[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容をそれぞれ個別に列挙して説明する。
(1) 本実施形態に係るイオン検出器は、その一態様として、電子増倍部と、信号出力部と、信号出力端子と、ACカプラーと、を備える。電子増倍部は、荷電粒子の入射に応答して電子を放出する。信号出力部は、電子増倍部から放出された電子が到達する位置に配置される。また、信号出力部は、電子を受け取って電気信号を出力する。信号出力端子は、外部の電子回路と電気的に接続される端子であって、信号出力部の出力端と信号ラインを介して接続されている。ACカプラーは、信号ライン上に配置されている。特に、ACカプラーは、樹脂シートと、第1導電部と、第2導電部と、を有する。樹脂シートは、信号出力部が配置された側に面した第1主面と、該第1主面と対向するとともに信号出力端子が配置された側に面した第2主面と、を有する。第1導電部は、樹脂シートの第1主面上に配置されるとともに信号出力部の出力端に電気的に接続されている。第2導電部は、第1主面から第2主面に向かう方向に沿って樹脂シートを見たときに第1導電部と少なくとも一部が重なるように樹脂シートの第2主面上に配置されている。すなわち、第1導電部と第2導電部によりコンデンサが構成されている。更に、第2導電部は、信号出力端子に電気的に接続されている。
(2) 本実施形態の一態様として、ACカプラーは、第1保護膜と、第2保護膜を更に有してもよい。第1保護膜は、第1導電部の少なくとも一部を覆った状態で樹脂シートの第1主面上に設けられている。第2保護膜は、第2導電部の少なくとも一部を覆った状態で樹脂シートの第2主面上に設けられている。
(3) 本実施形態の一態様として、第1保護膜および第2保護膜のそれぞれは、樹脂材料からなるのが好ましい。また、本実施形態の一態様として、樹脂材料は、液晶ポリマー、ポリエステルフィルム、ポリイミド、およびポリアミドのいずれかであるのが好ましい。
(4) 本実施形態の一態様として、ACカプラーは、樹脂シートの第2主面に当接された絶縁性の第1補強部材を更に有してもよい。また、本実施形態の一態様として、ACカプラーは、樹脂シートの第1主面に当接された絶縁性の第2補強部材を更に有してもよい。これらの態様により、樹脂シートは、第1主面に、第2主面に、または、第1主面と第2主面の双方に補強部材が当接される。
(5) 本実施形態の一態様として、信号出力部は、ADおよびアノードのいずれかを含むのが好ましい。特に、信号出力部がアノードを含む場合、第1導電部が該アノードとして機能するのが好ましい。
(6) 本実施形態の一態様として、電子増倍部は、1またはそれ以上のMCPで構成されたMCPユニット、チャネル型電子増倍器(CEM:Channel Electron Multiplier)、および複数段のダイノードで構成されたダイノードユニットのいずれかを含むのが好ましい。
以上、この[本願発明の実施形態の説明]の欄に列挙された各態様は、残りの全ての態様のそれぞれに対して、または、これら残りの態様の全ての組み合わせに対して適用可能である。
[本願発明の実施形態の詳細]
本願発明に係るイオン検出器の具体例を、以下に添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、これら例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図されている。また、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
(基本構造)
図1(a)および図1(b)は、電子増倍部を有するイオン検出器の種々の構成例(基本構造)を示す図である。図1(a)および図1(b)に示されたイオン検出器は、基本構造として、入力側素子と、出力側素子と、信号出力端子と、出力側素子と信号出力端子との間の信号ライン上に設けられたACカプラーと、を備える。
具体的に、図1(a)に示されたイオン検出器において、入力側素子は、電子増倍部として、入力面101aと出力面101bを有するMCPユニット100Aを含む。なお、図1(a)の例では、MCPユニット100Aは、2枚のMCPにより構成されている。出力側素子は、信号出力部200として、アノード210(電子捕獲電極)を含む。アノード210と信号出力端子110の間には、ACカプラー300が配置されている。ACカプラー300は、アノード210からの高周波信号を取り出すためのコンデンサC1(以下、「信号コンデンサ」と記す)を含む。更に、ACカプラー300と信号出力端子110との間には、信号ラインの一部を構成するとともに、ノイズ除去用のリターンパスの一部を構成するSMAコネクタ120が配置されている。電位V1に設定された第1基準端子と電位V2に設定された第2基準端子の間には、直列接続された抵抗R1、R2(分圧抵抗)が配置されている。入力面101aは、第1基準端子に電気的に接続されることにより、電位V1に設定される。一方、出力面101bは、抵抗R1、R2の間に位置するノードに電気的に接続されている。アノード210と信号コンデンサC1の間に位置するノードは、抵抗R3を介して第2基準端子に接続されている。
