JP7194321B2 - トンネル発破音の低減方法及び低減装置 - Google Patents
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Description
特許文献1(特開平11-336467)には、「トンネルの坑口に、トンネル横断面の大部分を占める開閉扉体とこの開閉扉体よりも若干小さい開口を有する門型の反力壁体を設け、前記開閉扉体はトンネル軸方向に起倒可能に下部をトンネル底面に枢着し、起立状態で前記反力壁体に支持させ、転倒状態で地面に敷設してなる簡易式トンネル防音扉」が開示されている。
特許文献2(特開2012-177221)には、「トンネルの坑口と切羽との間に設置され、前記切羽側で発生する騒音を消音するトンネルサイレンサであって、トンネル坑内にトンネル軸方向と略平行に設置され、トンネル軸方向に向けて通路を画成する周面に多数の貫通孔を有するダクトと、前記ダクトの両端開口の周囲にそれぞれトンネル軸方向と略直角に設置され、前記ダクトの外側のトンネル内空断面を閉鎖する2つの隔壁と、を備え、前記ダクト及び前記各隔壁によるトンネル坑内の断面変化により、前記切羽側で発生する騒音を消音し、前記ダクトにより形成される前記通路の周面の多数の貫通孔と、前記多数の貫通孔の背後に前記ダクト、前記各隔壁、及び前記ダクト周囲のトンネル内壁とにより包囲される閉鎖空洞部との作用により、前記切羽側で発生する騒音を共鳴吸音する」という技術が開示されている。
この技術によれば、発破時にも開口を閉じる必要がないので、トンネルの掘削工事の作業効率を低下させることなく、発破音などの騒音を効率よく低減することができる。
1.トンネルの坑口又は坑内に少なくとも2つの隔壁が対向して設けられることによって拡張室が形成され、
前記隔壁に設けられた開口に、管路が設置され、
前記管路の幅及び高さが、少なくとも車両が通行可能な寸法に設定されると共に、
前記隔壁が、トンネル坑内を移動可能な工作物に設置された構成であることを特徴とするトンネル発破音の低減方法。
一方の隔壁に設けられた延伸板は、他方の隔壁が設置された方向に延伸するように設けられ、
他方の隔壁に設けられた延伸板は、一方の隔壁が設置された方向に延伸するように設けられた構成であることを特徴とする請求項2又は3に記載のトンネル発破音の低減方法。
前記壁透孔は、隣接するハニカム個室を連通させるように複数設けられ、
前記壁透孔が設けられたハニカム個室の薄板には薄板透孔が設けられ、
これらの壁透孔と薄板透孔によって連通された空間にハニカム管路が形成されたことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のトンネル発破音の低減方法。
前記隔壁に設けられた開口に、管路が設置され、
前記管路の幅及び高さが、少なくとも車両が通行可能な寸法に設定されると共に、
前記隔壁が、トンネル坑内を移動可能な工作物に設置された構成であることを特徴とするトンネル発破音の低減装置。
また、拡張室型消音器の原理を採用することによって、発破作業中であっても隔壁の開口を閉じる必要がなく、更に、この開口と管路の幅及び高さは車両が通行可能な寸法に設定されていることから、車両の往来や坑内の作業に影響を及ぼさず、作業効率を低下させることがない。
更にまた、隔壁がトンネル坑内を移動可能な工作物に設置された構成であるため、トンネル工事で使用される既存設備を利用することで新たな工作物を建造する必要がなく、コスト低減に貢献すると共に、設置や移動が容易であるという効果がある。
トンネル内に隔壁を設けた場合に、トンネルの掘削面と隔壁との間に隙間が生ずることを避けられず、この隙間の存在によって消音効果が減少するおそれがある。これに対して、上記延伸板を設けて、隔壁、延伸板及び地面に囲われた空間を拡張室とすることができれば、消音効果の減少分を補うことができるし、さらなる消音効果を得ることもできる。
することによって、共鳴管・開管型のハニカム管路を形成することができる。
上記13に示す発明によれば、管路が、拡張室の内側に設置される構成、即ち、拡張室に挿入管が接続される構成であり、
上記14に示す発明によれば、拡張室に入口管、出口管及び挿入管が接続される構成であり、
それぞれの構成によって、消音器構造の挿入損失(IL:Insertion Loss[dB])が幅広い周波数帯において大きくなり、発破音の低減効果をより広帯域にまで及ぼすことができる。詳しくは後述する。
