以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、図1~図3を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
各図において、第1の方向D1は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1の回転中心であるタイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3(図示していない)は、タイヤ回転軸周りのタイヤ周方向D3である。
なお、タイヤ幅方向D1において、内側は、タイヤ赤道面S1に近い側となり、外側は、タイヤ赤道面S1から遠い側となり、タイヤ径方向D2において、内側は、タイヤ回転軸に近い側となり、外側は、タイヤ回転軸から遠い側となる。また、タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ1のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面のことである。
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、ビード2aを有する一対のビード部2と、各ビード部2からタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール部3と、一対のサイドウォール部3のタイヤ径方向D2の外端部に連接され、タイヤ径方向D2の外表面が路面に接地するトレッド部4とを備えている。本実施形態においては、タイヤ1は、内部に空気が入れられる空気入りタイヤ1であって、リム10に装着される。
なお、タイヤ1のタイヤ幅方向D1の寸法(タイヤ幅)W1が最大値となる位置、即ち、最大幅位置1aは、サイドウォール部3に存在している。本実施形態においては、タイヤ幅W1の最大値は、タイヤ断面高さW2の最大値よりも大きくなっている。なお、タイヤ断面高さW2の最大値は、ビード部2のタイヤ径方向D2の内端から、トレッド部4のタイヤ径方向D2の外端までの、タイヤ径方向D2の距離である。
また、タイヤ1は、一対のビード2a,2aの間に架け渡されるカーカス層5と、カーカス層5の内側に配置され、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れるインナーライナ層6とを備えている。カーカス層5及びインナーライナ層6は、ビード部2、サイドウォール部3、及びトレッド部4に亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
図1及び図2に示すように、カーカス層5は、一対のビード2a,2aの間に架け渡されるカーカスプライ5a,5bを備えている。カーカスプライ5a,5bは、ビード2aを巻き込むようにビード2aの周りで折り返されている。これにより、カーカスプライ5a,5bは、一対のビード2a,2aの間に亘るプライ本体部5c,5dと、ビード2aの周りでタイヤ幅方向D1の内側から外側に巻き上げられる巻き上げ部5e,5fとを備えている。
カーカスプライ5a,5bは、タイヤ周方向D3に対して直交する方向に配列した複数のコードと、コードを被覆するトッピングゴムとを備えている。なお、カーカスプライ5a,5bのコードの材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等の有機繊維、又は、スチール等の金属が好適である。
ビード2aは、環状に形成され、ビード部2の内部に配置されている。そして、ビード部2は、ビード部2の外表面を構成するリムストリップゴム2bを備えている。なお、タイヤ1がリム10に装着される際に、リムストリップゴム2bは、リム10に接する。即ち、リムストリップゴム2bは、少なくともリム10に接する部分に、配置されている。
ビード2aは、環状に形成されるビードコア2cと、ビードコア2cのタイヤ径方向D2の外側に配置されるビードフィラー2dとを備えている。タイヤ子午面の断面において、ビードコア2cは、多角形状又は円形状に形成されており、ビードフィラー2dは、タイヤ径方向D2の外側に向けて幅狭のテーパ状となるように、形成されている。
ビードコア2cは、例えば、積層される金属のワイヤ(例えば、ブロンズメッキを施した鋼線等)と、ワイヤを被覆するトッピングゴムとを備えている。また、ビードフィラー2dは、例えば、硬質ゴムで形成されている。
トレッド部4は、トレッド部4の外表面を構成するトレッドゴム4aと、トレッド部4の内部に配置されるベルト層4bとを備えている。そして、トレッドゴム4aは、路面に接する。また、ベルト層4bは、トレッドゴム4aとカーカス層5との間に配置されている。