また、図1(a)の例では、MCPユニット100Aの出力面101bとSMAコネクタ120との間に配置されたコンデンサC2が配置されている。コンデンサC2は、高周波信号に対する低インピーダンスのループを構成するとともに、大量のイオンがMCPユニット100Aに到達した際に該MCPユニット100Aの出力面101b側で発生する瞬間的な電圧降下を防ぐ効果がある。すなわち、MCPユニット100Aの出力面101b側で瞬間的な電圧降下が発生した場合、アノード210から信号出力端子110へ出力される信号(出力電圧)には、この電圧降下に起因した直流成分(以下、「DC成分」と記す)の変動が反映されることになる。そこで、MCPユニット100Aの出力面101bとSMAコネクタ120との間にコンデンサC2が配置されることにより、出力信号に反映されるDC成分の変動がチャンセルされる。なお、MCPユニット100Aの出力面101bとSMAコネクタ120の側面を結ぶ配線は、リターンパスの一部を構成している。
図1(b)に示された例は、電子増倍部(入力側素子)としてのダイノードユニット100Bと、出力側素子としての信号出力部200と、ACカプラー300と、を備えるイオン検出器である。図1(b)のダイノードユニット100Bは、軸AXに沿ってそれぞれ配置された複数段のダイノード130により構成されている。また、図1(b)に示されたイオン検出器は、信号出力部200として、アノード210とアバランシェダイオード220(以下、「AD」と記す)の双方を有する。AD220は、プリント配線基板221上に搭載されている。図1(b)の例では、アノード210とAD220との間に配置されたダイノード130がゲート電極として機能することにより、アナログモード出力とカウンティングモード出力が切り替えられる。AD220は、プリント配線基板221上に配置されており、ADの出力端と信号出力端子110との間の信号ライン上には、ACカプラー300としてコンデンサC1が配置されている。
次に、図2(a)および図2(b)は、図1(a)に示されたイオン検出器に適用される信号出力部200およびACカプラー300Aとして、AD220とチップコンデンサが適用された構成例を示す。なお、図2(a)および図2(b)に図示されていない電子増倍部および周辺の回路構成は、図1(a)に示されたMCPユニット100A、抵抗R1および電位1に設定された第1基準端子で構成された回路構成と同じである。
図2(a)の例において、信号出力部200としてのAD220は、プリント配線基板221の上面に搭載されている。プリント配線基板221の下面には信号ラインの一部を構成するSMAジャック120Aが取り付けられている。電位V3に設定された第3基準端子は、直列接続された抵抗R1(図1(a))および抵抗R5を介して第2基準端子に接続されており、抵抗R1と抵抗R5の間に位置するノードは、抵抗R4を介してAD220の電子入射面に接続されている。AD220と信号出力端子110を結ぶ信号ライン上にはSMAプラグ120BおよびSMAジャック120Cが配置されている。SMAプラグ120Bは、プリント配線基板221に取り付けられたSMAジャック120Aを介してプリント配線基板221に固定される。
ACカプラー300Aは、SMAプラグ120BとSMAジャック120Cの間に配置される。ACカプラー300Aは、チップコンデンサCC1(図1(a)の信号コンデンサC1に相当)と、リターンパス上に配置されるチップコンデンサCC3と、AD220の出力側電位を固定するための抵抗R6により構成されている。チップコンデンサCC1は、信号コンデンサとして、信号ライン上に配置される。チップコンデンサCC3は、チップコンデンサCC1に並列に配置されたノイズ対策用のコンデンサ(DC成分の変動の影響を除去)であって、SMAプラグ120Bの側面とSMAジャック120Cの側面とを結ぶライン(リターンパスの一部を構成)上に配置される。以下、リターンパス上に配置されるコンデンサを「リターンコンデンサ」と記す。AD220の電子入射面とSMAプラグ120Bの側面を結ぶ配線(リターンパスの一部を構成)上には、ノイズ除去用のコンデンサC2は配置されている。コンデンサC2は、AD200の入力側電極とSMAプラグ120Bの側面との間のリターンパス上に配置され、AD200の電子入射面における電圧降下(電子衝突により生じるDC成分の変動であって、出力信号に反映されるノイズ)の、出力信号への影響をキャンセルする。チップコンデンサCC3は、DC成分の変動による出力信号への影響をキャンセルする。SMAプラグ120Bの側面は、電位V3に設定されており、AD220の入力側電位は、電位V3に対して抵抗R4、R5による電圧降下分だけ低い電位に設定されている。
図2(b)の構成例は、ACカプラー300Bが適用されている点を除き、図2(a)の構成例と同じである。ACカプラー300Bでは、図2(a)のチップコンデンサCC1に替え、直列接続されたチップコンデンサCC1a、CC1bが採用されている。同様に、図2(a)のチップコンデンサCC3に替え、直列接続されたチップコンデンサCC3a、CC3bが採用されている。
