JP7188668B2 - 個片化シート - Google Patents

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Description

本発明は、分割起点を切っ掛けにして被着体を個片化する個片化シートに関する。
被着体に粘着シートを貼付し、当該被着体に形成された改質部や脆弱部等の分割起点を切っ掛けにして当該被着体を個片化する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、半導体ウエハ1(被着体)に粘着シートを貼付し、当該粘着シートに張力を付与することで、被着体に形成された脆弱層31(分割起点)を切っ掛けにして当該被着体を個片化するダイシング工程(以下このような工程を「分割用エキスパンド工程」という)を実施し、当該被着体を個片化する方法が記載されている。
特開2014-195102号公報
しかしながら、分割用エキスパンド工程において、被着体には、分割起点の分割面に直交する引張方向または直交に近い引張方向に力が付与されるので、分割位置が安定せず、個片化によって形成される個片体に欠けやワレ等の個片体破損が生じ易くなる。
本発明は、分割用エキスパンド工程を実施することなく、被着体を個片化することが可能な個片化シートを提供することを目的とする。
本発明は、請求項に記載した構成を採用した。
本発明によれば、分割用エキスパンド工程を実施することなく、被着体を個片化することが可能な個片化シートを提供することができる。
本発明の第1態様の個片化シートの一例を示す断面模式図である。 本発明の第2態様の個片化シートの一例を示す断面模式図である。 本発明の第3態様の個片化シートの一例を示す断面模式図である。 本発明の第4態様及び第5態様の個片化シートの一例を示す断面模式図である。 本発明の一態様の個片化シートの使用態様を示す図である。 実施例における本発明の一態様の個片化シートの使用態様を示す図である。
本明細書において、対象となる層が「膨張性層」又は「非膨張性層」のどちらであるかの判断は、膨張させるための膨張処理を3分間行った後、当該膨張処理の前後での下記式から算出される体積変化率に基づき判断する。
・体積変化率(%)={(処理後の前記層の体積-処理前の前記層の体積)/処理前の前記層の体積}×100
つまり、体積変化率が5%以上であれば、当該層は「膨張性層」であると判断し、当該体積変化率が5%未満であれば、当該層は「非膨張性層」であると判断する。
「膨張処理」としては、例えば、膨張性粒子が加熱により膨張する熱膨張性粒子である場合には、当該熱膨張性粒子の膨張開始温度で3分間の加熱処理を行えばよい。また、膨張性粒子が赤外線照射により膨張する赤外線膨張性粒子である場合には、当該赤外線膨張性粒子の膨張が開始する赤外線強度で3分間の赤外線照射処理を行えばよい。
本明細書において、「有効成分」とは、対象となる組成物に含まれる成分のうち、希釈溶媒を除いた成分を指す。
本明細書において、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を示し、他の類似用語も同様である。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
本明細書において、X軸、Y軸、及びZ軸は、それぞれが直行する関係にある。X軸及びY軸は、所定平面内の軸とする。Z軸は、当該所定平面に直交する軸とする。本発明の個片化シートについて説明する場合、個片化シートの積層方向(厚み方向)をZ軸とし、当該積層方向と直交する平面を前記所定平面とする。なお、以降の説明では、前記所定平面を「XY平面」ともいう。
以下、はじめに本発明の個片化シートの構成について説明した後、当該個片化シートの構成要素、並びに当該個片化シートの使用方法、及び製造方法について順に説明する。
[本発明の個片化シートの構成]
本発明の個片化シートは、被着体に貼付し、当該被着体に形成された分割起点を切っ掛けにして当該被着体を個片化する個片化シートであって、基材(Y)及び粘着剤層(X1)を有し、基材(Y)及び粘着剤層(X1)の少なくとも一方に、所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性粒子を含む。本発明の個片化シートにおいて、被着体は、粘着剤層(X1)に貼付される。
本発明の個片化シートは、基材(Y)及び粘着剤層(X1)の少なくとも一方に、所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性粒子を含む。そのため、個片化シートの一部に所定のエネルギーが付与されると、当該所定のエネルギーが付与されたエネルギー付与シート部分は、膨張性粒子が膨張し、無数の凸部が形成される。一方、当該所定のエネルギーが付与されていないエネルギー未付与シート部分は、膨張性粒子が膨張することはない。このようなメカニズムにより、被着体に貼付された個片化シートに所定のエネルギーが付与されると、膨張性粒子が膨張し、当該被着体は、分割起点の分割面に平行なせん断方向または平行に近いせん断方向に力が付与され、分割起点が切っ掛けとなって亀裂が生じて個片化される。
ここで、本発明の個片化シートを用いた被着体の個片化方法の一例について、具体的に説明する。
図5(A)及び(B)に示すように、分割起点である改質部MTとしての第1改質部MTY及び第2改質部MTXを有する被着体WFに、個片化シート1の粘着剤層(X1)を貼付する。なお、改質部MTは、個片化シート1に貼付される前に形成してもよいし、個片化シート1に貼付された後に形成してもよい。そして、エネルギーを付与した位置に、当該エネルギーの付与領域が所定の方向に延びるライン状付与領域LGをエネルギー照射手段31が形成する。次いで、図5(A)に示すように、ライン状付与領域LGが第1改質部MTY方向に延びて個片化シート1に当たった状態を維持しつつ、エネルギー照射手段31を個片化シート1の一端ASX1から他端ASX2に向けて移動させる。なお、当該エネルギーは、熱、赤外線、紫外線、可視光線、音波、X線、及びガンマ線等であり、好ましくは、熱又は赤外線であるが、膨張性粒子の特性、特質、性質、材質、組成、及び構成等を考慮して当該膨張性粒子を膨張させることができるエネルギーであればなんら限定されるものではない。
個片化シート1にエネルギーが付与されると、エネルギー付与シート部分では、膨張性粒子SGが膨張して無数の凸部CVが形成され、被着体WFがその一端WFX1から他端WFX2に向けて次々に部分的に持ち上げられることで、当該被着体WFにせん断方向の力が付与される。被着体WFにせん断方向の力が付与されると、第1改質部MTYが切っ掛けとなって亀裂CKYが生じ、当該被着体WFが個片化してY軸方向に延びる複数の短冊状被着体WFSとなる。
次いで、図5(B)に示すように、ライン状付与領域LGが第2改質部MTX方向に延びて個片化シート1に当たった状態を維持しつつ、エネルギー照射手段31を個片化シート1の一端ASY1から他端ASY2に向けて移動させる。これにより、エネルギー付与シート部分では、膨張性粒子SGがさらに膨張して無数の凸部CVが拡大し、短冊状被着体WFSがその一端WFY1から他端WFY2に向けて次々に部分的に持ち上げられることで、当該短冊状被着体WFSにせん断方向の力が付与される。短冊状被着体WFSにせん断方向の力が付与されると、第2改質部MTXが切っ掛けとなって亀裂CKXが生じ、当該短冊状被着体WFSが個片化して当該亀裂CKXと先に形成されていた亀裂CKYとで複数の個片体CPとなる。ここで、このようにして形成された個片体CPは、粘着剤層(X1)との接触面積が低減するので当該粘着剤層(X1)との接着力も低減し、粘着剤層(X1)から容易に取り外せる状態となる。
なお、図5(A)及び(B)に示す被着体の個片化方法において、被着体WFには、せん断方向に力が付与されるので、分割位置が安定し、分割用エキスパンド工程と比較して、個片化によって形成される個片体CPに個片体破損が生じ難くなる。また、図5(A)及び(B)に示す被着体の個片化方法は、ライン状付与領域LGを所定の位置で停止させたり、エネルギーの付与を停止させたりすることができるので、被着体WFの一部のみを選択的に個片化することもできる。一方、分割用エキスパンド工程の場合、被着体全体が一括して個片化されるので、このように被着体の一部のみを選択的に個片化することはできない。
なお、図5(C)に示すように、ライン状付与領域LG(不図示)が、第1改質部MTY方向及び第2改質部MTX方向に対して所定角度(例えば、第1改質部MTY方向に対して45度)傾斜した方向に延びて個片化シート1に当たった状態を維持しつつ、当該エネルギー照射手段31を個片化シート1の一端ASXY1から他端ASXY2に向けて移動させてもよい。この場合、被着体WFがその一端WFXY1から他端WFXY2に向けて次々に部分的に持ち上げられることで、被着体WFのせん断方向に力が付与され、第1改質部MTY及び第2改質部MTXの両方が切っ掛けとなって亀裂CKXと亀裂CKYとが同時に生じる。この場合、被着体WFは、ライン状付与領域LGの1回のスキャンだけで、個片化されて個片体CPとなる。なお、この場合、ライン状付与領域LGが第1改質部MTY及び第2改質部MTX方向に対して傾斜する所定角度は、第1改質部MTY及び第2改質部MTXの両方を切っ掛けとして、亀裂CKXと亀裂CKYとを同時に生じさせる角度であればよい。具体的には、第1改質部MTY方向または第2改質部MTXに対して0度よりも大きく90度よりも小さい角度、例えば、1度、5度、10度、45度、60度、89度等、どのような角度で傾斜していてもよい。
このように、本発明の個片化シートは、所定のエネルギーを付与したときに膨張性粒子SGが膨張し、被着体にせん断方向の力が付与できるものであればよい。したがって、膨張性粒子SGは、所定のエネルギーを付与したときに膨張性粒子SGが膨張して被着体にせん断方向の力が付与できればよく、粘着剤層(X1)に含まれていてもよいし、基材(Y)に含まれていてもよいし、基材(Y)及び粘着剤層(X1)の双方に含まれていてもよい。
また、図5(A)~(C)に示すように、被着体のせん断方向に付与する力をシートに発揮させる観点から、膨張性粒子SGは、基材(Y)及び粘着剤層(X1)の少なくとも一方に分散されていることが好ましく、個片化シート面内に均一に分散されていることがより好ましい。
但し、膨張性粒子SGは、必ずしも基材(Y)及び粘着剤層(X1)の少なくとも一方に分散されていなくてもよく、例えば、被着体の分割起点に対応する位置に膨張性粒子SGが配置されていてもよい。この場合には、個片化シートの全面に一括してエネルギーを付与した場合にも、被着体の分割起点の下部のみにおいて、当該被着体のせん断方向に付与する力が局所的に作用し、被着体の個片化が可能である。勿論、個片化シートの一部にエネルギーを付与した場合には、被着体の一部のみを個片化することができる。
本発明の個片化シートとしては、例えば、以下に説明する第1態様~第5態様のものが挙げられる。
<第1態様の個片化シート>
本発明の第1態様の個片化シートとしては、例えば、図1に示すように、基材(Y)が非膨張性基材層(Y2)を有し、非膨張性基材層(Y2)に膨張性粒子を含む膨張性粘着剤層(X1-1)が積層された個片化シート1aが挙げられる。
