JPH07286068A - セルロースエステルフイルム、その製造方法およびセルロースエステルの再利用方法 - Google Patents

セルロースエステルフイルム、その製造方法およびセルロースエステルの再利用方法

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JPH07286068A
JPH07286068A JP10199394A JP10199394A JPH07286068A JP H07286068 A JPH07286068 A JP H07286068A JP 10199394 A JP10199394 A JP 10199394A JP 10199394 A JP10199394 A JP 10199394A JP H07286068 A JPH07286068 A JP H07286068A
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film
cellulose
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acid ester
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JP10199394A
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English (en)
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Keisuke Shiba
惠輔 柴
Tsutomu Nishina
勉 仁科
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PANATSUKU KOGYO KK
Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
PANATSUKU KOGYO KK
Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 保存安定性が著しく向上したセルロースエス
テルフイルムおよびその製造方法、さらにセルロースエ
ステルの成形体を再利用してセルロースエステルフイル
ムを製造する方法を提供する。 【構成】 リン酸エステル系可塑剤を含むセルロースの
低級脂肪酸エステルのフイルムであって、さらに0.1
乃至10重量%の脂肪族エポキシ化合物および0.01
乃至5重量%の特定の脂肪族有機塩基を含むセルロース
エステルフイルムおよびその製造方法、並びにセルロー
スエステルの成形体を再利用して上記セルロースエステ
ルフイルムを製造する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、リン酸エステル系可塑
剤を含むセルロースの低級脂肪酸エステルのフイルムに
関する。また、本発明は、そのセルロースエステルフイ
ルムの製造方法にも関する。さらに、本発明は、セルロ
ースエステルを再利用する方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】セルロースエステルフイルムは、主に記
録材料や光学材料の支持体として用いられている。セル
ロースエステルとしては、古くは、ニトロセルロース、
すなわちセルロイドが代表的であった。しかし、セルロ
イドは引火燃焼性を有しているため、最近では、ほとん
ど利用されなくなった。現在では、その代わりに耐燃性
が優れているセルロースの低級脂肪酸エステルが主に用
いられている。セルロースの低級脂肪酸エステルは有機
溶剤に溶解してドープを形成する。そして、そのドープ
を支持体上に流延し、有機溶剤を蒸発させてセルロース
エステルフイルムを製造する。また、セルロースの低級
脂肪酸エステルを基材とする成形体を再利用して、フイ
ルムを製造することもできる。再利用の場合は、有機物
から成る異物を除去するために、成形体を過酸化物また
は酸化ハロゲン化合物の水溶液に浸漬する処理が有効で
ある。この処理については、米国特許2688614号
明細書、英国特許1087038号明細書、リサーチ・
ディスクロージャー(RD)−12629号およびRD
−19634号に記載がある。
【0003】セルロースの低級脂肪酸エステルから製造
したフイルムは、そのままでは、強度が弱いという問題
がある。この強度を改善するために、可塑剤をフイルム
に添加する。フイルム用の可塑剤としては、リン酸エス
テル、特にトリフェニルホスフェートが代表的である。
セルロースエステルフイルムには、強度とは別に保存性
の問題もある。保存性を改良するために、様々な添加剤
が提案されている。例えば、米国特許2670302
号、同2917398号、同3723147号各明細
書、および特開昭60−235852号公報には、エポ
キシ化合物を安定化剤として添加することが記載されて
いる。上記各明細書および公報には、様々な種類のエポ
キシ化合物の開示がある。また、特開平5−19478
9号公報には、保存性を改良するため、有機塩基をセル
ロースエステルに添加するフイルムの劣化防止法が記載
されている。上記公報には、様々な種類の有機塩基の開
示がある。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】本発明者が、以上の
従来技術に記載されたセルロースエステルフイルムの安
定化方法(劣化防止法)を検討したところ、満足できる
結果が得られていないことが判明した。本発明者の研究
によると、セルロースエステルフイルムの劣化の原因と
して、可塑剤として使用するリン酸エステルの分解が考
えられる。可塑剤が分解すると、フイルムの物性が著し
く低下する。従来技術の安定化方法では、このようなフ
イルムの物性の低下を充分に防止することはできなかっ
た。本発明の目的は、保存安定性が著しく向上したセル
ロースエステルフイルムおよびその製造方法を提供する
ことである。さらに本発明の目的は、セルロースエステ
ルの成形体を再利用してセルロースエステルフイルムを
