JP2023140733A - 非水電解質二次電池の正極製造用組成物、非水電解質二次電池用正極、非水電解質二次電池、電池モジュール及び電池システム、並びに非水電解質二次電池用正極の製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池の正極製造用組成物、非水電解質二次電池用正極、非水電解質二次電池、電池モジュール及び電池システム、並びに非水電解質二次電池用正極の製造方法 Download PDF

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Yuichi Satobi
純之介 秋池
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Abstract

Figure 2023140733000001
【課題】非水電解質二次電池の電池特性の向上を図る。
【解決手段】正極活物質を含む正極活物質粒子と溶媒とを含み、前記溶媒に溶解しない成分のかさ密度が、0.3g/cm以上である非水電解質二次電池の正極製造用組成物を用いることよりなる。集電体11と、前記集電体11上に位置する正極活物質層12と、を有し、前記正極活物質層12は、正極活物質を含む正極活物質粒子を含み、前記正極活物質層12を構成する全粒子の群は、かさ密度0.3.g/cm以上であることよりなる。前記集電体11は、集電体本体14と前記集電体本体14の表面の少なくとも一部覆う被覆層15とを有すことが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解質二次電池の正極製造用組成物、非水電解質二次電池用正極、非水電解質二次電池、電池モジュール及び電池システム、並びに非水電解質二次電池用正極の製造方法に関する。
非水電解質二次電池の正極は、集電体と集電体上の正極活物質層とを有する。正極の製造方法としては、例えば、正極活物質と結着材とを含むスラリー(正極製造用組成物)を集電体上に塗工して塗膜とし(塗工工程)、次いで、塗膜の溶媒を揮発して正極活物質層とする(乾燥工程)方法を例示できる。
非水電解質二次電池の電池性能(例えば、サイクル特性)の向上を図るために、種々の正極の製造方法が提案されている。
特許文献1には、かさ密度0.01~0.20g/cmであり、かつ体積抵抗率0.001~0.1Ω・cmである導電材料を含み、顆粒状かつ特定の固形分である電極用導電性組成物を用いた正極の製造方法が提案されている。特許文献1の発明によれば、導電性材料の偏りを少なくして、正極の電気抵抗を低め、非水電解質二次電池の性能向上を図っている。
特許第5471591号公報
しかしながら、非水電解質二次電池には、電池性能のさらなる向上が求められている。
本発明は、非水電解質二次電池の電池特性をより高められる非水電解質二次電池の正極製造用組成物を目的とする。
正極活物質層における各成分の分布が不均一であると、正極において部分的に電気抵抗が高まったり、正極活物質層と正極集電体とが部分的に剥離して導電性が損なわれる。特に、結着材の分布が不均一になると、正極における部分的な電気抵抗の高まり、又は正極活物質層と正極集電体との部分的な剥離を生じやすい。
本発明者らは、鋭意検討した結果、正極製造用組成物において、溶媒に溶解しない成分(正極活物質、導電助剤等)のかさ密度が特定の範囲であると、正極製造用組成物中の各成分の分布がより均一になるとの知見を得た。
本発明者らはかかる知見に基づき、本発明を完成した。
本発明は以下の態様を有する。
<1>
正極活物質を含む正極活物質粒子と溶媒とを含み、
前記溶媒に溶解しない成分の粒子群のかさ密度が、0.3g/cm以上である、非水電解質二次電池の正極製造用組成物。
<2>
前記溶媒は、N-メチルピロリドン及び水からなる群から選ばれる1種以上を含む、<1>に記載の非水電解質二次電池の正極製造用組成物。
<3>
前記正極活物質は、一般式LiFe(1-x)PO(式中、0≦x≦1、MはCo、Ni、Mn、Al、Ti又はZrである。)で表される化合物を含む、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池の正極製造用組成物。
<4>
前記正極活物質粒子は、前記正極活物質である芯部と、導電材料を含む被覆部を有する、<1>~<3>のいずれかに記載の非水電解質二次電池の正極製造用組成物。
<5>
導電性炭素を含み、
前記導電性炭素の含有量は、前記正極製造用組成物の固形分の総量に対して、0.5質量%以上3.0質量%未満である、<1>~<4>のいずれかに記載の非水電解質二次電池の正極製造用組成物。
<6>
集電体と、前記集電体上に位置する正極活物質層と、を有し、
前記正極活物質層は、正極活物質を含む正極活物質粒子を含み、
前記正極活物質層を構成する全粒子の群は、かさ密度0.3.g/cm以上である、非水電解質二次電池用正極。
<7>
前記集電体は、集電体本体と前記集電体本体の表面の少なくとも一部を覆う被覆層とを有し、
前記被覆層は、導電材料を含む、<6>に記載の非水電解質二次電池用正極。
<8>
前記正極活物質層は、導電性炭素を含み、
前記導電性炭素の含有量は、前記正極活物質層の総質量に対して、0.5質量%以上3.0質量%未満である、<6>又は<7>に記載の非水電解質二次電池用正極。
<9>
<6>~<8>のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極と、負極と、前記非水電解質二次電池用正極と前記負極との間に存在する非水電解質と、を備える、非水電解質二次電池。
<10>
<9>に記載の非水電解質二次電池の複数個を備える、電池モジュール又は電池システム。
<11>
<1>~<5>のいずれかに記載の非水電解質二次電池の正極製造用組成物を集電体上に塗工することを含む、非水電解質二次電池用正極の製造方法。
本発明の正極製造用組成物によれば、非水電解質二次電池の電池特性をより高められる。
本発明に係る非水電解質二次電池用正極の一例を模式的に示す断面図である。 本発明に係る非水電解質二次電池の一例を模式的に示す断面図である。
本明細書及び特許請求の範囲において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載した数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
図1は、本発明の非水電解質二次電池用正極の一実施形態を示す模式断面図であり、図2は本発明の非水電解質二次電池の一実施形態を示す模式断面図である。
なお、図1、2は、その構成をわかりやすく説明するための模式図であり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合もある。
本発明の非水電解質二次電池用正極(単に「正極」ともいう。)は、集電体と正極活物質層とを有する。
本発明の非水電解質二次電池は、正極、負極、及び正極と負極との間に存在する非水電解質を有する。
以下、実施形態を挙げて本発明を説明する。
(非水電解質二次電池用正極)
本実施形態の正極1は、集電体(「正極集電体」ということがある)11と、正極活物質層12とを有する。
正極活物質層12は、正極集電体11の両面に存在している。但し、正極活物質層12は、正極集電体11の片面にのみ存在していてもよい。すなわち、正極活物質層12、正極集電体11の少なくとも一方の面に存在する。
正極集電体11は、正極活物質層12側の表面に集電体被覆層15が存在する。すなわち、正極集電体11は、集電体本体(「正極集電体本体」ということがある)14と、正極集電体本体14の正極活物質層12側の表面を被覆する集電体被覆層15とを有する。
<正極活物質層>
正極活物質層12は、1つ以上の正極活物質粒子を含む。
