JP7207912B2 - 運転評価システム - Google Patents

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Description

本発明は、車両に搭載された車載器が取得した運行情報に基づいて運転を評価する運転評価システムに関する。
例えばトラックなどの業務用車両は、乗務員の労務管理や安全運転管理などに利用可能な運行データを自動的に記録するための車載器として、デジタルタコグラフやドライブレコーダを搭載している場合が多い。また、このような車載器は、近年では乗務員の運転状況を評価するための機能を有する場合もある。
一方、特許文献1の安全運転支援装置は、低廉な装備コストで、交差点やT字路等への横断または進入時等の必要なときにのみ周辺視認装置を起動するための技術を示している。具体的には、車両の走行時にラインセンサで前方斜め下方向をスキャンし、「止まれ」等の道路標示を画像認識して検出した場合にのみ、周辺視認装置を起動して車両の前方の左右方向を撮像して車内の表示手段に表示する。
また、特許文献2の車載画像記録装置は、道路上の交差点等において乗務員が安全運転を行っているかどうかを把握するために役立つ情報を得るための技術を示している。具体的には、車載カメラにより得られた時系列の画像データに基づいて、道路の路面上に表示された標識の有無及びその種別を認識し、標識を認識した時に自車両の速度等の走行状態を監視し、前記標識の種別と自車両の走行状態とに基づいて状況の重要度の高低を識別し、重要度の高低を画像データ等の記録制御に反映する。つまり、乗務員が標識の内容に従わずに一時停止等の違反をしていないか確認できる重要な画像等を自動的に記録するための技術を示している。
また、特許文献3の車載画像処理装置は、車載カメラなどで撮像した車両周囲の画像を処理して路面に描かれた道路標示ペイントなどの予め設定された認識対象を精度良く認識するための技術を示している。具体的には、車両周囲の画像を取得する画像取得部と、この画像から予め設定された認識対象を認識する画像処理部とを備える。また、画像処理部は画像から抽出される線分の端部周囲の情報に基づいて、その線分が認識対象を構成する線分であるか否かを判定する判定部を有している。
特開2002-219998号公報 特開2012-159955号公報 特開2014-107689号公報
ところで、道路交通法によれば「車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあっては交差点の直前)で一時停止しなければならない」とされている。つまり、信号機が存在しない交差点では、出会い頭の衝突等を避けるために、道路標識等に従い一時停止することが要求されている。
一方、企業等が乗務員毎の運転操作を評価する場合には、交通法規だけでなく様々な観点から評価を実施する場合がある。例えば、最高速度、急発進、急加速等の各事象を考慮して安全運転の観点から評価を実施したり、燃料消費量などに基づき経済運転の観点から評価を実施する場合がある。また、経済運転の観点からの評価を重視した場合には、例えば信号機のない交差点において、交通法規に従い一時停止を行った場合よりも、一時停止せずに一定の速度で走行した場合の方が高い評価になる可能性がある。したがって、公平で適切な評価を行うことが望まれる。また、交通法規に違反したような場合には、各運転者が運転マナーを改善するように指導することが望まれる。
例えば、特許文献1~特許文献3の技術のように交差点で「止まれ」などの標識や路面の標示を検出することは可能であり、特許文献2のように交差点で重要な画像を自動的に記録することも可能である。しかし、記録された画像を解析して評価を行うのは難しく、熟練した人間の判断に頼らざるを得ない。そのため、従来は交差点などにおいて運転の適切な評価ができなかった。
一方、例えば交差点の手前の路面に標示されている「止まれ」を撮影した画像をパターン認識しようとする場合に、様々な原因により認識に失敗する可能性がある。例えば、地方などにおいては、「止まれ」の代わりにその地域特有の標示として、「とまれ」、「止まる」、「止れ」のような違う文字列パターンが使われている場合があるが、同じ一時停止の標示である。
また、路面の「止」、「ま」、「れ」の各文字の印刷が車両通行時の摩耗により実際にかすれて見えにくくなっている場合がある。そのため、「止まれ」の3文字のパターンそれぞれを正確に認識しようとすると、認識の成功率が低下し、一時停止すべき地点で「止まれ」の標示の認識に失敗し、交差点での車両の運転操作を車載器が検出できない場合がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、交差点等における車両の運転操作を高い確率で検出し正しく評価することが容易な運転評価システムを提供することにある。
