JP7189171B2 - 湿式摩擦材及びその使用方法 - Google Patents

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Description

本発明は湿式摩擦材及びその使用方法に関する。更に詳しくは、潤滑油の存在下で利用される湿式摩擦材及びその使用方法に関する。
従来、トルク伝達や制動等を目的として、湿式クラッチや湿式ブレーキが利用されている。例えば、自動車等の自動変速機には、湿式クラッチが組み込まれており、その湿式クラッチ内に湿式摩擦材が利用されている。通常、湿式クラッチは、複数枚の湿式摩擦材と複数枚のセパレータプレートとを小さなクリアランスを介して交互に配置し、両者を圧接・離間することでトルク伝達・非伝達する構造となっている。更に、湿式クラッチ内には、圧接・離間の際の摩擦低減や摩擦に伴う摩擦熱を吸収する目的等で潤滑油が供給されている。
そして、このような構造の湿式クラッチでは、非締結時に、湿式摩擦材とセパレータプレートとが離間されて相対回転されているが、上述の通り、湿式摩擦材とセパレータプレートとの間のクリアランスが小さく、潤滑油が介在されているため、湿式クラッチでは、非締結時にトルクを生じてしまう。このトルクは、引摺りトルクと称され、エネルギー効率の観点からは、クラッチの空転時の不要なエネルギー消費となっている。このため、近年、急速に進展されている低燃費化対策として、引摺りトルクの低減が望まれている。このような湿式摩擦材に起因した引摺りトルクの低減を課題とする技術として下記特許文献1及び2が知られている。
国際公開2011-033861号パンフレット 特開2015-004433号公報 特開2019-178719号公報
上記特許文献1には、セグメントピースの表面に潤滑油を共有する供給路を有する態様が開示されている。更に、この供給路がセグメントピースの左右中央部において、内周側端部から外周側端部まで達する凹みである態様(請求項1~2及び図3b)が開示されている。
また、上記特許文献2には、引摺りトルク低減と伝達トルクとのバランスを得る観点から、外周幅が狭く内周幅が広いセグメントピースと、内周幅が狭く外周幅が広いセグメントピースと、を交互に配設した態様([0039]~[0040]、図7b及び図8e)が開示されている。
他方、昨今、湿式摩擦材に対して供給される潤滑油量が、従来より少ない湿式クラッチが求められる場合がある。例えば、このような湿式クラッチは上記特許文献3に開示されている。しかしながら、従来形態の湿式摩擦材を、そのまま、潤滑油量が少ない低油量下で利用すると、非低油量下で利用する場合と全く異なる挙動を示すケースがあることが分かって来た。即ち、非低油量下では、望ましい引摺りトルク低減を発揮する湿式摩擦材であっても、低油量下では十分な引摺りトルク低減が得られない場合があることが分かって来た。そのため、低油量下における引摺りトルク低減作用に優れた新たな湿式摩擦材が求められている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、低油量下における引摺りトルク低減作用に優れた湿式摩擦材及びその使用方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
〔1〕本発明の湿式摩擦材は、平板なリング形状をなすコアプレートと、前記コアプレートの主面にリング状に配置された摩擦部と、を有する湿式摩擦材であって、
前記摩擦部は、下記形態を有する第1セグメントピース(G)と、下記形態を有する第2セグメントピース(G)と、前記セグメントピース同士の間隙として設けられた油溝と、を有し、
前記第1セグメントピース(G)及び前記第2セグメントピース(G)が、前記油溝を介して交互に配置されていることを特徴とする。
:内周側と外周側とに貫通された1条の凹溝を左右中央部に有し、且つ、6以上8以下の辺を有する略多角形の平面形状を有するセグメントピース
:内周側と外周側とに貫通された1条の凹溝を左右中央部に有し、且つ、略台形の平面形状を有するセグメントピース
〔2〕本発明の湿式摩擦材では、前記第1セグメントピース(G)は、前記内周側に沿って配置された下辺L11と、
前記下辺L11に略平行に対向し、且つ、前記外周側に沿って配置された上辺L12と、
前記下辺L11と前記上辺L12とをこれらの左側で繋ぐ左側辺L13と、
前記下辺L11と前記上辺L12とをこれらの右側で繋ぐ右側辺L14と、を有し、
前記左側辺L13は、内周側に位置して左傾した左下斜辺L133を含む2以上3以下の辺が連接されてなり、
前記右側辺L14は、内周側に位置して右傾した右下斜辺L143を含む2以上3以下の辺が連接されたものにできる。
〔3〕本発明の湿式摩擦材では、前記第2セグメントピース(G)は、下底L21と、前記下底L21よりも長さが短い上底L22と、
前記下底L21及び前記上底L22をこれらの左側で繋ぐ左側辺L23と、
前記下底L21及び前記上底L22をこれらの右側で繋ぐ右側辺L24と、を有し、
前記左側辺L23は、外周側に位置して右傾した左上斜辺L231を含む2つの辺が連接されてなり、
前記右側辺L24は、外周側に位置して左傾した右上斜辺L241を含む2つの辺が連接されてなり、
前記下底L21を前記内周側へ向け、前記上底L22を前記外周側へ向けて配置されたものにできる。
〔4〕本発明の湿式摩擦材では、前記第1セグメントピース(G)の前記右下斜辺L143と、前記第2セグメントピース(G)の前記左上斜辺L231と、が略平行であるとともに、前記右下斜辺L143に対する法線と、左上斜辺L231に対する法線と、が重なる領域を有し、且つ、
前記第1セグメントピース(G)の前記左下斜辺L133と、前記第2セグメントピース(G)の前記右上斜辺L241と、が略平行であるとともに、前記左下斜辺L133に対する法線と、前記右上斜辺L241に対する法線と、が重なる領域を有するものにできる。
〔5〕本発明の湿式摩擦材では、前記第1セグメントピース(G)の前記左下斜辺L133が、前記第1セグメントピース(G)の前記凹溝の中心線に対してなす角度をθ133とした場合に、20°≦θ133≦30°であり、
前記第1セグメントピース(G)の前記右下斜辺L143が、前記第1セグメントピース(G)の前記凹溝の中心線に対してなす角度をθ143とした場合に、20°≦θ143≦30°であり、
前記第2セグメントピース(G)の前記左上斜辺L231が、前記第2セグメントピース(G)の前記凹溝の中心線に対してなす角度をθ231とした場合に、20°≦θ231≦30°であり、
前記第2セグメントピース(G)の前記右上斜辺L241が、前記第2セグメントピース(G)の前記凹溝の中心線に対してなす角度をθ241とした場合に、20°≦θ241≦30°であるものにできる。
〔6〕本発明の湿式摩擦材では、前記第1セグメントピース(G)が有する前記左側辺L13は、外周側に位置して右傾した左上斜辺L131を有し、且つ、
前記第1セグメントピース(G)が有する前記右側辺L14は、外周側に位置して左傾した右上斜辺L141を有するものにできる。
〔7〕本発明の湿式摩擦材では、前記第1セグメントピース(G)の前記凹溝の中心線の高さをHとした場合に、
前記左下斜辺L133の高さH133は、H133/H≧0.5であり、
前記右下斜辺L143の高さH143は、H143/H≧0.5であるものにできる。
〔8〕本発明の湿式摩擦材では、前記第2セグメントピース(G)の前記凹溝の中心線の高さをHとした場合に、
前記左上斜辺L231の高さH231は、H231/H≧0.5であり、
前記右上斜辺L241の高さH241は、H241/H≧0.5であるものにできる。
〔9〕本発明の湿式摩擦材では、潤滑油の供給量が1分あたり200mL以下の環境で使用される態様とすることができる。
〔10〕本発明の湿式摩擦材の使用方法は、本発明の湿式摩擦材を、潤滑油の供給量が1分あたり200mL以下の環境で使用することを特徴とする。
本発明の湿式摩擦材によれば、低油量下における引摺りトルク低減作用に優れた湿式摩擦材を提供できる。
本発明の湿式摩擦材の使用方法によれば、低油量下において低い引摺りトルクを達することができる。
