この発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
実施の形態1.
図1から図11を参照しながら、この発明の実施の形態1について説明する。図1はエレベーター装置の全体構成を示す図である。図2はエレベーター装置のブレーキの構成を示す図である。図3及び図4はエレベーター装置の第1ブレーキ制御部が備える第1演算処理部が行う処理の一例を示すフロー図である。図5及び図6はエレベーター装置の第1ブレーキ制御部が備える第2演算処理部が行う処理の一例を示すフロー図である。図7及び図8はエレベーター装置の第2ブレーキ制御部が備える第3演算処理部が行う処理の一例を示すフロー図である。図9及び図10はエレベーター装置の第2ブレーキ制御部が備える第4演算処理部が行う処理の一例を示すフロー図である。そして、図11はエレベーター装置のブレーキ制動トルクの設定方法を説明するためのモデル図である。
この実施の形態に係るエレベーター装置は、図1に示すように、乗りかご1及び釣合い重り2を備えている。乗りかご1及び釣合い重り2は、エレベーター装置の図示しない昇降路内に配置されている。乗りかご1は、図示しないガイドレールに案内されて昇降路内を昇降する。乗りかご1の上端には主索3の一端が連結されている。主索3の他端は釣合い重り2の上端に連結されている。釣合い重り2は昇降路内に昇降自在に設置されている。
昇降路の頂部には、巻上機11が設置されている。巻上機11は、巻上機モータ15を備えている。巻上機モータ15の回転軸には、綱車12とブレーキドラム13とが固定されている。主索3の中間部は、綱車12に巻き掛けられている。このようにして、乗りかご1及び釣合い重り2は、主索3によって昇降路内で互いに相反する方向に昇降するつるべ状に吊るされている。すなわち、この実施の形態のエレベーター装置は、いわゆるトラクション方式のエレベーターである。
巻上機11は、綱車12を回転駆動する。巻上機11が綱車12を回転させると、主索3と綱車12との間の摩擦力により、主索3が移動する。主索3が移動すると、主索3に吊られている乗りかご1及び釣合い重り2が昇降路内を互いに相反する方向へと昇降する。
巻上機11には、第1ブレーキ14A及び第2ブレーキ14Bが備えられている。第1ブレーキ14A及び第2ブレーキ14Bは、ブレーキドラム13の回転を制動することで、巻上機モータ15の回転及び綱車12の回転を制動する。ブレーキドラム13に対し、第1ブレーキ14A、第2ブレーキ14Bによって制動力をかけることによって、乗りかご1を制動あるいは停止保持することが可能となっている。
次に、図2を参照しながら、第1ブレーキ14A及び第2ブレーキ14Bの構成例について説明する。第1ブレーキ14A及び第2ブレーキ14Bの構成は、基本的に共通している。そこで、ここでは第1ブレーキ14Aと第2ブレーキ14Bとを区別せずに説明する。第1ブレーキ14A及び第2ブレーキ14Bのそれぞれは、同図に示すように、ブレーキシュー141、アーマチュア142、押しばね143及び電磁コイル144を備えている。
ブレーキシュー141は、ブレーキドラム13の例えば外周面に対向して配置される。アーマチュア142は、ブレーキシュー141に固定されている。ブレーキシュー141とアーマチュア142は、一体となってブレーキドラム13に近づく方向とブレーキドラム13から離れる方向とに移動可能である。押しばね143は、ブレーキシュー141をブレーキドラム13に押し付けるように荷重をかける。
電磁コイル144は、電流が流れるとアーマチュア142をブレーキドラム13から離れる方向に吸引する。電磁コイル144に電流が流れていないとき、押しばね143によりブレーキシュー141がブレーキドラム13に押し付けられて制動力が生じる。この電磁コイル144に流れる電流が0の時の制動力が、ブレーキの最大制動力になる。電磁コイル144がアーマチュア142を吸引する力は、電磁コイル144に流れる電流が大きくなるほど強くなる。そして、電磁コイル144によりアーマチュア142を吸引する力が押しばね143によりブレーキシュー141を押し付ける力を上回ると、ブレーキシュー141がブレーキドラム13から引き離されて、制動力が発生しない状態、すなわちブレーキ解放状態となる。
再び図1を参照しながら説明を続ける。この実施の形態のエレベーター装置は、運転制御部21、安全監視部22、第1ブレーキ制御部31A及び第1ブレーキ駆動回路23A、並びに、第2ブレーキ制御部31B及び第2ブレーキ駆動回路23Bを備えている。
乗りかご1には、図示しないかご操作盤が設けられている。また、各階の乗場には、図示しない乗場操作盤が設置されている。エレベーターの利用者がこれらの操作盤を操作することにより、乗りかご1に対する呼びが登録される。運転制御部21は、この呼び登録に応じて乗りかご1の走行を制御して運転サービスを実行する。運転制御部21は、巻上機11の巻上機モータ15の動作を制御するとともに、第1ブレーキ14A及び第2ブレーキ14Bに対して制動指令を出力することで、乗りかご1の走行を制御する。
