JP7196990B2 - ポリエステルフィルムの回収方法、回収装置及び機能層除去剤 - Google Patents
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Description
また、仮に製膜できたとしても得られたフィルムの着色や、異物混入などによる品質の劣化が避けられない。
すなわち、易溶解性樹脂層を有さない、大部分の積層ポリエステルフィルムに用いることはできず、汎用性のない技術である。
上記実情に鑑みて、易溶解性樹脂層を有さない積層ポリエステルフィルムであっても、機能層を剥離でき、基材フィルムを回収することのできるポリエステルフィルムの回収方法を提案することを課題とする。
(1)ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムを、(a)アルカリ性化剤、及び(b)相溶化剤を含有する洗浄剤で洗浄し、機能層を除去する、機能層除去工程(A)と、機能層を除去したポリエステルフィルムを回収する、回収工程(B)を有するポリエステルフィルムの回収方法。
(2)前記洗浄剤が水系洗浄剤である上記(1)に記載のポリエステルフィルムの回収方法。
(3)前記(a)アルカリ性化剤が、アルカリ金属水酸化物を含む上記(1)又は(2)に記載のポリエステルフィルムの回収方法。
(4)前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムを含有する上記(3)に記載のポリエステルフィルムの回収方法。
(5)前記洗浄剤が、さらに、(c)少なくとも一つの水酸基を有する化合物を含有する上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のポリエステルフィルムの回収方法。
(6)前記(c)少なくとも一つの水酸基を有する化合物がアルコール類である上記(5)に記載のポリエステルフィルムの回収方法。
(7)前記アルコール類の酸性度定数(pKa)が8.0以上、20.0以下である上記(6)に記載のポリエステルフィルムの回収方法。
(8)前記アルコール類を2種類以上併用する上記(6)又は(7)に記載のポリエステルフィルムの回収方法。
(9)前記(b)相溶化剤が、芳香族スルホン酸塩及び水酸基含有のアミン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記(1)~(8)のいずれか1つに記載のポリエステルフィルムの回収方法。
(10)前記機能層除去工程(A)における洗浄剤の温度が20℃以上である上記(1)~(9)のいずれか1つに記載のポリエステルフィルムの回収方法。
(11)上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の回収方法により回収したポリエステルフィルムを、原料として少なくとも一部に含むリサイクルポリエステル製品。
(12)洗浄装置を有するポリエステルフィルムの回収装置であって、洗浄装置において、ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムを、(a)アルカリ性化剤、及び(b)相溶化剤を含有する洗浄剤で洗浄し、機能層を除去したポリエステルフィルムを回収することを特徴とする、ポリエステルフィルムの回収装置。
(13)前記機能層を除去したポリエステルフィルムに付着した洗浄剤を洗い流すリンス装置をさらに備える上記(12)に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
(14)前記洗浄剤が水系洗浄剤であり、前記リンス装置において、水で水系洗浄剤を洗い流す上記(13)に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
(15)前記機能層が除去されたポリエステルフィルムを乾燥する乾燥装置を備える上記(12)~(14)のいずれか1つに記載のポリエステルフィルムの回収装置。
(16)前記洗浄装置の前段に巻き出し装置を有する上記(12)~(15)のいずれか1つに記載のポリエステルフィルムの回収装置。
(17)ロールトゥロール方式で回収する上記(16)に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
(18)前記洗浄装置の前段に裁断装置をさらに備える上記(12)~(15)のいずれか1つに記載のポリエステルフィルムの回収装置。
(19)ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムから機能層を除去するための除去剤であって、(a)アルカリ性化剤、及び(b)相溶化剤を含有する、ポリエステルフィルム用機能層除去剤。
(20)前記除去剤が水系除去剤である上記(19)に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
(21)前記(a)アルカリ性化剤が、アルカリ金属水酸化物を含む上記(19)又は(20)に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
(22)前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムを含有する上記(21)に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