<第2態様の個片化シート>
本発明の第2態様の個片化シートとしては、例えば、図2に示すように、基材(Y)が膨張性粒子を含む膨張性基材層(Y1)を有し、膨張性基材層(Y1)に非膨張性粘着剤層(X1-2)が積層された個片化シート1bが挙げられる。
ここで、第1態様の個片化シートの場合、膨張性粘着剤層(X1-1)において、膨張性粒子の膨張によって膨張性粒子中の内包成分等の漏れ出しが起こり、これに起因する粘着力の低下が起こる恐れがある。これに対し、第2態様の個片化シートの場合、非膨張性粘着剤層(X1-2)において、膨張性粒子の膨張による膨張性粒子中の内包成分等の漏れ出しが起こらず、これに起因する粘着力の低下が起こらない。そのため、上述した図5(A)及び(B)に示す被着体の個片化方法のように、エネルギーを2回に分けて照射する場合、1回目のエネルギー付与時はもとより、2回目のエネルギー付与時においても、被着体を確実に支持した状態で当該被着体にせん断方向への力を付与することができる。しかも、膨張性粒子の膨張により膨張性基材層(Y1)の非膨張性粘着剤層(X1-2)側の表面に生じた凸部が、非膨張性粘着剤層(X1-2)を介して被着体に接触する。そのため、第1態様の個片化シートのように、膨張性粘着剤層(X1-1)を膨張させて被着体にせん断方向への力を付与する場合と比較して、被着体に付与する力を緩やかに当該被着体に伝えることができ、個片体破損がより生じ難くなる。かかる観点から、第2態様の個片化シートがより好ましい。
<第3態様の個片化シート>
本発明の第3態様の個片化シートとしては、例えば、図3に示すように、基材(Y)が膨張性粒子を含む膨張性基材層(Y1)を有し、膨張性基材層(Y1)に膨張性粒子を含む膨張性粘着剤層(X1-1)が積層された個片化シート1cが挙げられる。
第3態様の個片化シートでは、膨張性基材層(Y1)と膨張性粘着剤層(X1-1)の双方が膨張する。そのため、被着体の分割起点を切っ掛けとした亀裂を生じさせる力を付与するために必要な膨張性粒子を、膨張性基材層(Y1)と膨張性粘着剤層(X1-1)との両層において確保すればよく、膨張性粘着剤層(X1-1)への膨張性粒子の含有量を低減させ、膨張性粒子中の内包成分等の漏れ出しによる膨張性粘着剤層(X1-1)の粘着力の低下を抑えやすい。また、このような第3態様の個片化シートでは、膨張性基材層(Y1)における膨張性粒子の膨張と、膨張性粘着剤層(X1-1)における膨張性粒子の膨張との重なりによって、膨張性粘着剤層(X1-1)の表面により大きな凸部が生じやすい。その結果、被着体WFをせん断方向に変位させる距離を大きくすることができ、被着体の分割起点を切っ掛けとした亀裂が生じ易くなる。
ここで、第2態様の個片化シート及び第3態様の個片化シートのように、基材(Y)が膨張性粒子を含む膨張性基材層(Y1)を有する場合、膨張性粒子の膨張により粘着剤層(X1)の粘着表面に凸部をより効率的に生じさせて、被着体の分割起点を切っ掛けとした亀裂を生じさせる力を付与し易くする観点から、以下に示す第4態様の個片化シート又は第5態様の個片化シートが好ましい。
<第4態様及び第5態様の個片化シート>
本発明の第4態様の個片化シートとしては、例えば、図4(A)に示すように、基材(Y)が膨張性粒子を含む膨張性基材(Y1)及び非膨張性基材(Y2)を有し、膨張性基材(Y1)に非膨張性粘着剤層(X1-2)が積層された個片化シート1dが挙げられる。
また、本発明の第5態様の個片化シートとしては、例えば、図4(B)に示すように、基材(Y)が膨張性粒子を含む膨張性基材(Y1)及び非膨張性基材(Y2)を有し、膨張性基材(Y1)に膨張性粘着剤層(X1-1)が積層された個片化シート1eが挙げられる。
基材(Y)が膨張性粒子を含む膨張性基材(Y1)及び非膨張性基材(Y2)を有する場合、個片化シートに所定のエネルギーが付与されると、膨張性基材層(Y1)に含まれる膨張性粒子が膨張し、膨張性基材層(Y1)の粘着剤層(X1)側の表面に凸部が生じ、これに追随して粘着剤層(X1)の粘着表面にも凸部が生じる。その一方で、非膨張性基材層(Y2)は変形し難く、膨張性基材層(Y1)に含まれる膨張性粒子が膨張しても、膨張性基材層(Y1)の非膨張性基材層(Y2)側の表面に凸部が生じ難い。そのため、膨張性粒子の膨張により凸部が膨張性基材層(Y1)の粘着剤層(X1)側の表面において優占的に生じ、これに追随して粘着剤層(X1)の粘着表面にも凸部が効率的に形成される。したがって、個片化シートの一部に所定のエネルギーを付与することによって、個片化シートに貼付されている被着体の一部がせん断方向に変位し易くなり、被着体の分割起点を切っ掛けとした亀裂が生じ易くなる。
なお、第4態様の個片化シートは、第2態様の個片化シートにおいて、基材(Y)を、膨張性粒子を含む膨張性基材(Y1)及び非膨張性基材(Y2)を有するものとしていることから、膨張性粒子中の内包成分等の漏れ出しに起因する非膨張性粘着剤層(X1-2)の粘着力の低下が起こらない。
また、第5態様の個片化シートは、第3態様の個片化シートにおいて、基材(Y)を、膨張性粒子を含む膨張性基材(Y1)及び非膨張性基材(Y2)を有するものとしていることから、膨張性粘着剤層(X1-1)への膨張性粒子の含有量を低減させることができ、膨張性粒子中の内包成分等の漏れ出しによる膨張性粘着剤層(X1-1)の粘着力の低下を抑えやすい。また、被着体WFをせん断方向に変位させる距離を大きくすることができ、被着体の分割起点を切っ掛けとした亀裂が生じ易くなる。
<両面粘着個片化シート>
本発明の一態様の個片化シートは、基材(Y)が粘着剤層(X1)と他の粘着剤層(X2)とで挟持された構成を有する、両面粘着型の個片化シートであってもよい。
このように、他の粘着剤層(X2)を有する構成とすることにより、被着体を個片化する際に、鉄板やガラス板等の硬質支持体に他の粘着剤層(X2)を貼付して個片化シートを安定して支持することができる。
なお、他の粘着剤層(X2)は、非膨張性粘着剤層である。また、第4態様の個片化シート及び第5態様の個片化シートのように、基材(Y)の非膨張性基材層(Y2)の表面に他の粘着剤層(X2)を貼付することで、膨張性基材(Y1)の膨張による他の粘着剤層(X2)への凸部の発生を抑えて、個片化シートにエネルギーを付与している間に被着体を安定して支持することができる。
<接着剤層(Z)を備える個片化シート>
本発明の一態様の個片化シートは、基材(Y)、粘着剤層(X1)、及び接着剤層(Z)がこの順で積層された積層構造を有する構成としてもよい。このような構成を採用し、被着体を接着剤層(Z)に貼付し、被着体を個片化することで、接着剤層(Z)が付着した被着体を個片化することができる。
[膨張性粒子]
膨張性粒子としては、所定のエネルギーが付与されることで膨張する粒子であれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂から構成された外殻と、当該外殻に内包され、所定のエネルギーが付与されると気化等が生じて膨張する内包成分とから構成される、マイクロカプセル化発泡剤であることが好ましい。
マイクロカプセル化発泡剤の外殻を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、及びポリスルホン等が挙げられる。
外殻に内包された内包成分としては、所定のエネルギーを付与することによって、気化等による膨張が生じるものであれば特に限定されない。例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ネオペンタン、ドデカン、イソドデカン、シクロトリデカン、ヘキシルシクロヘキサン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ナノデカン、イソトリデカン、4-メチルドデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン、シクロトリデカン、ヘプチルシクロヘキサン、n-オクチルシクロヘキサン、シクロペンタデカン、ノニルシクロヘキサン、デシルシクロヘキサン、ペンタデシルシクロヘキサン、ヘキサデシルシクロヘキサン、ヘプタデシルシクロヘキサン、オクタデシルシクロヘキサン等が挙げられる。
これらの内包成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
膨張性粒子を膨張させる所定のエネルギーとしては、例えば、熱、赤外線、紫外線、可視光線、音波、X線、及びガンマ線等が挙げられる。膨張性粒子を膨張させる所定のエネルギーの種類は、例えば内包成分の種類を適宜選択することにより、選択することができる。
また、内包成分の種類を適宜選択することにより、膨張性粒子の膨張のために用いられる所定のエネルギーの値を調整することができる。例えば、膨張性粒子が熱により膨張する熱膨張性粒子である場合、内包成分の種類を適宜選択することにより、熱膨張性粒子の膨張開始温度を調整することができる。また、膨張性粒子が赤外線により膨張する赤外線膨張性粒子である場合、内包成分の種類を適宜選択することにより、赤外線膨張性粒子を膨張させるための赤外線強度を調整することができる。
ここで、本発明の一態様の個片化シートにおいて、膨張性粒子は、二種以上含まれていてもよい。
例えば、膨張性粒子は、所定の第一エネルギーで膨張する第一膨張性粒子と、前記第一エネルギーとは異なる第二エネルギーで膨張する第二膨張性粒子とを含んでいてもよい。
ここで、「第一エネルギーとは異なる第二エネルギー」とは、膨張性粒子を膨張させるためのエネルギー種が異なる場合と、膨張性粒子を膨張させるためのエネルギー値が異なる場合との双方を含む意味である。
第一エネルギーと第二エネルギーの組み合わせとしては、例えば、熱、赤外線、紫外線、可視光線、音波、X線、及びガンマ線から選択される二種が挙げられる。あるいは、これらから選択される一種について、膨張に必要なエネルギーが異なる組み合わせが挙げられる。例えば、膨張する温度領域の異なる二種の熱膨張性粒子の組み合わせ、膨張する赤外線強度の異なる二種の赤外線膨張性粒子の組み合わせ等が挙げられる。
膨張性粒子の体積最大膨張率は、好ましくは5~500倍、より好ましくは10~250倍、更に好ましくは30~100倍である。
23℃における膨張前の膨張性粒子の平均粒子径は、好ましくは3~100μm、より好ましくは4~70μm、更に好ましくは6~60μm、より更に好ましくは10~50μmである。
なお、膨張性粒子の平均粒子径とは、体積中位粒径(D50)であり、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて測定した膨張性粒子の粒子分布において、膨張性粒子の粒径の小さい方から計算した累積体積頻度が50%に相当する粒径を意味する。
23℃における膨張前の膨張性粒子の90%粒子径(D90)としては、好ましくは10~150μm、より好ましくは20~100μm、更に好ましくは25~90μm、より更に好ましくは30~80μmである。
なお、膨張性粒子の90%粒子径(D90)とは、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて測定した膨張性粒子の粒子分布において、膨張性粒子の粒径の小さい方から計算した累積体積頻度が90%に相当する粒径を意味する。
