JP2008155509A - セルロースエステルの回収方法 - Google Patents

セルロースエステルの回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】セルロースエステルフィルムと高級脂肪酸エステルのような添加剤を含む層とを有する複層のフィルム製品から、高純度のセルロースエステルを回収する。
【解決手段】膨潤処理工程12において、セルロースエステルフィルムと高級脂肪酸エステルのような添加剤を含む層とを有するフィルム製品17を所定の水溶液で処理し、膨潤フィルム19とする。温水洗浄工程13において、温水で膨潤フィルム19を洗浄し、異物を取り除く。溶剤処理工程14では、回収された回収物20を所定の溶剤で洗浄し、高級脂肪酸エステル等の異物をよりいっそう取り除く。上記により得られるセルロースエステル23は、取り除き難い高級脂肪酸エステル等の異物も十分に取り除くことができるので、高純度であるから、セルロースエステルフィルムの原料として再利用が可能である。
【選択図】図1

Description

本発明は、フィルム状にしたセルロースエステル、及びこのセルロースエステルフィルムとは種類が異なる層を有する複層フィルムであり、写真感光や偏光板の保護、或いは視野角拡大等を用途とするフィルム製品から、セルロースエステルを回収する方法に関するものである。
セルロースエステルをフィルム状にしたセルロースエステルフィルムは、透明度や機械強度が高い等の特長を有するので、写真感光や液晶表示装置の偏光板の保護、また、視野角拡大及び光学補償等の用途があるフィルム製品の主要部材として利用されている。
フィルム製品は、セルロースエステルフィルムの表面に所望の特性を示す層が少なくとも1層以上設けられた複層構造を有する。例えば、図3に示すように、写真感光用フィルム130は、セルロースエステルフィルム131を基材とし、この表面に、画像を形成させることを目的として、ハロゲン化乳剤層135、画像形成層136、保護層137が順に積層されている。また、セルロースエステルフィルム131とハロゲン化乳剤層135との間に設けられた下塗り層138は、両者の間で高接着強度を実現するためのものである。一方、上記の層が形成されていないセルロースエステルフィルム131の表面には、耐傷性の向上や帯電及びカールの発生防止を目的としてバッキング層140が形成されている。バッキング層140は、主に、セルロースジアセテート(DAC)を主成分とし、帯電防止に作用する物質や潤滑性を付与することを目的として、高級脂肪酸エステル等の添加剤が添加されている。
ところで、使用済みのフィルム製品や製造したものの品質不良のために製品価値がない不良品は、埋め立てや焼却により処理されている。しかし、このような処理方法は、広大なスペースを確保する必要があること、また、焼却には、エネルギーコストがかかる上に、二酸化炭素排出量の増大を引き起こすおそれがある等の問題を抱える。このため、上記に代替するフィルム製品の処理方法、すなわち、小スペースで、環境負荷を低減しながらフィルム製品を処理することができる方法の提案が望まれている。
そこで、廃棄物の中からセルロースエステルを選択的に取り出し、これを再利用する方法として、例えば、特許文献1、2には、過酸化物又は酸化ハロゲン化物、或いは水溶性有機溶剤等の有機溶剤を使用して廃棄物を処理し、膨潤させた廃棄物の中からセルロースエステルを選択的に回収する方法が提案されている。また、特許文献3には、スルホン酸、或いはリン酸から選ばれる酸、又は金属塩を持つ化合物を含む水溶液を使用して廃棄物を処理することで、セルロースエステル以外の物質を選択的に取り除く方法が提案されている。
特開平5−281686号公報 特開平8−269225号公報 特開2006−051637号公報
しかしながら、特許文献1〜3のように、所定の溶剤で廃棄物を処理するだけでは、バッキング層中に含まれた高級脂肪酸エステルのように、その一部がセルロースエステルフィルムに浸透しているような添加剤を取り除くことが難しい。
そこで、本発明は上記問題に鑑みて、セルロースエステルフィルムと、このセルロースエステルフィルムとは異なり、例えば、高級脂肪酸エステルのような添加剤を含む層とを有する複層フィルムから、添加剤等をはじめとするセルロースエステル以外の物質を選択的に取り除き、セルロースエステルを効率良くかつ効果的に回収することができる方法を提案することを目的とする。
本発明のセルロースエステルの回収方法は、セルロースエステル層、及びセルロースエステル層とは異なる層を有する複層フィルムからセルロースエステルを回収する方法において、下記一般式(1)の化合物を含む水溶液に複層フィルムを接触させて溶解又は膨潤させる工程と、溶解又は膨潤させた複層フィルムを温水で洗浄する工程と、洗浄後の複層フィルムを溶剤に浸漬させることにより、複層フィルムの中に含まれるセルロースエステル以外の物質を取り除く工程と、を有することを特徴とする。
Figure 2008155509
一般式(1)中のAはスルホン酸、或いはリン酸から選ばれる酸、又はその金属塩である。また、Rは少なくとも炭素数が10以上の分岐脂肪族基であり、Lは2価の基であり、JはR−LとAとを連結するn+m価の連結基である。そして、nは1から6の整数であり、mは1から3の整数である。nが2以上のとき、複数のAは同じであっても異なっていても良い。但し、R(nが2以上のときは、全てのRの総和)の総炭素数は20以上である。
