JP7206156B2 - アルミナ質焼結体及び配線基板 - Google Patents
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Description
また、抵抗率が低い金属(AgやCu)を含む導体層と絶縁部とを同時焼成するために、導体層に高融点金属(WやMo)を添加することも行われている(以上、例えば特許文献1参照)。
このため、導体層を絶縁部と同時焼成する場合には、導体層に高融点金属を多量に添加する必要があった。高融点金属は、抵抗率が高いものが多く、抵抗率が十分に低い導体層を同時焼成する妨げとなっていた。
また、従来の配線基板の製造方法は、同時焼成を行う炉の中を非酸化性雰囲気にする必要があった。非酸化性雰囲気にするためには、炉内を不活性気体や還元性気体で満たす必要があり、手間とコストがかかっていた。
そこで、抗折強度及び熱伝導率がLTCCよりも高く、且つ焼成温度が従来よりも低いアルミナ質焼結体を提供する。
アルミナを主成分とし、
Ti 0.67 Nb 1.33 O 4 と、
CaBa 2 TiNb 4 O 15 と、を含むアルミナ質焼結体である。
ただし、本開示の技術的範囲は、下記実施形態や図面に例示したものに限定されるものではない。
まず、本実施形態に係る配線基板100の構成について説明する。図1は、配線基板100の断面図である。
なお、配線基板100は、複数の絶縁層1が積層されたものであってもよい。その場合、導体層2は、複数の絶縁層1のうちの少なくともいずれかの表面に設けられていればよい。
絶縁層1は、アルミナ質焼結体で構成されている。
本実施形態に係る絶縁層1は、平面視の形状が矩形の板状をなしている。
本実施形態に係るアルミナ質焼結体は、アルミナの含有率が85~95質量(wt)%の範囲内となっている。
また、本実施形態に係るアルミナ質焼結体は、嵩密度が3.69g/cm3以上となっている。
本実施形態におけるTi、Nb、Oを成分とする化合物は、Ti0.67Nb1.33O4となっている。
また、本実施形態におけるCa、Ba、Ti、Nb、Oを成分とする化合物は、CaBa2TiNb4O15となっている。
アルミナ焼結体におけるCaBa2TiNb4O15の含有率は、アルミナの含有率を100とした場合、1~4%の範囲内となっている。
また、CaBa2TiNb4O15は、アルミナ質焼結体中において、結晶状態となっている。
本実施形態におけるCa、Nb、Oを成分とする化合物は、CaNb2O6となっている。
アルミナ焼結体におけるCaNb2O6の含有率は、アルミナの含有率を100とした場合、6~8%の範囲内となっている。
また、CaNb2O6は、アルミナ質焼結体中において、結晶状態となっている。
また、CaNb2O6の少なくとも一部は、針状に細長く直線状に伸びる針状結晶状態となっている。
本実施形態におけるLi、Nb、Oは、LiNbO3となっている。
なお、本実施形態に係るアルミナ質焼結体は、アルカリ金属のLiの代わりに同じアルカリ金属であるNa、Kを含んでいても良い。
具体的には、抗折強度(3点曲げ強度)が400MPa以上、熱伝導率が14W/mK以上となっている。
導体層2は、金属を主成分としており、絶縁層1の表面の少なくとも一部を覆っている。
本実施形態に係る導体層2は、平面視の形状が配線の形状をなしている。
なお、導体層2を構成する金属は、合金であってもよい。
また、本実施形態に係る導体層2は、金属の他に骨材を含んでいる。
骨材は、無機材料(例えばアルミナ粉末とNi粉末の混合物)であってもよいし、金属(例えばW(タングステン)粉末又はMo(モリブデン)粉末)であってもよい。
次に、上記配線基板100の製造方法について説明する。
初めの調合工程では、アルミナ質焼結体の原料となる原料粉末を調合する。
具体的には、アルミナ粉末に、焼結助剤と、結晶質ガラスの原料と、を混合し、均一に分散させる。
その際、原料粉末全体におけるアルミナ粉末の割合が85~95質量%となるようにする。
アルミナ粉末には、例えばバイヤー法で製造された一般的なもの(純度が99.6~99.9%の範囲内にあり、粒径が0.1~1.5μmの範囲内にあるもの)を用いることができる。
高純度微粉を用いると、焼成の際に粒子同士が結合しやすくなり、アルミナ質焼結体の強度をより一層高めることができる。
結晶質ガラスの原料には、CaO(酸化カルシウム)粉末、BaO(酸化バリウム)粉末を用いる。
なお、B2O3(酸化ホウ素)粉末、SiO2(二酸化ケイ素)粉末、及びLi2O(酸化リチウム)粉末のうちの少なくともいずれかの粉末を添加するようにしてもよい。