[基材(Y)]
本発明の個片化シートが有する基材(Y)は、膨張性粒子を含む膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)の少なくともいずれかの層を有する。
すなわち、基材(Y)は、例えば、図2に示す個片化シート1b及び図3に示す個片化シート1cのように、膨張性基材層(Y1)を有するものであってもよい。
また、基材(Y)は、例えば、図1に示す個片化シート1aのように、非膨張性基材層(Y2)を有するものであってもよい。
さらに、基材(Y)は、例えば、図4(A)に示す個片化シート1d及び図4(B)に示す個片化シート1eのように、膨張性基材層(Y1)と非膨張性基材(Y2)とを有するものであってもよい。この場合、膨張性基材層(Y1)と非膨張性基材層(Y2)と間が接着剤により接着されていてもよい。これにより、膨張性基材層(Y1)と非膨張性基材層(Y2)との層間密着性を良好とすることができる。接着剤は特に限定されず、一般的な接着剤や、粘着剤層(X1)及び他の粘着剤層(X2)の形成材料である粘着剤組成物から形成することができる。
ここで、本発明の一態様において、例えば、図4(A)及び(B)に示す個片化シート1d及び1eのように、基材(Y)が、粘着剤層(X1)の積層面側に膨張性基材層(Y1)を有し、粘着剤層(X1)が積層された面の反対側の面に非膨張性基材層(Y2)が積層されていることが好ましい。
この場合、個片化シートに所定のエネルギーが付与されると、膨張性基材層(Y1)に含まれる膨張性粒子が膨張し、膨張性基材層(Y1)の粘着剤層(X1)側の表面に凸部が生じ、これに追随して粘着剤層(X1)の粘着表面にも凸部が生じる。一方で、非膨張性基材層(Y2)は変形し難く、膨張性基材層(Y1)に含まれる膨張性粒子が膨張しても、膨張性基材層(Y1)の非膨張性基材層(Y2)側の表面に凸部が生じ難い。その結果として、膨張性基材層(Y1)の粘着剤層(X1)側の表面に凸部が優占的に生じ易くなり、粘着剤層(X1)の粘着表面に効率的に凸部が形成される。したがって、個片化シートの一部に所定のエネルギーを付与することによって、個片化シートに貼付されている被着体の一部がせん断方向に変位し易くなり、被着体の分割起点を切っ掛けとした亀裂が生じ易くなる。
なお、基材(Y)を構成する膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)は、いずれも非粘着性の層である。
本発明において、非粘着性の層であるか否かの判断は、対象となる層の表面に対して、JIS Z0237:1991に準拠して測定したプローブタック値が50mN/5mmφ未満であれば、当該層を「非粘着性の層」と判断する。
本発明の一態様の個片化シートが有する膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)の表面におけるプローブタック値は、それぞれ独立に、通常50mN/5mmφ未満であるが、好ましくは30mN/5mmφ未満、より好ましくは10mN/5mmφ未満、更に好ましくは5mN/5mmφ未満である。
なお、本明細書において、膨張性基材(Y1)及び非膨張性基材(Y2)の表面におけるプローブタック値の具体的な測定方法は、実施例に記載の方法による。
本発明の一態様の個片化シートにおいて、基材(Y)の厚さとしては、好ましくは15~2000μm、より好ましくは25~1500μm、更に好ましくは30~1000μm、より更に好ましくは40~500μmである。
膨張性粒子の膨張前における、膨張性基材層(Y1)の厚さは、好ましくは10~1000μm、より好ましくは20~700μm、更に好ましくは25~500μm、より更に好ましくは30~300μmである。
非膨張性基材層(Y2)の厚さは、好ましくは10~1000μm、より好ましくは20~700μm、更に好ましくは25~500μm、より更に好ましくは30~300μmである。
本発明の一態様の個片化シートにおいて、膨張性粒子の膨張前での、膨張性基材層(Y1)と非熱膨張性基材層(Y2)との厚さ比〔(Y1)/(Y2)〕としては、好ましくは0.02~200、より好ましくは0.03~150、更に好ましくは0.05~100である。
本発明の一態様の個片化シートにおいて、膨張性粒子の膨張前での膨張性基材層(Y1)と、当該膨張性基材層(Y1)に直接積層する粘着剤層(X1)との厚さ比〔(Y1)/(X1)〕としては、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上、より更に好ましくは5.0以上であり、また、好ましくは1000以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは60以下、より更に好ましくは30以下である。
本発明の一態様の個片化シートにおいて、非膨張性基材層(Y2)と、当該非膨張性基材層(Y2)と直接積層する他の粘着剤層(X2)との厚さ比〔(Y2)/(X2)〕としては、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。
以下、基材(Y)を構成する、膨張性基材層(Y1)及び非膨張性基材層(Y2)について説明する。
<膨張性基材層(Y1)>
膨張性基材層(Y1)は、膨張性粒子を含有し、当該膨張性粒子に対して所定のエネルギーを付与する膨張処理によって、膨張し得る基材層である。
膨張性基材層(Y1)中の膨張性粒子の含有量は、膨張性基材層(Y1)の全質量(100質量%)に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~35質量%、更に好ましくは10~30質量%、より更に好ましくは15~25質量%である。
なお、膨張性基材層(Y1)と積層する他の層との層間密着性を向上させる観点から、膨張性基材層(Y1)の表面に対して、酸化法や凹凸化法等による表面処理、易接着処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。
酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、熱風処理、オゾン、及び紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法及び溶剤処理法等が挙げられる。
本発明の一態様において、膨張性基材層(Y1)は、下記要件(1)を満たすことがより好ましい。
・要件(1):膨張性粒子の膨張開始時の温度(t)における、膨張性基材層(Y1)の貯蔵弾性率E’(t)が、1.0×10Pa以下である。
例えば、膨張性粒子が熱膨張性粒子である場合、「膨張性粒子の膨張開始時の温度(t)」とは、「熱膨張性粒子の膨張開始温度」を意味する。例えば、膨張開始温度が100℃の熱膨張性粒子であれば、「膨張性粒子の膨張開始時の温度(t)」は100℃である。なお、膨張性粒子が熱膨張性粒子である場合、膨張開始温度(t)が60~270℃の熱膨張性粒子であることが好ましい。
また、例えば赤外線膨張性粒子のように、赤外線照射により室温(23℃)で膨張が開始する膨張性粒子の場合、「膨張性粒子の膨張開始時の温度(t)」は室温(23℃)である。
なお、本明細書において、所定の温度における膨張性基材層(Y1)の貯蔵弾性率E’(t)は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
上記要件(1)は、膨張性粒子が膨張する直前の膨張性基材層(Y1)の剛性を示す指標といえる。
つまり、膨張性粒子が膨張する際、上記要件(1)を満たす程度に、膨張性基材層(Y1)が柔軟性を有していれば、膨張性基材層(Y1)の表面に凸部が生じ易くなり、粘着剤層(X1)の粘着表面にも凸部が生じ易くなる。その結果、個片化シートの一部に所定のエネルギーを付与することによって、個片化シートに貼付されている被着体の一部がせん断方向に変位し易くなり、被着体の分割起点を切っ掛けとした亀裂が生じ易くなる。
上記要件(1)で規定する貯蔵弾性率E’(t)は、上記観点から、好ましくは9.0×10Pa以下、より好ましくは8.0×10Pa以下、更に好ましくは6.0×10Pa以下、より更に好ましくは4.0×10Pa以下である。
また、膨張した膨張性粒子の流動を抑制し、膨張性基材層(Y1)の表面に生じる凸部の形状維持性を向上させ、粘着剤層(X1)の粘着表面に凸部をより生じ易くする観点から、上記要件(1)で規定する貯蔵弾性率E’(t)は、好ましくは1.0×10Pa以上、より好ましくは1.0×10Pa以上、更に好ましくは1.0×10Pa以上である。
(熱膨張性粒子の膨張開始温度の測定法)
膨張性粒子として熱膨張性粒子を用いる場合、熱膨張性粒子の膨張開始温度の測定は、以下に説明する方法により行われる。
直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに、測定対象となる熱膨張性粒子0.5mgを加え、その上からアルミ蓋(直径5.6mm、厚さ0.1mm)をのせた試料を作製する。
動的粘弾性測定装置を用いて、その試料にアルミ蓋上部から、加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、試料の高さを測定する。そして、加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定し、正方向への変位開始温度を膨張開始温度とする。
(樹脂組成物(y))
膨張性基材層(Y1)は、樹脂及び膨張性粒子を含む樹脂組成物(y)から形成することが好ましい。
なお、樹脂組成物(y)には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、基材用添加剤を含有してもよい。
基材用添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、及び着色剤等が挙げられる。
なお、これらの基材用添加剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの基材用添加剤を含有する場合、それぞれの基材用添加剤の含有量は、前記樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001~20質量部、より好ましくは0.001~10質量部である。
膨張性粒子の含有量は、樹脂組成物(y)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~35質量%、更に好ましくは10~30質量%、より更に好ましくは15~25質量%である。
膨張性基材層(Y1)の形成材料である樹脂組成物(y)に含まれる樹脂としては、非粘着性樹脂であってもよく、粘着性樹脂であってもよい。
つまり、樹脂組成物(y)に含まれる樹脂が粘着性樹脂であっても、樹脂組成物(y)から膨張性基材層(Y1)を形成する過程において、当該粘着性樹脂が重合性化合物と重合反応し、得られる樹脂が非粘着性樹脂となり、当該樹脂を含む膨張性基材層(Y1)が非粘着性となればよい。
樹脂組成物(y)に含まれる前記樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは1000~100万、より好ましくは1000~70万、更に好ましくは1000~50万である。