ベルト層4bは、複数のベルトプライ4c,4dを備えている。ベルトプライ4c,4dの個数は、特に限定されない。本実施形態においては、タイヤ径方向D2の外側から、第1ベルトプライ4c及び第2ベルトプライ4dの二つが備えられている。
ベルトプライ4c,4dは、タイヤ周方向D3に対して所定の傾斜角度(例えば、15°~35°)で配列された複数本のコードと、コードを被覆するトッピングゴムとを備えている。なお、ベルトプライ4c,4dのコードの材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等の有機繊維、又は、スチール等の金属が好適である。
なお、ベルト層4bは、ベルトプライ4c,4dのタイヤ径方向D2の外側に配置されるベルト補強部4eを備えていてもよい。ベルト補強部4eは、トッピングゴムで被覆された少なくとも1本のコードが、タイヤ周方向D3に沿って螺旋状(タイヤ周方向D3に対する傾斜角度は0~5°)に巻回されることで、形成されている。なお、ベルト補強部4eのコードは、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等の有機繊維が好適である。
サイドウォール部3は、サイドウォール部3の外表面を構成するサイドウォールゴム3aを備えている。サイドウォールゴム3aのタイヤ幅方向D1の内側面は、カーカス層5のタイヤ幅方向D1の外側面に連接されている。
また、サイドウォールゴム3aは、リムストリップゴム2b及びトレッドゴム4aにそれぞれ連接されている。具体的には、サイドウォールゴム3aのタイヤ径方向D2の内側端部3bは、リムストリップゴム2bのタイヤ径方向D2の外側端部2eと連接され、サイドウォールゴム3aのタイヤ径方向D2の外側端部3cは、トレッドゴム4aのタイヤ幅方向D1の外側端部4fに連接されている。
ここで、本実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ1の剛性を高める構成を採用しており、以下、その構成についてそれぞれ説明する。まず、サイドウォールゴム3aのゴム材によって、タイヤ1の剛性を高める構成について説明する。
サイドウォールゴム3aのゴム材は、リムストリップゴム2bのゴム材と、同じである。これにより、サイドウォールゴム3aのゴム硬度は、リムストリップゴム2bのゴム硬度と同じであり、サイドウォールゴム3aのモジュラスも、リムストリップゴム2bのモジュラスと同じである。
しかも、サイドウォールゴム3a及びリムストリップゴム2bのゴム硬度は、トレッドゴム4aのゴム硬度よりも、高くなっている。これにより、サイドウォール部3の剛性を高めることができるため、タイヤ1の剛性を高めることができる。したがって、例えば、操縦の応答性(リム10の操舵を、タイヤ1を経由して路面に伝える反応の速さ)を向上させることができる。
なお、各ゴム2b,3a,4aのゴム硬度は、特に限定されない。サイドウォールゴム3a及びリムストリップゴム2bのゴム硬度は、例えば、60~80であることが好ましく、また、例えば、65~75であることがさらに好ましい。トレッドゴム4aのゴム硬度は、例えば、50~70であることが好ましい。
そして、サイドウォールゴム3a及びリムストリップゴム2bのゴム硬度は、トレッドゴム4aのゴム硬度に対して、例えば、5以上高いことが好ましく、また、例えば、10以上高いことがより好ましい。なお、ゴム硬度は、JIS K6253-1-2012 3.2 デュロメータ硬さ(durometer hardness)であり、一般ゴム(中硬さ)用のタイプAデュロメータを用いて、23℃の雰囲気下で測定される。
また、各ゴム2b,3aのモジュラスは、特に限定されない。サイドウォールゴム3a及びリムストリップゴム2bのモジュラスは、例えば、ビードフィラー2dのモジュラスの25%以上であることが好ましく、また、例えば、30%以上であることがさらに好ましい。
これにより、サイドウォール部3の剛性を高めることができるため、タイヤ1の剛性を高めることができる。したがって、例えば、操縦の応答性を向上させることができる。なお、モジュラスは、JISK6251に準拠して23℃で測定した100%伸び引張応力(以下、「Se」ということがある。)である。
なお、サイドウォールゴム3a及びリムストリップゴム2bのモジュラスは、例えば、ビードフィラー2dのモジュラスの60%以下であってもよく、50%以下であってもよく、45%以下であってもよく、40%以下であってもよい。
各ゴム2b,3aは加硫ゴムからなる。各ゴム2b,3aの加硫ゴムは、未加硫のゴム組成物が加硫されたものである。