前述した目的を達成するために、本発明に係る運転評価システムは、下記(1)~(5)を特徴としている。
(1)車両に搭載された車載器と、前記車載器が検知した前記車両の運行情報に基づいて運転を評価する運転評価部とを有する運転評価システムであって、
前記車載器は、道路標示又は道路標識における少なくとも一部分を認識した結果に応じて運転のイベントを検知すると共に、前記イベントの種類に応じて、前記イベントに関連する少なくとも車速を含む前記車両の運行情報を収集し、
前記運転評価部は、前記イベントの種類に応じて、前記イベントに関連して収集された前記車両の運行情報を評価
前記車載器は、3文字で構成される「止まれ」の道路標示又は道路標識を認識する場合に、「れ」、「ま」、「止」のうち何れか2つ以上の文字のパターン認識に成功した時点で、「止まれ」の道路標示又は道路標識であると確定する、
ことを特徴とする運転評価システム。
(2) 前記車載器は、「れ」、「ま」、「止」の順番で文字毎に個別にパターン認識を行う、
ことを特徴とする上記(1)に記載の運転評価システム。
(3) 前記車載器は、特定の道路標示又は道路標識を認識した場合に、車速の変化を所定期間監視して一時停止の有無を識別し、一時停止有の場合は停止時間の長さを計測し、一時停止の有無および計測した停止時間の長さを前記運行情報に含める、
ことを特徴とする上記(1)に記載の運転評価システム。
(4) 前記車載器は、一時停止を指示する特定の道路標示又は道路標識を認識し、且つ前記車両における一時停止なしの運転状態を検知すると、運転者に対して警報を報知する、
ことを特徴とする上記(3)に記載の運転評価システム。
(5) 前記運転評価部は、前記車載器とデータ通信可能なデータセンタ、前記車載器が記録した運行情報を取得可能な事務所PC、および前記車載器の少なくとも1箇所に備わっている、
ことを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の運転評価システム。
上記(1)及び(2)の構成の運転評価システムによれば、例えば「一時停止」を指示する道路標示又は道路標識が存在する交差点のように、運転状態に運転者の個人差が発生しやすい場所において、イベントの種類に応じて車速の変化などの運転状態を監視し、評価のために必要な運行情報を収集できるので、運転の正しい評価が可能になる。また、監視が必要な場所以外では、運行情報の収集や記録を省略又は抑制できるので、運転の評価に伴うデータ処理の負荷を減らすことができる。
更に、上記(1)及び(2)の構成の運転評価システムによれば、例えば「止まれ」の文字列を含む「一時停止」の道路標示又は道路標識を認識するような場合に、認識の成功率が向上し、検出漏れを減らすことができる。すなわち、地方などにおいて「止まれ」の代わりに例えば「とまれ」、「止まる」、「止れ」などが標示されている場合でも、「止まれ」と同じ標示として認識できるので「止まれ」の検出漏れが減る。また、ペイントされた文字のかすれや汚れの影響で、「止」、「ま」、「れ」のいずれか1つの文字が認識できない場合でも、この道路標示又は道路標識の「止まれ」全体の認識を確定できるので認識に成功しやすくなる。更に、文字列全体の認識率を上げるために文字毎のパターンマッチングにおける許容誤差を大きくする必要がないため、「止」、「ま」、「れ」の各文字と似ている他の文字を誤って認識するのを避けることができる。
上記(3)の構成の運転評価システムによれば、一時停止を指示する道路標示又は道路標識が存在する場所を車両が走行する場合に、運転の状況を監視して、一時停止の有無や、停車した時間の長さを把握するために必要な運行情報が得られる。したがって、交差点などにおける運転の適切な評価が可能になる。
上記(4)の構成の運転評価システムによれば、一時停止が必要な場所で、交通法規に違反して一時停止しなかった場合に、運転のマナーを改善するように運転者をリアルタイムで指導することができる。
上記(5)の構成の運転評価システムによれば、運転評価部の機能をデータセンタに配置することにより、車載器に大きな負荷をかけることなく、運転の評価に必要なデータ処理を行うことが容易になり、更に日中に限らず24時間いつでも監視することができる。また、運転評価部の機能を事務所PCに配置した場合には、評価に必要な運行データを取得した後で必要に応じて評価を実施し、乗務員毎の指導や教育に役立てることができる。また、運転評価部の機能を車載器に搭載した場合には、リアルタイムで運転を評価し指導することが可能になる。
本発明の運転評価システムによれば、信号機のない交差点等における車両の運転操作を高い確率で検出し正しく評価することが容易になる。
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