異なる層は、セルロースエステル層の少なくとも1面に配され、かつ高級脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
セルロースエステルは、セルロースアシレートであることが好ましい。
溶剤は、水に対して親和性を示す第1化合物を含むことが好ましい。また、溶剤は、第1化合物の他に第1化合物よりも親和性が低い第2化合物を含み、水と第1化合物と第2化合物とを混合させたものを溶剤とするとき、水の全量に対する第1化合物と第2化合物との含まれる割合を60重量%以上75重量%以下とすることが好ましい。
水溶液は、一般式(1)の化合物を0.005重量%以上1重量%以下の割合で含むことが好ましい。
水溶液の温度を、80℃以上100℃以下とすることが好ましい。
温水の温度を、30℃以上100℃以下とすることが好ましい。
いずれの工程を少なくともそれぞれ1回以上行なうことが好ましい。
本発明により、セルロースエステルフィルム、及びこのセルロースエステルフィルムとは種類が異なる層であり、例えば、高級脂肪酸エステルのような添加剤を含むような層を有する複層フィルムから、添加剤をはじめとするセルロースエステル以外の物質を選択的に取り除き、セルロースエステルを効率良くかつ効果的に回収することができる。本発明により回収されたセルロースエステルは添加剤等の異物が十分に取り除かれているので、セルロースエステルフィルムの原料として再利用することができる程の高純度を示す。
以下、本発明に係る実施形態を示して、本発明の詳細を説明する。ただし、ここに示す形態はあくまで本発明に係る一例であり本発明を限定するものではない。図1に示すように、本発明に係るセルロースエステルの回収工程10は、膨潤処理工程12と、温水洗浄工程13と、溶剤洗浄工程14とを有する。
本発明に係るフィルム製品17は、セルロースエステルフィルム、及びこのフィルムとは種類が異なる層を有する複層フィルムをいう。この層は、セルロースエステルフィルムに所望の機能を付与する目的で形成され、セルロースエステルフィルムの少なくとも1面に配する。具体的には、高級脂肪酸エステルを含ませた層が挙げられる。高級脂肪酸エステルは、潤滑性の向上を目的として一般的に用いられている添加剤であり、主にバッキング層に含ませる。以下の説明では、セルロースエステルフィルムとは種類が異なる層を機能層と称する。
セルロースエステルフィルムや機能層は特に限定されるものではなく、適宜選択すれば良い。フィルム製品17としては、例えば、溶液製膜方法で製造されたセルロースエステルフィルムを主要部材とし、この表面にハロゲン化乳剤層等を設けた写真感光用フィルムや偏光板の保護フィルム、視野角拡大フィルム、光学補償フィルム等が挙げられる。なお、本発明は、セルロースエステルフィルムやフィルム製品の製造方法に特に限定されるものではない。セルロースエステルフィルムの製造方法に関しては、特開2005−104148号公報に記載されている方法を好適に用いることができる。
セルロースエステルとしては、セルロースの水酸基に低級脂肪酸をアシル化反応させて得られるセルロースの低級脂肪酸エステルが好適に用いられる。この低級脂肪酸は、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。中でも、炭素原子数が4以下であることが好ましく、セルロースアシレートが好適である。このようなセルロースエステルから作られるフィルムは、透明度や機械強度が高く、更には光学異方性等の光学特性に優れる。セルロースアシレートの中では、セルロースアセテート、特にアセチル化度の平均値が57.5%〜62.5%のセルローストリアセテート(TAC)が好適である。アセチル化度はセルロース単位重量当りの結合酢酸量を意味するものであり、セルロースアセテート等の試験方法であるASTM:D−817−91でのアセチル化度の測定及び計算に従って容易に求めることができる。本実施形態では、総量に対して、その90重量%以上が0.1mm以上4mm以下の粒子径を有する粒子状のTACを使用する。なお、TACは、その粒径が1mm以上4mm以下であるものがより好ましい。
本発明は、セルロースエステルと低級アルキルエーテルとを複合させたフィルム製品にも適用することができる。上記の低級アルキルとは、炭素原子数が4以下のアルキル基を意味する。また、本発明はドープに用いる溶剤が、例えば、メチレンクロライドとメタノールとを各重量比が9:1となるように混合した混合物に対して、完全に溶解しうるようなフィルム製品にも有効である。なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0141]段落から[0192]段落に記載されており、本記載は本発明に適用することができる。
溶液製膜方法でセルロースエステルフィルムを作る場合には、上記のセルロースエステルと溶剤と添加剤等とを混合させたドープが用いられる。この溶剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン等)や、エステル類(例えば、酢酸メチル、メチルホルメート、エチルアセテート、アミルアセテート、ブチルアセテート等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール等)等が挙げられる。ただし、特に限定されるものではなく、使用するセルロースエステルとの溶解性等を考慮して適宜選択すれば良い。溶剤は、1種類の化合物としても良いし、複数の化合物を混合させた混合物を用いても良い。
