JP7201647B2 - 二次電池の劣化推定方法、二次電池の劣化推定装置 - Google Patents
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Description
さらに、前記良否判定のステップにおいて、前記劣化度が前記目標値を下回った場合に、劣化量の少ないSOC使用領域を使用するように電池を制御してもよい。
なお、前記二次電池が、リチウムイオン二次電池において好適に実施することができる。
さらに、前記良否判定のステップにおいて、前記劣化度が前記目標値を下回った場合に、劣化量の少ないSOC使用領域を使用するように電池の充電を制御する充電制御のステップをさらに実行してもよい。
まず、最初に本発明の実施形態の概略について説明する。本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、図1に示すようなセル電池として製造される。図7に示すリチウムイオン二次電池1の製造工程において、電池の材料が納入され(S1)、電池要素がそれぞれ形成される源泉工程(S2)ののち、組立工程(S3)で組み立てられる。組み立てられたリチウムイオン二次電池は、活性化工程における初充電(S7)後に、一定の保存温度T・保存時間ATの条件でエージング工程(S9)が行われ、終了後冷却され、セル電池としてリチウムイオン二次電池1が完成する。
図2に示す本実施形態の車両10は、リチウムイオン二次電池1の劣化推定方法を実施する劣化推定装置11を備える。劣化推定装置11は、制御装置としてのコンピュータとして構成されている。劣化推定装置11は、予め取得した対象となるリチウムイオン二次電池1を一定の電圧・温度・時間の条件で保存して、副反応電流値や容量低下を測定して劣化特性として取得している。
<リチウムイオン二次電池1>
図1は、本実施形態のリチウムイオン二次電池1の構造の一例を示す模式図である。リチウムイオン二次電池1は、セル電池を複数スタックして電池パックとし、電気自動車やハイブリッド自動車の車載電源として用いる。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池1の製造方法について説明する。図7はリチウムイオン二次電池1の製造方法の手順を示すフローチャートである。
リチウムイオン二次電池1の製造に当たり、必要な材料を納入する(S1)。電極体2を構成する正極3、負極4、セパレータ5、および電解液の材料は、従来公知の各種材料を用いることができる。これらの材料の一例として、正極3の活物質には、コバルト酸リチウムまたはマンガン酸リチウムが用いられる。正極集電体13にはアルミニウム箔が用いられる。負極4の活物質にはカーボン(グラファイト)が用いられる。負極集電体14には銅箔が用いられる。その他、電極の合材を形成するペーストの導電材やバインダなどの原料も納入される。セパレータ5にはポリオレフィンのシートが用いられる。電解液は、有機溶媒と、リチウムイオンと、添加剤とを含む。また、電池の金属製のケース12も納入される。その他、端子なども納入される。
源泉工程(S2)は、リチウムイオン二次電池の要素である正極3、負極4等を製造する工程である。
<組立工程(S3)>
組立工程(S3)は、源泉工程(S2)で製造されたリチウムイオン二次電池1の電池要素をセル電池として組み立てる工程である。
組立工程(S3)で電極体2の収容が完了したリチウムイオン二次電池1は、電解液を充填する前に、ケース12内に残存した水分を排除する乾燥工程(S4)が行われる。基本的には露点管理がなされたドライルームで、定格露点温度の低いエアドライヤで、乾燥した空気を循環させる。この乾燥の条件として、使用したエアドライヤの定格露点温度や、乾燥時間などが製造情報PIAQAとして記録される。
乾燥工程(S4)を経て、乾燥した電池の内部に電解液が充填される(S5)。
<封止(S6)>
乾燥工程(S4)が終了し、電解液が充填された(S5)電池ケース12に蓋をして、溶接される。
<初充電(S7)>
ここからは、リチウムイオン二次電池1のコンディショニングと呼ばれる手順で、その主な目的は、負極4の表面にSEI被膜を形成することにより電解液の分解を抑制することにある。したがって、リチウムイオン二次電池1の組み立て後は、通常初充電(S7)による活性化工程が行われる。
