以下、複数の実施形態によるバルブタイミング調整装置を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位は、同一または同様の作用効果を奏する。
(第1実施形態)
第1実施形態によるバルブタイミング調整装置、および、これを適用した車両の動力伝達系を図1、2に示す。
図1に示すように、本実施形態のバルブタイミング調整装置1が設置される動力伝達系では、内燃機関(以下、「エンジン」という)10の「駆動軸」としてのクランクシャフト2に同軸に固定されるスプロケット3と、「従動軸」としてのカムシャフト4と同軸に設けられる外歯部31と、に「無端伝動部材」としてのチェーン7が巻き掛けられ、クランクシャフト2からチェーン7、外歯部31を経由してカムシャフト4に動力が伝達される。また、外歯部31と同軸に設けられる外歯部32と、「従動軸」としてのカムシャフト5に同軸に固定されるスプロケット6と、に「無端伝動部材」としてのチェーン8が巻き掛けられ、クランクシャフト2からチェーン7、外歯部31、外歯部32、チェーン8を経由してカムシャフト5に動力が伝達される。
前述の外歯部31および後述のカムプレート40は、それぞれ、バルブタイミング調整装置1の一部を構成している。カムシャフト4は「バルブ」としての吸気弁11を開閉駆動し、カムシャフト5は「バルブ」としての排気弁12を開閉駆動する。本実施形態のバルブタイミング調整装置1は、駆動源としてモータ80(後述)を用いる電動式であり、外歯部31をチェーン7に、カムプレート40をカムシャフト4に接続し、吸気弁11の開閉タイミングを調整する。
図2に示すように、バルブタイミング調整装置1は、ハウジング20、外歯部31、外歯部32、カムプレート40、歯車部50、ストッパ60、入力部材70等を備えている。
ハウジング20は、外歯ハウジング21、ストッパハウジング22、カバーハウジング23を有している。外歯ハウジング21、ストッパハウジング22、カバーハウジング23は、それぞれ、例えば金属により形成されている。本実施形態では、外歯ハウジング21とストッパハウジング22とは一体に形成されている。カバーハウジング23は、外歯ハウジング21およびストッパハウジング22とは別体に形成されている。なお、外歯ハウジング21とストッパハウジング22とは、例えば粉末冶金により一体に形成されている。
外歯ハウジング21は、ハウジング板部211、ハウジング筒部212、ハウジング環状部213、ハウジング環状部214を有している。ハウジング板部211は、略円板状に形成されている。ハウジング板部211の中央には、ハウジング板部211を板厚方向に貫くハウジング穴部200が形成されている。ハウジング穴部200の内周面は、略円筒面状に形成されている。
ハウジング筒部212は、ハウジング板部211の一方の面のハウジング穴部200の外縁部から筒状に延びるようハウジング板部211と一体に形成されている。ハウジング筒部212の内周面は、略円筒面状に形成されている。ハウジング穴部200の内径とハウジング筒部212の内径とは同一である。これにより、ハウジング穴部200およびハウジング筒部212の内側には、略円筒面状の内周面210が形成されている。
ハウジング環状部213は、ハウジング板部211のハウジング筒部212とは反対側の端部の外周面から径外方向へ延びるよう環状にハウジング板部211と一体に形成されている。ハウジング環状部214は、ハウジング筒部212のハウジング板部211とは反対側の端部の外周面から径外方向へ延びるよう環状にハウジング筒部212と一体に形成されている。
ストッパハウジング22は、ハウジング板部211のハウジング筒部212とは反対側の面から略円筒状に延びるようハウジング板部211と一体に形成されている。ストッパハウジング22は、ハウジング筒部212と同軸に形成されている。
カバーハウジング23は、カバー筒部231、カバー底部232を有している。カバー筒部231は、略円筒状に形成されている。カバー底部232は、カバー筒部231の一方の端部を塞ぐようカバー筒部231と一体に形成されている。カバー底部232の中央には、カバー底部232を板厚方向に貫くカバー穴部230が形成されている。カバー穴部230の内周面は、略円筒状に形成されている。カバーハウジング23は、カバー筒部231のカバー底部232とは反対側の端部がストッパハウジング22の外歯ハウジング21とは反対側の端部に接合するよう設けられている。カバーハウジング23は、ストッパハウジング22と同軸に設けられている。カバーハウジング23とストッパハウジング22および外歯ハウジング21とは、ボルト15により一体に設けられている。
外歯部31は、例えば金属により形成されている。外歯部31は、ハウジング環状部213の径方向外側に位置するよう環状に外歯ハウジング21と一体に形成されている。外歯部31は、周方向に複数の外歯を有している(図3参照)。なお、図3の上段にはカバーハウジング23側から見た外歯ハウジング21およびストッパハウジング22を示し、図3の中段には軸を含む面による外歯ハウジング21およびストッパハウジング22の断面を示し、図3の下段にはカバーハウジング23とは反対側から見た外歯ハウジング21およびストッパハウジング22を示す。上述したように、外歯部31には、クランクシャフト2に巻き掛けられたチェーン7が巻き掛けられる。外歯部31は、チェーン7に噛み合い可能に形成されている。これにより、クランクシャフト2が回転すると、チェーン7を経由してハウジング20に動力が伝達し、ハウジング20は、クランクシャフト2に連動して回転する。
外歯部32は、例えば金属により形成されている。外歯部32は、ハウジング環状部214の径方向外側に位置するよう環状に外歯ハウジング21と一体に形成されている。外歯部32は、周方向に複数の外歯を有している(図3参照)。上述したように、外歯部32には、スプロケット6に巻き掛けられたチェーン8が巻き掛けられる。外歯部32は、チェーン8に噛み合い可能に形成されている。これにより、クランクシャフト2が回転すると、クランクシャフト2からチェーン7、外歯部31、外歯部32、チェーン8を経由してスプロケット6に動力が伝達し、スプロケット6およびカムシャフト5は、クランクシャフト2に連動して回転する。
外歯部31と外歯部32とは、同軸に設けられている。外歯部31の歯底径および歯先径は、外歯部32の歯底径および歯先径より大きく設定されている。外歯部31および外歯部32は、ハウジング20の軸方向に所定の間隔を空けて並ぶよう形成されている。すなわち、本実施形態では、外歯部は、ハウジング20の軸方向に2つ(31、32)形成されている。なお、外歯部31、外歯部32には焼き入れ処理が施されており、硬度が高められている。
カムシャフト5に固定されているスプロケット6の外縁部には外歯部が形成されている。スプロケット6の外歯部の外歯の数は、外歯部32の外歯の数と同じである。また、スプロケット6の外歯部の歯底径および歯先径は、外歯部32の歯底径および歯先径と同じである。
カムプレート40は、カムプレート本体41を有している。カムプレート本体41は、例えば金属により形成されている。本実施形態では、カムプレート本体41には焼き入れ処理が施されており、硬度が高められている。
カムプレート本体41は、有底筒状に形成されている。カムプレート本体41の筒部は、略円筒状に形成されている。カムプレート本体41の底部の中央には、底部を板厚方向に貫く略円形のプレート穴部410が形成されている。また、カムプレート本体41には、延伸穴部411が形成されている。延伸穴部411は、プレート穴部410から径外方向へ延びるよう形成されている(図2参照)。カムプレート本体41の底部には、プレート穴部410の径方向外側において筒部とは反対側の端面から環状に凹む環状溝部412が形成されている。環状溝部412は、延伸穴部411に接続している。また、カムプレート本体41の底部には、環状溝部412の径方向外側において筒部とは反対側の端面から略円筒状に延びるプレート筒部413が形成されている。プレート筒部413は、カムプレート本体41の筒部、プレート穴部410、環状溝部412と同軸に形成されている。