添加剤は、所望とするフィルム特性に応じながら、公知の物質の中から適宜選択したものを用いれば良い。本発明で好適に用いることができる添加剤としては、例えば、可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤(UV剤)、光学異方性コントロール剤、レタデーション制御剤、染料、マット剤、剥離剤、剥離促進剤等が挙げられる。なお、本発明で用いることができる溶剤や各種添加剤については、この詳細が特開2005−104148号公報の[0193]段落から[0513]段落に記載されており、本記載は本発明に適用することができる。
膨潤処理工程12では、化3の一般式(1)で表される化合物と水とを含む水溶液によりフィルム製品17が処理される。この水溶液の温度は80℃以上100℃以下とする。より好ましくは85℃以上100℃以下であり、特に好ましくは85℃以上95℃以下である。これにより、フィルム製品17は膨潤し、膨潤フィルム19となる。ここで、水溶液の温度が100℃を超えると、フィルム製品17に熱ダメージを与え、劣化させるおそれがあるので好ましくない。一方で、水溶液の温度が90℃未満では、フィルム製品17を膨潤させることが難しい。水溶液の温度は、市販の温度計で容易に測定することができる。処理中は、所定の範囲内で略一定に温度を保持することが好ましい。なお、水溶液における化合物の溶解度は特に問題とはされず、完全に溶解した状態でも良いし、水中に化合物が分散している状態でも良い。
Figure 2008155509
一般式(1)中のAは、スルホン酸、リン酸、カルボン酸から選ばれる酸、又はそれらの金属塩を表わす。Aは、スルホン酸、リン酸、又はそれらの金属塩であることが好ましく、より好ましくはスルホン酸、又はその金属塩である。好ましい金属原子としては、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム等)が挙げられる。より好ましくはアルカリ金属であり、中でも、ナトリウム、カリウムとすることが好ましい。なお、AとJとの結合は、Aがカルボン酸である場合は炭素原子で結合する。その一方で、スルホン酸、リン酸である場合は、硫黄原子、又はリン原子で結合するものでも良いし、酸素原子を介して結合するものでも良い。
は炭素数10以上の分岐状脂肪族基を表わす。分岐形態は、脂肪族基を形成する炭素原子の一部または可能な限りの炭素原子が分岐していても良く、例えば、2−ヘキシルデシル基、2,2,4,4,7−ペンタメチルオクチル基、8−エチル−2,2,4,4−テトラメチルデシル基、オキソアルキル基(ノルマルアルキル基に分岐としてメチル基が3つ結合したものの混合物)等が挙げられる。また、脂肪族基を形成する水素原子がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)で置換されていても良いし、酸素原子等の2価の基が途中に入っていても良い。さらに、Jを介して一般式(1)を構成単位とするポリマーの形態であってもよい。Rとして好ましい炭素数はC11以上であり、より好ましくはC12以上である。Rとして好ましい分岐形態は分岐がより多い脂肪族基であり、オキソアルキル基が特に好ましい。
一般式(1)中、Lは2価の基を表わし、例えば−COO−、−CHR−、−O−、−CO−、−OCOO−、−CONR−、−NRCONR−、−SO−、−SONR−、−S−が挙げられる。R、Rは水素原子、又はアルキル基を表わす。なお、上記の結合の方向は特に限定されず、どちらの方向でも良い。Lとして好ましくは、−COO−、−CHR−、−O−、−CO−、−COO−であり、特に好ましくは−COO−、−O−である。上記の結合の方向は特に限定されず、どちらの方向でも良い。
一般式(1)中のJは、連結基を表わす。Jは、LとAとを連結する基であれば良く、特に限定されるものではない。L、J、Aの結合様式の例としては、以下のものを挙げることができる。また、一般式(1)中、nは1〜6の整数を表わし、mは1〜3の整数を表わす。一般式(1)の中で、nは2〜6であるものがより好ましく、mは1であるものがより好ましい。
一般式(1)で表わされる化合物は、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、もしくはそれらの酸無水物等を素に、一般的なエステル化、スルホン化等で合成することができる。なお、化学式中の(oxo)は、ノルマルアルキル基に分岐としてメチル基が3つ結合したものの混合物を意味している。
一般式(1)で表される化合物であり、本発明で好適に用いられるものの具体例を以下に示す。
Figure 2008155509
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Figure 2008155509
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上記の化合物は、水溶液の全量に対して0.001重量%以上5重量%以下で含ませることが好ましい。より好ましくは0.005重量%以上1重量%以下とする。また、水溶液には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、酢酸エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル等)等の溶剤を含有させることが好ましい。これにより、フィルム製品17を膨潤又は溶解させる効果が向上される。水溶液の中に含まれる溶剤は、水溶液の全量に対して1重量%以上50重量%以下となるよう含ませることが好ましい。より好ましくは1重量%以上30重量%以下である。