本湿式摩擦材の一例を示す平面図(a)及び部分拡大斜視図(b)である。 第1セグメントピースGの一例のバリエーションを示す平面図である。 第1セグメントピースGの他例のバリエーションを示す平面図である。 第1セグメントピースGの他例のバリエーションを示す平面図である。 第2セグメントピースGの一例のバリエーションを示す平面図である。 第2セグメントピースGの他例のバリエーションを示す平面図である。 凹溝のバリエーションを示す断面図である。 油溝を説明する説明図である。 実施例で用いる各湿式摩擦材を説明する部分平面図である。 低油量下における引摺りトルクと相対回転数との相関を示すグラフである。 非低油量下における引摺りトルクと相対回転数との相関を示すグラフである。 低油量下における引摺りトルクと相対回転数との相関を、非低油量下における引摺りトルクと相対回転数との相関に対比させたグラフである。
以下、本発明を、図を参照しながら説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
また、本明細書において各部の平面形状の説明を行う場合には、時計文字盤における12時位置に配置したものを想定して説明を行うものとする。即ち、例えば、セグメントピースの説明をする場合、当該セグメントピースを、湿式摩擦材の時計文字盤の12時位置においた場合を想定して説明する。従って、所定のセグメントピースにおいて、「右」は、時計文字盤の9時位置から3時位置へ向かう方角を意味し、「左」は、時計文字盤の3時位置から9時位置へ向かう方角を意味する。更に、「上」は、時計文字盤の6時位置から12時位置へ向かう方角を意味し、「下」は、時計文字盤の12時位置から6時位置へ向かう方角を意味するものとする。
〈1〉湿式摩擦材
本発明の湿式摩擦材(1)は、平板なリング形状をなすコアプレート(2)と、コアプレート(2)の主面(2a)にリング状に配置された摩擦部(3)と、を有する。
このうち、摩擦部(3)は、第1セグメントピース(G)及び第2セグメントピース(G)を含む複数のセグメントピース(4)と、これらセグメントピース(G)及び(G)の間隙として設けられた油溝(5)と、を有する。更に、セグメントピース(G)及び(G)は、油溝(5)を介して交互に配置されていることを特徴とする(図1~図7参照)。
[1]コアプレート
上記コアプレート2は、平板なリング形状を呈する。即ち、板体中央が開孔された環形状である。コアプレート2は、リング形状の中心を回転中心Pとしている。コアプレート2が有する主面2aは、その面にセグメントピース4が接合されて摩擦部3が形成される面である。主面2aは、コアプレート2の一面のみに有してよいし、両面に有してもよい。即ち、摩擦部3は、コアプレート2の一面のみに形成されてもよいし、コアプレート2の両面に形成されていてもよい。
また、コアプレート2は、上記主面2a以外に、適宜、必要な他構成を備えることができる。他構成としては、例えば、係合歯が挙げられる。係合歯は、コアプレート2の内周面や外周面から突設して設けることができる。具体的には、図1に示すように、内周面から突設された係合歯8を有することができる。係合歯8は、湿式摩擦材1に対して回転軸となるハブの外周に配置されたスプラインと噛み合うことができるように配設される。
コアプレート2の大きさ等は限定されず、外径と内径との相関も限定されないが、例えば、外径をR(外周の直径)、内径をR(係合歯8を有する場合には、係合歯8を除いた内周面を基準とする)とした場合、これらの比R/Rは、1.00≦R/R≦5.00とすることができ、1.01≦R/R≦2.50とすることができ、1.02≦R/R≦1.50とすることができる。
また、コアプレート2の厚さをD(mm)とした場合、厚さDは限定されないが、例えば、0.1≦D(mm)≦10mmとすることができ、0.3≦D(mm)≦7とすることができ、0.5≦D(mm)≦5とすることができる。
更に、コアプレート2は、どのような材料から形成されてもよいが、例えば、各種炭素鋼(S35C、S55C等)、冷間圧延鋼板(SPCC、SPCCT等)、低炭素ハイテン鋼(NCH780等)などを用いることができる。
[2]摩擦部
摩擦部3は、セグメントピース4と油溝5とから構成される。具体的には、複数のセグメントピース4が油溝5を介してリング状に配置されて形成される。
そして、摩擦部3は、湿式摩擦材1と、これに隣接された相手材(セパレータプレート等)と、の接触の程度によって、湿式摩擦材1と相手材との連動具合を調節する機能を有する。即ち、相手材に対するブレーキ機能(制動機能)やトルク伝達機能を有する。
この摩擦部3は、コアプレート2の表側の主面2aと裏側の主面2aとで、同じ形態であってもよいし、異なる形態であってもよい。
[3]セグメントピース
セグメントピース4は、上述のように摩擦部3を構成しており、その表面が摩擦面とされている。油溝5は、セグメントピース4によって区画形成されるため、セグメントピース4の外形と、その並び方により油溝5の形状も決定されることとなる。
本発明の湿式摩擦材1(図1参照)で用いるセグメントピース4には、第1セグメントピースG(以下、単に「第1ピースG」ともいう)及び第2セグメントピースG(以下、単に「第2ピースG」ともいう)が含まれる。セグメントピース4は、通常、これら2種のみからなるが、本発明の目的を阻害しない範囲で必要に応じて、これら2種以外のセグメントピースを含んでもよい。
(3-1)第1ピースG
第1ピースGは、6以上8以下の辺を有する略多角形の平面形状(即ち、外周の形状)を有する。これらの平面形状は、図2~図4に示す形状等として例示される。
ここで、略多角形には、(1)図2a、図3a及び図4aに例示するように、直線辺のみが接続されてなる多角形状、(2)図2b、図3b及び図4bに例示するように、コアプレート2の外周縁や内周縁に対応した湾曲辺を有する多角形状、(3)図2c、図3c及び図4cに例示するように、直線辺同士の接続部に曲線が介在された多角形状、更には、(4)上述した直線辺、湾曲辺及び直線辺同士の接続部に介在された曲線の全てを備えた多角形状等が含まれる。
このように、第1ピースGが、六角形以上八角形以下の略多角形の平面形状を有することにより、第1ピースGは、十分な大きさの摩擦面積を確保しながら、内周側の左右両方の角が切り欠かれた形状を得ることができる。
即ち、第1ピースGが備える各辺のうち、内周側Sに沿って配置された下辺をL11とし、下辺L11に略平行に対向し、且つ、外周側Sに沿って配置された上辺をL12と、下辺L11と上辺L12とをこれらの左側で繋ぐ左側辺をL13とし、下辺L11と上辺L12とをこれらの右側で繋ぐ右側辺をL14とした場合に、左側辺L13は、内周側Sに位置して左傾した左下斜辺L133を含む2以上3以下の辺が連接されてなり、右側辺L14は、内周側に位置して右傾した右下斜辺L143を含む2以上3以下の辺が連接されてなる。
具体的に位は、図2a~図2c、図3a~図3c及び図4a~図4cに例示される辺L133及び辺L143を有することができる。
第1ピースGが、略六角形の平面形状を有する場合、第1ピースGは、下辺L11、上辺L12、左側辺L13、及び、右側辺L14を有し、左側辺L13は、左下斜辺L133を含む2つの辺(辺L131及び辺L133)が連接され、右側辺L14は、右下斜辺L143を含む2つの辺(辺L141及び辺L143)が連接された平面形状を有することになる。このような平面形状の第1ピースGは、例えば、図2及び図3に各々例示される。
(3-1-1)第1ピースGの形態1(図2)
上述のうち、図2に例示される平面形状は、長方形を原形として、内周側Sの左右両方の角が切り欠かれた形状であり、摩擦面の面積が内周側によりも外周側へ多く偏って配置された形状にすることができる。
この平面形状を有することにより、内周側Sから軸心供給される潤滑油を、左下斜辺L133及び右下斜辺L143を介して、摩擦面へと供給し、摩擦面で効率的に利用させることができる。加えて、第1ピースGは、凹溝Tを備えるために、摩擦面で利用された潤滑油を外周側Sへ効率よく排出でき、摩擦面での潤滑油の不要な滞留を抑制できる。