また、当該樹脂が2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、当該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
樹脂の含有量は、樹脂組成物(y)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~95質量%、更に好ましくは65~90質量%、より更に好ましくは70~85質量%である。
本発明の一態様において、膨張性粒子の膨張時に、表面に凸部が生じ易い膨張性基材層(Y1)とする観点から、樹脂組成物(y)に含まれる前記樹脂としては、アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
また、上記アクリルウレタン系樹脂としては、ウレタンプレポリマー(UP)と、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル化合物とを重合してなるアクリルウレタン系樹脂(U1)が好ましい。
(アクリルウレタン系樹脂(U1))
アクリルウレタン系樹脂(U1)の主鎖となるウレタンプレポリマー(UP)としては、ポリオールと多価イソシアネートとの反応物が挙げられる。
なお、ウレタンプレポリマー(UP)は、更に鎖延長剤を用いた鎖延長反応を施して得られたものであることが好ましい。
ウレタンプレポリマー(UP)の原料となるポリオールとしては、例えば、アルキレン型ポリオール、エーテル型ポリオール、エステル型ポリオール、エステルアミド型ポリオール、エステル・エーテル型ポリオール、カーボネート型ポリオール等が挙げられる。
これらのポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いるポリオールとしては、ジオールが好ましく、エステル型ジオール、アルキレン型ジオール及びカーボネート型ジオールがより好ましく、エステル型ジオール、カーボネート型ジオールが更に好ましい。
エステル型ジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール等のアルカンジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール;等のジオール類から選択される1種又は2種以上と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4-ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4'-ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸及びこれらの無水物から選択される1種又は2種以上と、の縮重合体が挙げられる。
具体的には、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3-メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール及びポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。
アルキレン型ジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール等のアルカンジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;等が挙げられる。
カーボネート型ジオールとしては、例えば、1,4-テトラメチレンカーボネートジオール、1,5-ペンタメチレンカーボネートジオール、1,6-ヘキサメチレンカーボネートジオール、1,2-プロピレンカーボネートジオール、1,3-プロピレンカーボネートジオール、2,2-ジメチルプロピレンカーボネートジオール、1,7-ヘプタメチレンカーボネートジオール、1,8-オクタメチレンカーボネートジオール、1,4-シクロヘキサンカーボネートジオール等が挙げられる。
ウレタンプレポリマー(UP)の原料となる多価イソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
これらの多価イソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの多価イソシアネートは、トリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を含有させたイソシアヌレート型変性体であってもよい。
これらの中でも、本発明の一態様で用いる多価イソシアネートとしては、ジイソシアネートが好ましく、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及び脂環式ジイソシアネートから選ばれる1種以上がより好ましい。
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられるが、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましい。
本発明の一態様において、アクリルウレタン系樹脂(U1)の主鎖となるウレタンプレポリマー(UP)としては、ジオールとジイソシアネートとの反応物であり、両末端にエチレン性不飽和基を有する直鎖ウレタンプレポリマーが好ましい。
当該直鎖ウレタンプレポリマーの両末端にエチレン性不飽和基を導入する方法としては、ジオールとジイソシアネート化合物とを反応してなる直鎖ウレタンプレポリマーの末端のNCO基と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させる方法が挙げられる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アクリルウレタン系樹脂(U1)の側鎖となる、ビニル化合物としては、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを併用することがより好ましい。
アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを併用する場合、アルキル(メタ)アクリレート100質量部に対する、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの配合割合としては、好ましくは0.1~100質量部、より好ましくは0.5~30質量部、更に好ましくは1.0~20質量部、より更に好ましくは1.5~10質量部である。
当該アルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~24、より好ましくは1~12、更に好ましくは1~8、より更に好ましくは1~3である。
また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、上述の直鎖ウレタンプレポリマーの両末端にエチレン性不飽和基を導入するために用いられるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと同じものが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル以外のビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニル化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メタ(アクリルアミド)等の極性基含有モノマー;等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ビニル化合物中の(メタ)アクリル酸エステルの含有量としては、当該ビニル化合物の全量(100質量%)に対して、好ましくは40~100質量%、より好ましくは65~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
ビニル化合物中のアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの合計含有量としては、当該ビニル化合物の全量(100質量%)に対して、好ましくは40~100質量%、より好ましくは65~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
本発明の一態様で用いるアクリルウレタン系樹脂(U1)において、ウレタンプレポリマー(UP)に由来の構成単位(u11)と、ビニル化合物に由来する構成単位(u12)との含有量比〔(u11)/(u12)〕としては、質量比で、好ましくは10/90~80/20、より好ましくは20/80~70/30、更に好ましくは30/70~60/40、より更に好ましくは35/65~55/45である。
(オレフィン系樹脂)
樹脂組成物(y)に含まれる樹脂として好適なオレフィン系樹脂としては、オレフィンモノマーに由来の構成単位を少なくとも有する重合体が挙げられる。
上記オレフィンモノマーとしては、炭素数2~8のα-オレフィンが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1-ヘキセン等が挙げられる。
これらの中でも、エチレン及びプロピレンが好ましい。
具体的なオレフィン系樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE、密度:880kg/m以上910kg/m未満)、低密度ポリエチレン(LDPE、密度:910kg/m以上915kg/m未満)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度:915kg/m以上942kg/m未満)、高密度ポリエチレン(HDPE、密度:942kg/m以上)、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂;ポリプロピレン樹脂(PP);ポリブテン樹脂(PB);エチレン-プロピレン共重合体;オレフィン系エラストマー(TPO);エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレン-プロピレン-(5-エチリデン-2-ノルボルネン)等のオレフィン系三元共重合体;等が挙げられる。
本発明の一態様において、オレフィン系樹脂は、さらに酸変性、水酸基変性、及びアクリル変性から選ばれる1種以上の変性を施した変性オレフィン系樹脂であってもよい。
例えば、オレフィン系樹脂に対して酸変性を施してなる酸変性オレフィン系樹脂としては、上述の無変性のオレフィン系樹脂に、不飽和カルボン酸又はその無水物を、グラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記の不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