(23)前記除去剤が、さらに、(c)少なくとも一つの水酸基を有する化合物を含有する上記(19)~(22)のいずれか1つに記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
(24)前記(c)少なくとも一つの水酸基を有する化合物がアルコール類である上記(23)に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
(25)前記アルコール類の酸性度定数(pKa)が8.0以上、20.0以下である上記(24)に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
(26)前記アルコール類を2種類以上併用する上記(24)又は(25)に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
(27)前記(b)相溶化剤が、芳香族スルホン酸塩及び水酸基含有アミン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記(19)~(26)のいずれか1つに記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
ここで、機能層除去工程(A)において、(a)アルカリ性化剤、及び(b)相溶化剤を併用することが重要であり、併用によって、ポリエステルフィルム上の機能層を効果的に除去することができる。
そして、相溶化剤を使用することにより、洗浄剤成分の相溶性が向上することで上記反応が進行しやすくなり、機能層の剥離が容易になったと考えられる。
本発明における積層ポリエステルフィルムとは、基材フィルムであるポリエステルフィルムの表面に樹脂層などの機能層が積層されたものをいう。
ポリエステルフィルムは、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造の場合、2層構造、3層構造などでもよいし、4層又はそれ以上の多層であってもよく、層数は特に限定されない。また、ポリエステルフィルムは、二軸延伸フィルム等の延伸フィルムであっても未延伸フィルムであってもよい。
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、特に限定されるものではなく、市場に流通しているものを適宜使用できる。具体的には、ジカルボン酸とジオールを重縮合してなるポリエステルが挙げられ、ジカルボン酸としては芳香族ジカルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族グリコールが好ましい。
上記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸などが挙げられる。上記脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等を挙げることができる。
ポリエステルはホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。また、ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、グリコール以外の第3成分を共重合体成分として含んでもよい。
ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン-2,6-ナフタレートなどが挙げられ、これらの中ではポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、これらは、共重合体ポリエステルであってもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸単位の30モル%以下程度でテレフタル酸以外のジカルボン酸単位を有し、また、ジオール単位の30モル%程度でエチレングリコール以外のジオール単位を有してもよい。
2種類以上の層が積層されている場合、少なくとも1層が樹脂により構成されている層であることが好ましい。
本発明の方法では、機能層除去工程(A)において、(a)アルカリ性化剤、及び(b)相溶化剤を含有する洗浄剤で洗浄することを特徴とする。
本発明の洗浄剤を構成する(a)アルカリ性化剤は、洗浄液をアルカリ性とするものであり、アルカリ剤とも呼べる。アルカリ性化剤としては、無機アルカリ性化剤であっても、有機アルカリ性化剤であってもよいが、後述する(b)相溶化剤との組み合わせが好適である点から、無機アルカリ性化剤であることが好ましい。
なお、有機アルカリ性化剤として、少なくとも一つの水酸基を有する化合物が含まれる場合があるが、該化合物の酸性度定数(pKa)が30以上であれば、アルカリ性化剤として取り扱う。
本発明に係る洗浄剤において、(b)相溶化剤は、前記(a)成分と併用することで、積層ポリエステルフィルムからの機能層の溶出を助ける働きを有するとともに、上記(a)成分と後述する好適に添加し得る(c)成分、及びその他任意に添加される添加剤等を可溶化する機能を有する。
(b)相溶化剤としては、特に制限はなく、アニオン系相溶化剤、カチオン系相溶化剤、ノニオン系相溶化剤、両性相溶化剤のいずれも使用することができる。