水溶液には酵素を添加させても良い。酵素としては、例えば、リパーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ等が挙げられる。酵素は、単独でも良いし、併用させても良い。酵素の添加量は、水溶液の全量に対して0.001重量%以上20重量%以下とすることが好ましい。なお、水溶液のpHは各酵素の機能が発現されるpHに調整する。
温水洗浄工程13では、膨潤フィルム19を温水で洗浄する。これにより、膨潤フィルム19に付着していた水溶液を取り除くことができる。また、膨潤し、軟化状態にある膨潤フィルム19の中から、高級脂肪酸エステル等の添加剤をはじめとする異物を効果的に取り除くことができる。異物が取り除かれた膨潤フィルム19は、回収物20として回収される。その一方で、洗浄に使用した温水は廃棄物21として捨てれば良い。なお、温水による洗浄方法は特に限定されず、例えば、膨潤フィルム19を温水に浸漬させる方法や、膨潤フィルム19の表面に温水を吹き付ける方法等が挙げられる。ここで温水の温度は、30℃以上100℃以下とする。より好ましくは温水が50℃以上100℃以下であり、特に好ましくは85℃以上95℃以下である。ここで、温水が30℃未満では、異物を取り除く効果が弱いので不適である。なお、水溶液や異物を除去する十分な効果を得るには、温水に接触させる時間を2分以上10分以下とすることが好ましい。
溶剤処理工程14では、所定の溶剤に回収物20を接触させる。溶剤は、水と混ざりやすい尺度を意味する親和性を有する第1化合物を含むものが好適に使用され、その親和性は25℃の水に対して25重量%以上が混ざる程度が好ましい。第1化合物としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、ブチルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、酢酸エステル(メチルアセテート、エチルアセテート等)が挙げられる。この第1化合物は、単体のみを使用しても良いし、複数を併用しても良いが、アルコール類やケトン類、及びその混合液が好ましい。中でも、メタノール、エタノール、アセトンを用いることが好ましい。また、第1化合物は、単体又は水と混合させた混合液として使用する。水と混合する場合には、第1化合物の濃度を10重量%以上50重量%以下とする。より好ましくは、20重量%以上50重量%以下であり、特に好ましくは40重量%以上50重量%以下である。このような溶剤で回収物20を洗浄すると、高級脂肪酸エステルを含む異物をより取り除くことができ、選択的にセルロースエステルを回収することができる。
溶剤としては、第1化合物の他に、第1化合物よりも親水性が低い第2化合物を含むものも好適に用いることができる。例えば、第1化合物をメタノールとし、メタノールより親水性が低いアセトンを第2化合物とする形態が挙げられる。この場合、第1化合物及び第2化合物は水と混合させて用いることが好ましい。水に対する両化合物の含まれる割合は60重量%以上75量%以下とする。より好ましくは70重量%以上75重量%以下である。ここで、上記の化合物の含まれる割合が75重量%を超えると、セルロースエステルが化合物の影響を受けて変質するおそれがある。その一方で、60重量%よりも少ないと異物を取り除く効果が弱い。
上記の一連の工程を経た回収物20、すなわちセルロースエステル23は異物が十分に取り除かれており高純度であるため、ドープの原料として再利用することが可能である。セルロースエステル23の純度は、目視により観察されるセルロースエステル23の白濁具合や光透過率の測定値、回収したセルロースエステルと溶剤とを混合した混合物を顕微鏡或いは目視により観察した際に確認されるゲル状物の存在から知ることができる。上述した混合物の調製に好適に使用される溶剤としては、例えば、ジクロロメタン:メタノール=9:1を混合したものが挙げられる。光透過率を測定する際には、光透過率を測定するための公知の装置から適宜選択したものを用いれば良い。更には、回収したセルロースエステルの表面における水接触角の測定値から、高級脂肪酸エステルが残存している程度を把握することも可能である。また、NMRやGC−MS等の分析機器により成分分析を行なうことからもセルロースエステルの純度を把握することができる。なお、取り出された異物を含む溶剤は廃棄物24として捨てられる。
膨潤処理に供するフィルム製品17は、フィルム製品17を構成する機能層を膨潤又は溶解することを目的として、所定の前処理が施されることが好ましい。前処理は、例えば、溶剤処理、ゼラチン含有層処理、セルラーゼ処理等が挙げられ、対象となる機能層の種類に応じて適宜選択する。
前処理のうち溶剤処理は、アルカリ又は酸性の溶剤にフィルム製品17を接触させることで、フィルム製品17を膨潤又は溶解させるものである。溶剤を接触させる方法は特に限定されず、フィルム製品17に対して直接的に吹き付けても良いし、浸漬させても良い。フィルム製品17をより良く膨潤又は溶解させるには浸漬することが好ましい。これにより、フィルム製品17は軟化するので、その内部から添加剤等の異物が容易に取り出される。より優れた膨潤効果を得るには、溶剤の温度を25℃以上60℃以下とし、この中にフィルム製品17を浸漬させた状態で、30分以上100分以下の間で攪拌することが好ましい。なお、溶剤の温度は特に30℃以上50℃以下とすることが好ましい。