正極活物質層12は、さらに結着材を含むことが好ましい。
正極活物質層12は、さらに導電助剤を含んでもよい。本明細書において、「導電助剤」という用語は、正極活物質層を形成するにあたって正極活物質粒子と混合する、粒状、繊維状などの形状を有する導電材料であって、正極活物質粒子を繋ぐ形で正極活物質層中に存在させる導電材料を指す。
正極活物質層12は、さらに分散剤を含んでもよい。
正極活物質層12の総質量に対して、正極活物質粒子の含有量は80.0~99.9質量%が好ましく、90~99.5質量%がより好ましい。
正極活物質層12の厚み(正極集電体の両面上に正極活物質層が存在する場合、両面の合計)は30~500μmであることが好ましく、40~400μmであることがより好ましく、50~300μmであることが特に好ましい。正極活物質層12の厚みが上記範囲の下限値以上であると、正極を組み込んだ電池のエネルギー密度が高くなりやすく、上記範囲の上限値以下であると、正極活物質層12の剥離強度が高く、充放電時の剥がれを抑制できる。
正極活物質層12は、粒子の集合体である。正極活物質層12を構成する全粒子(正極構成粒子群)は、凝集、焼結、又は結着材等による結着により、集合体となっている。
正極構成粒子群は、後述する正極製造用組成物の溶媒に溶解しない成分で構成される。正極構成粒子群は、主には、正極製造用組成物の溶媒に不溶の無機粒子の群であり、結着材及び分散剤等のポリマーを除く成分である。
正極構成粒子群のかさ密度は、0.3g/cm以上であり、0.5g/cm以上が好ましく、0.8g/cm以上がより好ましい。正極構成粒子群のかさ密度が上記下限値以上であると、非水電解質二次電池の電池特性を高められる。正極構成粒子群のかさ密度の上限は、特に限定されないが、実質的に2g/cm以下であり、1.5g/cm以下が好ましい。正極構成粒子群のかさ密度が上記上限値以下であると、圧縮により結着した正極構成粒子群を低減し、正極製造用組成物を調製する際に、分散性をより高められる。
かさ密度は、以下の方法で測定される値である。
かさ密度は容器中に粉体を圧密せずにゆるやかに充填することにより測定される。対応規格としてはJIS K6219-2:2005により測定することができる。具体的には、100cmの容器に入れた時の質量から求めることができる。
≪正極活物質粒子≫
正極活物質粒子は、正極活物質を含む。正極活物質粒子は、正極活物質層12中で粒子として存在する。このため、正極活物質粒子は、正極構成粒子群に属する。
正極活物質粒子の少なくとも一部は、被覆粒子であることが好ましい。
被覆粒子において、正極活物質粒子の表面には、導電材料を含む被覆部(以下、「活物質被覆部」ともいう。)が存在する。正極活物質粒子は、活物質被覆部を有することで、電池容量、サイクル特性をより高められる。
例えば、活物質被覆部は、予め正極活物質粒子の表面に形成されており、かつ正極活物質層中において、正極活物質粒子の表面に存在する。即ち、本稿における活物質被覆部は、正極製造用組成物の調製段階以降の工程で新たに形成されるものではない。加えて、活物質被覆部は、正極製造用組成物の調製段階以降の工程で欠落するものではない。
例えば、正極製造用組成物を調製する際に、被覆粒子を溶媒と共にミキサー等で混合しても、活物質被覆部は正極活物質の表面を被覆している。また、仮に、正極から正極活物質層を剥がし、これを溶媒に投入して正極活物質層中の結着材を溶媒に溶解させた場合にも、活物質被覆部は正極活物質の表面を被覆している。また、仮に、正極活物質層中の粒子の粒度分布をレーザー回折・散乱法により測定する際に、凝集した粒子をほぐす操作を行った場合にも活物質被覆部は正極活物質の表面を被覆している。
活物質被覆部は、正極活物質粒子の外表面全体の面積の50%以上に存在することが好ましく、70%以上に存在することが好ましく、90%以上に存在することが好ましい。
すなわち、被覆粒子は、正極活物質である芯部と、前記芯部の表面を覆う活物質被覆部とを有し、芯部の表面積に対する活物質被覆部の面積(被覆率)は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
被覆粒子の製造方法としては、例えば、焼結法、蒸着法等が挙げられる。
焼結法としては、正極活物質の粒子と有機物とを含む活物質製造用組成物(例えば、スラリー)を、大気圧下、500~1000℃、1~100時間で焼成する方法が挙げられる。活物質製造用組成物に添加する有機物としては、サリチル酸、カテコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシベンゼン、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、フェニルアラニン、水分散型フェノール樹脂等、スクロース、グルコース、ラクトース等の糖類、リンゴ酸、クエン酸などのカルボン酸、アリルアルコール、プロパルギルアルコール等の不飽和一価アルコール、アスコルビン酸、ポリビニルアルコール等が挙げられる。この焼結法によれば、活物質製造用組成物を焼成することで、有機物中の炭素を正極活物質の表面に焼結して、活物質被覆部を形成する。
また、他の焼結法としては、いわゆる衝撃焼結被覆法が挙げられる。
衝撃焼結被覆法は、例えば、衝撃焼結被覆装置において燃料の炭化水素と酸素の混合ガスを用いてバーナに点火し燃焼室で燃焼させてフレームを発生させ、その際、酸素量を燃料に対して完全燃焼の当量以下にしてフレーム温度を下げ、その後方に粉末供給用ノズルを設置し、そのノズルから被覆する有機物と溶媒を用いて溶かしスラリー状にしたものと燃焼ガスからなる固体―液体―気体三相混合物を粉末供給ノズルから噴射させ、室温に保持された燃焼ガス量を増して、噴射微粉末の温度を下げて、粉末材料の変態温度、昇華温度、蒸発温度以下で加速し、衝撃により瞬時焼結させて、正極活物質の粒子を被覆する。
蒸着法としては、物理気相成長法(PVD)、化学気相成長法(CVD)等の気相堆積法、メッキ等の液相堆積法等が挙げられる。
活物質被覆部の面積は、正極活物質層中の粒子をエネルギー分散型X線分光法(TEM-EDX)により正極活物質粒子の外周部をEDXで元素分析する。元素分析は炭素について行い、正極活物質粒子を被覆している炭素を特定する。炭素の被覆部が1nm以上の厚さである箇所を被覆部分とし、観察した正極活物質粒子の全周に対して被覆部分の割合を求め、これを被覆率とすることができる。測定は例えば、10個の正極活物質粒子について行い、これらの平均値とすることができる。
また、前記活物質被覆部は、正極活物質のみから構成される粒子(以下、「芯部」と称することもある。)の表面上に直接形成された厚み1nm~100nm、好ましくは5nm~50nmの層であり、この厚みは上述した被覆率の測定に用いるTEM-EDXによって確認することができる。
本発明の被覆粒子において、芯部の表面積に対する活物質被覆部の面積で表される被覆率は、100%が特に好ましい。
なお、この被覆率(%)は、正極活物質層中に存在する正極活物質粒子全体についての平均値であり、この平均値が上記下限値以上となる限り、活物質被覆部を有しない正極活物質粒子が微量に存在することを排除するものではない。活物質被覆部を有しない正極活物質粒子(単一粒子)が正極活物質層中に存在する場合、その量は、正極活物質層中に存在する正極活物質粒子全体の量に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。
活物質被覆部の導電材料は、炭素(導電性炭素)を含む。導電材料は、炭素のみからなる導電材料でもよく、炭素と炭素以外の他の元素とを含む導電性有機化合物でもよい。他の元素としては、窒素、水素、酸素等が例示できる。前記導電性有機化合物において、他の元素は10原子%以下が好ましく、5原子%以下がより好ましい。