図1は、本発明の実施形態における運転評価システムの構成例を示すブロック図である。 図2は、自車両の車載カメラで撮影された前方映像を含む画像フレームの例を示す正面図である。 図3は、自車両が交差点にさしかかった時の車載器の動作例を示すフローチャートである。 図4は、事務所PCの動作例を示すフローチャートである。 図5は、データセンタ内のサーバの動作例を示すフローチャートである。
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
<運転評価システムの構成および動作の概要>
本発明の実施形態における運転評価システムの構成例を図1に示す。
図1に示した運転評価システム5は、例えばトラックを管理している運送会社やバス会社、タクシー会社等の事業者の設備として導入される。この運転評価システム5は、トラック、バス、タクシー等の各車両における運転者の運転状況を評価する機能を備え、各車両に車載器として搭載された運行記録装置(以下、デジタルタコグラフという)10と、各事業者の事務所等に設置される事務所PC30とで構成されている。デジタルタコグラフ10と、事務所PC30との間は、インターネット70を介して通信できるように接続される。
また、インターネット70に接続されているデータセンタ75のサービスを利用することも可能である。すなわち、各車両に搭載されたデジタルタコグラフ10が無線通信により送信するデータをインターネット70上のデータセンタ75のサーバで中継して事務所PC30に送信することができる。その場合、データセンタ75のサーバは、デジタルタコグラフ10や事務所PC30の代わりに様々なデータ処理を行ったり、運転評価を行ったり、該当するデジタルタコグラフ10や事務所PC30に対して警報を出力するようなサービスを実施することもできる。
事務所PC30は、事務所に設置された汎用のコンピュータ装置で構成され、車両の運行状況や運転状況を管理する。インターネット70は、デジタルタコグラフ10と広域通信を行う無線基地局8や事務所PC30が接続されるパケット通信網であり、デジタルタコグラフ10と事務所PC30と間で行われるデータ通信を中継する。デジタルタコグラフ10と無線基地局8との間の通信は、LTE(Long Term Evolution)/4G(4th Generation)等のモバイル通信網(携帯回線網)で行われてもよいし、無線LAN(Local Area Network)で行われてもよい。
デジタルタコグラフ10は、各車両に搭載され、一般的な機能として、出入庫時刻、走行距離、走行時間、走行速度、速度オーバー、エンジン回転数オーバー、急発進、急加速、急減速等の運行データを記録する。
また、本実施形態のデジタルタコグラフ10は、上記の機能以外に、ドライブレコーダの機能および運転評価機能も搭載することができる。特徴的な機能としては、信号機の存在しない交差点などにおいて、「止まれ」などの道路標示を高い確率で認識すると共に、一時停止の必要な場所における一時停止の有無や、一時停止の時間長のように運転の評価に対する利用価値の高いイベントに関する運行データを生成する。また、状況に応じて運転を評価し、評価の結果によりリアルタイムで警報を出力する。また、「止まれ」などの標示を認識する際に、特別な処理を実施する。
なお、上記のような運転評価の機能は、事務所PC30側に搭載することもできる。事務所PC30は、各車両に搭載されたデジタルタコグラフ10が記録した運行データを車両の運行後に解析することにより、必要に応じて一時停止の有無や一時停止した状況のイベントに関する運転評価を行い、各乗務員の安全運転の教育や指導に役立てることができる。また、データセンタ75を利用する場合には、データセンタ75におけるデータ処理サービスにおいて、運転評価を行うことができる。
図1に示したデジタルタコグラフ10は、ハードウェアとして、CPU(マイクロコンピュータ)11、速度I/F(インタフェース)12A、エンジン回転I/F12B、外部入力I/F13、センサ入力I/F14、GPS受信部15、カメラI/F16、不揮発メモリ26A、揮発メモリ26B、記録部17、カードI/F18、音声I/F19、RTC(時計IC)21、SW入力部22、通信部24、表示部27、およびアナログ入力I/F29を内蔵している。
CPU11は、予め組み込まれたプログラムに従い、デジタルタコグラフ10の各部を統括的に制御する。不揮発メモリ26Aは、CPU11によって実行される動作プログラムや、CPU11が参照する定数データやテーブルなどを予め保持している。不揮発メモリ26Aは、データの書き換えが可能なメモリであり、保持しているデータは必要に応じて更新できる。
記録部17は、運行データや映像等のデータを記録する。カードI/F18には、乗務員が所持するメモリカード65が挿抜自在に接続される。CPU11は、カードI/F18に接続されたメモリカード65に対し運行データ、映像等のデータを書き込む。音声I/F19には、内蔵のスピーカ20が接続される。スピーカ20は、警報等の音声を発する。