カムプレート40は、プレート筒部413がハウジング20の内周面210の内側に位置し、カムプレート本体41がストッパハウジング22の内側に位置するようハウジング20の内側に設けられている。ここで、プレート筒部413の外径は、内周面210の内径より小さく設定されている。
ハウジング20は、当接可能面201を有している。当接可能面201は、ハウジング板部211のハウジング筒部212とは反対側の面に形成されている。当接可能面201は、カムプレート本体41の底部の筒部とは反対側の面である壁面401に当接可能である。すなわち、当接可能面201は、カムプレート40の軸方向の一方側の壁面401に当接可能な内壁である。本実施形態では、当接可能面201および壁面401は、略円環の平面状に形成されている。
カムプレート40は、プレート筒部413の内側にカムシャフト4の端部が嵌合するようカムシャフト4に接続される。カムプレート40とカムシャフト4とは、ボルト16により互いに相対回転不能に固定される。これにより、カムプレート40は、カムシャフト4と一体に回転する。カムプレート40は、ハウジング20に対し相対回転可能である。カムプレート40がカムシャフト4に接続された状態では、カムシャフト4の外周面とハウジング20の内周面210との間には、略円筒状の隙間S1が形成される。そのため、ハウジング20からの径内方向の荷重は、カムシャフト4の外周面には直接作用しない。
本実施形態では、カムプレート本体41の一部に軸受部42が形成されている。軸受部42は、カムプレート本体41の筒部の底部側の端部に形成されている。軸受部42は、ハウジング20のストッパハウジング22の内周面から径内方向の荷重を外周面420で受ける。すなわち、軸受部42は、外周面420でハウジング20を軸受けする。軸受部42の外周面420は、略円筒面状に形成されている。外周面420に対向するハウジング20の内周面である軸受内周面205は、略円筒面状に形成されている。カムプレート40とハウジング20とが相対回転するとき、軸受部42の外周面420とハウジング20の軸受内周面205とは摺動する。なお、軸受内周面205、軸受部42の外周面420は、外歯部31の径方向内側に位置している。そのため、チェーン7から外歯部31を経由してハウジング20に径内方向の荷重が作用したとき、当該径内方向の荷重をカムプレート40の軸受部42で受けることができる。
カバー筒部231の内周壁には、環状の第1内歯部24が形成されている。第1内歯部24は、周方向に複数の内歯を有している。カムプレート本体41の筒部の内周壁には、環状の第2内歯部43が形成されている。第2内歯部43は、周方向に複数の内歯を有している。第1内歯部24と第2内歯部43とは、同軸に形成されている。第1内歯部24の歯底径および歯先径は、第2内歯部43の歯底径および歯先径より大きく設定されている。
歯車部50は、例えば金属により略円筒状に形成されている。歯車部50は、第1外歯部51、第2外歯部52を有している。第1外歯部51、第2外歯部52は、歯車部50の外周壁に環状に形成されている。第1外歯部51と第2外歯部52とは、歯車部50の軸方向に隣接して並ぶよう同軸に形成されている。第1外歯部51の歯底径および歯先径は、第2外歯部52の歯底径および歯先径より大きく設定されている。
歯車部50は、第1外歯部51が第1内歯部24に噛み合い可能、かつ、第2外歯部52が第2内歯部43に噛み合い可能なようハウジング20の内側に設けられている。すなわち、歯車部50は、カムプレート本体41に対しカバーハウジング23側に設けられている。ここで、第1外歯部51の歯底径および歯先径は、第1内歯部24の歯底径および歯先径より小さく設定されている。また、第2外歯部52の歯底径および歯先径は、第2内歯部43の歯底径および歯先径より小さく設定されている。
ストッパ60は、例えば金属により形成されている。ストッパ60は、ストッパハウジング22の内周壁から径内方向へ突出するようストッパハウジング22と一体に形成されている。ストッパ60は、ストッパハウジング22の周方向に等間隔で4つ形成されている(図3参照)。カムプレート40は、ストッパ突出部45を有している。ストッパ突出部45は、カムプレート本体41の筒部の外周壁から径外方向へ突出するようカムプレート本体41と一体に形成されている。ストッパ突出部45は、カムプレート本体41の周方向に等間隔で4つ形成されている。
カムプレート40がハウジング20の内側に設けられた状態において、4つのストッパ突出部45は、それぞれ、各ストッパ60の間に位置している。ハウジング20に対しカムプレート40が相対回転すると、ストッパ突出部45の周方向の端部がストッパ60の周方向の端部に当接する。これにより、ハウジング20に対するカムプレート40の相対回転が規制される。すなわち、ストッパ60は、ハウジング20とカムプレート40との相対回転を所定の範囲に規制可能である。なお、ストッパ突出部45の先端部とストッパハウジング22の内周壁との間、および、ストッパ60の先端部の壁面であるストッパ内周面605(図2、3参照)とカムプレート本体41の筒部の外周壁との間には、所定の隙間が設定されている。よって、カムプレート40とハウジング20とが相対回転するとき、軸受部42の外周面420とハウジング20の軸受内周面205とは摺動するものの、ストッパ突出部45とストッパハウジング22の内周壁、および、ストッパ60のストッパ内周面605とカムプレート本体41の筒部の外周壁とは摺動しない。このように、ハウジング20は、カムプレート40の軸受部42およびカムシャフト4のうち、軸受部42のみにより軸受けされる。すなわち、ハウジング20の径方向の荷重の軸受け箇所は、ハウジング20の軸方向において軸受部42のみの1箇所である。
入力部材70は、例えば金属により筒状に形成されている。入力部材70は、第1筒状面71、第2筒状面72を有している。第1筒状面71、第2筒状面72は、それぞれ、略円筒面状に形成され、入力部材70の軸方向に並ぶよう入力部材70の外周壁に形成されている。ここで、第1筒状面71は、入力部材70の内周面と同軸に形成されている。第2筒状面72は、入力部材70の内周面および第1筒状面71に対し所定量偏心するよう形成されている。
入力部材70は、第1筒状面71がカバーハウジング23のカバー穴部230の内側に位置し、第2筒状面72が歯車部50の内側に位置するようハウジング20の内側に設けられている。第1筒状面71とカバー穴部230との間には、第1ベアリング75が設けられている。第2筒状面72と歯車部50の内周壁との間には、第2ベアリング76が設けられている。この構成により、入力部材70がハウジング20に対し相対回転すると、歯車部50は、第1外歯部51が第1内歯部24に噛み合い、第2外歯部52が第2内歯部43に噛み合いながら、自転しつつハウジング20に対し公転する。歯車部50が自転しつつハウジング20に対し公転すると、ハウジング20とカムプレート40とは相対回転する。
モータ80は、モータシャフト81、ジョイント82を有している。モータシャフト81は、図示しないロータに固定されており、モータ80に通電されることによりロータとともに回転する。ジョイント82は、モータシャフト81の先端部に固定され、モータシャフト81とともに回転可能である。モータ80は、カムシャフト4に取り付けられたバルブタイミング調整装置1に対しカムシャフト4とは反対側に位置するようエンジン10に取り付けられる。モータ80は、図示しない電子制御ユニット(以下、「ECU」という)により通電が制御され、その回転が制御される。
入力部材70の内周壁には、軸方向へ延びるジョイント溝部73が形成されている。モータ80は、ジョイント82がジョイント溝部73に係合するようエンジン10に取り付けられる。そのため、通電によりモータ80が回転すると、入力部材70が回転する。入力部材70が回転すると、歯車部50が自転しつつハウジング20に対し公転する。これにより、ハウジング20とカムプレート40とは相対回転する。このように、歯車部50は、モータ80により回転駆動され、ハウジング20とカムプレート40とを相対回転させることが可能である。