各ゴム2b,3aの加硫前ゴム材、すなわちゴム組成物はゴム成分を含む。ゴム成分として、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム、クロロプレンゴム等を挙げることができる。これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。なかでも、天然ゴム及びポリブタジエンゴムの組み合わせ、ポリイソプレンゴム及びポリブタジエンゴムの組み合わせ、天然ゴム、ポリイソプレンゴム及びポリブタジエンゴムの組み合わせ、天然ゴム単独が好ましい。天然ゴム及びポリブタジエンゴムの組み合わせがより好ましい。
ゴム組成物が天然ゴムを含む場合、ゴム成分100質量%中の天然ゴムの量は、例えば、10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。ゴム成分100質量%中の天然ゴムの量は、例えば、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
ゴム組成物がポリブタジエンゴムを含む場合、ゴム成分100質量%中のポリブタジエンゴムの量は、例えば、10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよい。ゴム成分100質量%中のポリブタジエンゴムの量は、例えば、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
ポリブタジエンゴムは、特に限定されない。ポリブタジエンゴムとして、例えば、ハイシスポリブタジエンゴム、低シスポリブタジエンゴム等を挙げることができる。これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。
ハイシスポリブタジエンゴムのシス‐1,4含量は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上である。シス‐1,4含量は、赤外吸収スペクトル分析法で測定できる。
低シスポリブタジエンゴムのシス‐1,4含量は90%未満であり、例えば70%以下であってもよく、60%以下であってもよく、50%以下であってもよい。低シスポリブタジエンゴムのシス‐1,4含量は、20%以上であってもよく、30%以上であってもよい。
ポリブタジエンゴム100質量%中のハイシスポリブタジエンゴムの量は、例えば、10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。ポリブタジエンゴム100質量%中のハイシスポリブタジエンゴムの量は、例えば、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
ポリブタジエンゴムとして、ハイシスポリブタジエンゴム及び低シスポリブタジエンゴムを使用する場合、ハイシスポリブタジエンゴムと低シスポリブタジエンゴムとの合計量は、ポリブタジエンゴム100質量%中で、例えば、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
ゴム組成物は、カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、硫黄、加硫促進剤等をさらに含むことができる。これらのうち、一つまたは任意の組み合わせをゴム組成物が含むことができる。
カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPF等のファーネスブラックのほか、アセチレンブラックやケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。これらのうち一種または二種以上を使用することができる。
カーボンブラックの量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは60質量部以上である。カーボンブラックの量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。
シリカとして、例えば、湿式シリカ、乾式シリカを挙げることができる。なかでも、湿式シリカが好ましい。湿式シリカとして、沈降法シリカを挙げることができる。
オイルの量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下である。オイルの量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上であってもよく、3質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。
