JP7195549B2 - 臼歯治療用歯科用充填修復材料 - Google Patents

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Description

本発明は、化性組成物からなる臼歯治療用歯科用充填修復材料に関する。

歯科用硬化性組成物(Dental Curable Composition:以下、「DCC」と略記することもある。)は、一般に、重合性単量体(マトリックスモノマー)、フィラー、及び重合開始剤を主成分とするペースト状組成物であり、使用するフィラーの種類、形状、粒子径、及び充填量等は、歯科用硬化性組成物の操作性や、硬化させて有られる硬化体の審美性及び機械的強度等に影響を与える。
例えば、歯科用硬化性組成物に、粒子径が大きな無機フィラーを配合した場合には、硬化体の機械的強度が高くなる反面、硬化体の表面滑沢性や耐摩耗性が低下し、天然歯と同様の艶のある硬化体の仕上がり面が得難くなる。他方、平均粒子径が1μm以下の微細な無機フィラーを配合した場合には、硬化体の表面滑沢性や耐摩耗性を優れたものとすることができるが、微細無機フィラーは、比表面積が大きいので、粘度を大きく増加させる。歯牙の治療に際しては、歯科医が、歯科用硬化性組成物を口腔内で使用に適した粘稠度に調整する必要があり、粘稠度を低下させるために微細無機フィラーの配合量を少なくした場合には、歯科用硬化性組成物が硬化する際のマトリックスモノマーの重合に伴う収縮量の増加、さらには得られる機械的強度の低下等を招くことがある。
このような言わばトレードオフの関係を回避するために、有機無機複合フィラーの使用が提案されている(たとえば、特許文献1および2参照)。有機無機複合フィラーは、微細な無機フィラーを有機樹脂中に含有する複合フィラーであり、これを用いることにより、微細な無機フィラーを用いる場合の優れた表面滑沢性や耐摩耗性を維持することができ、更に重合収縮率を少なくすることも可能となる。なお、有機無機複合フィラーの配合量が多くなりすぎる場合にはペーストの状態においてバサツキが生じてペーストの操作性が悪化してしまうが、平均粒子径が0.1~1μmの無機フィラー(無機粒子)と併用することによって上記操作性の低下を防止し、優れた操作性のペースト状歯科用硬化性組成物とすることができる(特許文献2参照。)。
上記有機無機複合フィラーの製造方法としては、微細無機フィラーと重合性単量体とを予め混練した硬化性組成物を重合させて硬化体を得、次いで前記硬化体を粉砕する方法が一般的であり、この方法で製造した組成物はマトリックスと有機無機複合フィラーとの界面の結合が弱いため硬化体の強度が低くなり易いとう問題があった。
前記問題点を改善する有機無機複合フィラーとして、水銀圧入法で測定した細孔容積(ここで、細孔とは細孔経が1~500nmの範囲の孔をいう)が0.01~0.30cm3/gの凝集間隙を有する有機無機複合フィラー(以下、「多孔性有機無機複合フィラー」ともいう。)が提案されている(特許文献3参照。)。そして、特許文献3には、このような多孔性有機無機複合フィラーと、重合性単量体と、重合開始剤とを含んでなる歯科用硬化性組成物は、ペースト操作性が良好で重合収縮が小さく、且つ硬化体の表面滑沢性、耐摩耗性が良好となるばかりでなく、重合性単量体が前記凝集間隙内に毛細管現象により進入してから硬化することにより生じるアンカー効果により多孔性有機無機複合フィラーが硬化体中に高い嵌合力で保持されるため、機械的強度が向上する旨が、説明されている。
さらには、前記多孔性有機無機複合フィラーのアンカー効果による機械的強度を一層に向上させる方法も提案されている。すなわち、特許文献4には、「(A)窒素吸着法で測定した細孔容積(ここで、細孔とは細孔径が1~500nmの範囲の孔をいう)が0.01~0.30cm/gの凝集間隙を有する有機無機複合フィラー(超微粒子無機フィラーをシランカップリング剤で表面コートしたものを除く)、(B)重合性単量体成分、(C)重合開始剤とを含んでなる歯科用硬化性組成物において、(A)有機無機複合フィラーの有機樹脂成分が(a)重合性単量体成分を重合して得たものであり、且つ(B)重合性単量体成分は水素結合性官能基を有する重合性単量体を少なくとも10質量%含み、(a)重合性単量体成分は水素結合性官能基を有する重合性単量体を少なくとも50質量%含むことを特徴とする歯科用硬化性組成物」(以下、「水素結合性DCC」ともいう。)が記載されている。そして特許文献4には、上記水素結合性DCCは、前記アンカー効果に加え、前記(a)重合性単量体成分及び(B)重合性単量体成分に、水素結合性官能基を有する重合性単量体(以下、「水素結合性モノマー」とも言う。)を夫々一定配合したことに起因して、歯科用硬化性組成物の硬化体において、有機無機複合フィラーの有機樹脂成分と有機マトリックスとなる前記(B)重合性単量体成分の硬化体との間で水素結合性相互作用が生じるため、機械的強度が向上する旨が説明されている。
特開2000-80013号公報 国際公開第2015/125470号パンフレット 国際公開第2011/115007号パンフレット 特許第6219146号
本発明者等が、特許文献4に開示されている歯科用硬化性組成物(水素結合性DCC)について検討を行ったところ、所期の効果、すなわち相当に高い機械的強度、耐摩耗性及び審美性に優れる硬化体を与えることができると言う効果が得られる一方で、ペースト状態でのベタツキが生じて操作性が低下することがあり、このようなこのような現象は特に長期間保管後に顕著に観察されること、及び臼歯I級窩洞等に充填する際に形成した咬合面形態を保持する能力が若干低いことが確認された。すなわち、特許文献4に開示される多孔性有機無機複合フィラーと重合性単量体と重合開始剤とを配合する歯科用硬化性組成物の操作性および形態保持性に関して改善する余地があることが判明した。
そこで、本発明は高い機械的強度を有する硬化体を与え、硬化前のペースト状態における操作性および形態保持性が良好であり、かつ長期間にわたって良好な操作性を維持することのできる歯科用硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、前記水素結合性DCCに配合される重合開始剤(C)の一成分として、光酸発生剤であるアリールヨードニウム塩を特定量使用することで、ペーストの操作性が大幅に改善し、更には長期間保存した後も調製直後の良好な操作性が維持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の一の実施形態は、機樹脂成分と、無機成分と、を含み、窒素吸着法で測定した細孔容積(ここで、細孔とは細孔径が1~500nmの範囲の孔をいう)が0.01~0.30cm/gである、多孔性の有機無機複合フィラー(A);合性単量体成分(B);並びに光増感用化合物(c1)、還元剤(c2)および光酸発生剤(c3)を含有する光重合開始剤を含む重合開始剤(C);を含んでなる化性組成物からなる臼歯治療用歯科用充填修復材料であって、