製造する方法を提供することでもある。
【0005】本発明は、リン酸エステル系可塑剤を含む
セルロースの低級脂肪酸エステルのフイルムであって、
さらに0.1乃至10重量%の脂肪族エポキシ化合物お
よび0.01乃至5重量%の下記式(IIa)または(II
b)を有する有機塩基を含むことを特徴とするセルロー
スエステルフイルムを提供するものである。
【0006】
【化4】
【0007】式中、R21、R22、R23、R24、R25、R
26およびR27は、それぞれ、アルキル基、アルケニル
基、アルキニル基またはアラルキル基である。各基は、
置換基を有していてもよい。R21、R22およびR23のう
ちの二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。R
24、R25、R26およびR27のうちの二つの基は互いに結
合して環を形成してもよい。
【0008】また、本発明は、セルロースの低級脂肪酸
エステル、リン酸エステル系可塑剤、0.1乃至10重
量%の脂肪族エポキシ化合物および0.01乃至5重量
%の上記式(IIa)または(IIb)を有する有機塩基を
有機溶剤に溶解してドープを形成する工程;ドープを支
持体上に流延する工程;および有機溶剤を蒸発させる工
程からなることを特徴とするセルロースエステルフイル
ムの製造方法も提供する。
【0009】さらに、本発明は、有機物から成る異物を
含むセルロースの低級脂肪酸エステルを基材とする成形
体を過酸化物または酸化ハロゲン化合物の水溶液に浸漬
し、該異物を成形体から除去する工程;異物を除去した
セルロースの低級脂肪酸エステルの成形体、リン酸エス
テル系可塑剤、0.1乃至10重量%の脂肪族エポキシ
化合物および0.01乃至5重量%の上記式(IIa)ま
たは(IIb)を有する有機塩基を有機溶剤に溶解してド
ープを形成する工程;ドープを支持体上に流延する工
程;および有機溶剤を蒸発させる工程からセルロースエ
ステルフイルムを製造することを特徴とするセルロース
エステルの再利用方法も提供する。
【0010】
【発明の効果】本発明のセルロースエステルフイルム
は、特定のエポキシ化合物と特定の有機塩基を、それぞ
れ特定の量で含むことを特徴とする。エポキシ化合物と
有機塩基は、それぞれセルロースエステルフイルムの安
定化剤として公知である。しかしながら、エポキシ化合
物と有機塩基とを併用することについては、従来技術に
は全く記載されていない。本発明者の研究により、脂肪
族系のエポキシ化合物と脂肪族系の有機塩基を、それぞ
れ特定の量で併用すると、著しい相乗効果が得られるこ
とが判明した。この相乗効果は、上記の特定の化合物を
特定の量で組み合わせた場合に限られる。これらの化合
物の単独使用や、他の化合物との組み合わせ、あるいは
他の使用量範囲では、満足できる効果は得られない。例
えば、エポキシ化合物または有機塩基を単独で少量使用
すると、安定化効果は不充分である。そして、充分な効
果を得るために多量に使用すると、白ペンキ塗膜を黄変
させる傾向がある。またフイルム自体がもろく、ヒビわ
れや可塑剤の滲みによる不透明化のような弊害が生じ
る。
【0011】脂肪族エポキシ化合物と脂肪族系の有機塩
基の相乗効果の結果として、本発明のセルロースエステ
ルフイルムでは、保存安定性が著しく向上する。本発明
は、セルロースエステルの成形体を再利用してセルロー
スエステルフイルムを製造する場合に、特に有効であ
る。再利用では、成形体を過酸化物または酸化ハロゲン
化合物の水溶液に浸漬する処理において、セルロースエ
ステルが劣化する場合もある。上記エポキシ化合物と有
機塩基との組み合わせは、再利用の処理において劣化し
たセルロースエステルを修復する作用も有する。
【0012】
【発明の詳細な記述】 (1)セルロースエステルフイルム 本発明のセルロースエステルフイルムは、写真フイルム
や動画用フイルムのような記録材料あるいは、偏光フイ
ルムのような光学材料の支持体として特に有効である。
さらに、偏光フイルムや動画用フイルムの製造において
は、本発明の効果が顕著である。偏光フイルムの場合に
は、得られたフイルムと、ポリエン−二色性染料系偏光
フイルムに粘着剤を用いて貼り合わせて使用する(特開
昭61−243407号公報記載)。偏光フイルムは、
経時または強制劣化試験(例えば、85℃、90%相対
湿度における500時間経時)を行ない評価できる。さ
らに、得られたフイルム2枚を、所定粘着剤に用いて貼
り合わせて強制劣化試験を行ない、その変色や寸法収縮
度を試験することができる。動画用フイルムの場合に
は、得られたフイルムに、アクリレート系樹脂を用いた
白色ペンキを充分に塗膜して使用する。塗膜後に、強制
劣化試験(例えば80℃で20時間経時を行ないその変
色の度合いを、目視により評価することができる。セル
ロースエステルフイルムの厚さは10μm乃至500μ
mであることが好ましく、50μm乃至200μmであ
ることが特に好ましい。以下、各成分について順次説明
する。
【0013】[エポキシ化合物]本明細書において、エ
ポキシ化合物とは、一般的な定義と同様に、炭素鎖によ
って結合されている2原子の炭素と結合する−O−原子
団を有する化合物を意味する。すなわち、エポキシ化合
物は、炭素原子と酸素原子からなる複素環を有する。本
発明においては、脂肪族エポキシ化合物を用いる。脂肪
族エポキシ化合物とは、上記炭素原子と酸素原子からな
る複素環の置換基が脂肪族基であることを意味する。エ
ポキシ化合物の複素環の構成原子数は、6員以下である
ことが好ましく、3員であることが特に好ましい。複素
環の炭素原子は飽和していることが好ましい。複素環に
は、脂肪族環が縮合していてもよい。ただし、縮合する
脂肪族環は、飽和していることが好ましい。エポキシ化
合物は複数のエポキシ基を有していてもよい。また、脂
肪族基は、さらに置換基を有していてもよい。ただし、
エポキシ化合物を構成する原子は、炭素、酸素および水
素のみであることが好ましい。好ましい脂肪族エポキシ
化合物を下記式(Ia)および(Ib)で示す。
【0014】
【化5】