安全監視部22は、エレベーターの関連法規、関連規格等によって対応が要求される事象の発生を監視する。安全監視部22による監視対象となる事象は、例えば、乗りかご1の、オーバースピード(過速度走行)、戸開走行、昇降路終端部でのオーバーラン等である。安全監視部22は、これらの事象の発生を検出すると、乗りかご1を非常制動させる。非常制動時には、安全監視部22は、第1ブレーキ14A及び第2ブレーキ14Bに対して、制動指令を出力する。また、非常制動時には、安全監視部22は、制動指令の出力と同時に、運転制御部21に巻上機11の停止指令を出力する。
また、安全監視部22は、保守員等のエレベーター装置に関連する作業を行なう作業者による安全確保のための操作についても監視する。作業者による安全確保のための操作とは、具体的に例えば、手動運転用の操作装置にある緊急停止用スイッチの押下げ、乗りかご1、ピット、機械室等に設けられた緊急停止用スイッチの押下げ等が挙げられる。
以上のように構成された、この実施の形態の運転制御部21及び安全監視部22は、第1ブレーキ14A及び第2ブレーキ14Bに対する制動指令を出力する制動指令部である。制動指令部である運転制御部21及び安全監視部22から出力された制動指令は、第1ブレーキ制御部31A及び第2ブレーキ制御部31Bに入力される。
第1ブレーキ制御部31Aは、第1ブレーキ駆動回路23Aを介して第1ブレーキ14Aの動作を制御する。第1ブレーキ駆動回路23Aは、第1ブレーキ14Aの電磁コイル144に電流を供給して、第1ブレーキ14Aの動作を駆動する回路である。運転制御部21からは、第1ブレーキ14Aの動作を駆動するためのブレーキ電流が出力される。運転制御部21から出力されたブレーキ電流は、第1ブレーキ駆動回路23Aに入力される。第1ブレーキ駆動回路23Aは、例えば、リレー回路、半導体スイッチ等を有する。
第1ブレーキ制御部31Aは、第1ブレーキ駆動回路23Aによる第1ブレーキへの電流供給動作を制御する。すなわち、第1ブレーキ駆動回路23Aは、第1ブレーキ制御部31Aの制御の下で、運転制御部21から出力されたブレーキ電流を、遮断して第1ブレーキ14Aを制動動作させたり、そのまま第1ブレーキ14Aに出力して第1ブレーキ14Aをブレーキ解放状態にしたりできる。
さらに、第1ブレーキ制御部31Aは、第1ブレーキ14Aの制動能力を最大制動能力未満に抑える第1制動能力抑制制御を実施可能である。第1制動能力抑制制御においては、第1ブレーキ制御部31Aは、例えば、第1ブレーキ駆動回路23Aから第1ブレーキ14Aに供給される電流を、運転制御部21から出力されるブレーキ電流より低減させることで、第1ブレーキ14Aが保有する最大制動トルクよりも弱い制動トルクを発生させる。あるいは、第1制動能力抑制制御において、第1ブレーキ制御部31Aは、第1ブレーキ駆動回路23Aによる運転制御部21から出力されるブレーキ電流のONとOFFを交互に繰り返すことにより、第1ブレーキ14Aが単位時間あたりに発生する制動トルクを第1ブレーキ14Aが保有する最大制動トルクよりも弱める。
第2ブレーキ制御部31Bは、第2ブレーキ駆動回路23Bを介して第2ブレーキ14Bの動作を制御する。第2ブレーキ駆動回路23Bは、第2ブレーキ14Bの電磁コイル144に電流を供給して、第2ブレーキ14Bの動作を駆動する回路である。運転制御部21からは、第2ブレーキ14Bの動作を駆動するためのブレーキ電流が出力される。運転制御部21から出力されたブレーキ電流は、第2ブレーキ駆動回路23Bに入力される。第2ブレーキ駆動回路23Bは、例えば、リレー回路、半導体スイッチ等を有する。
第2ブレーキ制御部31Bは、第2ブレーキ駆動回路23Bによる第2ブレーキへの電流供給動作を制御する。すなわち、第2ブレーキ駆動回路23Bは、第2ブレーキ制御部31Bの制御の下で、運転制御部21から出力されたブレーキ電流を、遮断して第2ブレーキ14Bを制動動作させたり、そのまま第2ブレーキ14Bに出力して第2ブレーキ14Bをブレーキ解放状態にしたりできる。
さらに、第2ブレーキ制御部31Bは、第2ブレーキ14Bの制動能力を最大制動能力未満に抑える第2制動能力抑制制御を実施可能である。第2制動能力抑制制御においては、第2ブレーキ制御部31Bは、例えば、第2ブレーキ駆動回路23Bから第2ブレーキ14Bに供給される電流を、運転制御部21から出力されるブレーキ電流より低減させることで、第2ブレーキ14Bが保有する最大制動トルクよりも弱い制動トルクを発生させる。あるいは、第2制動能力抑制制御において、第2ブレーキ制御部31Bは、第2ブレーキ駆動回路23Bによる運転制御部21から出力されるブレーキ電流のONとOFFを交互に繰り返すことにより、第2ブレーキ14Bが単位時間あたりに発生する制動トルクを第2ブレーキ14Bが保有する最大制動トルクよりも弱める。
第1ブレーキ制御部31Aは、第1演算処理部32A及び第2演算処理部32Bを備えている。第1演算処理部32A及び第2演算処理部32Bのそれぞれには、運転制御部21及び安全監視部22から出力されたブレーキの制動指令が入力される。
