィルムの製造方法は、支持体上に、樹脂組成物を塗布し、熱処理して、熱可塑性樹脂を含むフィルムを得ることを含むものである。
実施形態の樹脂組成物は、樹脂粉末と、媒体と、を含有するものである。樹脂組成物、樹脂粉末及び媒体の詳細については後述する。
熱可塑性樹脂は、液晶ポリエステルであることが好ましい。
以下、熱可塑性樹脂として液晶ポリエステルを用いた実施形態について説明する。
支持体上に、本発明に係る液晶ポリエステル組成物を塗布して、支持体上に液晶ポリエステルフィルムの前駆体を形成する工程(塗布工程)。
前記液晶ポリエステルフィルムの前駆体を熱処理して、液晶ポリエステルフィルムを得る工程(熱処理工程)。
すなわち、実施形態の液晶ポリエステルフィルムの製造方法は、支持体上に、本発明に係る液晶ポリエステル組成物を塗布し、塗布された液晶ポリエステル組成物から媒体を除去し、熱処理して、液晶ポリエステルを含む液晶ポリエステルフィルムを得ることを含むものであってもよい。
まず、液晶ポリエステル組成物30を支持体12上に塗布する(図3(a)塗布工程)。液晶ポリエステル組成物30は、液晶ポリエステル粉末1と媒体3とを含む。液晶ポリエステル液状組成物の支持体上への塗布は、ローラーコート法、ディップコート法、スプレイコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、及びスクリーン印刷法等の方法により行うことができ、支持体上に表面平滑かつ均一に塗布できる方法を適宜選択できる。また、液晶ポリエステル粉末の分布を均一化させるため、塗布の前に、液晶ポリエステル組成物を攪拌する操作を行ってもよい。
ポリイミド(PI)フィルムの市販品の例としては、宇部興産(株)の「U-ピレックスS」及び「U-ピレックスR」、東レデュポン(株)の「カプトン」、並びにSKCコーロンPI社の「IF30」、「IF70」及び「LV300」が挙げられる。樹脂フィルムの厚さは、通常25μm以上75μm以下であり、好ましくは50μm以上75μm以下である。金属箔の厚さは、通常3μm以上75μm以下であり、好ましくは5μm以上30μm以下であり、より好ましくは10μm以上25μm以下ある。
熱処理条件は、例えば、媒体の沸点の-50℃から熱処理温度に達するまで昇温した後、液晶ポリエステルの融点以上の温度で熱処理することが挙げられる。
この昇温時に、加熱により液晶ポリエステルの重合反応が進行する場合があるが、熱処理温度に達するまでの昇温速度を速くすることで、液晶ポリエステル粉末中の液晶ポリエステルの分子量の増加をある程度抑えることができ、液晶ポリエステル粉末の融解が良好となり、高品質のフィルムを容易に得ることができる。溶媒の沸点の-50℃から熱処理温度までの昇温速度は、3℃/分以上が好ましく、5℃/分以上がより好ましい。
熱処理温度は、液晶ポリエステルの融点以上が好ましく、液晶ポリエステルの融点より高い温度がより好ましく、液晶ポリエステルの融点+5℃以上の温度を熱処理温度とすることがさらに好ましい。熱処理温度は液晶ポリエステルの種類によって適宜定めればよいが、一例として230℃以上400℃以下が好ましく、300℃以上380℃以下がより好ましく、320℃以上350℃以下がさらに好ましい。液晶ポリエステルの融点より高い温度で熱処理を行うことで、液晶ポリエステル粉末の融解が良好となり、高品質な液晶ポリエステルフィルムを形成できる。液晶ポリエステル粉末が融解できたことは、液晶ポリエステルフィルム前駆体40が透明化したことで確認できる。
なお、ここでいう媒体の沸点とは、昇温時の圧力における沸点をいう。また、積層体前駆体22の加熱を、媒体の沸点の-50℃未満から開始する場合は、媒体の沸点の-50℃に達してから熱処理温度に達するまでの範囲で昇温速度を定めればよい。媒体の沸点-50℃に達するまでの時間は、任意である。また、熱処理温度に達した後の時間を熱処理時間として考えればよい。熱処理時間は、例えば0.5時間以上であってよく、1時間以上24時間以下であってよく、3時間以上12時間以下であってよい。