初充電(S7)で充電されたリチウムイオン二次電池1は、一定時間、例えば1日、一定の温度、例えば70°Cの状態で保存されるエージング工程(S9)が行われる。この間に、SEI被膜が形成される。
エージング工程(S8)が終了したら、必要以上に電池を高温状態に晒さないように、冷却されて常温に戻される。
<製造情報PIと、これに基づいた副反応電流値予測における補正について>
<活物質の比表面積>
副反応電流の大きさは、種々の要素により変化する。例えば活物質の比表面積[cm2/g]が大きければ、同じ活物質の質量でも反応する面積が大きくなり、それに応じて副反応電流[A]も大きくなる。そこで、この比表面積は、例えばBET法(Brunauer-Emmett-Teller法)により測定される。そして、この活物質の特性として比表面積[cm2/g]が製造情報PIBETとして記録される。
また、電極に塗布されたペーストの量を示す目付[g/cm2]が大きければ、それだけ活物質の質量も多いため副反応電流[A]が大きくなる。この目付[g/cm2]も製造条件として記録される。
また、非水電解質はリチウムイオン二次電池1には不可欠なものであり、水分が完全に除去されることが望ましい。残存水分が存在すると、正負極上で水が反応し、被膜が形成され、副反応電流値が大きくなる。そのため、電池要素が製造される源泉工程(S2)における正負極の製造においては、集電体に活物質を含むペーストを塗工し、熱風乾燥や、乾燥炉においての加熱乾燥や、真空乾燥などを経て、水分が除去されるが、このときの電極体内に残存した水分量が製造条件として記録される。
<温度>
リチウムイオン二次電池1の製造工程については、工程環境温度[°C]の影響を受ける。組立工程完了直後の活性化工程におけるエージング工程の初充電の開始時点では、正負極におけるSEI被膜が形成されていない状態である。リチウムイオン二次電池1の初充電にて正負極にSEI被膜が形成されるが、その経過においては、温度が上昇するとアレニウスの法則から副反応電流も大きくなりSEI被膜の被膜形成が進行し、その結果副反応電流値[A]が早く低下する。このような工程環境温度[°C]や、エージング時の温度[°C]は、製造条件として記録され、温度に関する製造情報PITEPとして記録される。
なお、本実施形態では、製造情報として上記の3つの要素を例示したが、もちろんこれらに限定されない。すなわち、副反応電流値の予測に寄与する数値化が可能なものは、いかなる要素であっても、製造条件や製造情報として捉えることができる。
上述した通り、製造条件が異なると、副反応電流値の大きさも製造条件に依存して変化する。副反応電流の大きさは、その後のリチウムイオン二次電池1の劣化に影響を与える。
図3は、活物質の比表面積に関する製造情報の補正マップMPBETの一例を示す。比表面積[cm2/g]の大きさが製造情報PIBETとして記録されている。ここで得た活物質の特性として比表面積[cm2/g]と、このリチウムイオン二次電池1の設計値である活物質の比表面積[cm2/g]が基準値としてプロットされ、さらに比表面積[cm2/g]が増減したときの副反応電流値[A]との関係を実験によりプロットして補正マップを作成した。なお、例えば、比表面積に誤差が少ないような場合では、これを固定値として扱ってもよい。
図4は、活物質の質量に関する製造情報の補正マップMPACTの一例を示す。質量[g]の大きさが製造情報PIACTとして記録されている。ここで得た活物質の質量[g]と、このリチウムイオン二次電池1の設計値である活物質の質量[g]が基準値としてプロットされ、さらに質量[g]が増減したときの副反応電流値[A]との関係を実験によりプロットして補正マップを作成した。なお、本実施形態では、質量[g]は、目付[g/cm2]×電極面積[cm2]×ペースト中の活物質の割合で算出されるが、この3つのうちのいずれか、又はすべてに誤差が少ないような場合では、これを固定値として扱ってもよい。
図5は、水分量に関する製造情報の補正マップの一例を示す。リチウムイオン二次電池1の製造工程では、電極体内水分量、乾燥条件、露点などの製造条件が記憶され、これらが統合されて残存する水分量に関する製造情報PIAQAとして記録される。ここで得た水分量と、このリチウムイオン二次電池1の設計値である水分量と、これが増減したときの副反応電流値[A]との関係を実験によりプロットして補正マップを作成した。