図2、3に示すように、本実施形態では、ストッパ60は、ハウジング20の軸方向から見たとき、外歯部31、外歯部32のいずれとも重ならない位置に形成されている。また、ストッパ60は、ハウジング20の軸方向から見たとき、2つの外歯部(31、32)のうち最も径方向内側にある外歯部32の歯先部よりも径方向外側に形成されている。より具体的には、ストッパ60は、ハウジング20の軸方向から見たとき、2つの外歯部(31、32)のうち最も径方向内側にある外歯部32の歯先部よりも径方向外側、かつ、2つの外歯部(31、32)のうち最も径方向外側にある外歯部31の歯底部よりも径方向内側に形成されている。さらに、外歯部31および外歯部32は、ハウジング20の軸方向から見たとき、互いに重ならない位置に形成されている。
また、図2、3に示すように、本実施形態では、軸受内周面205は、ハウジング20の軸を中心とする円筒面状の第1仮想筒状面VT1に沿うよう形成されている。また、ストッパ内周面605は、ハウジング20の軸を中心とする円筒面状の第2仮想筒状面VT2に沿うよう形成されている。ここで、第1仮想筒状面VT1の内径は、第2仮想筒状面VT2の内径と略同じである。より厳密にいえば、第1仮想筒状面VT1の内径は、第2仮想筒状面VT2の内径よりやや小さい。そのため、軸受内周面205に対向する軸受部42の外周面420は、ストッパ内周面605に対向するカムプレート40の外周壁とカムプレート40の径方向において略同じ位置に形成されている。本実施形態では、第2仮想筒状面VT2と第1仮想筒状面VT1との内径の差は、外歯部32の歯先径(歯先部の径)と歯底径(歯底部の径)との差より小さい。なお、外歯部32は、歯先部が第2仮想筒状面VT2の径方向内側で第1仮想筒状面VT1と略一致し、歯底部が第1仮想筒状面VT1および第2仮想筒状面VT2の径方向内側に位置している。
本実施形態では、カムシャフト4の端部に、油路13が形成されている。バルブタイミング調整装置1がカムシャフト4に取り付けられたとき、油路13は、カムプレート本体41の環状溝部412に接続する。油路13には、ポンプ14が接続される。ポンプ14は、図示しないオイルパンに貯留された潤滑油を汲み上げ、バルブタイミング調整装置1に供給する。ポンプ14からの潤滑油は、油路13、環状溝部412、延伸穴部411を経由してカムプレート本体41の内側に流れる。カムプレート本体41の内側に流れた潤滑油は、第2外歯部52と第2内歯部43との間、および、第1外歯部51と第1内歯部24との間に流れ、当該箇所を潤滑する。また、第1外歯部51と第1内歯部24との間に流れた潤滑油は、ストッパ内周面605とカムプレート40の外周壁との間、および、軸受内周面205と軸受部42の外周面420との間にも流れる。これにより、第2外歯部52と第2内歯部43との間、第1外歯部51と第1内歯部24との間、および、軸受内周面205と軸受部42の外周面420との間の摩耗が抑制される。
次に、本実施形態によるバルブタイミング調整装置1の作動を説明する。なお、図2は、エンジン始動前、すなわちエンジン10が停止している時のバルブタイミング調整装置1の状態を示している。以下では、エンジン10の停止中、カムプレート40がハウジング20に対し最遅角位置に設定される場合について説明する。
<エンジン始動時>
エンジン10が停止している状態では、カムプレート40は、ハウジング20に対し最遅角位置にある。このとき、ハウジング20に形成されたストッパ60とカムプレート40のストッパ突出部45とは当接している。エンジン10が始動すると、ECUは、ストッパ60とストッパ突出部45との当接が維持される方向(遅角方向)に入力部材70が回転するようモータ80を回転駆動する。
<エンジン始動後>
エンジン10の始動直後は、ハウジング20とカムプレート40とは同位相で回転する。そのため、モータ80のモータシャフト81もハウジング20およびカムプレート40と同位相、同回転数で回転する。
<進角作動時>
バルブタイミング調整装置1を進角制御するとき、ECUは、ハウジング20の回転数より入力部材70の回転数が大きくなるようモータ80を回転制御する。これにより、歯車部50がハウジング20内で自転および公転し、カムプレート40が、ハウジング20に対し進角方向に相対回転する。その結果、カムシャフト4の回転位相が進角し、吸気弁11の開閉タイミングが進角側に変更される。
<遅角作動時>
バルブタイミング調整装置1を遅角制御するとき、ECUは、ハウジング20の回転数より入力部材70の回転数が小さくなるようモータ80を回転制御する。これにより、歯車部50がハウジング20内で自転および公転し、カムプレート40が、ハウジング20に対し遅角方向に相対回転する。その結果、カムシャフト4の回転位相が遅角し、吸気弁11の開閉タイミングが遅角側に変更される。
<中間位相保持作動時>
カムプレート40(カムシャフト4)が目標位相に到達すると、ECUは、ハウジング20の回転数と入力部材70の回転数とが同じになるようモータ80を回転制御する。これにより、歯車部50はハウジング20に対し相対回転せず、カムプレート40は、ハウジング20に対し所定の位相(目標位相)に保持される。その結果、カムシャフト4の回転位相が所定の位相(目標位相)に保持され、吸気弁11の開閉タイミングが所定のタイミングに保持される。
<エンジン停止時作動>
バルブタイミング調整装置1の作動中にエンジン10の停止が指示されると、カムプレート40は、上記遅角作動時と同様の作動によりハウジング20に対して遅角方向に回転し、最遅角位置で回転が停止する。
次に、本実施形態のバルブタイミング調整装置1の製造工程の一部である、ハウジング20の外歯ハウジング21およびストッパハウジング22の形成方法について図4に基づき説明する。ハウジング20の外歯ハウジング21およびストッパハウジング22は、粉末冶金により一体に形成される。外歯ハウジング21およびストッパハウジング22は、下記の工程を経て一体に形成される。
<パンチ設置工程>
まず、台100の上に下内パンチ101、下中パンチ102、下外パンチ103を設置する。ここで、下内パンチ101、下中パンチ102、下外パンチ103は、それぞれ、略円筒状に形成されている。下中パンチ102の内径は下内パンチ101の外径と略同じである。下外パンチ103の内径は、下中パンチ102の外径と略同じである。下中パンチ102の軸方向の長さは、下内パンチ101の軸方向の長さより大きい。下外パンチ103の軸方向の長さは、下中パンチ102の軸方向の長さより大きい。この工程において、下中パンチ102は下内パンチ101の径方向外側に設置され、下外パンチ103は下中パンチ102の径方向外側に設置される。
<コア設置工程>
続いて、内側コア120、外側コア121を設置する。ここで、内側コア120は、略円柱状に形成されている。外側コア121は、略円筒状に形成されている。内側コア120の外径は、下内パンチ101の内径と略同じである。外側コア121の内径は、下外パンチ103の外径と略同じである。この工程において、内側コア120は下内パンチ101の径方向内側に設置され、外側コア121は下外パンチ103の径方向外側に設置される。なお、ここで、下内パンチ101、下中パンチ102、下外パンチ103の台100とは反対側において、内側コア120と外側コア121との間に環状の空間FSが形成される。
<粉末充填工程>
続いて、鉄等の金属粉末を空間FSに充填する。
<圧縮工程>
続いて、上内パンチ111、上中パンチ112、上外パンチ113により、空間FSに充填した金属粉末を圧縮する。ここで、上内パンチ111、上中パンチ112、上外パンチ113は、それぞれ、略円筒状に形成されている。上内パンチ111の内径および外径は、下内パンチ101の内径および外径と略同じである。上中パンチ112の内径および外径は、下中パンチ102の内径および外径と略同じである。上外パンチ113の内径および外径は、下外パンチ103の内径および外径と略同じである。上外パンチ113の軸方向の長さは、上中パンチ112の軸方向の長さより大きい。上内パンチ111の軸方向の長さは、上外パンチ113の軸方向の長さより大きい。この工程において、上内パンチ111は内側コア120の径方向外側に設置され、上中パンチ112は上内パンチ111の径方向外側に設置され、上外パンチ113は上中パンチ112の径方向外側かつ外側コア121の径方向内側に設置される。そして、上内パンチ111、上中パンチ112、上外パンチ113の台100とは反対側の端面が同一平面上に位置した状態で、上内パンチ111、上中パンチ112、上外パンチ113を台100側へ移動させる。これにより、金属粉末が空間FSにおいて圧縮され、粉末成形体PM20が形成される。