老化防止剤として、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤等を挙げることができる。老化防止剤は、これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。老化防止剤の量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部~5質量部、より好ましくは1質量部~4質量部である。
ステアリン酸の量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば1質量部~4質量部である。酸化亜鉛の量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば1質量部~4質量部である。ワックスの量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば1質量部~4質量部である。
硫黄として粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を挙げることができる。硫黄は、これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。硫黄の量は、ゴム成分100質量部に対して、硫黄分換算で好ましくは0.5質量部~5質量部、より好ましくは1質量部~4質量部である。
加硫促進剤としてスルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤等を挙げることができる。加硫促進剤は、これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。加硫促進剤の量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~5質量部、より好ましくは0.1質量部~2質量部である。
以上、各ゴム2b,3aの加硫前ゴム材(ゴム組成物)について、詳細に説明した。
サイドウォールゴム3aのゴム材によって、タイヤ1の剛性を高める構成についての説明は、ここで終えることにする。
次に、カーカスプライ5a,5bによって、タイヤ1の剛性を高める構成について説明する。
タイヤ1においては、最大幅位置1aの剛性が低くなり易い。それに対して、第1カーカスプライ5aの巻き上げ部5eのタイヤ径方向D2の外側端5gは、最大幅位置1aよりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。これにより、第1カーカスプライ5aの巻き上げ部5eが、最大幅位置1aに配置されているため、最大幅位置1aの剛性が低くなることを抑制することができる。
なお、カーカスプライ5a,5bの個数は、特に限定されないが、本実施形態においては、カーカスプライ5a,5bは、複数備えられている。具体的には、第1カーカスプライ5a及び第2カーカスプライ5bの二つが備えられている。これにより、カーカスプライ5a,5bがサイドウォール部3に複数配置されるため、サイドウォール部3の剛性を高めることができている。
次に、サイドウォールゴム3aの厚みによって、タイヤ1の剛性を高める構成について説明する。
まず、図2及び図3に示すように、タイヤ1は、ビード部2及びサイドウォール部3の内部に配置されるサイドプライ7を備えている。サイドプライ7は、カーカス層5とビード2aとの間に配置されている。具体的には、サイドプライ7は、カーカスプライ5a,5bの巻き上げ部5e,5fとビードフィラー2dとの間に配置されている。
これにより、サイドウォール部3(特に、タイヤ径方向D2の内側部分)及びビード部2の剛性を高めることができる。なお、サイドプライ7の個数は、特に限定されない。本実施形態においては、一つのサイドウォール部3及びビード部2に対して、一つのサイドプライ7が備えられている。また、例えば、一つのサイドウォール部3及びビード部2に対するサイドプライ7の個数は、ベルトプライ4c,4dの個数よりも、少ないことが好ましい。
サイドプライ7は、タイヤ周方向D3に対して傾斜する方向に配列した複数のコードと、コードを被覆するトッピングゴムとを備えている。サイドプライ7のコードの材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等の有機繊維、又は、スチール等の金属が好適である。
本実施形態においては、ベルトプライ4c,4d及びサイドプライ7のコードは、金属としており、ベルト補強部4e及びカーカスプライ5a,5bのコードは、非金属(例えば、有機繊維)としている。これにより、タイヤ1は、ベルトプライ4c,4dとサイドプライ7との間に、メタルレス領域1bを備えている。そして、メタルレス領域1bの剛性は、ベルトプライ4c,4d及びサイドプライ7を有する領域(メタル領域)の剛性よりも、低くなり易い。