図6は、温度に関する製造情報PITEPの補正マップの一例を示す。リチウムイオン二次電池1の製造工程については、工程環境温度[°C]の影響を受ける。特に活性化工程における初充電の開始時点では、正負極におけるSEI被膜が形成されていない状態である。正負極におけるSEI被膜の形成後においては、温度が上昇するとアレニウスの法則からSEI被膜の被膜形成が早く進行し、その結果副反応電流値[A]が早く低下する。このような工程環境温度[°C]や、エージング時の温度[°C]は、製造条件として記録され、温度に関する製造情報PITEPとして記録される。例えばここで得たエージング時の温度[°C]と、このリチウムイオン二次電池1の設計値でエージング時の温度[°C]と、これが増減したときの副反応電流値[A]との関係を実験によりプロットして補正マップを作成した。
<リチウムイオン二次電池1が搭載される車両10の全体構成>
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池1が搭載される車両10について、簡単に説明する。
リチウムイオン二次電池の劣化推定装置11は、リチウムイオン二次電池1を含む。このリチウムイオン二次電池1の各セル電池のセル電圧VB、セル電流IB、セル温度TBを常時監視する監視ユニット20を備える。充放電制御などの各種プログラムやこれらのセル電圧VB・セル電流IB・セル温度TBを記憶するメモリ102、及びこれらを処理する制御装置としてのCPU101を備えたECU100とを備える。
メモリ102、CPU101を備えたECU100は、リチウムイオン二次電池の充放電の制御信号をPCU30に送信し充放電の制御装置として機能する。
PCU30は、ECU100からの制御信号に応じて、リチウムイオン二次電池1に対して、充電若しくは放電を制御する。
モータジェネレータ42は、主として電動機として動作し、急加速時にはリチウムイオン二次電池1から供給された大電流で駆動輪80を駆動する。一方、車両の制動時や下り斜面では、モータジェネレータ42は、発電機として動作して大電流の回生発電を行ない、リチウムイオン二次電池1に大電流を供給する。
監視ユニット20は、電圧センサ21と、電流センサ22と、温度センサ23とを含む。電圧センサ21は、セル電圧VBを検出する。電流センサ22は、リチウムイオン二次電池1に入出力されるセル電流IBを検出する。温度センサ23は、ブロック毎のセル温度TBを検出する。各センサは、その検出結果を示す信号をECU100に出力する。これらのセル電圧VB、セル電流IBは、このリチウムイオン二次電池1の履歴として、一定時間毎にセル温度TB、セル電圧VBとして記憶される。
本実施形態では、リチウムイオン二次電池1が車両10に搭載された使用開始の時間から、その運用時には、一定間隔(例えば、0.1秒)毎に、セル電圧VB・セル電流IB・セル温度TBの測定及び記録、劣化の判定が行われている。
<二次電池の良否判定方法の手順>
図8は、本実施形態のリチウムイオン二次電池の劣化推定方法のフローチャートである。以下、上述した本実施形態のリチウムイオン二次電池1、その劣化推定装置11による劣化推定方法について、このフローチャートに従って、その手順について説明する。
車両の運用が開始されると、劣化推定装置11のECU100のメモリ102に記憶されたこのリチウムイオン二次電池1の劣化特性のデータを、CPU101に読み込む(S101)。
図9は、リチウムイオン二次電池1の劣化特性取得のため装置200の構成を示すブロック図である。本実施形態のリチウムイオン二次電池1の劣化特性取得の装置200の構成は、周知の充放電装置203、セル電圧測定器204、セル電流測定器205、温度計206、保温装置207を備える。また、これらを制御するインタフェースを備えた周知のコンピュータからなる制御装置208を備える。制御装置208は、CPU281とメモリ282を備える。メモリ282は、RAM、ROMを備える。