<焼結工程>
続いて、粉末成形体PM20を高温で焼結する。
<切削工程>
焼結した粉末成形体PM20のうち不要な部位を切削し、一体の外歯ハウジング21およびストッパハウジング22を得る。
このように、本実施形態では、ハウジング20の外歯ハウジング21およびストッパハウジング22は、最終形状に近い粉末成形体PM20を粉末冶金により得た後、不要な部位を切削する、いわゆるニアネットシェイプにより形成される。そのため、生産性を向上するとともに、製造コストを低減できる。
次に、第1比較形態について説明し、第1比較形態に対する本実施形態の優位な点を明らかにする。第1比較形態によるバルブタイミング調整装置およびその一部を図5、6に示す。なお、図6の上段にはカバーハウジング23側から見た外歯ハウジング21およびストッパハウジング22を示し、図6の中段には軸を含む面による外歯ハウジング21およびストッパハウジング22の断面を示し、図6の下段にはカバーハウジング23とは反対側から見た外歯ハウジング21およびストッパハウジング22を示す。図5、6に示すように、第1比較形態では、ストッパ60は、ハウジング20の軸方向から見たとき、外歯部32と重なる位置に形成されている。
第1比較形態では、図7に示すように、外歯ハウジング21およびストッパハウジング22を一体に形成するときに用いる下内パンチ101、下中パンチ102、下外パンチ103、上内パンチ111、上中パンチ112、上外パンチ113の形状が、本実施形態のそれらの形状と異なる。第1比較形態では、上内パンチ111の外径は、下内パンチ101の外径より小さい。上中パンチ112の内径は、下中パンチ102の内径より小さい。そのため、粉末成形体PM20のうち、ストッパ60に対応する部位であるストッパ対応部PM60、および、外歯部32に対応する部位である外歯対応部PM32は、内縁部が下内パンチ101の外縁部より内側に位置する上中パンチ112と、外縁部が上中パンチ112の内縁部より外側に位置する下内パンチ101とにより圧縮されることとなる。つまり、上中パンチ112は、粉末成形体PM20のうちストッパ対応部PM60および外歯対応部PM32と、当該部位の径方向外側の部位とに跨って金属粉末を圧縮する。ここで、粉末成形体PM20のうちストッパ対応部PM60および外歯対応部PM32の軸方向の長さは、当該部位の径方向外側の部位の軸方向の長さより大きい。そのため、ストッパ対応部PM60および外歯対応部PM32の圧縮量が不足するおそれがある。この場合、ストッパ対応部PM60および外歯対応部PM32の必要密度を満足できず、焼結後のストッパ60および外歯部32の強度が低下するおそれがある。
一方、本実施形態では、図4に示すように、粉末成形体PM20のうちストッパ対応部PM60は、内縁部および外縁部の位置が一致する上中パンチ112と下中パンチ102とにより圧縮され、外歯対応部PM32は、内縁部および外縁部の位置が一致する上内パンチ111と下内パンチ101とにより圧縮される。また、粉末成形体PM20のうち外歯部31に対応する部位である外歯対応部PM31は、内縁部および外縁部の位置が一致する上外パンチ113と下外パンチ103とにより圧縮される。そのため、ストッパ対応部PM60および外歯対応部PM32、ならびに、外歯対応部PM31をそれぞれ十分に圧縮できる。これにより、ストッパ対応部PM60および外歯対応部PM32、ならびに、外歯対応部PM31の必要密度を満足することができる。したがって、焼結後のストッパ60、外歯部32、外歯部31の強度を確保しつつ、生産性を向上することができる。
次に、第2比較形態について説明し、第2比較形態に対する本実施形態の優位な点を明らかにする。第2比較形態によるバルブタイミング調整装置を図8に示す。図8に示すように、第2比較形態では、第1仮想筒状面VT1の内径は、第2仮想筒状面VT2の内径より小さい。そのため、軸受内周面205とストッパ内周面605との間には、所定の大きさの段差が形成されている。そのため、軸受内周面205に対向する軸受部42の外周面420は、ストッパ内周面605に対向するカムプレート40の外周壁に対しカムプレート40の径方向内側に大きく離れた位置に形成されている。なお、外歯部32は、歯底部および歯先部が第1仮想筒状面VT1の径方向外側かつ第2仮想筒状面VT2の径方向内側に位置している。
上述したように、第2比較形態では、軸受内周面205に対向する軸受部42の外周面420が、ストッパ内周面605に対向するカムプレート40の外周壁に対しカムプレート40の径方向内側に大きく離れた位置に形成されている。そのため、カムプレート本体41の内側に供給された潤滑油は、遠心力によりストッパ内周面605とカムプレート40の外周壁との間に溜まり、軸受内周面205と軸受部42の外周面420との間まで流れにくい。これにより、軸受内周面205と軸受部42の外周面420との潤滑性を確保できなくなるおそれがある。
一方、本実施形態では、図2に示すように、第1仮想筒状面VT1の内径は、第2仮想筒状面VT2の内径と略同じである。また、軸受内周面205に対向する軸受部42の外周面420は、ストッパ内周面605に対向するカムプレート40の外周壁とカムプレート40の径方向において略同じ位置に形成されている。そのため、カムプレート本体41の内側に供給された潤滑油は、ストッパ内周面605とカムプレート40の外周壁との間を通過して、軸受内周面205と軸受部42の外周面420との間まで流れ易い。これにより、軸受内周面205と軸受部42の外周面420との潤滑性を十分に確保できる。
次に、第3比較形態について説明し、第3比較形態に対する本実施形態の優位な点を明らかにする。第3比較形態によるバルブタイミング調整装置を図9に示す。図9に示すように、第3比較形態では、ハウジング板部211に環状凹部202が形成されている。環状凹部202は、ハウジング穴部200の径方向外側において、ハウジング板部211のハウジング筒部212とは反対側の面からハウジング筒部212側へ環状に凹むよう形成されている。つまり、当接可能面201は、平面状に形成されていない。そのため、環状凹部202とカムプレート40の壁面401との間に異物が噛み込まれ、ロバスト性が低下するおそれがある。また、当接可能面201の環状凹部202以外の部分の面積が小さいため、カムプレート40の壁面401と当接可能面201との当接時の面圧が過大になるおそれがある。これにより、当接可能面201と壁面401とが摩耗するおそれがある。
一方、本実施形態では、図2に示すように、ハウジング板部211には、上述したような環状凹部202は形成されておらず、当接可能面201は、平面状に形成されている。そのため、当接可能面201とカムプレート40の壁面401との間に異物が噛み込まれるのを抑制でき、ロバスト性を高めることができる。また、カムプレート40の壁面401と当接する当接可能面201の面積が大きいため、カムプレート40の壁面401と当接可能面201との当接時の面圧を低減することができる。これにより、当接可能面201と壁面401との摩耗を抑制できる。
以上説明したように、(1)本実施形態は、エンジン10の吸気弁11のバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置1であって、ハウジング20と外歯部31、外歯部32とカムプレート40とストッパ60とを備えている。ハウジング20は、エンジン10のクランクシャフト2と連動して回転可能である。外歯部31、外歯部32は、ハウジング20と一体に環状に複数形成され、クランクシャフト2または回転する他部材であるスプロケット6に巻き掛けられるチェーン7、チェーン8のそれぞれに噛み合い可能である。