前記有機無機複合フィラー(A)の前記有機樹脂成分は、水素結合性官能基を有する重合性単量体を少なくとも50質量%含む重合性単量体成分(a)を重合して得た有機樹脂成分であり、
前記重合性単量体成分(B)は、水素結合性官能基を有する重合性単量体を10~70質量%含有し、
前記光酸発生剤(c3)は、ジフェニルヨードニウム、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p-メトキシフェニル)ヨードニウム、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、p-イソプロピルフェニル-p-メチルフェニルヨードニウム、ビス(m-ニトロフェニル)ヨードニウム、p-tert-ブチルフェニルフェニルヨードニウム、p-メトキシフェニルフェニルヨードニウム、p-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム又はp-フェノキシフェニルフェニルヨードニウムからなるカチオンを有するアリールヨードニウム塩化合物からなり、
記重合性単量体成分(B)の総質量100質量部に対する、前記有機無機複合フィラー(A)、前記光増感用化合物(c1)、前記還元剤(c2)及び前記アリールヨードニウム塩化合物からなる光酸発生剤(c3)の配合量が、夫々、(A):100~300質量部、(c1):0.01~10質量部、(c2):0.01~10質量部、及び(c3):0.1~5質量部である、
ことを特徴とする前記臼歯治療用歯科用充填修復材料である。

上記形態の臼歯治療用歯科用充填修復材料においては、これを構成する前記硬化性組成物(以下、「本発明の歯科用硬化性組成物」ともいう。)における有機無機複合フィラー(A)が、前記有機樹脂成分として、前記重合性単量成分(a)の硬化体からからなる樹脂層と、前記無機成分として、平均粒子径が10~1000nmである複数の無機一次粒子と、を有し、前記複数の無機一次粒子どうしが前記樹脂層を介して空隙を形成するように結合した凝集構造を含む微多孔性有機無機複合凝集粒子からなることが好ましい。

また、前記開始剤成分(c2)に含まれる還元剤が第3級アミン化合物であることが好ましく、更に、前記第3級アミン化合物として芳香族第3級アミン化合物および脂肪族第3級アミン化合物とを含むことが好ましい。
さらに、平均粒子径10~1000nmである無機フィラー(D)をさらに含むことが好ましく、この場合において、前記重合性単量体(B)総質量100質量部に対する、前記有機無機複合フィラー(A)及び前記無機フィラー(D)の含有量が、夫々(A):100~300質量部及び(D):100~300質量部であり、且つ前記(A)及び前記(D)の合計の含有量が250~550質量部であることが好ましく、前記有機無機複合フィラー(A)における前記無機一次粒子の形状及び、前記無機フィラー(D)を構成する無機粒子の形状は、共に球状又は略球状であることが好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物は、前記特許文献3記載された歯科用硬化性組成物及び水素結合性DCCと同様に、有機無機複合フィラーとして特定の細孔容積を有する微多孔性の有機無機複合フィラーを使用したことに起因して、重合収縮が少なく、機械的強度、耐摩耗性及び審美性に優れる硬化体を与えることができると言う効果を奏する。
また、水素結合性DCCと同様に、有機無機複合フィラーの有機樹脂成分及び硬化体の有機マトリックスの原料となる重合性単量体成分に水素結合性モノマーを夫々一定量配合したことに起因して、機械的強度のさらに高い硬化体が得られると言う効果を奏する。
そして、重合開始剤(C)として特定の光重合開始剤を使用したことにより、より詳しくは、その一成分としてアリールヨードニウム塩化合物を使用したことにより、操作性および形態保持性が改善されると言う効果を奏する。すなわち、水素結合性DCCでは、ペースト状態でのベタツキが発生による操作性の低下が見られ、また、臼歯I級窩洞等に充填する際に形成した咬合面形態が保持されないことがあった。これに対し、本発明の歯科用硬化性組成物では、ペースト状態のバサツキが抑制されると共に長期間保管後においてもベタツキが生じて操作性が低下することがなく、優れた操作性を長期間維持できる。しかも形態保持性も良好であり、更に、硬化体の表面硬度を高くすることもできる。
本発明の歯科用硬化性組成物は、水素結合性官能基を有する重合性単量体を少なくとも50質量%含む重合性単量体成分(a)を重合して得た有機樹脂成分と、無機成分と、を含み、窒素吸着法で測定した細孔容積(ここで、細孔とは細孔径が1~500nmの範囲の孔をいう)が0.01~0.30cm/gである、多孔性の有機無機複合フィラー(A);水素結合性官能基を有する重合性単量体(水素結合性モノマー)を少なくとも10質量%含む重合性単量体成分(B);及び重合開始剤(C);を含んでなる歯科用硬化性組成物において、前記重合開始剤(C)は、光増感用化合物(c1)、還元剤(c2)およびアリールヨードニウム塩化合物からなる光酸発生剤(c3)を含む光重合開始剤を含み、且つ前記アリールヨードニウム塩化合物の配合量が前記重合性単量体成分(B)の総質量100質量部に対して0.1~5質量部である、ことを特徴とする。すなわち、本発明の歯科用硬化性組成物は、前記特許文献4に記載された歯科用硬化性組成物(水素結合性DCC)において、重合開始剤(C)として特定の光重合開始剤を含むようにした点に特徴を有し、そのことによって水素結合性DCCの操作性および形態保持性を改善したものである。
上記特定の光重合開始剤を使用することによりこれら性質が改善する理由は必ずしも明らかではないが、本発明者等によって確認された事実に基づき、次のよう理由であると推定される。すなわち、有機無機複合フィラーの有機樹脂成分となる重合性単量体成分(a)及び硬化性組成物の重合性単量体成分(B)として水素結合性モノマーを含まないものを使用した場合には、水素結合性DCCと比べて硬化体の機械機強度の点では劣るものの操作性および形態保持性の点では優れることが多く、また、水素結合性DCCにおいて水素結合性モノマーの含有量が高いほど操作性および形態保持性が低下する傾向が見られたことから、操作性および形態保持性が良好とならない理由は、水素結合によって有機無機複合フィラーとマトリックスモノマーとの親和性が高くなり、ペーストの流動性が上がり、ベタツキおよび形態保持性が低下したことによると推察される。また、光酸発生剤としてアリールヨードニウム塩化合物を使用したときには改善効果が見られ、それ以外の化合物を用いた場合には効果が見られなかったことから、比較的親水的なヨードニウム塩を配合することで、アリールヨードニウム塩化合物が有効に存在するペースト状態おいて前記有機無機複合フィラー(A)の有機成分とモノマー成分(B)との間の親和性が低下し、ベタツキが抑制され、形態保持性が向上したものと考えられる。そして、光重合させて硬化させた際における親和性は水素結合性DCCと変わらないため高強度化には悪影響を及ぼさなかったものと推定している。更に、硬化体の表面硬度が高くなることに関しては、光増感化合物および還元剤およびアリールヨードニウム塩化合物が共存している硬化性組成物に活性光を照射すると、アリールヨードニウム塩化合物からアリールラジカルおよび(対アニオンに由来する)酸が発生し、重合反応が促進されたためであると考えられる。