活物質被覆部を構成する導電材料は、炭素のみからなることがさらに好ましい。
活物質被覆部を有する正極活物質粒子の総質量に対して、導電材料の含有量は0.1~4.0質量%が好ましく、0.5~3.0質量%がより好ましく、0.7~2.5質量%がさらに好ましい。多すぎる場合は正極活物質粒子の表面から導電材料が剥がれ、独立した導電助剤粒子として残留する可能性があるため、好ましくない。
正極活物質粒子は、オリビン型結晶構造を有する化合物を含むことが好ましい。
オリビン型結晶構造を有する化合物は、一般式LiFe(1-x)PO(以下「一般式(I)」ともいう。)で表される化合物が好ましい。一般式(I)において0≦x≦1である。MはCo、Ni、Mn、Al、Ti又はZrである。物性値に変化がない程度に微小量の、FeおよびM(Co、Ni、Mn、Al、Ti又はZr)の一部を他の元素に置換することもできる。一般式(I)で表される化合物は、微量の金属不純物が含まれていても本発明の効果が損なわれるものではない。
一般式(I)で表される化合物は、LiFePOで表されるリン酸鉄リチウム(以下、単に「リン酸鉄リチウム」ともいう。)が好ましい。
正極活物質粒子として、表面の少なくとも一部に導電材料を含む活物質被覆部が存在するリン酸鉄リチウム粒子(以下「被覆リン酸鉄リチウム粒子」ともいう。)がより好ましい。電池容量、サイクル特性により優れる点から、リン酸鉄リチウム粒子の表面全体が導電材料で被覆されていることがさらに好ましい。
被覆リン酸鉄リチウム粒子は公知の方法で製造できる。
例えば、特許第5098146号公報に記載の方法を用いてリン酸鉄リチウム粉末を作製し、GS Yuasa Technical Report、2008年6月、第5巻、第1号、第27~31頁等に記載の方法を用いて、リン酸鉄リチウム粉末の表面の少なくとも一部を炭素で被覆できる。
具体的には、まず、シュウ酸鉄二水和物、リン酸二水素アンモニウム、及び炭酸リチウムを、特定のモル比で計り、これらを不活性雰囲気下で粉砕及び混合する。次に、得られた混合物を窒素雰囲気下で加熱処理することによってリン酸鉄リチウム粉末を作製する。次いで、リン酸鉄リチウム粉末をロータリーキルンに入れ、窒素をキャリアガスとしたメタノール蒸気を供給しながら加熱処理することによって、表面の少なくとも一部を炭素で被覆したリン酸鉄リチウム粒子を得る。
例えば、粉砕工程における粉砕時間によってリン酸鉄リチウム粒子の粒子径を調整できる。メタノール蒸気を供給しながら加熱処理する工程における加熱時間及び温度等によって、リン酸鉄リチウム粒子を被覆する炭素の量を調整できる。被覆されなかった炭素粒子はその後の分級や洗浄などの工程などにより取り除くことが望ましい。
正極活物質粒子は、オリビン型結晶構造を有する化合物以外の他の正極活物質を含む他の正極活物質粒子を1種以上含んでもよい。
他の正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム(LiNiCoAl、ただしx+y+z=1)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiCoMn、ただしx+y+z=1)、マンガン酸リチウム(LiMn)、コバルトマンガン酸リチウム(LiMnCoO)、クロム酸マンガンリチウム(LiMnCrO)、バナジウムニッケル酸リチウム(LiNiVO)、ニッケル置換マンガン酸リチウム(例えば、LiMn1.5Ni0.5)、及びバナジウムコバルト酸リチウム(LiCoVO)、これらの化合物の一部を金属元素で置換した非化学量論的化合物等が挙げられる。前記金属元素としては、Mn、Mg、Ni、Co、Cu、Zn及びGeからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
他の正極活物質粒子の表面の少なくとも一部に、前記活物質被覆部が存在してもよい。
正極活物質粒子の総質量(活物質被覆部を有する場合は活物質被覆部の質量も含む)に対して、オリビン型結晶構造を有する化合物の含有量は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
被覆リン酸鉄リチウム粒子を用いる場合、正極活物質粒子の総質量に対して、被覆リン酸鉄リチウム粒子の含有量は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
正極活物質粒子の活物質被覆部の厚さは、1~100nmが好ましい。
正極活物質粒子の活物質被覆部の厚さは、正極活物質粒子の透過電子顕微鏡(TEM)像における活物質被覆部の厚さを計測する方法で測定できる。正極活物質粒子の表面に存在する活物質被覆部の厚さは均一でなくてもよい。正極活物質粒子の表面の少なくとも一部に厚さ1nm以上の活物質被覆部が存在し、活物質被覆部の厚さの最大値が100nm以下であることが好ましい。
正極活物質粒子の平均粒子径(活物質被覆部を有する場合は活物質被覆部の厚さも含む)は、0.1~20.0μmが好ましく、0.5~15.0μmがより好ましい。正極活物質粒子を2種以上用いる場合、それぞれの平均粒子径が上記の範囲内であればよい。
前記平均粒子径が上記範囲の下限値以上であると、正極製造用組成物における分散性が良くなりやすく、また、凝集物が発生し難くなりやすい。一方、上記範囲の上限値以下であると比表面積が適度に大きくなり、充放電で反応する面積を確保しやすい。その結果、電池として抵抗が低くなり、入出力特性が低下し難くなる。
本明細書における正極活物質粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定器を用いて測定した体積基準のメジアン径である。
正極活物質粒子の群のかさ密度は、0.3g/cm以上であり、0.5g/cm以上が好ましく、0.8g/cm以上がより好ましい。正極活物質粒子の群のかさ密度が上記下限値以上であると、正極構成粒子群のかさ密度を所望の範囲とし、非水電解質二次電池の電池特性を高められる。正極活物質粒子の群のかさ密度の上限は、特に限定されないが、実質的に2g/cm以下であり、1.5g/cm以下が好ましい。正極活物質粒子の群のかさ密度が上記上限値以下であると、圧縮により結着した正極活物質粒子を低減し、正極製造用組成物を調製する際に、分散性をより高められる。
≪結着材≫
正極活物質層12に含まれる結着材は有機物であり、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸リチウム、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルニトリル、ポリイミド等が挙げられる。結着材は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
正極活物質層の総質量に対して、結着材の含有量は1.0質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましい。
正極活物質層が結着材を含有する場合、結着材の含有量の下限値は、正極活物質層の総質量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。
なお、結着材は、マトリックスを形成して正極活物質粒子等を結着する有機物であり、正極活物質層12中では、粒子として存在しない。このため、結着材は、正極構成粒子群に属しない。
≪導電助剤≫
正極活物質層12は、導電助剤を含んでもよい。導電助剤は、正極活物質層12中で粒子として存在する。このため、導電助剤は、正極構成粒子群に属する。
正極活物質層12に含まれる導電助剤としては、例えば、グラファイト、グラフェン、ハードカーボン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)等の炭素材料が挙げられる。導電助剤は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