また、第1演算処理部32Aには、巻上機モータ15の回転軸の回転量、回転速度を検出する第1エンコーダ16Aの出力信号が入力される。さらに、第1演算処理部32Aには、乗りかご1の速度を検出する第1速度センサ4Aの出力信号も入力される。第1速度センサ4Aは、乗りかご1に設けられている。第1演算処理部32Aは、制動指令、第1エンコーダ16Aの出力信号及び第1速度センサ4Aの出力信号等を演算し、演算結果として第1ブレーキ駆動回路23Aへの電流制御指令を生成する。
また、同様に、第2演算処理部32Bには、巻上機モータ15の回転軸の回転量、回転速度を検出する第2エンコーダ16Bの出力信号が入力される。さらに、第2演算処理部32Bには、乗りかご1の速度を検出する第2速度センサ4Bの出力信号も入力される。第2速度センサ4Bは、乗りかご1に設けられている。第2演算処理部32Bは、制動指令、第2エンコーダ16Bの出力信号及び第2速度センサ4Bの出力信号等を演算し、演算結果として第2ブレーキ駆動回路23Bへの電流制御指令を生成する。
第1ブレーキ制御部31Aは、第1ブレーキ制御部31Aの異常を検出する第1自己診断を実施可能である。第1自己診断では、第1演算処理部32A及び第2演算処理部32Bは、第1演算処理部32Aの演算結果と第2演算処理部32Bの演算結果とを相互に比較する。そして、これらの演算結果が合致すれば、第1ブレーキ制御部31Aは正常であると診断される。第1ブレーキ制御部31Aは正常であると診断された場合、第1演算処理部32A又は第2演算処理部32Bの演算結果として生成された電流制御指令が第1ブレーキ駆動回路23Aに出力される。一方、第1演算処理部32Aの演算結果と第2演算処理部32Bの演算結果とが合致しない場合、第1ブレーキ制御部31Aは異常であると診断される。
第2ブレーキ制御部31Bは、第3演算処理部32C及び第4演算処理部32Dを備えている。第3演算処理部32C及び第4演算処理部32Dのそれぞれには、運転制御部21及び安全監視部22から出力された制動指令が入力される。
また、第3演算処理部32Cには、巻上機モータ15の回転軸の回転量、回転速度を検出する第3エンコーダ16Cの出力信号が入力される。さらに、第3演算処理部32Cには、乗りかご1の速度を検出する第3速度センサ4Cの出力信号も入力される。第3速度センサ4Cは、乗りかご1に設けられている。第3演算処理部32Cは、制動指令、第3エンコーダ16Cの出力信号及び第3速度センサ4Cの出力信号等を演算し、演算結果として第2ブレーキ駆動回路23Bへの電流制御指令を生成する。
また、同様に、第4演算処理部32Dには、巻上機モータ15の回転軸の回転量、回転速度を検出する第4エンコーダ16Dの出力信号が入力される。さらに、第4演算処理部32Dには、乗りかご1の速度を検出する第4速度センサ4Dの出力信号も入力される。第4速度センサ4Dは、乗りかご1に設けられている。第4演算処理部32Dは、制動指令、第4エンコーダ16Dの出力信号及び第4速度センサ4Dの出力信号等を演算し、演算結果として第2ブレーキ駆動回路23Bへの電流制御指令を生成する。
第2ブレーキ制御部31Bは、第2ブレーキ制御部31Bの異常を検出する第2自己診断を実施可能である。第2自己診断では、第3演算処理部32C及び第4演算処理部32Dは、第3演算処理部32Cの演算結果と第4演算処理部32Dの演算結果とを相互に比較する。そして、これらの演算結果が合致すれば、第2ブレーキ制御部31Bは正常であると診断される。第2ブレーキ制御部31Bは正常であると診断された場合、第3演算処理部32C又は第4演算処理部32Dの演算結果として生成された電流制御指令が第2ブレーキ駆動回路23Bに出力される。一方、第3演算処理部32Cの演算結果と第4演算処理部32Dの演算結果とが合致しない場合、第2ブレーキ制御部31Bは異常であると診断される。
以上のように、第1ブレーキ制御部31Aと第2ブレーキ制御部31Bは互いに依存することなく独立して自己診断を実施している。「独立して」自己診断を実施するとは、それぞれのブレーキ制御部が、他のブレーキ制御部と信号又は情報を授受せずに自己診断を行うことである。すなわち、第1ブレーキ制御部31Aは、前述の第1自己診断を第2ブレーキ制御部31Bとは独立して実施可能である。また、第2ブレーキ制御部31Bは、前述の第2自己診断を第1ブレーキ制御部31Aとは独立して実施可能である。
また、それぞれのブレーキ制御部は、他のブレーキ制御部と信号又は情報を授受せず、互いに独立してブレーキ制御を行う。すなわち、第1ブレーキ制御部31Aは、前述の第1自己診断により第1ブレーキ制御部31Aの異常が検出されない場合に前述の第1制動能力抑制制御を有効化する。そして、第1ブレーキ制御部31Aは、前述の第1自己診断により第1ブレーキ制御部31Aの異常が検出された場合に前述の第1制動能力抑制制御を無効化する。また、第2ブレーキ制御部31Bは、前述の第2自己診断により第2ブレーキ制御部31Bの異常が検出されない場合に前述の第2制動能力抑制制御を有効化する。そして、第2ブレーキ制御部31Bは、前述の第2自己診断により第2ブレーキ制御部31Bの異常が検出された場合に前述の第2制動能力抑制制御を無効化する。