なお、特許文献4では、重合開始剤(C)について、光重合開始剤を用いるのが好適であるとされ、必要に応じて添加してもよいものの一つとしてアリールヨードニウム塩も挙げられているが、光増感用化合物(c1)、還元剤(c2)及び光酸発生剤(c3)の組み合わせからなり、且つ光酸発生剤(c3)としてアリールヨードニウム塩化合物を用いた光重合開始剤は、直接的には開示されていない。すなわち、実際に使用されている重合開始剤は、光増感用化合物であるカンファーキノン(CQ)と還元剤であるN,N-ジメチル-p-安息香酸エチル(DMBE)とからなる光重合開始剤のみであり、アリールヨードニウム塩の前記例示も、その他多くの使用可能な化合物と共に並列的に例示されているに過ぎない。また、特許文献4では、ペースト性状の安定性や形態保持性に関する評価はなされておらず、これらの点で課題があることも認識されていない。
以下、本発明の歯科用硬化性組成物に含まれる各成分を中心に、本発明の歯科用硬化性組成物について詳しく説明する。なお、本明細書においては特に断らない限り、数値x及びyを用いた「x~y」という表記は「x以上y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値xにも適用されるものとする。また、本明細書において、「(メタ)アクリル系」との用語は「アクリル系」及び「メタクリル系」の両者を意味する。同様に、「(メタ)アクリレート」との用語は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両者を意味し、「(メタ)アクリロイル」との用語は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両者を意味する。
1.有機無機複合フィラー(A)
有機無機複合フィラーとは、無機成分(通常は、微細な無機フィラー)と有機性成分である有機樹脂とが複合化したフィラーを意味する。本発明の歯科用硬化性組成物で使用する有機無機複合フィラー(A)は、上記したように、水素結合性DCCにおける(A)有機複合フィラーに相当するものであり、水素結合性官能基を有する重合性単量体を少なくとも50質量%含む重合性単量体成分(a)を重合して得た有機樹脂成分と、無機成分と、を含み、窒素吸着法で測定した細孔容積(ここで、細孔とは細孔径が1~500nmの範囲の孔をいう)が0.01~0.30cm/gである、多孔性の有機無機複合フィラーである。
有機無機複合フィラー(A)は、前記特許文献3記載された多孔性有機無機複合フィラー及び水素結合性DCCにおける多孔性有機無機複合フィラーと同様に、有機無機複合フィラーを脆くせず剛制し易いものとすると共にアンカー効果による硬化体の機械的強度向上効果が得られるようにするために、上記したような細孔容積を有する。このような効果の観点から、上記細孔容積は、0.03~0.20cm/gであることが好ましい。
なお、特許文献3では、細孔径1~500nmの細孔の総細孔容積を水銀圧入法で測定しているが、同範囲の細孔径の細孔容積は窒素吸着法でも測定可能であること、及び本発明者等の検討により細孔径1~500nmの細孔は、細孔径が50nm付近にピークを有する極めてシャープな細孔分布を有し、水銀圧入法では測定困難な細孔径が1nm未満の細孔や窒素吸着法では測定困難な500nmを越える細孔径の細孔は実質的に存在しないことが確認されたことから、本発明では、特許文献4と同様に、取り扱いに注意を要する水銀を使用する必要のない、窒素吸着法により測定された、具体的には、窒素吸着によるBET法で測定した等温吸着曲線からBJH法により細孔径分布を計算することによって求めた細孔容積を採用することとしている。また、凝集間隙を形成する細孔の平均孔径は、窒素吸着法で測定した孔径1~500nmの範囲の孔における細孔容積分布をもとに求めたメディアン細孔直径である。
前記有機無機複合フィラー(A)は、前記有機樹脂成分として前記重合性単量成分(a)の硬化体からからなる樹脂層と、前記無機成分として平均粒子径が10~1000nmである複数の無機一次粒子と、を有し、前記複数の無機一次粒子どうしが前記樹脂層を介して空隙を形成するように結合した凝集構造を含む有機無機複合凝集粒子からなるものであることが好ましい。
このような、有機無機複合フィラー(A)は、平均粒子径10~1000nmである無機一次粒子が凝集した無機凝集粒子を、前記重合性単量体成分(a)及び重合開始剤を有機溶媒に溶解させた溶液に浸漬した後に有機溶媒を除去してから重合硬化することにより得ることができる。このとき、上記無機凝集粒子は、通常、球状、略球状、又はドーナツ状或いは粒子の表面に窪みが形成されたディンプル状等の所謂トーラス状であり、大部分は主要外表面が曲面で構成される曲面形状体である。そして、最終的に得られる有機無機複合フィラーを構成する有機無機複合凝集粒子も上記無機凝集粒子の形状に対応する形状を有する。
本発明の歯科用硬化性組成物における有機無機複合フィラー(A)の含有量は、少なすぎると、得られる歯科用硬化性組成物に十分な強度を与え難く、多すぎるとペースト状態でのパサツキによる操作性の低下が起こり得るため、述する重合性単量体成分(B)の総質量100質量部に対して、00~300質量部とする

以下、有機無機複合フィラー(A)を構成する、有機樹脂成分、無機フィラー、及び有機無機複合フィラー(A)の製造方法について詳しく説明する。
1-1.有機樹脂成分及びその原料となる重合性単量体成分(a)
本発明の歯科用硬化性組成物においては、水素結合性DCCの有機無機複合フィラーと同様に、有機無機複合フィラー(A)をその他の成分と混合して歯科用硬化性組成物を調製する際に、後述する重合性単量体成分(B)に含まれる水素結合性モノマーとの間で水素結合を形成し、歯科用硬化性組成物の硬化体においてもその水素結合によって機械的強度を更に向上させる。そのため、前記有機無機複合フィラー(A)における有機樹脂成分は、水素結合性モノマーを少なくとも50質量%{当該質量%は、重合性単量体成分(a)の総質量を基準とする。}以上含む重合性単量体成分(a)を重合させて得られものである必要がある。
水素結合性モノマーの上記含有率が50%未満である場合には、上記機械的強度向上効果が得られない。上記機械的強度向上効果の観点から、重合性単量体成分(a)中に占める水素結合性モノマーの割合は、70~100質量%であることが好ましい。なお、重合性単量体成分(a)中における水素結合性モノマーの量が100質量%未満である場合には、重合性単量体成分(a)は水素結合性モノマー以外の重合性単量体(以下、「非水素結合性モノマー」ともいう。)を含むことになり、その量は水素結合性モノマーの占める量の残部ということになる。以下、水素結合性モノマー及び非水素結合性モノマーについて説明する。
