JP7197670B2 - 非水電解質二次電池用正極、並びにこれを用いた非水電解質二次電池、電池モジュール、及び電池システム - Google Patents
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Description
非水電解質二次電池の正極としては、リチウムイオンを含む正極活物質、導電助剤、及び結着材からなる組成物を、金属箔(集電体)の表面に固着させたものが知られている。
リチウムイオンを含む正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等のリチウム遷移金属複合酸化物や、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)等のリチウムリン酸化合物が実用化されている。
非特許文献1には、リン酸鉄系活物質の表面をカーボンで被覆することにより、電池容量を改善したことが報告されている。
本発明は、非水電解質二次電池の高レートサイクル特性を向上できる非水電解質二次電池用正極を提供する。
<1>
正極集電体と、前記正極集電体上に存在する正極活物質層とを有し、
前記正極活物質層は、正極活物質を含む1つ以上の正極活物質粒子を有し、
前記正極活物質の真密度Dと、前記正極活物質層の真密度D1とは、下記(s)式を満たす、非水電解質二次電池用正極。
0.96D≦D1<D ・・・(s)
<2>
前記正極活物質は、一般式LiFexM(1-x)PO4(式中、0≦x≦1、MはCo、Ni、Mn、Al、Ti又はZrである。)で表される化合物を含む、<1>に記載の非水電解質二次電池用正極。
<3>
前記正極活物質は、LiFePO4で表されるリン酸鉄リチウムである、<2>に記載の非水電解質二次電池用正極。
<4>
前記真密度D1は、3.4g/cm3以上3.6g/cm3未満である、<3>に記載の非水電解質二次電池用正極。
<5>
前記正極活物質層は、導電助剤及び結着材を含み、
前記導電助剤の含有量は、前記正極活物質層の総質量に対し1質量%以下であり、
前記結着材の含有量は、前記正極活物質層の総質量に対し1質量%以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極。
<6>
前記正極活物質層は、導電助剤を含まない、<1>~<5>のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極。
<7>
前記正極活物質粒子の一部又は全部は、前記正極活物質の芯部と、前記芯部を被覆する被覆部とを有し、
前記被覆部は導電材料を含み、
前記導電材料の含有量は、前記正極活物質粒子の総質量に対し1.3質量%以下である、<1>~<6>のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極。
<8>
下記試験方法により求められるサイクル容量維持率は80%以上である、<1>~<7>のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極。
(試験方法)
定格容量1Ahの非水電解質二次電池とし、3Cレート、3.8Vで充電し10秒間休止し、次いで、3Cレート、2.0Vで放電し10秒間休止する充放電サイクルを1000回繰り返し、その後0.2Cレート、2.5Vで放電した際の放電容量Bを測定し、充放電サイクルに供する前の非水電解質二次電池の放電容量Aで放電容量Bを除してサイクル容量維持率(%)とする。
<9>
<1>~<8>のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極と、負極と、前記非水電解質二次電池用正極と前記負極との間に存在する非水電解質と、を備える、非水電解質二次電池。
<10>
<9>に記載の非水電解質二次電池の複数個を備える、電池モジュール又は電池システム。
図1は、本発明の非水電解質二次電池用正極の一実施形態を示す模式断面図であり、図2は本発明の非水電解質二次電池の一実施形態を示す模式断面図である。
なお、図1、2は、その構成をわかりやすく説明するための模式図であり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合もある。
本実施形態の非水電解質二次電池用正極(単に「正極」ともいう。)1は、正極集電体11と正極活物質層12を有する。
正極活物質層12は正極集電体11の少なくとも一面上に存在する。正極集電体11の両面上に正極活物質層12が存在してもよい。