Liはガラスの軟化点を下げ、粒子同士の焼結性を高める効果があるため、Li2O粉末を添加すると、アルミナ質焼結体の強度をより一層高めることができる。
また、Nb2O5粉末及びTiO2粉末の他に、Mn2O(酸化マンガン)粉末及びCo3O4(酸化コバルト)のうちの少なくとも一方の酸化物を焼結助剤として更に混合するようにしてもよい。
焼結助剤にMn2Oを加えると、のちに焼成されるアルミナ質焼結体の誘電正接(tanδ)を小さくすることができる。
また、焼結助剤にCo3O4を加えると、アルミナ質焼結体の強度を高めることができる。
原料粉末を調合した後は、シート形成工程に移る、この工程では、調合した原料粉末を、有機バインダー及び有機溶剤と混練してスラリーを作製する。
そして、このスラリーを、ドクターブレード法等の方法でシート状に成形することでセラミックグリーンシートSを作製する。
セラミックグリーンシートを作製した後は、ペースト作製工程に移る。この工程では、例えば、金属粉末に、有機溶剤及びバインダーを添加し、これらをミル等で混練することによって金属ペーストを作製する。
本実施形態に係るペースト作製工程においては、金属ペーストに融点が高い骨材を添加する。
なお、このペースト作製工程において骨材を添加する場合には、骨材の含有率を、10質量%未満とすることが好ましい。骨材の含有率を10質量%未満とすれば、導体層2のシート抵抗が高くなってしまうのを防ぐ(5mΩ/cm2以下に保つ)ことができる。
また、ペースト作製工程は、上記シート作製工程の後とする必要はなく、次の塗布工程に移るまでの間の任意のタイミングとすることができる。
絶縁層1を作製した後は、塗布工程へ移る。この工程では、ペースト作製工程で作成した金属ペーストを、セラミックグリーンシートSの表面(厚さ方向を向く一方の面)に塗布する。その際、スクリーン印刷法等の方法で、焼成後に導体層2の厚さとなるように、かつ平面視形状が配線の形状となるように塗布する。
なお、配線基板100を、絶縁層1が複数積層されたものとする場合には、この塗布工程の後、金属ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートSを少なくとも一層含む複数のセラミックグリーンシートSを積層する。
絶縁層1に金属ペーストを塗布した後は焼成工程へ移る。この工程では、金属ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートSを焼成する。
焼成温度は、約1100~1250℃の範囲内とする。
本実施形態に係る焼成工程では、焼成温度が従来よりも低いため、焼成雰囲気を、還元雰囲気とすることもできるし、酸化性雰囲気(例えば大気)とすることもできる。酸化性雰囲気とすれば、炉内を不活性ガスや還元性ガスで満たす手間やコストを省くことができる。
その後、セラミックグリーンシートの温度が更に上昇し、結晶質ガラスGの温度が軟化点(例えば459℃)に達すると、図2(b)に示すように、結晶質ガラスGが軟化してアルミナ粒子A間の間隙に溶出する。
その後、セラミックグリーンシートSの温度の温度がさらに上昇し、結晶質ガラスGの温度が結晶化点(例えば604℃)に達すると、図2(c)に示すように、結晶質ガラスGが結晶化し、アルミナ粒子A間の間隙が狭まる。
このため、その後、セラミックグリーンシートSの温度の温度がさらに上昇し、結晶質ガラスGの温度が第二軟化点に達すると、一度結晶化した結晶質ガラスGが再び軟化する。
このとき、図2(d)に示すように、アルミナ粒子A間の距離が更に狭められ、アルミナ粒子A同士の結合力が向上するものと考えられる。
また、このとき、アルミナ粒子Aに含まれる不純物が液相を通じて排出されることで、アルミナ粒子Aの純度が上がり、焼結性が促進される、といった効果も考えられる。
こうして、セラミックグリーンシートSが焼成されて絶縁層1となる。
上述したように、本実施形態に係るペースト作製工程では、金属ペーストに骨材を添加したため、焼成の際、骨材が金属ペースト内における主成分金属の流動を抑制することになる。このため、導体層2の形状が保たれ、短絡等の問題が生じるのを防ぐことができる。
なお、絶縁層1と導体層2を同時焼成せずに、絶縁層1を先行して焼成し、後から導体層2を形成するようにしてもよい。その場合、ペースト作製工程において金属ペーストへの骨材の添加は不要となる。
次に、本開示の実施例について説明する。
各サンプルの焼成雰囲気はいずれも還元雰囲気とし、焼成温度はいずれも1200℃とした。
そして、各サンプルをそれぞれXRD(X線回折)分析するとともに、各サンプルの嵩密度をそれぞれ測定した。
