JP7108522B2 - トンネル用消音装置 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 [刊行物名] 土木学会平成30年度全国大会第73回年次学術講演会講演概要集(DVD) [発行日] 平成30年8月1日 [刊行物等] [集会名] 土木学会平成30年度全国大会第73回年次学術講演会 [開催日] 平成30年8月30日
本発明は、トンネル用の消音装置に関する。
従来から、山岳トンネルを構築するための発破による騒音が問題となっている。発破による騒音を防止する方法として、トンネルの坑口に鋼製やコンクリート製の防音扉・防音壁を設置する方法があった。しかし、従来の防音扉・防音壁では、発破音のうち卓越して発生する低周波音域に対して十分な防音効果が発揮できない場合があった。
このような低周波音を低減するためには、例えば、トンネルの坑口ないし坑内を隔壁で閉塞し、一端をトンネル坑内に開口し他端を閉塞しそれぞれ経路長が異なる複数の管体を、隔壁よりも切羽側に設置するものが提案されている(特許文献1)。
また、一端が閉塞され、他端が開口する中空の音響管を、トンネル内での音圧レベルがピークとなる位置に開口部が位置するように、トンネルの縦断方向に沿って配置する方法が提案されている(特許文献2)。
特開2011-256609号公報 特開2016-156191号公報
しかし、特許文献1も特許文献2も、音が伝播するトンネル内に管体の開口部を配置することで、開口部から管体内に音を導入し、他端で反射した音を、開口部から戻すものである。このため、管体内部で少なくとも音の伝播を反転させるための反射をさせる必要がある。
しかし、特に低周波の音を、管体の閉塞部で効率よく反射させることは困難である。このため、閉塞された管体端部では、管体の閉塞部を通り抜けて音の一部が漏れる。このように、管体の途中で音が漏れれば、目的とした周波数の位相をずらすことができず、十分な減音効果を得ることは困難である。
また、特許文献1も特許文献2も、閉塞部で反射した音が管体から放出される方向と、トンネル内を伝わる音の方向とは異なる。このため、管体で位相がずれた音と、管体外部のトンネル内の音とが効率よく合成されず、十分な消音効果が得られないおそれがある。
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、効率よくトンネル内に発生する低周波音を低減することが可能なトンネル用消音装置を提供することである。
前述した目的を達成するための本発明は、トンネル坑口部または坑内に設置される消音装置であって、複数の管体を具備し、前記管体は、一端がトンネル切羽側に開口した切羽側開口端と、他端が前記切羽側開口端と略逆方向であって、坑外側に開口した坑外側開口端と、前記切羽側開口端と前記坑外側開口端との間に設けられる屈曲部と、を有し、前記切羽側開口端と前記坑外側開口端のトンネル軸方向の間隔をLとし、消音対象の音の波長をλとした際に、前記管体の経路長が略L+λ/2であり、前記消音対象の音の周波数が、10~30Hzであり、前記λ/2が5~20mであり、複数の前記管体の管軸方向に垂直な断面における断面積の総計は、トンネルのトンネル軸方向に垂直な断面における断面積の5%以上であることを特徴するトンネル用消音装置である。
前記Lが2~10mであることが望ましい。
本発明によれば、トンネル内に配置された管体は両端が開口しているため、一端から導入して管体内を通過する音を、伝播方向が反転する反射部で反射することなく、他端から放出させることができる。このため、管体の経路長に応じて効率よく音の位相を管体外部の音に対してずらすことができる。また、管体からの音の放出方向と、管体外部の音の伝播方向とを合わせることができるため、効率よく音を打消し合わせることができ、高い減音効果を得ることができる。
このような効果は、特にλ/2が、5~20mの範囲、すなわち、おおよそ10~30Hzの低周波の音に対して有効である。
また、Lが2~10mであれば、トンネル内における設置が容易である。
また、管体の断面積の総計を、トンネルの断面積の5%以上とすることで、十分な減音効果を得ることができる。
本発明によれば、効率よくトンネル内に発生する低周波音を低減することが可能なトンネル用消音装置を提供することができる。
トンネル用消音装置1の設置態様の概要を示す図であり、(a)はトンネル軸方向の断面図、(b)は(a)のA-A線断面図。 (a)~(c)は、管体3の形態を示す図。 拡径部19を装着した管体3の形態を示す図。 試験装置20を示す概略図。 周波数ごとの減音量を示す図。 管体断面積/トンネル断面積比に対する減音量を示す図。
