JP3685432B2 - 航空機用ラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はジェット旅客機等の航空機に使用される航空機用ラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
ジェット旅客機等の航空機には航空機専用の多数のラジアルタイヤが用いられており、これらの航空機用ラジアルタイヤのなかには、サイドゴムとゴムチェーファーゴムとに同一のゴムを使用しているものがあるが、サイドゴムをゴムチェーファーゴムとして使用した場合には、ゴムチェーファーゴムが軟らかすぎるため高発熱となる走行条件において、ゴムチェーファーゴムがブロー(気泡がゴム中に発生する状態)するおそれがあるとともに、長期走行においてゴムチェーファーゴムがリムずれ摩滅するおそれがある。一方、ゴムチェーファーゴムをサイドゴムとして使用した場合には、サイドゴムにオゾンクラックが発生するおそれがある。
【0003】
また、タイヤサイドが柔軟なラジアルタイヤに重荷重が負荷されると、タイヤビード部に多大な負荷が生じるので、航空機用ラジアルタイヤのなかには、ビード部の曲げ剛性をできるだけ高めるために、第2スティフナーゴムの100%伸長時の弾性率を、ゴムチェーファーゴムの100%伸長時の弾性率より大きくしたものがあるが、この場合には、第2スティフナーゴムが硬過ぎるため高発熱となる走行条件において、第2スティフナーゴムがブローするおそれがあるとともに、長期走行において第2スティフナーゴムが剥離するおそれがある。
【0004】
かかる問題点を考慮し、サイドゴムとゴムチェーファーゴムに異種のゴムを使用し、また第2スティフナーゴムの100%伸長時の弾性率をゴムチェーファーゴムの100%伸長時の弾性率より小さく設定する等して、上述のリムずれ、ブロー、剥離等のビード部の故障の防止を図った航空機用ラジアルタイヤが特開平7−172118号公報に報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
航空機用ラジアルタイヤにおいて、カーカスプライコーティングゴムはスタンディングウエーブの発生の抑制を考慮すれば高速耐久性を満足させるために高弾性とすることが好ましい。しかし、カーカスプライコーティングゴムを高弾性にし過ぎると第2スティフナーゴムとの剛性段差が大きくなり、カーカスプライと第2スティフナーゴムとの間で故障し易くなることが明らかとなった。
【0006】
そこで本発明の目的は、リムずれ、ブロー、剥離等のビード部の故障の防止を図るとともに、カーカスプライと第2スティフナーゴムとの間の故障をも防止した航空機用ラジアルタイヤを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、カーカスプライと第2スティフナーゴムとの所定の箇所にこれら両者間の剛性段差を緩和するための、カーカスプライゴムと第2スティフナーゴムの中間的な弾性率を有する背面ゴムを配設することにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の航空機用ラジアルタイヤは、トレッド部の両側で連なる一対のサイドウォール部の内周に夫々形成された一対のビード部と、該ビード部で両端部が折り返され係止された複数のカーカスと、前記カーカスのクラウン部に設けられ路面と接するトレッド部と、前記カーカスのタイヤ半径方向外側でかつトレッド部内側に設けられたベルト層と、ビード部のタイヤ半径方向外側でカーカスの本体部と折り返し部との間でタイヤ半径方向外向きに延びる第1スティフナーゴムと、ビード部においてカーカスのタイヤ軸方向外側面に沿って配設された第2スティフナーゴムと、タイヤサイド部を構成するサイドゴムと、タイヤが正規リムに装着された状態で正規内圧、かつ正規荷重の200%荷重時にリムフランジに接触する部分を含んでタイヤ半径方向外方に延び、サイド部からビード部の底面に至るタイヤの外側面を形成するゴムチェーファーゴムと、を備えた航空機用ラジアルタイヤにおいて、
荷重直下におけるリム離反点Aからカーカスに引いた垂線Xのタイヤ内面と交差する点をBとしたとき、少なくとも垂線X上において背面ゴムがカーカスプライと第2スティフナーゴムとの間にあり、
該背面ゴムの厚さがA−B間の距離の1〜20%であり、