ところで、タイヤ1を正規リム10に装着して正規内圧を充填した無負荷状態の、タイヤ子午面の断面において、図3に示すように、メタルレス領域1bは、内表面の曲率半径が異なる複数の領域1c~1eを備えている。なお、各領域1c~1eの境界線(図3において、破線で図示している)は、タイヤ1の内表面の法線である。
そして、複数の領域1c~1eは、内表面の曲率半径が最も小さい最小領域1cと、最小領域1cとベルトプライ4c,4dとの間に配置される第1領域1dと、最小領域1cとサイドプライ7との間に配置される第2領域1eとを含んでいる。なお、複数の領域1c~1eの個数は、特に限定されない。
そして、タイヤ1が走行中に弾性変形する際に、メタルレス領域1bのうち、最小領域1cに、応力が集中し易い。それに対して、最小領域1cは、メタルレス領域1bにおける、サイドウォールゴム3aの厚みW3が最大となる最大厚み位置3dを、含んでいる。これにより、最小領域1cの剛性を高めることができている。なお、サイドウォールゴム3aの厚みW3は、タイヤ1の内表面の法線方向の寸法である。
また、ベルトプライ4c,4dの剛性は、サイドプライ7の剛性よりも高くなっている。例えば、各プライ4c,4d,7のコードの直径、コードのエンド数(単位幅当たりのコードの本数)が異なることによって、ベルトプライ4c,4dの、単位幅当たりのコード総質量は、サイドプライ7の、単位幅当たりのコード総質量よりも、大きくなっている。
それに対して、最小領域1cとベルトプライ4dとの距離W4は、最小領域1cとサイドプライ7との距離W5よりも、小さくなっている。これにより、最小領域1cが、剛性の高いベルトプライ4c,4dに近づいているため、最小領域1cの剛性を高めることができている。
なお、最小領域1cと各プライ4d,7との距離W4,W5は、タイヤ1の内表面に沿った距離である。また、最小領域1cとベルトプライ4dとの距離W4は、ベルトプライ4c,4dの端部のうち、最もタイヤ幅方向D1の外側の端部(本実施形態においては、第2ベルトプライ4dの端部4g)と、最小領域1cとの距離W4である。
また、最小領域1cは、最小領域1cの中心1fからタイヤ径方向D2の外側に配置される外側領域1gと、最小領域1cの中心1fからタイヤ径方向D2の内側に配置される内側領域1hとを備えている。そして、内側領域1hが、剛性の高いベルトプライ4c,4dから離れているため、内側領域1hの剛性が低くなり易い。
それに対して、内側領域1hは、ゴム硬度の高いサイドウォールゴム3aの最大厚み位置3dを含んでいる。しかも、内側領域1hの、サイドウォールゴム3aの厚みW3の平均は、外側領域1gの、サイドウォールゴム3aの厚みW3の平均よりも、厚くなっている。これにより、内側領域1hの剛性を高めることができている。
以上より、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、ビード部2の内部に配置されるビード2aと、前記ビード部2の外表面を構成するリムストリップゴム2bと、トレッド部4の外表面を構成するトレッドゴム4aと、サイドウォール部3の外表面を構成し、前記リムストリップゴム2b及び前記トレッドゴム4aにそれぞれ連接されるサイドウォールゴム3aと、を備え、前記ビード2aは、環状に形成されるビードコア2cと、前記ビードコア2cのタイヤ径方向D2の外側に配置されるビードフィラー2dと、を備え、前記サイドウォールゴム3aのゴム材は、前記リムストリップゴム2bのゴム材と、同じであり、前記サイドウォールゴム3a及び前記リムストリップゴム2bのモジュラスは、前記ビードフィラー2dのモジュラスの25%以上である。
斯かる構成によれば、サイドウォールゴム3aのゴム材が、リムストリップゴム2bのゴム材と同じであるため、サイドウォール部3の剛性を高めることができる。これにより、空気入りタイヤ1の剛性を高めることができる。
しかも、サイドウォールゴム3a及びリムストリップゴム2bのモジュラスが、ビードフィラー2dのモジュラスの25%以上であるため、サイドウォール部3の剛性をさらに高めることができる。これにより、空気入りタイヤ1の剛性をさらに高めることができる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、一対の前記ビード2a,2aの間に架け渡されるカーカスプライ5aと、をさらに備え、前記カーカスプライ5aは、前記ビード2aの周りでタイヤ幅方向D1の内側から外側に巻き上げられる巻き上げ部5eを備え、前記巻き上げ部5eのタイヤ径方向D2の外側端5gは、前記空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向D1の寸法W1が最大となる最大幅位置1aよりも、タイヤ径方向D2の外側に配置される、という構成である。