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は、トンネル用消音装置1の概要を示す図である。図1(a)は、トンネル7の軸方向の断面図、図1(b)は、図1(a)のA-A線断面図である。なお、図中矢印Bは、トンネル切羽側であり、矢印Cは坑外側である。すなわち、トンネル切羽側と坑外側とは互いに逆方向となる。
トンネル7の坑口には、防音扉5が設置される。防音扉5は、トンネル7内のおける発破音等がトンネル外部に漏れることを目的とするものであり、コンクリート製または鋼製である。
トンネル用消音装置1は、地盤に掘削されたトンネル7のトンネル坑内または坑口部に設置される。トンネル用消音装置1は、複数の管体3を有し、複数の管体3は、架台11に設置される。なお、架台11には、切羽側と坑口側との間を通行する開口部が設けられている。例えば、開口部には開閉扉9が設けられる。トンネル切羽側で発破作業時には、開閉扉9が閉鎖され、発破作業を行わず、切羽側と坑口側との間を車両等が通行する必要がある時には、開閉扉9が開放される。なお、架台11には、車輪が設けられ、トンネル7の軸方向に配置されたレール上を走行可能としてもよい。例えば、トンネル7の施工の進捗に併せてトンネル7の進行方向に移動してもよい。
図2(a)は、管体3の形態を示す図である。管体3は、例えば樹脂製やアルミニウム製、ステンレス製の可撓管であり、屈曲させることができる。管体3の内径としては、例えば、φ100mm~1500mm程度のものを用いることができ、より望ましくは、φ300~1300mm程度であり、さらにφ500~1000mmが好適である。管体3の一端は、トンネル切羽側(図中矢印B方向)に向けて開口した切羽側開口端15であり、管体3の他端は、坑外側(図中矢印C方向)に向けて開口した坑外側開口端13である。すなわち、坑外側開口端13と切羽側開口端15とは略逆方向に向けて形成される。
管体3の切羽側開口端15と坑外側開口端13との間には、屈曲部が設けられる。図2(a)に示す例では、略180度の角度で屈曲する屈曲部が2カ所に形成され、略S字状となる。なお、管体3が可撓管である場合には、屈曲させた状態で、管体3をテープ等で固定すればよい。
なお、管体3の屈曲形状は、図2(a)に示す例には限られない。例えば、図2(b)に示すように、完全に略180度の角度で屈曲するのではなく、よりなだらかな角度で屈曲させてもよい。また、屈曲部の個数は図示した例には限られず、坑外側開口端13と切羽側開口端15とが略逆方向に向けて形成されれば、その間の屈曲形状は特に限定されない。
ここで、坑外側開口端13と切羽側開口端15のトンネル軸方向の間隔をLとする。なお、図2(c)に示すように、管体3のトンネル軸方向の全体の長さが坑外側開口端13と切羽側開口端15の間隔Lよりも長くなる場合もある。
前述したように、管体3は屈曲しているため、坑外側開口端13から切羽側開口端15までの管体3の経路長17(すなわち、おおよそ管体3をまっすぐに伸ばした際の全長)は、坑外側開口端13と切羽側開口端15のトンネル軸方向の間隔Lよりも長くなる。
ここで、消音対象の音の波長をλとした際に、管体3の経路長17が略L+λ/2となるように、管体3の屈曲形状が設定される。例えば、20Hzの音を対象とする場合には、λ/2が約8.5m(=340[m/s]/20[Hz]/2)となるように設定される。
ここで、坑外側開口端13と切羽側開口端15のトンネル軸方向の間隔Lは、例えば2~10m程度であることが望ましい。Lが短すぎると、前述したL+λ/2の経路長17を確保することが困難であり、Lが長すぎると、トンネル7内への設置が困難である。また、経路長17が長すぎると、管体3からの音漏れの影響も大きくなり、また、屈曲部による低減効果が低減する。
また、λ/2は、5~20mであることが望ましい。これは、おおよそ10~30Hzの低周波に対応し、前述したように、防音扉等で減音が困難な低周波音を効率よく減音することができる。なお、複数の管体3を配置する際には、異なるλ/2となるように、前述の範囲内で経路長17の異なる複数種類の管体3を配置することが望ましい。例えば、実際の騒音を測定して、防音扉等で減音が困難な低周波音を測定して、測定された低周波音の分布にしたがい経路長17を設定してもよい。
次に、本発明の機能について説明する。トンネル7内の切羽側で発破した際には、多くの周波数成分を含む音がトンネル7内を伝播する。ここで、特に、防音壁等によって吸音や減衰させることが困難な低周波の音は、これらの防音壁等を通過して、トンネル外に漏れるおそれがある。