図10は、劣化特性取得の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに沿ってリチウムイオン二次電池1の副反応電流値、すなわち劣化特性の取得の手順について説明する。
「T1[°C]」は、任意の保存温度(例えば50°C)である。
「Vdat1[V]」は、「基準電圧」で、基準電圧は下限電圧と上限電圧の間で任意に設定した電圧である。「下限電圧」とは、この実施形態では、セルSOC(State of Charge)0%の完全放電状態のセル電圧VBで、例えば、3.0[V]である。「上限電圧」とは、セルSOC100%の満充電の電圧VBで、例えば、4.1{V}である。「基準電圧Vdat1[V]」は、本実施形態では、例えば3.8[V]に設定されている。
「Q3[Ah]」は、基準電圧Vdat=3.8[V]から保存を経て下限電圧3.0[V]まで放電した保存後の残存容量である。
「QSD[Ah]」は、保存前の区間容量Q2と保存後の残存容量Q3の差から求めた保存期間中の自己放電容量である。
「iNE0[A]」は、自己放電容量QSD[Ah]÷保存時間t1[h]で求めた負極の副反応電流値(速度)である。
<劣化特性取得のフローチャートの手順>
次に、これらの定義を用いて、リチウムイオン二次電池1の劣化特性取得の手順を図10のフローチャートに沿って説明する。
続いて、基準電圧Vdat=3.8[V]に電圧を調整した後(S203)、任意の温度T1(例えば50°C)で任意の時間t1(例えば24時間)保存する(S204)。この手順が「保存のステップ」に相当する。
最後に、負極の副反応電流値iNE0[A]と、容量低下量Qlossを保存時間t1[h]で除した商[A]との差から、正極の副反応電流値iPE0[A]を算出する(S210)。
このように取得した劣化特性は、判定対象となるリチウムイオン二次電池1の設計上の活物質の比表面積[cm2/g]や、活物質質量[g]、残存水分[g]や、温度[°C]の補正情報により補正される元データとなるものである。
図8のフローチャートに戻って説明を続ける。劣化特性取得(S101)の手順が終了したら、製造情報読込の手順(S102)が実行される。本実施形態の製造情報PIは、活物質の特性である比表面積に関する製造情報PIBET、活物質の量に関する製造情報PIACT、水分量に関する製造情報PIAQA、温度に関する製造情報PITEPが含まれる。製造情報PIは、上述したように、前提としてこのリチウムイオン二次電池1が車載されるタイミングで、劣化推定装置11のECU100のメモリ102に記憶されている。ここでは、これらの記憶されているデータを処理のために読み出して、CPU101に読み込む。
続いて、補正情報読取の手順(S103)が実行される。本実施形態の補正情報CIは、(活物質の比表面積に関する)補正マップMPBET、(活物質に関する)補正マップMPACT、(水分量に関する)補正マップMPAQA、(温度に関する)補正マップMPTEPが含まれる。上述したように、前提としてこのリチウムイオン二次電池1が車載されるタイミングで、補正マップMPは、として劣化推定装置11のECU100のメモリ102に記憶されている。ここでは、これらの記憶されているデータを処理のために読み出して、CPU101に読み込む。
続いて、測定した検査の対象となるリチウムイオン二次電池1のセル電圧VBとセルのセル温度Tを読み込む(S104)。セル電圧VBとセル温度TBは、リチウムイオン二次電池1が搭載された車両10の監視ユニット20の電圧センサ21と温度センサ23(図2)により測定されている。ここで測定したセル電圧VBとセル温度TBを、ECU100のメモリ102に記憶し、CPU101の処理(例えば0.1秒毎)に合わせて読み出される。
以上の手順で、劣化特性、製造情報PI、補正情報CI、セル電圧VB、セル温度TBに基づいて、その処理期間における副反応電流値を推定する。
図8に示す手順では、副反応電流値推定(S105)の手順で算出された積算された副反応電流値は、図12に示す「容量-OCP図」にフィードバック(S107)されているので、それまでに積算された副反応電流値に基づいて、負極容量低下量ΔQNEと、正極容量低下量ΔQPEとから、正負極組成対応ずれ容量ΔQを導く。そして、セル電圧VBからそのセル電圧VBを「容量-OCP図」に基づいて正極開放電位VPEと負極開放電位VNEに振り分けて、正極開放電位VPEと負極開放電位VNEを正確に推定する。
