JP7208554B1 - 含フッ素ポリマーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】含フッ素ポリマーが重合槽に付着することを簡便かつ効果的に防止できる新規な方法を提供する。【解決手段】含フッ素ポリマーの製造方法であって、(a)重合槽の金属製の内表面のうち、少なくとも、下記(b)の間に反応混合物と接触し得る領域を、リン酸および/またはリン酸塩と極性溶媒とを含む処理剤で処理して、付着防止被膜を前記領域上に形成し、および(b)前記重合槽にて、少なくとも含フッ素モノマーを、含フッ素溶媒と水とを含む反応混合物中で懸濁重合により重合させて含フッ素ポリマーを得ることを含む、製造方法。【選択図】なし

Description

本開示は、含フッ素ポリマーの製造方法に関する。
含フッ素ポリマーは、含フッ素モノマーを(場合によりフッ素非含有モノマーと共に)重合することによって製造される。含フッ素ポリマーを製造するための重合方法には、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合などがある。懸濁重合では、重合槽の内表面(より詳細には、内壁面および存在する場合には攪拌翼、バッフル等の表面を含む)に生成ポリマーが付着するという問題があった。
国際公開第2009/014138号 特開昭48-11386号公報 特開平4-261403号公報
特許文献1の背景技術記載のようにグラスライニングを内壁面に施した重合槽を用いた場合、重合槽の大型化が困難であり、更に、重合圧力に制限があるため重合速度が小さいなど、含フッ素ポリマーの製造効率の向上に限度があった(特許文献1の背景技術参照)。また、グラスライニングを攪拌翼、バッフル等の全てにまで施すことは、製造コストの増大を招く等の難点があった。また特許文献1に記載のように懸濁安定剤を用いた場合、上述のような課題は解消されるが、特許文献1に記載のような処理が必要になり、製造コスト的には改善の余地があった。
他方、テトラフルオロエチレンの水性懸濁重合や、スチレン等のビニル系単量体の重合においては、重合槽の内表面をリン酸および/またはリン酸塩の水性溶液で処理することにより、重合槽への生成ポリマーの付着を防止できることが知られている(特許文献2~3参照)。より詳細には、例えば特許文献2には、かかる処理は、重合槽にリン酸またはリン酸塩の水溶液を満たして約1時間放置後、該水溶液を抜き取り、次いで、純水でリン酸イオンが検出されなくなるまで水洗するか、あるいは、リン酸またはリン酸塩の水溶液をジェット噴射器で重合槽壁などに約10分間噴射し、次いで、純水でリン酸イオンが検出されなくなるまで水洗することによって実施されることが記載されている。
本開示の目的は、含フッ素ポリマーを製造する方法であって、含フッ素ポリマーが重合槽に付着することを簡便かつ効果的に防止できる新規な方法を提供することにある。
[1]
含フッ素ポリマーの製造方法であって、
(a)重合槽の金属製の内表面のうち、少なくとも、下記(b)の間に反応混合物と接触し得る領域を、リン酸および/またはリン酸塩と極性溶媒とを含む処理剤で処理して、付着防止被膜を前記領域上に形成し、および
(b)前記重合槽にて、少なくとも含フッ素モノマーを、含フッ素溶媒と水とを含む反応混合物中で懸濁重合により重合させて含フッ素ポリマーを得る
ことを含む、製造方法。
[2]
前記付着防止被膜のP含有量が1原子%以上10原子%以下である、上記[1]に記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
[3]
前記処理剤における前記リン酸および/またはリン酸塩の濃度が、0.1質量%以上15質量%以下である、上記[1]または[2]に記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
[4]
前記処理剤が、ピロリン酸金属塩の水性溶液である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
[5]
前記処理剤が、ピロリン酸ナトリウムの水性溶液である、上記[4]に記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
[6]
前記付着防止被膜のNa含有量が、1原子%以上20原子%以下である、上記[5]に記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
[7]
前記重合槽の前記内表面を成す金属が、ステンレス鋼、ニッケル合金鋼および炭素鋼からなる群より選択される少なくとも1つである、上記[1]~[6]のいずれかに記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
[8]
前記含フッ素ポリマーが、10μm以上2000μm以下の平均粒子サイズを有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
[9]
前記(b)の後、
(c)含フッ素ポリマーを含む反応混合物の実質的に全部を前記重合槽から抜き出し、その後、
前記(a)および前記(b)を繰り返す
ことを更に含む、上記[1]~[8]のいずれかに記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