隔壁が設置された工作物を移動させる場合などに、管路を取り外すことで移動の妨げになることを防止することができる。
既存設備を利用して発破音を低減させることができる。
図1は、本発明に係るトンネル発破音の低減装置1の一実施例を表す概略斜視図であり、トンネルTの坑内に2枚の隔壁2が対向して設けられ、これらの隔壁2の開口21に、管路3が設置された状態を表わしている。2つの隔壁2に挟まれた空間が、拡張室4である。図2は、図1に示されたA-A線の概略端面図である。
成す隔壁2は、略平行に対向して設置される。
隔壁2は、トンネルTの開口(断面)の形状及び大きさと略同一であり、多くの場合、トンネルの開口の形状は馬蹄型、卵型又は円型であるため、隔壁2の形状も馬蹄型、卵型又は円型といったアーチ形状が採用される。
隔壁2とトンネルTの側壁面ないし天井面に隙間が生ずる場合は、その隙間を公知公用の手段を用いて塞ぐことが好ましい。隙間を塞ぐ手段として、取り外しが可能な手段が好ましく、例えば、取り外しが容易に可能なスペーサー部材を用いる他、取り外しによる移動性を考慮した埋め戻し材を用いる手段を挙げることができる。
なお、この隙間が生ずることによって、その隙間の大きさや範囲によって消音効果に影響を及ぼす場合があるものの、本発明の消音効果が直ちになくなるものではない。
隔壁2は、1台の移動工作物の坑口側と切羽側にそれぞれ設置してもよいし、1つの隔壁2を設置した移動工作物を2台用意し、これらで対を成す隔壁2を形成してもよい。
ると共に、設置や移動が容易であるという効果がある。
特に、トンネル工事に使用される工事車両が通行可能な幅及び高さを有することが好ましく、幅は5.5m以上、高さは4m以上あることが好ましい。ただし、管路3をベルトコンベヤ、風管、配管用スペースとして利用することも排除せず、例えば幅及びは高さが1m程度の小さな開口21となることもある。
管路3は、2つの隔壁に挟まれた空間である拡張室4の外側に設置することができ、この拡張室4の外側に取り付けられた管路3のうち、拡張室の切羽側の外側に設置されるものを入口管32、拡張室の坑口側の外側に設置されるものを出口管33と呼称する(図1~2参照。)。
図1~2では、1つ部材からなる管路3を、隔壁2を貫通する態様で設置しており、拡張室の外側を出口管33、内側を挿入管34としているが、隔壁2の内側と外側にそれぞれ別部材の管路3を設置し、これらが隔壁2の開口21を介して連通する態様で設置されてもよい。即ち、隔壁2の内側と外側とで、入口管32と挿入管34又は出口管33と挿入管34が接続された構成とすることができる。
図3(a)は、切羽側の隔壁2に入口管32が、坑口側の隔壁2に出口管33が取り付けられた態様である。図3(b)は、切羽側の隔壁2に入口管32が、坑口側の隔壁2に出口管33と挿入管34が取り付けられた態様である。図3(c)は、切羽側の隔壁2に入口管32と挿入管34が、坑口側の隔壁2に出口管33が取り付けられた態様である。図3(d)は、切羽側の隔壁2に入口管32と挿入管34が、坑口側の隔壁2に出口管33と挿入管34が取り付けられた態様である。
管路3の長さについて限定はないが、それぞれの管路3の長さが異なる構成とすることが好ましい。図4を参照しながら詳述すると、入口管32の長さXと、出口管33の長さYと、挿入管34の長さZとが、異なる長さであることが好ましい。異なる長さを有する各管路による異なる消音特性により、消音効果が生じない周波数を減少させることができる。即ち、発破音の低減効果を更に広帯域にまで及ぼすことができる。この点については、後述する検証実験において効果を確認している。
即ち、TLを大きくするには、拡張比m=SM/Sを大きくすることが必要となる。
図5は、左列には、消音器構造の模式図が、右列には、左列に示された模式図に対応した透過損失TLの周波数特性が示されている。
図5(a)の消音器構造は、拡張室4に、入口管32と出口管33が取り付けられた構成である。この構成のTL周波数特性をみると、f1、2f1、3f1及び4f1にてTLが0であり、この周波数に対しては消音効果がないといえる。
この構成のTL周波数特性をみると、図5(a)の構成に比して、2f1のTLが0でなくなっている。即ち、図5(a)の構成において消音効果が生じない周波数2f1を消すことができた。
また同様に、数1によれば、挿入管34の長さはlM/4の場合には、2f1、6f1、10f1・・・の周波数に対して効果がある。