従来の溶融成形法では、融解させた液晶ポリエステルをフィルム状にすることで、液晶ポリエステルの薄膜を製造していたが、対して、実施形態の上記製造方法では、支持体上に予め薄く液晶ポリエステル粉末を配置した後、それを融解させる点で従来のフィルムの製造方法とは大きく異なる。
実施形態の液晶ポリエステルフィルム又は積層体の製造方法では、予め液晶ポリエステル粉末を支持体上に薄く配置して、それをフィルム化するので、押出成形等の分子配向に偏りを生じさせる要因となる物理的な力が加えられず、等方性に優れた液晶ポリエステルフィルムを製造可能である。
また、液晶ポリエステル粉末における前記液晶ポリエステルの数平均分子量が10000以下と比較的小さな値であることで、液晶ポリエステル組成物が塗布に適した性状となるとともに、熱処理時の液晶ポリエステルフィルムの融解の状態が良好となり、電子部品用フィルム用途として好適な、等方性に優れた高品質な液晶ポリエステルフィルムを製造可能である。
さらには、平均粒径が0.5~20μmの液晶ポリエステル粉末を原料として用いることにより、電子部品用フィルム用途として好適な薄さを有し、孔又は貫通孔の発生が抑制された高品質なポリエステルフィルムを容易に製造可能である。
尚且つ、液晶ポリエステル組成物においては、液晶ポリエステル粉末を媒体に溶解可能なものとすべき制限が無いため、誘電特性に優れた液晶ポリエステルを採用でき、誘電特性及び等方性に優れた液晶ポリエステルフィルムを容易に得ることが可能である。
実施形態の積層体は、金属層と、前記金属層上に積層された本発明に係るフィルムと、を備えるものである。
図2は、本発明の一実施形態の積層体21の構成を示す模式図である。積層体21は、金属層13と、金属層13上に積層されたフィルム11と、を備える。
積層体が備えるフィルムについては、上記に例示したものが挙げられ、説明を省略する。
積層体が備える金属層については、上記の≪フィルムの製造方法≫及び後述の≪積層体の製造方法≫において支持体として例示するものが挙げられ、金属箔が好ましい。金属層を構成する金属としては導電性やコストの観点で銅が好ましく、金属箔としては銅箔が好ましい。
実施形態の積層体の製造方法は、支持体上に、樹脂組成物を塗布し、熱処理して、熱可塑性樹脂を含むフィルムを形成することにより、前記支持体と前記フィルムとを備える積層体を得ることを含むものである。
熱可塑性樹脂は、液晶ポリエステルであることが好ましい。
以下、熱可塑性樹脂として液晶ポリエステルを用いた実施形態について説明する。
支持体上に、液晶ポリエステル組成物を塗布して、支持体上に液晶ポリエステルフィルム前駆体を形成する工程(塗布工程)。
前記液晶ポリエステルフィルム前駆体を熱処理して、前記支持体と前記液晶ポリエステルフィルムとを備える積層体を得る工程(熱処理工程)。
すなわち、実施形態の積層体の製造方法は、支持体上に、本発明に係る液晶ポリエステル組成物を塗布し、塗布された液晶ポリエステル組成物から媒体を除去し、熱処理して、液晶ポリエステルを含む液晶ポリエステルフィルムを形成することにより、前記支持体と前記液晶ポリエステルフィルムとを備える積層体を得ることを含むものであってもよい。
実施形態の樹脂組成物は、媒体と、樹脂粉末と、を含有するものである。樹脂組成物は、上記のフィルムの製造に好適に用いられる。
樹脂粉末は、液晶ポリエステル粉末であることが好ましい。樹脂粉末の詳細については後述する。
以下、熱可塑性樹脂として液晶ポリエステルを用いた実施形態について説明する。
実施形態の樹脂粉末は、数平均分子量が10000以下の熱可塑性樹脂を含み、平均粒径が0.5~20μmであるものである。
実施形態の樹脂粉末100質量%に対する熱可塑性樹脂の含有割合は、50~100質量%であってもよく、80~95質量%であってもよい。
以下、熱可塑性樹脂として液晶ポリエステルを用いた実施形態について説明する。
また、粉末の取り扱い易さの観点から、液晶ポリエステル粉末の平均粒径は、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。
上記の液晶ポリエステル粉末の平均粒径の値の数値範囲の一例としては、0.5μm以上20μm以下であってもよく、3μm以上18μm以下であってもよく、5μm以上15μm以下であってもよく、5μm以上10μm以下であってもよい。