なお、不飽和カルボン酸又はその無水物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オレフィン系樹脂に対してアクリル変性を施してなるアクリル変性オレフィン系樹脂としては、主鎖である上述の無変性のオレフィン系樹脂に、側鎖として、アルキル(メタ)アクリレートをグラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記のアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~20、より好ましくは1~16、更に好ましくは1~12である。
上記のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、後述のモノマー(a1’)として選択可能な化合物と同じものが挙げられる。
オレフィン系樹脂に対して水酸基変性を施してなる水酸基変性オレフィン系樹脂としては、主鎖である上述の無変性のオレフィン系樹脂に、水酸基含有化合物をグラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記の水酸基含有化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
(アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂)
本発明の一態様において、樹脂組成物(y)には、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
そのような樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;アクリルウレタン系樹脂には該当しないポリウレタン;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
ただし、膨張性粒子の膨張時に、表面に凸部が生じ易い膨張性基材層(Y1)とする観点から、樹脂組成物(y)中のアクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂の含有割合は、少ない方が好ましい。
アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂の含有割合としては、樹脂組成物(y)中に含まれる樹脂の全量100質量部に対して、好ましくは30質量部未満、より好ましくは20質量部未満、より好ましくは10質量部未満、更に好ましくは5質量部未満、より更に好ましくは1質量部未満である。
(無溶剤型樹脂組成物(y1))
樹脂組成物(y)の一態様として、質量平均分子量(Mw)が50000以下のエチレン性不飽和基を有するオリゴマーと、エネルギー線重合性モノマーと、上述の熱膨張性粒子を配合してなり、溶剤を配合しない、無溶剤型樹脂組成物(y1)が挙げられる。
無溶剤型樹脂組成物(y1)では、溶剤を配合しないが、エネルギー線重合性モノマーが、前記オリゴマーの可塑性の向上に寄与するものである。
無溶剤型樹脂組成物(y1)から形成した塗膜に対して、エネルギー線を照射することで、膨張性粒子の膨張時に、表面に凸部が生じ易い膨張性基材層(Y1)を形成し易く、特に、上記要件(1)を満たす膨張性基材層(Y1)を形成し易い。
なお、無溶剤型樹脂組成物(y1)に配合される、膨張性粒子の種類や形状、配合量(含有量)については、樹脂組成物(y)と同じであり、上述のとおりである。
無溶剤型樹脂組成物(y1)に含まれる前記オリゴマーの質量平均分子量(Mw)は、50000以下であるが、好ましくは1000~50000、より好ましくは2000~40000、更に好ましくは3000~35000、より更に好ましくは4000~30000である。
また、前記オリゴマーとしては、上述の樹脂組成物(y)に含まれる樹脂のうち、質量平均分子量が50000以下のエチレン性不飽和基を有するものであればよいが、上述のウレタンプレポリマー(UP)が好ましい。
なお、当該オリゴマーとしては、エチレン性不飽和基を有する変性オレフィン系樹脂も使用し得る。
無溶剤型樹脂組成物(y1)中における、前記オリゴマー及びエネルギー線重合性モノマーの合計含有量は、無溶剤型樹脂組成物(y1)の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~95質量%、更に好ましくは65~90質量%、より更に好ましくは70~85質量%である。
エネルギー線重合性モノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート、トリシクロデカンアクリレート等の脂環式重合性化合物;フェニルヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノールエチレンオキシド変性アクリレート等の芳香族重合性化合物;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリンアクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等の複素環式重合性化合物等が挙げられる。
これらのエネルギー線重合性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記オリゴマーとエネルギー線重合性モノマーの配合比(前記オリゴマー/エネルギー線重合性モノマー)は、好ましくは20/80~90/10、より好ましくは30/70~85/15、更に好ましくは35/65~80/20である。
本発明の一態様において、無溶剤型樹脂組成物(y1)は、さらに光重合開始剤を配合してなることが好ましい。
光重合開始剤を含有することで、比較的低エネルギーのエネルギー線の照射によっても、十分に硬化反応を進行させることができる。
光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロへキシル-フェニル-ケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロルニトリル、ジベンジル、ジアセチル、8-クロールアンスラキノン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の配合量は、前記オリゴマー及びエネルギー線重合性モノマーの全量(100質量部)に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.01~4質量部、更に好ましくは0.02~3質量部である。
<非膨張性基材層(Y2)>
非膨張性基材層(Y2)の形成材料としては、例えば、紙材、樹脂、金属等が挙げられる。
紙材としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、スズ、クロム、チタン等が挙げられる。
これらの形成材料は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
二種以上の形成材料を組み合わせた非膨張性基材層(Y2)としては、紙材をポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしたものや、樹脂を含む樹脂フィルム又は個片化シートの表面に金属膜を形成したもの等が挙げられる。
なお、金属層の形成方法としては、例えば、上記金属を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVD法により蒸着する方法、又は、上記金属からなる金属箔を一般的な粘着剤を用いて貼付する方法等が挙げられる。
なお、非膨張性基材層(Y2)と積層する他の層との層間密着性を向上させる観点から、非膨張性基材層(Y2)が樹脂を含む場合、非膨張性基材層(Y2)の表面に対しても、上述の膨張性基材層(Y1)と同様に、酸化法や凹凸化法等による表面処理、易接着処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。
また、非膨張性基材層(Y2)が樹脂を含む場合、当該樹脂と共に、樹脂組成物(y)にも含有し得る、上述の基材用添加剤を含有してもよい。
非膨張性基材層(Y2)は、上述の方法に基づき判断される、非膨張性層である。
そのため、上述の式から算出される非膨張性基材層(Y2)の体積変化率(%)としては、5%未満であるが、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満、更に好ましくは0.1%未満、より更に好ましくは0.01%未満である。
また、非膨張性基材層(Y2)は、体積変化率が上記範囲である限り、膨張性粒子を含有してもよい。例えば、非膨張性基材層(Y2)に含まれる樹脂を選択することで、熱膨張性粒子が含まれていたとしても、体積変化率を上記範囲に調整することは可能である。
ただし、非膨張性基材層(Y2)中の膨張性粒子の含有量は、少ないほど好ましい。
具体的な膨張性粒子の含有量としては、非膨張性基材層(Y2)の全質量(100質量%)に対して、通常3質量%未満、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、更に好ましくは0.01質量%未満、より更に好ましくは0.001質量%未満である。
ここで、本発明の一態様において、膨張性基材層(Y1)に含まれる膨張性粒子が膨張した際に、膨張性基材層(Y1)の非膨張性基材層(Y2)側の表面に凸部が形成されるのを抑制して、膨張性基材層(Y1)の粘着剤層(X1)側の表面において凸部を優占的に形成する観点から、非膨張性基材層(Y2)は、膨張性粒子の膨張により変形しない程度の剛性を備えることが好ましい。具体的には、膨張性粒子の膨張開始時の温度(t)における、非膨張性基材層(Y2)の貯蔵弾性率E’(t)が、1.1×10Pa以上であることが好ましい。
<粘着剤層(X1)、他の粘着剤層(X2)>
本発明の個片化シートは、粘着剤層(X1)を有する。
また、本発明の一態様の個片化シートは、他の粘着剤層(X2)を有する。
粘着剤層(X1)の粘着表面には被着体が貼付され、他の粘着剤層(X2)の粘着表面には支持体が貼付される。
また、本発明の一態様の個片化シートは、粘着剤層(X1)の粘着表面に接着剤層(Z)が積層される。
粘着剤層(X1)は、膨張性基材層(Y1)中に含まれる膨張性粒子の膨張前においては、被着体を十分に固定し得る性質が求められる。
当該観点から、23℃における、粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、好ましくは1.0×10Pa以上、より好ましくは5.0×10Pa以上、更に好ましくは1.0×10Pa以上である。
その一方で、膨張性基材層(Y1)を膨張させて凸部を生じさせる場合、膨張性基材層(Y1)中の膨張性粒子の膨張時には、膨張性基材層(Y1)の表面に生じた凸部を、粘着剤層(X1)の粘着表面にも形成し得る程度の剛性も要求される。
当該観点から、23℃における、粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、好ましくは1.0×10Pa以下、より好ましくは5.0×10Pa以下、更に好ましくは1.0×10Pa以下である。
なお、本明細書において、粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
他の粘着剤層(X2)は、硬質支持体への固定性を十分に確保する観点から、23℃における、他の粘着剤層(X2)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、好ましくは1.0×10Pa以上、より好ましくは5.0×10Pa以上、更に好ましくは1.0×10Pa以上である。