【0015】式中、R11はn価の脂肪族炭化水素基であ
る。nは1、2または3である。R12およびR13は、そ
れぞれアルキル基である。R11の脂肪族炭化水素基は、
直鎖状でも分岐状でもあるいは環状でもよい。不飽和脂
肪族炭化水素基(アルケニル、アルキニル)よりも飽和
脂肪族炭化水素基(アルキル)の方が好ましい。炭化水
素の炭素原子数は1乃至12であることが好ましい。脂
肪族炭化水素基は置換基を有してもよい。置換基の例と
しては、ハロゲン原子およびアルコキシ基を挙げること
ができる。nは1または2であることが好ましい。R12
およびR13のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもある
いは環状でもよい。アルキル基の炭素原子数は、20以
下であることが好ましく、1乃至14であることがさら
に好ましく、4乃至12であることが最も好ましい。ア
ルキル基は置換基を有してもよい。置換基の例として
は、ハロゲン原子およびアルコキシ基を挙げることがで
きる。特に好ましい脂肪族エポキシ化合物の例を以下に
示す。
【0016】
【化6】
【0017】
【化7】
【0018】脂肪族エポキシ化合物は、セルロースエス
テルフイルム中に0.1乃至10重量%の範囲で含まれ
る。1乃至5重量%の範囲であることがさらに好まし
い。
【0019】[有機塩基]本発明に用いる有機塩基は、
下記式(IIa)または(IIb)で表される。すなわち、
式(IIa)で表される脂肪族3級アミンまたは式(II
b)で表されるヒドラジンの脂肪族誘導体(ヒドラジン
の水素原子をすべて脂肪族基により置換)を用いる。
【0020】
【化8】
【0021】式中、R21、R22、R23、R24、R25、R
26およびR27は、それぞれ、アルキル基、アルケニル
基、アルキニル基またはアラルキル基である。各基は、
置換基を有していてもよい。R21、R22およびR23のう
ちの二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。R
24、R25、R26およびR27のうちの二つの基は互いに結
合して環を形成してもよい。
【0022】上記アルキル基、アルケニル基、アルキニ
ル基またはアラルキル基は、直鎖状でも分岐状でもある
いは環状でもよい。アルキル基の例としては、メチル、
エチル、プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、オク
チル、ドデシル、オクタデシルを挙げることができる。
アルケニル基の例としては、ビニル、アリル、2−ペン
テニル、シクロヘキセニル、ヘキセニル、ドデセニルお
よびオクタデセニルを挙げることができる。アルキニル
基の例としては、プロピニルおよびヘキサデシニルを挙
げることができる。アラルキル基の例としては、ベンジ
ルおよびt−ブチルベンジルを挙げることができる。ア
ルキル基およびアラルキル基が好ましい。アルキル基、
アルケニル基、アルキニル基およびアラルキル基の炭素
原子数は、20以下であることが好ましく、1乃至14
であることがさらに好ましい。
【0023】本発明に使用する有機塩基は、一般に疎水
性である。有機塩基の水(25℃)に対する溶解度は1
0%以下であることが好ましく、1%以下であることが
さらに好ましい。特に好ましい有機塩基の例を以下に示
す。
【0024】
【化9】
【0025】
【化10】
【0026】有機塩基は、セルロースエステルフイルム
中に0.01乃至5重量%の範囲で含まれる。0.1乃
至0.5重量%の範囲であることがさらに好ましい。有
機塩基を多量に使用すると、フイルムの変色や塗膜
(例、光学フイルムの白ペンキ塗膜)の黄変の原因にな
る。本願発明では、脂肪族エポキシ化合物と有機塩基を
併用することにより相乗効果が得られるため、比較的少
量の使用でも充分な効果が得られる。なお、有機塩基の
使用量は、脂肪族エポキシ化合物の使用量に対して1乃
至75重量%の範囲であることが好ましく、2.5乃至
50重量%の範囲であることがさらに好ましく、5乃至
25重量%の範囲であることが最も好ましい。
【0027】[セルロースエステル]本発明では、セル
ロースの低級脂肪酸エステルからフイルムを製造する。
低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味す
る。炭素原子数は、好ましくは4以下である。セルロー
スの低級脂肪酸エステルの具体例としては、セルロース
アセテートおよびセルロースブチレートを挙げることが
できる。セルロースアセテートはモノ、ジ及びトリアセ
テートを含む。写真フイルムにおいてはセルローストリ
アセテートが一般に使用されている。重合度が250乃
至400、そして結合酢酸量54乃至62%であるセル
ロースアセテートが特に好ましい。セルロースの原料は
木材パルプでもリンターでもよい。また、両者を併用し
てもよい。セルロースの低級アルキルエーテルを50重
量%未満の量で、低級脂肪酸エステルと併用してもよ
い。低級アルキルエーテルの低級アルキルとは炭素原子
数が4以下のアルキル基を意味する。本発明は、製膜用
ドープに用いる有機溶剤(例えばメチレンクロライドと
メタノール(9:1)の混合溶剤)に完全溶解できるよ
うなセルロースプラスチックの複合体(低級脂肪酸エス
テルと低級アルキルエーテルの複合体)に対しても有効
である。
【0028】[リン酸エステル系可塑剤]リン酸系可塑
剤は、既に様々な化合物が知られており、実際に使用さ
れている。代表的なリン酸エステル系可塑剤を下記式
(IIIa)および(IIIb)で示す。
【0029】
【化11】
【0030】式中、R31、R32、R33、R34、R35、R
36およびR37は、それぞれ、アルキル基(シクロアルキ
ル基を含む)、アリール基またはアラルキル基である。
各基は置換基を有していてもよい。アルキル基の炭素数
は1乃至12であることが好ましい。アルキル基の例と
しては、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシルおよ
びオクチルを挙げることができる。アリール基の例とし