ゼラチン含有層処理は、タンパク質分解酵素を利用することでゼラチン含有層を分解させる。タンパク質分解酵素としてはプロテアーゼが好適に用いられ、乳剤層のようなゼラチン含有層が形成されたフィルム製品17を分解させるのに優れた効果を発揮する。タンパク質分解酵素の種類は特に限定されず、公知のものを使用することができる。
前処理は、単に一種類としても良いし、複数を組み合わせても良い。複数の処理を行う場合には、他の処理の影響を受けることなく各処理の高い効果を得るために、各処理終了後のフィルム製品17を水洗いすることが好ましい。前処理は、処理を施さないものに比べてフィルム製品17を軟化させることができるので異物を取り出しやすくなる。
前処理で用いる溶液には、界面活性剤を添加させても良い。界面活性剤は特に限定されず、公知のものを使用することができる。中でもノニオン性界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールエーテル系の界面活性剤、具体的には高級アルコールのポリエチレングリコールエーテル、アルキルフェノールのポリエチレングリコールエーテルを挙げることができる。界面活性剤は、処理で使用する水溶液或いは、処理後の洗浄に用いる洗浄液に含有させて使用する。各液に対する界面活性剤の添加量は、0.001重量%〜5重量%とすることが好ましい。
次に、本発明をフィルム製品の製造に適用させた態様を例に挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、ここに示す態様はあくまで本発明に係る一例であり、本発明を限定するものではない。
図2に示すように、本実施形態で用いるフィルム製造設備30は、製造ライン31と回収ライン32とから構成されている。製造ライン31は、セルロースエステルフィルムの表面にバッキング層等の機能層を備えたフィルム製品17を製造するためのものであり、回収ライン32は、フィルム製品17を製造する途中で生成するフィルムの切断片34や製造したものの品質が劣るために製品として使用することができない不良品35からTACを回収するためのものである。なお、本実施形態ではセルロースエステルとしてTACを使用する。
〔製造ライン〕
製造ライン31は、ドープ37を用いて流延膜38を形成するための流延室39と、流延膜38から得られる溶剤を含んだ湿潤フィルム41を乾燥させるための渡り部42及びテンタ式乾燥機43と、湿潤フィルム41の両側端部を切除するための耳切装置45と、湿潤フィルム41の乾燥を十分に進めてTACフィルム47とするための乾燥機48と、完成したTACフィルム47に機能層を形成してフィルム製品17とするための塗布乾燥装置49とを備える。
流延室39は、TAC51と溶剤52と添加剤53との混合物であるドープ37を流延して流延膜38を形成するための支持体54と、ドープ37の吐出口である流延ダイ55と、支持体54を巻き掛ける一対のローラ56a、56bと、支持体54から剥ぎ取られる流延膜38を支持するための剥取ローラ57とを備える。また、流延室39の外部には、流延室39の内部の温度を調節するための温度コントローラ(図示しない)が取り付けられている。
渡り部42には、湿潤フィルム41を支持しながら搬送するための複数の搬送ローラが設置されている。また、この搬送ローラの上方には、所望の温度に調整した乾燥風を湿潤フィルム41に吹き付けるための送風装置59が設置されている。テンタ式乾燥機43の内部には、湿潤フィルム41の両側端部を把持するための把持手段である複数のクリップ43aと乾燥装置(図示しない)とが備えられている。
耳切装置45には、湿潤フィルム41の両側端部を切断するためのカッタ(図示しない)が備えられている。また、耳切装置45には、切除した湿潤フィルム41をチップ状に粉砕して切断片34とするためのクラッシャ60が接続されている。
乾燥機48の内部には、湿潤フィルム41を巻き掛けながら搬送するための複数のローラ62と、湿潤フィルム41の乾燥を十分に進める上で乾燥風を供給するための送風装置(図示しない)とが設置されている。また、塗布乾燥装置49は、機能層を形成させるための液を塗布する塗布部と、塗布した液を乾燥させて各種層を形成させるための乾燥部とから構成されている。
〔回収ライン〕
回収ライン32は、不良品35を所定の溶剤で処理して処理済フィルム69とするための前処理装置70と、切断片34及び処理済フィルム69を膨潤処理するための水溶液が貯留されている膨潤処理タンク71と、膨潤フィルム19を洗浄するための温水が貯留されている温水洗浄タンク72と、回収物20を洗浄するための溶剤が貯留されている溶剤洗浄タンク73とが備えられている。
膨潤処理タンク71は、水溶液を貯留するタンク75と、水溶液を加熱又は温度を保持するためにタンク75の外周を包み込むように取り付けられているジャケット76と、モータ(図示しない)により回転する攪拌機77とを備える。なお、本実施形態では、この膨潤処理タンク71と同形のものを温水洗浄タンク72及び溶剤洗浄タンク73として使用するので、図面上では各部材に符号を付さず、かつ詳細の説明は省略する。また、回収ライン32の任意の箇所にはバルブV1〜V5が設置されており、所望の液や廃棄物等の流れが調節されるが、バルブの個数や設置箇所は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜設置すれば良い。