(1)水素結合性モノマー
水素結合性モノマーが有する「水素結合性官能基」とは、水素結合、すなわち、電気陰性度の大きな原子(O、N、S等)に結合することによって電気的に陽性に分極した水素原子(アクセプター)と、孤立電子対を有する電気的に陰性な原子(ドナー)との間に形成される結合性の相互作用を起こす官能基を意味する。上記水素結合において、ドナーとして機能する部分とアクセプターとして機能する部分を有する置換基が、水素結合性官能基であり、具体的には、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH)、チオール基(-SH)、ウレタン基{ウレタン結合:-NHC(=O)O-}、アミド基{カルバモイル基:-C(=O)NH}などが、これに該当する。
水素結合性モノマーとしては、上記水素結合性官能基を有し且つ重合性基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物などのカチオン重合性単量体や、ラジカル重合性単量体などが使用できる。重合収縮低減の観点からは、開環重合が可能なカチオン重合性単量体が好適に使用されるが、生体毒性の低さや重合活性の高さの観点からは、ラジカル重合性単量体が好適に使用される。
好適に使用できるラジカル重合性の水素結合性モノマー例示すれば、単官能性ビニルモノマーとして、単官能であるメタクリル酸あるいはアクリル酸、p-メタクリロイルオキシ安息香酸、N-2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピル-N-フェニルグリシン、4-メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、6-メタクリロイルオキシヘキサメチレンマロン酸、10-メタクリロイルオキシデカメチレンマロン酸、2-メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、10-メタクリロイルオキシデカメチレンジハイドロジェンフォスフェート等を挙げることができる。
また、二官能性ビニルモノマーとして、2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパンおよび対応するアクリレート、1,2-ビス(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エチル、1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン等を挙げることができる。
これらの中でも少なくとも1分子中に2つ以上の水素結合性官能基を有するラジカル重合性、具体的には、2,2-ビス[4-(3-メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン(GMA)や1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン(UDMA)などを使用することが好ましい。なお、これら水素結合性モノマーは、単独で使用しても、異種を混合して用いてもよい。
(2)非水素結合性モノマー
非水素結合性モノマーとしては、重合性基を有する化合物、すなわち、カチオン重合性又はラジカル重合性を有する化合物であって、前記水素結合性官能基を有しないものであれば、歯科用硬化性組成物で使用される重合性単量体が特に制限なく使用できる。得られる重合体の機械的強度や生体安全性等が良好であることから、(メタ)アクリル系重合性単量体が好ましい。また、重合性の高さや硬化体の機械的物性が特に高くなる等の理由から、分子内に重合性官能基を複数有する(二官能以上の)重合性単量体、特に二官能~四官能の重合性単量体を使用することが好ましい。
好適に使用できる非水素結合性モノマーを例示すれば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、2,2-ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、等を挙げることができる。
1-2.無機フィラー
無機フィラーとしては、平均粒子径が10~1000nmである複数の無機一次粒子を含むもの、特このような無機一次粒子が凝集した凝集フィラーを使用することが好ましい。無機一次粒子としては、非晶質シリカ、シリカ‐ジルコニア、シリカ-チタニア、シリカ-チタニア-酸化バリウム、シリカ-チタニア-ジルコニア、石英、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ガラス等の無機酸化物からなるものが使用でき、中でもシリカ系複合酸化物粒子、特にシリカ-ジルコニア粒子であることが好ましい。また、耐摩耗性、表面滑沢性に優れ、かつ有機無機複合フィラーが均一な細孔を有し、その開口部が有機樹脂相で閉孔されて空気泡が内包され難い点から、平均均斉度が0.6以上のも球形状または略球形状ものを使用することが好ましい。無機一次粒子の平均粒子径は、10~1000nmであればよいが、40~800nmであることが好ましく、50~600nmであることが特に好ましい。
1-3.有機無機複合フィラー(A)の製造方法
前記無機一次粒子又はその凝集粒子を必要に応じてシランカップリング剤により表面処理した後に噴霧乾燥して得た無機凝集粒子を、重合性単量体成分(a)及び重合開始剤を有機溶媒に溶解させた重合性単量体溶液に浸漬した後に有機溶媒を除去してから重合硬化することにより、好適に製造することができる。
必要に応じて行われる表面処理で使用されるシランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。また、上記表面処理における噴霧乾燥は、無機粒子を水などの揮発性の液状媒体に分散させスラリー状にしたものを、例えば高速気流などにより微細な霧状に調製し、この霧状物を高温の気体と接触させることで液状媒体を揮発させ、液滴内に分散する無機粒子を実質的に一個の凝集粒子に集めて無機凝集粒子を作る方法をいう。この方法によれば、その噴霧形式や噴霧条件によって凝集粒子の粒径や粒度分布が自在に制御可能である。
前記無機凝集粒子を浸漬する重合性単量体溶液に使用する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、ジクロロメタンなどが好適に使用できる。重合性単量体溶液における重合性単量体成分(a)の含有量は、有機溶媒100質量部に対して10~50質量部であることが好ましい。また、重合開始剤としては、遮光下や赤色光下などの作業環境を選ばない点から熱重合開始剤を使用することが好ましく、操作上の安全性が高く、有機無機複合フィラーへの着色の影響が少ないアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が好適に使用される。重合開始剤の配合量は、通常、重合性単量体成分(a)100質量部対して、0.1~5質量部である。