てはフェニルを挙げることができる。アラルキル基の例
としてはベンジルを挙げることができる。上記置換基の
例としては、アルキル基(例、メチル)、アリール基
(例、フェニル)、アルコキシ基(例、メトキシ、ブト
キシ)およびアリールオキシ基(例、フェノキシ)を挙
げることができる。
【0031】式(IIIb)において、R38は、アルキレン
基、アリーレン基、スルホニル基およびそれらの組み合
わせから選ばれる2価の連結基である。mは1以上の整
数であり、1乃至10であることが好ましい。
【0032】以下に、式(IIIa)および(IIIb)で表さ
れるリン酸エステル系可塑剤の具体例を示す。
【0033】
【化12】
【0034】
【化13】
【0035】
【化14】
【0036】
【化15】
【0037】
【化16】
【0038】
【化17】
【0039】
【化18】
【0040】
【化19】
【0041】
【化20】
【0042】
【化21】
【0043】
【化22】
【0044】
【化23】
【0045】
【化24】
【0046】
【化25】
【0047】
【化26】
【0048】
【化27】
【0049】
【化28】
【0050】
【化29】
【0051】上記(IIIa−1)のトリフェニルホスフェ
ートが特に好ましい。リン酸エステル系可塑剤に加え
て、低分子量可塑剤または高分子量可塑剤を併用しても
よい。可塑剤の総量は、一般にセルロースエステルに対
して5乃至20重量%の範囲である。
【0052】(2)製造方法 本発明のセルロースエステルフイルムは、セルロースの
低級脂肪酸エステル、リン酸エステル系可塑剤、脂肪族
エポキシ化合物および前記有機塩基を有機溶剤に溶解し
てドープを形成する工程;ドープを支持体上に流延する
工程;および有機溶剤を蒸発させる工程からなる方法に
より製造することができる。
【0053】[ドープ形成]溶剤の例としては、低級脂
肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、シクロ
ヘキサンおよびジオキサンを挙げることができる。低級
脂肪族炭化水素の塩化物の例としては、メチレンクロラ
イドを挙げることができる。低級脂肪族アルコールの例
としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアル
コール、イソプロピルアルコールおよびn−ブタノール
を挙げることができる。メチレンクロライドは、セルロ
ースエステルの良溶媒である(メチレンクロライド中の
セルロースエステルの溶解度は非常に高い)。メチレン
クロライドを70乃至100重量%、その他の溶剤(セ
ルロースエステルの貧溶媒)を30乃至0重量%の組成
で用いることが好ましく、メチレンクロライドを75乃
至87重量%、その他の溶剤を25乃至13重量%の組
成で用いることがさらに好ましい。
【0054】ドープ中のセルロースエステルの濃度は、
10乃至50重量%の範囲であることが好ましい。ドー
プ中の乾燥後に固体となる成分の総量は18乃至35重
量%であることが特に好ましい。ドープの組成は10℃
以下の温度でゲル化が進行するように調整することが好
ましい。ドープのゲル化温度は、主にセルロースエステ
ルの濃度および溶剤組成に依存する。セルロースエステ
ルの濃度または貧溶媒の濃度が高いと、ゲル化温度は高
くなる。セルロースエステルの濃度が35重量%以上と
なると、均質なドープを作成することが困難になる。ま
た、溶剤中の貧溶媒の比率が25重量%以上となるとド
ープに白濁が生じたり、粘度が上昇して取り扱いが困難
となる。ドープ中には、必要に応じて、剥離促進剤(支
持体からフイルムの剥離を促進する)や染料を添加して
もよい。
【0055】ドープは、セルロースエステル、溶剤、リ
ン酸エステル系可塑剤、脂肪族エポキシ化合物および前
記有機塩基を加圧容器に入れて密閉し、加圧下で加熱し
て攪拌することにより得ることができる。上記加熱温度
は、溶媒の常圧における沸点以上で、かつ加圧下で溶媒
が沸騰しない範囲内とする。加熱温度は、通常は、60
℃以上であり、好ましくは80乃至110℃である。こ
のように、加圧してドープを調製すると、常圧における
沸点以上に加熱することができる。また、圧力により沸
騰を抑えて過濃縮状態を生じないようにして、ゲルの発
生を防止することができる。
【0056】各成分は予め粗混合してから加圧容器に入
れてもよい。また、順次加圧容器に投入してもよい。加
圧容器には加熱および攪拌ができるように構成されてい
る必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器
を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気
圧の上昇を利用してもよい。あるいは、加圧容器を密閉
後、各成分を圧力下で添加してもよい。加熱は、加圧容
器の外部より実施することが好ましい。例えば、ジャケ
ットタイプの加熱装置を用いることができる。また、加
圧容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体
を循環させることにより容器全体を加熱することもでき
る。
【0057】加圧容器内部に攪拌翼を設けて、これを用
いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近
に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容
器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好
ましい。加圧容器には、圧力計、温度計等の計器類を設
置してもよい。加圧容器内で各成分を溶剤中に溶解す
る。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、ある
いは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0058】[流延処理]調製したドープは支持体上に
流延する。この支持体としてはバンドまたはドラムを用