次に、上記のフィルム製造設備30の作用について説明する。ローラ56a、56bの駆動により無端で走行させた支持体54の上にドープ37を流延して、流延膜38を形成させる。支持体54は特に限定されるものではなく、例えば、流延バンドや流延ドラムが挙げられる。その材質も特に限定されるものではないが、耐熱性や耐久性等の観点から、ステンレス製のものを使用することが好ましい。支持体54の走行に伴って流延室39の内部を移動する流延膜38に対して、流延膜38の搬送路近傍に設置させた送風装置や加熱装置(いずれも図示しない)等の乾燥手段により乾燥風を供給する。これにより、流延膜38の内部からは溶剤が蒸発して、乾燥が進行する。自己支持性を持つまで乾燥を進行させた流延膜38を、剥取ローラ57で支持しながら支持体54より剥ぎ取り湿潤フィルム41を形成させる。
渡り部42では、複数の搬送ローラで湿潤フィルム41を支持しながら搬送する間に、送風装置59から乾燥風を供給して乾燥を促進させる。テンタ式乾燥機43に送られた湿潤フィルム41は、その入口付近で両側端部がクリップにより把持された後、固定された状態で搬送される間に、送風装置(図示しない)から供給される乾燥風により乾燥が促進される。このように湿潤フィルム41の両側端部を固定しながら乾燥すると、収縮等による変形を防止することができるので、湿潤フィルム41の表面にしわやつれ等を発生させずに乾燥を進めることができる。また、テンタ式乾燥機43では、対面するクリップ同士の間隔を拡げて湿潤フィルム41を幅方向に延伸させることにより、その分子配向を制御する。これにより、高レタデーション値を示すTACフィルム47が得られる。
耳切装置45に送られた湿潤フィルム41は、クリップの把持跡が付いた両側端部が切断される。乾燥機48では、湿潤フィルム41は複数のローラ62に巻き掛けられながら搬送される間に、送風装置(図示しない)から供給される乾燥風により乾燥が十分に促進されてTACフィルム47とされる。この後、図示しない巻取機によりロール状に巻き取られ、TACフィルム47のロールが得られる。
塗布乾燥装置49に送られたTACフィルム47は、その表面にバッキング層をはじめとする機能層が設けられる。以上により、フィルム製品17が完成する。本実施形態では、TACフィルム47の一面にハロゲン化乳剤層を設け、かつその反対側の面にバッキング層を設けることで写真感光用途のフィルム製品17を製造する(図3参照)。バッキング層は、潤滑剤として高級脂肪酸エステルを添加させた液を用いて形成させる。なお、機能層を塗布する方法や乾燥する方法は特に限定されず、公知の方法を適宜選択して使用すれば良い。例えば、塗布方法は、スライドホッパー塗布装置やカーテン塗布装置を利用したものが挙げられる。
TACフィルム47の製造中に生成した湿潤フィルム41の切断片34や品質が製品レベルに満たない不良品35は回収ライン32に送られ、ここでセルロースエステルの回収が行われる。回収ライン32に供する切断片34及び不良品35は、溶剤等で処理し易くかつ処理による高い効果を得るための、予めチップ状に粉砕しておくことが好ましい。チップは、最も大きい1片の長さが0.1cm以上10cm以下であるものが好ましく、より好ましくは0.5cm以上3cm以下である。粉砕方法は特に限定されず、本実施形態では、前処理装置70の前にクラッシャ(図示しない)を設けて不良品35を粉砕する。
前処理装置70に送られた不良品35には、機能層の種類に応じた前処理が施される。本実施形態では、ゼラチン含有層であるハロゲン化乳剤層を分解させるために、不良品35はタンパク質分解酵素のプロテアーゼで前処理される。このプロテアーゼは0.001重量%以上20重量%以下の水溶液として使用され、プロテアーゼが最も機能するpHに調整される。水溶液の温度は、少なくとも室温以上70℃以下とする。室温が30℃以下の場合には、30℃以上60℃以下とすることが特に好ましい。また、不良品35であるチップを浸漬させた液は分解処理を効率良くかつ効果的に行うために、10分以上200分以下で攪拌させる。
前処理が施された処理済フィルム69や切断片34は、所定の範囲で高温に保持された水溶液71aを貯留する膨潤処理タンク71に送られ、攪拌機77で常時攪拌されることで、膨潤処理される。本実施形態では、水溶液71aとして化学式5に示すK−1(パイオニン A−51−TS 竹本油脂(株)製)を使用する。処理時間は45分以上200分以下とすることが好ましい。なお、図2では、切断片34及び処理済フィルム69を併せてチップ80として示す。
膨潤処理タンク71には、水溶液71aが貯留された水溶液タンク82が接続されており、バルブV1の開閉により水溶液タンク82から膨潤処理タンク71に向かって適宜適量の水溶液71aが送られる仕組みになっている。膨潤処理の終了時には、膨潤処理タンク71に備えられた廃棄弁(図示しない)からタンクの外へ、使用済みの水溶液71aが廃棄される。また、膨潤処理タンク71aの中には、水溶液タンク82から適量の新しい水溶液71aが送られる。これにより、新しい水溶液71aにより繰返し膨潤処理を行なうことができる。
温水洗浄タンク72に送られた膨潤フィルム19は、所定の温度の温水に浸漬され、攪拌されることにより、先ほど付着した水溶液と、その内部に含まれていた異物が取り除かれる。温水洗浄タンク72には、温水を貯留する温水タンク90が接続されており、膨潤フィルム19の洗浄が終了すると、バルブV4の開閉によりタンクの外へ使用済みの温水が廃棄物21として捨てられた後に、温水タンク90から新しい温水が適宜適量送られる仕組みになっているので、新しい温水により、繰返し温水洗浄を行うことができる。