斯かる構成によれば、最大幅位置1aの剛性が低くなり易いことに対して、巻き上げ部5eのタイヤ径方向D2の外側端5gは、最大幅位置1aよりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。これにより、巻き上げ部5eが最大幅位置1aに配置されているため、最大幅位置1aの剛性が低くなることを抑制することができる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、一対の前記ビード2a,2aの間に架け渡される複数のカーカスプライ5a,5bと、をさらに備える、という構成である。
斯かる構成によれば、カーカスプライ5a,5bがサイドウォール部3に複数配置されるため、サイドウォール部3の剛性をさらに高めることができる。これにより、空気入りタイヤ1の剛性をさらに高めることができる。
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
(1)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、内側領域1hは、最大厚み位置3dを、含む、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成が好ましいものの、斯かる構成に限られない。例えば、外側領域1gは、最大厚み位置3dを、含む、という構成でもよい。
(2)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、内側領域1hの、サイドウォールゴム3aの厚みW3の平均は、外側領域1gの、サイドウォールゴム3aの厚みW3の平均よりも、厚い、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成が好ましいものの、斯かる構成に限られない。例えば、内側領域1hの、サイドウォールゴム3aの厚みW3の平均は、外側領域1gの、サイドウォールゴム3aの厚みW3の平均以下である、という構成でもよい。
(3)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、最小領域1cとベルトプライ4cとの距離W4は、最小領域1cとサイドプライ7との距離W5よりも、小さい、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成が好ましいものの、斯かる構成に限られない。例えば、最小領域1cとベルトプライ4cとの距離W4は、最小領域1cとサイドプライ7との距離W5以上である、という構成でもよい。
(4)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、複数のカーカスプライ5a,5bのうち、一つのカーカスプライ5aの巻き上げ部5eのタイヤ径方向D2の外側端5gは、最大幅位置1aよりも、タイヤ径方向D2の外側に配置される、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。
例えば、複数のカーカスプライ5a,5bのうち、全てのカーカスプライ5a,5bの巻き上げ部5e,5fのタイヤ径方向D2の外側端5gは、最大幅位置1aよりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている、という構成でもよい。なお、例えば、複数のカーカスプライ5a,5bのうち、全てのカーカスプライ5a,5bの巻き上げ部5e,5fのタイヤ径方向D2の外側端5gは、最大幅位置1aよりも、タイヤ径方向D2の内側に配置されている、という構成でもよい。
(5)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、サイドウォールゴム3a及びリムストリップゴム2bのゴム硬度は、トレッドゴム4aのゴム硬度よりも、高い、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成が好ましいものの、斯かる構成に限られない。例えば、サイドウォールゴム3a及びリムストリップゴム2bのゴム硬度は、トレッドゴム4aのゴム硬度以下である、という構成でもよい。
タイヤ1の構成と効果を具体的に示すため、タイヤ1の実施例とその比較例とについて、以下に説明する。
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
天然ゴム RSS#3
ポリブタジエンゴム 「BR150B」(コバルト系触媒で重合されたポリブタジエンゴム、シス‐1,4含量=96%、ビニル基含有量=2%)宇部興産社製
カーボンブラック 「シースト3」東海カーボン社製
オイル 「プロセスNC‐140」JX日鉱日石エネルギー社製
ステアリン酸 「ルナックS‐20」花王社製
酸化亜鉛 「酸化亜鉛2種」三井金属鉱業社製