なお、相溶化剤には、上記アルカリ性化剤にも相当する化合物が含まれることから、本発明の洗浄剤において、(b)相溶化剤は、上記(a)アルカリ性化剤と併用するに際し、(a)成分とは異なるものを用いる。
アルカノールアミン化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等が挙げられ、アルカノールアミド化合物としては、モノエタノールアミド、ジエタノールアミド及びトリエタノールアミド等が挙げられる。
また、炭素数12以上のヒドロキシ化合物としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、チオエーテル系、ポリオキシアルキレングリコール系、アセチレングリコール系、エステル系及びグリコシド系の炭素数12以上のヒドロキシ化合物が挙げられる。
なお、ここでは上述のように、(a)アルカリ性化剤とは異なる化合物を用いることが前提である。
なかでも、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも1種の無機アルカリ性化剤と、2,4-ジメチルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の芳香族スルホン酸塩との組み合わせが好ましい。また、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも1種の無機アルカリ性化剤と、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、1-アミノ-2-プロパノール、トリイソプロパノールアミンから選択される少なくとも1種の水酸基含有アミン化合物の組み合わせが好ましく、これらの中でも、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選択される少なくとも1種の無機アルカリ性化剤と、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンから選択される少なくとも1種の水酸基含有アミン化合物を併用した組み合わせが特に好ましい。
また、洗浄剤中の相溶化剤の含有量としては、1~30質量%の範囲であることが好ましい。上記範囲内であると十分な洗浄性が得られる。以上の観点から、洗浄剤中の相溶化剤の含有量5~25質量%の範囲であることがより好ましく、8~20質量%の範囲であることがさらに好ましい。
前記(c)少なくとも一つの水酸基を有する化合物としては、アルコール類、フェノール類などが挙げられる。
アルコール類の酸性度定数(pKa)が上記範囲内であれば、洗浄剤のアルカリ性を損ねることなく、アルコキシドが生成されるため、洗浄剤の洗浄能力が向上する
上記に示すアルコールの酸性度定数(pKa)の値から、酸性度定数(pKa)15.4以下のアルコール類とは、メタノールよりも酸性度定数(pKa)が小さいアルコール類と言える。
また、酸性度定数(pKa)9.3以上のアルコール類とは、ヘキサフルオロ-2-プロパノールの酸性度定数(pKa)以上のアルコール類と言える。
上記の中でも、洗浄性の観点から、ヘキサフルオロ-2-プロパノール、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール及びベンジルアルコールがより好ましい。これらのアルコール類は、プロトンが電離してアルコキシドが生成しやすく、高い洗浄性を有する。その中でも、洗浄力の高いヘキサフルオロ-2-プロパノールが好ましい。
また、低揮発性及び使用可能な温度範囲の観点からは、上記の中でも、ベンジルアルコールの使用が好ましい。
さらに、とりわけ、剥離洗浄効果を高める観点から、2種類以上を併用することが好ましく、2種類以上を併用する場合は、塗膜の性状に関わらず広くかつ相乗的に剥離洗浄効果を発現させる観点から、疎水性単価アルコールと水溶性単価アルコールの組合せが好ましい。疎水性単価アルコールとは、水と混じらずに2層に分離する単価アルコールのことを、水溶性単価アルコールとは、水と混じり1層になる単価アルコールのことを指す。
また、中でも疎水性単価アルコールとしてベンジルアルコールを、水溶性単価アルコールとしてヘキサフルオロ-2-プロパノール、メチルアルコール、エチルアルコール及びプロピルアルコールから選ばれる何れか1種以上を併用することがより好ましく、中でも、ベンジルアルコールとヘキサフルオロ-2-プロパノール及びベンジルアルコールとメチルアルコールの併用が最も好ましい。
酸化防止剤としては、特に限定されず、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等を用いることができる。
防錆剤としては、クロム酸塩、モリブデン酸塩、亜硝酸ナトリウム等の無機化合物が挙げられる。
pH調整剤としては乳酸、二酸化炭素、コハク酸、グルコン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸、リン酸、等が挙げられる。
防腐剤としてはパラベン系、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、プロピオン酸塩系、デヒドロ酢酸、二酸化硫黄及びピロ亜硫酸ナトリウム系等が挙げられる。