図12は、積算された副反応電流値に基づいて、セル電圧VBから正極開放電位V1PE及び負極開放電位V1NEを算出するための、正極・負極の容量-OCP(Open Circuit Potential・開放電位)の関係を示すグラフである。
つまり、副反応電流値が積算された分の容量ずれを生じたリチウムイオン二次電池1のセル電圧V1=正極開放電位V1PE-負極開放電位V1NEで求めることができる。
<負極副反応電流値iNE及び正極副反応電流値iPEの算出>
ここで、負極副反応電流値iNEと正極副反応電流値iPEは、以下のようにして求められる。
次に、ターフェル式を用いて具体的に負極副反応電流値iNEと正極副反応電流値iPEを求める方法について説明する。
すなわち、負極における副反応による劣化量は、負極副反応電流値iNEをΔtの間で積分する。負極副反応電流値iNEは、セル電圧VB及びセル温度TBに基づいて、次のターフェル式により求めることができる。
本実施形態では、図15に示すターフェル式(式(3))により、負極副反応電流値iNEを求める。
ターフェル式(式(3))による負極副反応電流値iNEの求め方は、詳しくは、特開2017-190979号公報の段落0024~0081、特にターフェルの式を用いた正負極組成対応ずれ容量ΔQの計算方法は、段落0076~0081に詳細に開示されているため、ここでは詳しい記載は省略する。また、もちろん電流密度は必要に応じて副反応電流値に換算される。式(3)の交換電流密度i0は、リチウムイオン二次電池1の製造完了後に数回充放電を繰り返すと、SEI被膜の形成速度が略定常となるので略一定の値に落ち着いてくる。このため、試験等により予めセル温度TBに対応するマップを作成しておき、このマップから読み出すようにしてもよい。
従来、正負極組成対応ずれ容量ΔQは、負極表面上でのSEI被膜形成(副反応)の影響が主であると考えられていた。負極で形成される被膜は、SEIのほか、LiF、Li2Co3などがあるが、負極副反応電流値iNEは、上述のターフェルの式により推定されていた。
ここで、i0を交換電流密度、αを移動係数、Fをファラデー定数、Rを気体定数、Tを絶対温度、Usideを被膜形成電位、UPEを正極開放電位とする。なお、この式で算出された正極副反応電流値iPEは、電流密度であるので、リチウムイオン二次電池1に応じて、正極副反応電流値iPE[A]を求める。
そして、図11に示すフローチャートのS301において、このように算出した負極副反応電流値iNEと、正極副反応電流値iPEとから、図12に示す負極容量低下量ΔQNE及び正極容量低下量ΔQPEとを求め、正負極組成対応ずれ量ΔQを算出する。
なお、前記ターフェル式では、SEI被膜の厚みによる電流値への影響については、考慮されていない。そこで、負極副反応電流値iNEと正極副反応電流値iPEの算出において、各経過時間における被膜形成量に応じて、副反応電流値を減衰させた値を用いて負極副反応電流値iNEと正極副反応電流値iPEを算出する。
製造情報PIに基づいて正極副反応電流値iPEと、負極副反応電流値iNEを補正する。S301~S303の手順で推定した正負極の副反応電流値は、判定対象となるリチウムイオン二次電池1の劣化特性を基準として、セル電圧VB及びセル温度TBに基づいて理論的に推定した数値である。しかしながら、上述したとおり、実際に製造されるリチウムイオン二次電池1では、原材料の特性、正負極の製造のばらつき、残存水分の差、温度管理などにより、劣化特性から得た条件とは異なっている。
上記のS301~304の手順で算出した正極副反応電流値iPEに経過時間Δtを掛け合わせて正極容量低下量ΔQPEを求める。同様に、負極副反応電流値iNEに経過時間Δtを掛け合わせて負極容量低下量ΔQNEを求める。そして、これまでに算出した負極容量低下量ΔQNE(負極副反応電流値INE×Δt)、正極容量低下量ΔQPE(正極副反応電流値IPE×Δt)の積算値に、新たな負極容量低下量ΔQNEと、正極容量低下量ΔQPEをさらに加算して、積算した負極容量低下量ΔQNEと、正極容量低下量ΔQPEを劣化推定装置11のメモリ102に記憶する。