図3は、ACカップリングにおける課題を説明するためのグラフであり、図1(a)に示されたMCPユニット100A(電子増倍部)と上述のような構造(図1(a)、図2(a)および図2(b))を有する種々のACカプラーを有する複数サンプルについての測定結果(出力電圧の時間特性)である。なお、図3において、縦軸は、各サンプルの出力電圧のピークを-100%に一致させた正規化出力電圧である。具体的には、図3において、グラフG310は、第1サンプル(コネクタなし)の測定結果、グラフG320は、第2サンプル(ショートコネクタ型)の測定結果、グラフG330は、第3サンプル(ロングコネクタ型)の測定結果をそれぞれ示す。ここで、第1サンプル(コネクタなし)は、図1(a)に示された構造(MCP+アノード)を有し、コンデンサC1としてラジアルリードコンデンサが採用されたサンプルである。第2サンプルは、図1(a)の構造のうちアノード210から信号出力端子110までの構造が図2(a)に変更された構造(MCP+AD)を有する。第3サンプルは、図1(a)の構造のうちアノード210から信号出力端子110までの構造が図2(b)に変更された構造(MCP+AD)を有する。
図3から分かるように、上述の第1~第3サンプルのいずれの測定結果においても、コンデンサのインダクタンスに起因した信号反射が確認できる。特に、第1サンプルよりも第2サンプル、第2サンプルよりも第3サンプルの方が信号反射が大きくなっている。
図4は、本実施形態に係るイオン検出器に適用可能なACカプラーの第1構造を示す図である。なお、図4に示されたACカプラー400は、図1(a)および図1(b)に示されたイオン検出器に適用可能である。
図4に示されたACカプラー400は、信号ライン上に配置される信号コンデンサPC1を有する。信号コンデンサPC1を構成する一対の電極410は、保護層に設けられた開口430から露出しており、この開口430を介して絶縁性リング部材420が接着固定されている。絶縁性リング部材420は、SMAジャックまたはSMAプラグの信号端子を貫通させるための貫通孔421を有しており、該信号端子は、領域440において一対の電極410と接触する。なお、ACカプラー400のより具体的な構造が図5に示されている。図5は、図4に示されたI-I線に沿った、ACカプラー400の断面構造を示す図である。
ACカプラー400は、図5に示されたように、互いに対向する主面450a、450bを有する樹脂シート450を有し、主面450a側と主面450b側とで同じ構造を有する。すなわち、樹脂シート450の主面450a上には電極410A(第1導電部)が設けられ、更に、開口430aを有する保護膜460A(第1保護膜)が設けられている。開口430aを介して露出した電極410Aには、開口421Aを有する絶縁性リング部材420Aが接着固定されている。絶縁性リング部材420Aは、SMAプラグ120Baの信号端子121Baを電極410Aに接触させた状態で該SMAプラグ120Baを保持する。なお、SMAプラグ120Baは、信号ラインの一部を構成する信号端子121Baと、リターンパスの一部を構成する、当接面122Baを含む側面を有する。SMAプラグ120Baの当接面122Baと絶縁性リング部材420Aの当接面422Aとが接着固定されることにより、SMAプラグ120BaがACカプラー400に固定される。
一方、樹脂シート450の主面450b上には電極410B(第2導電部)が設けられ、更に、開口430bを有する保護膜460B(第2保護膜)が設けられている。開口430bを介して露出した電極410Bには、開口421Bを有する絶縁性リング部材420Bが接着固定されている。絶縁性リング部材420Bは、SMAジャック120Caの信号端子121Caを電極410Bに接触させた状態で該SMAジャック120Caを保持する。なお、SMAジャック120Caは、信号ラインの一部を構成する信号端子121Caと、リターンパスの一部を構成する、当接面122Caを含む側面を有する。SMAジャック120Caの当接面122Caと絶縁性リング部材420Bの当接面422Bとが接着固定されることにより、SMAジャック120CaがACカプラー400に固定される。
なお、樹脂シート450の材料としては、液晶ポリマー(LCP)、ポリエステルフィルム、ポリイミド、ポリアミドなどが好ましい。例えば、LCPの比誘電率は3.0、ポリエステルフィルムの比誘電率は3.3、ポリイミドの比誘電率は3.1、ポリアミドの比誘電率は3.7である。LCPの耐電圧(厚み:100μm)は300kV/mm、ポリエステルフィルムの耐電圧(厚み:100μm)は300kV/mm、ポリイミドの耐電圧(厚み:100μm)は400kV/mm、ポリアミドの耐電圧(厚み:100μm)は300kV/mmである。また、LCPの吸水率は0.04%、ポリエステルフィルムの吸水率は0.4%、ポリイミドの吸水率は2.2%、ポリアミドの吸水率は1.5%である。
本実施形態に適用する場合に考慮すべき条件として、比誘電率は高い方が好ましいが、2~4が現実的である。耐電圧は100kV/mm以上が必要である。更に、吸水率は低い方が真空状態での使用に適している。以上の各点を考慮すれば、LCPが最も適している。
また、高周波を通過させるためには100pF~200pFのコンデンサが必要である。一例として、誘電率3.0の材料で150pFのコンデンサを実現する場合、要求される耐電圧ごとに樹脂シート450の厚みおよび電極410の面積(正方形)を計算した。30kVの耐電圧を実現するためには、樹脂シート450の厚みは200μm、電極面積は34mm×34mmが必要になる。20kVの耐電圧を実現するためには、樹脂シート450の厚みは100μm、電極面積は24mm×24mmが必要になる。12kVの耐電圧を実現するためには、樹脂シート450の厚みは50μm、電極面積は17mm×17mmが必要になる。5kVの耐電圧を実現するためには、樹脂シート450の厚みは25μm、電極面積は12mm×12mmが必要になる。以上の考察から、本実施形態に適用されるACカプラー400(後述するACカプラー500)に適用される樹脂シート450(後述する樹脂シート550)の厚みは、25μm以上100μm以下が好ましい。また、電極410(後述する電極501、502)の面積は、5mm×5mm以上30mm×30mm以下が好ましい。