図1の例において、正極集電体11は、正極集電体本体14と、正極集電体本体14の正極活物質層12側の表面を被覆する集電体被覆層15とを有する。正極集電体本体14のみを正極集電体11としてもよい。
正極活物質層12は、正極活物質粒子を1つ以上有する。正極活物質層12は、さらに結着材を含んでいてもよい。正極活物質層12は、さらに導電助剤を含んでもよい。
正極活物質粒子は、正極活物質を含む。正極活物質粒子は、正極活物質のみからなる粒子でもよいし、正極活物質の芯部と、芯部を被複する被覆部(活物質被覆部)とを有してもよい(いわゆる被覆粒子)。正極活物質層12に含まれる正極活物質粒子の群の少なくとも一部は、被覆粒子であることが好ましい。
正極活物質層12の総質量に対して、正極活物質の含有量は80.0~99.9質量%が好ましく、90.0~99.5質量%がより好ましい。
オリビン型結晶構造を有する化合物は、一般式LiFexM(1-x)PO4で(以下「一般式(I)」ともいう。)表される化合物が好ましい。一般式(I)において0≦x≦1である。MはCo、Ni、Mn、Al、Ti又はZrである。物性値に変化がない程度に微小量の、Fe及びM(Co、Ni、Mn、Al、Ti又はZr)の一部を他の元素に置換することもできる。一般式(I)で表される化合物は、微量の金属不純物が含まれていても本発明の効果が損なわれるものではない。
一般式(I)で表される化合物は、LiFePO4で表されるリン酸鉄リチウム(以下、単に「リン酸鉄リチウム」ともいう。)が好ましい。
他の正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、ニッケルコバルト酸リチウム(LiNixCoyAlzO2、ただしx+y+z=1)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNixCoyMnzO2、ただしx+y+z=1)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、コバルトマンガン酸リチウム(LiMnCoO4)、クロム酸マンガンリチウム(LiMnCrO4)、バナジウムニッケル酸リチウム(LiNiVO4)、ニッケル置換マンガン酸リチウム(例えば、LiMn1.5Ni0.5O4)、及びバナジウムコバルト酸リチウム(LiCoVO4)、これらの化合物の一部を金属元素で置換した非化学量論的化合物等が挙げられる。前記金属元素としては、Mn、Mg、Ni、Co、Cu、Zn及びGeからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
他の正極活物質は1種でもよく、2種以上でもよい。
活物質被覆部を構成する導電材料は、炭素のみからなることがさらに好ましい。
活物質被覆部を有する正極活物質の総質量に対して、導電材料の含有量は0.1~3.0質量%が好ましく、0.5~1.5質量%がより好ましく、0.7~1.3質量%がさらに好ましい。
加えて、被覆粒子は、芯部の表面全体が導電材料で被覆されていることが、特に好ましい。
例えば、特許第5098146号公報に記載の方法を用いてリン酸鉄リチウム粉末を作製し、GS Yuasa Technical Report、2008年6月、第5巻、第1号、第27~31頁等に記載の方法を用いて、リン酸鉄リチウム粉末の表面の少なくとも一部を炭素で被覆できる。
具体的には、まず、シュウ酸鉄二水和物、リン酸二水素アンモニウム、及び炭酸リチウムを、特定のモル比で計り、これらを不活性雰囲気下で粉砕及び混合する。次に、得られた混合物を窒素雰囲気下で加熱処理することによってリン酸鉄リチウム粉末を作製する。次いで、リン酸鉄リチウム粉末をロータリーキルンに入れ、窒素をキャリアガスとしたメタノール蒸気を供給しながら加熱処理することによって、表面の少なくとも一部を炭素で被覆したリン酸鉄リチウム粉末を得る。
例えば、粉砕工程における粉砕時間によってリン酸鉄リチウム粉末の粒子径を調整できる。メタノール蒸気を供給しながら加熱処理する工程における加熱時間及び温度等によって、リン酸鉄リチウム粉末を被覆する炭素の量を調整できる。被覆されなかった炭素粒子はその後の分級や洗浄などの工程などにより取り除く事が望ましい。
他の正極活物質は、表面の少なくとも一部に前記活物質被覆部が存在してもよい。
被覆リン酸鉄リチウムを用いる場合、正極活物質粒子の総質量に対して、被覆リン酸鉄リチウムの含有量は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
本明細書における正極活物質粒子の群の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定器を用いて測定した体積基準のメジアン径である。