正極活物質層12に含まれる導電助剤のかさ密度は、0.3g/cm以上であり、0.5g/cm以上が好ましく、0.8g/cm以上がより好ましい。導電助剤の群のかさ密度が上記下限値以上であると、正極構成粒子群のかさ密度を所望の範囲とし、非水電解質二次電池の電池特性を高められる。導電助剤の群のかさ密度の上限は、特に限定されず、実質的に2g/cm以下であり、1.5g/cm以下が好ましい。導電助剤の群のかさ密度が上記上限値以下であると、圧縮により結着した導電助剤を低減し、正極製造用組成物を調製する際に、分散性をより高められる。
但し、導電助剤のかさ密度は、通常、0.01~0.2g/cmである。
導電助剤は、正極活物質粒子に比べて、かさ密度が小さい。このため、正極活物質層12は、導電助剤を含まないことが好ましい。
正極活物質層12が「導電助剤を含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、本発明の効果に影響を及ぼさない程度に含むものを排除するものではない。例えば、導電助剤の含有量が正極活物質層12の総質量に対して0.1質量%以下であれば、実質的に含まれないと判断できる。
正極製造用組成物中の導電性炭素の含有量は、正極製造用組成物中の固形分の総量に対して、0.5質量%以上3.0質量%未満が好ましく、1.0~2.8質量%がより好ましく、1.2~2.6質量%がさらに好ましい。
正極製造用組成物中の導電性炭素の含有量が、上記下限値以上であると、正極活物質層12において導電パス形成に十分な量の導電性炭素量となり、電池特性をより高められる。正極製造用組成物中の導電性炭素の含有量が上記上限値以下であると、正極活物質層12における電気抵抗を低減して、電池特性をより高められる。
なお、固形分は、正極活物質層12を製造した際に、揮発する成分(溶媒等)を除く成分である。固形分の総量は、正極活物質層12の総質量に等しい。
≪分散剤≫
正極活物質層12に含まれる分散剤は有機物であり、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルホルマール(PVF)等が挙げられる。分散剤は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
分散剤は正極活物質層における粒子の分散性向上に寄与する。一方、分散剤の含有量が多すぎると抵抗が増大しやすい。
正極活物質層の総質量に対して、分散剤の含有量は0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましい。
正極活物質層が分散剤を含有する場合、分散剤の含有量の下限値は、正極活物質層の総質量に対して0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。
なお、分散剤は、正極活物質層12中では、粒子として存在しない。このため、結着材は、正極構成粒子群に属しない。
<正極集電体>
正極集電体11は、正極集電体本体14と、正極集電体本体14の両面に位置する被覆層(集電体被覆層15)とを有する。集電体被覆層15は、正極集電体本体14の片面のみに位置していてもよい。
また、正極集電体11は、正極集電体本体14のみで構成されていてもよい。
≪正極集電体本体≫
正極集電体本体14は金属材料からなる。金属材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性を有する金属が例示できる。
正極集電体本体14は、金属材料からなる箔(金属箔)であり、表面に形成される酸化膜を含んでいてもよい。
正極集電体本体14の厚さは、例えば8~40μmが好ましく、10~25μmがより好ましい。
正極集電体本体14及び正極集電体11の厚さは、マイクロメータを用いて測定できる。測定器の一例としてはミツトヨ社製品名「MDH-25M」が挙げられる。
≪集電体被覆層≫
集電体被覆層15は、炭素(導電性炭素)を含む層である。集電体被覆層15は、正極集電体本体14の表面の少なくとも一部を覆う。換言すれば、集電体被覆層15は、合材積層体16における正極集電体本体14に向く面の少なくとも一部に設けられている。
ここで、「表面の少なくとも一部」とは、正極集電体本体の表面の面積の10%~100%、好ましくは30%~100%、より好ましくは50%~100%を意味する。
集電体被覆層15中の導電材料は、導電性炭素を含んでいればよい。集電体被覆層15中の導電材料は、炭素のみからなることが好ましい。
集電体被覆層15は、例えばカーボンブラック等の炭素粒子と結着材を含むコーティング層が好ましい。集電体被覆層15中の結着材は、正極活物質層12の結着材と同様のものを例示できる。
集電体被覆層15中の導電性炭素の含有量は、集電体被覆層15の総質量に対して、50~90質量%が好ましく、55~85質量%がより好ましく、60~90質量%がさらに好ましい。
集電体被覆層15を設ける方法としては、例えば、導電材料、結着材、及び溶媒を含むスラリーを、グラビア法等の公知の塗工方法を用いて正極集電体本体14の表面に塗工し、乾燥して溶媒を除去する方法を例示できる。
集電体被覆層15の厚さは、0.1~4.0μmが好ましい。
集電体被覆層の厚さは、集電体被覆層の断面の透過電子顕微鏡(TEM)像又は走査型電子顕微鏡(SEM)像における被覆層の厚さを計測する方法で測定できる。集電体被覆層の厚さは均一でなくてもよい。正極集電体本体14の表面の少なくとも一部に厚さ0.1μm以上の集電体被覆層が存在し、集電体被覆層の厚さの最大値が4.0μm以下であることが好ましい。
<導電性炭素含有量>
本実施形態において、正極活物質層12及び集電体被覆層15は導電性炭素を含む。
正極活物質層12の総質量に対して、導電性炭素の含有量は0.5質量%以上3.0質量%未満が好ましく、1.0~2.8質量%がより好ましく、1.2~2.6質量%がさらに好ましい。
正極活物質層12中の導電性炭素の含有量が、上記範囲の下限値以上であると正極活物質層12での導電パス形成に十分な量となり、電池特性をより高められる。正極活物質層12中の導電性炭素の含有量が上記上限値以下であると、正極活物質層12における電気抵抗を低減して、電池特性をより高められる。
正極活物質層12の総質量に対する導電性炭素の含有量は、正極から正極活物質層12を剥がして120℃環境で真空乾燥した乾燥物(粉体)を測定対象物として、下記≪導電性炭素含有量の測定方法≫で測定できる。
例えば、正極活物質層の最表面の、深さ数μmの部分をスパチュラ等で剥がした粉体を120℃環境で真空乾燥させて測定対象物とすることができる。
下記≪導電性炭素含有量の測定方法≫で測定した導電性炭素の含有量は、活物質被覆部中の炭素と、導電助剤中の炭素とを含み、結着材中の炭素及び分散剤中の炭素のいずれをも含まない。
≪導電性炭素含有量の測定方法≫
[測定方法A]
測定対象物を均一に混合して試料(質量w1)を量りとり、下記の工程A1、工程A2の手順で熱重量示差熱(TG-DTA)測定を行い、TG曲線を得る。得られたTG曲線から下記第1の重量減少量M1(単位:質量%)及び第2の重量減少量M2(単位:質量%)を求める。M2からM1を減算して導電性炭素の含有量(単位:質量%)を得る。
工程A1:300mL/分のアルゴン気流中において、10℃/分の昇温速度で30℃から600℃まで昇温し、600℃で10分間保持したときの質量w2から、下記式(a1)により第1の重量減少量M1を求める。
M1=(w1-w2)/w1×100 …(a1)