いる。流延後、流延部から剥取部までの全域、特に剥取
部の周辺を冷却することが好ましい。剥離に関係するの
は支持体とドープの界面であるから、支持体表面を充分
に冷却することが重要である。冷媒あるいは冷風で直接
冷却することができる。あるいは、パイプ中に冷媒を送
り間接的に冷却してもよい。冷却温度は支持体表面温度
として10℃以下であることが好ましく、5℃以下であ
ることがさらに好ましい。
【0059】[乾燥処理]流延したドープから溶剤を蒸
発させる。特に乾燥風を使用しなくても溶剤を蒸発させ
ることは可能である。乾燥風を用いる方法は、剥離前に
フイルムの表面が乾燥して、剥離後のフイルムの伸びを
防止できる利点が有る。上記の乾燥風を使用する場合、
支持体表面の温度が上昇しないように注意する。特に、
乾燥風によりドープが流延されていない部分の支持体表
面の温度が上昇すると、溶剤がドープ内で気化し、発泡
してしまう。このため、熱を遮蔽する手段を実施するこ
とが好ましい。あるいは、上記のように支持体上のドー
プが流延されている部分を冷却することが好ましい。熱
を遮蔽する手段として、遮風板を用いることができる。
遮風板は、乾燥風が支持体上のドープが流延されている
部分のみを通過し、流延されていない部分には接触しな
いように設ける。カーテンやエアーカーテンを設けて同
様に乾燥風を遮蔽してもよい。遮蔽手段は乾燥風が支持
体(バンド)面を流れる流路全体に設けることが好まし
い。ただし、乾燥が進行すると発泡が生じにくくなるた
め、支持体の後半部分を省略することもできる。また、
熱風の熱量の多くが消費される排風部付近においても省
略することができる。
【0060】(3)再利用方法 セルロースの低級脂肪酸エステルを基材とする成形体を
再利用して、セルロースエステルフイルムを製造するこ
とができる。成形体は、セルロースの低級脂肪酸エステ
ルに加えて、一般に何らかの有機物からなる異物を含
む。本明細書において「異物」とは、表面層のように成
形体の製造において設けられたものと、成形体を使用す
る際に汚染により生じた物質との双方を含む。
【0061】再利用方法は、成形体がポリマー、特にニ
トロセルロースを含む表面層を有する場合に顕著な効果
がある。写真フイルムでは通常、支持体上にニトロセル
ロースやポリアクリレートなどのポリマーを含む下塗り
層(表面層)が設けられている。使用済写真フイルム、
特に映画用フイルムは、長期間使用または保存されたも
のが多い。また、近年では、高温迅速処理のために処理
薬品を水洗不足の状態で使用する。このため、着色汚染
された使用済写真フイルムが多い。合成ポリマーを含む
下塗層をもつフイルムでは、下塗層を通してフイルムベ
ースの内部にまで汚染が浸透しているものが多い。本発
明の再利用方法は、これらのような著しく汚染されたフ
イルムにも有効である。セルロースエステルの成形体を
再利用する場合、成形体を1mm乃至10cm角、好ま
しくは5mmないし3cm角のチップに裁断し、そのチ
ップについて回収処理を実施することが好ましい。
【0062】[酸化漂白処理]酸化漂白処理では、過酸
化物または酸化ハロゲン化合物の水溶液を用いる。もち
ろん、過酸化物および酸化ハロゲン化合物の水溶液を用
いてもよい。過酸化物には、−O−O−結合を持つ酸化
物および多価原子価をもつ金属の酸化物が含まれる。−
O−O−結合を持つ酸化物の例としては、過酸化水素お
よびその塩、オゾン、過硫酸およびその塩および過ホウ
酸塩を挙げることができる。過酸化水素およびその塩が
好ましい。過酸化物は、着色異物を漂白または除去され
やすいように酸化分解するために有効である。多価原子
価をもつ金属の酸化物の例としては、重クロム酸塩、二
酸化マンガン塩および過マンガン酸塩を挙げることがで
きる。特にマンガン化合物が好ましい。これらの塩は、
アルカリ金属塩、特にカリウムまたはナトリウム塩が好
ましい。
【0063】成形フイルムの下塗り層に用いられたニト
ロセルロースを除去するためには、過マンガン酸または
そのアルカリ金属塩(ニトロエステル基と共有結合を形
成する機能を有する)を反応させたのち、上記−O−O
−結合をもつ酸化物を作用させることが有利である。す
なわち、酸化漂白処理を2段階で実施してもよい。過酸
化物は、0.001乃至0.1モル/リットルの水溶液
で用いることが好ましい。また、セルロースプラスチッ
クのチップ1kgに対して、0.01乃至0.1モルの
範囲で使用することが好ましい。水溶液はpH5以下の
酸性水溶液かpH8以上のアルカリ性水溶液として用い
ることが好ましい。
【0064】酸化ハロゲン化合物の例としては、次亜塩
素酸とその塩、亜塩素酸とその塩、過塩素酸とその塩、
次亜臭素酸とその塩および過沃素酸塩を挙げることがで
きる。次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムおよ
び亜塩素酸ナトリウムが特に好ましい。酸化ハロゲン化
合物は、セルロースプラスチック表面において変性して
形成された着色異物を、漂白または除去されやすいよう
に酸化分解するために有効である。酸化ハロゲン化合物
を上記多価金属の酸化物と併用するとニトロセルロース
の酸化分解に顕著な効果がある。このため、過酸化物
(特に過マンガン酸塩または二酸化マンガン塩)と同時
にまたは続いて酸化ハロゲン化合物(特に次亜塩素酸塩
または次亜臭素酸塩)で処理することが好ましい。酸化
ハロゲン化合物は活性ハロゲン量として、0.05乃至
10重量%の水溶液で用いることが好ましい。水溶液
は、pH8以上好ましくは9以上のアルカリ性水溶液で
用いることが好ましい。水溶液中に、上記過マンガン酸
塩等の過酸化物を添加してもよい。マンガン化合物およ
び酸化ハロゲン化合物を含む水溶液を用いることが特に
好ましい。
【0065】酸化ハロゲン化合物を含有する水溶液に
は、さらにアミン化合物、特にアミノ基とスルホ基をも
つ化合物(例、スルファミン酸)を添加することが好ま
しい。酸化漂白処理における過酸化物または酸化ハロゲ
ン化合物の水溶液の液温は、室温乃至95℃の範囲が好
ましく、60乃至95℃の範囲がさらに好ましく、70