[10]
前記(c)において、前記反応混合物が、含フッ素ポリマーと水とを含み、含フッ素溶媒を実質的に含まない、上記[9]に記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
本開示によれば、含フッ素ポリマーを製造する方法であって、含フッ素ポリマーが重合槽に付着することを簡便かつ効果的に防止できる新規な方法が提供される。
本発明者らの研究により、少なくとも含フッ素モノマーを、含フッ素溶媒と水とを含む反応混合物中で懸濁重合により重合させて含フッ素ポリマーを製造する場合には、重合槽の金属製の内表面に、上述した既知の従来の処理を施しても、含フッ素ポリマーの付着を防止できないことが判明した。
本発明者らは、リン酸および/またはリン酸塩を含む処理剤から形成される被膜(付着防止被膜)について分析および評価し、更なる鋭意研究を重ね、本開示を完成するに至った。以下、本開示の1つの実施形態における含フッ素ポリマーの製造方法について詳述する。
本実施形態において、含フッ素ポリマーの製造方法は、
(a)重合槽の金属製の内表面のうち所定の領域を、リン酸および/またはリン酸塩と極性溶媒とを含む処理剤で処理して、付着防止被膜(本明細書において単に「被膜」とも言う)を上記領域上に形成し、および
(b)上記重合槽にて、少なくとも含フッ素モノマーを反応混合物中で懸濁重合により重合させて含フッ素ポリマーを得る
ことを含む。以下、各工程につき、より詳細に説明する。
・工程(a)
まず、工程(b)の重合前に、重合槽の内表面を処理剤で処理する。
重合槽は、金属製の内表面を有するものであれば特に限定されない。より詳細には、重合槽は、少なくとも内壁面(側壁内面、底部内面および天板(蓋)内面を含む)が金属製であり得る。重合槽は、場合により、攪拌翼および/またはバッフル(邪魔板)等を含んでいてよく、これらの表面が金属製であり得る。
金属製の内表面を有する重合槽は、特許文献1の背景技術に記載のような内壁面にグラスライニングが施されている場合に比べて、耐圧性が高い。重合槽の内表面を成す金属は、1種または2種以上の任意の金属であってよく、例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金鋼および炭素鋼からなる群より選択される少なくとも1つであり得る。
より詳細には、かかる重合槽の金属製の内表面のうち、所定の領域を処理剤で処理する。所定の領域は、少なくとも、工程(b)の間に反応混合物と接触し得る領域を含んでいればよく、好ましくは金属製の内表面の実質的に全部であり得る。
処理剤は、リン酸および/またはリン酸塩と極性溶媒とを含む液状物質である。
リン酸および/またはリン酸塩は、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸などのリン酸類、ならびにかかるリン酸類と金属(例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、マンガン等)との塩からなる群より選択される少なくとも1つであり得る。リン酸および/またはリン酸塩は、例えばピロリン酸金属塩であり得、代表的にはピロリン酸金属ナトリウムであり得る。
極性溶媒は、リン酸および/またはリン酸塩を溶解させ得るものであればよく、通常、水性溶媒であり得る。水性溶媒は、水および場合により水と相溶性の液状物質(例えばアルコール)から構成され得、好ましくは水である。
処理剤は、リン酸および/またはリン酸塩が水性溶媒に溶解した水性溶液であり得る。処理剤は、例えばピロリン酸金属塩の水性溶液であり得、代表的にはピロリン酸ナトリウムの水性溶液であり得る。
処理剤におけるリン酸および/またはリン酸塩の濃度は、具体的な処理条件および/または含フッ素ポリマーの製造条件に応じて選択され得る。処理剤におけるリン酸および/またはリン酸塩の濃度は、例えば、0.1質量%以上15質量%以下であり得、好ましくは1質量%以上および/または10質量%以下であり得る。
処理剤は、リン酸および/またはリン酸塩および極性溶媒の他、任意の適切な他の成分を比較的低い濃度で含んでいてもよい。
重合槽の内表面を処理剤で処理する処理方法は、重合槽の内表面(より詳細には上記所定の領域)に処理剤を所定の接触時間に亘って接触させることであり得る。接触時間は、初回の場合には、例えば3時間以上であり得、好ましくは10時間以上であり得る。このように、比較的長い時間に亘って処理剤を接触させることにより、強固で、後述するように、含フッ素ポリマーの付着防止に優れた被膜を形成することができる。なお、接触時の温度は、特に限定されないが、例えば80℃以上100℃以下であり得る。
上記処理方法は、例えば、重合槽に処理剤を満たして所定の接触時間に亘って維持した後、処理剤の残部(被膜の形成に利用された分を除く部分)を重合槽から抜き出して回収すること、あるいは、処理剤をジェット噴射器で重合槽の内表面に所定の接触時間に亘って噴射し、その間/その後に、処理剤の残部(被膜の形成に利用された分を除く部分)を重合槽から抜き出して回収することであってよい。
上記処理方法は、好ましくは、処理剤の残部を重合槽から抜き出した後、重合槽の内表面を(リン酸イオンが検出されなくなる程度まで)純水で洗浄することを含む。