工程A2:前記工程A1の直後に600℃から10℃/分の降温速度で降温し、200℃で10分間保持した後に、測定ガスをアルゴンから酸素へ完全に置換し、100mL/分の酸素気流中において、10℃/分の昇温速度で200℃から1000℃まで昇温し、1000℃にて10分間保持したときの質量w3から、下記式(a2)により第2の重量減少量M2(単位:質量%)を求める。
M2=(w1-w3)/w1×100 …(a2)
[測定方法B]
測定対象物を均一に混合して試料を0.0001mg精秤し、下記の燃焼条件で試料を燃焼し、発生した二酸化炭素をCHN元素分析装置により定量し、試料に含まれる全炭素量M3(単位:質量%)を測定する。また、前記測定方法Aの工程A1の手順で第1の重量減少量M1を求める。M3からM1を減算して導電性炭素の含有量(単位:質量%)を得る。
[燃焼条件]
燃焼炉:1150℃
還元炉:850℃
ヘリウム流量:200mL/分
酸素流量:25~30mL/分
[測定方法C]
上記測定方法Bと同様にして、試料に含まれる全炭素量M3(単位:質量%)を測定する。また、下記の方法で結着材由来の炭素の含有量M4(単位:質量%)を求める。M3からM4を減算して導電性炭素の含有量(単位:質量%)を得る。
結着材がポリフッ化ビニリデン(PVDF:モノマー(CHCF)の分子量64)である場合は、管状式燃焼法による燃焼イオンクロマトグラフィーにより測定されたフッ化物イオン(F)の含有量(単位:質量%)、PVDFを構成するモノマーのフッ素の原子量(19)、及びPVDFを構成する炭素の原子量(12)から以下の式で計算することができる。
PVDFの含有量(単位:質量%)=フッ化物イオンの含有量(単位:質量%)×64/38
PVDF由来の炭素の含有量M4(単位:質量%)=フッ化物イオンの含有量(単位:質量%)×12/19
結着材がポリフッ化ビニリデンであることは、試料、又は試料をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒により抽出した液体をフーリエ変換赤外スペクトル(FT-IR)測定し、C-F結合由来の吸収を確認する方法で確かめることができる。同様に19F-NMR測定でも確かめることができる。
結着材がPVDF以外と同定された場合は、その分子量に相当する結着材の含有量(単位:質量%)および炭素の含有量(単位:質量%)を求めることで、結着材由来の炭素量M4を算出できる。
分散剤が含まれる場合は、前記M3からM4を減算し、さらに分散剤由来の炭素量を減算して導電性炭素の含有量(単位:質量%)を得ることができる。
これらの手法は下記複数の公知文献に記載されている。
東レリサーチセンター The TRC News No.117 (Sep.2013)第34~37頁、[2021年2月10日検索]、インターネット<https://www.toray-research.co.jp/technical-info/trcnews/pdf/TRC117(34-37).pdf>
東ソー分析センター 技術レポート No.T1019 2017.09.20、[2021年2月10日検索]、インターネット<http://www.tosoh-arc.co.jp/techrepo/files/tarc00522/T1719N.pdf>
≪導電性炭素の分析方法≫
正極活物質の活物質被覆部を構成する導電性炭素と、導電助剤である導電性炭素は、以下の分析方法で区別できる。
例えば、正極活物質層中の粒子を透過電子顕微鏡電子エネルギー損失分光法(TEM-EELS)により分析し、粒子表面近傍にのみ290eV付近の炭素由来のピークが存在する粒子は正極活物質であり、粒子内部にまで炭素由来のピークが存在する粒子は導電助剤と判定することができる。ここで「粒子表面近傍」とは、粒子表面からの深さが、約100nmまでの領域を意味し、「粒子内部」とは前記粒子表面近傍よりも内側の領域を意味する。
他の方法としては、正極活物質層中の粒子をラマン分光によりマッピング解析し、炭素由来のG-bandとD-band、及び正極活物質由来の酸化物結晶のピークが同時に観測された粒子は正極活物質であり、G-bandとD-bandのみが観測された粒子は導電助剤と判定することができる。
さらに他の方法としては、広がり抵抗顕微鏡(SSRM:Scanning Spread Resistance Microscope)により、正極活物質層の断面を観察し、粒子表面に粒子内部より抵抗が低い部分が存在する場合、抵抗が低い部分は活物質被覆部に存在する導電性炭素であると判定できる。そのような粒子以外に独立して存在し、かつ抵抗が低い部分は導電助剤であると判定することができる。
なお、不純物として考えられる微量な炭素や、製造時に正極活物質の表面から意図せず剥がれた微量な炭素などは、導電助剤と判定しない。
これらの方法を用いて、炭素材料からなる導電助剤が正極活物質層に含まれるか否かを確認することができる。
<正極の製造方法>
本実施形態の正極1の製造方法は、正極製造用組成物を正極集電体11上に塗工する塗工工程とを有する。
正極1の製造方法は、例えば、組成物調製工程と、塗工工程と、乾燥工程とを有する。
正極集電体11は、例えば、正極集電体本体14の片面又は両面に集電体被覆層15を形成して、製造したものでもよいし、市場から購入したものでもよい。
≪組成物調製工程≫
組成物調製工程は、正極製造用組成物を調製する工程である。
[正極製造用組成物]
本発明の正極製造用組成物は、正極活物質粒子と溶媒とを含むスラリー又はペーストである。
正極製造用組成物は、正極活物質粒子以外に、結着材、分散剤、導電助剤のいずれかを含んでもよい。
正極製造用組成物に含まれる正極活物質粒子、結着材、分散剤及び導電助剤は、それぞれ、正極活物質層12に含まれる正極活物質粒子、結着材、分散剤及び導電助剤と同様である。
正極製造用組成物中の正極活物質粒子の含有量は、特に限定されないが、例えば、正極製造用組成物の総質量に対して、56~68質量%が好ましく、58~67質量%がより好ましく、59~65質量%がより好ましい。正極活物質粒子の含有量が上記下限値以上であると、後述する乾燥工程の時間を短縮して、結着材の偏析を抑制できる。結着材の偏析を抑制することで、正極活物質層12における領域毎の結着材の量の差異をより低減して、電池特性をより高められる。正極活物質粒子の含有量が上記上限値以下であると、正極製造用組成物の流動性をより高めて、より均一に塗工できる。正極製造用組成物をより均一に塗工できると、正極活物質層12における領域毎の結着材の量の差異をより低減し、正極活物質層12の厚さのさらなる均一化を図って、電池特性をより高められる。
正極製造用組成物の溶媒は非水系溶媒が好ましい。例えば、アルコール、鎖状又は環状アミド、ケトン、水等を例示できる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等を例示できる。鎖状又は環状アミドとしては、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等を例示できる。ケトンとしては、アセトン等を例示できる。溶媒は、鎖状又は環状アミドと水とからなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、N-メチルピロリドン及び水からなる群から選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。溶媒は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