図6(a)~図6(c)は、本実施形態に係るイオン検出器に適用可能なACカプラーの第2構造を示す図である。なお図6(a)~図6(c)に示されたACカプラー500は、図1(a)および図1(b)に示されたイオン検出器に適用可能である。
図6(a)に示されたACカプラー500は、信号ライン上に配置される信号コンデンサPC1と、リターンパス上に配置されるリターンコンデンサPC3と、を有する。信号コンデンサPC1を構成する一対の電極501の一部は保護層に設けられた開口530から露出しており、また、リターンコンデンサPC3を構成する一対の電極502の一部も開口530から露出している。一対の電極501の一方と、一対の電極502の一方は抵抗520を介して電気的に接続されている。一対の電極501の領域540には、SMAプラグまたはSMAジャックの信号端子が半田付けされる。また、一対の電極502の領域541には、SMAプラグまたはSMAジャックのリターン端子(SMAプラグおよびSMAジャックそれぞれの側面とともにリターンパスの一部を構成する)が半田付けされる。なお、ACカプラー500のより具体的な構造が図6(b)および図6(c)に示されている。図6(b)は、図6(a)に示されたII-II線に沿った、ACカプラー500の断面構造を示す図である。図6(b)は、図6(a)に示されたIII-III線に沿った、ACカプラー500の断面構造を示す図である。
ACカプラー500は、図6(b)および図6(c)に示されたように、互いに対向する主面550a、550bを有する樹脂シート550を有する。樹脂シート550の主面550a上には、電極501Aと電極502Aが配置されている。更に、電極501Aおよび電極502A上には、開口530aを有する保護膜560Aが設けられている。また、電極501Aおよび電極502Aには、開口530aを介してSMAプラグ120Bbが半田付けされる。具体的には、信号ラインの一部を構成する信号端子121Bbと、リターンパスの一部を構成する、リターン端子122Bbを含む側面を有する。SMAプラグ120Bbの信号端子121Bbが電極501Aに半田付けされるとともに、SMAプラグ120Bbのリターン端子122Bbが電極502Aに半田付けされることにより、SMAプラグ120BbがACカプラー500に固定される。なお、図6(c)に示されたように、電極501Aと電極501Bとは、抵抗520を介して電気的に接続されている。また、SMAプラグ120Bbと電極501A、502Aとの接続部分は接着剤により補強されるのが好ましい。
一方、樹脂シート550の主面550b上には、電極501Bと電極502Bが配置されている。更に、電極501Bおよび電極502B上には、開口530bを有する保護膜560Bが設けられている。また、電極501Bおよび電極502Bには、開口530bを介してSMAジャック120Cbが半田付けされる。具体的には、信号ラインの一部を構成する信号端子121Cbと、リターンパスの一部を構成する、リターン端子122Cbを含む側面を有する。SMAジャック120Cbの信号端子121Cbが電極501Bに半田付けされるとともに、SMAジャック120Cbのリターン端子122Cbが電極502Bに半田付けされることにより、SMAジャック120CbがACカプラー500に固定される。なお、SMAジャック120Cbと電極501B、502Bとの接続部分は接着剤により補強されるのが好ましい。
上述の第2構造を有するACカプラー500においても、樹脂シート550の厚みは、25μm以上100μm以下が好ましい。また、電極501、502の各面積は、5mm×5mm以上30mm×30mm以下が好ましい。
図7(a)~図7(c)は、図6(a)~図6(c)に示されたACカプラー500の効果を説明するためのグラフである。図7(a)は、ACカプラー500の回路図であり、信号ライン上に配置された信号コンデンサPC1の一方の電極(図6(b)の電極501A)と、リターンパス上に配置されたリターンコンデンサPC3の一方の電極(図6(b)の電極502A)とが、抵抗520により接続されている。SMAプラグ120Bb、ACカプラー500、およびSMAジャック120Cbで構成された回路の周辺構成は、図2(a)に示された回路構成と同じである。すなわち、図7(a)は、図2(a)に示された、SMAプラグ120B、ACカプラー300A、およびSMAジャック120Cで構成された部分に相当する回路図である。
図7(b)は、ACカプラー500が適用された第4サンプルの測定結果(出力電圧の時間特性)と、上述の第1サンプル測定結果(出力電圧の時間特性)と、を示すグラフである。図7(c)は、図7(b)に示されたグラフG710A、720Aそれぞれのピークを-100%に揃えた正規化出力電圧の時間特性を示すグラフである。図7(a)において、グラフG710Aは第4サンプルの測定結果、グラフG720Aは第1サンプルの測定結果をそれぞれ示す。また、図7(b)において、グラフG710Bは第4サンプルの測定結果、グラフG720Bは第1サンプルの測定結果をそれぞれ示す。