上記処理方法は、処理剤との接触および/または洗浄の後に、加熱を含んでいてよい。
このように、極めて簡便な操作で、重合槽の金属製の内表面のうち、所定の領域の全てを処理することができる。
以上のような処理の結果、上記所定の領域上に被膜が形成される。この被膜は、処理剤に由来して形成され、P(リン)を含有する。被膜のP含有量は、1原子%(例えば1.0原子%)以上10原子%以下あり得、好ましくは3原子%(例えば3.0原子%)以上および/または7原子%(例えば7.0原子%)以下であり得る。本発明者らの研究により、上記のようなP含有量を示す被膜は、強固で、後述するように、含フッ素ポリマーの付着防止に優れることが判明した。
本実施形態を限定するものではないが、処理剤が、ピロリン酸ナトリウムの水性溶液である場合、被膜のNa含有量は、1原子%(例えば1.0原子%)以上20原子%以下であり得、好ましくは5原子%(例えば5.0原子%)以上および/または18原子%以下であり得る。
被膜中の元素(上述したP、Na等)の含有量は、X線光電子分光法(XPS)により測定される。
・工程(b)
次いで、以上のようにして処理(被膜形成)した重合槽にて、少なくとも含フッ素モノマーを反応混合物中で懸濁重合により重合させて含フッ素ポリマーを得る。
反応混合物は、含フッ素溶媒と水とを含む。含フッ素溶媒は、含フッ素モノマーを溶解させ得る液状物質であればよい。含フッ素溶媒は、含フッ素モノマーそれ自体であってもよい。含フッ素溶媒は、重合の反応場として機能する。本実施形態を限定するものではないが、含フッ素モノマーが溶解した(または含フッ素モノマーそれ自体である)含フッ素溶媒が水中に懸濁した状態で、あるいはこの逆の状態で、重合反応が進行する。反応混合物は、生成した含フッ素ポリマーを含むことになる。
含フッ素モノマーは、フッ素原子を含むモノマーである。含フッ素モノマーに加えて、場合により、フッ素非含有モノマーを一緒に重合(共重合)させてよい。フッ素非含有モノマーは、フッ素原子を含まないモノマーである。含フッ素モノマーおよび場合によりフッ素非含有モノマーは、製造する含フッ素ポリマーに応じて選択される。
含フッ素ポリマーは、例えば、150℃以上340℃以下の融点を有するものであり得る。別の観点から、含フッ素ポリマーは、樹脂であり得る。
より具体的には、含フッ素ポリマーとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライド、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロ(1,1,5-トリハイドロ-1-ペンテン)、及び、パーフルオロブチルエチレンよりなる群から選択される少なくとも1種以上のモノマーからなるもの(ただし、エチレンのみからなるものは、含フッ素ポリマーではないので除かれる)が好ましく、溶融加工可能な含フッ素ポリマーがより好ましく、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体〔FEP〕、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体〔PFA〕、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)〔PCTFE〕、テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体〔CPT〕、テトラフルオロエチレン/エチレン/パーフルオロ(1,1,5-トリハイドロ-1-ペンテン)共重合体〔ETFE〕、テトラフルオロエチレン/エチレン/パーフルオロブチルエチレン重合体〔ETFE〕、テトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(1,1,5-トリハイドロ-1-ペンテン)共重合体〔EFEP〕、テトラフルオロエチレン/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロブチルエチレン共重合体〔EFEP〕、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体〔ECTFE〕、ポリ(ビニリデンフルオライド)〔PVdF〕、テトラフルオロエチレン/ビニリデンフルオライド共重合体〔VT〕、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体〔THV〕等が更に好ましい。これらのなかでも、C-H結合を含まず、酸化処理に対する耐性が高いパーハロポリマー、FEP、PFA、PCTFE、CPTが特に好ましい。しかしながら、溶融加工可能なものに限定されず、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよい。
反応混合物は、重合開始剤等を更に含んでいてよい。懸濁重合に使用する重合開始剤としては、一般的にラジカル重合に用いられる油溶性の各種有機過酸化物、あるいは、水溶性の過硫酸塩などを適宜用いることができるが、特に、パーオキシカーボネート、パーオキシエステルといった有機過酸化物、すなわち、ジ(クロロフルオロアシル)パーオキサイド、ジ(フルオロアシル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-i-ブチリルパーオキサイド等を好適に用いることができる。なかでも、分解速度(半減期)、頻度因子、コストなどの点から炭化水素系の有機過酸化物である、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートが好ましい。