正極活物質層12における結着材の含有量は、例えば、正極活物質層12の総質量に対して、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。結着材の含有量が上記上限値以下であれば、正極活物質層12において、リチウムイオンの伝導に寄与しない物質の割合が少なくなり、正極活物質層12の真密度を高めて、さらに、正極1の表面を覆う結着材の割合が少なくなり、リチウムの伝導をより高めることで、高レートサイクル特性のさらなる向上を図れる。
正極活物質層12が結着材を含有する場合、結着材の含有量の下限値は、正極活物質層12の総質量に対して0.1質量%以上が好ましい。
正極活物質層12における導電助剤の含有量は、例えば、正極活物質層12の総質量に対して、1質量部以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましく、0質量%(即ち、導電助剤を含まない)が特に好ましい。導電助剤の含有量が上記上限値以下であれば、正極活物質層12において、リチウムイオンの伝導に寄与しない物質の割合が少なくなり、正極活物質層12の真密度を高めて、高レートサイクル特性のさらなる向上を図れる。
正極活物質層12に導電助剤を配合する場合、導電助剤の下限値は、導電助剤の種類に応じて適宜決定され、例えば、正極活物質層12の総質量に対して0.1質量%超とされる。
なお、正極活物質層12が「導電助剤を含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、本発明の効果に影響を及ぼさない程度に含むものを排除するものではない。例えば、導電助剤の含有量が正極活物質層12の総質量に対して0.1質量%以下であれば、実質的に含まれないと判断できる。
正極集電体本体14を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性を有する金属が例示できる。
正極集電体本体14の厚みは、例えば8~40μmが好ましく、10~25μmがより好ましい。
正極集電体本体14の厚み及び正極集電体11の厚みは、マイクロメータを用いて測定できる。測定器の一例としてはミツトヨ社の製品名「MDH-25M」が挙げられる。
集電体被覆層15は導電材料を含む。
集電体被覆層15中の導電材料は、炭素を含むことが好ましく、炭素のみからなる導電材料がより好ましい。
集電体被覆層15は、例えばカーボンブラック等の炭素粒子と結着材を含むコーティング層が好ましい。集電体被覆層15の結着材は、正極活物質層12の結着材と同様のものを例示できる。
正極集電体本体14の表面を集電体被覆層15で被覆した正極集電体11は、例えば、導電材料、結着材、及び溶媒を含むスラリーを、グラビア法等の公知の塗工方法を用いて正極集電体本体14の表面に塗工する方法で製造できる。
集電体被覆層の厚さは、集電体被覆層の断面の電子顕微鏡(SEM、TEM)像における被覆層の厚さを計測する方法で測定できる。集電体被覆層の厚さは均一でなくてもよい。正極集電体本体14の表面の少なくとも一部に厚さ0.1μm以上の集電体被覆層が存在し、集電体被覆層の厚さの最大値が4.0μm以下であることが好ましい。
本実施形態の正極1は、例えば、正極活物質、結着材、及び溶媒を含む正極製造用組成物を、正極集電体11上に塗工し、乾燥し溶媒を除去して正極活物質層12を形成する方法で製造できる。正極製造用組成物は導電助剤を含んでもよい。
正極集電体11上に正極活物質層12を形成した積層物を、2枚の平板状冶具の間に挟み、厚み方向に均一に加圧する方法で、正極活物質層12の厚みを調整できる。例えば、ロールプレス機を用いて加圧する方法を使用できる。
正極1が正極集電体本体14と正極活物質層12とからなる場合、正極1から正極集電体本体14を除いた残部の質量は、正極活物質層12の質量である。
正極1が正極集電体本体14と集電体被覆層15と正極活物質層12とからなる場合、正極1から正極集電体本体14を除いた残部の質量は、集電体被覆層15と正極活物質層12の合計質量である。
正極活物質層12の総質量に対して、導電性炭素の含有量が上記の範囲内であると、電池容量をより改善し、より優れたサイクル特性を有する非水電解質二次電池を実現できる。
正極1から正極集電体本体14を除いた残部の質量に対する導電性炭素の含有量は、正極集電体本体14上に存在する層の全量を剥がして120℃環境で真空乾燥させた乾燥物(粉体)を測定対象として、下記≪導電性炭素含有量の測定方法≫で測定できる。