カムプレート40は、エンジン10のカムシャフト4に接続され、ハウジング20に対し相対回転可能である。ストッパ60は、ハウジング20と一体に形成され、カムプレート40に当接することでハウジング20とカムプレート40との相対回転を所定の範囲に規制可能である。このように、本実施形態では、外歯部31、外歯部32が形成されるハウジング20とストッパ60が形成されるハウジング20とは、一部品として一体に形成されている。そのため、特許文献1(特開2009-185785号公報)に開示された従来技術のようにハウジング20を外歯ハウジング21とストッパハウジング22との2つに分割する場合と比べ、部品点数を低減し、管理費を削減することができる。
ところで、生産性のさらなる向上を図るため、外歯部が形成されるハウジングとストッパが形成されるハウジングとを例えば粉末冶金により一体に形成することが考えられる。ここで、例えば、第1比較形態に示すように、ストッパ60が、ハウジング20の軸方向から見たとき、外歯部32と重なる構成の場合、ストッパ用と外歯部用とに型を適切に分割できず、ストッパ60および外歯部32に対応する部位の金属粉末の圧縮量が不足するおそれがある。この場合、ストッパ60および外歯部32に対応する部位の必要密度を満足できず、焼結後のストッパ60および外歯部32の強度が低下するおそれがある。
本実施形態では、上述の点に鑑み、ハウジング20の軸方向から見たとき、ストッパ60は、複数の外歯部である外歯部31、外歯部32のいずれとも重ならない位置に形成されている。そのため、例えば粉末冶金で用いる型をストッパ用と外歯部用とに分割でき、ストッパ60および外歯部32、外歯部31に対応する部位の金属粉末をそれぞれ十分に圧縮できる。これにより、ストッパ60および外歯部32、外歯部31に対応する部位の必要密度を満足することができる。したがって、焼結後のストッパ60および外歯部32、外歯部31の強度を確保しつつ、生産性を向上することができる。
ところで、特許文献1のバルブタイミング調整装置では、ハウジングを2つに分割し、一方のハウジングを他方のハウジングに嵌合させる構成のため、内部部材を軸受けするハウジングの軸受面が径方向内側に変形し、異音防止のために高精度に管理しているクリアランスの管理が困難になるおそれがある。さらに、一方のハウジングを他方のハウジングに嵌合させるときに生じ得る歪により、2つのハウジングを締結するためのボルトの雌ねじの精度が悪化したり、ボルトの軸力によりハウジングが破損したりするおそれがある。また、トルク伝達によるハウジングの変形が懸念され、バルブタイミングの調整精度が悪化するおそれがある。さらに、2つのハウジングの位置決めが必要のため、工程および部品点数が増大するおそれがある。
一方、本実施形態では、外歯ハウジング21とストッパハウジング22とを一体に形成することにより、外歯ハウジング21とストッパハウジング22とを別体に形成し一方を他方に嵌合させる場合と比べ、内部部材を軸受けするハウジング20の軸受面(軸受内周面205)が径方向内側に変形することを抑制し、異音防止のために高精度に管理しているクリアランスの管理を容易にすることができる。さらに、外歯ハウジング21およびストッパハウジング22の一方を他方に嵌合させるときに生じ得る歪が発生しないため、ハウジング20の各部を締結するためのボルトの雌ねじの精度が悪化したり、ボルトの軸力によりハウジング20が破損したりするのを抑制することができる。また、トルク伝達によるハウジング20の変形に対する懸念が無くなり、バルブタイミングの調整精度を維持することができる。さらに、外歯ハウジング21とストッパハウジング22との位置決めが不要のため、工程および部品点数を低減することができる。
また、(2)本実施形態は、歯車部50をさらに備えている。歯車部50は、ハウジング20およびカムプレート40に噛み合い可能なよう設けられ、モータ80により回転駆動され、ハウジング20とカムプレート40とを相対回転させることが可能である。そのため、油圧によりハウジングとカムプレートとを相対回転させるバルブタイミング調整装置と比べ、広範囲できめ細かな吸気弁11の開閉制御が可能となる。
また、(3)本実施形態では、ストッパ60は、ハウジング20の軸方向から見たとき、複数の外歯部のうち最も径方向内側にある外歯部32の歯先部よりも径方向外側に形成されている。そのため、ストッパ60の内径を拡大できる。これにより、ハウジング20のストッパ60の内側の空間を大きくでき、歯車部50等、ハウジング20の内蔵物のパッケージングに余裕をもたせることができる。よって、歯車部50におけるギア減速比の調整が容易になる。
また、(4)本実施形態では、カムプレート40は、ハウジング20の内周面から径内方向の荷重を外周面420で受ける軸受部42を有している。ところで、仮に軸受け箇所がハウジング20の軸方向において2箇所の場合、ストッパ60の内径を拡大すると、カムプレート40が傾いたとき、同じ傾き量でも径方向への軸受け径がより長くなるため軸受部42がこじりやすくなるおそれがある。本実施形態では、ハウジング20の径方向の荷重の軸受け箇所は、ハウジング20の軸方向において軸受部42のみの1箇所である。そのため、軸受部42のこじりを抑制しつつ、ストッパ60の内径を拡大できる。また、ストッパ60の内径の拡大により、モーメントの腕の長さが長くなるため、ストッパ60へのストッパ突出部45の当接時の衝撃トルクを小さくできる。これにより、強度的なロバスト性を向上することができる。
また、(5)本実施形態では、カムシャフト4とカムプレート40とが接続された状態において、カムシャフト4とハウジング20との間には、ハウジング20からの径内方向の荷重がカムシャフト4に作用しないよう隙間S1が形成される。これにより、ハウジング20の径方向の荷重の軸受け箇所を、ハウジング20の軸方向において軸受部42のみの1箇所とすることができる。そのため、上述のように、軸受部42のこじりを抑制しつつ、ストッパ60の内径を拡大できる。また、例えばカムプレート40とカムシャフト4とが、互いの軸がずれた状態で接続された場合でも、ハウジング20とカムプレート40とがこじることを抑制できる。これにより、ハウジング20とカムプレート40とが相対回転不能となるのを抑制することができる。よって、ハウジング20とカムプレート40との円滑な相対回転を維持できる。
また、(6)本実施形態では、ハウジング20は、軸受部42の外周面420に対向するとともにハウジング20の軸を中心とする筒状の第1仮想筒状面VT1に沿う軸受内周面205を有している。ストッパ60は、カムプレート40の外周面に対向するとともにハウジング20の軸を中心とする筒状の第2仮想筒状面VT2に沿うストッパ内周面605を有している。第1仮想筒状面VT1の内径は、第2仮想筒状面VT2の内径と略同じである。そのため、ストッパ60の内径、すなわち、ストッパ内周面605(第2仮想筒状面VT2)の内径の拡大に合わせて、軸受内周面205(第1仮想筒状面VT1)の内径を、ストッパ内周面605(第2仮想筒状面VT2)の内径と同等まで拡大することで、軸受部42の潤滑性を確保できる。
また、(7)本実施形態では、ハウジング20は、カムプレート40の軸方向の一方側の壁面401に当接可能な内壁である当接可能面201を有している。当接可能面201は、平面状に形成されている。そのため、当接可能面201とカムプレート40の壁面401との間に異物が噛み込まれるのを抑制でき、ロバスト性を高めることができる。また、カムプレート40の壁面401と当接する当接可能面201の面積が大きいため、カムプレート40の壁面401と当接可能面201との当接時の面圧を低減することができる。これにより、当接可能面201と壁面401との摩耗を抑制できる。
また、(8)本実施形態では、ストッパ60は、ハウジング20の軸方向から見たとき、複数の外歯部(31、32)のうち最も径方向内側にある外歯部32の歯先部よりも径方向外側、かつ、複数の外歯部(31、32)のうち最も径方向外側にある外歯部31の歯底部よりも径方向内側に形成されている。そのため、ストッパ60の内径を拡大しつつ、ハウジング20の径方向の体格を小さくすることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態によるバルブタイミング調整装置およびその一部を図10、11に示す。なお、図11の上段にはカバーハウジング23側から見た外歯ハウジング21およびストッパハウジング22を示し、図11の中段には軸を含む面による外歯ハウジング21およびストッパハウジング22の断面を示し、図11の下段にはカバーハウジング23とは反対側から見た外歯ハウジング21およびストッパハウジング22を示す。第2実施形態は、ハウジング20の構成等が第1実施形態と異なる。