なお、第1サンプルは、上述のように図1(a)の構造を有する。第4サンプルは、第4サンプルは、図1(a)の構造のうちアノード210から信号出力端子110までの構造が図2(a)に変更された構造(MCP+AD)を有する。ただし、第4サンプルは、ACカプラー300Aに替えて、図7(a)に示された構造を有するACカプラー500を有する。信号コンデンサPC1およびリターンコンデンサPC3の容量は、いずれも150pFである。抵抗520は、1kΩ~100kΩである。
図7(b)および図7(c)から分かるように、第1サンプルと比較して、ACカプラー500が適用されたサンプルでは、インピーダンス不整合に起因した信号反射が効果的に低減される。
(第1実施形態)
図8は、第1実施形態に係るイオン検出器の回路構成の一例を示す図である。第1実施形態に係るイオン検出器は、電子増倍部としてのMCPユニット100Cと、加速電極150と、一対のフォーカシング電極160、170と、信号出力部200としてのAD220と、ACカプラー500と、信号出力端子110と、を備える。MCPユニット100Cは、入力面102aと出力面102bを有するMCPを含み、該MCPの側面は絶縁性材料からなるスペーサで取り囲まれている。なお、MCPユニット100Cに替えて、図1(a)に示されたMCPユニット100Aが適用されてもよい。AD220は、プリント配線基板221の上面(MCPの出力面102b側)に搭載されており、プリント配線基板221の下面(信号出力端子110側)にはSMAジャック120Aが取り付けられている。ACカプラー500の一方の面(AD220側)にはSMAプラグ120Bbが取り付けられている。ACカプラー500の他方の面(信号出力端子110側)にはSMAジャック120Cbが取り付けられている。
MCPユニット100Cの入力面102aは、電源910に接続され、電位Va(例えば+10kVまたは-10kV)に設定される。入力面102aと出力面102bとの間には、電源920により電位差Vb(例えば0V~1kV)が確保される。出力面102bとSMAプラグ120Bbとの間には、電源930により電位差Vc(例えば0V~4kV)が確保される。出力面102bとSMAプラグ120Bbとの間に設定される電位差(電圧)Vcは、抵抗Ra(例えば40MΩ)、抵抗Rb(例えば20MΩ)、ツェナーダイオード250(以下、「ZD」と記す)により分圧される。ZD250は、抵抗RbとSMAプラグ120Bbとの間に300Vの電位差を確保する。抵抗Raと抵抗Rbとの間に位置するノードには加速電極150が接続されている。一対のフォーカシング電極のうち出力面102b側に位置するフォーカシング電極160は、出力面102bと同電位に設定されている。AD220側のフォーカシング電極170は、抵抗RbとZD250の間に位置するノードに、抵抗Rc(例えば1kオーム)を介して接続されている。また、抵抗RbとZD250の間に位置するノードは、抵抗Rd(例えば1kΩ)を介してAD220の電子入射面に接続されている。また、AD220の電子入射面とSMAプラグ120Bbの間のリターンパス上にはコンデンサC2(例えば10nF)が配置されている。AD220への電子入射が続くと該AD220の電子入射面で電圧降下が発生する。この場合、AD220から信号出力端子110から出力される信号(出力電圧)には、この電圧降下に起因したDC成分の変動が反映されることになる。そこで、AD220の電子入射面とSMAプラグ120Bbとの間にコンデンサC2が配置されることにより、出力信号に反映されるDC成分の変動がキャンセルされる。
ACカプラー500は、図6(a)~図6(c)に示された構造を有しており、抵抗520(例えば1kΩ~100kΩ)を介して接続された信号コンデンサPC1(例えば150pF)とリターンコンデンサPC3(例えば150pF)を含む。また、ACカプラー500のAD220側にはSMAプラグ120Bbが取り付けられている。ACカプラー500の信号出力端子110側にはSMAジャック120Cbが取り付けられている。SMAプラグ120Bb側面とSMAジャック120Cbの側面は、リターンコンデンサPC3を介してリターンパスの一部を構成しており、SMAジャック120Cbの側面は接地(GND)される。信号出力端子110も抵抗Reを介して接地される。
図9(a)は、図8に示された構造を有するイオン検出器の外観の例を示す図である。MCPユニット100C、一対のフォーカシング電極160、170、信号出力部の一部を構成するプリント配線基板221、およびACカプラー500がスペーサを介して固定されている。図9(b)は、部分的な組み立て工程、特に、AD200(信号出力部200)およびACカプラー500の構造を説明するための図である。
図9(b)に示されたように、プリント配線基板221の上面(MCPユニット100C側)には、AD220、コンデンサC2、および抵抗Rdが配置されている。また、プリント配線基板221の下面(信号出力端子110側)には、SMAジャック120Aが取り付けられている。ACカプラー500(図9(b)では、保護膜は図示されていない)の一方の面(MCPユニット100C側)には、信号コンデンサPC1の電極501AとリターンコンデンサPC3の電極502Aが、抵抗520を介して接続された様態で配置されている。また、電極501Aには、SMAプラグ120Bbの信号端子121Bbが半田付けされ、電極502AにはSMAプラグ120Bbのリターン端子122Bbが半田付けされている。一方、ACカプラー500の下面(信号出力端子110側)には、信号コンデンサPC1の電極501BとリターンコンデンサPC3の電極502Bが配置されている。電極501Bには、SMAジャック120Cbの信号端子121Cbが半田付けされ、電極502BにはSMAジャック120Cbのリターン端子122Cbが半田付けされている。上述のようにSMAプラグ120BbおよびSMAジャック120Cbが取り付けられたACカプラー500には、樹脂ボルト511a~511cによりスペーサ510a~510cの一端が固定されている。スペーサ510a~510cの他端は、プリント配線基板221に取り付けられている。これにより、ACカプラー500がプリント配線基板221に固定される。