以上のように構成されたエレベーター装置においては、第1ブレーキ14A、第1ブレーキ制御部31A、第1ブレーキ駆動回路23A、第1速度センサ4A及び第1エンコーダ16Aを有する第1の系統と、第2ブレーキ14B、第2ブレーキ制御部31B、第2ブレーキ駆動回路23B、第2速度センサ4B及び第2エンコーダ16Bを有する第2の系統の、並列に配置された2つの独立したブレーキ系統を備えている。
そして、それぞれのブレーキ系統においては独立して自己診断が可能であるとともに、自己診断の結果、当該系統が正常であれば制動能力抑制制御を有効にし、当該系統に異常があれば制動能力抑制制御を無効にする。すなわち、それぞれのブレーキ系統は、他のブレーキ系統の状態に依らずに、自己診断と自己診断結果に基づく制動能力抑制制御の有効化及び無効化を行う。すなわち、一方のブレーキ制御部で発生した異常が他方のブレーキ制御部に影響することがない。このため、一方のブレーキ制御部で異常が発生しても、異常が発生していないブレーキ制御部の制動能力抑制制御を有効化したまま継続でき、主索3と綱車12との間での滑りの発生を抑制することが可能である。そして、このような滑りの発生を抑制することで、主索3と綱車12とが擦りあうことによる主索3の損傷、制動トルクの伝達が弱まることによる制動距離の延長等を防止し、乗客の不快感を軽減することが可能である。
また、他のブレーキ制御部の情報を得ずに、または他のブレーキ制御部と接続することなく処理回路又はプログラムを構成できるので、単純な処理及び構成となり、信頼性を向上できる。さらに、このような単純な構成によって、1つのブレーキ制御部が異常となっても、残る健全なブレーキ制御部によって、信頼性高く、システム全体として制動能力抑制制御を継続して運用できる。
なお、ブレーキ系統の数は2つに限られず、例えば、第3、第4のブレーキ系統をエレベーター装置が備えていてもよい。この場合、複数のブレーキ系統のそれぞれは、互いに独立して診断及びブレーキ制御を行う。
この実施の形態のエレベーター装置においては、前述の第1自己診断で異常が検出されない限り、第1ブレーキ制御部31Aは、前述した制動指令部である運転制御部21及び安全監視部22の少なくともいずれかから制動指令が出力されている場合に前述の第1制動能力抑制制御を有効化する。また同様に、前述の第2自己診断で異常が検出されない限り、第2ブレーキ制御部31Bは、前述した制動指令部である運転制御部21及び安全監視部22の少なくともいずれかから制動指令が出力されている場合に前述の第2制動能力抑制制御を有効化する。
この際、それぞれのブレーキ制御部は、綱車12と主索3との間における滑りの発生が検出されていないときは制動能力抑制制御を無効化し、綱車12と主索3との間における滑りの発生が検出されているだけ制動能力抑制制御を有効化してもよい。この場合、第1ブレーキ制御部31Aは、第1速度センサ4A及び第2速度センサ4Bの検出信号に基づいて乗りかご1の速度を算出する。乗りかご1の速度は、すなわち主索3の移動速度である。また、第1ブレーキ制御部31Aは、第1エンコーダ16A及び第2エンコーダ16Bの検出信号に基づいて綱車12の回転速度を算出する。綱車12の回転速度は、綱車12の半径を用いて主索3の移動速度に変換できる。以下においては、綱車12の回転速度を主索3の移動速度に変換したものも単に「綱車12の回転速度」という。
第1ブレーキ制御部31Aは、第1速度センサ4A及び第2速度センサ4Bの検出信号から算出した主索3の移動速度と、第1エンコーダ16A及び第2エンコーダ16Bの検出信号から算出した綱車12の回転速度との差が、予め設定された基準速度差以下であるか否かを確認する。そして、主索3の移動速度と綱車12の回転速度との差が基準速度差以下であれば、主索3と綱車12との間に滑りは発生していないと判定する。一方、主索3の移動速度と綱車12の回転速度との差が基準速度差を超えている場合、第1ブレーキ制御部31Aは、主索3と綱車12との間に滑りが発生していると判定する。
また同様に、第2ブレーキ制御部31Bは、第3速度センサ4C及び第4速度センサ4Dの検出信号から算出した主索3の移動速度と、第3エンコーダ16C及び第4エンコーダ16Dの検出信号から算出した綱車12の回転速度との差が、予め設定された基準速度差以下であるか否かを確認する。そして、主索3の移動速度と綱車12の回転速度との差が基準速度差以下であれば、主索3と綱車12との間に滑りは発生していないと判定する。一方、主索3の移動速度と綱車12の回転速度との差が基準速度差を超えている場合、第2ブレーキ制御部31Bは、主索3と綱車12との間に滑りが発生していると判定する。