上記の液晶ポリエステル粉末の上記比誘電率の値の数値範囲の一例としては、2.5以上3以下であってもよく、2.6以上2.78以下であってもよく、2.7以上2.76以下であってもよい。
上記の液晶ポリエステル粉末の上記誘電正接の値の数値範囲の一例としては、0.0003以上0.005以下であってもよく、0.0005以上0.004以下であってもよく、0.001以上0.003以下であってもよく、0.001以上0.0025以下であってもよく、0.001以上0.002以下であってもよい。
なお、液晶ポリエステル粉末の周波数1GHzにおける比誘電率、及び誘電正接は、インピーダンスアナライザーを用いた容量法にて、実施例に記載の条件で測定することができる。
ここで、媒体に不溶であるか否かは、下記の試験を行うことにより確認できる。以下の試験方法では、媒体が非プロトン性溶媒である場合について説明する。
液晶ポリエステル粉末(5重量部)を非プロトン性溶媒(媒体)(95重量部)中で180℃の温度で、アンカー翼を用いて200rpmの撹拌条件で6時間撹拌した後、室温まで冷却する。次いで、目開き5μmのメンブレンフィルターおよび加圧式のろ過機を用いてろ過をした後、メンブレンフィルター上の残留物を確認する。この時、固形物が確認されない場合を非プロトン性溶媒(媒体)に可溶と判断する。短径5μm以上の固形物が確認された場合は非プロトン性溶媒(媒体)に不溶と判断する。短径5μm以上の固形物は、顕微鏡観察により確認することができる。
上記の液晶ポリエステル粉末100質量%に含まれ得る残存酢酸量の値の数値範囲の一例としては、30質量ppm以上以上1質量%以下であってもよく、50質量ppm以上500質量ppm以下であってもよく、100質量ppm以上300質量ppm以下であってもよい。
実施形態の液晶ポリエステル粉末中の液晶ポリエステルの、数平均分子量が10000以下と比較的小さな値であることで、液晶ポリエステル組成物が塗布に適した性状となるとともに、熱処理時の液晶ポリエステルフィルムの融解の状態が良好となり、等方性に優れた液晶ポリエステルフィルムを製造可能な、フィルム化加工が可能となる。更に、実施形態の液晶ポリエステル粉末の、平均粒径が0.5~20μmであることで、電子部品用フィルム用途として好適な薄さを有し、孔又は貫通孔の発生が抑制された高品質なポリエステルフィルムが得られる。
従来、液晶ポリエステルフィルムは、液晶ポリエステルを溶融させる溶融成形法又はキャスト法により製造されることが一般的である。
溶融成形法は、混練物を押出機から押し出すことにより、フィルムを成形する方法である。しかし、溶融成形法により製造されたフィルムは、押出方向に対する横方向(押出方向及びフィルムの厚さ方向に対して直角方向、Transverse Direction(TD))よりも、製膜方向(押出方向ともいう、Machine Direction(MD))に液晶ポリエステル分子が配向してしまい、等方性に優れた液晶ポリエステルを得ることが難しい。
対して、実施形態の液晶ポリエステル粉末によれば、等方性に優れた液晶ポリエステルフィルムを製造可能である。実施形態の液晶ポリエステル粉末は、本発明に係るフィルムの製造方法の原料として好適であり、当該方法の適用により、上記押出による成形の操作を必要とせず、等方性に優れた液晶ポリエステルフィルムを容易に製造可能である。
ここで、液晶ポリエステルフィルムが「等方性に優れる」とは、液晶ポリエステルフィルムの分子配向度(MOR)の値が1~1.1の範囲であることを意味する。
溶液キャスト法により製造された液晶ポリエステルフィルムは、溶融成形法により形成された液晶ポリエステルフィルムよりも、液晶ポリエステルの配向が等方的である。しかしながら、溶液キャスト法を適用するには、溶媒に溶解可能な性質を有する液晶ポリエステルを用いなければならないという制限がある。溶媒への溶解性が高められた液晶ポリエステルでは、例えば極性が高められたことなどにより、誘電特性が低下する場合がある。このように、液晶ポリエステルフィルムの誘電特性と等方性とを高水準で両立させることは困難であった。