図2に例示される平面形状をなす各辺は、図2aに例示されるように、直線であってもよいし、図2b及び図2cに例示されるように、曲線を含んでもよい。構成辺が曲線である形態としては、(1)辺L11がコアプレート2の内周形状に沿って湾曲された態様(図2b)、(2)辺L12がコアプレート2の外周形状に沿って湾曲された態様(図2b)、(3)各辺同士の接続部が角とならないように面取りされた(丸められた)態様(図2c)、などが挙げられる。これら(1)~(3)の態様は、1つの湿式摩擦材内において、1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、第1ピースGは、左右非対称な平面形状であってもよいが、左右対称な平面形状にすることができる。左右対称な平面形状とは、湿式摩擦材1の回転中心Pを通る線Lによって、第1ピースGを左右に二分した場合に、線Lが対象軸となる線対称の平面形状である。
このように、第1ピースGが左右対称な平面形状である場合には、回転方向に関わらず、同質な引摺りトルク低減作用を得ることができる。即ち、湿式摩擦材が右回転(時計回り)する際の引摺りトルク低減作用と、湿式摩擦材が左回転(反時計回り)する際の引摺りトルク低減作用と、を揃えることができる。
平面形状の左右対称については、第1ピースGの形態1~形態3において共通する。
図2に代表される略六角形の平面形状を有する第1ピースGにおいて、各部の大きさは限定されない。
例えば、第1ピースGの凹溝Tの中心線Lの高さをHとした場合に、左下斜辺L133の高さH133は、H133/H≧0.5とすることができる。H133/H≧0.5である場合には、第1ピースGの左下斜辺L133と、当該第1ピースGの左側に配置される第2ピースGの右斜辺L24又は右上斜辺L241と、が略平行となる領域をより多く確保でき、油溝5の機能を強化できる。
この比は、通常、0.5≦H133/H≦0.9であり、0.5≦H133/H≦0.8が好ましく、0.5≦H133/H≦0.7がより好ましい。
同様に、第1ピースGの凹溝Tの中心線Lの高さをHとした場合に、右下斜辺L143の高さH143は、H143/H≧0.5とすることができる。H143/H≧0.5である場合には、第1ピースGの右下斜辺L143と、当該第1ピースGの右側に配置される第2ピースGの左斜辺L23又は左上斜辺L231と、が略平行となる領域をより多く確保でき、油溝5の機能を強化できる。
この比は、通常、0.5≦H143/H≦0.9であり、0.5≦H143/H≦0.8が好ましく、0.5≦H143/H≦0.7がより好ましい。
また、前述の通り、第1ピースGが左右対称な平面形状を有する場合、中心線Lは、線Lと重なるため、H133/H=H143/Hとなる。
尚、高さHは、中心線Lと第1ピースGの外周線との交点と、中心線Lと第1ピースGの内周線との交点と、の間の距離に等しい。
平面形状の各部の高さについては、第1ピースGの形態1~形態3において共通する。
また、第1ピースGの幅をWとした場合、高さHと幅Wとの比は、0.6≦W/H≦2.0とすることができ、0.7≦W/H≦1.9とすることが好ましく、0.8≦W/H≦1.8とすることがより好ましい。
尚、幅Wは、辺L131と辺L141とによって切り取られる、中心線Lに直交する線分の最大長さである。
平面形状の高さと幅の比については、第1ピースGの形態1~形態3において共通する。
更に、第1ピースGの左下斜辺L133が、第1ピースGの凹溝Tの中心線Lに対してなす角度をθ133とした場合、20°≦θ133≦30°とすることができる。20°≦θ133≦30°である場合には、第1ピースGの左下斜辺L133により、潤滑油を第1ピースGの表面(摩擦面)へより効率よく乗り上げさせることができるとともに、油溝5を機能させる辺としても適した角度にすることができる。この角度は、21°≦θ133≦29°が好ましく、22°≦θ133≦28°がより好ましい。
同様に、第1ピースGの右下斜辺L143が、第1ピースGの凹溝Tの中心線Lに対してなす角度をθ143とした場合、20°≦θ143≦30°とすることができる。20°≦θ143≦30°である場合には、第1ピースGの右下斜辺L143により、潤滑油を第1ピースGの表面(摩擦面)へより効率よく乗り上げさせることができるとともに、油溝5を機能させる辺としても適した角度にすることができる。この角度は、21°≦θ143≦29°が好ましく、22°≦θ143≦28°がより好ましい。
また、前述の通り、第1ピースGが左右対称な平面形状を有する場合、中心線Lは、線Lと重なるため、θ133=θ143となる。
平面形状の各部の角度については、第1ピースGの形態1~形態3において共通する。
更に、第1ピースGは、その表面の左右中央部に凹溝Tを有する。凹溝Tは、溝底面T11がセグメントピース4内にある点で、底面がコアプレート2の主面2aにされた油溝5とは異なっている。そして、溝が、油溝5ではなく、凹溝Tであることにより、コアプレート2の主面2aを伝った潤滑油の流入を大幅に抑制できる。
1つの第1ピースGは、凹溝Tを2条以上有してもよいが、1条のみ有することが好ましい。凹溝Tを1条のみ有することにより、十分な摩擦面積を確保できる。加えて、凹溝Tは、第1ピースGの内周側Sと外周側Sとに貫通されていなくてもよいが、貫通された態様であることが好ましい。貫通された態様であることにより、第1ピースGの表面に乗り上げた潤滑油の排出を促がす作用を得ることができる。結果的に、他構成との組合せによって、低油量下における引摺りトルクを小さく抑えることができる。
凹溝Tの条数及び貫通については、第1ピースGの形態1~形態3において共通する。
凹溝Tの幅Tは限定されないが、第1ピースGの幅Wに対する凹溝Tの幅Tは、T/W≦0.20(通常、0.05≦T/W)とすることができる。T/W≦0.20である場合には、十分な摩擦面積を確保しつつ、第1ピースGの表面に乗り上げた潤滑油の排出を効果的に促がすことができる。
この比は、0.06≦T/W≦0.18が好ましく、0.07≦T/W≦0.15がより好ましい。
凹溝Tの幅Tと第1ピースGの幅Wとの相関については、第1ピースGの形態1~形態3において共通する。
凹溝Tの断面形状(凹溝Tの中心線Lに直交した断面形状)は限定されないが、例えば、図7a~図7eに例示される。
具体的には、図7aに示すように、凹溝Tの断面形状は角形状にすることができる。即ち、左側壁T13、平坦な溝底面T11及び右側壁T14で囲まれた角形状にすることができる(左側壁T13及び右側壁T14は、第1ピースGの表面4aに対して略垂直にでき、溝底面T11は、第1ピースGの表面4aに対して略平行にできる)。
また、図7bに示すように、第1ピースGの表面4a(摩擦面)と左側壁T13との接続部、左側壁T13と溝底面T11との接続部、溝底面T11と右側壁T14との接続部、第1ピースGの表面4aと右側壁T14との接続部、の各接続部は、面取り(丸め)態様にすることができる。
更に、図7cに示すように、第1ピースGの溝底面T11は、中央に向かって次第に深くなるように湾曲された溝底面T11にすることができる。
また、図7dに示すように、凹溝Tの断面形状は、中央に向かって次第に深くなるように湾曲された溝底面T11のみで形成することもできる。
更に、図7eに示すように、凹溝Tの断面形状は、中央に向かって次第に深くなるように、傾斜された左側壁T13と傾斜された右側壁T14とのみで形成することもできる。
凹溝Tの断面形状については、第1ピースGの形態1~形態3において共通する。
凹溝Tの深さTt2は限定されないが、第1ピースGの厚さTt1に対する凹溝Tの深さTt2は、Tt2/Tt1≧0.2(通常、Tt2/Tt1≦0.8)とすることができる。Tt2/Tt1≧0.2である場合には、第1ピースGの表面に乗り上げた潤滑油の排出を効果的に促がすことができる。
この比は、0.3≦Tt2/Tt1≦0.7が好ましく、0.4≦Tt2/Tt1≦0.6がより好ましい。
凹溝Tの深さTt2と第1ピースGの厚さTt1との相関については、第1ピースGの形態1~形態3において共通する。