反応混合物は、懸濁安定剤を含んでいても、懸濁安定剤を含まなくてもよい。懸濁安定剤を使用しない場合、最終的に得られる含フッ素ポリマーの純度がより高くなる。懸濁安定剤を使用する場合、生成する含フッ素ポリマーの粒子の形状および/または寸法のバラつきをより低減できる。
懸濁安定剤としては、大きく分けて、無機コロイド系のものと、炭化水素系重合物からなるものの2つがあるが、酸化によって効率よく系から除去でき、また、得られた含フッ素ポリマー内に金属を残留させない点で、炭化水素系重合物からなるものであることが好ましい。上記懸濁安定剤は、重合開始前に重合水に溶解させて使用することができる。上記炭化水素系重合物としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアスパラギン酸等が挙げられ、なかでも、安全性、低コスト、実績の観点から、ポリビニルアルコール又はメチルセルロースが好ましい。
上記懸濁重合の重合条件は、目的とする含フッ素ポリマーの種類、物性等に応じて適宜設定することができる。特に重合圧力は、従来の懸濁重合よりも高圧とすることができ、例えば、特許文献1の背景技術に記載のようなグラスライニングを施した重合槽の実質的な上限圧力と言われている2.0MPaゲージ圧(以下MPaGと記載)を越える圧力の下でも何ら問題なく行うことができる。より高い重合圧力を適用することにより、反応時間を短縮することができる。
上記懸濁重合は、連続式、バッチ式、セミバッチ式等の任意の形態で実施してよい。セミバッチ式の場合、重合操作の途中で、含フッ素モノマーおよび場合によりフッ素非含有モノマーが適宜追加され、また、重合開始剤等が適宜追加され得る。
以上のようにして得られる含フッ素ポリマーは、粒子状の形態を有し得る。含フッ素ポリマーの平均粒子サイズは、10μm以上2000μm以下であり得る。
本実施形態によれば、金属製の内表面(より詳細には上記所定の領域)に上記被膜が形成された重合槽にて、少なくとも含フッ素モノマーを重合させて含フッ素ポリマーを製造しているので、含フッ素溶媒と水とを含む反応混合物中で懸濁重合により重合させても、重合槽に含フッ素ポリマーが付着することを効果的に防止できる。重合槽から反応混合物を抜き出した後に、重合槽に含フッ素ポリマーが付着していることがあり得るが、付着強度が極めて小さいので、小さな外力を加えるだけで容易に除去でき、ジェット洗浄により十分に除去することができる。この結果、重合槽に付着した含フッ素ポリマーを除去するために要する労力を削減できる。
これに対して、少なくとも含フッ素モノマーを、含フッ素溶媒と水とを含む反応混合物中で懸濁重合により重合させて含フッ素ポリマーを製造するときに、重合槽の金属製の内表面に本実施形態のような被膜が形成されていない場合には、重合槽に含フッ素ポリマーが強固に付着する。このように強固に付着した含フッ素ポリマーは、重合槽から反応混合物を抜き出した後にジェット洗浄しても除去することができない。
本実施形態はいかなる理論によっても拘束されないが、この理由は、次のように考えられ得る。金属表面は、通常、疎水性であり得る。含フッ素溶媒(液状物質、含フッ素モノマーそれ自体であり得る)も、通常、疎水性であり、被膜が形成されていない疎水性の金属表面に対して親和性が高く、金属表面上で濡れ広がり易い。かかる含フッ素溶媒に、含フッ素モノマー(含フッ素溶媒であってよい)および重合開始剤が溶解し、金属表面上で重合反応が進行して含フッ素ポリマーが生じ得る。このため、金属表面上で含フッ素モノマーの重合が起こり易く、および/または、金属表面に付着した含フッ素ポリマーに含フッ素モノマーが更に重合していき易く、その結果、被膜が形成されていない金属表面に含フッ素ポリマーが強固に付着することとなると考えられる。しかしながら、本実施形態によれば、金属表面に、上述した処理により被膜(付着防止被膜)が形成されていることで、この被膜の表面が十分に親水性になり、上記と反対の作用が働き、更に、反応混合物中の水が金属表面と含フッ素ポリマーとの間に存在および/または侵入し易いことにより、含フッ素ポリマーの付着を効果的に防止できると考えられる。
本実施形態の含フッ素ポリマーの製造方法は、上記工程(b)の後、
(c)含フッ素ポリマーを含む反応混合物の実質的に全部を上記重合槽から抜き出し、その後、
上記工程(a)および工程(b)を繰り返す
ことを更に含んでいてよい。これにより、被膜の含フッ素ポリマー付着防止性能が低下しても、好ましくは元のレベルにまで復活させることができる。以下、各工程につき、より詳細に説明する。
・工程(c)
含フッ素ポリマーを含む反応混合物の実質的に全部を重合槽から抜き出し、適宜、後工程へ移送する。反応混合物を重合槽から抜き出すに際して、反応混合物は、含フッ素ポリマーと水とを含み、含フッ素溶媒(ならびに未反応の含フッ素モノマーおよび使用した場合には未反応のフッ素非含有モノマー、以下同様)を実質的に含まないことが好ましい。このことは、重合槽内の圧力を低下させて、含フッ素溶媒をガス化して重合槽から排出(パージ)することにより実現され得る。これにより、含フッ素溶媒を回収することができ、重合槽からの反応混合物の抜き出し時間も短縮できる。