下記≪導電性炭素含有量の測定方法≫で測定した導電性炭素の含有量は、活物質被覆部中の炭素と、導電助剤中の炭素と、集電体被覆層15中の炭素を含む。結着材中の炭素は含まれない。
まず、正極1を任意の大きさに打ち抜き、溶剤(例えば、N-メチルピロリドン)に浸漬して攪拌する方法で、正極集電体本体14上に存在する層(粉体)を完全に剥がす。次いで、正極集電体本体14に粉体が付着していないことを確認し、正極集電体本体14を溶剤から取り出し、剥がした粉体と溶剤を含む懸濁液(スラリー)を得る。得られた懸濁液を120℃で乾燥して溶剤を完全に揮発させ、目的の測定対象物(粉体)を得る。
[測定方法A]
測定対象物を均一に混合して試料(質量w1)を量りとり、下記の工程A1、工程A2の手順で熱重量示唆熱(TG-DTA)測定を行い、TG曲線を得る。得られたTG曲線から下記第1の重量減少量M1(単位:質量%)及び第2の重量減少量M2(単位:質量%)を求める。M2からM1を減算して導電性炭素の含有量(単位:質量%)を得る。
工程A1:300mL/分のアルゴン気流中において、10℃/分の昇温速度で30℃から600℃まで昇温し、600℃で10分間保持したときの質量w2から、下記式(a1)により第1の重量減少量M1を求める。
M1=(w1-w2)/w1×100 …(a1)
工程A2:前記工程A1の直後に600℃から10℃/分の降温速度で降温し、200℃で10分間保持した後に、測定ガスをアルゴンから酸素へ完全に置換し、100mL/分の酸素気流中において、10℃/分の昇温速度で200℃から1000℃まで昇温し、1000℃にて10分間保持したときの質量w3から、下記式(a2)により第2の重量減少量M2(単位:質量%)を求める。
M2=(w1-w3)/w1×100 …(a2)
測定対象物を均一に混合して試料を0.0001mg精秤し、下記の燃焼条件で試料を燃焼し、発生した二酸化炭素をCHN元素分析装置により定量し、試料に含まれる全炭素量M3(単位:質量%)を測定する。また、前記測定方法Aの工程A1の手順で第1の重量減少量M1を求める。M3からM1を減算して導電性炭素の含有量(単位:質量%)を得る。
[燃焼条件]
燃焼炉:1150℃
還元炉:850℃
ヘリウム流量:200mL/分
酸素流量:25~30mL/分
上記測定方法Bと同様にして、試料に含まれる全炭素量M3(単位:質量%)を測定する。また、下記の方法で結着材由来の炭素の含有量M4(単位:質量%)を求める。M3からM4を減算して導電性炭素の含有量(単位:質量%)を得る。
結着材がポリフッ化ビニリデン(PVDF:モノマー(CH2CF2)の分子量64)である場合は、管状式燃焼法による燃焼イオンクロマトグラフィーにより測定されたフッ化物イオン(F-)の含有量(単位:質量%)、PVDFを構成するモノマーのフッ素の原子量(19)、及びPVDFを構成する炭素の原子量(12)から以下の式で計算することができる。
PVDFの含有量(単位:質量%)=フッ化物イオンの含有量(単位:質量%)×64/38
PVDF由来の炭素の含有量M4(単位:質量%)=フッ化物イオンの含有量(単位:質量%)×12/19
結着材がポリフッ化ビニリデンであることは、試料、又は試料をN-Nジメチルホルムアミド(DMF)溶媒により抽出した液体をフーリエ変換赤外スペクトル(FT-IR)測定し、C-F結合由来の吸収を確認する方法で確かめることができる。同様に19F-NMR測定でも確かめることができる。
結着材がPVDF以外と同定された場合は、その分子量に相当する結着材の含有量(単位:質量%)および炭素の含有量(単位:質量%)を求めることで、結着材由来の炭素量M4を算出できる。
これらの手法は下記複数の公知文献に記載されている。
東レリサーチセンター The TRC News No.117 (Sep.2013)第34~37頁、[2021年2月10日検索]、インターネット<https://www.toray-research.co.jp/technical-info/trcnews/pdf/TRC117(34-37).pdf>。
東ソー分析センター 技術レポート No.T1019 2017.09.20、[2021年2月10日検索]、インターネット<http://www.tosoh-arc.co.jp/techrepo/files/tarc00522/T1719N.pdf>。
正極活物質の活物質被覆部を構成する導電性炭素と、導電助剤である導電性炭素は、以下の分析方法で区別できる。