(3-1-2)第1ピースGの形態2(図3)
図3に例示される平面形状は、長方形を原形として、内周側の左右両方の角、及び、外周側の左右両方の角、が切り欠かれた形状であり、摩擦面の面積が内周側へも外周側へも偏って配置されない形状とすることができる。
この形状では、内周側Sから軸心供給される潤滑油を、左下斜辺L133及び右下斜辺L143を介して、摩擦面へと供給し、摩擦面で効率的に利用させることができる。加えて、油溝5を通る潤滑油を、左上斜辺L131及び右上斜辺L141を介して、外周側への排出を促がすことができる。更に、第1ピースGは、凹溝Tを備えるために、摩擦面で利用された潤滑油を外周側Sへ効率よく排出でき、摩擦面での潤滑油の不要な滞留を抑制できる。
図3に例示される平面形状をなす各辺は、図3aに例示されるように、直線であってもよいし、図3b及び図3cに例示されるように、曲線を含んでもよい。構成辺が曲線である形態としては、(1)辺L11がコアプレート2の内周形状に沿って湾曲された態様(図3b)、(2)辺L12がコアプレート2の外周形状に沿って湾曲された態様(図3b)、(3)各辺同士の接続部が角形状とならないように面取りされた(丸められた)態様(図3c)、などが挙げられる。これら(1)~(3)の態様は、1つの湿式摩擦材内において、1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
図3に代表される略六角形の平面形状を有する第1ピースGにおいて、各部の大きさは限定されない。
例えば、前述した形態1(図2a~図2c)の場合と同様に、第1ピースGの高さHに対する左下斜辺L133の高さH133は、H133/H≧0.5(通常、H133/H≦0.9)とすることができ、その好ましい範囲は前述した形態1と共通する。
同様に、第1ピースGの高さHに対する右下斜辺L143の高さH143は、H143/H≧0.5(通常、H143/H≦0.9)とすることができ、その好ましい範囲は前述した形態1と共通する。
また、前述の通り、第1ピースGが左右対称な平面形状を有する場合、中心線Lは、線Lと重なるため、H133/H=H143/Hとなる点も同様である。
また、第1ピースGの幅をWとした場合、高さHと幅Wとの比は、0.6≦W/H≦2.0とすることができ、その好ましい範囲は前述した形態1と共通する。
更に、第1ピースGの左下斜辺L133の角度θ133は、20°≦θ133≦30°とすることができ、その好ましい範囲は前述した形態1と共通する。
同様に、第1ピースGの右下斜辺L143の角度θ143は、20°≦θ143≦30°とすることができ、その好ましい範囲は前述した形態1と共通する。
また、前述の通り、第1ピースGが左右対称な平面形状を有する場合、中心線Lは、線Lと重なるため、θ133=θ143となる点も同様である。
(3-1-3)第1ピースGの形態3(図4)
第1ピースGが、略八角形の平面形状を有する場合、第1ピースGは、下辺L11、上辺L12、左側辺L13、及び、右側辺L14を有し、左側辺L13は、左下斜辺L133を含む3つの辺(辺L131、辺L132、辺L133)が連接され、右側辺L14は、右下斜辺L143を含む3つの辺(辺L141、辺L142、辺L143)が連接された平面形状を有することになる。このような平面形状の第1ピースGは、例えば、図4に例示される。即ち、左側辺L13が、外周側Sに位置して右傾した左上斜辺L131を有し、且つ、右側辺L14が、外周側Sに位置して左傾した右上斜辺L141を有する。尚、右傾は、辺の上端が辺の下端に対して右側に配置された状態を意味し、左傾は、辺の上端が辺の下端に対して左側に配置された状態を意味する。
図4に例示される平面形状は、長方形を原形として、内周側の左右両方の角、及び、外周側の左右両方の角、が切り欠かれた形状であり、摩擦面の面積が内周側によりも外周側へ多く偏って配置される形状にすることができる。
この形状では、内周側Sから軸心供給される潤滑油を、左下斜辺L133及び右下斜辺L143を介して、摩擦面へと供給し、摩擦面で効率的に利用させることができる。加えて、油溝5を通る潤滑油を、左上斜辺L131及び右上斜辺L141を介して、外周側への排出を促がすことができる。更に、第1ピースGの外周端面が潤滑油と接する面積を低減することができる。また、第1ピースGは、凹溝Tを備えるために、摩擦面で利用された潤滑油を外周側Sへ効率よく排出でき、摩擦面での潤滑油の不要な滞留を抑制できる。
図4に例示される平面形状をなす各辺は、図4aに例示されるように、直線であってもよいし、図4b及び図4cに例示されるように、曲線を含んでもよい。構成辺が曲線である形態としては、(1)辺L11がコアプレート2の内周形状に沿って湾曲された態様(図4b)、(2)辺L12がコアプレート2の外周形状に沿って湾曲された態様(図4b)、(3)各辺同士の接続部が角形状とならないように面取りされた(丸められた)態様(図4c)、などが挙げられる。これら(1)~(3)の態様は、1つの湿式摩擦材内において、1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
図4に代表される略八角形の平面形状を有する第1ピースGにおいて、各部の大きさは限定されない。
例えば、前述した形態1(図2a~図2c)及び形態2(図3a~図3c)の場合と同様に、第1ピースGの高さHに対する左下斜辺L133の高さH133は、H133/H≧0.5(通常、H133/H≦0.9)とすることができ、その好ましい範囲は前述した形態1及び形態2と共通する。
同様に、第1ピースGの高さHに対する右下斜辺L143の高さH143は、H143/H≧0.5(通常、H143/H≦0.9)とすることができ、その好ましい範囲は前述した形態1及び形態2と共通する。
また、前述の通り、第1ピースGが左右対称な平面形状を有する場合、中心線Lは、線Lと重なるため、H133/H=H143/Hとなる点も同様である。
他方、第1ピースGの高さHに対する左上斜辺L131の高さH131は、H131/H<0.5(通常、0.1≦H131/H)とすることができる。H131/H<0.5である場合には、第1ピースGの外周端面が、潤滑油と接する面積を低減しつつ、十分な摩擦面積を確保することができる。この比は、0.2≦H131/H≦0.4が好ましい。
同様に、第1ピースGの高さHに対する右上斜辺L141の高さH141は、H141/H<0.5(通常、0.1≦H141/H)とすることができる。H141/H<0.5である場合には、第1ピースGの外周端面が、潤滑油と接する面積を低減しつつ、十分な摩擦面積を確保することができる。この比は、0.2≦H141/H≦0.4が好ましい。
また、前述の通り、第1ピースGが左右対称な平面形状を有する場合、中心線Lは、線Lと重なるため、H131/H=H141/Hとなる。
また、第1ピースGの幅をWとした場合、高さHと幅Wとの比は、0.6≦W/H≦2.0とすることができ、その好ましい範囲は前述した形態1及び形態2と共通する。
更に、第1ピースGの左下斜辺L133の角度θ133は、20°≦θ133≦30°とすることができ、その好ましい範囲は前述した形態1及び形態2と共通する。
同様に、第1ピースGの右下斜辺L143の角度θ143は、20°≦θ143≦30°とすることができ、その好ましい範囲は前述した形態1及び形態2と共通する。
また、前述の通り、第1ピースGが左右対称な平面形状を有する場合、中心線Lは、線Lと重なるため、θ133=θ143となる点も同様である。
他方、第1ピースGの左上斜辺L131の角度θ131は、30°<θ131≦70°とすることができる。30°<θ131≦70°である場合には、第1ピースGの外周端面が、潤滑油と接する面積を低減しつつ、十分な摩擦面積を確保することができる。この角度は、35°≦θ131≦65°が好ましく、40°≦θ131≦60°がより好ましい。
同様に、第1ピースGの右上斜辺L141の角度θ141は、30°<θ141≦70°とすることができる。30°<θ141≦70°である場合には、第1ピースGの外周端面が、潤滑油と接する面積を低減しつつ、十分な摩擦面積を確保することができる。この角度は、35°≦θ141≦65°が好ましく、40°≦θ141≦60°がより好ましい。