但し、膨張性基材層(Y1)と他の粘着剤層(X2)との間に非膨張性基材層(Y2)を有しない場合、膨張性基材層(Y2)の表面に生じた凸部を、他の粘着剤層(X2)の粘着表面に形成しない程度の剛性も要求される。この場合、他の粘着剤層(X2)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、1.0×10Paよりも大きいことが好ましく、5.0×10Paよりも大きいことがより好ましく、1.0×10Paよりも大きいことが更に好ましい。
粘着剤層(X1)の厚さは、好ましくは1~60μm、より好ましくは2~50μm、更に好ましくは3~40μm、より更に好ましくは5~30μmである。
他の粘着剤層(X2)の厚さは、好ましくは1~60μm、より好ましくは2~50μm、更に好ましくは3~40μm、より更に好ましくは5~30μmである。
粘着剤層(X1)及び他の粘着剤層(X2)は、粘着性樹脂を含む粘着剤組成物(x)から形成することができる。
また、粘着剤組成物(x)は、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、重合性化合物、重合開始剤等の粘着剤用添加剤を含有してもよい。
また、粘着剤層(X1)が膨張性粒子を含む膨張性粘着剤層(X1-1)である場合、粘着剤組成物(x)は、膨張性粒子を含有する。
膨張性粒子の含有量は、粘着剤組成物(x)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~35質量%、更に好ましくは10~30質量%、より更に好ましくは15~25質量%である。
以下、粘着剤組成物(x)に含まれる各成分について説明する。
(粘着性樹脂)
粘着性樹脂は、当該樹脂単独で粘着性を有し、質量平均分子量(Mw)が1万以上の重合体であればよい。
本発明の一態様で用いる粘着性樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、粘着力の向上の観点から、好ましくは1万~200万、より好ましくは2万~150万、更に好ましくは3万~100万である。
具体的な粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂等のゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。
これらの粘着性樹脂は、一種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、これらの粘着性樹脂が、2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、当該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
本発明の一態様で用いる粘着性樹脂は、上記の粘着性樹脂の側鎖に重合性官能基を導入した、エネルギー線硬化型の粘着性樹脂であってもよい。
例えば、他の粘着剤層(X2)をエネルギー線硬化型の粘着性樹脂を含むエネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成することで、エネルギー線を照射することで粘着力を低下させることができるため、被着体の個片化が終了した後、他の粘着剤層(X2)の粘着力を低下させて、個片化シートを支持体から容易に剥離することができる。
当該重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
また、エネルギー線としては、紫外線や電子線が挙げられるが、紫外線が好ましい。
なお、エネルギー線を照射して粘着力を低下し得る粘着剤層の形成材料としては、重合性官能基を有するモノマー又はオリゴマーを含有するエネルギー線硬化型粘着剤組成物であってもよい。
これらのエネルギー線硬化型粘着剤組成物には、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤を含有することで、比較的低エネルギーのエネルギー線の照射によっても、十分に硬化反応を進行させることができる。
光重合開始剤としては、上述の無溶剤型樹脂組成物(y1)に配合されるものと同じものが挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、エネルギー線硬化型の粘着性樹脂100質量部もしくは重合性官能基を有するモノマー又はオリゴマー100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~5質量部、更に好ましくは0.05~2質量部である。
本発明の一態様において、優れた粘着力を発現させる観点から、粘着性樹脂が、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。特に、粘着剤層(X1)が、アクリル系樹脂を含む粘着剤組成物から形成することで、粘着剤層(X1)の粘着表面に凸部を形成させ易くすることができる。
粘着性樹脂中のアクリル系樹脂の含有割合としては、粘着剤組成物(x)に含まれる粘着性樹脂の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは85~100質量%である。
粘着性樹脂の含有量としては、粘着剤組成物(x)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは35~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは60~98質量%、より更に好ましくは70~95質量%である。
(架橋剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(x)が官能基を有する粘着性樹脂を含有する場合、粘着剤組成物(x)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
当該架橋剤は、官能基を有する粘着性樹脂と反応して、当該官能基を架橋起点として、粘着性樹脂同士を架橋するものである。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
これらの架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの架橋剤の中でも、凝集力を高めて粘着力を向上させる観点、及び入手し易さ等の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
架橋剤の含有量は、粘着性樹脂が有する官能基の数により適宜調整されるものであるが、官能基を有する粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~7質量部、更に好ましくは0.05~5質量部である。
(粘着付与剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(x)は、粘着力をより向上させる観点から、さらに粘着付与剤を含有してもよい。
本明細書において、「粘着付与剤」とは、上述の粘着性樹脂の粘着力を補助的に向上させる成分であって、質量平均分子量(Mw)が1万未満のオリゴマーを指し、上述の粘着性樹脂とは区別されるものである。
粘着付与剤の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは400~10000、より好ましくは500~8000、更に好ましくは800~5000である。
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂、及びこれらを水素化した水素化樹脂等が挙げられる。
粘着付与剤の軟化点は、好ましくは60~170℃、より好ましくは65~160℃、更に好ましくは70~150℃である。
なお、本明細書において、粘着付与剤の「軟化点」は、JIS K 2531に準拠して測定した値を意味する。
粘着付与剤は、単独で用いてもよく、軟化点や構造が異なる2種以上を併用してもよい。
そして、2種以上の複数の粘着付与剤を用いる場合、それら複数の粘着付与剤の軟化点の加重平均が、上記範囲に属することが好ましい。
粘着付与剤の含有量は、粘着剤組成物(x)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01~65質量%、より好ましくは0.1~50質量%、更に好ましくは1~40質量%、より更に好ましくは2~30質量%である。
(粘着剤用添加剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(x)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の添加剤以外にも、一般的な粘着剤に使用される粘着剤用添加剤を含有していてもよい。
このような粘着剤用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、顔料、染料、遅延剤、反応促進剤(触媒)、紫外線吸収剤、帯電防止剤等が挙げられる。
なお、これらの粘着剤用添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの粘着剤用添加剤を含有する場合、それぞれの粘着剤用添加剤の含有量は、粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001~20質量部、より好ましくは0.001~10質量部である。
なお、粘着剤層(X1)は膨張性粘着剤層(X1-1)であってもよいが、膨張性粒子の内包成分の漏れ出しによる粘着力の低下を防ぐ観点から、非膨張性粘着剤層(X1-2)であることが好ましい。また、他の粘着剤層(X2)は、非膨張性粘着剤層である。そのため、粘着剤層(X1)及び他の粘着剤層(X2)の形成材料である粘着剤組成物(x)中の膨張性粒子の含有量は極力少ないほど好ましい。
、粘着剤層(X1)又は他の粘着剤層(X2)における膨張性粒子の含有量としては、粘着剤組成物(x)の有効成分の全量(100質量%)、もしくは、粘着剤層(X1)又は他の粘着剤層(X2)の全質量(100質量%)に対して、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、更に好ましくは0.01質量%未満、より更に好ましくは0.001質量%未満である。
<接着剤層(Z)>
本発明の一態様の個片化シートは、接着剤層(Z)を有する。接着剤層(Z)は、バインダー樹脂(a)、熱硬化性成分(b)を含む接着剤組成物から形成された層であることが好ましい。
また、接着剤組成物は、さらに無機充填材、硬化促進剤、カップリング剤、架橋剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料、染料、ゲッタリング剤等の各種添加剤を含有してもよい。
バインダー樹脂(a)としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系ポリマー、フェノキシ樹脂等が挙げられるが、アクリル系樹脂が好ましい。