例えば、正極活物質層中の粒子を透過電子顕微鏡電子エネルギー損失分光法(TEM-EELS)により分析し、粒子表面近傍にのみ290eV付近の炭素由来のピークが存在する粒子は正極活物質であり、粒子内部にまで炭素由来のピークが存在する粒子は導電助剤と判定することができる。
他の方法としては、正極活物質層中の粒子をラマン分光によりマッピング解析し、炭素由来のG-bandとD-band、及び正極活物質由来の酸化物結晶のピークが同時に観測された粒子は正極活物質であり、G-bandとD-bandのみが観測された粒子は導電助剤と判定することができる。なお、不純物として考えられる微量な炭素や、製造時に正極活物質の表面から意図せず剥がれた微量な炭素等は、導電助剤と判定しない。
これらの方法を用いて、炭素材料からなる導電助剤が正極活物質層に含まれるか否かを確認することができる。
本実施形態の正極活物質層12の細孔比表面積は、5.0~10.0m2/gが好ましく、6.0~9.5m2/gがより好ましく、7.0~9.0m2/gがさらに好ましい。
本実施形態の正極活物質層12の中心細孔径は、0.06~0.150μmが好ましく、0.06~0.130μmがより好ましく、0.08~0.120μmがさらに好ましい。
本明細書において、正極活物質層12の細孔比表面積及び中心細孔径は、水銀圧入法により測定した値である。中心細孔径は、細孔径分布の細孔径0.003~1.000μmの範囲におけるメジアン径(D50、単位:μm)として算出する。
細孔表面積が上記範囲の上限値以下では、反応表面積が小さいため、高レート充放電サイクル時に局所的に正極活物質の微粉や導電助剤などに電流が集中して正極1と電解液との副反応が高くなる箇所が少なくなり、劣化が抑えられやすい。
中心細孔径が上記範囲の下限値以上では、正極活物質の微粉や導電助剤などが凝集した箇所が少ないため、高レート充放電サイクル時に反応ムラが生じ難く、正極1と電解液との副反応が高くなる箇所が少なくなり、劣化が抑えられやすい。
正極活物質層12の細孔比表面積及び中心細孔径は、例えば正極活物質の含有量、正極活物質の粒子径、正極活物質層12の厚み等によって調整できる。正極活物質層12が導電助剤を有する場合は、導電助剤の含有量、導電助剤の粒子径によっても調整できる。また、正極活物質に含まれる微粉の量や、正極製造用組成物を調製する際の分散状態による影響も受ける。
例えば、導電助剤の粒子径が正極活物質の粒子径より小さい場合、導電助剤の含有量を低減することによって細孔表面積を低減し、中心細孔径を増大できる。
本実施形態において、正極活物質層12の真密度D1と、正極活物質粒子の真密度Dとは、下記(s)式を満たす。
D1/D比は、0.97~0.99が好ましく、0.98~0.99がより好ましい。D1/D比が上記下限値以上であれば、正極活物質層12においてリチウムイオン伝導に寄与する物質の割合を高め、均一な充放電反応を円滑に行うことで、高レートサイクル特性を向上できる。D1/D比が上記上限値以下であれば、他の成分(例えば、結着材、導電性助剤等)を配合した効果を発揮できる。
なお、D1/D比は、正極活物質層12における正極活物質の含有量により調節できる。
正極活物質粒子が正極活物質からなる場合、正極活物質粒子をそのまま真密度Dの測定用のサンプルとする。
正極活物質粒子が被覆粒子である場合、被覆層を除去して、芯部を取り出し、この芯部(即ち、正極活物質)を真密度Dの測定用のサンプルとする。
被覆粒子の被覆層を除去する方法としては、芯部が導電性カーボンの層である場合、被覆粒子を焼成する方法が挙げられる。被覆粒子の焼成条件は、例えば、800~900℃で、3時間以上とされる。
正極活物質層12中の正極活物質を取り出す方法としては、正極活物質層12をN-メチルピロリドン(NMP)等の溶剤で洗浄し、次いで酸素下で正極活物質層12を焼成する方法が挙げられる。この方法によれば、結着材等の有機材料、導電助剤等を除去して、正極活物質を採取できる。正極活物質層12の焼成条件は、例えば、800~900℃、3時間以上とされる。
真密度Dの測定方法としては、Heガス置換法等が挙げられる。Heガス置換法においては、例えば、マイクロメリティックス、乾式密度計、アキュピックII 1340(低容積膨張法、例えば10cm3タイプであればサンプル量0.2cm3以上)を用いることができる。
真密度Dの測定結果の一例として、正極活物質層12を焼成して得られたLiFePO4数gを10cm3セルに採取し、繰り返し5回以上測定して平均値を求めたところ、3.55g/cm3の値が得られた。同様に、LiCoO2の真密度を測定したところ、5.0g/cm3であった。