乃至90℃の範囲が最も好ましい。処理時間は、30乃
至150分間であることが好ましい。酸化漂白処理は、
攪拌しながら実施することが好ましい。なお、酸化漂白
処理は、回収ではなく原料から直接製造したセルロース
の低級脂肪酸エステルの処理としても有効である。すな
わち、原料が粗悪で着色成分を含むような場合は、上記
の酸化漂白処理を実施できる。このような場合も、本発
明と同様に、エポキシ化合物のドープへの添加が有効で
ある。
【0066】再利用方法においては、上記酸化漂白処理
に加えて、膨潤処理、ゼラチン層除去処理、有機溶剤処
理、セルラーゼ処理、安定化処理あるいは乾燥処理を実
施することができる。以下において各処理を説明する。
複数の処理工程を実施する場合は、以下に説明する順序
で実施することが好ましい。上記酸化漂白処理は、ゼラ
チン層除去処理の後で実施することが好ましい。また、
セルラーゼ処理は、酸化漂白処理の後で実施することが
好ましい。なお、各処理工程の後で、水洗処理を実施す
ることが好ましい。水洗処理では、温水を使用すること
が好ましい。各処理液に界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としてはノニオン性界面活性剤が特に好まし
い。ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリエチレン
グリコールエーテル系の界面活性剤(例、高級アルコー
ルのポリエチレングリコールエーテル、アルキルフェノ
ールのポリエチレングリコールエーテル)を挙げること
ができる。界面活性剤は0.001乃至5重量%の範囲
で処理液に添加することができる。
【0067】[膨潤処理]成形体の膨潤または軟化を目
的としてアルカリまたは酸処理を実施することができ
る。アルカリまたは酸処理は、成形体をアルカリ性水溶
液(pH7乃至13)または酸性水溶液(pH2乃至
7)に浸漬して実施する。pH2乃至4またはpH8乃
至13などの比較的低い、または比較的高いpHで短時
間処理し、セルロースプラスチックの表面で酸またはア
ルカリを作用させることが好ましい。アルカリ性水溶液
を用いることが特に好ましい。膨潤処理は、室温乃至7
0℃、特に30乃至60℃の温度で10乃至100分
間、攪拌しながら実施することが好ましい。この処理に
より、成形体に設けられた表面層、例えば写真フイルム
の感光層、中間層、下塗り層およびバック層が膨潤また
は軟化する。アルカリ性水溶液に用いるアルカリの例と
しては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナト
リウム、炭酸水素カリウムおよび水酸化ナトリウムを挙
げることができる。アルカリ性水溶液のpHは、8乃至
13であることが好ましく、8乃至12であることが特
に好ましい。
【0068】[ゼラチン層除去処理]成形体に写真フイ
ルムにおける感光層のようなゼラチン含有層が設けられ
ている場合、成形体をプロテアーゼで処理する。なお、
成形体の表面が油脂で汚れている場合は同様にリパーゼ
で処理する。プロテアーゼについて特に制限はない。プ
ロテアーゼは、通常水溶液(0.001乃至20重量
%)として使用する。水溶液のpHはプロテアーゼの至
適pHに調整することが好ましい。ゼラチン層除去処理
は、室温乃至70℃、特に30乃至60℃の温度で10
乃至200分間、攪拌しながら実施することが好まし
い。
【0069】[有機溶剤処理]前記の酸化漂白処理によ
り生じた酸化生成物、特にセルロースプラスチックの内
部に生じた生成物は、水洗だけで除去することは難し
い。これらの酸化生成物は、有機溶剤処理によりある程
度までは容易に除去できる。なお、酸化生成物は、水に
不溶または難溶の有機溶剤では、余り除去できない。ま
た、水に不溶または難溶の有機溶剤では、洗浄を実施す
るためのコストが高い。有機溶剤は、25℃の水に対す
る溶解度が10重量%以上である。水溶性有機溶剤の例
としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、
ブチルアルコール)、ケトン(例、アセトン)およびエ
ステル(例、酢酸メチル)を挙げることができる。アル
コールまたはケトンが好ましい。メタノール、エタノー
ルおよびアセトンが特に好ましい。有機溶剤はセルロー
スプラスチックの表面に吸収され、プラスチックを膨潤
させる。この作用は、前記の着色異物、ニトロセルロー
ス、あるいは他の耐湿熱性を劣化させる異物を有効に除
去するためにのに有利である。なお、予め有機溶剤処理
を実施してから酸化漂白処理を行なってもよい。この場
合、セルロースプラスチックの内部層まで反応が及び、
酸化漂白処理後の異物の除去に有利である。有機溶剤
は、そのまままたは水溶液の状態で使用する。水溶液中
の有機溶剤の濃度は、10%以上であることが好まし
く、20%以上であることがさらに好ましく、40%以
上であることが特に好ましい。有機溶剤処理は、常温乃
至50℃で実施することが好ましい。
【0070】[セルラーゼ処理]セルラーゼ処理は、セ
ルラーゼの水溶液中にセルロースプラスチックの成形体
を浸漬することにより実施することができる。水溶液中
のセルラーゼの濃度は0.01乃至10g/100ml
であることが好ましい。また水溶液のpHは2乃至8に
調整することが好ましい。処理温度は、20乃至70℃
であることが好ましく、30乃至60℃であることがさ
らに好ましい。浸漬後に攪拌することが好ましい。好ま
しい処理時間は、10分以上であり、さらに好ましくは
10乃至90分であり、特に好ましくは10乃至60分
である。セルラーゼは、他の分解酵素(例、プロテアー
ゼ、アミラーゼ、リパーゼ)、特にプロテアーゼと併用
することができる。プロテアーゼの使用条件は、前述し
たゼラチン層除去処理において使用する場合とほぼ同様
である。
【0071】[安定化処理]回収されるセルロースプラ
スチックの保存性を維持するために、必要により低級脂
肪酸のアルカリ金属塩で処理することができる。具体的
には、低級脂肪酸のアルカリ金属塩の水溶液に成形体を
