JP7206907B2 - 圧延h形鋼及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、圧延H形鋼及びその製造方法に関する。
近年、建築物などの大梁に使用されるH形鋼は、軽量化だけでなく、鋼構造物の信頼性向上を目的として、脆性破断しにくいことが要求されてきた。しかし、H形鋼は従来からフィレット部と呼ばれるウェブとフランジの交差部の靭性が低く、この位置からの脆性破断が課題である(図1、2)。近年では過去の震災で鋼構造物が倒壊した事例を受けて、日本鉄鋼連盟製品規定の耐震建築溶接構造用圧延鋼材(MDCR0011)の改定が提言され、高層建築の大梁へ適用されるH形鋼は、フィレット部における靭性を要求されるケースが増加している。
H形鋼は、柱梁接合部において長手方向の引張応力が作用した際に、フィレット部を起点として早期に脆性破断するケースがある。鉄鋼材料は引張応力下において脆性亀裂が進展しやすく、残留応力は圧縮であることが望ましい。実際の設計においても、例えば溶接組立により製造されたH形鋼はこのフィレット部において高い引張応力を有しており、かつ溶接欠陥が稀に存在するために、脆性破断しにくいように補剛が必要とされるケースもある。フィレット部の脆性破壊を抑制するには、フィレット部に破壊の起点となりうる溶接部がなく、脆性亀裂が進展するフランジ部の残留応力を可能な限り圧縮方向に制御することが必要である。
一方で、鋼構造物に用いられる一般的な圧延H形鋼はフランジに対してウェブが薄く、圧延中にフランジの方が高温となる。その結果、フランジの方が圧延完了後の熱収縮量が大きく、フランジに引張、ウェブに圧縮の残留応力が発生する(図3)。この残留応力を解消するために、過去に外面水冷(例えば特許文献1参照)、またはウェブの保熱や加熱(例えば特許文献2参照)による、ウェブとフランジの残留応力の軽減が提案されてきた。圧延後の製品焼鈍による残留応力の低減も提案されている。ただし、過去の報告ではほとんどの方案がフィレット部において残留応力が40MPaを超えている。残留応力を0に近づけることが可能な技術として、ウェブ加熱によりウェブ、フランジを均一な温度に維持しつつ室温まで冷却する方法(例えば特許文献3)が知られている。
また、水冷プロセスにより従来よりもフィレット部の残留応力を低減するには、フランジを選択的に冷却し、ウェブを冷やさないように対策する必要がある。H形鋼の水冷プロセスとして、ウェブ上面にエアブローをすることでウェブとフランジの冷却速度を同等にまで改善している例が知られている(例えば特許文献4)。
特許第934313号 特許第967871号 特開昭62-28002号公報 特開2018-103248号公報
上記特許文献1、2に記載の技術では、上述したようにフィレット部において残留応力が40MPaを超えており、更なる残留応力の低減が求められている。また、上記特許文献3に記載の技術では、靭性向上を目的とした水冷プロセスの際に、ウェブ表層に強度の高いマルテンサイトまたはベイナイトが発生してしまい、冷間矯正によりウェブを平坦化させた際に、表面に亀裂や割れが発生する可能性がある。また、上記特許文献4に記載の技術では、ウェブとフランジの温度差は解消されず、残留応力の改善にはつながらない恐れがある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、フランジを両面から水冷し、ウェブの温度を極力保持するよう水冷条件を適正にすることでフィレット部での靭性および残留応力を最適化し、高層建築の大梁向けとして、耐震性に優れた圧延H形鋼を提供することを目的とする。
上記目的に鑑み、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]質量%で、
C:0.10~0.20%、
Si:0.05~0.40%、
Mn:0.70~1.80%、
を含有し、
Nb:0.020%以下、
V:0.050%以下、
Al:0.06%以下、
Cr:0.20%以下、
に制限し、
フィレット部において引張残留応力が30MPa以下、または圧縮の残留応力であり、
ウェブの厚みが11mm以上であり、
ウェブ中央位置(W/2)の組織が表層においてフェライトおよびパーライトであり、
フィレット部中央の組織がフランジ外面から厚み方向1/4位置(t/4)においてベイナイト分率が30%以上であり、