また、充放電電位、電池容量、ICPによる組成分析から正極活物質を特定できれば、その結晶材料固有の真密度が文献値、又は同様に作成した同材料の測定により得られる。LiFePO4の文献値は3.6g/cm3であり、上記試験結果と概ね一致する。
正極活物質層12の体積密度は、例えば以下の測定方法により測定できる。
正極1及び正極集電体11の厚みをそれぞれマイクロゲージで測定し、これらの差から正極活物質層12の厚みを算出する。正極1及び正極集電体11の厚みは、それぞれ任意の5点以上で測定した値の平均値とする。正極集電体11の厚みとして、後述の正極集電体露出部13の厚みを用いてよい。
正極を所定の面積となるように打ち抜いた測定試料の質量を測定し、予め測定した正極集電体11の質量を差し引いて、正極活物質層12の質量を算出する。
下記式(1)に基づいて、正極活物質層12の体積密度を算出する。
体積密度(単位:g/cm3)=正極活物質層の質量(単位:g)/[(正極活物質層の厚み(単位:cm)×測定試料の面積(単位:cm2)]・・・(1)
正極活物質層12の体積密度は、例えば、正極活物質の含有量、正極活物質の粒子径、正極活物質層12の厚み等によって調整できる。正極活物質層12が導電助剤を有する場合は、導電助剤の種類(比表面積、比重)、導電助剤の含有量、導電助剤の粒子径によっても調整できる。
本実施形態の正極1において、下記試験方法により求められるサイクル容量維持率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%でもよい。サイクル容量維持率が上記下限値以上であれば、高レートサイクル特性をより高められる。
(試験方法)
定格容量1Ahの非水電解質二次電池とし、3Cレート、3.8Vで充電し10秒間休止し、次いで、3Cレート、2.0Vで放電し10秒間休止する充放電サイクルを1000回繰り返し、その後0.2Cレート、2.5Vで放電した際の放電容量Bを測定し、充放電サイクルに供する前の非水電解質二次電池の放電容量Aで放電容量Bを除してサイクル容量維持率(%)とする。
図2に示す本実施形態の非水電解質二次電池10は、本実施形態の非水電解質二次電池用正極1と、負極3と、非水電解質とを備える。さらにセパレータ2を備えてもよい。図中符号5は外装体である。
本実施形態において、正極1は、板状の正極集電体11と、その両面上に設けられた正極活物質層12とを有する。正極活物質層12は正極集電体11の表面の一部に存在する。正極集電体11の表面の縁部は、正極活物質層12が存在しない正極集電体露出部13である。正極集電体露出部13の任意の箇所に、図示しない端子用タブが電気的に接続する。
負極3は、板状の負極集電体31と、その両面上に設けられた負極活物質層32とを有する。負極活物質層32は負極集電体31の表面の一部に存在する。負極集電体31の表面の縁部は、負極活物質層32が存在しない負極集電体露出部33である。負極集電体露出部33の任意の箇所に、図示しない端子用タブが電気的に接続する。
正極1、負極3及びセパレータ2の形状は特に限定されない。例えば平面視矩形状でもよい。
本実施形態の非水電解質二次電池10は、例えば、正極1と負極3を、セパレータ2を介して交互に積層した電極積層体を作製し、電極積層体をアルミラミネート袋等の外装体(筐体)5に封入し、非水電解質(図示せず)を注入して密閉する方法で製造できる。
図2では、代表的に、負極/セパレータ/正極/セパレータ/負極の順に積層した構造を示しているが、電極の数は適宜変更できる。正極1は1枚以上あればよく、得ようとする電池容量に応じて任意の数の正極1を用いることができる。負極3及びセパレータ2は、正極1の数より1枚多く用い、最外層が負極3となるように配置する。
負極活物質層32は負極活物質を含む。負極活物質層32は、さらに結着材を含んでもよい。負極活物質層32は、さらに導電助剤を含んでもよい。負極活物質の形状は、粒子状が好ましい。
負極3は、例えば、負極活物質、結着材、及び溶媒を含む負極製造用組成物を調製し、これを負極集電体31上に塗工し、乾燥し溶媒を除去して負極活物質層32を形成する方法で製造できる。負極製造用組成物は導電助剤を含んでもよい。
セパレータ2を負極3と正極1との間に配置して短絡等を防止する。セパレータ2は、後述する非水電解質を保持してもよい。
セパレータ2としては、特に限定されず、多孔性の高分子膜、不織布、ガラスファイバー等が例示できる。