第1速度センサ4A、第2速度センサ4B、第1エンコーダ16A、第2エンコーダ16B及び第1ブレーキ制御部31Aと、第3速度センサ4C、第4速度センサ4D、第3エンコーダ16C、第4エンコーダ16D及び第2ブレーキ制御部31Bのそれぞれは、綱車12と主索3との間に発生する滑りを検出する滑り検出手段を構成している。この構成例では、滑り検出手段は、綱車12と主索3の速度差に基づいて滑りを検出する。そして、第1ブレーキ制御部31Aは、前述の制動指令が出力されている場合に、前述の滑り検出手段が滑りを検出していないときは、前述の第1制動能力抑制制御を無効化する。また同様に、第2ブレーキ制御部31Bは、前述の制動指令が出力されている場合に、前述の滑り検出手段が滑りを検出していないときは、前述の第2制動能力抑制制御を無効化する。このようにすることで、滑り検出手段が滑りを検出している間は主索3の滑りによる制動性能の低下を抑制でき、主索3の滑りが治まったあとには、ブレーキの持つ最大の制動トルクで制動させることが可能である。
なお、前述の第1自己診断により第1ブレーキ制御部31Aの異常が検出された場合、運転制御部21及び安全監視部22から出力された制動指令が、第1ブレーキ制御部31Aを経由せず第1ブレーキ駆動回路23Aに直接入力されるようにしてもよい。この場合、第1ブレーキ14Aは、前述の第1自己診断により第1ブレーキ制御部31Aの異常が検出された場合、第1ブレーキ制御部31Aに依らずに前述の制動指令に応じて動作する。また同様に、前述の第2自己診断により第2ブレーキ制御部31Bの異常が検出された場合、運転制御部21及び安全監視部22から出力された制動指令が、第2ブレーキ制御部31Bを経由せず第2ブレーキ駆動回路23Bに直接入力されるようにしてもよい。この場合、第2ブレーキ14Bは、前述の第2自己診断により第2ブレーキ制御部31Bの異常が検出された場合、第2ブレーキ制御部31Bに依らずに前述の制動指令に応じて動作する。
次に、以上のように構成されたエレベーター装置における、第1演算処理部32A、第2演算処理部32B、第3演算処理部32C及び第4演算処理部32Dのそれぞれで行う処理の一例について図3から図10を参照しながら説明する。
最初に、第1演算処理部32Aで行う処理の一例について図3及び図4を参照しながら説明する。まず、ステップS01Aにおいて、第1演算処理部32Aは、第1速度センサ4Aから入力された検出信号に基づいて乗りかご1の速度を算出する。続くステップS02Aにおいて、第1演算処理部32Aは、第2速度センサ4Bから入力された検出信号に基づいて乗りかご1の速度を算出する。ステップS02Aの後、処理はステップS03Aへと進む。
ステップS03Aにおいては、第1演算処理部32Aは、ステップS01Aで算出した乗りかご1の速度と、ステップS02Aで算出した乗りかご1の速度とを比較する。これらの速度の差が予め設定された基準値を超える場合、処理はステップS21Aへと進む。ステップS21Aにおいては、第1速度センサ4A及び第2速度センサ4Bを用いた乗りかご1の速度検出に異常があると判定し、第1演算処理部32Aは運転制御部21に発報する。ステップS21Aの後、処理はステップS04Aへと進む。一方、ステップS03Aで、ステップS01Aで算出した乗りかご1の速度とステップS02Aで算出した乗りかご1の速度との差が基準値以下の場合、第1速度センサ4A及び第2速度センサ4Bを用いた乗りかご1の速度検出に異常がなく正常であると判定し、処理はステップS04Aへと進む。
ステップS04Aでは、第1演算処理部32Aは、第1エンコーダ16Aから入力された検出信号に基づいて綱車12の回転速度を算出する。続くステップS05Aにおいて、第1演算処理部32Aは、第2エンコーダ16Bから入力された検出信号に基づいて綱車12の回転速度を算出する。ステップS05Aの後、処理はステップS06Aへと進む。
ステップS06Aにおいては、第1演算処理部32Aは、ステップS04Aで算出した綱車12の回転速度と、ステップS05Aで算出した綱車12の回転速度とを比較する。これらの回転速度の差が予め設定された基準値を超える場合、処理はステップS22Aへと進む。ステップS22Aにおいては、第1エンコーダ16A及び第2エンコーダ16Bを用いた綱車12の回転速度検出に異常があると判定し、第1演算処理部32Aは運転制御部21に発報する。ステップS22Aの後、処理はステップS07Aへと進む。一方、ステップS06Aで、ステップS04Aで算出した綱車12の回転速度とステップS05Aで算出した綱車12の回転速度との差が基準値以下の場合、第1エンコーダ16A及び第2エンコーダ16Bを用いた綱車12の回転速度検出に異常がなく正常であると判定し、処理はステップS07Aへと進む。
ステップS07Aにおいては、第1演算処理部32Aは、ステップS21A及びステップS22Aの一方又は両方の異常検知処理が実行されたか否かを確認する。ステップS21A及びステップS22Aの一方又は両方の異常検知処理が実行された場合、処理はステップS24Aへと進む。