粘度調整剤としては高分子化合物、層状無機粒子などが挙げられる。
消泡剤としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、ポリエーテル系化合物、アセチレングリコール系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等が挙げられる。
本発明に係る機能層除去工程は、前記洗浄剤を用いて、積層フィルムの機能層を除去する工程である。除去の方法としては、例えば、洗浄剤の入った洗浄槽に浸漬する浸漬法、溶液状態の洗浄剤を塗布する塗布法、溶液状態の洗浄剤又は気化した洗浄剤を吹き付ける吹き付け法などが挙げられる。これらのうち、機能層への洗浄剤の浸透性の点から、浸漬法が好ましい。
また、洗浄剤の温度の上限値としては、洗浄剤を溶液状態で用いる場合には、沸点以下の温度が好ましい。本願の好適な態様である水系洗浄剤の場合は、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
なお、浸漬法以外においても洗浄時の洗浄液の温度は、上記と同様である。また、浸漬法における剥離洗浄では、加水分解反応を進める目的として、マイクロ波照射を行ってもよい。
廃材である積層ポリエステルフィルムが、ロール状である場合には、洗浄剤を入れた洗浄槽の前段に巻き出し装置を設置しておき、該装置から積層フィルムを巻き出して、洗浄槽中に導入して洗浄することが好ましい。そして、連続的に次の回収工程(B)に移行する態様が好ましい。
また、機能層除去工程から後述するリンス工程において、積層ポリエステルフィルムから効率良く機能層を除去する目的で、ロールブラシ、超音波、マイクロ/ナノバブル、水流、圧縮冷気などの物理的手段を備えた設備を設けてもよい。
前記機能層除去工程(A)の後に、基材フィルムであるポリエステルフィルムを回収する。回収工程の前段で、後述するリンス工程、及び乾燥工程を有することが好ましい。回収の方法としては、廃材である積層ポリエステルフィルムの形状に応じて、適当な方法を選択することができる。
本発明では、機能層除去工程(A)の後、回収工程(B)の前に、洗浄剤を洗い流すリンス工程を有することが好ましい。具体的には、リンス液により、機能層を除去したポリエステルフィルムに付着した洗浄剤を洗い流す工程を指す。
リンス工程の後には、乾燥工程を経ることが好ましい。乾燥工程によって、ポリエステルフィルム上に残存した洗浄剤及び/又はリンス液を除去できる。なお、リンス工程が省略される場合には、乾燥工程は、機能層除去工程(A)の後に行われるとよい。
本発明の回収方法により得られたポリエステルフィルムは、ポリエステル原料として利用でき、いわゆるリサイクルポリエステル製品として、再利用することができる。具体的には、回収したポリエステルはペレット化して、ペレット状のポリエステル(ポリエステル製品)として保管することができる。また、回収されたポリエステルは、溶融押出し等によってポリエステルフィルムなどの各種のポリエステル製品に成形することもできる。
なお、回収されたポリエステルは、その製造容易性から、一旦ペレット化した後に、各種製品に成形することが好ましい。
本発明の別の態様によれば、ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムから機能層を除去するための除去剤(以下「本除去剤」ともいう)が提供される。
本発明に係るポリエステルフィルム用機能層除去剤は、上述したポリエステルフィルムの回収方法における機能層除去工程(A)で使用される洗浄剤を、前記ポリエステルフィルムから機能層を除去するために使用するものである。
本除去剤の具体的態様及び好ましい態様は、上記洗浄剤と同じであり、これらを全て援用することができる。
本除去剤は、ポリエステルフィルムから機能層を容易に除去することができ、積層ポリエステルフィルムから効率的にポリエステルフィルムを回収することができる。
本発明に係るポリエステルフィルムの回収装置は、洗浄装置を有する。回収装置は、洗浄装置にて洗浄され、機能層を除去したポリエステルフィルムを回収する。
塊状の場合には、ベルトコンベヤなどの搬送装置により、所定の回収位置に機能層を除去したポリエステルフィルムを搬送させて回収してもよい。
塊状の場合は、裁断装置を有していることが好ましい。裁断によって、廃材はフレーク状になり、前述のように、洗浄工程がより効率的になる。
洗浄装置は、(a)アルカリ性化剤、及び(b)相溶化剤を含有する洗浄剤で洗浄する装置である。典型的には、洗浄槽に上記洗浄剤を満たした洗浄槽が挙げられ、ここに廃材である積層ポリエステルフィルムを導入し、浸漬して洗浄する。その他、溶液状態の洗浄剤を塗布する塗布装置、溶液状態又は気化した洗浄剤や、洗浄剤のミストを形成してミストを吹き付ける吹付装置などがある。
リンス装置は、洗浄剤にて機能層を除去した後に、ポリエステルフィルムに付着した洗浄剤を洗い流すための装置である。具体的には、リンス液を吹き付ける吹付装置、リンス液に浸漬させる浸漬装置などが挙げられる。上述のように、洗浄剤として水系洗浄剤を用いることで、リンス工程で水を用いることができ、安全性が高く、また防爆装置などが不要であることからコスト面でも好ましい。