カーカスプライコーティングゴム、背面ゴムおよび第2スティフナーゴムの100%伸長時の弾性率が夫々30〜80kg/cm2(MP)、20〜60kg/cm2(MC)および20〜50kg/cm2(MS)であって、これら弾性率が次式、
MP>MC≧MS
で表される関係を満足することを特徴とするものである。
【0009】
前記背面ゴムの反発弾性が60以上で、かつブローアウト温度が180℃以上であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の航空機用ラジアルタイヤにおいては、前記背面ゴムを配設する他は前記特開平7−172118号公報に開示されているラジアルタイヤと同様の構造を採用することで、リムずれ、ブロー、剥離等のビード部の故障を防止することができる。背面ゴムの配設箇所は、図2に示す如く、荷重直下におけるリム離反点Aからカーカスに引いた垂線Xのタイヤ内面と交差する点をBとしたとき、少なくとも垂線X上においてカーカスプライと第2スティフナーゴムとの間に存在するようにする。かかる箇所に背面ゴムが存在しないと、カーカスプライと第2スティフナーゴムとの間の剛性段差を良好に緩和することができない。
【0011】
ここで、「荷重直下」とは、1997年ティー・アール・エイ イヤーブック(TRA YEAR BOOK)に従い、デザイン リム(DESIGN RIM)に装着し、内圧充填時における荷重直下を意味するものとする。
【0012】
また、本発明においては、前記背面ゴムの厚さがA−B間の距離の1〜20%である。この厚さが1%未満であるとカーカスプライと第2スティフナーゴムとの間の剛性段差を緩和する役割を果たさず、一方20%を超えると背面ゴムより外側のゴムに歪みが集中して、当該外側のゴムの故障を引き起こすことになる。
【0013】
さらに、本発明においては、カーカスプライの高速耐久性を満足するとともに隣接する部材間のバランスを良好に保つために、カーカスプライコーティングゴム、背面ゴムおよび第2スティフナーゴムの100%伸長時の弾性率を夫々30〜80kg/cm2(MP)、20〜60kg/cm2(MC)および20〜50kg/cm2(MS)とし、かつ前記剛性段差の緩和を実現するために、これら弾性率が次式、
MP>MC≧MS
で表される関係を満足するようにする。
【0014】
かかる背面ゴムは、好ましくは反発弾性を60以上としかつブローアウト温度を180℃以上のゴムで構成することで、高発熱の走行条件において背面ゴム自身および隣接する第2スティフナーゴムの故障を、より生じ難くすることができる。
【0015】
なお、背面ゴムが前記物性を満足するようにする上で、その配合系にポリマーゴムの他に、補強性充填剤、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等、通常ゴム工業で使用される配合剤を適宜用いることができるのは勿論のことである。
【0016】
図2に、本発明の実施の形態に係る航空機用ラジアルタイヤ10を示す。このタイヤ10は、その内方に供給された空気による内圧を保つカーカス12によって、圧力容器が形成されている。カーカス12は、馬蹄形状で工業用繊維(例えばナイロン、ポリエステル、アラミド等)、また、場合によっては鋼線により形成されるコードを複数本並べ、ゴム層でこのコードが被覆されて構成されている。
【0017】
また、このタイヤ10は、カーカス12のコードの軸線方向がタイヤ10の幅方向に沿っており、これらのコードがタイヤ10の周方向に並んだラジアル構造となっている。
【0018】
カーカス12の表面は、ゴム層14によって被覆されている。このゴム層14は、タイヤ10の側面部がサイドウォール16と称され、カーカス12の両側壁の外側を保護する役目を有している。
【0019】
カーカス12の両端部は、タイヤ回転軸回りにリング状とされたビードコア18にそれぞれ巻付けられて保持されている。
【0020】
ビードコア18は、ゴム層14に被覆され、全体としてビード部20を構成している。このビード部20は、タイヤ10の内周の寸法を定め、リム21との嵌め合いを確保するようになっている。
【0021】