これに対し、前述した管体3は、切羽側開口端15が切羽側に向けて配置される。このため、音の一部が、管体3の内部に導入される。ここで、音は、空気の疎密波であるため、管体3内では、管体3の空気中を音が伝播する。そして、管体3の内部を、経路長17だけ伝播した音は、坑外側開口端13から放出される。
この際、トンネル7内部であって、管体3の外部を通過する音は、切羽側開口端15の位置から坑外側開口端13の位置までの距離Lをまっすぐに伝播する。したがって、管体3の内部を伝播した音と、管体3の外部を伝播した音とで、音の経路長がλ/2だけ異なる。この結果、管体3内部を通過した音は、管体3の外部を通過した音に対して逆位相となり、互いに打ち消し合い音量を低減できる。
特に、管体3は両端が開口しているため、切羽側開口端15から坑外側開口端13までの間に、空間が閉塞される部位がなく、管体3の両端が外部と空気で完全につながっている。このため、管体3の切羽側開口端15から導入された音が、坑外側開口端13から出るまでの間に、管体3内の空気の弾性波として伝播し、音の伝播方向を全て逆方向に反射する部位がない。このため、管体3によって、効率よく半位相のずれた音とすることができる。
また、管体3から出る音の方向は、管体3の外部に伝わる音と略同一方向となる。このため、トンネル7内を坑口側に伝播する音を、効率よく打ち消すことができる。このため、トンネル7内の音を効率よく消音し、トンネル外へ漏れる音を抑制することができる。また、トンネル用消音装置1は伝播する音を管体3の内外を通過させることを基本とするので、トンネル用消音装置1に作用する音圧は小さい。したがって、トンネル用消音装置1の架台11や複数の管体3は強度の低い構造のものを採用することができる。
なお、より効率よく管体3内へ音を導入するためには、図3に示すように、切羽側開口端15へ拡径部19を設けてもよい。拡径部19は、管体3の内径が先端に行くにつれて徐々に広がる部位である。例えば配管等に用いられるレデューサーを用いることができる。このようにすることで、効率よく切羽側開口端15へ音を集音することができる。
同様に、坑外側開口端13へ拡径部19を設けてもよい。このようにすることで、坑外側開口端13から出る音を効率よく広げることができる。このように、切羽側開口端15と坑外側開口端13の少なくとも一方に拡径部19を設けることもできる。
以上、本実施の形態によれば、管体3を曲げてトンネル7の内部に配置するのみで、目的とする周波数の音を減音することができる。特に、低周波の音は、波長λに大きな相違があるので、径路長L及び径路長の差となるλ/2を適切に設定することで、低周波の音を効率よく減音することができる。
また、可撓配管を所望の長さに切断して曲げるのみであるので、現場でも容易に施工することができるので、径路長L及び径路長の差となるλ/2を便宜変更することができる。したがって、トンネル掘削方法の変更等に伴う騒音の周波数の特性の変化にも容易に対応することができる。
次に、本発明の効果について試験を行い評価した。図4は、試験装置20を示す概略図である。なお、試験装置20は、実際のトンネルのサイズに対して、1/20のスケールで作成した。トンネル模型21は、φ600mmの塩化ビニル管により製作した。すなわち、実際のトンネルサイズとしては、φ12mのトンネルを想定した実験を行った。トンネル模型21の一端側にはスピーカ23を配置した。
スピーカ23の前面から約1m~2m離れた範囲に、複数の管体3を配置した。この際、管体3は、トンネル模型21の長手方向の複数個所に分けて配置した。すなわち、管体3は、約1mの範囲に複数個所に配置した。
また、管体3の設置範囲から少し離した位置に、マイクロホン25を設置した。さらに、トンネル模型21の端部には、音の反射を防ぐための吸音材27を取り付けた。
消音対象とする周波数は、実スケール換算で、防音扉の遮音性能が低い周波数12.5Hz、16Hz、20Hz(試験装置20のスケールでは、250Hz、315Hz、400Hz)とした。
管体3は、対象となる各周波数の1/2波長だけ経路長が長くなるように、図2(a)に示すように、S字状折り曲げてトンネル模型21内に設置した。なお、管体3の内径はφ50mm(実際のトンネルサイズの換算でφ1m)とし、周波数12.5Hz、16Hz、20Hzのそれぞれに対応した管体を6本ずつ用意した。また、各周波数に対応した管体3は、トンネル模型21の長手方向の3カ所に分けて、各部位に2本ずつ(2本×3種類)配置した。