ステップS24Aにおいては、第1ブレーキ制御部31Aによる第1ブレーキ14Aの制御自体が無効化される。この無効化は、例えば、第1ブレーキ制御部31Aに並列に設けられた短絡回路により運転制御部21及び安全監視部22から出力された制動指令をバイパスすることにより行なわれる。なお、この短絡回路は、通常時は切断されている。この短絡回路を接続することで、運転制御部21及び安全監視部22からの制動指令が、第1ブレーキ制御部31Aによる演算処理の影響を受けることなく、第1ブレーキ駆動回路23Aに直接入力されることになる。ステップS24Aの処理が完了すると、一連の処理は終了となる。
以上に対し、ステップS21A及びステップS22Aのいずれの異常検知処理も実行されていない場合、処理はステップS07AからステップS08Aへと進む。ステップS08Aにおいては、第1演算処理部32Aは、安全監視部22から出力された制動指令が入力されているか否かを確認する。そして、安全監視部22から出力された制動指令が入力されていない場合、処理はステップS09Aへと進む。ステップS09Aにおいては、第1演算処理部32Aは、運転制御部21から出力された制動指令が入力されているか否かを確認する。
ステップS08Aで安全監視部22から出力された制動指令が入力されている場合、処理はステップS10Aへと進む。ステップS09Aで運転制御部21から出力された制動指令が入力されている場合も、処理はステップS10Aへと進む。ステップS10Aにおいては、第1速度センサ4Aの検出信号から算出した乗りかご1の速度すなわち主索3の移動速度と、第1エンコーダ16Aの検出信号から算出した綱車12の回転速度との差が、前述の基準速度差以下であるか否かを確認する。そして、主索3の移動速度と綱車12の回転速度との差が基準速度差以下の場合、処理はステップS11Aへと進む。
ステップS11Aにおいては、主索3と綱車12との間に滑りは発生していないと判定される。そこで、第1演算処理部32Aは、第1ブレーキ駆動回路23Aに対してブレーキ電流を遮断して第1ブレーキ14Aに通常の制動を行わせる内容の制御指令を出力する。
一方、ステップS10Aで主索3の移動速度と綱車12の回転速度との差が基準速度差を超える場合、処理はステップS12Aへと進む。ステップS12Aにおいては、主索3と綱車12との間に滑りが発生していると判定される。そこで、第1演算処理部32Aは、前述の第1制動能力抑制制御を行う制御指令を生成する。すなわち、第1演算処理部32Aは、第1ブレーキ駆動回路23Aに対してブレーキ電流を低減して第1ブレーキ14Aに供給させる内容の制御指令を出力する。
また一方、ステップS09Aで運転制御部21から出力された制動指令が入力されていない場合、処理はステップS13Aへと進む。ステップS13Aにおいては、運転制御部21及び安全監視部22のいずれからも制動指令が入力されていない。そこで、第1演算処理部32Aは、第1ブレーキ駆動回路23Aに対してブレーキ電流の遮断を停止させて第1ブレーキ14Aを解放させる内容の制御指令を出力する。
ステップS11A、ステップS12A及びステップS13Aの後、処理はステップS14へと進む。ステップS14Aにおいては、第1演算処理部32Aは、第1演算処理部32Aにおける演算処理結果を第2演算処理部32Bの演算処理結果と比較する。第1演算処理部32Aの演算処理結果と第2演算処理部32Bの演算処理結果とが合致した場合、演算処理が正常に実施されたものと判定される。したがって、この場合、処理はステップS01Aに戻って同様の処理を繰り返すことになる。
一方、ステップS14Aで第1演算処理部32Aの演算処理結果と第2演算処理部32Bの演算処理結果とが合致しない場合、処理はステップS23Aへと進む。ステップS23Aでは、演算処理に異常があったと判定される。したがって、この場合、第1演算処理部32Aはその旨を運転制御部21に発報する。そして、処理はステップS24Aへと進み、第1ブレーキ制御部31Aによる第1ブレーキ14Aの制御が無効化された後、一連の処理は終了となる。
次に、第2演算処理部32Bで行う処理の一例について図5及び図6を参照しながら説明する。まず、ステップS01Bにおいて、第2演算処理部32Bは、第1速度センサ4Aから入力された検出信号に基づいて乗りかご1の速度を算出する。続くステップS02Bにおいて、第2演算処理部32Bは、第2速度センサ4Bから入力された検出信号に基づいて乗りかご1の速度を算出する。ステップS02Bの後、処理はステップS03Bへと進む。
ステップS03Bにおいては、第2演算処理部32Bは、ステップS01Bで算出した乗りかご1の速度と、ステップS02Bで算出した乗りかご1の速度とを比較する。これらの速度の差が予め設定された基準値を超える場合、処理はステップS21Bへと進む。ステップS21Bにおいては、第1速度センサ4A及び第2速度センサ4Bを用いた乗りかご1の速度検出に異常があると判定し、第2演算処理部32Bは運転制御部21に発報する。ステップS21Bの後、処理はステップS04Bへと進む。一方、ステップS03Bで、ステップS01Bで算出した乗りかご1の速度とステップS02Bで算出した乗りかご1の速度との差が基準値以下の場合、第1速度センサ4A及び第2速度センサ4Bを用いた乗りかご1の速度検出に異常がなく正常であると判定し、処理はステップS04Bへと進む。