なお、上記説明では、負極容量低下量ΔQNEと正極容量低下量ΔQPEを積算してから差分を求め、積算電池容量低下量ΔQINTを算出したが、積算する前に負極容量低下量ΔQNEと正極容量低下量ΔQPEの差分をとり、それを積算して積算電池容量低下量ΔQINTを算出してもよい。
次に、劣化度Qdetを算出する。ここで、劣化度Qdetとは、初期容量Q0からどの程度容量が減少したかを示す割合で、劣化度Qdet=(初期電池容量Q0-積算電池容量低下量ΔQINT)/Q0により算出する。これを閾値QTHRと比較する(S106)。閾値QTHRは、予め製品として期待される任意に設定される劣化度である。この閾値QTHRは、一定の限界値でもよいが、例えば、走行距離に応じて大きくしたり、時間の経過とともに大きくしたりするようにしてもよい。
一方、「劣化度Qdet<閾値QTHR」ではない場合(S106;NO)、すなわち「劣化度Qdet≧閾値QTHR」である場合は、製品として許容できない劣化度であるとして、充放電において制限を課す。
本実施形態では、「劣化度Qdet<閾値QTHR」ではない場合(S106;NO)は、劣化推定装置11のECU100は、PCU30に対して、使用するSOC領域を通常の50~60%である場合に、劣化の少ないことがわかっているSOC領域(例えば40~50%)とするようにリチウムイオン二次電池1の充放電の制御を行う。
上述の副反応電流推定の手順(S105)で算出され、積算された負極副反応電流値INE、正極副反応電流値IPEにより、正極容量低下量ΔQPEと負極容量低下量ΔQNEを算出して、正負極組成対応ずれ容量ΔQを算出する。この正負極組成対応ずれ容量ΔQを「容量-OCP図」からOCP図にフィードバックして、次巡のセル電圧VBに基づく正極開放電位VPE[V]及び負極開放電位VNE[V]の推定に反映させることで、常に電圧VBに基づく正極開放電位VPE[V]及び負極開放電位VNE[V]の推定を正確なものとすることができる。
車両10の運用が連続する場合(S109:NO)は、次の時間の劣化推定のための電圧・温度読込の手順(S104)に戻り、次巡の劣化推定の手順(S105~S108)を繰り返す。
<実施形態の効果>
(1)本実施形態の劣化推定装置11によれば、副反応電流を正確に推定することでリチウムイオン二次電池1の劣化を正確に推定することができる。
(3)副反応電流値の推定は、劣化特性を前提に行われるため、そのリチウムイオン二次電池1の劣化特性に応じた副反応電流値の推定ができる。
(5)また、被膜の成長に応じた副反応電流値の補正も行われるため、長期にわたる推定の精度も損なわない。
(変形例)本発明は、上記各実施形態には限定されず、下記のように実施することもできる。
○実施形態では、図1に示すようなリチウムイオン二次電池1を例に挙げて説明したが、リチウムイオン二次電池1は、円筒状の形状や、立方体のような形状であってもよい。また、正極及び負極は、巻回したものに限らず、複数の正極板、負極板が積層されたようなものであってもよい。
2…電極体
3…正極
4…負極
5…セパレータ
10…車両
11…劣化推定装置
20…監視ユニット
21…電圧センサ
22…電流センサ
23…温度センサ
30…PCU
100…ECU
101…CPU
102…メモリ
200…劣化特性取得の装置
VB…セル電圧
VNE…負極開放電位
VPE…正極開放電位
TB…セル温度
IB…セル電流
INE…負極劣化量[Ah]
IPE…正極劣化量[Ah]
iNE…負極副反応電流値[A]
iPE…正極副反応電流値[A]
iNE0…(劣化特性として取得された)負極副反応電流値[A]
iPE0…(劣化特性として取得された)正極副反応電流値[A]
ΔQ…正負極組成対応ずれ容量[Ah]
ΔQNE…負極容量低下量[Ah]
ΔQPE…正極容量低下量[Ah]
ΔQINT…積算電池容量低下量[Ah]
Q0…初期電池容量[Ah]
Qloss…保存前後の電池満容量の容量低下量[Ah]
QSD…自己放電容量[Ah]
Qdet…劣化度[Ah]
PC…製造条件
PI…製造情報
PIBET…(活物質の比表面積に関する)製造情報
PIACT…(活物質の量に関する)製造情報
PIAQA…(水分量に関する)製造情報
PITEP…(温度に関する)製造情報
CI…補正情報
MP…補正マップ