対して、実施形態の液晶ポリエステル粉末によれば、誘電特性と等方性とが両立された液晶ポリエステルフィルムを製造可能である。実施形態の液晶ポリエステル粉末は、本発明に係るフィルムの製造方法の原料として好適であり、当該方法の適用により、液晶ポリエステル粉末の溶媒への溶解の操作を必要とせず、等方性に優れた液晶ポリエステルフィルムを容易に製造可能である。また、誘電特性の優れた液晶ポリエステルを原料に用いることができるため、誘電特性及び等方性に優れた液晶ポリエステルフィルムを容易に製造可能である。
〔液晶ポリエステルの流動開始温度の測定〕
フローテスター((株)島津製作所の「CFT-500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000P)の粘度を示す温度(FT)を測定した。
示差走査熱量分析装置((株)島津製作所の「DSC-50」)を用いて、昇温速度10℃/分で昇温させ、吸熱ピークの位置を確認し、該吸熱ピークの頂点位置の温度を液晶ポリエステルの融点として測定した。
ゲル浸透クロマトグラフ―多角度光散乱光度計(示差屈折率計(島津製作所製:RID-20A)、多角度光散乱検出器(Wyatt Technology製EOS)、カラム(昭和電工製:Shodex K-G、K-806M(2本)、K-802(1本)(φ8.0mm×30cm))、溶媒(ペンタフルオロフェノール/クロロホルム(重量比 35/65)))を用いて、液晶ポリエステル微粒子粉末に含まれる液晶ポリエステルの数平均分子量を測定した。測定用試料溶液は、試料2mgをペンタフルオロフェノール1.4gに添加し、80℃2時間溶解させ、室温まで冷却後クロロホルム2.6gを添加、さらに溶媒(ペンタフルオロフェノール/クロロホルム(重量比 35/65))で2倍希釈した後、孔径0.45μmのフィルターを用いてろ過し、調製した。
ヘッドスペースガスクロマトグラフ装置(島津製作所製:GC-2014)を用いて、120℃、20hの抽出条件、200℃、1hの分析条件で液晶ポリエステル微粒子粉末中の残存酢酸量を分析した。
液晶ポリエステル微粒子粉末をフローテスター((株)島津製作所の「CFT-500型」)を用いて測定された融点よりも5℃高い温度で溶融させた後、冷却固化させることにより、直径1cm、厚さ0.5cmの錠剤を作製した。得られた錠剤に対して、下記条件にて1GHzにおける比誘電率、誘電正接を測定した。
・測定方法:容量法(装置:インピーダンスアナライザー(Agilent社製 型式:E4991A))
・電極型式:16453A
・測定環境:23℃、50%RH
・印加電圧:1V
液晶ポリエステル微粒子粉末を0.01g秤量し、純水約10g中に分散させた。調整した液晶ポリエステル微粒子粉末の分散液を5分間超音波で分散した。散乱式粒子径分布測定装置((株)HORIBAの「LA-950V2」)を用いて、純水の屈折率を1.333として、液晶ポリエステル微粒子粉末の体積基準の累積粒度分布を測定し、平均粒径(D50)を算出した。
液晶ポリエステルフィルムをフローテスター((株)島津製作所の「CFT-500型」)を用いて350℃で溶融させた後、冷却固化させることにより、直径1cm、厚さ0.5cmの錠剤を作製した。得られた錠剤に対して、下記条件にて1GHzにおける比誘電率、誘電正接を測定した。
・測定方法:容量法(装置:インピーダンスアナライザー(Agilent社製 型式:E4991A))
・電極型式:16453A
・測定環境:23℃、50%RH
・印加電圧:1V
フィルムを5cmの正方形にカットしホルダーに設置して、分子配向計(王子計測機器(株)製、型式:MOA-5012A)を用いて周波数12GHz、回転速度1rpmの条件で分子配向度の測定を行った。
熱機械分析装置((株)リガク製、型式:TMA8310)を用いて、昇温速度5℃/分で50℃から100℃までの線膨張係数を測定した。測定は、液晶ポリエステルフィルムの流れ方向(MD)とその直角方向(TD)に対して行った。なお、キャスト法により製膜された各実施例、参考例又は比較例の液晶ポリエステルフィルムにおいて、流れ方向(MD)とは、分散液の塗工方向とした。
[実施例1]
・液晶ポリエステル(A)の製造