ステップS04Bでは、第2演算処理部32Bは、第1エンコーダ16Aから入力された検出信号に基づいて綱車12の回転速度を算出する。続くステップS05Bにおいて、第2演算処理部32Bは、第2エンコーダ16Bから入力された検出信号に基づいて綱車12の回転速度を算出する。ステップS05Bの後、処理はステップS06Bへと進む。
ステップS06Bにおいては、第2演算処理部32Bは、ステップS04Bで算出した綱車12の回転速度と、ステップS05Bで算出した綱車12の回転速度とを比較する。これらの回転速度の差が予め設定された基準値を超える場合、処理はステップS22Bへと進む。ステップS22Bにおいては、第1エンコーダ16A及び第2エンコーダ16Bを用いた綱車12の回転速度検出に異常があると判定し、第2演算処理部32Bは運転制御部21に発報する。ステップS22Bの後、処理はステップS07Bへと進む。一方、ステップS06Bで、ステップS04Bで算出した綱車12の回転速度とステップS05Bで算出した綱車12の回転速度との差が基準値以下の場合、第1エンコーダ16A及び第2エンコーダ16Bを用いた綱車12の回転速度検出に異常がなく正常であると判定し、処理はステップS07Bへと進む。
ステップS07Bにおいては、第2演算処理部32Bは、ステップS21B及びステップS22Bの一方又は両方の異常検知処理が実行されたか否かを確認する。ステップS21B及びステップS22Bの一方又は両方の異常検知処理が実行された場合、処理はステップS24Bへと進む。
ステップS24Bにおいては、第1ブレーキ制御部31Aによる第1ブレーキ14Aの制御自体が無効化される。この無効化は、例えば、第1ブレーキ制御部31Aに並列に設けられた短絡回路により運転制御部21及び安全監視部22から出力された制動指令をバイパスすることにより行なわれる。この短絡回路は、通常時は切断されている。この短絡回路を接続することで、運転制御部21及び安全監視部22からの制動指令が、第1ブレーキ制御部31Aによる演算処理の影響を受けることなく、第1ブレーキ駆動回路23Aに直接入力されることになる。ステップS24Bの処理が完了すると、一連の処理は終了となる。
以上に対し、ステップS21B及びステップS22Bのいずれの異常検知処理も実行されていない場合、処理はステップS07BからステップS08Bへと進む。ステップS08Bにおいては、第2演算処理部32Bは、安全監視部22から出力された制動指令が入力されているか否かを確認する。そして、安全監視部22から出力された制動指令が入力されていない場合、処理はステップS09Bへと進む。ステップS09Bにおいては、第2演算処理部32Bは、運転制御部21から出力された制動指令が入力されているか否かを確認する。
ステップS08Bで安全監視部22から出力された制動指令が入力されている場合、処理はステップS10Bへと進む。ステップS09Bで運転制御部21から出力された制動指令が入力されている場合も、処理はステップS10Bへと進む。ステップS10Bにおいては、第1速度センサ4Aの検出信号から算出した乗りかご1の速度すなわち主索3の移動速度と、第1エンコーダ16Aの検出信号から算出した綱車12の回転速度との差が、前述の基準速度差以下であるか否かを確認する。
そして、主索3の移動速度と綱車12の回転速度との差が基準速度差以下の場合、第2演算処理部32Bは、主索3と綱車12との間に滑りは発生していないと判定する。一方、主索3の移動速度と綱車12の回転速度との差が基準速度差を超える場合、第2演算処理部32Bは、主索3と綱車12との間に滑りが発生していると判定する。いずれの場合も、滑り発生有無の判定の後に処理はステップS14Bへと進む。また、ステップS09Bで運転制御部21から出力された制動指令が入力されていない場合、ステップS10Bの滑り発生判定処理を行うことなくステップS14Bへと進む。
ステップS14Bにおいては、第2演算処理部32Bは、第2演算処理部32Bにおける演算処理結果を第1演算処理部32Aの演算処理結果と比較する。第2演算処理部32Bの演算処理結果と第1演算処理部32Aの演算処理結果とが合致した場合、演算処理が正常に実施されたものと判定される。したがって、この場合、処理はステップS01Bに戻って同様の処理を繰り返すことになる。
一方、ステップS14Bで第2演算処理部32Bの演算処理結果と第1演算処理部32Aの演算処理結果とが合致しない場合、処理はステップS23Bへと進む。ステップS23Bでは、演算処理に異常があったと判定される。したがって、この場合、第2演算処理部32Bはその旨を運転制御部21に発報する。そして、処理はステップS24Bへと進み、第1ブレーキ制御部31Aによる第1ブレーキ14Aの制御が無効化された後、一連の処理は終了となる。