図1に示す如く、カーカス12は、トレッド部からサイドウォール16を経てビード部20のビードコア18に至る本体部と、ビードコア回りで折り返される折り返し部とから成り、カーカス12の一部12Aは、ビードコア回りをタイヤ内側からタイヤ外側へ折り返されビードコア18の近傍で止まっており、他の一部12Bは、ビードコア回りをタイヤ内側からタイヤ外側へ折り返されサイドウォール16に達しており、残り12Cは、カーカス12A、12Bをタイヤ外面側から覆うようにタイヤ内側へビードコア回りで折り返されビードコア18の近傍で止まっている。
【0022】
ビードコア18のタイヤ半径方向外方(図1の上方)、かつカーカス12の本体部と折り返し部との間には、タイヤ半径方向外向きに延びる第1スティフナーゴム40が設けられており、この第1スティフナーゴム40の100%伸長時の弾性率は、好ましくは50〜150kg/cm2とする。
【0023】
ビード部20においては、カーカス12のタイヤ軸方向外側面に沿って、本発明に係る背面ゴム48を介して第2スティフナーゴム42が配設されている。背面ゴム48および第2スティフナーゴム42の100%伸長時の弾性率は夫々上述の範囲内とする。
【0024】
サイドウォール16を構成するサイドゴム44の100%伸長時の弾性率は、好ましくは10〜40kg/cm2とする。
【0025】
このサイドゴム44のビード部側端部44Aは、ゴムチェーファーゴム46で覆われている。このゴムチェーファーゴム46は、タイヤ10が正規リム21に装着された状態で正規内圧、かつ正規荷重の200%荷重時にリムフランジ21Aに接触する部分を含んでタイヤ半径方向外方に延び、ビード部20の底面20Aからサイドウォール16に至るタイヤ10の外側面を形成している。このゴムチェーファーゴム46の100%伸長時の弾性率は、好ましくは25〜60kg/cm2とする。
【0026】
図2に示す如く、ゴム層14の上方はトレッド部22に連続されている。トレッド部22は、実際に地面に接する部分とされ、摩耗や外傷に十分耐えるように肉厚とされている。
【0027】
カーカス12とトレッド部22との間にはコードをゴム層で被覆したホールドベルト層26、周方向ベルト層27、ホールドベルト層28、切離しベルト層29が層状に配設されており、これらのベルト層26、27、28、29により、タイヤ10の剛性が保持されている。トレッド部22には、タイヤ周方向に沿って延びる溝30がタイヤ幅方向に所定間隔をおいて複数本形成されており、これらの溝30によって周方向に延びる陸部32が区画されている。なお、これらの溝30は、排水、デザイン的な要素の他、タイヤ10に生じる熱を逃がす役目を有している。
【0028】
トレッド部22には、最上層のベルト層29の踏面側に距離をおいて補強層としての保護層34が埋設されている。保護層34は、アラミドコード等の工業繊維コードの編み上げ式とされ、これがゴム層によって被覆されており、地面との接地により傷ついたトレッド部22の表面からのカットの進行を前記ベルト29まで伝達させないよう保護する役目を有している。なお、保護層34の幅はトレッド幅と同等または若干狭めとすることが好ましい。
【0029】
上述した本発明の実施の形態に係る航空機用ラジアルタイヤ10においては、前記特開平7−172118号公報に開示されているように、サイドゴム44の100%伸長時の弾性率をゴムチェーファーゴム46の100%伸長時の弾性率より小さくすることで、ゴムチェーファーゴム46のリムフランジとの摩擦による発熱を低減でき、ブローを抑制することができる。また、リムフランジ21Aに対するゴムチェーファーゴム46の摩擦変形歪みを低減でき、リムずれ量を低減することができる。さらに、サイドゴム44がサイドウォール16の大変形に対しても低応力で変形するため、オゾンクラックの発生を抑制することができる。さらにまた、第2スティフナーゴム42の100%伸長時の弾性率をゴムチェーファーゴム46の100%伸長時の弾性率より小さくすることで、タイヤ荷重時に一定の変形量が加わる、所謂、定変形状態となる航空機用ラジアルタイヤのビード部において、第2スティフナーゴム42の応力を低減するとともに、第2スティフナーゴム42内の発熱を低減でき、ブローを抑制することができる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
実施例において用いた背面ゴムを下記の配合内容にて調製した。
【0031】