図10、11に示すように、本実施形態では、ストッパ60は、ハウジング20の軸方向から見たとき、外歯部31、外歯部32のいずれとも重ならない位置に形成されている。また、ストッパ60は、ハウジング20の軸方向から見たとき、2つの外歯部(31、32)のうち最も径方向内側にある外歯部32の歯底部よりも径方向内側に形成されている。なお、外歯部32は、歯先部および歯底部が第1仮想筒状面VT1および第2仮想筒状面VT2の径方向外側に位置している。
以上説明したように、(1)本実施形態では、ストッパ60は、ハウジング20の軸方向から見たとき、外歯部31、外歯部32のいずれとも重ならない位置に形成されている。そのため、第1実施形態と同様、焼結後のストッパ60および外歯部32、外歯部31の強度を確保しつつ、生産性を向上することができる。
また、(9)本実施形態では、ストッパ60は、ハウジング20の軸方向から見たとき、複数の外歯部(31、32)のうち最も径方向内側にある外歯部32の歯底部よりも径方向内側に形成されている。そのため、ハウジング20の内蔵物の径方向の体格を小さくすることができる。
(第3実施形態)
第3実施形態によるバルブタイミング調整装置を図12、13に示す。第3実施形態は、バルブタイミング調整装置1の内部構成等が第1実施形態と異なる。
第3実施形態では、図12、13に示すように、バルブタイミング調整装置1は、ハウジング20、外歯部31、外歯部32、カムプレート40、歯車部50、オルダム継手90、係合部65、入力部材70等を備えている。
ハウジング20は、外歯ハウジング21、係合部ハウジング26、カバーハウジング23を有している。外歯ハウジング21、係合部ハウジング26、カバーハウジング23は、それぞれ、例えば金属により形成されている。本実施形態では、外歯ハウジング21と係合部ハウジング26とは一体に形成されている。カバーハウジング23は、外歯ハウジング21および係合部ハウジング26とは別体に形成されている。なお、外歯ハウジング21と係合部ハウジング26とは、例えば粉末冶金により一体に形成されている。
外歯ハウジング21は、ハウジング板部211、ハウジング筒部212、ハウジング環状部213、ハウジング環状部214を有している。ハウジング板部211は、略円板状に形成されている。ハウジング板部211の中央には、ハウジング板部211を板厚方向に貫くハウジング穴部200が形成されている。ハウジング穴部200の内周面は、略円筒面状に形成されている。
ハウジング筒部212は、ハウジング板部211の一方の面のハウジング穴部200の外縁部から筒状に延びるようハウジング板部211と一体に形成されている。ハウジング筒部212の内周面は、略円筒面状に形成されている。ハウジング穴部200の内径とハウジング筒部212の内径とは同一である。これにより、ハウジング穴部200およびハウジング筒部212の内側には、略円筒面状の内周面210が形成されている。
ハウジング環状部213は、ハウジング板部211の外周面から径外方向へ延びるよう環状にハウジング板部211と一体に形成されている。ハウジング環状部214は、ハウジング筒部212のハウジング板部211とは反対側の端部の外周面から径外方向へ延びるよう環状にハウジング筒部212と一体に形成されている。
係合部ハウジング26は、ハウジング板部211のハウジング筒部212とは反対側においてハウジング板部211と一体に環状に形成されている。係合部ハウジング26は、ハウジング板部211とは反対側の端部に略円環状の環状部260を有している。環状部260は、ハウジング筒部212と同軸に形成されている。
カバーハウジング23は、カバー板部233、カバー筒部234を有している。カバー板部233は、略円板状に形成されている。カバー筒部234は、カバー板部233の中央から略円筒状に延びるようカバー板部233と一体に形成されている。カバーハウジング23には、カバー板部233の中央を貫き、カバー筒部234の内周面に沿って延びるカバー穴部230が形成されている。カバーハウジング23は、カバー板部233のカバー筒部234とは反対側の端面の外縁部が係合部ハウジング26の外歯ハウジング21とは反対側の端部に接合するよう設けられている。カバーハウジング23は、係合部ハウジング26と同軸に設けられている。カバーハウジング23と係合部ハウジング26および外歯ハウジング21とは、ボルト15により一体に設けられている。
外歯部31は、ハウジング環状部213の径方向外側に位置するよう環状に外歯ハウジング21と一体に形成されている。外歯部31は、周方向に複数の外歯を有している(図13参照)。第1実施形態と同様、外歯部31には、クランクシャフト2に巻き掛けられたチェーン7が巻き掛けられる。外歯部31は、チェーン7に噛み合い可能に形成されている。これにより、クランクシャフト2が回転すると、チェーン7を経由してハウジング20に動力が伝達し、ハウジング20は、クランクシャフト2に連動して回転する。
外歯部32は、ハウジング環状部214の径方向外側に位置するよう環状に外歯ハウジング21と一体に形成されている。外歯部32は、周方向に複数の外歯を有している。第1実施形態と同様、外歯部32には、スプロケット6に巻き掛けられたチェーン8が巻き掛けられる。外歯部32は、チェーン8に噛み合い可能に形成されている。これにより、クランクシャフト2が回転すると、クランクシャフト2からチェーン7、外歯部31、外歯部32、チェーン8を経由してスプロケット6に動力が伝達し、スプロケット6およびカムシャフト5は、クランクシャフト2に連動して回転する。
外歯部31と外歯部32とは、同軸に設けられている。外歯部31の歯底径および歯先径は、外歯部32の歯底径および歯先径より大きく設定されている。外歯部31および外歯部32は、ハウジング20の軸方向に所定の間隔を空けて並ぶよう形成されている。すなわち、本実施形態では、外歯部は、ハウジング20の軸方向に2つ(31、32)形成されている。なお、外歯部31、外歯部32には焼き入れ処理が施されており、硬度が高められている。
カムプレート40は、カムプレート本体41を有している。カムプレート本体41は、有底筒状に形成されている。カムプレート本体41の筒部は、略円筒状に形成されている。カムプレート本体41の底部の中央には、底部を板厚方向に貫く略円形のプレート穴部410が形成されている。また、カムプレート本体41の底部には、筒部とは反対側の端面から略円筒状に延びるプレート筒部413が形成されている。プレート筒部413は、カムプレート本体41の筒部、プレート穴部410と同軸に形成されている。
カムプレート40は、プレート筒部413がハウジング20の内周面210の内側に位置し、カムプレート本体41が係合部ハウジング26の内側に位置するようハウジング20の内側に設けられている。ここで、プレート筒部413の外径は、内周面210の内径より小さく設定されている。
カムプレート40は、プレート筒部413の内側にカムシャフト4の端部が嵌合するようカムシャフト4に接続される。カムプレート40とカムシャフト4とは、ボルト16により互いに相対回転不能に固定される。これにより、カムプレート40は、カムシャフト4と一体に回転する。カムプレート40は、ハウジング20に対し相対回転可能である。カムプレート40がカムシャフト4に接続された状態では、カムシャフト4の外周面とハウジング20の内周面210との間には、略円筒状の隙間S1が形成される。そのため、ハウジング20からの径内方向の荷重は、カムシャフト4の外周面には直接作用しない。