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸1034.99g(5.5モル)、2,6-ナフタレンジカルボン酸378.33g(1.75モル)、テレフタル酸83.07g(0.5モル)、ヒドロキノン272.52g(2.475モル、2,6-ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸の合計モル量に対して0.225モル過剰)、無水酢酸1226.87g(12モル)、及び触媒として1-メチルイミダゾール0.17gを入れた。反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から145℃まで15分かけて昇温し、145℃で1時間還流させた。
次いで、副生した酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温し、310℃で3時間保持した後、固形状の液晶ポリエステルを取り出し、この液晶ポリエステルを室温まで冷却し、液晶ポリエステル(A)を得た。この液晶ポリエステル(A)の流動開始温度は、268℃であった。この液晶ポリエステル(A)を、オリエント粉砕機(株)製のカッターミルVM-16で粉砕し、平均粒径394μmの液晶ポリエステル(A)の粉末を得た。
次いで、ジェットミル(栗本鐡工製の「KJ-200」、粉砕ノズル径:4.5mm)を用いて、分級ローター回転数10000rpm、粉砕ノズル圧0.64MPa、処理速度を2.1kg/時間に設定して、液晶ポリエステル(A)の粉末を粉砕し、実施例1の液晶ポリエステル微粒子粉末を得た。この液晶ポリエステル微粒子粉末の平均粒径は8μmであった。また、実施例1の液晶ポリエステル微粒粉末子を、示差走査熱量分析装置を用いて融点を測定した結果、290℃であった。
ジェットミル(栗本鐡工製の「KJ-200」)の処理条件を、分級ローター回転数10000rpm、粉砕ノズル圧0.63MPa、処理速度を2.6kg/時間に設定して液晶ポリエステル粉末を粉砕した以外は、実施例1の液晶ポリエステル微粒子粉末の製造と同様にして、参考例1の液晶ポリエステル微粒子粉末を得た。この液晶ポリエステル微粒子粉末の平均粒径は10μmであった。
ジェットミル(栗本鐡工製の「KJ-200」)の処理条件を、分級ローター回転数10000rpm、粉砕ノズル圧0.60MPa、処理速度を4.0kg/時間に設定して液晶ポリエステル粉末を粉砕した以外は、実施例1の液晶ポリエステル微粒子粉末の製造と同様にして、参考例2の液晶ポリエステル微粒子粉末を得た。この液晶ポリエステル微粒子粉末の平均粒径は15μmであった。
ジェットミルに代えて、凍結・衝撃式粉砕機(ホソカワミクロン製リンレックスミル)を用い、処理速度を10kg/時間に設定して液晶ポリエステル粉末を粉砕した以外は、実施例1の液晶ポリエステル微粒子粉末の製造と同様にして、参考例3の液晶ポリエステル微粒子粉末を得た。この液晶ポリエステル微粒子粉末の平均粒径は27μmであった。
・液晶ポリエステル(D)の製造
実施例1で得た液晶ポリエステル(A)の粉末をSUS製トレイに充填し、290℃6時間の熱処理を行い、液晶ポリエステル(D)を得た。
次いでジェットミル(栗本鐡工製の「KJ-200」)を用いて、分級ローター回転数10000rpm、粉砕ノズル圧0.60MPa、処理速度を0.1kg/時間に設定してこの液晶ポリエステル(D)の粉末を粉砕した以外は、実施例1の液晶ポリエステル微粒子粉末の製造と同様にして、比較例1の液晶ポリエステル微粒子粉末を得た。この液晶ポリエステル微粒子粉末の平均粒径は7μmであった。
[実施例1-1、参考例1-1~3-1、比較例1-1]
・分散液の調製
上記の実施例1、参考例1~3、及び比較例1のそれぞれの液晶ポリエステル微粒子粉末8重量部を、N-メチル2-ピロリドン(沸点(1気圧)204℃)92重量部に加え、(株)シンキー製の撹拌脱泡機AR-500を用いて撹拌し、各分散液を得た。
上記の各分散液を、銅箔(三井金属鉱業製 3EC-VLP 18μm)の粗化面に、流延膜の厚さが300μmとなるように、マイクロメーター付フィルムアプリケーター(SHEEN社の「SA204」)と自動塗工装置(テスター産業(株)の「I型」)とを用いて流延した後、40℃、常圧(1気圧)にて、4時間乾燥することにより、流延膜から溶媒を除去した。比較例1-1については、分散液がゲル状になり流延できず、フィルム化できなかった。