含フッ素混合物が、含フッ素溶媒を「実質的に含まない」とは、含フッ素混合物における含フッ素溶媒の濃度が、0.1質量%以下であること、好ましくはゼロ質量%であることを意味する。
反応混合物の「実質的に全部」を重合槽から抜き出すとは、重合槽内を空にする意図で反応混合物を抜き出すことを意味し、重合槽内に反応混合物が不可避的に残存することを許容する趣旨である。
・工程(a)および工程(b)の繰り返し
特段断りのない限り、上述した工程(a)および工程(b)と同様の操作を実施し得る。
工程(a)を2回目以降に実施する場合、1回目と同等の付着防止被膜を形成できる限り、処理剤の接触時間は、初回の接触時間より短くてよい。接触時間は、2回目以降の場合には、例えば0.5時間以上であり得、好ましくは1.5時間以上であり得る。また、工程(a)を2回目以降に実施する場合、前の回の工程(a)で回収した処理剤の残部を、次の回の工程(a)の処理剤の一部または全部として再利用してよい。
工程(b)を2回目以降に実施する場合、工程(c)にて回収した含フッ素溶媒を、工程(b)の反応混合物の含フッ素溶媒の一部または全部として再利用してよい。
上記工程(c)ならびに2回目以降の工程(a)および工程(b)を実施するタイミングは、被膜の含フッ素ポリマー付着防止性能に応じて適宜設定され得る。例えば、工程(b)の懸濁重合を連続式で実施する場合には、懸濁重合の運転時間、攪拌翼のトルク(および/または動力)等に基づいて、上記工程(c)ならびに2回目以降の工程(a)および工程(b)を実施してよい。また例えば、懸濁重合をバッチ式またはセミバッチ式で実施する場合には、(i)各バッチが終了する度に、上記工程(c)ならびに2回目以降の工程(a)および工程(b)を実施してよく、あるいは、(ii)バッチ間の任意の適切なタイミングで規則的または不規則的に、上記工程(c)ならびに2回目以降の工程(a)および工程(b)を実施してよい。上記(ii)の場合であっても、上記工程(c)は、通常、各バッチが終了する毎に実施する。
以上、本開示の1つの実施形態における含フッ素ポリマーの製造方法について詳述したが、本開示の含フッ素ポリマーの製造方法はこれに限定されず、任意の適切な改変、置換、付加等が可能であり得る。
(実施例1)
実施例1は、被膜形成を初回実施後、含フッ素ポリマーとしてPFA(より詳細には、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体)を製造した例に関する。
・工程(a)
重合槽として、内容量3リットルの、表面が金属である(槽内面にライニング等の処理が行われていない)ジャケット付き撹拌式SUS製オートクレーブ(SUS製攪拌翼およびSUS製バッフルを備える)を使用した。この重合槽に、常圧下にて、処理剤として5質量%のピロリン酸ナトリウム水溶液をフル(空寸なし)で満たして90℃で13時間に亘って、撹拌翼を150rpmで回転させながら維持した後、処理剤の残部(被膜の形成に利用された分を除く部分)を重合槽から抜き出して回収した。その後すみやかに、重合槽の内表面を純水で十分に(リン酸イオンが検出されなくなる程度まで)洗浄した。
かかる処理により、重合槽のSUS製の内表面(重合槽の内壁面、ならびに攪拌翼およびバッフルの表面)に被膜が形成された。被膜をXPS測定したところ、P含有量は5.5原子%であり、Na含有量は15原子%であった。
なお、XPS測定は、PHI 5000 VersaProbe II(アルバック・ファイ株式会社製)を用いて、1mm×0.3mmの測定領域(深さ最大60nm)で実施した。各元素の含有量は、XPS測定で深さ0nmでの値とした。(以下も同様とする。)
・工程(b)
次いで、以上のようにして処理(被膜形成)した重合槽に、純水0.75リットルを仕込んだ。攪拌を開始し、内部空間を窒素で充分置換した後、槽内を真空にし、パーフルオロシクロブタン670gを仕込んで、攪拌翼を450rpmで回転させた。引き続き、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下PPVE)33gを圧入し、槽内温度を反応温度の35℃にし、テトラフルオロエチレン(以下TFE)を0.80MPaGまで圧入した。ここに、開始剤としてジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート(以下NPP)0.8gと分子量調節剤としてメタノール69gを圧入し重合(懸濁重合)を開始した。反応中、系内の圧力を一定に保持するようTFEを逐次追加し、また同時に、TFEの追加量に応じてPPVEを0.8gずつ8回に分けて追加圧入した。4時間後、TFEとPPVEを計130g仕込んだところで反応を終了し、攪拌翼の回転を停止した。
これにより、反応混合物中にて、含フッ素ポリマーとしてPFA(より詳細には、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体)が得られた。実施例1において、パーフルオロシクロブタンおよびPPVEが含フッ素溶媒として機能し、TFEおよびPPVEは含フッ素モノマーであった。