浸漬する。低級脂肪酸のアルカリ金属塩の例としては、
シュウ酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウ
ムおよびギ酸カリウムを挙げることができる。
【0072】[乾燥処理]乾燥処理は、50乃至150
℃、好ましくは80乃至125℃の温度で、通常の方法
により実施できる。以上のように回収したセルロースの
低級脂肪酸エステルは、再利用するために有機溶剤中に
溶解してドープを形成する。ドープ形成以後の処理は、
(2)の製造方法で説明した通りである。
【0073】
【実施例】
[実施例1]映写使用済のカラーポジフイルム(セルロ
ーストリアセテートを基剤としたベースフイルムの上に
ニトロセルロースを含む下塗り層が設けられ、その上に
ゼラチンを含む画像形成層が設けられている)を0.5
乃至3cm角に相当するチップに裁断して使用した。使
用したカラーポジフイルムは、フイルムベースが汚染さ
れており、強い着色が認められた。
【0074】(a)ゼラチン層除去処理 フイルムチップ原料2.5kgに温水8リットルを加
え、高級アルコールのポリエチレングリコールエーテル
(エマルゲン106、花王(株)製)3gおよび炭酸ナ
トリウム30gを加えて、65℃で約10分間膨潤させ
た。次いで、耐アルカリ性プロテアーゼの水溶液5gを
添加し、約30分間撹拌した。チップを処理液から取り
出し、水切り後、水洗した。さらに温水8リットルを加
え、耐アルカリ性プロテアーゼの水溶液5gを添加し、
55℃で約30分間撹拌した。次に炭酸ナトリウム90
gを添加し、20分間撹拌した。チップを処理液から取
り出し、水切り後、水洗した。このようにして、ゼラチ
ンを含む画像形成層を除去したチップを得た。これは、
灰褐色に汚染されたチップであった。
【0075】(b)第1酸化漂白処理 上記処理で得たチップに、温水7リットルを加えた。次
亜塩素酸ナトリウムのアルカリ溶液(有効塩素量約10
%)400mlを加え、pHを約9.8に調整した。高
級アルコールのポリエチレングリコールエーテル3gを
加えて、30分間85℃で撹拌した。さらにスルファミ
ン酸10gを加え、約85℃で15分間撹拌した。pH
を硫酸を用いて約3に調整し、過酸化水素水(約35重
量%)の50mlを加えて5分間撹拌した。チップを処
理液から取り出し、水切り後、水洗した。
【0076】(c)第2酸化漂白処理 上記処理で得たチップに、温水の7リットルを加えた。
過酸化水素水(約35重量%)500mlを加え、炭酸
ナトリウム1gおよび高級アルコールのポリエチレング
リコールエーテル2gを加え、30分間90℃で撹拌し
た。チップを処理液から取り出し、水切り後、水洗し
た。淡茶色に着色されたチップが得られた。
【0077】(d)有機溶剤処理 上記処理で得たチップ600gに、次に示す有機溶剤処
理液3リットルを加え、常温で約40分撹拌した。液切
り後、水洗してチップを得た。
【0078】 ──────────────────────────────────── 有機溶剤処理液 3リットル中 ──────────────────────────────────── アセトン 0.93リットル メタノール 1.83リットル 水 0.24リットル ────────────────────────────────────
【0079】(e)乾燥処理 上記処理で得たチップを、105℃で40分間乾燥器中
に放置して乾燥した。
【0080】(f)ドープ形成処理 以上のように回収した試料を2600g秤取し、リン酸
エステル系可塑剤としてトリフェニルホスフェートを1
0重量%添加した。ただし、後述する第1表の試験番号
1においては、リン酸エステル系可塑剤エステルは添加
しなかった。さらに、エポキシ化合物および有機塩基を
第1表に示す添加量(重量%)を添加した。この混合物
に、メチレンクロライド:メタノール(9:1)の混合
溶剤50mlを加え、常温で約6時間かけて完全に溶解
させた。このようにして、各試料のドープを形成した。
【0081】(g) 流延・乾燥処理 以上のように形成したドープを、平板ガラスの丸底(半
径7.0cm)シャーレを水平に静置し、静かに流延し
た。蓋をし、約1昼夜かけて、徐々に有機溶剤を揮発除
去して製膜する。製造したフイルムを以下のように評価
した。
【0082】「製造したフイルムの黄色透過濃度」濃度
計を用いて、製造したフイルムの黄色透過濃度を測定し
た。結果を第1表の「透過濃度」の欄に示す。
【0083】「貼り合わせフイルムの耐湿熱性評価」フ
イルムを裁断し(膜厚:80〜90μm)、偏光板作成
に用いる粘着剤塗布フイルムを用いて、2枚貼り合わせ
た。この試料を、恒温恒湿室(85℃、90%相対湿
度)に保存し、500時間後とり出して、変色の程度、
寸度収縮度(%)、外見上のヒビわれの程度およびフイ
ルム自体の白濁化の傾向の程度を測定した。結果を第1
表の「変色」、「収縮」、「ヒビ」および「白濁」の欄
に、それぞれ示す。
【0084】変色は目視により以下の4段階で評価し
た。 ◎:無色透明(変色を認めない) ○:やや黄色味を感じるが透明 △:黄色味を感じ、やや不透明(実用困難) ×:黄褐色乃至褐色あるいは不透明
【0085】ヒビわれの程度も目視により以下の4段階
で評価した。 ◎:全く認めない ○:ほとんど認めない △:縁部に認める(実用困難) ×:ヒビわれ、あるいはバラバラに破損
【0086】白濁化は、表面を拭ったのち、目視により
以下の4段階で評価した。 ◎:全く認めない ○:ほとんど認めない △:やや認める ×:白濁化または不透明
【0087】「白色ペンキ塗膜の黄変色性評価」フイル
ムを裁断し(膜厚:80〜90μm)、ポリアクリレー
ト系樹脂使用の白色ペンキを必要最少限度量塗膜し、常
温で乾燥した。恒温恒湿槽(80℃)で20時間保存
し、濃度計により、反射濃度(黄色)を測定した。結果
を第1表の「黄変色性」の欄に示す。なお、測定値が
0.090を越えると、実用上問題ないし実用困難にな
ると判断される。
【0088】
【表1】
【0089】(註)試験番号1:リン酸エステル系可塑