フランジ幅方向中央位置(F/2)において、0℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギーが70J以上であることを特徴とする、圧延H形鋼。
[2]更に、質量%で、
Cu:0.30%以下、
Ni:0.20%以下、
Mo:0.30%以下、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記[1]に記載の圧延H形鋼。
[3]更に、質量%で、
REM:0.010%以下、
Ca:0.0050%以下、
の一方又は双方を含有することを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の圧延H形鋼。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載の圧延H形鋼を製造する圧延H形鋼の製造方法であって、[1]~[3]のいずれかに記載の成分からなる鋼片を1100~1350℃に加熱し、
フランジ幅方向中央位置(F/2)をAr3-50℃以上から水冷し、
当該水冷において、ウェブ上面と水冷ヘッダーのクリアランスを15mm以下に制御し、ウェブの上面の乗り水を抑制することでウェブとフランジの水冷後の復熱温度差を50℃以内に制御することを特徴とする、圧延H形鋼の製造方法。
本発明によれば、圧延および冷却という単純な工程でフィレット部の残留応力を低い引張、または圧縮応力に制限することが可能であり、フィレット部から生じる脆性破断を抑制可能な圧延H形鋼を得ることが可能である。したがって、本発明によれば、鋼構造物の崩壊を防ぐことが可能であり、産業上の貢献が極めて顕著である。
柱に接合したH形鋼の各部位の呼称を示す図である。 柱梁接合部の破断の過程を示す図である。 一般的なH形鋼の残留応力の分布を示す図である。 本発明における圧延H形鋼の製造工程を示す図である。 本発明における圧延H形鋼の水冷装置の構成を示す図である。 圧延H形鋼のフィレット部における残留応力を測定する方法を示す図である。 圧延H形鋼の冷却に伴う温度履歴と、測定温度を示す図である。 圧延H形鋼のフィレット部を定義する図である。 圧延H形鋼の寸法に関する説明図である。 実施例と、比較例における、冷却後のウェブとフランジの温度差と、F/2位置での残留応力との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本発明者らは、フィレット部における残留応力を抑制するため、フランジを両面から水冷し、フランジの温度を低下させた。さらに、ウェブ上面と水冷装置の上ヘッダーのクリアランスを最適化することでウェブの冷却を従来よりさらに抑制し、フランジの温度とウェブの復熱温度差を50℃以内に制御することで残留応力を圧縮側に制御した。
また、フランジを強冷することで強度を向上させ、その分合金添加量を減らし、フィレット部の靭性を向上させた。
以下、本発明について説明する。
まず、本発明のH形鋼の成分組成について説明する。
(C:0.10~0.20%)
Cは、フィレット部でのMA生成を促進し、靭性を低下させる。しかし、Cは安価に強度を向上させる事が可能であり、製鋼の工程上Cを完全に除去することはコストの増加につながることから、C量の下限値を0.10%以上とする。一方、C量が0.20%を超えるとフィレット部の中心偏析が凝集した位置においてMAが増加し、靱性が低下する。したがって、C量の上限を0.20%以下とする。好ましくはC量を0.18%以下、より好ましくは0.14%未満とする。
(Si:0.05~0.40%)
Siは、脱酸元素であり、強度の向上にも寄与するが、Cと同様、MAを生成させる元素である。Si量が0.40%を超えると、硬質相の生成によってフィレット部の靭性が低下するため、上限を0.50%とする。Si量は、0.30%以下が好ましく、より好ましくは0.20%以下とする。靱性確保の点からは、Si量は少ないほど好ましいが、操業上の理由から0.05%以上とする。
(Mn:0.70~1.80%)