また、前述の通り、第1ピースGが左右対称な平面形状を有する場合、中心線Lは、線Lと重なるため、θ131=θ141となる。
(3-2)第2ピースG
第2ピースGは、内周側Sと外周側Sとに貫通された1条の凹溝Tを左右中央部に有し、且つ、略台形の平面形状を有するセグメントピースである。これらの平面形状は、図5及び図6に示す形状等として例示される。
ここで、略台形には、(1)図5a及び図6aに例示するように、直線辺のみが接続されてなる台形状、(2)図5b及び図6bに例示するように、コアプレート2の外周縁や内周縁に対応した湾曲辺(湾曲された上底、湾曲された下底)を有する台形状、(3)図5c及び図6cに例示するように、直線辺同士の接続部に曲線が介在された台形状、更には、(4)上述した直線辺、湾曲辺及び直線辺同士の接続部に介在された曲線の全てを備えた台形状等が含まれる。
このように、第2ピースGが、略台形状の平面形状を有することにより、第2ピースGは、十分な大きさの摩擦面積を確保しながら、外周側の左右両方の角が切り欠かれた形状を得ることができる。
即ち、第2ピースGが備える各辺のうち、内周側Sに沿って配置された下辺をL21とし、下辺L21に略平行に対向し、且つ、外周側Sに沿って配置された上辺をL22と、下辺L21と上辺L22とをこれらの左側で繋ぐ左側辺をL23とし、下辺L21と上辺L22とをこれらの右側で繋ぐ右側辺をL24とした場合、左側辺L23は右傾され、右側辺L24は左傾される(図5参照)。
また、同様に、第2ピースGが備える各辺を、下辺L21、上辺L22、左側辺L23及び右側辺L24とした場合、左側辺L23は、外周側Sに位置して右傾した左上斜辺L231を含んだ2辺が連接してなる辺とすることができ、右側辺L24は、外周側Sに位置して左傾した右上斜辺L241を含んだ2辺が連接してなる辺とすることができる(図6参照)。
(3-2-1)第2ピースGの形態1(図5)
上述のうち、図5に例示される平面形状は、長方形を原形として、外周側Sの左右両方の角が切り欠かれた形状であり、摩擦面の面積が外周側によりも内周側へ多く偏って配置された形状にすることができる。
2つの第1ピースG同士の間に油溝5を介して、この平面形状を有した第2ピースGが配置されることで、低油量下における引摺りトルクを低減できる。また、第1ピースGの右下斜辺L143と第2ピースGの左側辺L23とで油溝5を形成し、第1ピースGの左下斜辺L133と第2ピースGの右側辺L24とで油溝5を形成して、内周側Sから軸心供給される潤滑油を外周側Sへ効率よく排出でき、潤滑油の不要な滞留を抑制できる。
図5に例示される平面形状をなす各辺は、図5aに例示されるように、直線であってもよいし、図5b及び図5cに例示されるように、曲線を含んでもよい。構成辺が曲線である形態としては、(1)辺L21がコアプレート2の内周形状に沿って湾曲された態様(図5b)、(2)辺L22がコアプレート2の外周形状に沿って湾曲された態様(図5b)、(3)各辺同士の接続部が角とならないように面取りされた(丸められた)態様(図5c)、などが挙げられる。これら(1)~(3)の態様は、1つの湿式摩擦材内において、1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、第2ピースGは、左右非対称な平面形状であってもよいが、左右対称な平面形状にすることができる。左右対称な平面形状とは、湿式摩擦材1の回転中心Pを通る線Lによって、第2ピースGを左右に二分した場合に、線Lが対象軸となる線対称の平面形状である。
このように、第2ピースGが左右対称な平面形状である場合には、回転方向に関わらず、同質な引摺りトルク低減作用を得ることができる。即ち、湿式摩擦材が右回転(時計回り)する際の引摺りトルク低減作用と、湿式摩擦材が左回転(反時計回り)する際の引摺りトルク低減作用と、を揃えることができる。
平面形状の左右対称については、第2ピースGの形態1及び形態2において共通する。
図5に代表される略台形状の平面形状を有する第2ピースGにおいて、各部の大きさは限定されない。
例えば、第2ピースGの凹溝Tの中心線Lの高さをHとし、第1ピースGの幅をWとした場合に、高さHと幅Wとの比は、0.6≦W/H≦2.0とすることができ、0.7≦W/H≦1.9とすることが好ましく、0.8≦W/H≦1.8とすることがより好ましい。
尚、高さHは、中心線Lと第2ピースGの外周線との交点と、中心線Lと第2ピースGの内周線との交点と、の間の距離に等しい。
また、幅Wは、左側辺L23と右側辺L24とによって切り取られる(図6では、辺L232と辺L242とによって切り取られる)、中心線Lに直交する線分の最大長さである。
平面形状の高さ、幅及びこれらの比については、第2ピースGの形態1及び形態2において共通する。
更に、第2ピースGの左側辺L23が、第2ピースGの凹溝Tの中心線Lに対してなす角度をθ23とした場合、20°≦θ23≦30°とすることができる。20°≦θ23≦30°である場合には、油溝5を介して潤滑油を効率よく外周側Sへ排出できる。この角度は、21°≦θ23≦29°が好ましく、22°≦θ23≦28°がより好ましい。
同様に、第2ピースGの右側辺L24が、第2ピースGの凹溝Tの中心線Lに対してなす角度をθ24とした場合、20°≦θ24≦30°とすることができる。20°≦θ24≦30°である場合には、油溝5を介して潤滑油を効率よく外周側Sへ排出できる。この角度は、21°≦θ24≦29°が好ましく、22°≦θ24≦28°がより好ましい。
また、前述の通り、第2ピースGが左右対称な平面形状を有する場合、中心線Lは、線Lと重なるため、θ23=θ24となる。
平面形状の各部の角度については、第2ピースGの形態1及び形態2において共通する。
更に、第2ピースGは、その表面の左右中央部に凹溝Tを有する。凹溝Tは、溝底面T21がセグメントピース4内にある点で、底面がコアプレート2の主面2aにされた油溝5とは異なっている。そして、溝が、油溝5ではなく、凹溝Tであることにより、コアプレート2の主面2aを伝った潤滑油の流入を大幅に抑制できる。
1つの第2ピースGは、凹溝Tを2条以上有してもよいが、1条のみ有することが好ましい。凹溝Tを1条のみ有することにより、十分な摩擦面積を確保できる。加えて、凹溝Tは、第2ピースGの内周側Sと外周側Sとに貫通されていなくてもよいが、貫通された態様であることが好ましい。貫通された態様であることにより、第2ピースGの表面に乗り上げた潤滑油の排出を促がす作用を得ることができる。結果的に、他構成との組合せによって、低油量下における引摺りトルクを小さく抑えることができる。
凹溝Tの条数及び貫通については、第2ピースGの形態1及び形態2において共通する。
凹溝Tの断面形状(凹溝Tの中心線Lに直交した断面形状)は限定されないが、例えば、図7a~図7eに例示される。
具体的には、図7aに示すように、凹溝Tの断面形状は角形状にすることができる。即ち、左側壁T23、平坦な溝底面T21及び右側壁T24で囲まれた角形状にすることができる(左側壁T23及び右側壁T24は、第2ピースGの表面4aに対して略垂直にでき、溝底面T21は、第2ピースGの表面4aに対して略平行にできる)。
また、図7bに示すように、第2ピースGの表面4a(摩擦面)と左側壁T23との接続部、左側壁T23と溝底面T21との接続部、溝底面T21と右側壁T24との接続部、第2ピースGの表面4aと右側壁T24との接続部、の各接続部は、面取り(丸め)態様にすることができる。
凹溝Tの幅Tは限定されないが、第2ピースGの幅Wに対する凹溝Tの幅Tは、T/W≦0.20(通常、0.05≦T/W)とすることができる。T/W≦0.20である場合には、十分な摩擦面積を確保しつつ、第2ピースGの表面に乗り上げた潤滑油の排出を効果的に促がすことができる。
この比は、0.06≦T/W≦0.18が好ましく、0.07≦T/W≦0.15がより好ましい。
凹溝Tの幅Tと第2ピースGの幅Wとの相関については、第2ピースGの形態1及び形態2において共通する。