温水洗浄タンク72で洗浄後に回収された回収物20は溶剤処理タンク90に送られる。溶剤処理タンク90では、回収物20を浸漬させた溶剤が攪拌され、回収物20の中に残存する異物がよりいっそう取り除かれる。本実施形態では、溶剤として、アセトンとメタノールと水とを混合させた混合溶剤を使用する。溶剤処理が終了すると、溶剤処理タンク73から廃棄弁(図示しない)を通じて使用済みの溶剤がタンク外に廃棄される。なお、温水洗浄タンク72には、溶剤を貯留する溶剤タンク91からバルブV3の開閉により適量の溶剤が送られるため、新しい溶剤で繰返し洗浄処理を行なうことができる。洗浄後の回収物20は温風を供給する等して乾燥すれば、高純度のセルロースエステルであるからドープ37の原料として再利用することが可能である。
各処理工程を繰返し行なうことで、高級脂肪酸エステルのような取り出しにくい添加剤も効果的に取り除くことができる。各工程を繰り返す数や、処理する順序は特に限定されず、例えば、フィルム製品を膨潤処理した後に、温水で洗浄させるとした一連の工程を繰返し行った後に、溶剤洗浄を行う方法が挙げられる。
また、個別のタンクを使用して各処理を別々に行なう必要はなく、1つのタンクの中で使用する溶液を適宜変更しながら各工程を行なっても良い。一例を挙げると、廃棄弁を備え、かつ、回収処理に必要な所定の溶剤や温水等を供給することができる機能を備えた1台のタンクを用意し、先ず、この中に水溶液を注入する。そして、この水溶液の中にチップ状のフィルム製品を投入した後、攪拌させてフィルム製品を膨潤させてから、廃棄弁を通じてタンクの外へ使用済みの水溶液を廃棄する。続けて、膨潤フィルムだけが残るタンクの中に温水を注入してこれを洗浄した後に、温水を廃棄する。最後に、所定の溶剤を投入して回収物を洗浄する。
以下、本発明に係る実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、ここに示す実施例は、あくまで本発明に係る一例であり、本発明を限定するものではない。したがって、下記の実施例における材料、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。なお、各工程等の詳細は実施例1で説明し、その他の例では、実施例1と異なる箇所のみ記載する。
実施例1では、図2に示すフィルム製造設備30を使用して、TACフィルムの表面に下塗り層及びハロゲン化乳剤層をこの順で積層させた機能層を設けると共に、この機能層とは反対の面に、高級脂肪酸エステルを含むバッキング層を設けてフィルム製品17を製造した。
完成したフィルム製品17を裁断して、0.5cm〜2cm角のチップとし、下記の手順でこのチップに対し、ハロゲン化乳剤層を膨潤・分解させるための前処理を行なった。
〔前処理〕
用意した1000gのチップを所定の混合溶液の中に投入し、これを50℃に保温した状態で約10分間浸漬させた後、プロテアーゼを0.2g添加して55℃で約20分間攪拌させた。上記の混合溶液は、50℃の温水を3リットルと、炭酸ナトリウムを1.5gと、ポリエチレングリコールエーテル((株)花王製 エマルゲン106(商品名))を0.1gとを加えたものである。
〔膨潤処理〕
化学式5に示したK−1(パイオニン A−51−TS 竹本油脂(株))を15g用意し、これを水と混合して、3リットルの水溶液を用意した。前処理を施したチップを上記の水溶液に浸漬させた後、液温を90℃に保持しながら45分間攪拌させてチップを膨潤させた。
〔温水洗浄〕
90℃に保温した温水にチップを浸漬させた後、これを2分間攪拌させた。本実施例では、使用済み温水を廃棄後に、新しい温水を使用して、上記の条件で浸漬・攪拌を2回繰り返すことで、合計3回の温水洗浄を行なった。
〔溶剤洗浄〕
アセトン:メタノール:水とを1:2:1の割合になるように混合した混合溶剤に温水洗浄後のチップを浸漬させて、これを50分間攪拌することにより溶剤洗浄した。
〔回収TACの品質評価〕
回収したTACの品質を評価するために、高級脂肪酸エステルの除去率及び、回収したTACを使用して調製したドープを流延した時の、ドープの面状を観察した。各評価の詳細は下記の通りである。なお、本評価は、実施例1〜3及び比較例1〜3全てにおいて同一に行なった。
〔高級脂肪酸エステルの除去率〕
下記の方法により、回収したTACの高級脂肪酸エステルの除去率を求めた。
(1)回収したTACチップを5g用意し、これを50mlのヘキサンで還流させた。還流させた液を蒸発乾固させた。
(2)重クロロホルムを1ml使用して、(2)の乾固物を溶解させた。
(3)(2)で得られる溶解液をサンプルとして、これをNMR測定することにより、塩化メチレンのピーク面積を1としたときの高級脂肪酸エステルのピーク面積の相対強度比A1を算出した。
(4)上記(1)〜(3)の方法により、未処理のフィルム製品の高級脂肪酸エステルの相対強度比A2を求めた。そして、下記の式により高級脂肪酸エステルの除去率(%)を求めた。
高級脂肪酸エステルの除去率(%)={(A2−A1)/A2}×100
〔ドープの流延面状〕
回収したTACを原料として調製したドープを支持体上に流延したときの面状を目視により観察することで、ドープの面状を評価した。ここで、流延するドープの面状にスジ等が生じることなく非常に安定した状態を5とし、若干のスジが確認されたが、製造上問題とならないレベルを4、スジが確認され製造上問題となる場合を3、それ以降、スジの多さに従い、2、1と5段階評価とした。