・工程(c)
反応終了後、モノマーをパージし、重合槽内に残った反応混合物(含フッ素ポリマーおよび水を含み、モノマー(反応溶媒/未反応モノマー)を実質的に含まない)の全てを重合槽から抜き出した。これにより得られた反応混合物から、含フッ素ポリマーを分離し、洗浄、乾燥することにより白色粉末125gを得た。
なお、重合槽から抜き出された反応混合物中には、ピロリン酸ナトリウムに由来する元素が混入し得るが、含フッ素ポリマーの洗浄により除去可能である。
工程(c)の後、重合槽の内表面を目視により確認したところ、重合槽の内表面(重合槽の内壁面、ならびに攪拌翼およびバッフルの表面)のいずれにも含フッ素ポリマーの付着はほとんど認められなかった。内壁面の一部(反応混合物と接触していた領域)に含フッ素ポリマーがわずかに付着していたが、純水を用いたジェット洗浄(0.3MPaG)により完全に除去できた。
(実施例2)
実施例2は、被膜形成を初回実施後、含フッ素ポリマーとしてFEP(より詳細には、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)を製造した例に関する。
・工程(a)
実施例1の工程(a)と同様にして、重合槽を処理剤で処理した。即ち、処理剤のピロリン酸ナトリウム濃度は5質量%とし、接触条件は90℃で13時間とした。
かかる処理により、重合槽のSUS製の内表面(重合槽の内壁面、ならびに攪拌翼およびバッフルの表面)に被膜が形成された。得られた被膜をXPS測定したところ、P含有量は5.5原子%であり、Na含有量は15原子%であった。
・工程(b)
次いで、以上のようにして処理(被膜形成)した重合槽に、純水0.72リットルを仕込んだ。攪拌を開始し、内部空間を窒素で充分置換した後、槽内を真空にし、ヘキサフルオロプロピレン(以下HFP)720gを仕込んで、攪拌翼を450rpmで回転させた。槽内温度を反応温度の29℃にし、TFEを0.93MPaGまで圧入した。ここに、開始剤としてジ(ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド(以下DHP)9.0gと分子量調節剤としてメタノール2.2gを圧入し重合(懸濁重合)を開始した。反応中、系内の圧力を一定に保持するようTFEを逐次追加した。4時間後、TFEを計124g仕込んだところで反応を終了し、攪拌翼の回転を停止した。
これにより、反応混合物中にて、含フッ素ポリマーとしてFEP(より詳細には、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)が得られた。実施例2において、HFPが含フッ素溶媒として機能し、TFEおよびHFPは含フッ素モノマーであった。
・工程(c)
実施例1の工程(a)と同様にして、白色粉末90gを得た。
工程(c)の後、重合槽の内表面を目視により確認したところ、重合槽の内表面(重合槽の内壁面、ならびに攪拌翼およびバッフルの表面)のいずれにも含フッ素ポリマーの付着はほとんど認められなかった。内壁面の一部(反応混合物と接触していた領域)に含フッ素ポリマーがわずかに付着していたが、純水を用いたジェット洗浄(0.3MPaG)により完全に除去できた。
(実施例3)
実施例3は、実施例1の後の重合槽を使用して、2回目の被膜形成を実施後、含フッ素ポリマーとしてPFA(より詳細には、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体)を製造した例に関する。
実施例3で、工程(a)において、実施例1で工程(a)~(c)を実施した後の重合槽を使用し、処理剤のピロリン酸ナトリウム濃度を5質量%とし、接触条件を90℃で1.5時間としたこと以外は、実施例1の工程(a)~(c)を同様に実施した。
実施例3の工程(a)の処理により、重合槽のSUS製の内表面(重合槽の内壁面、ならびに攪拌翼およびバッフルの表面)に被膜が形成された。得られた被膜をXPS測定したところ、P含有量は5.5原子%であり、Na含有量は15原子%であった。
実施例3の工程(c)にて、白色粉末125gを得た。
実施例3の工程(c)の後、重合槽の内表面を目視により確認したところ、重合槽の内表面(重合槽の内壁面、ならびに攪拌翼およびバッフルの表面)のいずれにも含フッ素ポリマーの付着はほとんど認められなかった。内壁面の一部(反応混合物と接触していた領域)に含フッ素ポリマーがわずかに付着していたが、純水を用いたジェット洗浄(0.3MPaG)により完全に除去できた。
(実施例4)
実施例4は、実施例3の後の重合槽を使用して、3回目の被膜形成を実施後、含フッ素ポリマーとしてPFA(より詳細には、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体)を製造した例に関する。
実施例4で、工程(a)において、実施例3で工程(a)~(c)を実施した後の重合槽を使用し、処理剤のピロリン酸ナトリウム濃度を3質量%とし、接触条件を90℃で13時間としたこと以外は、実施例1の工程(a)~(c)を同様に実施した。
実施例4の工程(a)の処理により得られた被膜をXPS測定したところ、P含有量は5.5原子%であり、Na含有量は15原子%であった。