上記重合性単量体溶液の無機凝集粒子への浸漬は無機凝集粒子100質量部に対し重合性単量体が30~500質量部、特に50~200質量部となるような量の重合性単量体溶液中に無機凝集粒子を混合すれば良く、混合後は、1時間以上放置することが好ましい。
有機溶媒の除去は、有機溶媒の実質的全量(通常、95質量%以上)が除去され、視覚的にはさらさらの粉体が得られるまで実施するのが好ましい。有機溶媒の除去操作は、このような除去が可能な方法であれば特に限定されず、例えば0.01~50ヘクトパスカル、特に0.1~10ヘクトパスカルといった減圧下で乾燥させる減圧乾燥(又は真空乾燥が)により、好適に行うことができる。また重合硬化は、使用する重合開始剤の種類に応じて好適な方法を適宜選択して行えばよい。
2.重合性単量体成分(B)
重合性単量体成分(B)は、水素結合性DCCの重合性単量体と同様に、歯科用硬化性組成物を調製する際に、前記有機無機複合フィラー(A)の有機樹脂成分に含まれる水素結合性基との間で水素結合を形成し、歯科用硬化性組成物の硬化体においてもその水素結合によって機械的強度を更に向上させるために、水素結合性モノマーを10質量%{当該質量%は、重合性単量体(B)の総質量を基準とする。}以上含有する必要がある。水素結合性モノマーの含有量が多くなると、本発明の歯科用硬化性組成物の粘度が上昇する傾向があり、歯牙治療の際の操作がし易い粘度とするという理由から、重合性単量体(B)における水素結合性モノマーの含有量は、10~70質量%とするこのとき、水素結合性モノマー以外の重合性単量体は、非水素結合性モノマーが占めることになる。

水素結合性モノマー及び非水素結合性モノマーとしては、重合性単量体成分(a)における水素結合性モノマー及び非水素結合性モノマーと同じものが使用できる。得られる硬化体の機械的強度や生体安全性等が良好であることから、何れも(メタ)アクリル系重合性単量体が好ましいこと、及び重合性の高さや硬化体の機械的物性が高くなる等の理由から、二官能以上、特に二官能~四官能の重合性単量体を使用することが好ましい点も同様である。
3.重合開始剤(C)
本発明の歯科用硬化性組成物では、重合開始剤(C)として、光増感用化合物(c1)、還元剤(c2)およびアリールヨードニウム塩化合物からなる光酸発生剤(c3)を含む光重合開始剤を使用し、且つ前記光酸発生剤がアリールヨードニウム塩化合物の配合量を前記重合性単量体成分(B)の総質量100質量部に対して0.1~5質量部とする必要がある。
アリールヨードニウム塩化合物は、上記光重合開始剤の光酸発生剤と機能すると同時に、光重合させる前のペースト状態において、有機無機複合フィラー(A)の有機成分とモノマー成分(B)との間の親和性を(一時的に)低減することによるものと思われるが、結果としてペーストの操作性及び形態保持性を改良させる改良剤として機能を有する。光酸発生剤としてアリールヨードニウム塩化合物以外のものを使用した場合にはこのような効果を得ることはできない。
以下に、前記光重合開始剤を構成する各成分について説明する。
3-1.光増感化合物(c1)
光増感化合物(c1)としては、最大吸収波長を350~700nmに有し、重合に有効な活性種を生成させる機能を有する化合物が特に制限なく使用できる。ここで、活性種とは、活性の高い中性のラジカル種を意味し、通常、光吸収し励起した光増感化合物と重合性単量体若しくは他の化合物との間でエネルギー移動または電子移動する結果として生じる。
光増感化合物として特に好適に使用される化合物を例示すれば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類;ベンゾフェノン、4,4'-ジメチルベンゾフェノン、4-メタクリロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ジアセチル、2,3-ペンタジオンベンジル、カンファーキノン、9,10-フェナントラキノン、9,10-アントラキノンなどのα-ジケトン類;2,4-ジエトキシチオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン化合物;ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイドなどのビスアシルホスフィンオキサイド類;等を挙げることができる。
以上の中でも、カンファーキノン、9,10-フェナントレンキノン、ベンジル、ジアセチル、アセチルベンゾイル、2,3-ペンタジオン、2,3-オクタジオン、4,4’-ジメトキシベンジル、アセナフテンキノン等のα-ジケトン化合物を使用することが特に好ましい。
光増感化合物の使用量は特に制限されないが、通常は、重合性単量体(B)100質量部に対して0.01~10質量部であり、0.03~5質量部であることが好ましく、0.05~2質量部であることがより好ましい。
3-2.還元剤(c2)
還元剤(或いは電子供与体)は、前記光増感化合物と組み合わせて使用されることで重合促進機能を有する。還元剤としては公知のものが何ら制限なく使用できるが、高い重合性が得られるという理由から第3級アミン化合物を使用することが好ましい。第3級アミン化合物としては、分子中に芳香族環を有していない脂肪族第3級アミン化合物又は分子中に芳香族環を有する芳香族第3級アミン化合物が使用でき、芳香族第3級アミン化合物を使用することが好ましい。高い重合活性を示し、照射光による短時間での重合硬化性を維持し、尚且つ高い硬化体物性を発現させ、さらには、硬化体を太陽光等の紫外光に暴露したときの着色を低減することができるという理由から、芳香族第3級アミン化合物と脂肪族第3級アミン化合物とを併用することが特に好ましい。
好適に使用される脂肪族第3級アミン化合物としては、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート等の脂肪族第3級アミン化合物を挙げることができる。また、好適に使用される芳香族第3級アミン化合物としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、p-(N,N-ジメチル)アミノ安息香酸メチル、p-(N,N-ジメチル)アミノ安息香酸エチル、p-(N,N-ジメチル)アミノ安息香酸アミル等を挙げることができる。これら芳香族第3級化合物及び/又は脂肪族第3級アミン化合物は、それぞれ、1種単独で使用することもできるし、また、2種以上を併用することもできる。
還元剤(c2)の使用量は、通常、重合性単量体成分(B)100質量部に対して、0.01~10質量部であり、0.03~5質量部、特に0.05~2質量部であることが好ましい。
3-3.光酸発生剤(c3):アリールヨードニウム塩化合物