本実施形態では、カムプレート本体41の一部に軸受部42が形成されている。軸受部42は、カムプレート本体41の筒部に形成されている。軸受部42は、ハウジング20のハウジング板部211および係合部ハウジング26の内周面から径内方向の荷重を外周面420で受ける。すなわち、軸受部42は、外周面420でハウジング20を軸受けする。軸受部42の外周面420は、略円筒面状に形成されている。外周面420に対向するハウジング20の内周面である軸受内周面205は、略円筒面状に形成されている。カムプレート40とハウジング20とが相対回転するとき、軸受部42の外周面420とハウジング20の軸受内周面205とは摺動する。なお、軸受内周面205、軸受部42の外周面420の軸方向の一部は、外歯部31の径方向内側に位置している。そのため、チェーン7から外歯部31を経由してハウジング20に径内方向の荷重が作用したとき、当該径内方向の荷重をカムプレート40の軸受部42で受けることができる。
カムプレート本体41の筒部の内周壁には、環状の内歯部44が形成されている。内歯部44は、周方向に複数の内歯を有している。
歯車部50は、例えば金属により形成されている。歯車部50は、歯車本体55、外歯部56、歯車係合部57を有している。歯車本体55は、略円筒状に形成されている。外歯部56は、歯車本体55の外周壁に環状に形成されている。
歯車部50は、外歯部56がカムプレート40の内歯部44に噛み合い可能なようハウジング20の内側に設けられている。すなわち、歯車部50は、カムプレート本体41に対しカバーハウジング23側に設けられている。ここで、外歯部56の歯底径および歯先径は、内歯部44の歯底径および歯先径より小さく設定されている。また、外歯部56の歯数は、内歯部44の歯数より1つ少なく設定されている。
歯車係合部57は、歯車本体55のカバーハウジング23側の端面からカバーハウジング23側へ延びるよう歯車本体55と一体に形成されている。歯車係合部57は、歯車本体55の周方向に等間隔で2つ形成されている(図13参照)。
オルダム継手90は、例えば金属により形成されている。オルダム継手90は、オルダム本体91、オルダム係合部92、オルダム係合溝部93を有している。オルダム本体91は、略円環の板状に形成されている。オルダム係合部92は、オルダム本体91の外縁部から径方向外側へ延びるようオルダム本体91と一体に形成されている。オルダム係合部92は、オルダム本体91の周方向に等間隔で2つ形成されている(図13参照)。
オルダム係合溝部93は、オルダム本体91の内縁部から径方向外側へ延びるよう形成されている。オルダム係合溝部93は、オルダム本体91の周方向に等間隔で2つ形成されている(図13参照)。ここで、2つのオルダム係合部92の中心を結ぶ直線L1と2つのオルダム係合溝部93の中心を結ぶ直線L2とは、直交する。
オルダム本体91の周方向におけるオルダム係合溝部93の幅は、歯車本体55の周方向における歯車係合部57の幅よりやや大きく設定されている。オルダム継手90は、2つの歯車係合部57が2つのオルダム係合溝部93のそれぞれに係合するよう設けられている。そのため、2つの歯車係合部57は、直線L2上に位置する。オルダム継手90は、歯車部50に対し歯車本体55の径方向、すなわち、直線L2に沿う方向D2に相対移動可能なよう設けられている(図13参照)。オルダム継手90が歯車部50に対し方向D2に相対移動するとき、歯車係合部57とオルダム係合溝部93とは摺動する。また、歯車係合部57とオルダム係合溝部93との係合により、歯車部50とオルダム継手90との相対回転が規制されている。
係合部65は、係合部ハウジング26の環状部260と一体に形成されている。係合部65は、環状部260のハウジング筒部212とは反対側の端部において、環状部260を径方向に貫くよう、すなわち、環状部260の内周壁と外周壁とを連通するよう溝状に形成されている。係合部65は、環状部260の周方向に等間隔で2つ形成されている(図13参照)。
方向D2における係合部65の幅、すなわち、溝状の係合部65の2つの平行な側面間の距離は、方向D2におけるオルダム係合部92の幅、すなわち、オルダム係合部92の2つの平行な側面間の距離よりやや大きく設定されている。オルダム継手90は、オルダム係合部92が係合部65に係合するよう設けられている。オルダム継手90は、係合部ハウジング26に対し環状部260の径方向、すなわち、直線L1に沿う方向D1に相対移動可能なよう設けられている(図13参照)。オルダム継手90が係合部ハウジング26に対し方向D1に相対移動するとき、オルダム係合部92と係合部65とは摺動する。また、オルダム係合部92と係合部65との係合により、係合部ハウジング26とオルダム継手90との相対回転が規制されている。
係合部65は、係合摺動面651、652を有している。係合摺動面651は、溝状の係合部65の側面に形成されており、オルダム係合部92の側面と係合および摺動可能である。係合摺動面651は、互いに平行となるよう1つの係合部65に対し2つ形成されている。係合摺動面652は、溝状の係合部65の底面に形成されており、オルダム係合部92のカバーハウジング23とは反対側の面と係合および摺動可能である。
オルダム継手90は、オルダム係合溝部93と歯車係合部57との係合、および、オルダム係合部92と係合部65との係合により、歯車部50とハウジング20との相対回転を規制している。そのため、エンジン10の運転中、カムシャフト4に生じるカムトルク変動に起因する力がオルダム係合部92から係合部65に作用し得る。
入力部材70は、例えば金属により筒状に形成されている。入力部材70は、第1筒状面71、第2筒状面72を有している。第1筒状面71、第2筒状面72は、それぞれ、略円筒面状に形成され、入力部材70の軸方向に並ぶよう入力部材70の外周壁に形成されている。ここで、第1筒状面71は、入力部材70の内周面と同軸に形成されている。第2筒状面72は、入力部材70の内周面および第1筒状面71に対し所定量偏心するよう形成されている。図12、13に示すように、入力部材70の中心軸Ax1は入力部材70の内周面および第1筒状面71の軸に一致し、偏心軸Ax2は第2筒状面72および歯車部50の軸に一致する。また、中心軸Ax1は、ハウジング20およびカムプレート40の軸に一致する。
入力部材70は、第1筒状面71がカバーハウジング23のカバー穴部230の内側に位置し、第2筒状面72が歯車部50の内側に位置するようハウジング20の内側に設けられている。第1筒状面71とカバー穴部230との間には、第1ベアリング75が設けられている。第2筒状面72と歯車部50の内周壁との間には、第2ベアリング76が設けられている。
この構成により、入力部材70がハウジング20およびカムプレート40に対し相対回転すると、入力部材70の偏心軸Ax2が中心軸Ax1を中心に公転する。この公転により、カムプレート40の内歯部44に対する歯車部50の外歯部56の噛み合い位置が内歯部44の周方向に沿って変化し、歯車部50は、偏心軸Ax2を中心に自転しようとする。
このように、入力部材70の偏心軸Ax2が中心軸Ax1を中心に公転する際には、歯車部50の変位が、歯車係合部57からオルダム係合溝部93に伝達される。この変位のうち方向D1に沿う方向の成分が含まれる場合には、この変位に対応してオルダム継手90がハウジング20に対し方向D1に変位し、方向D2に沿う方向の成分が含まれる場合には、この変位に対応して歯車部50がオルダム継手90に対し方向D2に変位する。
なお、歯車部50の外歯部56の歯数がカムプレート40の内歯部44の歯数より1つ少なく設定されているため、入力部材70の偏心軸Ax2が中心軸Ax1を中心に1回公転した場合、カムプレート40が1歯分回転することになり、入力部材70に入力された回転が減速される。
本実施形態では、歯車部50とハウジング20との相対回転がオルダム継手90により規制されるため、歯車部50の公転に伴い歯車部50を自転させる方向に作用する回転力により、中心軸Ax1を中心にカムプレート40を回転させる。つまり、歯車部50がカムプレート40に対し公転することにより、ハウジング20に対しカムプレート40が相対回転することになる。なお、このとき、オルダム継手90および歯車部50は、ハウジング20に対し方向D1に相対移動し、歯車部50は、オルダム継手90およびハウジング20に対し方向D2に相対移動する。