実施例4の工程(c)の後、重合槽の内表面を目視により確認したところ、重合槽の内表面(重合槽の内壁面、ならびに攪拌翼およびバッフルの表面)のいずれにも含フッ素ポリマーの付着はほとんど認められなかった。内壁面の一部(反応混合物と接触していた領域)に含フッ素ポリマーがわずかに付着していたが、純水を用いたジェット洗浄(0.3MPaG)により完全に除去できた。
(実施例5)
実施例5は、実施例4の後の重合槽を使用して、4回目の被膜形成を実施後、含フッ素ポリマーとしてPFA(より詳細には、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体)を製造した例に関する。
実施例5で、工程(a)において、実施例4で工程(a)~(c)を実施した後の重合槽を使用し、処理剤のピロリン酸ナトリウム濃度を3質量%とし、接触条件を90℃で1.5時間としたこと以外は、実施例1の工程(a)~(c)を同様に実施した。
実施例5の工程(a)の処理により得られた被膜をXPS測定したところ、P含有量は5.5原子%であり、Na含有量は15原子%であった。
実施例5の工程(c)の後、重合槽の内表面を目視により確認したところ、重合槽の内表面(重合槽の内壁面、ならびに攪拌翼およびバッフルの表面)のいずれにも含フッ素ポリマーの付着はほとんど認められなかった。内壁面の一部(反応混合物と接触していた領域)に含フッ素ポリマーがわずかに付着していたが、純水を用いたジェット洗浄(0.3MPaG)により完全に除去できた。
(実施例6)
実施例6は、実施例5の後の重合槽を使用して、5回目の被膜形成を実施後、含フッ素ポリマーとしてPFA(より詳細には、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体)を製造した例に関する。
実施例6で、工程(a)において、実施例5で工程(a)~(c)を実施した後の重合槽を使用し、処理剤のピロリン酸ナトリウム濃度を1質量%とし、接触条件を90℃で8時間としたこと以外は、実施例1の工程(a)~(c)を同様に実施した。
実施例6の工程(a)の処理により得られた被膜をXPS測定したところ、P含有量は5.5原子%であり、Na含有量は15原子%であった。
実施例6の工程(c)の後、重合槽の内表面を目視により確認したところ、重合槽の内表面(重合槽の内壁面、ならびに攪拌翼およびバッフルの表面)のいずれにも含フッ素ポリマーの付着はほとんど認められなかった。内壁面の一部(反応混合物と接触していた領域)に含フッ素ポリマーがわずかに付着していたが、純水を用いたジェット洗浄(0.3MPaG)により完全に除去できた。
(実施例7)
実施例7は、被膜形成を初回実施後、含フッ素ポリマーとしてFEP(より詳細には、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)を製造したもう1つの例に関する。
実施例7で、工程(a)において、処理剤のピロリン酸ナトリウム濃度を5質量%とし、接触条件を90℃で3時間としたこと、および、工程(b)において、純水仕込みと同時にピロリン酸ナトリウム粉末2.6gを仕込んだこと以外は、実施例2の工程(a)~(c)を同様に実施した。
実施例7の工程(a)の処理により得られた被膜をXPS測定したところ、P含有量は5原子%であり、Na含有量は2原子%であった。
実施例7の工程(c)の後、重合槽の内表面を目視により確認したところ、重合槽壁の多くの部分に含フッ素ポリマーの付着が認められた。撹拌翼およびバッフルには付着はほとんど認められなかった。重合槽壁の付着は、純水を用いたジェット洗浄(0.3MPaG)により半分以上除去できたが、一部は残存した。残った付着ポリマーをスポンジで軽く触るとすべて容易に除去することができ、ピロリン酸ナトリウム処理を行わなかった場合と比べて大幅に付着力が低減されていることが確認された。
(実施例8)
実施例8は、実施例1をスケールアップした例に関する。
工程(a)において、重合槽として、容積139Lの撹拌機付きステンレス製オートクレーブを使用したこと、工程(a)における処理剤および工程(b)における原料を、重合槽の容積の増加割合に応じた量で使用したこと以外は、実施例1の工程(a)~(c)を同様に実施した。
実施例8においても、被膜中のPおよびNaの含有量ならびに含フッ素ポリマーの付着性につき、実施例1と同様の結果が得られた。
(実施例9)
実施例9は、実施例2をスケールアップした例に関する。
工程(a)において、重合槽として、容積139Lの撹拌機付きステンレス製オートクレーブを使用したこと、工程(a)における処理剤および工程(b)における原料を、重合槽の容積の増加割合に応じた量で使用したこと以外は、実施例2の工程(a)~(c)を同様に実施した。
実施例9においても、被膜中のPおよびNaの含有量ならびに含フッ素ポリマーの付着性につき、実施例2と同様の結果が得られた。
(比較例1)
比較例1は、特許文献2の実施例(含フッ素溶媒を使用しないPTFEの製造)を追試した例に関する。
重合槽として、実施例1で使用したものと同じ内容量3リットルのジャケット付き撹拌式SUS製オートクレーブを使用した。この重合槽に、常圧下にて、処理剤として64質量ppmのピロリン酸ナトリウム水溶液をフル(空寸なし)で満たして90℃で1時間に亘って、撹拌翼を150rpmで回転させながら維持した後、処理剤の残部を重合槽から抜き出して回収した。その後すみやかに、重合槽の内表面を純水で十分に洗浄した。