RTC21(計時部)は、現在時刻を計時する。SW入力部22には、出庫ボタン、入庫ボタン等の各種ボタンのON/OFF信号が入力される。表示部27は、LCD(liquid crystal display)で構成され、通信や動作の状態の他、警報等を表示する。
速度I/F12Aには、車両の速度を検出する車速センサ51が接続され、車速センサ51からの速度パルスが入力される。車速センサ51は、デジタルタコグラフ10にオプションとして設けられてもよいし、デジタルタコグラフ10とは別の装置として設けられてもよい。エンジン回転I/F12Bには、エンジン回転数センサ(図示せず)からの回転パルスが入力される。
外部入力I/F13の入力には、自車両のブレーキのオンオフを表すブレーキ信号、左右の方向指示器(ウインカー)の動作状態を表すウインカー信号、自動変速機の変速状態(前進/後退の区別を含む)を表す変速信号等が外部機器(図示せず)から印加される。
センサ入力I/F14には、加速度(G値)を検知する(衝撃を感知する)加速度センサ(Gセンサ)28が接続され、Gセンサ28からの信号が入力される。Gセンサとしては、加速度による機械的な変位を、振動として読み取る方式や光学的に読み取る方式を有するものが挙げられるが、特に限定されない。また、Gセンサは、車両前方からの衝撃を感知する(減速Gを検知する)他、左右方向からの衝撃を感知しても(横Gを検知しても)よいし、車両後方からの衝撃を感知しても(加速Gを検知しても)よい。Gセンサは、これらの加速度を検知可能なように、1つもしくは複数のセンサで構成される。
アナログ入力I/F29には、エンジン温度(冷却水温)を検知する温度センサ(図示せず)、燃料量を検知する燃料量センサ(図示せず)等の信号が入力される。CPU11は、これらのI/Fを介して入力される情報を基に、各種の運転状態を検出する。
GPS受信部15は、GPSアンテナ15aに接続され、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される信号の電波を受信し、現在位置(GPS位置情報)の情報を計算して取得する。
カメラI/F16の入力には、複数の車載カメラ23、23Bが接続されている。本実施形態では、一方の車載カメラ23は自車両の進行方向前方の道路等の情景を撮影できる向きで固定した状態で車室内に設置されている。したがって、車載カメラ23が撮影する映像の中には、自車両の前方に存在する先行車両、走行中の走行レーン境界を表す白線、交通規制などの道路標示(「止まれ」、停止線、横断歩道など)が現れる。また、他方の車載カメラ23Bは、自車両の後方の道路等の情景を撮影できる向きで固定した状態で車室内に設置されている。
車載カメラ23、23Bは、例えば魚眼レンズを通して撮像される撮像面に例えば30万画素、100万画素、200万画素が配置されたイメージセンサを有する。イメージセンサは、CMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサやCCD(電荷結合素子)センサなど公知のセンサで構成されている。
車載カメラ23、23Bがそれぞれ出力する映像の信号は、カメラI/F16の内部回路によって画素毎の階調や色を表すデジタル信号に変換され、フレーム毎の画像データとしてカメラI/F16から出力される。
各車載カメラ23、23Bで撮影された映像(画像データ)は、記録部17の動作により時系列データとして記録されるが、所定時間分だけ記録されるように繰り返し上書きされる。この所定時間は、例えば事故発生時、事故の状況が分かるように、事故発生前後の数秒間(例えば、2秒、4秒、10秒等)に相当する時間である。カメラ23、23Bで撮像される画像は、静止画データの集合として記録してもよいし、動画のデータとして記録してもよい。事故発生前後の映像は、メモリカード65に保存され、更に事務所PC30の表示部33に表示される。
また、本実施形態のデジタルタコグラフ10は、例えば以下に示す(1)~(6)のような運転支援機能を搭載している。
(1)走行中における自車両と先行車両との車間距離が近すぎる(衝突までの余裕時間が短い)場合に警報を出力する機能。
(2)自車両が走行中の走行レーンの範囲を逸脱した場合に警報を出力する機能。
(3)自車両の走行速度が道路標示の制限速度を超えた場合に速度超過の警報を出力する機能。
(4)自車両の前進時に後方から接近する他車両の存在を運転者に知らせる機能。
(5)自車両の後退時などの状況で周囲の障害物等の存在を運転者に知らせる機能。
(6)「止まれ」などの道路標示がある場所で自車両が一時停止しなかった場合に警報を出力したり、一時停止の時間を測定し記録する機能。
上記(1)~(6)の各機能を実現するためには、各車載カメラ23、23Bで撮影された映像の画像データを処理して、所定のパターン認識を行う必要がある。すなわち、パターン認識により先行車両の位置及び距離を特定したり、走行レーン境界の白線と自車両との相対位置を検出したり、道路標示の文字等のパターンを検出したり、後方の車両や様々な障害物を検出することが必要になる。勿論、車載カメラの映像以外の情報から車間距離を特定することも可能である。