嵩密度と抗折強度とは正の相関関係を有するため、嵩密度が高ければ抗折強度が高いということになる。
すなわち、実施例A~Cに係るサンプルは、CaBa2TiNb4O15を含有することにより、比較例A~Cに係るサンプルよりも抗折強度が高められているということが言える。
すなわち、実施例A,Bに係るサンプルは、CaNb2O6を含有することにより、実施例C及び比較例A~Cに係るサンプルよりも抗折強度が高められているということが言える。
結晶質ガラスには、上記実施例Bのサンプル作成に使用したものと同様のものを使用した。
各サンプルの焼成雰囲気はいずれも還元雰囲気とし、焼成温度は1150℃とした。
そして、各サンプルの嵩密度をそれぞれ測定した。
すなわち、上記実施形態に係る製造方法によって製造された実施例1~12に係るサンプルは、十分な抗折強度を有しているということが言える。
また、焼結助剤の割合が10~13%(結晶質ガラスが5~8%)の実施例4~7に係るサンプルは、嵩密度が3.83g/cm3以上となり、他の実施例に係るサンプルを上回った。
また、相対的にNb2O5が多い(その分結晶質ガラスが少ない)実施例9に係るサンプルは、焼結助剤全体の割合が同じで相対的にNb2O5が少ない実施例10に係るサンプルよりも嵩密度が高かった。
また、相対的にNb2O5が多い(その分アルミナが少ない)実施例11に係るサンプルは、TiO2及び結晶質ガラスの割合が同じで相対的にNb2O5が少ない実施例10に係るサンプルよりも嵩密度が高かった。
換言するならば、焼結助剤が少ないほど、アルミナとしての良好な機械的特性と誘電特性を維持可能である。このことから実施例1に示す結晶質ガラス量3質量%、Nb2O5量4質量%、Ti2O量1質量%の組成にて次の評価を行なった。
結晶質ガラスには、上記実施例Bのサンプル作成に使用したものと同様のものを使用した。
各サンプルの焼成雰囲気はいずれも還元雰囲気とし、焼成温度はいずれも1170℃とした。
そして、各サンプルの嵩密度、誘電正接、抗折強度をそれぞれ測定した。
一般的に、配線基板における絶縁層の誘電正接が低いほど導体層を流れる電気信号の損失が小さくなる。このため、導体層の抵抗率が低いことが求められるのと同様に、絶縁層の材料としては誘電正接が低い事が求められる。
また、絶縁層の抗折強度が高いほど、配線基板に実装されたチップを保護する役目を果たす上で利点となる。
また、実施例13~15に係るサンプルは、抗折強度がそれぞれ481,473,512MPaとなり、いずれも400MPaを上回っていた。
すなわち、上記実施形態に係る製造方法によって製造された実施例13~15に係るサンプルは、十分な抗折強度を有しているということが言える。
すなわち、実施例14,15に係るサンプルは、焼結助剤としてMn2O3を更に添加したことにより、高周波の交流電流を流す際のエネルギー損失が実施例13に係るサンプルよりも小さくなっているということが言える。
また、実施例15に係るサンプルは、抗折強度が512MPaとなり、実施例13,14に係るサンプルの抗折強度を上回っていた。
すなわち、実施例15に係るサンプルは、焼結助剤としてCo3O4を更に添加したことにより、実施例13,14に係るサンプルよりも抗折強度が高められているということが言える。
1 絶縁層(アルミナ質焼結体)
2 導体層
A アルミナ粒子
G 結晶質ガラス
PS 軟化点
PS1 第一軟化点
PS2 第二軟化点
S セラミックグリーンシート
Claims (9)
- アルミナを主成分とし、
Ti 0.67 Nb 1.33 O 4 と、
CaBa 2 TiNb 4 O 15 と、を含むアルミナ質焼結体。 - 前記CaBa 2 TiNb 4 O 15 は結晶状態である請求項1に記載のアルミナ質焼結体。
- CaNb 2 O 6 を更に含む請求項1又は2に記載のアルミナ質焼結体。
- 前記CaNb 2 O 6 は結晶状態である請求項3に記載のアルミナ質焼結体。
- 前記CaNb 2 O 6 の少なくとも一部は、針状結晶状態である請求項3又は4に記載のアルミナ質焼結体。
- LiNbO 3 を更に含む請求項1~5のいずれか一項に記載のアルミナ質焼結体。
- 前記アルミナの含有率が85~95質量%の範囲内である請求項1~6のいずれか一項に記載のアルミナ質焼結体。
- 嵩密度が3.69g/cm3以上である請求項1~7のいずれか一項に記載のアルミナ質焼結体。
- 請求項1~8のいずれか一項に記載のアルミナ質焼結体と、
前記アルミナ質焼結体の表面の少なくとも一部を覆う導体層と、を備える配線基板。
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