バインダー樹脂(a)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万~200万、より好ましくは5万~180万、更に好ましくは10万~150万である。
なお、バインダー樹脂(a)として、質量平均分子量(Mw)が10万以上のアクリル系樹脂と、質量平均分子量が10万未満(好ましくは1000以上10万未満)の熱可塑性樹脂とを併用してもよい。
当該熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
バインダー樹脂(a)の含有量としては、前記接着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは35~95質量%、より好ましくは45~90質量%、更に好ましくは50~80質量%である。
熱硬化性成分(b)としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂と、熱硬化剤とを含むことが好ましく、エポキシ樹脂と熱硬化剤とを含むことがより好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂や、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤としては、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられ、フェノール系化合物が好ましく、具体的には、多官能系フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~500質量部、より好ましくは1~200質量部である。
また、熱硬化性成分(b)の含有量は、接着剤組成物中のバインダー樹脂(a)100質量部に対して、好ましくは5~100質量部、より好ましくは10~75質量部、更に好ましくは15~60質量部である。
なお、上記の「熱硬化性成分(b)の含有量」は、熱硬化性樹脂と熱硬化剤との合計含有量である。
接着剤層(Z)の厚さとしては、好ましくは1~100μm、より好ましくは5~75μm、更に好ましくは5~50μmである。
<剥離材>
本発明の一態様の個片化シートは、粘着剤層(X1)、他の粘着剤層(X2)、及び接着剤層(Z)の粘着表面に、さらに剥離材を積層してもよい。
剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用の基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離材用基材としては、例えば、上質紙、グラシン紙、クラフト紙等の紙類;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離材の厚さは、特に制限ないが、好ましくは10~200μm、より好ましくは25~170μm、更に好ましくは35~80μmである。
[本発明の個片化シートの製造方法]
本発明の個片化シートの製造方法は、特に制限はない。
以下、本発明の第1態様~第5態様の個片化シートの製造方法の一例を示す。
<第1態様の個片化シートの製造方法>
第1態様の個片化シートの製造方法としては、以下の工程(1A)を有する製造方法(1)が挙げられる。
・工程(1A):非膨張性基材層(Y2)の表面上に、膨張性粘着剤層(X1-1)の形成材料である、膨張性粒子を含む粘着剤組成物(x)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥する工程。
<第2態様の個片化シートの製造方法>
第2態様の個片化シートの製造方法としては、以下の工程(2A)及び(2B)を有する製造方法(2)が挙げられる。
・工程(2A):剥離材の剥離処理表面上に、膨張性基材(Y1)の形成材料である樹脂組成物(y)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥又はUV照射して、膨張性基材(Y1)を作製する工程。
・工程(2B):作製した前記膨張性基材(Y1)の表面上に、非膨張性粘着剤層(X1-2)の形成材料である粘着剤組成物(x)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥する工程。
<第3態様の個片化シートの製造方法>
第3態様の個片化シートの製造方法としては、以下の工程(3A)及び(3B)を有する製造方法(3)が挙げられる。
・工程(3A):剥離材の剥離処理表面上に、膨張性基材(Y1)の形成材料である樹脂組成物(y)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥又はUV照射して、膨張性基材(Y1)を作製する工程。
・工程(3B):作製した前記膨張性基材(Y1)の表面上に、膨張性粘着剤層(X1-1)の形成材料である、膨張性粒子を含む粘着剤組成物(x)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥する工程。
<第4態様の個片化シートの製造方法>
第4態様の個片化シートの製造方法としては、以下の工程(4A)及び(4B)を有する製造方法(4)が挙げられる。
・工程(4A):非膨張性基材層(Y2)の表面上に、膨張性基材(Y1)の形成材料である樹脂組成物(y)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥又はUV照射して、膨張性基材(Y1)及び非膨張性基材(Y2)を有する基材(Y)を作製する工程。
・工程(4B):作製した前記膨張性基材(Y1)及び前記非膨張性基材(Y2)を有する基材(Y)の、前記膨張性基材(Y1)の表面上に、非膨張性粘着剤層(X1-2)の形成材料である粘着剤組成物(x)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥する工程。
<第5態様の個片化シートの製造方法>
第5態様の個片化シートの製造方法としては、以下の工程(5A)及び(5B)を有する製造方法(5)が挙げられる。
・工程(5A):非膨張性基材層(Y2)の表面上に、膨張性基材(Y1)の形成材料である樹脂組成物(y)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥又はUV照射して、膨張性基材(Y1)及び非膨張性基材(Y2)を有する基材(Y)を作製する工程。
・工程(5B):作製した前記膨張性基材(Y1)及び前記非膨張性基材(Y2)を有する基材(Y)の、前記膨張性基材(Y1)の表面上に、膨張性粘着剤層(X1-1)の形成材料である、膨張性粒子を含む粘着剤組成物(x)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥する工程。
[本発明の個片化シートの用途]
本発明の個片化シートは、分割起点を有する被着体を個片化するために用いられる。
被着体は、例えば、回路面が形成された半導体ウエハが挙げられる。半導体ウエハは、例えば、シリコンウエハ、シリコンカーバイド(SiC)ウエハ、化合物半導体ウエハ(例えば、リン化ガリウム(GaP)ウエハ、砒化ガリウム(GaAs)ウエハ、リン化インジウム(InP)ウエハ、窒化ガリウム(GaN)ウエハ)等が挙げられる。回路面は、当該ウエハの表面に、例えば、エッチング法、リフトオフ法等によって形成される。
なお、半導体ウエハには、ステルスダイシング法に適用するために、半導体ウエハの内部に改質領域を形成する処理を行う必要がある。また、半導体ウエハには、先ダイシング法に適用するために、半導体ウエハの表面から厚さ方向に溝を形成する処理を行う必要がある。
これらの処理を予め行った半導体ウエハの回路面を、粘着剤層(X1)の粘着表面に貼付してもよい。また、これらの処理を行っていない半導体ウエハの回路面を、粘着剤層(X1)の粘着表面に貼付した後、これらの処理を行ってもよい。
なお、半導体ウエハの粘着剤層(X1)の貼付面は、回路面には限定されず、回路面の反対側の面としてもよい。
ステルスダイシング法によって半導体ウエハを個片化し、半導体チップを製造する場合、半導体ウエハの内部に改質領域を形成する処理としては、半導体ウエハの裏面(回路面の反対側の面)または、半導体ウエハの表面(回路面の面)をレーザ光入斜射面として、ワークの内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、多光子吸収による改質部を形成する方法が挙げられる。
一方で、先ダイシング法に適用するための半導体ウエハの表面から厚さ方向に溝を形成する処理は、半導体ウエハを粘着剤層(X1)に貼付前に行ってもよく、貼付後に行ってもよい。
先ダイシング法によって半導体チップを製造する場合に、半導体ウエハの表面から厚さ方向に溝を形成する処理としては、公知のウエハダイシング装置等を用いてダイシングにより行う方法が挙げられる。ここで、先ダイシング法によって形成される溝は、本発明の分割起点となり得る。この場合、被着体に粘着シートを貼付し、当該被着体に形成された前記溝を分割起点とし、当該分割起点を切っ掛けにして当該被着体を個片化すればよい。
そして、分割起点としての改質領域を有する半導体ウエハは、本発明の個片化シートに貼付された状態で、上述した方法によりライン状付与領域等が形成され、エネルギー付与シート部分で膨張性粒子が膨張することにより、半導体ウエハにせん断方向への力が付与され、分割起点を切っ掛けとした亀裂が生じ、当該半導体ウエハが個片化される。
なお、被着体は、回路面が形成された半導体ウエハには限定されず、回路面が形成されていない半導体ウエハであってもよい。また、半導体パッケージ、電子部品、ディスプレイ、サファイア基板やパネル用ガラス基板などの各種基板等であってもよい。
なお、本発明の一態様の個片化シートは、鉄板やガラス板等の硬質支持体上に基材(Y)の表面を保持しながら用いるようにしてもよい。これにより、本発明の一態様の個片化シート自体が外力により変形し易い部材で構成されている場合に、個片化シート自体が外力により変形するのを抑えて、膨張性粒子の膨張によるせん断方向への力を被着体により確実に付与することができる。硬質支持体上に基材(Y)の表面を保持する方法としては、個片化シートの基材(Y)面と複数の貫通孔を有する硬質支持体とを接触させ、当該貫通孔を介して個片化シートを吸引して保持する方法が挙げられる。また、本発明の一態様の個片化シートの他の粘着剤層(X2)を硬質支持体に貼付する方法が挙げられる。
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の製造例及び実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
<質量平均分子量>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL-L」「TSK gel G2500HXL」「TSK gel G2000HXL」「TSK gel G1000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
<各層の厚さの測定>
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。
<熱膨張性基材層(Y1)の貯蔵弾性率E’>