次に、上述の第1実施形態に係るイオン検出器に適用可能なACカプラー500の補強構造の例を、図10(a)、図10(b)、図11、および図12を参照して説明する。なお、本明細書において、文言「ACカプラー」は、図4および図5に示された構造を有するデバイス(ACカプラー400、500)のみならず、以下に説明される補強構造を含めて包括的に定義される。第1実施形態におけるACカプラー500は、樹脂シート550の主面550a上に電極501A、502Aが配置される一方、主面550b上に電極501B、502Bが配置された構造を有する。そのため、ACカプラー500自体はフレキシビリティを有する。このことは作業者の取り扱いを難しくする。そこで、図10(a)および図10(b)にACカプラー500の補強構造を示す。
図10(a)は、第1補強構造として、ACカプラー500の下面に補強板600Aが接着剤を介して取り付けられた構造を示す。なお、図10(a)のIV-IV線に沿った断面構造、および、図10(a)のV-V線に沿った断面構造が、図11に示されるとともに図12の上段に示されている。図11に示されたように、第1補強構造では、ACカプラー500側にSMAプラグ120Bbが半田付けされる。しかしながら、補強板600Aを介して信号コンデンサPC1およびリターンコンデンサPC3に接続されるSMAジャックの構造は、上述のSMAジャック120Cbの構造とは異なる。すなわち、補強板600Aには、SMAジャック120Ccが取り付けられる。SMAジャック120Ccの信号端子121Ccの先端は、補強板600Aに設けられた貫通孔601Aに挿入され、導電性接着剤610を介して信号コンデンサPC1の電極501Bに接続される。一方、SMAジャック1220Ccのリターン端子122Ccは、上述のSMAジャック120Cbのリターン端子122Cbよりも短い(図11の下段に示されたように、先端部分がカットされている)。リターンコンデンサPC3の電極502Bは、導電性接着剤610を介して金属配線620と接続されており、SMAジャック120Ccのリターン端子122Ccは、金属配線620に半田630を介して接続されている。
なお、第1補強構造に適用可能なSMAジャックは、図11の下段に示されたSMAジャック120Ccには限定されない。例えば、SMAジャック120Ccに替えて、図12の上段に示されたSMAジャック120Cdが適用されてもよい。SMAジャック120Cdは、図5に示されたSMAジャック120Caと同様に、リターン端子を有さないが、SMAジャック120Cdの側面から延びた固定片(リターン端子として機能する)を有する。SMAジャック120Cdの固定片は、半田630により補強板600Aに固定される。また、信号端子121Cdの先端は、貫通孔601Aに挿入され、導電性接着剤610を介して信号コンデンサPC1の電極501Bに接続される。一方、リターンコンデンサPC3の電極502Bには、導電性接着剤610を介して金属配線620が接続されており、SMAジャック120Cdの固定片が半田630を介して金属配線620に接続されている。
図10(b)は、第2補強構造として、ACカプラー500の下面に補強板600Aが接着剤を介して取り付けられるとともに、ACカプラー500の上面に補強板600Bが接着剤を介して取り付けられた構造を示す。なお、図10(b)のVI-VI線に沿った断面構造が、図12の下段に示されている。この第2補強構造において、補強板600Aには上述のSMAジャック120Cdが取り付けられる。このSMAジャック120Cdと電極501B、502Bとの電気的な接続構造は第1補強構造と同じである。一方、補強板600Bには、SMAプラグBcが取り付けられる。このSMAプラグ120Bcは、上述のSMAジャック120Cdと同様に、側面から延びた固定片(リターン端子として機能する)を有する。SMAプラグ120Bcの固定片は、半田630により補強板600Bに固定される。また、信号端子121Bcの先端は、貫通孔601Bに挿入され、導電性接着剤610を介して信号コンデンサPC1の電極501Aに接続される。一方、リターンコンデンサPC3の電極502Aには、導電性接着剤610を介して金属配線620が接続されており、SMAプラグ120Bcの固定片が半田630を介して金属配線620に接続されている。
(変形例)
図13(a)および図13(b)は、第1実施形態に係るイオン検出器の変形例の一部を示す図である。上述の第1実施形態では、AD220が搭載されたプリント配線基板221Aに、ACカプラー500がスペーサ510を介して取り付けられている。本変形例は、図13(a)に示されたように、ACカプラー500を構成する信号コンデンサPC1、リターンコンデンサPC3、および抵抗520が、AD220が搭載されたプリント配線基板221Aの上面に配置されている。なお、図13(a)には、信号コンデンサPC1の一方の電極501AとリターンコンデンサPC3の一方の電極502Aが示されている。また、他の構成については、上述の第1実施形態の構成と同様である。