更に、図7cに示すように、第2ピースGの溝底面T21は、中央に向かって次第に深くなるように湾曲された溝底面T21にすることができる。
また、図7dに示すように、凹溝Tの断面形状は、中央に向かって次第に深くなるように湾曲された溝底面T21のみで形成することもできる。
更に、図7eに示すように、凹溝Tの断面形状は、中央に向かって次第に深くなるように、傾斜された左側壁T23と傾斜された右側壁T24とのみで形成することもできる。
凹溝Tの断面形状については、第2ピースGの形態1及び形態2において共通する。
凹溝Tの深さTt2は限定されないが、第2ピースGの厚さTt1に対する凹溝Tの深さTt2は、Tt2/Tt1≧0.2(通常、Tt2/Tt1≦0.8)とすることができる。Tt2/Tt1≧0.2である場合には、第2ピースGの表面に乗り上げた潤滑油の排出を効果的に促がすことができる。
この比は、0.3≦Tt2/Tt1≦0.7が好ましく、0.4≦Tt2/Tt1≦0.6がより好ましい。
凹溝Tの深さTt2と第2ピースGの厚さTt1との相関については、第2ピースGの形態1及び形態2において共通する。
(3-2-2)第2ピースGの形態2(図6)
図6に例示される平面形状は、長方形を原形として、外周側Sの左右両方の角が切り欠かれた形状であり、摩擦面の面積が外周側によりも内周側へ多く偏って配置された形状にすることができる。
2つの第1ピースG同士の間に油溝5を介して、この平面形状を有した第2ピースGが配置されることで、低油量下における引摺りトルクを低減できる。また、第1ピースGの右下斜辺L143と第2ピースGの左上斜辺L231とで油溝5を形成し、第1ピースGの左下斜辺L133と第2ピースGの右上斜辺L241とで油溝5を形成して、内周側Sから軸心供給される潤滑油を外周側Sへ効率よく排出でき、潤滑油の不要な滞留を抑制できる。
図6に例示される平面形状をなす各辺は、図6aに例示されるように、直線であってもよいし、図6b及び図6cに例示されるように、曲線を含んでもよい。構成辺が曲線である形態としては、(1)辺L21がコアプレート2の内周形状に沿って湾曲された態様(図6b)、(2)辺L22がコアプレート2の外周形状に沿って湾曲された態様(図6b)、(3)各辺同士の接続部が角とならないように面取りされた(丸められた)態様(図6c)、などが挙げられる。これら(1)~(3)の態様は、1つの湿式摩擦材内において、1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
図5に代表される略台形状の平面形状を有する第2ピースGにおいて、各部の大きさは限定されない。
例えば、第2ピースGの凹溝Tの中心線Lの高さをHとした場合に、左上斜辺L231の高さH231は、H231/H≧0.5とすることができる。H231/H≧0.5である場合には、第2ピースGの左上斜辺L231と、当該第2ピースGの左側に配置される第1ピースGの右下斜辺L143と、が略平行となる領域をより多く確保でき、油溝5の機能を強化できる。
この比は、通常、0.5≦H231/H<1であり、0.6≦H231/H≦0.95が好ましく、0.7≦H231/H≦0.90がより好ましい。
同様に、第2ピースGの凹溝Tの中心線Lの高さをHとした場合に、右上斜辺L241の高さH241は、H241/H≧0.5とすることができる。H241/H≧0.5である場合には、第2ピースGの右上斜辺L241と、当該第2ピースGの右側に配置される第1ピースGの左下斜辺L133と、が略平行となる領域をより多く確保でき、油溝5の機能を強化できる。
この比は、通常、0.5≦H241/H<1であり、0.6≦H241/H≦0.95が好ましく、0.7≦H241/H≦0.90がより好ましい。
また、前述の通り、第2ピースGが左右対称な平面形状を有する場合、中心線Lは、線Lと重なるため、H231/H=H241/Hとなる。
更に、第2ピースGの左上斜辺L231が、第2ピースGの凹溝Tの中心線Lに対してなす角度をθ231とした場合、20°≦θ231≦30°とすることができる。20°≦θ231≦30°である場合には、油溝5を介して潤滑油を効率よく外周側Sへ排出できる。この角度は、21°≦θ231≦29°が好ましく、22°≦θ231≦28°がより好ましい。
同様に、第2ピースGの右上斜辺L241が、第2ピースGの凹溝Tの中心線Lに対してなす角度をθ241とした場合、20°≦θ241≦30°とすることができる。20°≦θ241≦30°である場合には、油溝5を介して潤滑油を効率よく外周側Sへ排出できる。この角度は、21°≦θ241≦29°が好ましく、22°≦θ241≦28°がより好ましい。
また、前述の通り、第2ピースGが左右対称な平面形状を有する場合、中心線Lは、線Lと重なるため、θ231=θ241となる。
(3-3)第1ピースGと第2ピースGとの相関
第1ピースGと第2ピースGとは、前述の通り、交互に配置されればよいが、更に、以下のように配置することができる。
即ち、第1ピースGの右下斜辺L143と、第2ピースGの左上斜辺L231と、が略平行であるとともに、右下斜辺L143に対する法線N143と、左上斜辺L231に対する法線N231と、が重なる領域Aを有するように配置できる(図8参照)。この配置により、油溝5による潤滑油を外周側Sへ排出する作用をより向上させることができる。
更に、第1ピースGの左下斜辺L133と、第2ピースGの右上斜辺L241と、が略平行であるとともに、左下斜辺L133に対する法線と、右上斜辺L241に対する法線と、が重なる領域Aを有するように配置できる(図8参照)。この配置により、油溝5による潤滑油を外周側Sへ排出する作用をより向上させることができる。
上述の配置は、別個に行ってもよいが、両配置を同時に行うことが好ましい。
また、第1ピースGと第2ピースGとの大きさの相関は限定されないが、例えば、第1ピースGの高さHと第2ピースGの高さHとの比は、0.8≦H/H≦1.2にすることができる。
更に、第1ピースGの幅Wと第2ピースGの幅Wとの比は、0.8≦W/W≦1.2にすることができる。
(3-4)セグメントピースの数
本発明の湿式摩擦材1において、コアプレート2の1つの主面2aに配置されるセグメントピース4の数は限定されないが、例えば、10以上100以下とすることができる。この数は、15以上90以下が好ましく、20以上80以下がより好ましい。
また、第1ピースGと第2ピースGとは交互に配置されればよい。即ち、セグメントピース4の全てが、第1ピースGと第2ピースGとのみからなってもよいし、これら以外のセグメントピース4を含んでもよい。これら以外のセグメントピース4としては、例えば、第1ピースGと同じ平面形状を有しつつ、凹溝Tを有さないセグメントピース4や、第2ピースGと同じ平面形状を有しつつ、凹溝Tを有さないセグメントピース4が挙げられる。
(3-5)セグメントピースの構成
各セグメントピース4の構成は限定されず、例えば、基材繊維及び充填材を含んだ抄紙体を硬化性樹脂によって固めたものを利用できる。
このうち、基材繊維としては、各種の合成繊維、再生繊維、無機繊維、天然繊維等を利用できる。具体的には、セルロース繊維(パルプ)、アクリル繊維、アラミド繊維等が好ましい。更に、充填材としては、摩擦調整剤としてのカシューダスト、固体潤滑剤としてのグラファイト及び/又は二硫化モリブデン、体質顔料としてのケイソウ土等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。更に、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂及び/又はその変性樹脂を用いることができる。
また、セグメントピース4は、コアプレート2の主面2aに対して、通常、接合して固定されるが、コアプレート2との接合方法は限定されず、熱融着、接着剤等を介した貼着(接着)等の方法を用いることができる。
[4]油溝
油溝5は、2つのセグメントピース4が離間して配置されることで、これらの間隙として形成される潤滑油の流路となる溝である。即ち、油溝5は、内周側S及び外周側Sへ貫通された貫通溝である。