光酸発生剤(c3)として使用するアリールヨードニウム塩化合物としては、フェニルヨードニウム、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p-メトキシフェニル)ヨードニウム、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、p-イソプロピルフェニル-p-メチルフェニルヨードニウム、ビス(m-ニトロフェニル)ヨードニウム、p-tert-ブチルフェニルフェニルヨードニウム、p-メトキシフェニルフェニルヨードニウム、p-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム、p-フェノキシフェニルフェニルヨードニウム等のカチオンとニオンとからなる塩を使用する。好適に使用できるアリールヨードニウム塩を例示すれば、後述する実施例で使用されている4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム-2-カルボキシレートモノハイドレート、ビス(4-ターシャリブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェートを挙げることができる。
アリールヨードニウム塩化合物の配合量は、歯科用硬化性組成物の硬化体に高い硬化性を与え、さらに、本発明における歯科用硬化性組成物のペースト状態での操作性を向上させるために、重合性単量体成分(B)100質量部に対して、0.1~5質量部である必要がある。アリールヨードニウム塩化合物の上記配合量{重合性単量体成分(B)100質量部に対する配合量}が0.1質量部未満であるときには所期の効果が得られない。また、5質量部を越えるときには、過剰使用となるばかりでなく、硬化体の機械的強度向上効果が得られないことがある。効果の観点から、アリールヨードニウム塩化合物の上記配合量は、0.2~5質量部、特に0.3~2質量部配合することが好ましい。
4.その他成分
4-1.無機フィラー(D)
本発明の歯科用硬化性組成物には、前記有機無機複合フィラーと組み合わせて配合することで硬化性組成物中のフィラー含有量が向上し、高い強度が得られるという理由から、無機フィラー(D)を配合することが好ましい。無機フィラー(D)としては、歯科用修復材料の充填材として公知の無機フィラーが何ら制限なく用いられるが、代表的な無機フィラーを例示すれば、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等の金属酸化物類が挙げられる。また必要に応じて、ケイ酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等の歯科用の無機充填材として公知のカチオン溶出性の無機充填材を配合しても良い。これらは一種または二種以上を混合して用いても何ら差し支えない。
これら無機フィラーの粒径は特に限定されず、一般的に歯科用材料として使用されている、平均粒径が0.01~100μmのもの、特に10~1000nmであるものが好適に使用できる。また、無機フィラーの屈折率も特に制限されず、一般的な歯科用の無機フィラーが有する1.4~1.7の範囲のものが制限なく使用でき、目的に合わせて適宜設定すればよい。粒径範囲や平均粒径、屈折率、材質の異なる複数の無機フィラーを併用しても良い。無機フィラーの形状も特に限定されないが、得られる硬化体の表面滑沢性が増すと言う観点から、球状の無機フィラーを用いることが好ましい。
重合性単量体とのなじみを良くし、機械的強度や耐水性を向上させるという理由から、上記無機フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することが好ましい。表面処理は有機無機複合フィラー(A)の製造方法で説明したのと同様の方法で行うことができる。
無機フィラー(D)の充填割合は、有機無機複合フィラー(A)の配合量に応じて、重合性単量体と混合したときの粘度や硬化体の機械的強度を考慮して、適宜決定すればよいが、多すぎると操作性が低下するので、有機無機複合フィラー(A)と無機フィラー(D)との配合量の合計質量が、重合性単量体成分(B)100質量部に対して600質量部を超えない範囲とすることが好ましい。特に、前記重合性単量体(B)総質量100質量部に対する、前記有機無機複合フィラー(A)及び前記無機フィラー(D)の含有量が、夫々(A):100~300質量部及び(D):100~300質量部であり、且つ前記(A)及び前記(D)の合計の含有量が250~550質量部であることが好ましい。
4-2.その他添加剤
さらに、本発明の歯科用硬化性組成物においては、その効果を著しく阻害しない範囲で、公知の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、重合禁止剤、顔料、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
5.本発明の歯科用硬化性組成物の調製方法及び用途
本発明の歯科用硬化性組成物は、一般に、前記各必須成分及び必要に応じて添加する各任意成分を所定量とって、前記有機無機複合フィラー(A)及び必要に応じて配合される前記無機フィラー(D)が前記重合性単量体成分(B)中に均一に分散するように十分に混練し、さらにこのペーストを減圧下脱泡して気泡を除去することによって得ることができる。
本発明の歯科用硬化性組成物は、光硬化性コンポジットレジンに代表される歯科用充填修復材料、特に高い咬合圧が負荷される臼歯部の治療に用いる歯科用充填修復材料として好適に使用される。また、歯科用セメント、支台築造用の修復材料等としても使用することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。以下の実施例及び比較例に用いた化合物の略称を以下に示す。
1.略称・略号
(1)重合性単量体
<水素結合性モノマー>
・GMA:2,2-ビス[(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン
・UDMA:1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン。
<非水素結合性モノマー>
・3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
・HD:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート
・D2.6E:2,2-ビス(4-(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン。
(2)無機フィラー
・F-1:一次粒子の平均粒子径200nmの、ゾルゲル法で製造した球状(平均均斉度0.95)のシリカ-ジルコニア。
(3)重合開始剤
<熱重合開始剤>
・AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
<光重合開始剤>
〔光増感化合物〕:
・CQ:カンファーキノン
〔還元剤(第3級アミン化合物)〕