乾燥装置は、機能層が剥離され、洗浄剤が洗い流されたポリエステルフィルムを乾燥するためのものであり、乾燥条件については、前述の通りである。乾燥装置としては、赤外線ヒーター、オーブン、熱風乾燥機、及びマイクロ波加熱乾燥機などが挙げられる。乾燥装置における乾燥工程を経て、ポリエステル基材は回収される。なお、リンス装置が省略される場合にも、乾燥装置により、機能層が剥離されたポリエステルフィルムを乾燥するとよい。
(1)浸漬試験
各実施例及び比較例で調製した洗浄剤を30mlの水槽に入れ、積層フィルムを浸漬させた。洗浄剤の温度、浸漬時間、及びサンプルサイズは、表に記載の通りである。
(2-1)目視
(粘着層を有する積層ポリエステルフィルム、及びハードコート層を有する積層ポリエステルフィルム)
浸漬した積層フィルムを取り出して表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎(very good);機能層が溶解又は剥離されており、基材であるポリエステルフィルムに大きな損傷がなく、実用上特に好ましい。
○(good);機能層が一部溶解又は剥離しており、実用上問題ない。
△(fair);機能層のごく一部が溶解又は剥離している。
×(bad);機能層が残ったままであり、実用上問題がある。
(シリコーン離型層を有する積層ポリエステルフィルム)
洗浄後の積層フィルムの表面を、蛍光X線分析装置(XRF、(株)島津製作所製「XRF-1800」)を用いてSi元素の定量分析を行った。
洗浄前の積層ポリエステルフィルム表面のSi元素量を100%、積層フィルムの機能層が塗工されていないプレーンフィルムのSi元素量を0%とすることで、機能層の除去率を測定した。
◎(very good);除去率90~100%
○(good);除去率70~89%
×(bad);除去率0~69%
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
次の(I)~(III)の機能層を有する積層ポリエステルフィルムを、試料として用意した。
(I)積層フィルム(アクリル系粘着層を有する積層ポリエステルフィルム);
市販品(日榮新化(株)製「PET75-H120(10)ブルー」)、ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚み;75μm、アクリル系粘着層の厚み;10μm
下記手順にてアクリル系ハードコート層を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
(アクリル系ハードコート溶液の調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート24質量部、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート6質量部、光重合開始剤(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.製)1.5質量部、トルエン70質量部の混合塗液とし、アクリル系ハードコート溶液を得た。
(アクリル系ハードコートフィルムの調製)
ポリエチレンテレフタレートフィルム;市販品(三菱ケミカル(株)製「ダイヤホイル」)上に、上記アクリル系ハードコート溶液を乾燥膜厚が約9μmとなるよう塗布し、紫外線を照射して硬化させ、アクリル系ハードコート層を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
(a)成分として水酸化カリウム5質量部、水酸化ナトリウム5質量部、(b)成分としてモノエタノールアミン19質量部、(c)成分としてベンジルアルコール40質量部、プロピレングリコール1質量部、その他成分として水を30質量部となるように混合し、洗浄剤(pH=13以上)を調製した。
積層フィルム(I)~(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
積層フィルム(III)を浸漬時間1分、温度条件60℃で洗浄し、シリコーン離型層を除去したポリエステルフィルムの極限粘度を測定した結果、極限粘度は0.67であり、洗浄前後でのポリエステルフィルムの極限粘度は変化していなかった。
(a)成分として水酸化カリウム5質量部、水酸化ナトリウム5質量部、(b)成分としてジエタノールアミン10質量部、(c)成分としてベンジルアルコール16質量部、その他成分として水を64質量部となるように混合し、洗浄剤(pH=13以上)を調製した。
積層フィルム(I)及び(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
(a)成分として水酸化カリウム5質量部、(b)成分として2,4-ジメチルベンゼンスルホン酸ナトリウム17.6質量部、(c)成分としてベンジルアルコール41.3質量部、その他の成分として水を36.1質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
(a)成分として水酸化カリウム5質量部、(b)成分として2,4-ジメチルベンゼンスルホン酸ナトリウム17.6質量部、(c)成分としてベンジルアルコール37.2質量部、メタノール4.1質量部、その他の成分として水を36.1質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