Mnは特に中心偏析に凝集しやすく、局所的にMnの濃度が上昇することで脆化相であるMAの形成、粗大な組織である上部ベイナイトの増加、MnSの増加、焼入れ性の上昇による硬さの増大が促進される。この結果、靭性が著しく低下する。しかし、安価であり結晶粒径の微細化に効果的な元素であるため、0.70%以上を添加する。一方、1.80%を超えるMnを添加すると、特にフィレット部において介在物の増加等によって、母材及び溶接熱影響部の靱性を損なう。したがって、Mn量の上限を1.80%以下とする。Mn量は好ましくは、1.60%以下とする。
(Nb:0.020%以下)
Nbはフェライトを微細化させ、靭性を向上させる元素である。しかし、0.02%を超えて添加するとフェライト変態を過剰に抑制し、MAの生成を促進するため、0.02%以下とする。好ましくは0.015%以下とする。
(V:0.050%以下)
Vは、窒化物(VN)を形成する元素であり、母材の強度を高めるが添加に伴い靭性を低下させるため、上限を0.050%以下とする。好ましくは0.03%以下とする。
(Al:0.06%以下)
Alは、脱酸元素であるが、Al量が0.06%を超えると、介在物によってフィレット部の靭性が低下するため、上限を0.06%とする。Al量は、0.05%以下が好ましく、より好ましくは0.04%以下、更に好ましくは0.03%以下とする。Al量の下限は規定せず、0%でもよいが、Alは有用な脱酸元素であり、0.01%以上であってもよい。
更に、強度及び靱性の向上を目的として、Cu、Ni、Mo、Crのうちの1種又は2種以上を含有させてもよい。
(Cu:0.30%以下)
Cuは、強度の向上に寄与する元素である。しかし、Cu量が0.30%を超えると材料の加熱時に赤熱脆化を引き起こし、疵の原因となる。好ましくは0.20mass%以下である
(Ni:0.20%以下)
Niは、強度及び靭性を高めるために、極めて有効な元素である。しかし、Niは高価な元素であり、合金コストの上昇を抑制するため、Ni量の上限を0.20%以下とする。
(Mo:0.30%以下)
Moは、焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する元素である。しかし、0.30%を超えてMoを添加すると、Mo炭化物(Mo2C)の析出やフィレット部におけるMAの生成を促進し、靱性を劣化させることがあるため、0.30%以下に制限することが好ましい。Mo量の上限は、0.3%以下がより好ましい。Mo量の下限は、0.01%以上が好ましい。
(Cr:0.20%以下)
Crも強度の向上に寄与する元素である。しかし、0.20%を超えてCrを添加すると炭化物を生成し、靭性を損なうことがあるため、Cr量の上限を0.20%以下に制限することが好ましい。Cr量の好ましい上限は0.10%以下である。Crはスクラップに含まれる元素であるため、Cr量の下限は0.01%以上が好ましい。
更に、介在物の形態の制御を目的として、REM、Caのうちの1種又は2種を含有させてもよい。
(REM:0.010%以下、Ca:0.0050%以下)
REM及びCaは、脱酸元素であり、硫化物の形態の制御にも寄与するため、添加してもよい。しかし、REM、Caの酸化物は溶鋼中で容易に浮上するため、鋼中に含有されるREMの上限は0.010%以下、Caの上限は0.0050%以下である。好ましくは、REM及びCaの含有量の下限は、それぞれ0.0005%以上としても良い。
次に、本発明の圧延H形鋼のプロセスと特性について説明する。
本発明のH形鋼は、フィレット部の残留応力を抑制している。このため、図8に示すフィレット部内側において、残留応力を30MPa以下の引張、または圧縮に制御している。なお、本発明において、フィレット部は図8に示すようにウェブ上下面とフランジの内外面の延長線で囲まれた領域を、上下左右方向にそれぞれ30mm拡張した領域と定義する。
また、図9は本発明に係る圧延H形鋼の寸法に関する概略説明図である。図9に示すように、本明細書では、圧延H形鋼の全体高さ(フランジ外法)をW、フランジ幅をF、フランジ厚みをt、ウェブ厚をsとして規定し、圧延H形鋼の各位置をこれら符号W、F、t、sを用いて表す場合がある。例えば、図9のように、フランジ外面からフランジ厚み1/4の位置をt/4、フランジ幅方向中央位置をF/2、圧延H形鋼全体の高さ方向中央位置(=ウェブ中央位置)をW/2といったように表す。