・DMBE:N,N-ジメチル-p-安息香酸エチル
・MDEOA:N-メチルジエタノールアミン
〔光酸発生剤(アリールヨードニウム塩化合物)〕:
・DPIB:4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
・DPICH:ジフェニルヨードニウム-2-カルボキシレートモノハイドレート
・DPIFP:ビス(4-ターシャリブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート
〔光酸発生剤(アリールヨードニウム塩化合物以外)〕:
・TCT:2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン。
2.有機無機複合フィラーの調製
下記製造例1~5に従い、有機無機複合フィラーの調製を調製し、評価を行った。まず、使用した無機フィラー及び得られた有機無機複合フィラーの評価方法について説明する。
(1)無機フィラーの平均粒子径、および平均均斉度の測定方法
走査型電子顕微鏡(フィリップス社製、「XL-30S」)で粉体の写真を5000~100000倍の倍率で撮り、画像解析ソフト(「IP-1000PC」、商品名;旭化成エンジニアリング社製)を用いて、撮影した画像の処理を行い、その写真の単位視野内に観察される粒子の数(30個以上)および一次粒子径(最大径)を測定し、測定値に基づき下記式により数平均粒子径:Xを算出した。また、単位視野内に観察される粒子について、その数(n:30以上)、粒子の最大径を長径(Li)、該長径に直交する方向の径を短径(Bi)を求め、下記式により無機フィラーの平均均斉度を算出した。
Figure 0007195549000001
Figure 0007195549000002
(2)有機無機複合フィラーの平均粒子径(粒度)の測定
0.1gの有機無機複合フィラーをエタノール10mlに分散させ、超音波を20分間照射した。レーザー回折-散乱法による粒度分布計(「LS230」、ベックマンコールター製)を用い、光学モデル「フラウンフォーファー」(Fraunhofer)を適用して、体積統計のメディアン径を求めた。
(3)有機無機複合フィラーにおける、凝集間隙の細孔容積測定
試料セルに有機無機複合フィラーを1.0g入れ、前処理装置(「バッキュプレップ061」株式会社島津製作所製)を用いて、120℃で3時間、真空排気により前処理を行った。その後、吸着ガスとして窒素、冷媒として液体窒素を用いて、ガス吸着法細孔分布測定装置(「トライスターII3020」株式会社島津製作所製)により、細孔径1~500nmの範囲の孔の総細孔容積を求めた。
製造例1~4
無機フィラーを水に入れ、循環型粉砕機SCミルを用いて無機フィラーを分散させた分散液を得た。次いで、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランと酢酸を水に加え撹拌し、pH4の均一な溶液を得た。この溶液を上記無機粒子分散液に添加し、均一に混合した。その後、上記分散液をノズル先端で粒子化エアと衝突させることで微粒子とする噴霧乾燥機(スプレードライヤー「NL-5」、大川原化工機株式会社製)を用いて、噴霧圧力を0.08MPa、乾燥温度を230℃とし、噴霧乾燥法により乾燥した。その後、噴霧乾燥した無機粉体を120℃、15時間真空乾燥して無機凝集粒子を得た。
次いで、所定の量比で混合した重合性単量体と、重合開始剤としてAIBN、さらに有機溶媒としてメタノールを混合した重合性単量体溶液に、重合性単量体と無機凝集粒子が所定の比率となるように無機凝集粒子と上記重合性単量体溶液とを混合し、この混合物がスラリー状の性状となったことを確認してから1時間静置した。
上記の混合物をロータリーエバポレーターで攪拌しながら、減圧度10ヘクトパスカル、加熱条件40℃(温水バスを使用)の条件で1時間乾燥し、有機溶媒の除去を行った。有機溶媒の除去により、さらさらな粉体が得られた。
上記の粉体をロータリーエバポレーターで攪拌しながら、減圧度10ヘクトパスカル、加熱条件100℃(オイルバスを使用)の条件で、1時間の加熱を行い、上記粉体中の重合性単量体を重合硬化させ、曲面形状の多孔性有機無機複合フィラーを得た。得られた有機無機複合フィラーの平均粒子径、細孔容積を測定した。結果を表1に示す。
製造例5
製造例1と同じ無機凝集粒子100gと、重合性単量体としてGMAを12.5g、HDを12.5g、重合開始剤としてAIBNをそれぞれ乳鉢に投入し、混合してペースト状の混合物を調製した。このペースト状の混合物を減圧下で脱泡した後、100℃で30分間重合硬化させた。硬化物を振動ボールミル(ジルコニアボール粒径:5mm)で粉砕し、不定形の非孔性有機無機複合フィラーを得た。得られた有機無機複合フィラーの平均粒子径、細孔容積を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0007195549000003
3.歯科用硬化性組成物の調製と評価
後述する実施例1~14及び比較例1~6に従って、歯科用硬化性組成物の調製し、その評価を行った。まず、歯科用硬化性組成物の評価方法について説明する。
(1)ペーストの操作性の評価
硬化前の歯科用硬化性組成物のペースト性状について、操作性の観点から以下の基準に基づいて評価を行った。ベタツキが少ないものには○、特に少ないものには◎、ベタツキが強く操作しにくいペースト性状のものは×とした。さらに、バサツキが少ないものには○、特に少ないものには◎、バサツキが強く操作しにくいペースト性状のものは×の判定とした。評価は歯科用硬化性組成物を調製した直後および37℃で6カ月間保管した後に実施した。
(2)ペーストの形態保持性の評価法
硬化前の歯科用硬化性組成物のペーストの形態保持性は以下の方法にて評価を行った。右下6番の咬合面中央部にI級窩洞(直径4mm、深さ2mm)を再現した硬質レジン歯に硬化性組成物を充填し、充填されたペーストに咬合面形態を付与した。その後前記歯科用硬化性組成物を充填した硬質レジン歯を50℃のインキュベータ内に20分間静置し、付与した形態が保持されているか評価した。付与した形態に僅かに変化が確認されたものは○、全く変化しないものは◎、形態を保持できていないものは×と判定した。評価は歯科用硬化性組成物を調製した直後および37℃で6カ月間保管した後に実施した。
(3)硬化体の曲げ強さの測定
歯科用硬化性組成物のペーストについて、充填器を用いてステンレス製型枠に充填し、ポリプロピレンで圧接した状態で、可視光線照射器パワーライト(トクヤマ社製)を用いて一方の面から30秒×3回、全体に光が当たるように場所を変えてポリプロピレンに密着させて光照射を行なった。次いで、反対の面からも同様にポリプロピレンに密着させて30秒×3回光照射を行い硬化体を得た。#1500の耐水研磨紙にて、硬化体を2×2×25mmの角柱状に整え、この試料片を試験機(島津製作所製、オートグラフAG5000D)に装着し、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分で3点曲げ破壊強度を測定した。試験片5個について評価し、その平均値を曲げ強さとした。荷重-たわみ曲線を得m下記式に基づき曲げ強度:σ(Pa)を求めた。なお、式中において、Pは試験片破折時の荷重(N)を、Sは支点間距離(m)を、Wは試験片の幅(m)を、Bは試験片の厚さ(m)を夫々表す。