上記処理により得られた被膜をXPS測定したところ、P含有量は2原子%であり、Na含有量は1原子%であった。
以上のようにして処理(被膜形成)した重合槽に、純水1.5リットルを仕込んだ。攪拌を開始し、内部空間を窒素で充分置換した後、攪拌翼を480rpmで回転させた。槽内温度を反応温度の12℃にし、TFEを0.6MPaGまで圧入した。ここに、開始剤として過硫酸カリウム12g、亜硫酸ソーダ75g、硝酸銀22.5gを圧入し重合を開始した。系内の圧力を一定に保持するようTFEを逐次追加した。5時間後、TFEを計150g仕込んだところで反応を終了し、攪拌翼の回転を停止した。
重合槽の内表面を目視により確認したところ、重合槽の内表面(重合槽の内壁面、ならびに攪拌翼およびバッフルの表面)に含フッ素ポリマーの付着(固着)が認められた。内壁面の一部(反応混合物と接触していた領域)に付着していた含フッ素ポリマーに純水を用いたジェット洗浄(0.3MPaG)を行い、付着(固着)していた含フッ素ポリマーの割合を調べたところ0.1質量%であった。
(比較例2)
比較例1と同じ条件で処理(被膜形成)した重合槽を使用したこと以外は、実施例1の工程(b)~(c)と同様にして、PFAを製造した。
重合槽の内表面を確認したところ、重合槽内壁面ならびに撹拌翼およびバッフルのほとんどすべての表面に含フッ素ポリマーの付着が認められ、純水を用いたジェット洗浄(0.3MPaG)を行っても、薄膜状に固着した含フッ素ポリマーが、表面全体に固着して残った。
(比較例3)
比較例1と同じ条件で処理(被膜形成)した重合槽を使用したこと以外は、実施例2の工程(b)~(c)と同様にして、FEPを製造した。
重合槽の内表面を確認したところ、重合槽内壁面ならびに撹拌翼およびバッフルのほとんどすべての表面に含フッ素ポリマーの付着が認められ、純水を用いたジェット洗浄(0.3MPaG)を行っても、薄膜状に固着した含フッ素ポリマーが、表面全体に固着して残った。
本開示の含フッ素ポリマーの製造方法は、例えば、各種成形用材料としての含フッ素ポリマーの製造に好適に利用可能である。

Claims (10)

  1. 含フッ素ポリマーの製造方法であって、
    (a)重合槽の金属製の内表面のうち、少なくとも、下記(b)の間に反応混合物と接触し得る領域を、リン酸および/またはリン酸塩と極性溶媒とを含む処理剤で処理して、付着防止被膜を前記領域上に形成し、および
    (b)前記重合槽にて、少なくとも含フッ素モノマーを、含フッ素溶媒と水とを含む反応混合物中で懸濁重合により重合させて含フッ素ポリマーを得る
    ことを含み、
    前記(a)において、前記処理剤と前記領域との接触時の温度が100℃以下であり、
    前記付着防止被膜のP含有量が2原子%を超え10原子%以下である、製造方法。
  2. 前記付着防止被膜のP含有量が原子%以上10原子%以下である、請求項1に記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
  3. 前記処理剤における前記リン酸および/またはリン酸塩の濃度が、0.1質量%以上15質量%以下である、請求項1または2に記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
  4. 前記処理剤が、ピロリン酸金属塩の水性溶液である、請求項1~3のいずれかに記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
  5. 前記処理剤が、ピロリン酸ナトリウムの水性溶液である、請求項4に記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
  6. 前記付着防止被膜のNa含有量が、1原子%以上20原子%以下である、請求項5に記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
  7. 前記重合槽の前記内表面を成す金属が、ステンレス鋼、ニッケル合金鋼および炭素鋼からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1~6のいずれかに記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
  8. 前記含フッ素ポリマーが、10μm以上2000μm以下の平均粒子サイズを有する、請求項1~7のいずれかに記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
  9. 前記(b)の後、
    (c)含フッ素ポリマーを含む反応混合物の実質的に全部を前記重合槽から抜き出し、その後、
    前記(a)および前記(b)を繰り返す
    ことを更に含む、請求項1~8のいずれかに記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
  10. 前記(c)において、前記反応混合物が、含フッ素ポリマーと水とを含み、含フッ素溶媒を実質的に含まない、請求項9に記載の含フッ素ポリマーの製造方法。
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