本発明では、少なくとも第1ピースGと第2ピースGとが隣り合って配置され、これらのセグメントピース間に設けられた油溝5を有する。
油溝の各部の大きさは限定されないが、例えば、油溝5の幅(L133とL24、L133とL241、L143とL23、L143とL231が平行である場合における、各2辺間の距離)は、0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.2mm以上8mm以下がより好ましく、0.3mm以上6mm以下が特に好ましい。
[5]使用環境
本発明の湿式摩擦材1は、どのような環境で利用してもよいが、軸芯潤滑下で利用することにより、本構成による効果を顕著に得ることができる。即ち、優れた引摺りトルク低減効果をより顕著に得ることができる。更に、非低油量下で利用する場合にくらべて、低油量下で利用することにより、本構成による効果を顕著に得ることができる。即ち、優れた引摺りトルク低減効果をより顕著に得ることができる。より具体的には、潤滑油の供給量が1分あたり200mL以下の環境が好ましい。この潤滑油の供給量の下限は限定されないが、1分あたり50mL以上であることが好ましい。
〈2〉湿式摩擦材の使用方法
本発明の湿式摩擦材の使用方法は、前述した本発明の湿式摩擦材1を、潤滑油の供給量が1分あたり200mL以下の環境で使用することを特徴とする。
湿式摩擦材1については前述した通りである。この湿式摩擦材1は、非低油量下で利用する場合にくらべて、低油量下で利用することにより、より優れた引摺りトルク低減効果を得ることができる。より具体的には、潤滑油の供給量が1分あたり200mL以下の環境が好ましい。この潤滑油の供給量の下限は限定されないが、1分あたり50mL以上であることが好ましい。
更に、軸芯潤滑以外の環境で利用してもよいが、軸芯潤滑下で利用してもよいが好ましい。
以下では、本発明を実施例によって説明する。尚、各実施例に共通する説明は省略する。
[1]湿式摩擦材の調整
[実施例1]
下記要素を用いて実施例1の湿式摩擦材1を得た(図1及び図9a参照)。
コアプレート2は、平板なリング形状(外径R=183.8mm、内径R=173.2mm)をなし、内周から突設されたスプライン歯8(係合歯8)を有する。このコアプレート2の両主面2a(表側の主面2a及び裏側の主面2aの両面)に下記のセグメントピース4を接合して実施例1の湿式摩擦材を得た。
セグメントピース4は、合計60ピースの下記2種のセグメントピース(30ピースの第1ピースG、30ピースの第2ピースG)が互いに油溝を挟んで交互にリング状に配置されている。
第1ピースG:図4cに示す概形の平面形状を有する。即ち、中心線Lを対象軸として線対称形状であり、内周側Sと外周側Sとに貫通された1条の凹溝Tを左右中央部に有し、且つ、8つの辺を有する略多角形の平面形状を有する。具体的には、内周側Sに沿って配置された下辺L11と、下辺L11に略平行に対向し、且つ、外周側Sに沿って配置された上辺L12と、下辺L11と上辺L12とをこれらの左側で繋ぐ左側辺L13と、下辺L11と上辺L12とをこれらの右側で繋ぐ右側辺L14と、が互いに面取り曲線を介して接続された平面形状を有する。更に、このうち、左側辺L13は、内周側Sに位置して左傾した左下斜辺L133と、凹溝Tに略平行に配置された辺L132と、外周側Sに位置して右傾した左上斜辺L131と、の3つの辺が互いに面取り曲線を介して接続されてなる。同様に、右側辺L14は、内周側Sに位置して右傾した右下斜辺L143と、凹溝Tに略平行に配置された辺L142と、外周側Sに位置して左傾した右上斜辺L141と、の3つの辺が互いに面取り曲線を介して接続されてなる。更に、凹溝Tは、概略として、図7cに示す形態の断面を有する。
第1ピースGの各部の寸法は以下の通りである。
高さH=5.3mm
高さH131=H141=1.2mm
高さH133=H143=2.4mm
幅W=8.1mm
角度θ131=角度θ141=55度
角度θ133=角度θ143=25度
凹溝T幅T=1mm
凹溝T深さTt1-Tt2=0.1mm
第2ピースG:図6cに示す概形の平面形状を有する。即ち、中心線Lを対象軸として線対称形状であり、内周側Sと外周側Sとに貫通された1条の凹溝Tを左右中央部に有し、且つ、略台形の平面形状を有する。具体的には、下底L21と、下底L21よりも長さが短い上底L22と、下底L21及び上底L22をこれらの左側で繋ぐ左側辺L23と、下底L21及び上底L22をこれらの右側で繋ぐ右側辺L24と、が互いに面取り曲線を介して接続された平面形状である。更に、このうち、左側辺L23は、外周側Sに位置して右傾した左上斜辺L231と、凹溝Tに略平行に配置された辺L232と、の2つの辺が互いに面取り曲線を介して接続されてなる。同様に、右側辺L24は、外周側Sに位置して左傾した右上斜辺L241と、凹溝Tに略平行に配置された辺L242と、の2つの辺が互いに面取り曲線を介して接続されてなる。更に、凹溝Tは、概略として、図7cに示す形態の断面を有する。
第2ピースGの各部の寸法は以下の通りである。
高さH=5.3mm
高さH231=H241=4mm
幅W=8.1mm
角度θ23=角度θ24=25度
凹溝T幅T=1mm
凹溝T深さTt1-Tt2=0.1mm
更に、第1ピースGと第2ピースGとは、以下のように配置されて油溝5を形成している。即ち、第1ピースGの右下斜辺L143と、第2ピースGの左上斜辺L231と、が略平行であり、右下斜辺L143に対する法線N143と、左上斜辺L231に対する法線N231と、が重なる領域Aを有し、領域Aにおける油溝5の幅(各法線に平行な幅)が1.5mmである。同様に、第1ピースGの左下斜辺L133と、第2ピースGの右上斜辺L241と、が略平行であり、左下斜辺L133に対する法線N133と、右上斜辺L241に対する法線N241と、が重なる領域Aを有する。領域Aの幅Awは1.5mmであり、領域Aの高さAtは1.1mmである(図8参照)。
尚、各セグメントピース4は、パルプ及びアラミド繊維等の繊維基材と、カシューダスト等の摩擦調整剤と、珪藻土等の充填剤と、を抄造して得られた抄紙体に、硬化性樹脂を含浸させたのち硬化させたものである。そして、各セグメントピース4は、コアプレート2の主面2aに加圧加熱により接合している。
[比較例1]
実施例1における第1ピースGと同じ平面形状を有するが、凹溝Tを有さないセグメントピースGと、第2ピースGと同じ平面形状を有するが、凹溝Tを有さないセグメントピースGと、が交互に配置された湿式摩擦材91(図9a参照)。即ち、実施例1の湿式摩擦材とは、凹溝T及び凹溝Tを備えないこと以外は、同じ湿式摩擦材である。
[比較例2]
実施例1における第2ピースGのみを60ピース並べた湿式摩擦材92(図9b参照)。即ち、実施例1の湿式摩擦材とは、第1ピースGの代わりに第2ピースGが利用されていること以外は、同じ湿式摩擦材である。
[2]引摺りトルクの測定
(1)低油量試験(100mL/分)
上記[1]の実施例1及び比較例1-2の各湿式摩擦材による引摺りトルクの大きさを、下記条件下のもとSAE摩擦試験機で測定した。
自動変速機潤滑油(Automatic Transmission Fluid、「ATF」は出光興産株式会社の登録商標であるが、ここでは当該登録商標とは無関係に以下「ATF」と略す。)油温:40℃、ATF油量:100mL/分(軸芯潤滑)、パッククリアランス:0.5mm/枚の環境下で、試験体の湿式摩擦材を4枚セットし、相対回転数が500~2000rpmの範囲を含むよう変化させたうえで、500rpm、1000rpm、1500rpm、2000rpmの4点における引摺りトルクを測定した。
(2)非低油量試験(1000mL/分)
ATF油量を1000mL/分(軸芯潤滑)に変えたこと以外は、上記(1)低油量試験と同様に引摺りトルクを測定した。
[3]実施例の効果
上記[2]引摺りトルクの測定の(1)低油量試験及び(2)非低油量試験において得られた結果を図10~図12に示した。各図において、縦軸上側が引摺りトルクがより大きいことを表わし、縦軸下側が引摺りトルクがより小さいことを表わす)