セパレータ2の一方又は両方の表面上に絶縁層を設けてもよい。絶縁層は、絶縁性微粒子を絶縁層用結着材で結着した多孔質構造を有する層が好ましい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤等のフェノール系酸化防止剤;ヒンダードアミン系酸化防止剤;リン系酸化防止剤;イオウ系酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系酸化防止剤;ベンゾフェノン系酸化防止剤;トリアジン系酸化防止剤;サルチル酸エステル系酸化防止剤等が例示できる。フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。
非水電解質は正極1と負極3との間を満たす。例えば、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ等において公知の非水電解質を使用できる。
非水電解質として、有機溶媒に電解質塩を溶解した非水電解液が好ましい。
本実施形態の非水電解質二次電池の使用形態は特に限定されない。例えば、複数個の非水電解質二次電池を直列又は並列に接続して構成した電池モジュール、電気的に接続した複数個の電池モジュールと電池制御システムとを備える電池システム等に用いることができる。
電池システムの例としては、電池パック、定置用蓄電池システム、自動車の動力用蓄電池システム、自動車の補機用蓄電池システム、非常電源用蓄電池システム等が挙げられる。
[正極活物質粒子]
・LiFePO4の被覆粒子:芯部(LiFePO4)の真密度3.55g/cm3。被覆部は導電性炭素。表中の導電性炭素の量は、正極活物質粒子100質量%に対する割合である。
・LiCoO2(被覆部無):真密度5.00g/cm3。
[導電助剤]
・カーボンブラック:真密度2.30g/cm3。
[結着材]
・ポリフッ化ビニリデン(PVDF):真密度1.20g/cm3。
[分散剤]
・ポリビニルピロリドン(PVP):真密度1.78g/cm3。
・アルミニウム箔(厚さ15μm)の両面に、集電体被覆層(厚さ2μ)を有する正極集電体。集電体被覆層は、カーボンブラック(100質量部)と結着材(40質量部)とを含む。
(製造方法)
以下の方法で正極集電体本体の表裏両面を集電体被覆層で被覆して正極集電体を作製した。正極集電体本体としてはアルミニウム箔(厚さ15μm)を用いた。
カーボンブラック100質量部と、結着材であるポリフッ化ビニリデン40質量部と、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)とを混合してスラリーを得た。NMPの使用量はスラリーを塗工するのに必要な量とした。
得られたスラリーを正極集電体本体の両面に、乾燥後の塗膜の厚さ(両面合計)が2μmとなるように、グラビア法で塗工し、乾燥し溶媒を除去して正極集電体とした。両面それぞれの集電体被覆層15は、塗布量及び厚みが互いに均等になるように形成した。
[サイクル容量維持率]
サイクル容量維持率の評価は、下記(1)~(7)の手順に沿って行った。
(1)定格容量が1Ahとなるように非水電解質二次電池(セル)を作製し、常温(25℃)下で、サイクル評価を実施した。
(2)得られたセルに対して、0.2Cレート(即ち、200mA)で一定電流にて終止電圧3.6Vで充電を行った後、一定電圧にて前記充電電流の1/10を終止電流(即ち、20mA)として充電を行った。
(3)容量確認のための放電を0.2Cレートで一定電流にて終止電圧2.5Vで行った。このときの放電容量を基準容量とし、基準容量を1Cレートの電流値とした(即ち、1,000mAとした)。
(4)セルの3Cレート(即ち、3000mA)で一定電流にて終止電圧3.8Vで充電を行った後、10秒間休止し、この状態から3Cレートにて終止電圧2.0Vで放電を行い、10秒間休止した。
(5)(4)のサイクル試験を1,000回繰り返した。
(6)(2)と同様の充電を実施した後に、(3)と同じ容量確認を実施した。
(7)(6)で測定された容量確認での放電容量をサイクル試験前の基準容量で除して百分率とする事で、1,000サイクル後のサイクル容量維持率(1,000サイクル容量維持率、単位:%)とした。
負極活物質である人造黒鉛100質量部と、結着材であるスチレンブタジエンゴム1.5質量部と、増粘材であるカルボキシメチルセルロースNa1.5質量部と、溶媒である水とを混合し、固形分50質量%の負極製造用組成物を得た。
得られた負極製造用組成物を、銅箔(厚さ8μm)の両面上にそれぞれ塗工し、100℃で真空乾燥した後、2kNの荷重で加圧プレスして負極シートを得た。得られた負極シートを打ち抜き、負極とした。
以下の方法で、図2に示す構成の非水電解質二次電池を製造した。