MPBET…(活物質の比表面積に関する)補正マップ
MPACT…(活物質に関する)補正マップ
MPAQA…(水分量に関する)補正マップ
MPTEP…(温度に関する)補正マップ
Claims (10)
- 二次電池の副反応電流値に影響を与える二次電池の製造工程における複数の製造条件について、それぞれの製造条件と、該製造条件が副反応電流値に与える相関関係を予め測定して補正情報として記録する補正情報取得のステップと、
二次電池の製造工程において、前記製造条件を製造情報として取得する製造情報取得のステップと、
単位時間における使用においてセル電圧と環境温度と、前記製造情報に基づいて、その単位時間の副反応電流値を推定する副反応電流値推定のステップと、
前記副反応電流値推定のステップで推定した単位時間における副反応電流値を積算する副反応電流値積算のステップと、
積算された前記副反応電流値に基づいて前記二次電池の劣化度を推定する劣化推定のステップと
を備えたことを特徴とする二次電池の劣化推定方法。 - 推定された前記二次電池の劣化度と、予め設定された目標値と比較して当該二次電池の良否を判定する良否判定のステップとをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の劣化推定方法。
- 前記良否判定のステップにおいて、前記劣化度が前記目標値を下回った場合に、劣化量の少ないSOC使用領域を使用するように電池を制御することを特徴とする請求項2に記載の二次電池の劣化推定方法。
- 予め決められた保存温度と保存時間の条件でエージングするエージングのステップと、
前記エージングの前後で電池満容量の差を測定するステップと、
前記エージングの前後で自己放電容量を測定するステップと、
前記電池満容量の差と自己放電容量とから、正極及び負極の副反応電流を算出するステップとを備え、二次電池の劣化特性を取得をすることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池の劣化推定方法。 - 前記副反応電流値推定のステップは、積算された正極及び負極の副反応電流値に基づいて、正極・負極の容量-開放電位の関係において、正極及び負極の容量ずれ量を参照して正極及び負極の開放電位を求めるステップを備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池の劣化推定方法。
- 前記製造条件は、活物質の特性、水分量、温度のいずれかの条件を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池の劣化推定方法。
- 前記二次電池が、リチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池の劣化推定方法。
- コンピュータを備えた二次電池の劣化推定装置であって、
前記コンピュータは、
二次電池の製造工程において、二次電池の副反応電流値に影響を与える二次電池の製造工程における複数の製造条件について、それぞれの製造条件と、該製造条件が副反応電流値に与える相関関係を予め測定して補正情報と、
前記製造条件を製造情報として、
を記憶した記憶手段を備え、
単位時間における使用においてセル電圧と環境温度と、前記製造情報に基づいて、その単位時間の副反応電流値を推定する副反応電流値推定のステップと、
前記副反応電流値推定のステップで推定した単位時間における副反応売内を積算する副反応電流値積算のステップと、
積算された前記副反応電流値に基づいて前記二次電池の劣化度を推定する劣化推定のステップとを実行することを特徴とする二次電池の劣化推定装置。 - 推定された前記二次電池の劣化度と、予め設定された目標値と比較して当該二次電池の良否を判定する良否判定のステップとをさらに実行することを特徴とする請求項8に記載の二次電池の劣化推定装置。
- 前記良否判定のステップにおいて、前記劣化度が前記目標値を下回った場合に、
劣化量の少ないSOC使用領域を使用するように電池の充電を制御する充電制御のステップをさらに実行することを特徴とする請求項9に記載の二次電池の劣化推定装置。
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