正極製造用組成物中の溶媒の含有量は、正極製造用組成物に求める粘度等を勘案して、適宜決定できる。正極製造用組成物中の溶媒を含有量は、正極製造用組成物の総質量に対して、例えば、30~42質量%が好ましく、31~40質量%がより好ましく、33~39質量%がより好ましい。溶媒の含有量が上記下限値以上であると、正極製造用組成物の流動性をより高めて、正極製造用組成物をより均一に塗工できる。加えて、正極製造用組成物中の各成分をより均一に分布できる。これにより、正極活物質層12における領域毎の結着材の量の差異をより低減し、正極活物質層12の厚さのさらなる均一化を図って、電池特性をより高められる。溶媒の含有量が上記上限値以下であると、後述する乾燥工程の時間を短縮して、結着材の偏析を抑制できる。結着材の偏析を抑制することで、正極活物質層12における領域毎の結着材の量の差異をより低減して、電池特性をより高められる。
正極製造用組成物中の結着材、分散剤及び導電助剤の含有量は、正極活物質層12中の含有量及び正極製造用組成物中の正極製造用組成物中の正極活物質粒子の含有量を鑑みて、適宜決定される。
正極製造用組成物において、正極構成粒子群のかさ密度は、0.3g/cm以上であり、0.5g/cm以上が好ましく、0.8g/cm以上がより好ましい。正極構成粒子群のかさ密度が上記下限値以上であると、非水電解質二次電池の電池特性を高められる。正極構成粒子群のかさ密度の上限は、特に限定されないが、実質的に2g/cm以下であり、1.5g/cm以下が好ましい。正極構成粒子群のかさ密度が上記上限値以下であると、圧縮により結着した正極構成粒子群を低減し、正極製造用組成物を調製する際に、分散性をより高められる。
正極構成粒子群は、正極製造用組成物の溶媒に溶解しない成分である。すなわち、正極製造粒子群は、原料段階において粒子群であり、正極製造用組成物中で粒子群であり、正極活物質層12中でも粒子として存在する。
正極製造用組成物を構成する成分の内、溶媒に溶解しない粒子(主に無機粒子)が正極構成粒子群に属する。正極製造用組成物を構成する無機粒子としては、正極活物質粒子、導電助剤等を例示できる。
「溶媒に溶解しない」とは、100mLの溶媒(60℃以上)に1gの正極構成粒子群を加え、60分間撹拌した際に、粒子の存在を視認できることをいう。
正極製造用組成物の調製方法は、例えば、正極活物質粒子と、必要に応じて結着材、分散剤又は導電助剤とを溶媒に加え、これらの成分を混合する方法を例示できる。
≪塗工工程≫
塗工工程は、本発明の正極製造用組成物を正極集電体11上に塗工して、塗膜を形成する工程である。
本発明の正極製造用組成物は、正極構成粒子群のかさ密度が特定の範囲であるため、正極構成粒子群の粒子間に溶媒及び結着材がより均等に行き渡り、正極製造用組成物の溶媒量が適度に少量であるため、乾燥工程にて偏析を生じにくい。このため、形成された塗膜における成分の分布、塗膜の厚さ等をより均一にできる。
加えて、本発明の正極製造用組成物は、流動性が適切であるため、塗工工程において均一な厚みで塗膜を形成できる。
正極製造用組成物を正極集電体上に塗工する方法としては、例えば、グラビアコート、ダイコート、ナイフコーオ、ブレードコート、ロールコート等、公知の塗工方法を例示できる。
塗工工程における正極製造用組成物の塗工量は、正極製造用組成物の組成、所望する正極活物質層12の厚さ等を勘案して適宜決定できる。
塗膜の厚さは、正極製造用組成物の組成、所望する正極活物質層12の厚さ等を勘案して適宜決定でき、例えば、30~500μmが好ましく、40~400μmがより好ましく、50~300μmが特に好ましい。
≪乾燥工程≫
乾燥工程は、正極集電体上に形成した塗膜における溶媒の一部又は全部を揮発させ、塗膜を正極活物質層12とする。
通常、塗膜を乾燥すると、塗膜の表面から溶媒が揮発する。このため、乾燥工程において、溶媒は塗膜の表面に移動して揮発する。この溶媒の移動に伴い、結着材が塗膜の表面に移動して偏析する。溶媒の多い領域では結着材の偏析が顕著となり、正極活物質層12と正極集電体11との界面に隙間を生じて、電池特性を低下させうる。
本発明の正極製造用組成物を用いた塗膜は、正極活物質粒子、溶媒及び結着材の分布が均一であるため、結着材の偏析を抑制し、正極活物質層12と正極集電体11との密着性をより高められる。
正極製造用組成物が、かさ密度の低い粒子群(低密度粒子群)を含有すると、正極製造用組成物又は塗膜中の溶媒が偏在してしまう。これは、低密度粒子群(代表的には導電助剤)の比表面積が高いために、低密度粒子群が溶媒を局所的に保持するためであり、本発明で必要とされる溶媒よりも多くの溶媒が必要となり、乾燥工程でのバインダーの偏析を起こしやすくなる。本発明の正極製造用組成物は、正極構成粒子群が特定のかさ密度であるため、溶媒が偏在せず、結着材の偏析を抑制して、正極活物質層12と正極集電体11との密着性をより高められる。
乾燥工程における乾燥方法としては、例えば、任意の温度で、任意の時間、塗膜を静置する方法が挙げられる。また、乾燥方法としては、減圧乾燥法を例示できる。
乾燥工程における温度(乾燥温度)は、溶媒の種類及び含有量を勘案して適宜決定できる。乾燥温度は、例えば、室温(温度調節をしていない状態)~150℃とされる。
乾燥工程における時間(乾燥時間)は、溶媒の種類及び含有量を勘案して適宜決定できる。
なお、正極1の製造方法において、溶媒を揮発させる必要がない場合、乾燥工程を省略してもよい。「溶媒を揮発させる必要がない場合」とは、結着材が溶媒の全量を含んでオルガノゲルを形成する場合等である。この場合においても、本発明の正極製造用組成物を用いることで、各成分の分布を均一にし、電池特性をより高められる。
≪その他の工程≫
正極の製造方法においては、乾燥工程の後、加圧工程を設けてもよい。
加圧工程は、正極活物質層12を加圧し、厚さ又は密度を調節し、集電体との密着性を高める工程である。加圧工程としては、正極集電体11上に正極活物質層12を形成した積層物を2枚の平板状冶具の間に挟み、厚み方向に均一に加圧する方法を例示できる。また、例えば、正極集電体11と正極活物質層12との積層物をロールプレス機で加圧する方法を例示できる。
以上の工程により、正極集電体11と、正極活物質層12とを有する正極1を得る。
(非水電解質二次電池)
図2に示す本実施形態の非水電解質二次電池10は、本実施形態の非水電解質二次電池用正極1と、負極3と、非水電解質とを備える。さらにセパレータ2を備えてもよい。図中符号5は外装体である。
本実施形態において、正極1は、板状の正極集電体11と、その両面上に設けられた正極活物質層12と有する。正極活物質層12は正極集電体11の表面の一部に存在する。正極集電体11の表面の縁部は、正極活物質層12が存在しない正極集電体露出部13である。正極集電体露出部13の表面には、集電体被覆層15が存在していてもよいし、集電体被覆層15が存在しなくてもよい(すなわち、正極集電体本体14が露出していてもよい)。正極集電体露出部13の任意の箇所に、図示しない端子用タブが電気的に接続する。
負極3は、板状の負極集電体31と、その両面上に設けられた負極活物質層32とを有する。負極活物質層32は負極集電体31の表面の一部に存在する。負極集電体31の表面の縁部は、負極活物質層32が存在しない負極集電体露出部33である。負極集電体露出部33の任意の箇所に、図示しない端子用タブが電気的に接続する。
正極1、負極3およびセパレータ2の形状は特に限定されない。例えば平面視矩形状でもよい。
図2では、代表的に、負極/セパレータ/正極/セパレータ/負極の順に積層した構造を示しているが、電極の数は適宜変更できる。正極1は1枚以上あればよく、得ようとする電池容量に応じて任意の数の正極1を用いることができる。負極3及びセパレータ2は、正極1の数より1枚多く用い、最外層が負極3となるように積層する。
<負極>
負極活物質層32は負極活物質を含む。負極活物質層32は、さらに結着材を含んでもよい。負極活物質層32は、さらに導電助剤を含んでもよい。負極活物質の形状は、粒子状が好ましい。
負極3は、例えば、負極活物質、結着材、及び溶媒を含む負極製造用組成物を調製し、これを負極集電体31上に塗工し、乾燥し溶媒を除去して負極活物質層32を形成する方法で製造できる。負極製造用組成物は導電助剤を含んでもよい。