入力部材70の内周壁には、軸方向へ延びるジョイント溝部73が形成されている。モータ80は、ジョイント82がジョイント溝部73に係合するようエンジン10に取り付けられる。そのため、通電によりモータ80が回転すると、入力部材70が回転する。入力部材70が回転すると、歯車部50が自転しつつカムプレート40に対し公転する。これにより、オルダム継手90がハウジング20に対し相対移動し、ハウジング20とカムプレート40とが相対回転する。このように、オルダム継手90は、ハウジング20に対し相対移動可能に設けられ、外部からバルブタイミング調整装置1の入力部材70に回転が入力されたとき、ハウジング20に対し相対移動することで、ハウジング20とカムプレート40とを相対回転させることが可能である。
図12、13に示すように、本実施形態では、係合部ハウジング26の環状部260は、ハウジング20の軸方向から見たとき、外歯部31と外歯部32との間に位置するよう形成されている。よって、係合部65は、ハウジング20の軸方向から見たとき、外歯部31、外歯部32のいずれとも重ならない位置に形成されている。ここで、係合部65は、ハウジング20の軸方向から見たとき、2つの外歯部(31、32)のうち最も径方向内側にある外歯部32の歯先部よりも径方向外側、かつ、2つの外歯部(31、32)のうち最も径方向外側にある外歯部31の歯底部よりも径方向内側に形成されている。さらに、外歯部31および外歯部32は、ハウジング20の軸方向から見たとき、互いに重ならない位置に形成されている。
以上説明したように、(10)本実施形態は、エンジン10の吸気弁11のバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置1であって、ハウジング20と外歯部31、外歯部32とカムプレート40とオルダム継手90と係合部65とを備えている。ハウジング20は、エンジン10のクランクシャフト2と連動して回転可能である。外歯部31、外歯部32は、ハウジング20と一体に環状に複数形成され、クランクシャフト2または回転する他部材であるスプロケット6に巻き掛けられるチェーン7、チェーン8のそれぞれに噛み合い可能である。
カムプレート40は、エンジン10のカムシャフト4に接続され、ハウジング20に対し相対回転可能である。オルダム継手90は、外部から回転が入力されたとき、ハウジング20に対し相対移動することで、ハウジング20とカムプレート40とを相対回転させることが可能である。係合部65は、ハウジング20と一体に形成され、オルダム継手90と係合および摺動可能である。このように、本実施形態では、外歯部31、外歯部32が形成されるハウジング20と係合部65が形成されるハウジング20とは、一部品として一体に形成されている。そのため、ハウジング20を外歯ハウジング21と係合部ハウジング26との2つに分割して製造する場合と比べ、部品点数を低減し、管理費を削減することができる。
本実施形態では、係合部65は、ハウジング20の軸方向から見たとき、複数の外歯部である外歯部31、外歯部32のいずれとも重ならない位置に形成されている。そのため、例えば粉末冶金で用いる型を係合部用と外歯部用とに分割でき、係合部65および外歯部31、外歯部32に対応する部位の金属粉末をそれぞれ十分に圧縮できる。これにより、係合部65および外歯部31、外歯部32に対応する部位の必要密度を満足することができる。したがって、焼結後のハウジング20の係合部65および外歯部31、外歯部32の強度を確保しつつ、生産性を向上することができる。
また、本実施形態では、係合部65の強度が高いため、オルダム継手90との係合および摺動による係合部65の摩耗を抑制できる。
また、(11)本実施形態では、係合部65は、ハウジング20の軸方向から見たとき、複数の外歯部のうち最も径方向内側にある外歯部32の歯先部よりも径方向外側、かつ、複数の外歯部のうち最も径方向外側にある外歯部31の歯底部よりも径方向内側に形成されている。そのため、ハウジング20の内側の空間の容積を確保しつつ、ハウジング20の大型化を抑制できる。これにより、歯車部50やカムプレート40等、ハウジング20の内蔵物の体格やパッケージングに余裕をもたせつつ、バルブタイミング調整装置1を小型にできる。
(第4実施形態)
第4実施形態によるバルブタイミング調整装置を図14、15に示す。第4実施形態は、係合部65の位置等が第3実施形態と異なる。
図14、15に示すように、本実施形態では、係合部ハウジング26の環状部260は、ハウジング20の軸方向から見たとき、外歯部32の径方向内側に位置するよう形成されている。よって、係合部65は、ハウジング20の軸方向から見たとき、外歯部31、外歯部32のいずれとも重ならない位置に形成されている。ここで、係合部65は、ハウジング20の軸方向から見たとき、2つの外歯部(31、32)のうち最も径方向内側にある外歯部32の歯底部よりも径方向内側に形成されている。
以上説明したように、(12)本実施形態では、係合部65は、ハウジング20の軸方向から見たとき、複数の外歯部のうち最も径方向内側にある外歯部32の歯底部よりも径方向内側に形成されている。そのため、ハウジング20の大型化を抑制でき、バルブタイミング調整装置1を小型にできる。
(第5実施形態)
第5実施形態によるバルブタイミング調整装置を図16、17に示す。第5実施形態は、係合部65の位置等が第3実施形態と異なる。
図16、17に示すように、本実施形態では、係合部ハウジング26の環状部260は、ハウジング20の軸方向から見たとき、外歯部31の径方向外側に位置するよう形成されている。よって、係合部65は、ハウジング20の軸方向から見たとき、外歯部31、外歯部32のいずれとも重ならない位置に形成されている。ここで、係合部65は、ハウジング20の軸方向から見たとき、2つの外歯部(31、32)のうち最も径方向外側にある外歯部31の歯先部よりも径方向外側に形成されている。
以上説明したように、(13)本実施形態では、係合部65は、ハウジング20の軸方向から見たとき、1つ以上の外歯部のうち最も径方向外側にある外歯部31の歯先部よりも径方向外側に形成されている。そのため、ハウジング20の内側の空間の容積を大きくでき、歯車部50やカムプレート40等、ハウジング20の内蔵物の体格やパッケージングに余裕をもたせることができる。
(他の実施形態)
他の実施形態では、カムプレート40がカムシャフト4に接続された状態において、カムシャフト4の外周面とハウジング20の内周面210との間に、略円筒状の隙間S1が形成されなくてもよい。すなわち、ハウジング20は、カムシャフト4の外周面により軸受けされてもよい。
他の実施形態では、第1仮想筒状面VT1の内径と第2仮想筒状面VT2の内径とは同じであってもよい。また、第1仮想筒状面VT1の内径と第2仮想筒状面VT2の内径とは、第2比較形態のように、大きく異なっていてもよい。
他の実施形態では、当接可能面201には、第3比較形態のように、環状凹部202が形成されていてもよい。すなわち、当接可能面201は、平面状に形成されていなくてもよい。
上述の第5実施形態では、ハウジング20に外歯部が2つ(31、32)形成される例を示した。これに対し、他の実施形態では、外歯部は、ハウジング20に1つ、例えば外歯部31のみ形成されることとしてもよい。この場合において、係合部65が、ハウジング20の軸方向から見たとき、外歯部31の歯先部よりも径方向外側に形成されていれば、第5実施形態と同様の効果を奏することができる。また、外歯部は、ハウジング20に3つ以上形成されてもよい。
また、他の実施形態では、チェーンに代えて、例えばベルト等の無端伝動部材を用いてもよい。また、無端伝動部材は、ハウジング20の外歯部の数に応じて、いくつ設けられてもよい。
また、上述の実施形態では、カムプレート40がカムシャフト4の端部に固定され、ハウジング20がクランクシャフト2に連動して回転する例を示した。これに対し、他の実施形態では、カムプレート40がクランクシャフト2の端部に固定され、ハウジング20がカムシャフト4に連動して回転することとしてもよい。
本発明のバルブタイミング調整装置1は、エンジン10の排気弁12のバルブタイミングを調整することとしてもよい。
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。