各フィルムの外観を確認した。参考例3-1の液晶ポリエステルフィルムは、表面に多数の穴が発生しており、外観が不良であり、電子部品用フィルムとして好適でない品質であった。
また、平均粒径が0.5~20μmの範囲を満たさない参考例3の液晶ポリエステル微粒子粉末を原料に製造された、参考例3-1の液晶ポリエステルフィルムは、表面に多数の穴が発生しており、外観が不良であった。対して、平均粒径が0.5~20μmの範囲を満たす実施例1、参考例1~2の液晶ポリエステル微粒子粉末を原料に製造された、実施例1-1、及び参考例1-1~2-1の液晶ポリエステルフィルムは、厚みが薄くかつ外観にも優れたものであった。実施例1-1および参考例1-1~3-1の液晶ポリエステルフィルムの外観評価の結果を、穴の発生が見られず外観に優れたものを「G」、多数の穴が発生し外観が不良であるものを「F」として表1に記載した。
上記実施例1で得られた液晶ポリエステル(A)の液晶ポリエステル微粒子粉末を原料として、熱処理条件を変えて、実施例1-1~1-5の液晶ポリエステルフィルムを製造した。なお、実施例1-1の液晶ポリエステルフィルムは、上記実施例1-1と同じ製法により得られたものである。
・分散液の調製
上記の実施例1で製造した液晶ポリエステル(A)の液晶ポリエステル微粒子粉末8重量部を、92重量部のN-メチル2-ピロリドンに投入し、(株)シンキー製の撹拌脱泡機AR-500を用いて撹拌し、分散液を得た。
上記の各分散液を、銅箔(三井金属鉱業製 3EC-VLP 18μm)の粗化面に、流延膜の厚さが300μmとなるように、マイクロメーター付フィルムアプリケーター(SHEEN社の「SA204」)と自動塗工装置(テスター産業(株)の「I型」)とを用いて流延した後、40℃、常圧(1気圧)にて、4時間乾燥することにより、流延膜から溶媒を除去した。
上記の乾燥後、さらに窒素雰囲気下熱風オーブン中で室温から310℃まで7℃/分で昇温し、その温度で6時間保持する熱処理を行い、実施例1-1の銅箔付き液晶ポリエステルフィルムを得た。
上記熱処理条件を、室温から330℃まで7℃/分で昇温した以外は、上記実施例1-1の銅箔付き液晶ポリエステルフィルムの製造と同様にして、実施例1-2の銅箔付き液晶ポリエステルフィルムを得た。
上記熱処理条件を、室温から310℃まで4℃/分で昇温した以外は、上記実施例1-1の銅箔付き液晶ポリエステルフィルムの製造と同様にして、実施例1-3の銅箔付き液晶ポリエステルフィルムを得た。
上記熱処理条件を、室温から300℃まで7℃/分で昇温した以外は、上記実施例1-1の銅箔付き液晶ポリエステルフィルムの製造と同様にして、実施例1-4の銅箔付き液晶ポリエステルフィルムを得た。
上記熱処理条件を、室温から310℃まで3℃/分で昇温した以外は、上記実施例1-1の銅箔付き液晶ポリエステルフィルムの製造と同様にして、実施例1-5の銅箔付き液晶ポリエステルフィルムを得た。
有機溶媒に溶解可能な液晶ポリエステルを製造し、それを原料として、以下のとおり比較例2の液晶ポリエステルフィルムを製造した。
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸940.9g(5.0モル)、4’-ヒドロキシアセトアニリド377.9g(2.5モル)、イソフタル酸415.3g(2.5モル)及び無水酢酸867.8g(8.4モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、撹拌しながら、室温から140℃まで60分かけて昇温し、140℃で3時間還流させた。
次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から300℃まで5時間かけて昇温し、300℃で30分保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状の液晶ポリエステル(B1)を得た。この液晶ポリエステル(B1)の流動開始温度は、193.3℃であった。