Figure 0007195549000004
(4)硬化体の硬度の測定
次に示す方法で硬化体の硬度を測定した。歯科用硬化性組成物のペーストについて、6mmΦ×1.0mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のモールドに充填し、ポリプロピレンで圧接した状態で、可視光線照射器パワーライト(トクヤマ社製)を用いて一方の面から20秒間照射し、硬化体を得た。得られた硬化体を微小硬度計(松沢精機製MHT-1型)にてヴィッカース圧子を用いて、荷重100gf、荷重保持時間30秒で試験片にできた窪みの対角線長さにより求めた。
(5)歯科用硬化性組成物の調製方法
(実施例1)
GMA:60質量部及び3G:40質量部からなる重合性単量体成分(B)に重合開始剤として、光増感化合物(c1)であるCQ:0.20質量部、還元剤(c2)であるDMBE:0.35質量部、及びアリールヨードニウム塩化合物からなる光酸発生剤(c3)であるDIPB:0.3質量部を完全に溶解させた。その後、乳鉢内で、得られた溶液と無機フィラーF-1:200質量部、及び製造例1で得た曲面形状有機無機複合フィラーCF-1:200質量部とを手動で均一になるまで混合し、その後20分間混練後に脱泡することで歯科用硬化性組成物を調製した。得られた歯科用硬化性組成物について上記の方法に基づいて各物性を評価した。結果を表2に示す。
(実施例2~14、比較例1~6)
表2に示す組成(質量部)にしたがって、実施例1と同様に実施例2~14、比較例1~6の歯科用硬化性組成物を調製した。なお、表2の脚注に示すように、HM率は、原料となる重合性単量体成分(a)中に占める水素結合性官能基を有する重合性単量体の含有率(質量%)又は重合性単量体(B)中に占める水素結合性官能基を有する重合性単量体の含有率(質量%)を示し、「↑」は、同上を意味する。
得られた各歯科用硬化性組成物について各物性を評価した結果を合わせて表3に示す。
Figure 0007195549000005
Figure 0007195549000006
表3に示されるように、本発明で規定する条件を満足する実施例1~14の歯科用硬化性組成物は、調製直後及び長期間保管後の何れにおいても、ベタツキおよびバサツキが少なく、更に良好な形態保持性を示し、その硬化体は高い曲げ強さとヴィッカース硬度を示している。そして、これら実施例の中でも還元剤(c2)として芳香族第3級アミンと脂肪族第3級アミンとを併用した実施例2、7、9および実施例12では、曲げ強さ及びヴィッカース硬度が高い値を示している。
これに対し、重合開始剤中の光酸発生剤(c3)としてアリールヨードニウム塩を配合していない比較例1及び2では、ペーストのベタツキが大きく、付与した形態を保持する能力が低く、ヴィッカース硬度はアリールヨードニウム塩を配合した場合よりも低くなっている。また、重合性単量体として水素結合性官能基を有するものを配合していない比較例3では、(ペーストがベタつく以前の問題として)ペーストのバサツキが大きく使用し難いものとなり、硬化体の曲げ強さも低下している。さらに、光酸発生剤としてアリールヨードニウム塩以外の化合物を配合した比較例4、5では、高い曲げ強さとヴィッカース硬度は得られるものの、操作性の改善効果は得られない。さらにまた、非孔性の不定形有機無機複合フィラーを配合した比較例6では、アリールヨードニウム塩を配合しなくても比較的良好な操作性を示すが、曲げ強さが大きく低下し、ヴィッカース硬度も低い。

Claims (3)

  1. 有機樹脂成分と、無機成分と、を含み、窒素吸着法で測定した細孔容積(ここで、細孔とは細孔径が1~500nmの範囲の孔をいう)が0.01~0.30cm/gである、多孔性の有機無機複合フィラー(A);重合性単量体成分(B);並びに光増感用化合物(c1)、還元剤(c2)および光酸発生剤(c3)を含有する光重合開始剤を含む重合開始剤(C);を含んでなる硬化性組成物からなる臼歯治療用歯科用充填修復材料であって、
    前記有機無機複合フィラー(A)の前記有機樹脂成分は、水素結合性官能基を有する重合性単量体を少なくとも50質量%含む重合性単量体成分(a)を重合して得た有機樹脂成分であり、
    前記重合性単量体成分(B)は、水素結合性官能基を有する重合性単量体を10~70質量%含有し、
    前記光酸発生剤(c3)は、ジフェニルヨードニウム、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p-メトキシフェニル)ヨードニウム、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、p-イソプロピルフェニル-p-メチルフェニルヨードニウム、ビス(m-ニトロフェニル)ヨードニウム、p-tert-ブチルフェニルフェニルヨードニウム、p-メトキシフェニルフェニルヨードニウム、p-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム又はp-フェノキシフェニルフェニルヨードニウムからなるカチオンを有するアリールヨードニウム塩化合物からなり、
    前記重合性単量体成分(B)の総質量100質量部に対する、前記有機無機複合フィラー(A)、前記光増感用化合物(c1)、前記還元剤(c2)及び前記アリールヨードニウム塩化合物からなる光酸発生剤(c3)の配合量が、夫々、(A):100~300質量部、(c1):0.01~10質量部、(c2):0.01~10質量部、及び(c3):0.1~5質量部である、
    ことを特徴とする前記臼歯治療用歯科用充填修復材料。
  2. 有機無機複合フィラー(A)が、
    前記有機樹脂成分として、前記重合性単量成分(a)の硬化体からなる樹脂層と
    前記無機成分として、平均粒子径が10~1000nmである複数の無機一次粒子と、
    を有し、
    前記複数の無機一次粒子どうしが前記樹脂層を介して空隙を形成するように結合した凝集構造を含む微多孔性有機無機複合凝集粒子からなる、請求項1に記載の臼歯治療用歯科用充填修復材料。
  3. 前記硬化性組成物が平均粒子径10~1000nmである無機フィラー(D)を更に含有し、前記重合性単量体(B)総質量100質量部に対する、前記無機フィラー(D)及び前記無機フィラー(D)の含有量が、夫々(A):100~300質量部及び(D):100~300質量部であり、且つ前記(A)及び(D)の合計の含有量が250~550質量部である、請求項1又は2に記載の臼歯治療用歯科用充填修復材料。
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