上記のようなパターン認識は、CPU11が組み込まれたプログラムに従って所定の認識アルゴリズムを実行することにより実現できる。しかし、処理対象の画像のデータ量が多い場合には、パターン認識に要するCPU11の負荷が非常に大きくなるので、リアルタイムでの処理が困難になり、検出の遅延が発生する可能性がある。特に、複数の車載カメラ23、23Bの映像を同時に処理したり、複数のパターンを同時に検出するような場合には、遅延の発生が懸念される。そこで、本実施形態においては、画像のパターン認識を実行する際に、検知枠を設けて処理対象のデータ範囲を限定する。
通信部24は、広域通信を行い、携帯回線網(モバイル通信網)を介して無線基地局8に接続されると、無線基地局8と繋がるインターネット70等のネットワークを介して、事務所PC30と通信を行う。電源部25は、イグニッションスイッチのオン等によりデジタルタコグラフ10の各部に電力を供給する。
一方、事務所PC30は、汎用のオペレーティングシステムで動作するPC(パーソナルコンピュータ)により構成されている。事務所PC30は、運行管理装置として機能し、CPU31、通信部32、表示部33、記憶部34、カードI/F35、操作部36、出力部37、音声I/F38及び外部I/F48を有する。
CPU31は、事務所PC30の各部を統括的に制御する。通信部32は、インターネット70を介してデジタルタコグラフ10と通信可能である。また、通信部32は、インターネット70に接続された各種のデータベース(図示せず)とも接続可能であり、必要なデータを取得可能である。
表示部33は、運行管理画面の他、事故映像やハザードマップ等を表示する。記憶部34は、デジタルタコグラフ10から受信した映像を表示したり車両の位置情報を地図上に表示するためのシステム解析ソフトウェア等、各種プログラムを保持している。
カードI/F35には、メモリカード65が挿抜自在に装着される。カードI/F35は、デジタルタコグラフ10によって計測され、メモリカード65に記憶された運行データを入力する。操作部36は、キーボードやマウス等を有し、事務所の管理者の操作を受け付ける。出力部37は、各種データを出力する。音声I/F38には、マイク41及びスピーカ42が接続される。事務所の管理者は、マイク41及びスピーカ42を用いて音声通話を行うことも可能であり、車両の事故が発生した場合、救急や警察等への連絡を行う。
外部I/F48には、外部記憶装置(ストレージメモリ)54が接続される。外部記憶装置54は、運行データDB56およびハザードマップDB57を保持する。運行データDB56には、運行データとして、出入庫時刻、速度、走行距離等の他、急加減速、急ハンドル、速度オーバー、エンジン回転数オーバー、「止まれ」の標示がある場所における一時停止の有無や停車時間を含む各種イベント情報が記録される。ハザードマップDB57には、過去に事故が発生した地点(事故地点)や、一時停止の違反が生じやすい場所などを表すマークが地図に重畳して記述された地図データが登録される。なお、このハザードマップには、天災等の災害が想定される地域や避難場所等が記述されてもよい。
事務所PC30は、メモリカード65に記憶された運行データを入力して該当車両の実際の運行状態を解析する機能を有している。また、この解析機能の中には、「止まれ」等の道路標示を検知した場所におけるイベントデータを処理して各乗務員の評価に反映する機能も含まれている。詳細については後述する。
<車載カメラで撮影される前方映像の例>
自車両の車載カメラで撮影される前方映像を含む画像フレーム100Aの例を図2に示す。
図2に示した画像フレーム100Aの中には、自車両の走行中に信号機のない交差点101の手前にさしかかった状況で撮影された前方映像が現れている。図2の例では、画像フレーム100Aの中に、交差点101、停止線の道路標示102、白線の道路標示103、一時停止の道路標示104、道路標識105などの各パターンが含まれている。
この場合、道路標示104のペイントされたパターンは「止まれ」の文字列であって、車両の一時停止が必要な場所であることを表している。但し、地域毎に特有の違う様々な文字列で置き換えられる場合もある。例えば、「とまれ」、「止まる」、「止れ」などの文字列が同じ一時停止の標示として用いられる場合がある。
<車載器の動作例>
自車両が交差点にさしかかった時のデジタルタコグラフ10の動作例を図3に示す。すなわち、デジタルタコグラフ10内のCPU11が図3の制御を実施する。図3の動作について以下に説明する。