(a)成分として水酸化カリウム5質量部、(b)成分として2,4-ジメチルベンゼンスルホン酸ナトリウム17.6質量部、(c)成分としてベンジルアルコール31.0質量部、メタノール10.3質量部、その他の成分として水を36.1質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
(a)成分として水酸化カリウム5質量部、(b)成分として2,4-ジメチルベンゼンスルホン酸ナトリウム17.6質量部、(c)成分としてベンジルアルコール20.7質量部、メタノール20.7質量部、その他の成分として水を36.1質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
(a)成分として水酸化カリウム5質量部、(b)成分として2,4-ジメチルベンゼンスルホン酸ナトリウム17.6質量部、(c)成分としてベンジルアルコール37.2質量部、ヘキサフルオロ-2-プロパノール4.1質量部、その他の成分として水を36.1質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
(a)成分として、水酸化カリウム30質量部、その他の成分として水を70質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。積層フィルム(I)及び(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
温度条件を表1に記載のように変更したこと以外は、比較例1と同様に洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
試料を5分間洗浄剤に浸漬し、(株)ミツトヨ社製「シックネスゲージ ID-C112X/1012X」によって厚みを測定することで基材の厚み変化を測定した。
厚み変化が3μm以上あった場合をA、厚み変化が3μm未満であった場合をBとした。
実施例1と同じ組成の洗浄剤を用いて、表1に記載の条件で基材フィルム(IV)及び基材フィルム(V)の洗浄試験を行い、洗浄後の厚みを測定した。結果を表1に示す。
洗浄剤における単価アルコール類の最良の形態の確認のために、実施例3~6において、洗浄温度を55℃、浸漬時間を1分に洗浄条件を変更し、以下の基準にて洗浄評価を行った。結果を表2に示す。
なお、上記と同様に、洗浄後の積層フィルムの表面について、蛍光X線分析装置を用いてSi元素の定量分析を行うことで洗浄評価を行った。
機能層の除去率は、以下の基準で判断した。
○(good);除去率50~100%
△(fair);除去率0~49%
また、実施例1の結果から、本発明の方法によれば、機能層の除去工程(洗浄工程)前後でのポリエステルフィルムの極限粘度(IV)が低下しないため、回収したポリエステルフィルムを原料とするリサイクルポリエステル製品も、機械的物性等に優れる可能性が高い。
また、疎水性アルコール:水溶性アルコールの質量部比を1.5:1~10:1とすることで、非常に優れた洗浄効果が得られることが分かった。
Claims (21)
- 機能層除去工程(A)及び回収工程(B)を有し、
前記機能層除去工程(A)は、洗浄剤を用いて、ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムの機能層を除去する工程であり、
前記洗浄剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)は、(a)アルカリ性化剤((b)成分として水酸基含有アミン化合物を含有する場合には、水酸基含有アミン化合物を除く。)、(b)相溶化剤及び(c)少なくとも一つの水酸基を有する化合物としてのアルコール類を含有し、
前記(b)相溶化剤として、芳香族スルホン酸塩及び水酸基含有アミン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記(c)少なくとも一つの水酸基を有する化合物としてのアルコール類として、ベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)8.0以上20.0以下のアルコール類を含み、
前記回収工程(B)は、前記機能層を除去したポリエステルフィルムを回収する工程である、リサイクルポリエステル製品の製造方法。 - 前記洗浄剤が水系洗浄剤である請求項1に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
- 前記(a)アルカリ性化剤が、アルカリ金属水酸化物を含む請求項1又は2に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
- 前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムを含有する請求項3に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
- 前記アルコール類を2種類以上併用する請求項1~4のいずれか1項に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