この構成のTL周波数特性をみると、図5(a)の構成に比して、f1及び3f1のTLが0でなくなっている。即ち、図5(a)の構成において消音効果が生じない周波数f1及び3f1を消すことができた。
また同様に、数1によれば、挿入管34の長さはlM/2の場合には、f1、3f1、5f1・・・の周波数に対して効果がある。
と坑口側の隔壁2にそれぞれ挿入管34が取り付けられた構成である。そして、拡張室4の長さをlMとすると、切羽側の挿入管34の長さはlM/2であり、坑口側の挿入管34の長さはlM/4である。
この構成のTL周波数特性をみると、図5(a)の構成に比して、f1、2f1及び3f1のTLが0でなくなっている。即ち、図5(a)の構成において消音効果が生じない周波数f1、2f1及び3f1を消すことができた。
上記脱着する手段について限定はなく、この種の技術分野において公知公用の脱着手段を特別の制限なく採用することができる。
スライド方式は、例えば、管路3を複数の短管(管路3全体の長さよりも十分に短い長さで形成された管。)を接続することによって形成し、これらを摺動することによって伸縮する構成である。隣に位置する短管は径が異なるように形成し、径が大なる短管と、径が小なる短管とが摺動によって重なり合うことができる構成とすれば、管路3の長さを伸縮することができる。
その他、管路3の伸縮手段として、管路3の側板や天板を折れ戸の如き構成としたり、側板や天板を脱着して長さを調整する手段を採用してもよい。
外の面は、側壁41と底面42によって閉じられている。
なお、前述のとおり、拡張室4は、対を成す隔壁2の間隔が、トンネルの内径(拡張室4の内径)よりも長さが大となるよう形成することが好ましい。
本発明に用いられる管路系消音器の音響的特性については、等価回路を用いた解析法が適用可能である。なお、ここでは、トンネル断面寸法より十分に長い波長を有する周波数範囲のみを扱うことにする。
トンネルを想定した主管路内に、図8に示す管路2の各要素を設定する場合において、それぞれの挿入損失ILの計算結果を図9に示す。
なった。
実験には、トンネルを想定した主管路として、直径300mmの円形ダクトを使用した。円形ダクト内に、隔壁2や管路3を設置して実験を行った。図10に、実験結果を示す。図10においても図9と同様に、図8(a)に対応した結果は点線で、(b)に対応した結果は薄色の実線で、(c)に対応した結果は濃色の実線で示す。
以上の検証結果より、実験においても、計算結果と同様に、隔壁2に入口管32、出口管33及び/又は挿入管34を設置した消音器構造によって、減音特性の広帯域化が可能であることが確認できた。
その結果、解析結果と実験結果とは同様の傾向を示し、トンネルを想定した管路内に消音器構造を適用することによって、減音特性の広帯域化が可能であることが確認できた。
隔壁2とトンネルTの掘削面Taの間に生じた隙間Sを、モルタルやスペーサー部材等で埋めるということも可能だが、掘削面は平滑ではないため完全に隙間Sを塞ぐことが困難であることに加え、この隙間Sを埋める作業に工数を費やすことが、工期の遅れやコストの上昇を招く原因になりかねず、現実的ではない。
延伸板5は、隔壁の端部22に全周にわたって設けられ、隔壁2の面方向に対して垂直の方向に延伸された態様の板体である。延伸板5の延伸方向について換言すれば、トンネ
ルTの軸方向に延伸された態様ということもできる。
図13では、隔壁2の坑口側及び切羽側の両方に延伸板5が設けられた構成であるが、図14に示されるように、いずれか一方に延伸板5が設けられればよく、この延伸板5が設けられる方向は、他方の隔壁2が設置された方向である。
即ち、板材6には、高い剛性が要求されると共に、軽量であることも求められる。
ハニカム・サンドイッチ構造とは、ハニカム構造とサンドイッチ構造を利用した構造である。ハニカム構造とは、狭義には蜂の巣状の正六角形又は正六角柱を隙間なく並べた構造であるが、本発明においては、正六角柱等に限らず三角柱、四角柱等の立体図形を隙間なく並べた構造をいう。
ッチ構造を採用することが好ましい。この構成によれば、軽量でありながら高い剛性を有する板材6を得ることができる。
なおまた、図15は、上板62aと下板62bが透明として描かれており、薄板6によって外観からは内部が観察できない芯材61についても、薄板6の下部に表わされている。
芯材61は、上述のとおりハニカム構造を有するが、このハニカム構造を構成する立体図形からなる1つの空間をハニカム個室61aと呼称する。そして、このハニカム個室61aを隔てる壁をハニカム壁61bと呼称する。