図8に示す位置は、H形鋼を鋼構造物として用いた際に最も応力が集中する箇所である。このため、該当する位置においてフランジ冷却によりベイナイト分率を30%以上とした。組織の微細化および化学成分の低減により、F/2において0℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギーであるvE0℃を70J以上に制御した。vE0℃は、フィレット部における0℃のシャルピー衝撃吸収エネルギーを3回測定し、その平均値とした。シャルピー衝撃試験の試験方法はJIS Z 2242:2005に従った。試験片の断面は10×10mmとし、試験片の採取位置は図9に示すように、F/2において試験片の面がフランジ内面と一致するようにした。ノッチはVノッチとし、図9で示す通り、ウェブ側に形成した。
本発明の残留応力は、図6に示すようにフィレット部のコーナーR端にて測定した。長さ500mm超のサンプルを準備し、歪ゲージを製品長手方向の歪を測定する方向に張り付け、ウェブを帯鋸で切断した。次に、フランジ外側から当該位置の両側に22φの穴をドリルで開け、残留応力を解放した。鋼のヤング率210GPaを穿孔後の変形量で除し、元の残留応力を計算により求めた。なお、H形鋼の長手方向端部の残留応力は解放されている場合があり、ばらつく傾向にあるため、残留応力の測定は、長手方向の端面から長手方向で250mm以上内方側に位置する部分で行うのが好ましい。
本発明の圧延H形鋼の金属組織の評価は、光学顕微鏡によって行う。光学顕微鏡によって、W/2の表面とF/2-t/4の組織をナイタル腐食液により組織を現出させて観察した。組織分率の測定は200倍の組織写真より、ポイントカウンティングで求めた。
次に、本発明の圧延H形鋼の製造方法について説明する。本実施形態では、図4に示す工程で、生産性に優れる矩形の鋼片を加熱し、粗圧延、中間圧延、仕上圧延からなる熱間圧延を行い、水冷装置によって加速冷却を行い、圧延H形鋼を製造する。
製鋼工程(図示しない)では、上述のように、溶鋼の化学成分を調整した後、鋳造し、矩形の鋼片を得る。鋳造は、生産性の観点から、連続鋳造が好ましい。また、鋼片の厚みは、生産性の観点から、200mm以上とすることが好ましく、偏析の低減や、熱間圧延における加熱温度の均質性などを考慮すると、350mm以下が好ましい。
次に、加熱炉を用いて鋼片を加熱する。続いて、熱間圧延の一部として、粗圧延機を用いて粗圧延を行う。その後、熱間圧延の一部として、中間ユニバーサル圧延機(中間圧延機)と水冷装置とを用いて中間圧延が行われる。中間圧延は例えばパス間水冷を伴うリバース圧延で行われても良い。続いて、熱間圧延の一部として、仕上圧延機を用いて仕上げ圧延を行って、一連の熱間圧延を終了する。このとき、必要に応じて、H形鋼を水冷してもよい。
(鋼片の加熱温度:1100~1350℃)
鋼片の加熱温度は、1100~1350℃とする。加熱温度が低いと変形抵抗が高くなるので、熱間圧延における造形性を確保するために1100℃以上とする。一方、鋼片の加熱温度が1350℃を超えると、素材である鋼片の表面の酸化物が溶融して加熱炉内が損傷することがある。Nbなど、析出物を形成する元素を十分に固溶させるためには、鋼片の加熱温度の下限を1150℃以上とすることが好ましい。特に、製品の板厚が薄い場合は、累積圧下率が大きくなるため、鋼片の加熱温度を1200℃以上にすることが好ましい。組織を微細にするためには、鋼片の加熱温度の上限を1300℃以下にすることが好ましい。
粗圧延では、製品の寸法に合わせて矩形の鋼片を圧延し、粗造形を行う。この際、ウェブとフランジの大まかな形状を作りこむ。
熱間圧延の中間圧延では、制御圧延を行ってもよい。制御圧延は、圧延温度及び圧下率を制御する製造方法である。熱間圧延の中間圧延では、パス間水冷圧延加工を1パス以上施すことが好ましい。
パス間水冷圧延加工を行う場合、中間ユニバーサル圧延機の前後に設けた水冷装置を用いて、圧延パス間の水冷を行うことが好ましく、水冷装置によるフランジ外側面のスプレー冷却とリバース圧延とを繰り返し行うことが好ましい。パス間水冷を行う水冷装置は、例えば、中間ユニバーサル圧延機の直近に設けられ、フランジ外面のみを水冷する装置でも良い。パス間水冷を伴う圧延加工では、圧下率が小さい場合でも、板厚の内部まで加工歪みを導入することができる。また、水冷により圧延温度を短時間で低下させることによって、生産性も向上する。さらに、フランジのみを選択的に冷却することでウェブとフランジの温度差を軽減することが可能である。