すなわち、図13(a)に示されたように、プリント配線基板221Aは、補強板600Cの上面(MCPユニット100C側)にプリント配線層650が貼り付けられている。なお、補強板600Cの下面(信号出力端子110側)にはSMAジャック120Cdが取り付けられている。プリント配線基板の上面(MCPユニット100C)に相当するプリント配線層650の一方の面には、AD220、抵抗RdおよびコンデンサC2(チップコンデンサ)とともに、信号コンデンサPC1の電極501A、リターンコンデンサPC3の電極502Aおよび抵抗520が搭載されている。プリント配線層650の他方の面上には、信号コンデンサPC1の電極501BおよびリターンコンデンサPC3の電極502Bが配置されている。したがって、電極501Bおよび電極502Bは、プリント配線層650と補強板600Cに挟まれた状態になっている。
図13(b)は、図13(a)中のVII-VII線に沿ったプリント配線基板221Aの断面構造を示す図であり、上述のように補強板600Cの下面(信号出力端子110側)には、SMAジャック120Cdが取り付けられている。補強板600Cを介してSMAジャック120Cdが電極501B、502Bにそれぞれ電気的に接続する構造は、図12の上段および下段に示された断面構造と同じである。
(第2実施形態)
図14は、第2実施形態に係るイオン検出器の構成例の一部を示す図である。第2実施形態に係るイオン検出器は、概念的には、図1(a)に示されたイオン検出器に、第3構造を有するACカプラー500Aが適用された基本構造を有する。ただし、この第2実施形態に係るイオン検出器では、アノード210(信号出力部200に含まれる)とACカプラー500Aが一体的に構成さている。
第2実施形態に適用されるACカプラー500Aは、樹脂シートの両面に同じ電極パターンが設けられている。すなわち、第3構造を有するACカプラー500Aでは、樹脂シートの中心に信号コンデンサPC1を構成する一対の電極503が配置されるとともに、該信号コンデンサPC1を取り囲むように6つのリターンコンデンサPC3を構成する6対の電極504が配置されている。なお、一対の電極503は、樹脂シートを挟んで配置された電極503A、503Bで構成されている。また、電極504の各対は、樹脂シートを挟んで配置された電極504A、504Bで構成されている。
第2実施形態に係るイオン検出器は、一対のMCP105a、105bにより構成されたMCPユニット100Aを有する。MCPユニット100Aの側面は絶縁性リング106により取り囲まれており、これらMCPユニット100Aと絶縁性リング106がMCP-In電極107AとMCP-Out電極107Bにより挟まれている。なお、MCP-In電極107Aは、リードピン109Aを介してMCPユニット100Aの入力面を所定電位に設定するための電極であり、MCPユニット100Aの入力面を露出させるための開口を有する。また、MCP-Out電極107Bは、リードピン109Bを介してMCPユニット100Aの出力面を所定電位に設定するための電極であり、MCPユニット100Aの出力面を露出させるための開口を有する。
MCP-Out電極107BとACカプラー500Aとの間には、該MCP-Out電極107Bの開口を介してMCPユニット100Aの出力面と直接対面するようにアノード210(信号出力部200に含まれる)が配置される。このアノード210は、ガラスエポキシ基板210Aの両面に配置されており、それぞれの面のアノード210はスルーホールを介して同電位に設定される。なお、アノード210は、リードピン109Cを介して所定電位に設定される。また、ガラスエポキシ基板210Aの両面には、アノード210を取り囲むように配置されたリターン電極210Bも配置されており、リターン電極210Bの一方は、MCP-Out電極107Bに接触している。また、ガラスエポキシ基板210Aのそれぞれの面のリターン電極210Bもスルーホールを介して同電位に設定される。ガラスエポキシ基板210Aの中心(一対の電極503A、503Bそれぞれの中心に一致)には貫通孔が設けられており、金属製ジョイント部材710が固定されている。金属製ジョイント部材710の一端は、アノード210に接触(電気的に接続)しており、該金属製ジョイント部材710の他端は、導電性リング部材740Aの貫通孔を介して電極503A(信号コンデンサPC1の一方の電極)に接触している(電気的に接続)。ACカプラー500Aとアノード210がその両面に配置されたガラスエポキシ基板210Aとの間には、金属製リング部材210Dが配置されている。この金属製リング部材210Dの一方の面は、リターン電極210Bに接触する一方、該金属製リング部材210Dの他方の面は、6つの電極504A(それぞれがリターンコンデンサPC3の一方の電極に相当)それぞれに接触している。この構成により、6つの電極504Aは、MCP-Out電極107Bと同電位に設定される。