CPU11は、車載カメラ23で撮影した映像をカメラI/F16によりフレーム毎に、画像フレーム100Aのような画像データとして入力し、各フレーム内の路面上の領域について画像処理を行い、文字のパターン認識を実行する。1つでも文字の可能性があるパターン候補を検出した場合には、一時停止の標示である「止まれ」のパターンの可能性があるので、「止まれ」についての検出を実行する(S11)。
実際には、自車両が交差点に近づいた時に自車両に近い位置から「れ」、「ま」、「止」が順番に認識しやすい(情報量が多い)状態で現れる(図2参照)ので、この順番で文字毎に個別にパターン認識を実施する。このパターン認識においては、入力画像から検出した文字毎のパターンの特徴と、データベース上の辞書に事前に登録されている「れ」、「ま」、「止」などの全ての文字のそれぞれの特徴との一致の程度を比較し、尤も似ている文字を検出し、且つこの文字との一致の程度が閾値以上の場合に、1つのパターンが表す文字の認識に成功した状態を確定する。
そして、一時停止の「止まれ」の標示に含まれる「れ」、「ま」、「止」のうち、いずれか2つ以上の文字の認識に成功した場合に、全体の文字列が「止まれ」であると確定する(S12)。つまり、認識対象の「止まれ」の文字数は3であるが、規定の文字数「3」の全ての認識が完了していなくても、2個以上の文字認識の成功により「止まれ」を認識できたものとみなす。
したがって、例えば「止まれ」の代わりに「とまれ」、「止まる」、「止れ」などのいずれかの文字列が標示されている場合であっても、これらを一般的な「止まれ」の標示と同一として扱うことができる。また、「止まれ」の文字列を構成する「止」、「ま」、「れ」のうちいずれか1つの文字がペイントの劣化等でかすれて認識できなくなっている場合でも、全体の文字列を「止まれ」として扱うことができる。これにより、「止まれ」の認識漏れの可能性を減らすことができる。
CPU11は、「止まれ」の標示の認識を確定した場合には、該当するイベントデータをデータセンタ75へ送信する(S13)。このイベントデータは、「止まれ」の標示を表すイベントの種類と、車速、位置、時刻などの情報を含む。
CPU11は、「止まれ」の標示の認識を確定した後で、自車両の車速の状態を監視し、一定時間以内に車速が0[km/h]になったか否かをステップS14で識別する。
そして、車速が0[km/h]になったことを検知した場合は、CPU11は車速が0[km/h]の状態を継続している時間の長さ(停止時間)を計測し(S15)、その停止時間を含むイベントデータを生成してメモリカード65に記録する(S16)。このイベントデータの中には、「止まれ」の標示を認識したことを表すデータや、位置、時刻などの情報も含める。また、CPU11はこのイベントデータをS17でデータセンタ75へ送信する。
一方、「止まれ」の標示の認識を確定した後で、一定時間以内に車速が0[km/h]になったことを検知できなかった場合には、CPU11は自車両が一時停止しなかったものと判断し、該当するイベントデータを生成する(S18)。このイベントデータの中には、「止まれ」の標示を認識したことを表すデータや、位置、時刻、平均車速などの情報も含める。
また、CPU11は現在の運転状態が交通法規に違反していることを運転者に警告するために、ステップS19で警告音を発生し運転者に通知する。これにより、リアルタイムで運転者を指導することができる。
また、CPU11はS18で生成したイベントデータをメモリカード65に記録し(S20)、更に同じイベントデータをデータセンタ75へ送信する(S21)。
<事務所PCの動作>
事務所PC30の動作例を図4に示す。図4に示した動作について以下に説明する。
事務所PC30を操作する管理者は、事務所PC30の電源を投入して使用可能な状態にした後、データ解析のための専用のアプリケーションソフトウェア(簡略化して「アプリ」と呼称する)を起動する(S31)。
管理者の入力操作に従い、事務所PC30上で動作している解析用のアプリは、各乗務員のメモリカード65から、それに記録されている運行データやイベントデータを読み込む(S32)。ここで読み込む運行データおよびイベントデータは、各車両のデジタルタコグラフ10が記録した内容であるが、データセンタ75のサーバからダウンロードしたデータを処理してもよい。
管理者が解析用のアプリに対して「止まれ」検知時イベントを解析するモードを指示すると、アプリはS32で読み込んだデータの中から該当するイベントデータだけを処理対象として抽出する(S33)。
アプリは、S33で抽出した全てのイベントデータの内容に基づき、デジタルタコグラフ10が「止まれ」の標示を認識した回数(認識総数)と、その中で一時停止違反が発生した回数(違反数)とを検出し、違反率(違反数/認識総数)を算出する(S34)。
アプリは、S34で算出した違反率を用いて、該当する乗務員の評価に対して加点・減点の処理を実行する(S35)。例えば、違反率が乗務員全体の平均値に比べて低い乗務員に対しては、(平均値-違反率)に応じた点数を評価に加算し、違反率が平均値より高い乗務員に対しては、(違反率-平均値)に応じた点数を評価から減算し、実際の運転状態の良否を評価に反映する。