老化防止剤 「ノクラック6C」大内新興化学工業社製
ワックス 「OZOACE‐0355」日本精蝋社製
加硫促進剤CZ 「ソクシノールCZ」住友化学社製
加硫促進剤NS 「ノクセラーNS-P」大内新興化学工業社製
硫黄 「粉末硫黄」鶴見化学工業社製
各配合の未加硫ゴムの作製
硫黄と加硫促進剤とを除く配合剤を、表1にしたがってゴムに添加し、バンバリーミキサーで混練りし、ゴム混合物を得た。ゴム混合物と硫黄と加硫促進剤とをバンバリーミキサーで混練りし、未加硫ゴムを得た。
100%伸びにおける引張応力(モジュラス)
未加硫ゴムを150℃、30分間で加硫し、加硫ゴムを得た。加硫ゴムの100%伸び引張応力をJIS K-6251:2017に準拠して求めた。具体的には、まず、加硫ゴムを打ち抜き刃で打ち抜き、3号形のダンベル状試験片を得た。次に、ダンベル状試験片に、23℃下で、100%の伸びを与えた時の引張力を測定した。引張力を、ダンベル状試験片の初期断面積で除す(割る)ことによって、100%伸び引張応力を求めた。
実施例1における空気入りタイヤの作製
配合Cの未加硫ゴムを、サイドウォールゴム及びリムストリップゴムの両者に用いて未加硫タイヤを作製し、未加硫タイヤを加硫成形し、図1~図3に係る空気入りタイヤを作製した。この空気入りタイヤのタイヤサイズは235/45R17であった。
実施例2における空気入りタイヤの作製
配合Dの未加硫ゴムを、サイドウォールゴム及びリムストリップゴムの両者に用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で空気入りタイヤを作製した。
比較例1における空気入りタイヤの作製
配合Aの未加硫ゴムをサイドウォールゴムに用い、かつ、配合Cの未加硫ゴムをリムストリップゴムに用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で空気入りタイヤを作製した。
比較例2における空気入りタイヤの作製
配合Bの未加硫ゴムをサイドウォールゴムに用い、かつ、配合Cの未加硫ゴムをリムストリップゴムに用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で空気入りタイヤを作製した。
比較例3における空気入りタイヤの作製
配合Aの未加硫ゴムをサイドウォールゴムに用い、かつ、配合Dの未加硫ゴムをリムストリップゴムに用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で空気入りタイヤを作製した。
比較例4における空気入りタイヤの作製
配合Bの未加硫ゴムをサイドウォールゴムに用い、かつ、配合Dの未加硫ゴムをリムストリップゴムに用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で空気入りタイヤを作製した。
平均ラップタイム
空気入りタイヤを装着したレース車両で、プロのドライバーがサーキットを走行し、ラップタイムを4周分測定し、平均ラップタイムを求めた。比較例1の平均ラップタイムの逆数を100とした指数で、各例の平均ラップタイムの逆数を表2に示す。指数が大きいほど、平均ラップタイムが短いことを示す。なお、サーキット走行や、ラップタイムの測定は、レーシングチームに依頼した。
前後剛性(Kx)
大和精衡社製の剛性試験機を使用して、内圧220kPaの空気入りタイヤに、上下方向の荷重470kgfを負荷し、前後方向に141kgfの荷重を負荷し、前後撓みを測定した。比較例1の撓みの逆数を100とした指数で、各例の撓みの逆数を表2に示す。指数が大きいほど、撓みが小さく、前後剛性に優れる。
横剛性(Ky)
大和精衡社製の剛性試験機を使用して、内圧220kPaの空気入りタイヤに、上下方向の荷重470kgfを負荷し、横方向に141kgfの荷重を負荷し、横撓みを測定した。比較例1の撓みの逆数を100とした指数で、各例の撓みの逆数を表2に示す。指数が大きいほど、撓みが小さく、横剛性に優れる。
実施例1における空気入りタイヤの剛性(前後剛性及び横剛性)は、比較例1及び比較例2の剛性より高かった。よって、実施例1における空気入りタイヤの操縦応答性は、比較例1及び比較例2の空気入りタイヤの操縦応答性よりも高いといえる。それを裏付けるように、実施例1における空気入りタイヤの平均ラップタイムは、比較例1及び比較例2の平均ラップタイムよりも短かった。
実施例2における空気入りタイヤの剛性(前後剛性及び横剛性)は、比較例3及び比較例4の剛性より高かった。よって、実施例2における空気入りタイヤの操縦応答性は、比較例3及び比較例4の空気入りタイヤの操縦応答性よりも高いといえる。それを裏付けるように、実施例2における空気入りタイヤの平均ラップタイムは、比較例3及び比較例4の平均ラップタイムよりも短かった。