中間圧延後のウェブ厚は11mm以上とした。例えば、ウェブ厚が9mmでは水冷直後にウェブの形状が不安定であり、上下に反ったため、11mm以上とした。なお、ウェブ厚11mm以上が望ましい根拠については、実施例において後述する。
熱間圧延の終了後は、そのまま、仕上圧延機の出側に設けた水冷装置(図5参照)によって、フランジの内面及び外面に加速冷却を施す。この時、ウェブの上面は乗り水による冷却を抑制するためにエアブローを実施する。フランジの内面及び外面に加速冷却と、ウェブの冷却抑制により、水冷プロセス後にフランジの温度とウェブの復熱温度差ΔTを50℃以下に制御することができる。これにより、フィレット部の引張残留応力を30MPa以下に制御する。H形鋼の残留応力は、異なる温度のウェブとフランジが室温まで冷却された際に、ウェブとフランジの熱収縮量が異なるために生じる。本実施形態では、低温のウェブを冷やさず、高温のフランジを選択的に冷却することで温度差を解消し、残留応力を抑制した。
図5に示す本実施形態に係る水冷装置は、フランジ内面を冷却する上ヘッダーの下面とウェブの上面とのクリアランスが15mm以下に設定されている。さらに、本実施形態に係る水冷装置はウェブ下面の冷却は行わない。上ヘッダーの下面とウェブ上面とのクリアランスを15mm以下とすることで、エアブローの流路断面積が小さくなるため、ウェブ上面に侵入する冷却水の排出効果が高まる。これにより、ウェブ上面の冷却が適切に抑制できる。また、ウェブ下面の冷却を行わないことで、ウェブの冷却がさらに抑制されることに加え、ウェブ厚さ方向での温度勾配を抑制してH形鋼における寸法歪の発生を防止できる。
本発明における温度の定義を図7に示す。いずれもW/2とF/2の表面で適正に校正された放射温度計により表面温度を測定する。水冷後の温度は、冷却後で最も高い温度を放射温度計により測定した。水冷後のウェブとフランジの復熱温度差をΔTと定義した。
以上説明した、本実施の形態に係る圧延H形鋼によれば、フィレット部の残留応力を低い引張応力または圧縮応力、具体的には30MPa以下に制限することができ、フィレット部から生じる脆性破断を抑制することが可能となる。また、ベイナイト分率を30%以上、0℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギーであるvE0℃を70J以上に制御することで、フィレット部での靭性および残留応力を最適化することが可能となる。また、製造方法においては、冷却時にフランジのみを選択的に冷却することでウェブとフランジの温度差を軽減し、フィレット部の残留応力を低減させることができる。
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
表1(実施例:No.1~8)及び表2(比較例:No.9~17)に示す成分組成を有する鋼を溶製し、連続鋳造により、厚みが250~300mmの鋼片を製造した。鋼の溶製は転炉で行い、一次脱酸し、合金を添加して成分を調整し、必要に応じて、真空脱ガス処理を行った。得られた鋼片を表3(実施例)及び表4(比較例)に示す加熱温度に加熱し、熱間圧延を行った。熱間圧延では、粗圧延に続いて、中間ユニバーサル圧延機と、その前後に設けた水冷装置とを用いて、必要に応じてフランジ外側面のスプレー冷却とリバース圧延および圧延後の水冷を行った。仕上げ圧延後にフランジを内外面から水冷し、鋼材の表面温度を測定した。ウェブの上面と上ヘッダーのクリアランスの設定値を12~25mmの範囲で設定した。
Figure 0007206907000001
Figure 0007206907000002
Figure 0007206907000003
Figure 0007206907000004
図3に示すように、F/2-t/4から、圧延方向を長さ方向とする試験片を採取し、機械特性を測定した。試験片は長さ2mのH形鋼の長手方向の中央部から採取した。H形鋼の長手方向端部の残留応力は解放される傾向にあるため、試験片は長手方向の端面から長手方向で250mm以上中心側に位置する部分から採取するのが好ましい。機械特性として、降伏点(YP)、引張強度(TS)、vE0℃を測定した。引張試験は、JIS Z 2241:2011に準拠して行い、シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242:2005に準拠して行った。