形成した熱膨張性基材層(Y1)を、縦5mm×横30mm×厚さ200μmの大きさとし、剥離材を除去したものを試験サンプルとした。
動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製,製品名「DMAQ800」)を用いて、試験開始温度0℃、試験終了温度300℃、昇温速度3℃/分、振動数1Hz、振幅20μmの条件で、所定の温度における、当該試験サンプルの貯蔵弾性率E’を測定した。
<粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’>
形成した粘着剤層(X1)を、直径8mmの円形に切断したものを、剥離材を除去し、重ね合わせて、厚さ3mmとしたものを試験サンプルとした。
粘弾性測定装置(Anton Paar社製、装置名「MCR300」)を用いて、試験開始温度0℃、試験終了温度300℃、昇温速度3℃/分、振動数1Hzの条件で、ねじりせん断法によって、所定の温度における、試験サンプルの貯蔵せん断弾性率G’を測定した。
<プローブタック値>
測定対象となる基材層を一辺10mmの正方形に切断した後、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で24時間静置したものを試験サンプルとした。
23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、タッキング試験機(日本特殊測器株式会社製,製品名「NTS-4800」)を用いて、試験サンプルの表面におけるプローブタック値を、JIS Z0237:1991に準拠して測定した。
具体的には、直径5mmのステンレス鋼製のプローブを、1秒間、接触荷重0.98N/cmで試験サンプルの表面に接触させた後、当該プローブを10mm/秒の速度で、試験サンプルの表面から離すのに必要な力を測定し、得られた値を、その試験サンプルのプローブタック値とした。
製造例1(アクリルウレタン系樹脂の合成)
(1)ウレタンプレポリマーの合成
窒素雰囲気下の反応容器内に、質量平均分子量1,000のポリカーボネートジオール100質量部(固形分比)に対して、イソホロンジイソシアネートを、ポリカーボネートジオールの水酸基とイソホロンジイソシアネートのイソシアネート基との当量比が1/1となるように配合し、さらにトルエン160質量部を加え、窒素雰囲気下にて、撹拌しながら、イソシアネート基濃度が理論量に到達するまで、80℃で6時間以上反応させた。
次いで、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)1.44質量部(固形分比)をトルエン30質量部に希釈した溶液を添加して、両末端のイソシアネート基が消滅するまで、更に80℃で6時間反応させ、質量平均分子量2.9万のウレタンプレポリマーを得た。
(2)アクリルウレタン系樹脂の合成
窒素雰囲気下の反応容器内に、製造例1で得たウレタンプレポリマー100質量部(固形分比)、メチルメタクリレート(MMA)117質量部(固形分比)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)5.1質量部(固形分比)、1-チオグリセロール1.1質量部(固形分比)、及びトルエン50質量部を加え、撹拌しながら、105℃まで昇温した。
そして、反応容器内に、さらにラジカル開始剤(株式会社日本ファインケム製、製品名「ABN-E」)2.2質量部(固形分比)をトルエン210質量部で希釈した溶液を、105℃に維持したまま4時間かけて滴下した。
滴下終了後、105℃で6時間反応させ、質量平均分子量10.5万のアクリルウレタン系樹脂の溶液を得た。
製造例2(個片化シートの作製)
以下の個片化シートの作製の際に、各層の形成で使用した粘着性樹脂、添加剤、熱膨張性粒子、基材、及び剥離材の詳細は以下のとおりである。
<粘着性樹脂>
・アクリル系共重合体(i):2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=80.0/20.0(質量比)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有する、Mw60万のアクリル系共重合体。
<添加剤>
・イソシアネート架橋剤(i):東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」、固形分濃度:75質量%。
<熱膨張性粒子>
・熱膨張性粒子(i):株式会社クレハ製、製品名「S2640」、膨張開始温度(t)=208℃、平均粒子径(D50)=24μm、90%粒子径(D90)=49μm。
<剥離材>
・重剥離フィルム:リンテック株式会社製、製品名「SP-PET382150」、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、シリコーン系剥離剤から形成した剥離剤層を設けたもの、厚さ:38μm。
・軽剥離フィルム:リンテック株式会社製、製品名「SP-PET381031」、PETフィルムの片面に、シリコーン系剥離剤から形成した剥離剤層を設けたもの、厚さ:38μm。
(1)粘着剤層(X1)の形成
粘着性樹脂である、上記アクリル系共重合体(i)の固形分100質量部に、上記イソシアネート系架橋剤(i)5.0質量部(固形分比)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)25質量%の粘着剤組成物を調製した。
そして、上記重剥離フィルムの剥離剤層の表面に、当該粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で60秒間乾燥して、厚さ5μmの非膨張性粘着剤層である粘着剤層(X1)を形成した。
なお、23℃における、粘着剤層(X1)の貯蔵せん断弾性率G’(23)は、2.5×10Paであった。
(2)基材(Y)の作製
製造例1で得たアクリルウレタン系樹脂の固形分100質量部に、上記イソシアネート系架橋剤(i)6.3質量部(固形分比)、触媒として、ジオクチルスズビス(2-エチルヘキサノエート)1.4質量部(固形分比)、及び上記熱膨張性粒子(i)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)30質量%の樹脂組成物を調製した。
なお、得られた樹脂組成物中の有効成分の全量(100質量%)に対する、熱膨張性粒子(i)の含有量は20質量%であった。
そして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャインA4100」、プローブタック値:0mN/5mmφ)の表面上に、当該樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で120秒間乾燥して、厚さ50μmの膨張性基材層(Y1)を形成した。
ここで、上記PETフィルムは、非膨張性基材層(Y2)に相当する。したがって、作製した基材(Y)は、非膨張性基材層(Y2)に膨張性基材層(Y1)を直接積層した構成を有する。
なお、膨張性基材層(Y1)の物性値を測定するサンプルとして、上記軽剥離フィルムの剥離剤層の表面に、当該樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で120秒間乾燥して、厚さ50μmの膨張性基材層(Y1)を同様に形成した。
そして、上述の測定方法に基づき、膨張性基材層(Y1)の各温度における貯蔵弾性率及びプローブタック値を測定した。当該測定結果は、以下のとおりであった。
・23℃における貯蔵弾性率E’(23)=2.0×10Pa
・208℃における貯蔵弾性率E’(208)=5.0×10Pa
・プローブタック値=0mN/5mmφ
(3)各層の積層
上記(2)で作製した基材(Y)の熱膨張性基材層(Y1)と、上記(1)で形成した粘着剤層(X1)とを貼り合せた。
そして、重剥離フィルム/粘着剤層(X1)/膨張性基材層(Y1)/非膨張性基材層(Y2)をこの順で積層してなる、個片化シートを作製した。
実施例
<工程(1)>
製造例2で作製した個片化シートを230mm×230mmの正方形の大きさに裁断した。
そして、重剥離フィルムを剥離し、表出した粘着剤層(X1)の粘着表面を、被着体に貼付した。被着体WFは、図6に示すような、分割起点となる第1改質部MTYと第2改質部MTXとをレーザ光で予め内部に形成したシリコンウエハ(8インチ)とした。
<工程(2)>
熱膨張性粒子(i)の膨張開始温度(208℃)以上となる220℃の温度で、個片化シートに第1のエネルギーを付与した。第1のエネルギーは、図5(A)に示す方法と同様の方法で付与した。具体的には、図6(A)に示すように、エネルギーを付与した位置に、当該エネルギーの付与領域がY軸方向に延びるライン状付与領域LGを、エネルギー照射手段31で形成するように第1のエネルギーを照射した。エネルギー照射手段31は、熱風照射装置とした。
そして、図6(A)に示すように、熱風を非膨張性基材層(Y2)側から照射し、当該熱風をASX1からASX2に向けて順次照射した。
その結果、熱風が照射されたエネルギー付与シート部では、熱膨張性粒子SGが膨張して無数の凸部CVが形成され、シリコンウエハWFが熱風照射方向に順次部分的に持ち上げられて、シリコンウエハWFにせん断方向の力が付与され、第1改質部MTYが切っ掛けとなって亀裂CKYが生じ、シリコンウエハWFが個片化してY軸方向に延びる複数の短冊状WFSとなった。
<工程(3)>
熱膨張性粒子(i)の膨張開始温度(208℃)以上となる240℃の温度で、個片化シートに第2のエネルギーを付与した。第2のエネルギーは、図5(B)に示す方法と同様の方法で付与した。具体的には、図6(B)に示すように、エネルギーを付与した位置に、当該エネルギーの付与領域がX軸方向に延びるライン状付与領域LGを、エネルギー照射手段31で形成するように第2のエネルギーを照射した。
そして、図6(B)に示すように、熱風を非膨張性基材層(Y2)側から照射し、当該熱風をASY1からASY2に向けて順次照射した
その結果、熱風が照射されたエネルギー付与シート部では、熱膨張性粒子SGが工程(2)におけるエネルギー照射時よりも更に膨張して無数の凸部CVが拡大し、短冊状のシリコンウエハWFが熱風照射方向に順次部分的に持ち上げられて、シリコンウエハWFにせん断方向の力が付与され、第2改質部MTXが切っ掛けとなって亀裂CKXが生じ、先に形成されていた亀裂CKYと当該亀裂CKXとにより、シリコンウエハWFを個片化してチップCPとすることができた。
1、1a、1b、1c、1d、1e 個片化シート
WF 被着体
SG 膨張性粒子

Claims (1)

  1. 被着体に貼付し、当該被着体に形成された分割起点を切っ掛けにして当該被着体を個片化する個片化シートであって、
    基材(Y)及び粘着剤層(X1)を有し、
    基材(Y)及び粘着剤層(X1)の少なくとも一方に、所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性粒子を含み、
    基材(Y)が前記膨張性粒子を含む膨張性基材層(Y1)を有する個片化シート。
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