アプリは、全ての乗務員に対する当日の運行データを反映した評価が完了した後で、全体の乗務員の評価データに基づいて評価のランキングを作成する(S36)。例えば、全ての乗務員の評価データを評価点数の高い順番に並べて、評価上位の数名と評価下位の数名の乗務員を抽出し、評価点数と共に表示する。
アプリは、全ての乗務員に対する当日の運行データを反映した評価が完了した後で、全体の乗務員の評価データに基づいて、全ての乗務員の中から指導対象とすべき乗務員を抽出する(S37)。例えば、一時停止違反のような特定項目の違反率が閾値よりも高い乗務員や、全体の評価点数が閾値よりも低い乗務員を抽出し、安全運転指導や教育が必要な対象者として選定する。
アプリは、全ての乗務員の運行データやイベントデータを同じ位置の情報毎に集計し、例えば一時停止違反のような特定項目の違反率が特に高い傾向のある要注意位置を検知する。そして、検知した要注意位置の情報を、イベントや違反等の種類の情報と共にハザードマップDB57に登録する(S38)。ハザードマップDB57については、全ての乗務員が自由にアクセスし情報を共有できるように構成する。これにより、高度な認識機能を有しない一般的な車載器だけを使用している乗務員も、一時停止違反などが起きやすい要注意位置を把握可能になる。
<データセンタの処理>
データセンタ75内のサーバの動作例を図5に示す。この動作はサーバにより短い周期で繰り返し実行される。図5の動作について以下に説明する。
サーバは、各車両に搭載されたデジタルタコグラフ(車載器)10からのデータを無線通信回線およびインターネット70を経由して逐次受信し処理する(S41)。受信するデータの中には定期的に送信される位置、車速などの一般的な運行データの他に、各種イベントが発生した時に送信されるイベントデータも含まれる。
サーバは、各車両のデジタルタコグラフ10が「止まれ」を検出したことを示すイベントデータを受信した場合には、S42からS43の処理に進み、車速および位置情報を取得する。ステップS44では、各車両のデジタルタコグラフ10から送信されるイベントデータに基づき、サーバは、該当する車両が一時停止したことを表すイベント情報、又は一時停止しなかったことを表すイベント情報を取得する。
サーバは、S42~S44で取得した情報を、該当する車両に対応付けて自身のデータベースに登録する(S45)。
サーバは、自身のデータベースに登録されているデータに基づいて、位置毎に集計した一時停止等に関する違反率(違反回数/「止まれ」の検出回数)や、乗務員毎(車両毎)に集計した違反率を算出する(S46)。
サーバは、それぞれの乗務員について、一時停止等に関する違反率を含む運転傾向(違反したときの平均車速など)を事前に定めた閾値と比較して評価する(S47)。また、運転傾向が所定の警報条件に該当する場合は、S48からS49に進み、警報のメッセージを該当する車両のデジタルタコグラフ10へ送信する。なお、警報のメッセージを同時に事務所PC30へ送信してもよい。
<運転評価システムの利点>
上述の運転評価システムにおいては、各車両の運転者が「止まれ」等の標示のある場所で一時停止の規定に違反して運転したことを検知して評価に反映したり、警報を出力することができる。したがって、運転者が「止まれ」等の標示を見落としたり、標示に気がついていても故意に一時停止せずに徐行しながら走行したようなマナー違反の運転を検出し、正しい評価を行うことが可能になる。また、検知した一時停止違反に対して、デジタルタコグラフ10やデータセンタ75のサーバがリアルタイムで警報を出力することにより、違反傾向のある運転者を指導し、運転マナーを向上させることが可能になる。また、管理者等は、事務所PC30の分析結果に基づき、一時停止違反に対する運転傾向を把握できるので、自社内の乗務員全体の運転の傾向を把握したり、乗務員毎の運転傾向を把握して安全運転の指導や教育に役立てることができる。
また、「止まれ」の標示の文字列の代わりに「とまれ」、「止まる」、「止れ」などの文字列が採用されている場所や、ペイントの摩耗等に起因する文字のかすれにより「止」、「ま」、「れ」のいずれかの文字認識が困難な場所であっても、「止まれ」の検出漏れを減らすことが可能になる。
ここで、上述した本発明の実施形態に係る運転評価システムの特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1]車両に搭載された車載器(デジタルタコグラフ10)と、前記車載器が検知した前記車両の運行情報に基づいて運転を評価する運転評価部(CPU11、S18、S19、事務所PC30、データセンタ75)とを有する運転評価システムであって、