ハニカム管路63は、薄板透孔62cが配設される位置によって、拡張室型の消音器又は共鳴管型の消音器として作用する。この構成を有する板材6を、隔壁2、管路3(入口管32、出口管33又は挿入管34)又は延伸板5に使用すれば、発破音の更なる減音効果を得ることができる。
まず、図16に示される構成について説明する。
壁透孔61cは、図16の概略平面図に示されるように、平面視直線状に配設される。
いて同じ。)。
壁透孔61cは、図16の構成と同様、図17の概略平面図に示されるように、平面視直線状に配設される。
薄板透孔62cは、図17の概略平面図及び概略C-C断面図に示されるように、薄板の上板62a又は下板62bのいずれか一方に2箇所配設される。これにより、板材6の上板62a側と下板62b側とは、ハニカム管路63によって通じない構成、換言すれば、音圧方向に板材6を貫通しない構成となる。
壁透孔61cは、図16~17の構成と同様、図18の概略平面図に示されるように、平面視直線状に配設される。
薄板透孔62cは、図18の概略平面図及び概略D-D断面図に示されるように、薄板の上板62a又は下板62bのいずれか一方に1箇所のみ配設される。これにより、板材6の上板62a側と下板62b側とは、ハニカム管路63によって通じない構成、換言すれば、音圧方向に板材6を貫通しない構成となる。
図19に示される構成は、2層構造を有する板材7の一実施例である。
ハニカム個室61aに樹脂を充填することによって、板材6・7の重量を調整することができ、特に重量を増すことによって遮音効果の向上に寄与することができる。また、板材6・7の剛性を向上させることもできる。
2 隔壁
21 隔壁の開口
22 隔壁の端部
3 管路
31 管路の開口
32 入口管
33 出口管
34 挿入管
4 拡張室
41 側壁
42 底面
5 延伸板
6 板材
61 芯材
61a ハニカム個室
61b ハニカム壁
61c 壁透孔
62 薄板
62a 上板
62b 下板
62c 薄板透孔
63 ハニカム管路
7 2層構造の板材
C 車両
T トンネル
Ta 掘削面
S 隙間
G 地面
X 入口管の長さ
Y 出口管の長さ
Z 挿入管の長さ
Claims (6)
- トンネルの坑口又は坑内に少なくとも2つの隔壁が対向して設けられることによって拡張室が形成され、
前記隔壁に設けられた開口に、管路が設置され、
前記管路の幅及び高さが、少なくとも車両が通行可能な寸法に設定されると共に、
前記隔壁が、トンネル坑内を移動可能な工作物に設置された構成であり、
隔壁の端部に全周にわたって設けられ、隔壁の面方向に対して垂直の方向に延伸された板体である延伸板が設けられたことを特徴とするトンネル発破音の低減方法。 - 延伸板が、他の隔壁が設置された方向に延伸するように設けられたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル発破音の低減方法。
- 相対向する2つの隔壁の両方に、延伸板が設けられ、
一方の隔壁に設けられた延伸板は、他方の隔壁が設置された方向に延伸するように設けられ、
他方の隔壁に設けられた延伸板は、一方の隔壁が設置された方向に延伸するように設けられた構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネル発破音の低減方法。 - 少なくとも2つの隔壁が対向して設けられることによって拡張室が形成され、
前記隔壁に設けられた開口に、管路が設置され、
前記管路の幅及び高さが、少なくとも車両が通行可能な寸法に設定されると共に、
前記隔壁が、トンネル坑内を移動可能な工作物に設置され、
隔壁の端部に全周にわたって設けられ、隔壁の面方向に対して垂直の方向に延伸された板体である延伸板が設けられた構成であることを特徴とするトンネル発破音の低減装置。 - 延伸板が、他の隔壁が設置された方向に延伸するように設けられたことを特徴とする請求項4に記載のトンネル発破音の低減装置。
- 相対向する2つの隔壁の両方に、延伸板が設けられ、
一方の隔壁に設けられた延伸板は、他方の隔壁が設置された方向に延伸するように設けられ、
他方の隔壁に設けられた延伸板は、一方の隔壁が設置された方向に延伸するように設けられた構成であることを特徴とする請求項4又は5に記載のトンネル発破音の低減装置。
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