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を、EC:DECの体積比が3:7となるように混合した溶媒に、電解質としてLiPF6を1モル/リットルとなるように溶解して、非水電解液を調製した。
各例の正極と、製造例1で得た負極とを、セパレータを介して交互に積層し、最外層が負極である電極積層体を作製した。セパレータとしては、ポリオレフィンフィルム(厚さ15μm)を用いた。
電極積層体を作製する工程では、まず、セパレータ2と正極1とを積層し、その後、セパレータ2上に負極3を積層した。
電極積層体の正極集電体露出部13及び負極集電体露出部33のそれぞれに、端子用タブを電気的に接続し、端子用タブが外部に突出するように、アルミラミネートフィルムで電極積層体を挟み、三辺をラミネート加工して封止した。
続いて、封止せずに残した一辺から非水電解液を注入し、真空封止して非水電解質二次電池(ラミネートセル)を製造した。
得られた非水電解質二次電池を用いて、サイクル容量維持率を測定した。
表1の組成に従い、正極活物質粒子と導電助剤と結着材と分散剤とを溶媒(NMP)に分散して正極製造用組成物とした。溶媒の使用量は、正極製造用組成物を塗工するのに必要な量とした。なお、表中における正極活物質粒子、導電助剤、結着材及び分散剤の配合量は、溶媒以外の合計(即ち、正極活物質粒子、導電助剤、結着材及び分散剤の合計量)100質量%に対する割合である。表中、各組成の含有量は質量%を表し、「-」は配合していないことを示す
正極集電体上にそれぞれの正極製造用組成物を塗工し、予備乾燥後、120℃で真空乾燥して正極活物質層を形成した。正極製造用組成物の塗工量を31mg/cm2とした。得られた積層物を10kNの荷重で加圧プレスして正極シートとした。次いで、正極シートを打ち抜き、正極とした。
各例の正極について、真密度D1を求めた。
各例の正極を用いて非水電解質二次電池を製造し、この非水電解質二次電池でサイクル容量維持率を求めた。その結果を表中に示す。
D1/D比が96%未満である比較例1~2は、いずれもサイクル容量維持率が68%以下であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、高レートサイクル特性を向上できることが確認された。
2 セパレータ
3 負極
5 外装体
10 二次電池
11 正極集電体
12 正極活物質層
13 正極集電体露出部
14 正極集電体本体
15 集電体被覆層
31 負極集電体
32 負極活物質層
33 負極集電体露出部
Claims (5)
- 金属である正極集電体本体を有する正極集電体と、前記正極集電体上に存在する正極活物質層とを有し、
前記正極活物質層は、正極活物質を含む1つ以上の正極活物質粒子と、任意に導電助剤とを有し、
前記正極活物質は、LiFePO 4 で表されるリン酸鉄リチウムであり、
前記正極活物質層の総質量に対して、前記正極活物質粒子の含有量は95質量%以上であり、
前記正極活物質粒子の一部又は全部は、前記正極活物質の芯部と、前記芯部を被覆する被覆部とを有し、
前記被覆部は導電材料を含み、
前記正極集電体本体を除いた残部に対する導電性炭素の含有量は、0.5~3.5質量%であり、
前記正極活物質の真密度Dと、前記正極活物質層の真密度D1とは、下記(s)式を満たす、非水電解質二次電池用正極。
0.96D≦D1<D ・・・(s) - 前記真密度D1は、3.4g/cm3以上3.6g/cm3未満である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極。
- 下記試験方法により求められるサイクル容量維持率は80%以上である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極。
(試験方法)
定格容量1Ahの非水電解質二次電池とし、3Cレート、3.8Vで充電し10秒間休止し、次いで、3Cレート、2.0Vで放電し10秒間休止する充放電サイクルを1000回繰り返し、その後0.2Cレート、2.5Vで放電した際の放電容量Bを測定し、充放電サイクルに供する前の非水電解質二次電池の放電容量Aで放電容量Bを除してサイクル容量維持率(%)とする。 - 請求項1~3のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用正極と、負極と、前記非水電解質二次電池用正極と前記負極との間に存在する非水電解質と、を備える、非水電解質二次電池。
- 請求項4に記載の非水電解質二次電池の複数個を備える、電池モジュール又は電池システム。
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