一方、ACカプラー500Aは、ガラスエポキシ基板210Aと金属製ベース基板810により挟まれている。ガラスエポキシ基板210AとACカプラー500Aとの間には、導電性リング部材740Aおよび金属製リング部材210Dが配置されており、これら部材によりガラスエポキシ基板210AとACカプラー500Aとの間隔が一定に維持されている。また、ACカプラー500Aと金属製ベース基板810との間には、導電性リング部材740Bおよび金属製リング部材820が配置されており、これら部材によりACカプラー500Aと金属製ベース基板810との間隔が一定に維持されている。このとき、金属製リング部材820は、6つの電極504B(リターンコンデンサPC3の他方の電極)それぞれに接触している。
金属製ベース基板810は、SMAジャック120Caの信号端子121Caを貫通させるための開口を有し、その一方の面上に、6つの電極504Bを同電位に設定するための金属製リング部材820が載置される。SMAジャック120Caは、図5に示された構造を有し、信号端子121Caが導電性リング部材740Bの貫通孔を介して電極503B(信号コンデンサPC1の他方の電極)に接触している。また、SMAジャック120Caの当接面122Caは、金属製ベース基板810の他方の面に接触した状態で、該金属製ベース基板810に固定されており、これにより、リターンパスの一部を構成している。また、金属製ベース基板810とMCP-In電極107Aとの間隔は、絶縁性スペーサ720a~720cにより確保されており、これら金属製ベース基板810とMCP-In電極107Aの相対位置は、樹脂ボルト108a~108cにより固定されている。
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態に係るイオン検出器の構成例の一部を示す図である。第3実施形態に係るイオン検出器は、第2実施形態のイオン検出器と同様に、ACカプラー500Aが適用されている。ただし、この第3実施形態では、ACカプラー500Aの中心に位置する信号コンデンサPC1の一方の電極がアノード(図13のアノード210)として機能する点で、上述の第2実施形態とは異なる。すなわち、第3実施形態に係るイオン検出器は、ACカプラー500Aが信号出力部としてのアノードの機能と信号コンデンサの機能の双方を実現するよう構成されている。
第3実施形態には、上述の第2実施形態のACカプラー500Aと同じ構造のACカプラーが適用される。すなわち、ACカプラー500Aは、樹脂シートの両面に同じ電極パターンが設けられている。ACカプラー500Aでは、樹脂シートの中心に信号コンデンサPC1を構成する一対の電極503が配置されるとともに、該信号コンデンサPC1を取り囲むように6つのリターンコンデンサPC3を構成する6対の電極504が配置されている。なお、一対の電極503は、樹脂シートを挟んで配置された電極503A、503Bで構成されている。また、電極504の各対は、樹脂シートを挟んで配置された電極504A、504Bで構成されている。
第3実施形態に係るイオン検出器において、MCPユニット100Aの入力面および出力面をそれぞれ所定電位に設定するための構造は、上述の第2実施形態と同様である。すなわち、2枚のMCP105a、105bで構成されたMCPユニット100Aの側面は、絶縁性リング106により取り囲まれている。更に、MCPユニット100Aと絶縁性リング106は、リードピン109Aを介して所定電位に設定されるMCP-In電極107Aと、リードピン109Bを介して所定電位に設定されるMCP-Out電極107Bに挟まれている。MCP-In電極107Aは、MCPユニット100Aの入力面を露出させるための開口を有するとともに、MCP-Out電極107Bは、MCPユニット100Aの出力面を露出させるための開口を有する。
一方、ACカプラー500Aは、MCP-Out電極107Bと金属製ベース基板810により挟まれている。特に、ACカプラー500AとMCP-Out電極107Bとの間には、金属製リング部材210Dが配置されており、この金属製リング部材210Dを介してMCP-Out電極107Bと6つの電極504A(リターンコンデンサPC3の一方の電極)が同電位に設定される。また、この構成により、アノードとして機能する電極503A(信号コンデンサPC1の一方の電極)は、MCP-Out電極107Bの開口を介してMCPユニット100Aの出力面と直接対面する。なお、ACカプラー500Aの、電極503Bおよび504Bが配置された面側には、金属製ベース基板810が配置されている。
金属製ベース基板810は、SMAジャック120Caの信号端子121Caを貫通させるための開口を有し、その一方の面上に、6つの電極504Bを同電位に設定するための金属製リング部材820が載置される。SMAジャック120Caは、図5に示された構造を有し、信号端子121Caが導電性リング部材740Bを介して電極503B(信号コンデンサPC1の他方の電極)に接触している。また、SMAジャック120Caの当接面122Caは、金属製ベース基板810の他方の面に接触した状態で、該金属製ベース基板810に固定されており、これにより、リターンパスの一部を構成している。また、金属製ベース基板810とMCP-In電極107Aとの間隔は、絶縁性スペーサ720a~720cにより確保されており、これら金属製ベース基板810とMCP-In電極107Aの相対位置は、樹脂ボルト108a~108cにより固定されている。
以上の本発明の説明から、本発明を様々に変形しうることは明らかである。そのような変形は、本発明の思想および範囲から逸脱するものとは認めることはできず、すべての当業者にとって自明である改良は、以下の請求の範囲に含まれるものである。