負極活物質及び導電助剤としては、例えば炭素材料、チタン酸リチウム(LTO)、シリコン、一酸化シリコン等が挙げられる。炭素材料としては、グラファイト、グラフェン、ハードカーボン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)等が挙げられる。負極活物質及び導電助剤は、それぞれ1種でもよく2種以上を併用してもよい。
負極集電体31の材料は、上記した正極集電体11の材料と同様のものを例示できる。
負極製造用組成物中の結着材としては、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(PAALi)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-六フッ化プロピレン共重合体(PVDF-HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)等が例示できる。結着材は1種でもよく2種以上を併用してもよい。
負極製造用組成物中の溶媒としては、水、有機溶媒が例示できる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール;N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の鎖状又は環状アミド;アセトン等のケトンが例示できる。溶媒は1種でもよく2種以上を併用してもよい。
負極活物質層32の総質量に対して、負極活物質及び導電助剤の合計の含有量は80.0~99.9質量%が好ましく、85.0~98.0質量%がより好ましい。
<セパレータ>
セパレータ2を負極3と正極1との間に配置して短絡等を防止する。セパレータ2は、後述する非水電解液(非水電解質)を保持してもよい。
セパレータ2としては、特に限定されず、多孔性の高分子膜、不織布、ガラスファイバー等が例示できる。
セパレータ2の一方又は両方の表面上に絶縁層を設けてもよい。絶縁層は、絶縁性微粒子を絶縁層用結着材で結着した多孔質構造を有する層が好ましい。
セパレータ2の厚さは、例えば、7~25μmとされる。
セパレータ2は、各種可塑剤、酸化防止剤、難燃剤を含んでもよい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤等のフェノール系酸化防止剤;ヒンダードアミン系酸化防止剤;リン系酸化防止剤;イオウ系酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系酸化防止剤;ベンゾフェノン系酸化防止剤;トリアジン系酸化防止剤;サルチル酸エステル系酸化防止剤等が例示できる。フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。
<非水電解液>
非水電解液は正極1と負極3との間を満たす。例えば、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ等において公知の非水電解液を使用できる。
非水電解質二次電池10の製造に用いる非水電解液は、有機溶媒と電解質塩と添加剤を含む。
製造後(初期充電後)の非水電解質二次電池10は、有機溶媒と電解質塩を含み、さらに添加剤に由来する残留物又は痕跡を含んでもよい。
有機溶媒は、高電圧に対する耐性を有するものが好ましい。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトロヒドラフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルアセテート等の極性溶媒、又はこれら極性溶媒の2種類以上の混合物が挙げられる。
電解質塩は、特に限定されず、例えばLiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiCF、LiCFCO、LiPFSO、LiN(SOF)、LiN(SOCF、Li(SOCFCF、LiN(COCF、LiN(COCFCF等のリチウムを含む塩、又はこれら塩の2種以上の混合物が挙げられる。
添加剤としては、硫黄原子及び窒素原子の一方又は両方を含む化合物Aが挙げられる。添加剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
化合物Aの例としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SOF)、以下「LiFSI」とも記す)等が挙げられる。
<非水電解質二次電池の製造方法>
本実施形態の非水電解質二次電池の製造方法は、正極、セパレータ、負極、非水電解液、外装体等を公知の方法で組み立て、非水電解質二次電池を得る方法が挙げられる。
本実施形態の非水電解質二次電池の製造方法の一例について説明する。例えば、正極1と負極3を、セパレータ2を介して交互に積層した電極積層体を作製する。電極積層体をアルミラミネート袋等の外装体(筐体)5に封入する。次いで、非水電解液(図示せず)を外装体に注入し、外装体5を密閉して、非水電解質二次電池とする。
本実施形態の正極製造用組成物によれば、正極製造用組成物の溶媒に溶解しない成分の粒子群のかさ密度が特定の範囲であるため、得られる正極の正極活物質層における各成分の分布を均一にできる。正極活物質層において各成分の分布を均一にすることで、領域毎の電気抵抗の差異を低減し、正極活物質層と正極集電体との密着性を高めて、電池性能をより高められる。
本実施形態の非水電解質二次電池は、産業用、民生用、自動車用、住宅用等、各種用途のリチウムイオン二次電池として使用できる。
本実施形態の非水電解質二次電池の使用形態は特に限定されない。例えば、複数個の非水電解質二次電池を直列又は並列に接続して構成した電池モジュール、電気的に接続した複数個の電池モジュールと電池制御システムとを備える電池システム等に用いることができる。
電池システムの例としては、電池パック、定置用蓄電池システム、自動車の動力用蓄電池システム、自動車の補機用蓄電池システム、非常電源用蓄電池システム等が挙げられる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
<塗工性>
ダイコートにより塗工性を評価した。
<サイクル特性:サイクル容量維持率>
サイクル容量維持率を下記(1)~(7)の手順で行った。
(1)定格容量が1Ahとなるようにセルを作製し、常温(25℃)下で、サイクル評価を実施した。
(2)得られたセルに対して、0.2Cレート(すなわち、200mA)で一定電流にて終止電圧3.6Vで充電を行った後、一定電圧にて終止電流0.05Cレート(すなわち、20mA)で充電を行った。
(3)容量確認のための放電を0.2Cレートで一定電流にて終止電圧2.5Vで行った。このときの放電容量を基準容量とし、基準容量を1Cレートの電流値とした(すなわち、1000mAとした)。
(4)セルの3.0Cレート(すなわち、3000mA)で一定電流にて終止電圧3.8Vで充電を行った後、10秒間休止し、この状態から3.0Cレートにて終止電圧2.0Vで放電を行い、10秒間休止した。
(5)(4)のサイクル試験を2000回繰り返した。
(6)(2)と同様の充電を実施した後に、(3)と同じ容量確認を実施した。
(7)(6)で測定された容量確認での放電容量をサイクル試験前の基準容量で除した値を2000サイクル後の容量維持比率(サイクル特性値)とした。サイクル特性値0.70以上を良好な状態と判定した。
(使用材料)
<負極>
以下の方法により、負極を製造した。
負極活物質である人造黒鉛100質量部と、結着材であるスチレンブタジエンゴム1.5質量部と、増粘材であるカルボキシメチルセルロースNa1.5質量部と、溶媒である水とを混合し、固形分50質量%の負極製造用組成物を得た。