実施例として背面ゴムの厚さを図1に示すA−B間の距離の10%として、タイヤサイズ50×20.0R22/32PRの航空機用ラジアルタイヤを下記の表1に示す条件にて試作した。また、比較例1として背面ゴムを使用しない他は実施例と同様にして、さらに比較例2および3として背面ゴムの物性を変化させた他は実施例と同様にして、夫々航空機用ラジアルタイヤを試作した。
なお、表中、弾性率、反発弾性(発熱性、レジリエンス)およびブローアウト温度は以下のようにして測定した。
【0032】
(イ)弾性率
JIS K6301の引張試験に準拠して100%伸長時の弾性率を求めた。
(ロ)反発弾性(発熱性)
ブリティッシュ・スタンダード903:Part A8:1963に準拠して反発弾性試験を実施し、反発弾性値を求めた。レジリエンスが大きい程発熱性の面で優れていること、即ち発熱量が小さいことを示す。
(ハ)ブローアウト温度
荷重68kg(150LB)、回転数300rpm、測定開始温度160℃の状況下において、動的剪断試験を実施し、ブローアウトを強制的に発生させ、その発生時の温度を測定した。
得られた結果を下記の表1に示す。
【0033】
【表1】
*正規内圧:15.5kg/cm2、正規荷重:25900kgを基本条件として、1997年TRA YEAR BOOKに定めらている正規荷重の200%荷重に対して235MPHスピードでの離陸ドラム走行試験
【0034】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の航空機用ラジアルタイヤにおいては、カーカスプライと第2スティフナーゴムとの所定の箇所にこれら両者間の剛性段差を緩和するための、カーカスプライゴムと第2スティフナーゴムの中間的な弾性率を有する背面ゴムを配設したことにより、リムずれ、ブロー、剥離等のビード部の故障の防止を図るとともに、カーカスプライと第2スティフナーゴムとの間の故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における航空機用ラジアルタイヤのビード部近傍を示すタイヤ幅方向に沿って切断した断面図である。
【図2】図1に示す航空機用ラジアルタイヤのタイヤ幅方向に沿って切断しハッチングを省略した断面図である。
【符号の説明】
10 航空機用ラジアルタイヤ
12 カーカス
14 ゴム層
16 サイドウォール
18 ビードコア
20 ビード部
21 リム
21A リムフランジ
40 第1スティフナーゴム
42 第2スティフナーゴム
44 サイドゴム
46 ゴムチェーファーゴム
48 背面ゴム
Claims (1)
- トレッド部の両側で連なる一対のサイドウォール部の内周に夫々形成された一対のビード部と、該ビード部で両端部が折り返され係止された複数のカーカスと、前記カーカスのクラウン部に設けられ路面と接するトレッド部と、前記カーカスのタイヤ半径方向外側でかつトレッド部内側に設けられたベルト層と、ビード部のタイヤ半径方向外側でカーカスの本体部と折り返し部との間でタイヤ半径方向外向きに延びる第1スティフナーゴムと、ビード部においてカーカスのタイヤ軸方向外側面に沿って配設された第2スティフナーゴムと、タイヤサイド部を構成するサイドゴムと、タイヤが正規リムに装着された状態で正規内圧、かつ正規荷重の200%荷重時にリムフランジに接触する部分を含んでタイヤ半径方向外方に延び、サイド部からビード部の底面に至るタイヤの外側面を形成するゴムチェーファーゴムと、を備えた航空機用ラジアルタイヤにおいて、
荷重直下におけるリム離反点Aからカーカスに引いた垂線Xのタイヤ内面と交差する点をBとしたとき、少なくとも垂線X上において背面ゴムがカーカスプライと第2スティフナーゴムとの間にあり、
該背面ゴムの厚さがA−B間の距離の1〜20%であり、
カーカスプライコーティングゴム、背面ゴムおよび第2スティフナーゴムの100%伸長時の弾性率が夫々30〜80kg/cm2(MP)、20〜60kg/cm2(MC)および20〜50kg/cm2(MS)であって、これら弾性率が次式、
MP>MC≧MS
で表される関係を満足し、
前記背面ゴムの反発弾性が60以上で、かつブローアウト温度が180℃以上であることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤ。
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