図10は、潤滑油の供給量が100mL/分と少ない環境における引摺りトルク-相対回転数の相関を示すグラフである。即ち、低油量下における引摺りトルク-相対回転数の相関を示すグラフである。
図11は、潤滑油の供給量が1000mL/分と多い環境における引摺りトルク-相対回転数の相関を示すグラフである。即ち、非低油量下における引摺りトルク-相対回転数の相関を示すグラフである。
図12は、実施例1及び比較例1の各々に関して、低油量下における引摺りトルク-相対回転数の相関を示すグラフと、非低油量下における引摺りトルク-相対回転数の相関を示すグラフと、を対比させたグラフである。
図11の結果から、潤滑油量が1000mL/分の環境では、相対回転数500~2000rpmの全域において、比較例2の湿式摩擦材92が最も低い引摺りトルクを達することができることが分かる。これに対し、図10からは、潤滑油量が100mL/分の環境では、相対回転数500~2000rpmの全域において、実施例1の湿式摩擦材1が最も低い引摺りトルクを達することができることが分かる。
更に、図12からは、実施例1及び比較例1の各々の湿式摩擦材において、潤滑油量1000mL/分における引摺りトルクと潤滑油量1000mL/分における引摺りトルクとを比較し、引摺りトルク低減効果を観察すると、比較例1に対して、実施例1では、相対回転数500~1000rpmのより低回転域において、より顕著な引摺りトルク低減効果が発揮されていることが分かる。
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
本発明の湿式摩擦材の用途は特に限定されず、例えば、自動車(四輪自動車、二輪自動車等)、鉄道車両、船舶、飛行機等において広く適用される。このうち自動車用品としては、自動変速機(オートマチックトランスミッション、AT)に好適に用いられる。本湿式摩擦材は、変速機内で1枚のみ用いられてもよく、複数枚が用いられてもよいが、複数枚が用いられることが好ましい。本湿式摩擦材は、1つの変速機内でより多く用いられる方が、積算的に大きな効果を得ることができる。即ち、湿式摩擦材の利用枚数が多い湿式多板クラッチにおいてより効果的に引摺りトルクを低減できる。
1;湿式摩擦材、
2;コアプレート、2a;主面、
3;摩擦部、
4;セグメントピース、4a;セグメントピースの表面、
5;油溝、
8;スプライン歯(係合歯)、
;第1セグメントピース(第1ピース)、
;第2セグメントピース(第2ピース)、
11;下辺、
12;上辺、
13;左側辺、L131;左上斜辺、L132;辺、L133;左下斜辺、
14;右側辺、L141;右上斜辺、L142;辺、L143;右下斜辺、
21;下底(下辺)、
22;上底(上辺)、
23;左側辺(左斜辺)、L231;左上斜辺、L232;辺、
24;右側辺(右斜辺)、L241;右上斜辺、L242;辺、
;中心線、
;回転中心Pを通る線、
231、N133、N241、N143;法線、
P;回転中心、
;内周側、
;外周側、
;凹溝、T11;溝底面、T13;左側壁、T14;右側壁、
;凹溝、T21;溝底面、T23;左側壁、T24;右側壁。

Claims (9)

  1. 平板なリング形状をなすコアプレートと、前記コアプレートの主面にリング状に配置された摩擦部と、を有する湿式摩擦材であって、
    前記摩擦部は、下記形態を有する第1セグメントピース(G)と、下記形態を有する第2セグメントピース(G)と、前記セグメントピース同士の間隙として設けられた油溝と、を有し、
    前記第1セグメントピース(G)及び前記第2セグメントピース(G)が、前記油溝を介して交互に配置されていることを特徴とする湿式摩擦材。
    :内周側と外周側とに貫通された1条の凹溝を左右中央部に有し、且つ、6以上8以下の辺を有する略多角形の平面形状を有し、
    前記内周側に沿って配置された下辺L 11 と、
    前記下辺L 11 に略平行に対向し、且つ、前記外周側に沿って配置された上辺L 12 と、
    前記下辺L 11 と前記上辺L 12 とをこれらの左側で繋ぐ左側辺L 13 と、
    前記下辺L 11 と前記上辺L 12 とをこれらの右側で繋ぐ右側辺L 14 と、を有し、
    前記左側辺L 13 は、内周側に位置して左傾した左下斜辺L 133 を含む2以上3以下の辺が連接されてなり、
    前記右側辺L 14 は、内周側に位置して右傾した右下斜辺L 143 を含む2以上3以下の辺が連接されてなるセグメントピース
    :内周側と外周側とに貫通された1条の凹溝を左右中央部に有し、且つ、略台形の平面形状を有するセグメントピース
  2. 前記第2セグメントピース(G)は、下底L21と、前記下底L21よりも長さが短い上底L22と、
    前記下底L21及び前記上底L22をこれらの左側で繋ぐ左側辺L23と、
    前記下底L21及び前記上底L22をこれらの右側で繋ぐ右側辺L24と、を有し、
    前記左側辺L23は、外周側に位置して右傾した左上斜辺L231を含む2つの辺が連接されてなり、
    前記右側辺L24は、外周側に位置して左傾した右上斜辺L241を含む2つの辺が連接されてなり、
    前記下底L21を前記内周側へ向け、前記上底L22を前記外周側へ向けて配置されている請求項に記載の湿式摩擦材。
  3. 前記第1セグメントピース(G)の前記右下斜辺L143と、前記第2セグメントピース(G)の前記左上斜辺L231と、が略平行であるとともに、前記右下斜辺L143に対する法線と、左上斜辺L231に対する法線と、が重なる領域を有し、且つ、
    前記第1セグメントピース(G)の前記左下斜辺L133と、前記第2セグメントピース(G)の前記右上斜辺L241と、が略平行であるとともに、前記左下斜辺L133に対する法線と、前記右上斜辺L241に対する法線と、が重なる領域を有する請求項に記載の湿式摩擦材。
  4. 前記第1セグメントピース(G)の前記左下斜辺L133が、前記第1セグメントピース(G)の前記凹溝の中心線に対してなす角度をθ133とした場合に、20°≦θ133≦30°であり、
    前記第1セグメントピース(G)の前記右下斜辺L143が、前記第1セグメントピース(G)の前記凹溝の中心線に対してなす角度をθ143とした場合に、20°≦θ143≦30°であり、
    前記第2セグメントピース(G)の前記左上斜辺L231が、前記第2セグメントピース(G)の前記凹溝の中心線に対してなす角度をθ231とした場合に、20°≦θ231≦30°であり、
    前記第2セグメントピース(G)の前記右上斜辺L241が、前記第2セグメントピース(G)の前記凹溝の中心線に対してなす角度をθ241とした場合に、20°≦θ241≦30°である請求項に記載の湿式摩擦材。
  5. 前記第1セグメントピース(G)が有する前記左側辺L13は、外周側に位置して右傾した左上斜辺L131を有し、且つ、
    前記第1セグメントピース(G)が有する前記右側辺L14は、外周側に位置して左傾した右上斜辺L141を有する請求項乃至のうちのいずれかに記載の湿式摩擦材。
  6. 前記第1セグメントピース(G)の前記凹溝の中心線の高さをHとした場合に、
    前記左下斜辺L133の高さH133は、H133/H≧0.5であり、
    前記右下斜辺L143の高さH143は、H143/H≧0.5である請求項乃至のうちのいずれかに記載の湿式摩擦材。
  7. 前記第2セグメントピース(G)の前記凹溝の中心線の高さをHとした場合に、
    前記左上斜辺L231の高さH231は、H231/H≧0.5であり、
    前記右上斜辺L241の高さH241は、H241/H≧0.5である請求項乃至のうちのいずれかに記載の湿式摩擦材。
  8. 潤滑油の供給量が1分あたり200mL以下の環境で使用される請求項1乃至のうちのいずれかに記載の湿式摩擦材。
  9. 請求項1乃至のうちのいずれかに記載の湿式摩擦材を、潤滑油の供給量が1分あたり200mL以下の環境で使用することを特徴とする湿式摩擦材の使用方法。
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