- 前記機能層除去工程(A)における洗浄剤の温度が20℃以上である請求項1~5のいずれか1項に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
- 洗浄装置を有するポリエステルフィルムの回収装置であって、該洗浄装置は、洗浄剤の入った洗浄槽を有し、ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムを、(a)アルカリ性化剤((b)成分として水酸基含有アミン化合物を含有する場合には、水酸基含有アミン化合物を除く。)、(b)相溶化剤及び(c)少なくとも一つの水酸基を有する化合物としてのアルコール類を含有する洗浄剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)に浸漬して洗浄する装置であり、
前記(b)相溶化剤として、芳香族スルホン酸塩及び水酸基含有アミン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記(c)少なくとも一つの水酸基を有する化合物としてのアルコール類としてベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)8.0以上20.0以下のアルコール類を含み、
前記洗浄装置で洗浄され、機能層が除去されたポリエステルフィルムを回収することを特徴とする、ポリエステルフィルムの回収装置。 - 前記(a)アルカリ性化剤が、アルカリ金属水酸化物を含む請求項7に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
- 前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムを含有する請求項8に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
- 前記アルコール類を2種類以上併用する請求項7~9のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
- 前記機能層を除去したポリエステルフィルムに付着した洗浄剤を洗い流すリンス装置をさらに備える請求項7~10のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
- 前記洗浄剤が水系洗浄剤であり、前記リンス装置において、水で水系洗浄剤を洗い流す請求項11に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
- 前記機能層が除去されたポリエステルフィルムを乾燥する乾燥装置を備える請求項7~12のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
- 前記洗浄装置の前段に巻き出し装置を有する請求項7~13のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
- ロールトゥロール方式で回収する請求項14に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
- 前記洗浄装置の前段に裁断装置をさらに備える請求項7~13のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
- ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムから機能層を除去するための除去剤であって、
前記除去剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)は、(a)アルカリ性化剤((b)成分として水酸基含有アミン化合物を含有する場合には、水酸基含有アミン化合物を除く。)、(b)相溶化剤及び(c)少なくとも一つの水酸基を有する化合物としてのアルコール類を含有し、前記(b)相溶化剤として、芳香族スルホン酸塩及び水酸基含有アミン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、前記(c)少なくとも一つの水酸基を有する化合物としてのアルコール類としてベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)8.0以上20.0以下のアルコール類を含む、ポリエステルフィルム用機能層除去剤。 - 前記除去剤が水系除去剤である請求項17に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
- 前記(a)アルカリ性化剤が、アルカリ金属水酸化物を含む請求項17又は18に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
- 前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムを含有する請求項19に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
- 前記アルコール類を2種類以上併用する請求項17~20のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
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