この状態で、スピーカ23から、実スケール換算で10Hz~27Hz(試験装置20のスケールでは200Hz~540Hz)の範囲で5Hzごとに純音を発生させ、マイクロホン25により音を測定した。なお、管体3を設置しない状態でも測定を行い、管体3を設置した際の結果との差分により、減音量を算出した。
図5は、各周波数に対する減音量の測定結果である。結果より、目的とした周波数とは完全に一致しないが、おおよそ、目的とした周波数の前後のある程度の周波数範囲で、減音することができた。例えば、目的とする周波数において効果のピーク(約5dBの減音効果)が存在するが、その前後の周半数帯においても、一定の減音の効果(約2dB程度)が確認できた。このように、管体3による減音効果を確認することができた。
なお、より正確に周波数の減音を行うためには、管径に応じた補正(例えば、管半径の約0.6倍分だけ経路長を短くする)を行うことが望ましい。
次に、管体3のサイズと本数を変更して、管体3の総断面積を変えて同様の測定を行った。すなわち、トンネル模型21の断面積(約1885cm)に対して、管体3の管軸方向に垂直な断面の断面積の総和の比を変えて、その効果を評価した。
図6は、断面積比に対する減音量の結果を示す図で、図中Dは12.5Hz、図中Eは16Hz、図中Fは20Hz換算のものである。図より、断面積比が5%以上であれば、より確実に減音効果を得ることができた。このように、複数の管体3の管軸方向に垂直な断面における断面積の総計は、トンネル7のトンネル軸方向に垂直な断面における断面積の5%以上とすることが望ましい。好ましくは断面積の10%以上とすることが望ましく、消音効果は5dB程度である。また、断面積の15%程度とすることが実際的であり、更に好ましくは断面積の15%以上とすることが望ましく、消音効果は5dB程度である。
また、φ50mmの管体3を18本用いた場合と、φ75mmの管体3を8本用いた場合とで、減音の効果を比較したところ、略同一の効果を得ることができた。このため、総断面積が同じであれば、管径が異なっても同様の効果を得ることができることが分かった。
また、複数の管体3を用いる際に、φ50mmの管体3をトンネルの長手方向の一カ所に18本配置した場合と、トンネルの長手方向に2カ所に離して9本ずつ配置した場合とでは、トンネルの長手方向の一か所に全てを配置するよりも、トンネルの長手方向の異なる位置に(複数の位置に)管体3を離して配置する方が、減音効果は高くなった。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1………トンネル用消音装置
3………管体
5………防音扉
7………トンネル
9………開閉扉
11………架台
13………坑外側開口端
15………切羽側開口端
17………経路長
19………拡径部
20………試験装置
21………トンネル模型
23………スピーカ
25………マイクロホン
27………吸音材

Claims (4)

  1. トンネル坑口部または坑内に設置される消音装置であって、
    複数の管体を具備し、
    前記管体は、一端がトンネル切羽側に開口した切羽側開口端と、他端が前記切羽側開口端と略逆方向であって、坑外側に開口した坑外側開口端と、前記切羽側開口端と前記坑外側開口端との間に設けられる屈曲部と、を有し、
    前記切羽側開口端と前記坑外側開口端のトンネル軸方向の間隔をLとし、消音対象の音の波長をλとした際に、前記管体の経路長が略L+λ/2であり、
    前記消音対象の音の周波数が、10~30Hzであり、前記λ/2が5~20mであり、
    複数の前記管体の管軸方向に垂直な断面における断面積の総計は、トンネルのトンネル軸方向に垂直な断面における断面積の5%以上であることを特徴するトンネル用消音装置。
  2. 前記管体は、略180度の角度で屈曲する前記屈曲部が2カ所に形成されていることを特徴する請求項1に記載のトンネル用消音装置。
  3. 前記Lが2~10mであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトンネル用消音装置。
  4. 前記消音装置は、防音扉より切羽側に設けられ、前記坑外側開口端が、前記防音扉より切羽側において、トンネル坑内に開口していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のトンネル用消音装置。
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