実施例2では、実施例1と同じチップを使用し、膨潤処理、温水洗浄、溶剤洗浄からなる一連の工程を、順序を変えることなく繰り返し2回行った以外は、全て実施例1と同じ条件でTACを回収した。
実施例3では、膨潤処理に供する水溶液としてK−1よりも分子量が大きいK−3(化学式5を参照)とした以外は、全て実施例1と同じ条件でTACを回収した。
〔比較例1〕
比較例1では、溶剤洗浄せずに膨潤処理の後に温水洗浄したものを回収物とした以外は、全て実施例1と同じ条件で作業を行った。
〔比較例2〕
比較例2では、膨潤処理せずに、温水洗浄後に溶剤洗浄したものを回収物とした以外は、全て実施例1と同じ条件で作業を行った。
〔比較例3〕
比較例3では、膨潤処理、温水洗浄、溶剤洗浄のいずれの処理も行なわずに、実施例1で使用したチップに関し、TACの品質評価を行なった。
実施例1及びその他の実施例、並びに比較例における回収工程での処理条件及び回収したTACに係る評価結果を表1に纏めて示す。
Figure 2008155509
以上より、セルロースアシレートフィルム、及びこのフィルムとは異なる層、例えば、高級脂肪酸エステルを含む機能層を有する複層フィルムを、所定の水溶液で膨潤させた後に温水で洗浄し、更に、溶剤で洗浄すると、セルロースアシレートフィルムに浸透しているおそれがある高級脂肪酸エステルのような添加剤も効率良くかつ効果的に取り除き、高純度のセルロースエステルを回収することができることを確認した。
本発明に係るセルロースエステルの回収工程を表す工程図である。 本発明に係るフィルム製造設備の一例の概略図である。 本発明に係るフィルム製品の一例として挙げられる写真感光用フィルムの断面図である。
符号の説明
10 セルロースエステル回収工程
12 膨潤処理工程
13 温水洗浄工程
14 溶剤洗浄工程
17 フィルム製品
20 回収物
23 セルロースエステル
30 フィルム製造設備
31 製造ライン
32 回収ライン

Claims (9)

  1. セルロースエステル層、及び前記セルロースエステル層とは異なる層を有する複層フィルムからセルロースエステルを回収する方法において、
    下記一般式(1)の化合物を含む水溶液に前記複層フィルムを接触させて溶解又は膨潤させる工程と、
    前記溶解又は膨潤させた前記複層フィルムを温水で洗浄する工程と、
    前記洗浄後の前記複層フィルムを溶剤に浸漬させることにより、前記複層フィルムの中に含まれる前記セルロースエステル以外の物質を取り除く工程と、
    を有することを特徴とするセルロースエステルの回収方法。
    Figure 2008155509
    一般式(1)中のAはスルホン酸、或いはリン酸から選ばれる酸、又はその金属塩である。また、Rは少なくとも炭素数が10以上の分岐脂肪族基であり、Lは2価の基であり、JはR−LとAとを連結するn+m価の連結基である。そして、nは1から6の整数であり、mは1から3の整数である。nが2以上のとき、複数のAは同じであっても異なっていても良い。但し、R(nが2以上のときは、全てのRの総和)の総炭素数は20以上である。
  2. 前記異なる層は、前記セルロースエステル層の少なくとも1面に配され、かつ高級脂肪酸エステルを含むことを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルの回収方法。
  3. 前記セルロースエステルは、セルロースアシレートであることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースエステルの回収方法。
  4. 前記溶剤は、水に対して親和性を示す第1化合物を含むことを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つに記載のセルロースエステルの回収方法。
  5. 前記溶剤は、前記第1化合物の他に前記第1化合物よりも親和性が低い第2化合物を含み、
    水と前記第1化合物と前記第2化合物とを混合させたものを前記溶剤とするとき、
    前記水の全量に対する前記第1化合物と前記第2化合物との含まれる割合を60重量%以上75重量%以下とすることを特徴とする請求項4に記載のセルロースエステルの回収方法。
  6. 前記水溶液は、前記一般式(1)の化合物を0.005重量%以上1重量%以下の割合で含むことを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つに記載のセルロースエステルの回収方法。
  7. 前記水溶液の温度を、80℃以上100℃以下とすることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1つに記載のセルロースエステルの回収方法。
  8. 前記温水の温度を、30℃以上100℃以下とすることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1つに記載のセルロースエステルの回収方法。
  9. 前記いずれの工程を少なくともそれぞれ1回以上行なうことを特徴とする請求項1ないし8いずれか1つに記載のセルロースエステルの回収方法。
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