液晶ポリエステル(B)8質量部を、N-メチルピロリドン(沸点(1気圧)204℃)92質量部に加え、窒素雰囲気下、140℃で4時間攪拌して、液晶ポリエステル溶液を調製した。この液晶ポリエステル溶液の粘度は、955mPa・sであった。
液晶ポリエステル溶液を、銅箔(三井金属鉱業製 3EC-VLP 18μm)の粗化面に、流延膜の厚さが300μmとなるように、マイクロメーター付フィルムアプリケーター(SHEEN社の「SA204」)と自動塗工装置(テスター産業(株)の「I型」)とを用いて流延した後、40℃、常圧(1気圧)にて、4時間乾燥することにより、流延膜から溶媒を除去した。さらに、乾燥した液晶ポリエステル(B)の表面に流延膜の厚さが300μmとなるように2回目の流延を行い、40℃、常圧(1気圧)にて、4時間乾燥することにより、流延膜から溶媒を除去した。
・液晶ポリエステル(C)の製造
上記実施例1で得られた液晶ポリエステル(A)の粉末をSUS製トレイに充填し、280℃6時間の熱処理を行い、液晶ポリエステル(C)を得た。得られた液晶ポリエステル(C)の流動開始温度は306℃であった。
得られた液晶ポリエステル(C)100重量部を、2軸押出機(池貝鉄工(株)製「PCM-30」)を用いて、325℃で造粒し、ペレットを得た。また、このペレットを、示差走査熱量分析装置を用いて融点を測定した結果、319℃であった。
比較例2の液晶ポリエステルフィルムは、液晶ポリエステル微粒子粉末の溶液を銅箔上にキャスト(表中「溶液キャスト」と略する)して得られたものであるため、無配向ではあるが、溶液キャスト法においては溶媒に溶解可能な液晶ポリエステルを原料とする制限があるため、誘電特性に劣る傾向にあった。
比較例3の液晶ポリエステルフィルムは、インフレーション法により得られたものであるため、分子配向度(MOR)が高い傾向にあり、MDとTDとで線膨張にも差が生じるものであった。
Claims (6)
- 熱可塑性樹脂を含み、
周波数1GHzにおける比誘電率が2.9以下であり、
周波数1GHzにおける誘電正接が0.005以下であり、
マイクロ波配向計で測定した分子配向度(MOR)の値が1~1.1の範囲であり、
前記熱可塑性樹脂が液晶ポリエステルであり、前記液晶ポリエステルが、ナフタレン構造を含む構造単位を有し、前記ナフタレン構造を含む構造単位の含有量が、前記液晶ポリエステル中の構造単位の合計量100モル%に対して60モル%以上である、フィルム。 - 前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される構造単位、下記式(2)で表される構造単位、及び下記式(3)で表される構造単位を有する、請求項1に記載のフィルム。
(1)-O-Ar1-CO-
(2)-CO-Ar2-CO-
(3)-O-Ar3-O-
(Ar1は、2,6-ナフタレンジイル基、1,4-フェニレン基、又は4,4’-ビフェニリレン基を表す。
Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、2,6-ナフタレンジイル基、2,7-ナフタレンジイル基、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、又は4,4’-ビフェニリレン基を表す。
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。) - 昇温速度5℃/分の条件で50~100℃の温度範囲において求められた線膨張係数が85ppm/℃以下である、請求項1又は2に記載のフィルム。
- 厚さが5~50μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム。
- 金属層と、前記金属層上に積層された請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルムと、を備える積層体。
- 前記金属層を構成する金属が銅である、請求項5に記載の積層体。
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