結果を表5(実施例)及び表6(比較例)に示す。H形鋼の各特性の目標値は、残留応力が30MPa以下、vE0℃が70J以上である。なお、表中では引張の残留応力を正、圧縮の残留応力を負として表記している。
Figure 0007206907000005
Figure 0007206907000006
表5に示すように、本発明の実施例であるNo.1~8は残留応力が30MPa以下かつvE0℃が70J以上であり、目標を満足していた。
一方、表6に示すように、比較例のNo.9、10、12、15は、ヘッダーと上面のクリアランスが大きく、冷却後のウェブとフランジの温度差が50℃以上であり、残留応力も30MPa超であった。さらに、No.9は、Al量が多く、粗大なAl系介在物によりフィレット部の靭性が低下した。No.11、13は、SiとC量が多く、硬質相の増加によって靭性が低下した。No.12、14は、VとCr量が多く、硬さが過剰となったことで靭性が低下した。No.16は、ウェブ上面と上ヘッダーのクリアランスは適正であるが、ウェブ下面からの水冷を実施したことにより、ウェブが冷却されることで残留応力が高かった。No.17は、化学成分、水冷条件のいずれも適正であったが、ウェブ厚が薄く、波打ち形状になったため、形状不良と判定された。ウェブが薄い場合は、わずかな応力で変形および座屈しやすく、水冷によるウェブ上面及びウェブ下面の温度差やフランジ冷却時のウェブ収縮により反り、波打ちが生じやすい。
図10は、実施例No.1~8と、比較例No.9~17に基づく、冷却後のウェブとフランジの復熱温度差ΔT(横軸)と、F/2位置での残留応力(縦軸)との関係を示すグラフである。実施例と比較例の結果から、図10に示すように、冷却後のウェブとフランジの復熱温度差ΔTを50℃以内に制御することでF/2位置での残留応力が30MPa以下に抑えられることが分かった。
本発明は、圧延H形鋼及びその製造方法に適用できる。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.10~0.20%、
    Si:0.05~0.40%、
    Mn:0.70~1.80%、
    を含有し、
    Nb:0.020%以下、
    V:0.050%以下、
    Al:0.06%以下、
    Cr:0.20%以下、
    に制限し、
    フィレット部において引張残留応力が30MPa以下、または圧縮の残留応力であり、
    ウェブの厚みが11mm以上であり、
    ウェブ中央位置(W/2)の組織が表層においてフェライトおよびパーライトであり、
    フィレット部中央の組織がフランジ外面から厚み方向1/4位置(t/4)においてベイナイト分率が30%以上であり、
    フランジ幅方向中央位置(F/2)において、0℃におけるシャルピー衝撃吸収エネルギーが70J以上であることを特徴とする、圧延H形鋼。
  2. 更に、質量%で、
    Cu:0.30%以下、
    Ni:0.20%以下、
    Mo:0.30%以下、
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の圧延H形鋼。
  3. 更に、質量%で、
    REM:0.010%以下、
    Ca:0.0050%以下、
    の一方又は双方を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の圧延H形鋼。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の圧延H形鋼を製造する圧延H形鋼の製造方法であって、
    請求項1~3のいずれかに記載の成分からなる鋼片を1100~1350℃に加熱し、
    フランジ幅方向中央位置(F/2)をAr3-50℃以上から水冷し、
    当該水冷において、ウェブ上面と水冷ヘッダーのクリアランスを15mm以下に制御し、ウェブの上面の乗り水を抑制することでウェブとフランジの水冷後の復熱温度差を50℃以内に制御することを特徴とする、圧延H形鋼の製造方法。
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