剤の添加なし *: 表面への可塑剤の滲み
【0090】第1表の結果から、エポキシ化合物と有機
塩基を適量で併用することにより、透過濃度、フイルム
の変色性、ヒビわれや白濁化が著しく改善されることが
わかる。エポキシ化合物と有機塩基の使用量が比較的少
ない場合にも、充分な効果が得られており、両者の相乗
効果が生じていると理解される。
【0091】 [実施例2]実施例1において、第1酸
化漂白処理を省略し、第2酸化漂白処理を30分を60
分に延長した外は、同様にして、映写使用済カラーポジ
フィルム(セルローストリアセテートを基材としたベー
スフイルムにゼラチン試料の下塗り層を設けられその上
にゼラチンを含む画像形成層が設けられている)を処理
して試料を得た。この試料を用いて実施例1と同様に評
価した。結果を第2表に示す。
【0092】
【表2】
【0093】 (註)試験番号30:リン酸エステル系
可塑剤の添加なし
【0094】
【化30】
【0095】 なお、各フイルムの耐湿熱性において、
白濁化の傾向は明確には認められなかった。本発明に従
いエポキシ化合物を使用した試験結果と、比較化合物
(x)を使用した試験結果との比較から、エポキシ基の
効果が理解できる。第2表に示される結果から明らかな
ように、エポキシ化合物と有機塩基とを併用すると、相
乗的に優れた効果が得られる。
【0096】 [実施例3]実施例1において用いた映
写済のカラーポジフイルムをチップに裁断し、実施例2
と同様の処理を行ない試料番号3を得た。また、実施例
1において得た資料を試料番号1とした。別に、パルプ
原料から得た未使用の新綿セルローストリアセテートを
粗のまま試料番号4として用いた。実施例1と同様に可
塑剤および第3表に示す各成分を添加し、実施例1と同
様にフイルムを作成した。フイルムの厚さは、75〜8
5μmであった。
【0097】 作成直後のフイルムの黄色透過濃度を測
定した後、そのまま貼り合わせることなく、実施例1と
同様に耐湿熱性を評価した。結果を第3表に示す。第3
表において、「透過濃度1」は作成直後の黄色透過濃度
を意味する。また、「透過濃度2」は第3表に示す経過
時間(単位:時間)の後の黄色透過濃度を意味する。さ
らに、ヒビわれの程度は、目視にて実施例1と同様に評
価した。
【0098】
【表3】
【0099】 試料番号1、3および4のいずれにおい
ても、本発明のエポキシ化合物と有機塩基との組み合わ
せによる相乗作用が有効である。すなわち、本発明に従
うと、透明性を損なうことなく、耐湿熱性が改良され
る。本発明に従うセルロースエステルフイルムは、85
℃で90%の相対湿度の環境下で、1000時間以上の
耐湿熱性を示す。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン酸エステル系可塑剤を含むセルロー
    スの低級脂肪酸エステルのフイルムであって、さらに
    0.1乃至10重量%の脂肪族エポキシ化合物および
    0.01乃至5重量%の下記式(IIa)または(IIb)
    を有する有機塩基を含むことを特徴とするセルロースエ
    ステルフイルム。 【化1】 式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26およびR27
    は、それぞれ、アルキル基、アルケニル基、アルキニル
    基またはアラルキル基である。各基は、置換基を有して
    いてもよい。R21、R22およびR23のうちの二つの基は
    互いに結合して環を形成してもよい。R24、R25、R26
    およびR27のうちの二つの基は互いに結合して環を形成
    してもよい。
  2. 【請求項2】 セルロースの低級脂肪酸エステル、リン
    酸エステル系可塑剤、0.1乃至10重量%の脂肪族エ
    ポキシ化合物および0.01乃至5重量%の下記式(II
    a)または(IIb)を有する有機塩基を有機溶剤に溶解
    してドープを形成する工程;ドープを支持体上に流延す
    る工程;および有機溶剤を蒸発させる工程からなること
    を特徴とするセルロースエステルフイルムの製造方法。 【化2】 式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26およびR27
    は、それぞれ、アルキル基、アルケニル基、アルキニル
    基またはアラルキル基である。各基は、置換基を有して
    いてもよい。R21、R22およびR23のうちの二つの基は
    互いに結合して環を形成してもよい。R24、R25、R26
    およびR27のうちの二つの基は互いに結合して環を形成
    してもよい。
  3. 【請求項3】 有機物から成る異物を含むセルロースの
    低級脂肪酸エステルを基材とする成形体を過酸化物また
    は酸化ハロゲン化合物の水溶液に浸漬し、該異物を成形
    体から除去する工程;異物を除去したセルロースの低級
    脂肪酸エステルの成形体、リン酸エステル系可塑剤、
    0.1乃至10重量%の脂肪族エポキシ化合物および
    0.01乃至5重量%の下記式(IIa)または(IIb)
    を有する有機塩基を有機溶剤に溶解してドープを形成す
    る工程;ドープを支持体上に流延する工程;および有機
    溶剤を蒸発させる工程からセルロースエステルフイルム
    を製造することを特徴とするセルロースエステルの再利
    用方法。 【化3】 式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26およびR27
    は、それぞれ、アルキル基、アルケニル基、アルキニル
    基またはアラルキル基である。各基は、置換基を有して
    いてもよい。R21、R22およびR23のうちの二つの基は
    互いに結合して環を形成してもよい。R24、R25、R26
    およびR27のうちの二つの基は互いに結合して環を形成
    してもよい。
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