前記車載器は、道路標示又は道路標識における少なくとも一部分を認識した結果に応じて運転のイベントを検知する(S11、S12)と共に、前記イベントの種類に応じて、前記イベントに関連する少なくとも車速を含む前記車両の運行情報を収集し(S14、S15)、
前記運転評価部は、前記イベントの種類に応じて、前記イベントに関連して収集された前記車両の運行情報を評価する(S18、S19、S33~S37、S46~S49)、
ことを特徴とする運転評価システム。
[2] 前記車載器は、事前に定められた規定数の複数の文字で構成される特定の道路標示又は道路標識を認識する場合に、前記規定数よりも少ない数の文字パターン認識に成功した時点で、前記道路標示又は道路標識の種類を確定する(S12)、
ことを特徴とする上記[1]に記載の運転評価システム。
[3] 前記車載器は、特定の道路標示又は道路標識を認識した場合に、車速の変化を所定期間監視して一時停止の有無を識別し(S14)、一時停止有の場合は停止時間の長さを計測し(S15)、一時停止の有無および計測した停止時間の長さを前記運行情報に含める(S16、S20)、
ことを特徴とする上記[1]に記載の運転評価システム。
[4] 前記車載器は、一時停止を指示する特定の道路標示又は道路標識(「止まれ」)を認識し、且つ前記車両における一時停止なしの運転状態を検知すると、運転者に対して警報を報知する(S19、S49)、
ことを特徴とする上記[3]に記載の運転評価システム。
[5] 前記運転評価部は、前記車載器とデータ通信可能なデータセンタ(75)、前記車載器が記録した運行情報を取得可能な事務所PC(30)、および前記車載器の少なくとも1箇所に備わっている、
ことを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の運転評価システム。
5 運転評価システム
8 無線基地局
10 デジタルタコグラフ(車載器)
11,31 CPU
12A 速度I/F
12B エンジン回転I/F
13 外部入力I/F
14 センサ入力I/F
15 GPS受信部
15a GPSアンテナ
16 カメラI/F
17 記録部
18 カードI/F
19 音声I/F
20,42 スピーカ
21 RTC
22 SW入力部
23,23B 車載カメラ
24,32 通信部
25 電源部
26A 不揮発メモリ
26B 揮発メモリ
27 表示部
28 Gセンサ
29 アナログ入力I/F
30 事務所PC
33 表示部
34 記憶部
35 カードI/F
36 操作部
37 出力部
38 音声I/F
41 マイク
48 外部I/F
51 車速センサ
54 外部記憶装置
56 運行データDB
57 ハザードマップDB
65 メモリカード
70 インターネット
75 データセンタ
100A 画像フレーム
101 交差点
102 停止線の道路標示
103 白線の道路標示
104 一時停止の道路標示
105 道路標識

Claims (5)

  1. 車両に搭載された車載器と、前記車載器が検知した前記車両の運行情報に基づいて運転を評価する運転評価部とを有する運転評価システムであって、
    前記車載器は、道路標示又は道路標識における少なくとも一部分を認識した結果に応じて運転のイベントを検知すると共に、前記イベントの種類に応じて、前記イベントに関連する少なくとも車速を含む前記車両の運行情報を収集し、
    前記運転評価部は、前記イベントの種類に応じて、前記イベントに関連して収集された前記車両の運行情報を評価
    前記車載器は、3文字で構成される「止まれ」の道路標示又は道路標識を認識する場合に、「れ」、「ま」、「止」のうち何れか2つ以上の文字のパターン認識に成功した時点で、「止まれ」の道路標示又は道路標識であると確定する、
    ことを特徴とする運転評価システム。
  2. 前記車載器は、「れ」、「ま」、「止」の順番で文字毎に個別にパターン認識を行う、
    ことを特徴とする請求項1に記載の運転評価システム。
  3. 前記車載器は、特定の道路標示又は道路標識を認識した場合に、車速の変化を所定期間監視して一時停止の有無を識別し、一時停止有の場合は停止時間の長さを計測し、一時停止の有無および計測した停止時間の長さを前記運行情報に含める、
    ことを特徴とする請求項1に記載の運転評価システム。
  4. 前記車載器は、一時停止を指示する特定の道路標示又は道路標識を認識し、且つ前記車両における一時停止なしの運転状態を検知すると、運転者に対して警報を報知する、
    ことを特徴とする請求項3に記載の運転評価システム。
  5. 前記運転評価部は、前記車載器とデータ通信可能なデータセンタ、前記車載器が記録した運行情報を取得可能な事務所PC、および前記車載器の少なくとも1箇所に備わっている、
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の運転評価システム。
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