得られた負極製造用組成物を、銅箔(厚さ8μm)の両面上にそれぞれ塗工し、100℃で真空乾燥した後、2kNの荷重で加圧プレスして負極シートを得た。得られた負極シートを打ち抜き、負極とした。
<正極集電体>
以下の方法により、正極集電体を製造した。
カーボンブラック100質量部と、結着材であるポリフッ化ビニリデン40質量部と、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)とを混合してスラリーを得た。NMPの使用量はスラリーを塗工するのに必要な量とした。
得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔(正極集電体本体)の表裏両面に、乾燥後の集電体被覆層の厚さ(両面合計)が2μmとなるように、グラビア法で塗工し、乾燥し溶媒を除去して正極集電体とした。両面それぞれの集電体被覆層は、塗工量及び厚みが互いに均等になるように形成した。
<正極活物質粒子>
正極活物質粒子として、LiFePOからなる芯部と炭素からなる活物質被覆部とを有する被覆粒子を用いた。
≪正極活物質粒子の仕様≫
・平均粒子径:1.0μm。
・被覆率:100%となるように調製されたもの。
<その他>
導電助剤として、カーボンブラックを用いた。導電助剤は、不純物が定量限界以下であり、炭素含有量100質量%とみなすことができる。
結着材として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリアクリル酸(0.5質量部)とカルボキシメチルセルロース(0.5質量部)との混合物(表中、「アクリル/CMC」と記載)を用いた。
溶媒として、N-メチルピロリドン(NMP)又は水を用いた。
<実施例1~4、比較例1~3>
表1の組成に従い、以下の方法で正極活物質層を形成した。
正極活物質粒子、導電助剤(表中の配合量)、結着材1質量%及び溶媒(NMP)をミキサーにて混合して正極製造用組成物を得た(但し、正極活物質粒子、導電助剤及び結着材の合計量を100質量%とした)。溶媒の配合量は、正極製造用組成物を塗工するのに必要な量とした。各例において、導電助剤の配合量は、表中に記載の通りとした。
得られた正極製造用組成物を、正極集電体の両面上にそれぞれ塗工し、予備乾燥後、120℃環境で真空乾燥して正極活物質層を形成した。正極製造用組成物の塗工量(表裏両面合計)は20mg/cmとした。両面それぞれの正極活物質層は、塗工量及び厚みが互いに均等になるように形成した。得られた積層物を加圧プレスして正極シートを得た。加圧プレスのプレス圧によって、合材積層体の体積密度を調節した。得られた正極シートには、集電体被覆層と正極活物質層との積層物である合材積層体が正極集電体本体上に形成された。
得られた正極シートを打ち抜き、正極とした。
表中、「-」は、配合していないことを示す。
正極製造用組成物の組成において、正極構成粒子群は、正極活物質粒子及び導電助剤である。
以下の方法で、図2に示す構成の非水電解質二次電池を製造した。
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を、EC:DECの体積比が3:7となるように混合した溶媒に、電解質としてLiPFを1モル/リットルとなるように溶解して、非水電解液を調製した。
各例の正極1と負極3とを、セパレータ2を介して交互に積層し、最外層が負極3である電極積層体を作製した。セパレータとしては、ポリオレフィンフィルム(厚さ15μm)を用いた。
電極積層体を作製する工程では、まず、セパレータ2と正極1とを積層し、その後、セパレータ2上に負極3を積層した。
電極積層体の正極集電体露出部13及び負極集電体露出部33のそれぞれに、端子用タブを電気的に接続し、端子用タブが外部に突出するように、アルミラミネートフィルムで電極積層体を挟み、三辺をラミネート加工して封止した。
続いて、封止せずに残した一辺から非水電解液を注入し、真空封止して、各例の非水電解質二次電池(ラミネートセル)を製造した。
得られた非水電解質二次電池について、サイクル特性値を求め、その結果を表中に示す。
Figure 2023140733000002
表1に示すように、本発明を適用した実施例1~4は、塗工性が良好であり、目視では大きなスジを確認できず、サイクル特性値が0.78~0.90であった。
比較例1~3は、塗工性が不安定で塗工スジが目視で確認できる状態であり、かさ密度0.3g/cm未満の正極構成粒子群を含有する正極製造用組成物を用いたため、サイクル特性値が0.35~0.58であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、電池特性の向上を図れることを確認できた。
1 正極
2 セパレータ
3 負極
5 外装体
10 非水電解質二次電池
11 集電体(正極集電体)
12 正極活物質層
13 正極集電体露出部
14 集電体本体
15 集電体被覆層

Claims (11)

  1. 正極活物質を含む正極活物質粒子と溶媒とを含み、
    前記溶媒に溶解しない成分の粒子群のかさ密度が、0.3g/cm以上である、非水電解質二次電池の正極製造用組成物。
  2. 前記溶媒は、N-メチルピロリドン及び水からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池の正極製造用組成物。
  3. 前記正極活物質は、一般式LiFe(1-x)PO(式中、0≦x≦1、MはCo、Ni、Mn、Al、Ti又はZrである。)で表される化合物を含む、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池の正極製造用組成物。
  4. 前記正極活物質粒子は、前記正極活物質である芯部と、導電材料を含む被覆部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池の正極製造用組成物。
  5. 導電性炭素を含み、
    前記導電性炭素の含有量は、前記正極製造用組成物の固形分の総量に対して、0.5質量%以上3.0質量%未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池の正極製造用組成物。
  6. 集電体と、前記集電体上に位置する正極活物質層と、を有し、
    前記正極活物質層は、正極活物質を含む正極活物質粒子を含み、
    前記正極活物質層を構成する全粒子の群は、かさ密度0.3.g/cm以上である、非水電解質二次電池用正極。
  7. 前記集電体は、集電体本体と前記集電体本体の表面の少なくとも一部を覆う被覆層とを有し、
    前記被覆層は、導電材料を含む、請求項6に記載の非水電解質二次電池用正極。
  8. 前記正極活物質層は、導電性炭素を含み、
    前記導電性炭素の含有量は、前記正極活物質層の総質量に対して、0.5質量%以上3.0質量%未満である、請求項6又は7に記載の非水電解質二次電池用正極。
  9. 請求項6~8のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池用正極と、負極と、前記非水電解質二次電池用正極と前記負極との間に存在する非水電解質と、を備える、非水電解質二次電池。
  10. 請求項9に記載の非水電解質二次電池の複数個を備える、電池モジュール又は電池システム。
  11. 請求項1~5のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池の正極製造用組成物を集電体上に塗工することを含む、非水電解質二次電池用正極の製造方法。
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