続いて、第3演算処理部32Cで行う処理の一例について図7及び図8を参照しながら説明する。まず、ステップS01Cにおいて、第3演算処理部32Cは、第3速度センサ4Cから入力された検出信号に基づいて乗りかご1の速度を算出する。続くステップS02Cにおいて、第3演算処理部32Cは、第4速度センサ4Dから入力された検出信号に基づいて乗りかご1の速度を算出する。ステップS02Cの後、処理はステップS03Cへと進む。
ステップS03Cにおいては、第3演算処理部32Cは、ステップS01Cで算出した乗りかご1の速度と、ステップS02Cで算出した乗りかご1の速度とを比較する。これらの速度の差が予め設定された基準値を超える場合、処理はステップS21Cへと進む。ステップS21Cにおいては、第3速度センサ4C及び第4速度センサ4Dを用いた乗りかご1の速度検出に異常があると判定し、第3演算処理部32Cは運転制御部21に発報する。ステップS21Cの後、処理はステップS04Cへと進む。一方、ステップS03Cで、ステップS01Cで算出した乗りかご1の速度とステップS02Cで算出した乗りかご1の速度との差が基準値以下の場合、第3速度センサ4C及び第4速度センサ4Dを用いた乗りかご1の速度検出に異常がなく正常であると判定し、処理はステップS04Cへと進む。
ステップS04Cでは、第3演算処理部32Cは、第3エンコーダ16Cから入力された検出信号に基づいて綱車12の回転速度を算出する。続くステップS05Cにおいて、第3演算処理部32Cは、第4エンコーダ16Dから入力された検出信号に基づいて綱車12の回転速度を算出する。ステップS05Cの後、処理はステップS06Cへと進む。
ステップS06Cにおいては、第3演算処理部32Cは、ステップS04Cで算出した綱車12の回転速度と、ステップS05Cで算出した綱車12の回転速度とを比較する。これらの回転速度の差が予め設定された基準値を超える場合、処理はステップS22Cへと進む。ステップS22Cにおいては、第3エンコーダ16C及び第4エンコーダ16Dを用いた綱車12の回転速度検出に異常があると判定し、第3演算処理部32Cは運転制御部21に発報する。ステップS22Cの後、処理はステップS07Cへと進む。一方、ステップS06Cで、ステップS04Cで算出した綱車12の回転速度とステップS05Cで算出した綱車12の回転速度との差が基準値以下の場合、第3エンコーダ16C及び第4エンコーダ16Dを用いた綱車12の回転速度検出に異常がなく正常であると判定し、処理はステップS07Cへと進む。
ステップS07Cにおいては、第3演算処理部32Cは、ステップS21C及びステップS22Cの一方又は両方の異常検知処理が実行されたか否かを確認する。ステップS21C及びステップS22Cの一方又は両方の異常検知処理が実行された場合、処理はステップS24Cへと進む。
ステップS24Cにおいては、第2ブレーキ制御部31Bによる第2ブレーキ14Bの制御自体が無効化される。この無効化は、例えば、第2ブレーキ制御部31Bに並列に設けられた短絡回路により運転制御部21及び安全監視部22から出力された制動指令をバイパスすることにより行なわれる。この短絡回路は、通常時は切断されている。この短絡回路を接続することで、運転制御部21及び安全監視部22からの制動指令が、第2ブレーキ制御部31Bによる演算処理の影響を受けることなく、第2ブレーキ駆動回路23Bに直接入力されることになる。ステップS24Cの処理が完了すると、一連の処理は終了となる。
以上に対し、ステップS21C及びステップS22Cのいずれの異常検知処理も実行されていない場合、処理はステップS07CからステップS08Cへと進む。ステップS08Cにおいては、第3演算処理部32Cは、安全監視部22から出力された制動指令が入力されているか否かを確認する。そして、安全監視部22から出力された制動指令が入力されていない場合、処理はステップS09Cへと進む。ステップS09Cにおいては、第3演算処理部32Cは、運転制御部21から出力された制動指令が入力されているか否かを確認する。
ステップS08Cで安全監視部22から出力された制動指令が入力されている場合、処理はステップS10Cへと進む。ステップS09Cで運転制御部21から出力された制動指令が入力されている場合も、処理はステップS10Cへと進む。ステップS10Cにおいては、第3速度センサ4Cの検出信号から算出した乗りかご1の速度すなわち主索3の移動速度と、第3エンコーダ16Cの検出信号から算出した綱車12の回転速度との差が、前述の基準速度差以下であるか否かを確認する。そして、主索3の移動速度と綱車12の回転速度との差が基準速度差以下の場合、処理はステップS11Cへと進む。
ステップS11Cにおいては、主索3と綱車12との間に滑りは発生していないと判定される。そこで、第3演算処理部32Cは、第2ブレーキ駆動回路23Bに対してブレーキ電流を遮断して第2ブレーキ14Bに通常の制動を行わせる内容の制御指令を出力する。
一方、ステップS10Cで主索3の移動速度と綱車12の回転速度との差が基準速度差を超える場合、処理はステップS12Cへと進む。ステップS12Cにおいては、主索3と綱車12との間に滑りが発生していると判定される。そこで、第3演算処理部32Cは、前述の第2制動能力抑制制御を行う制御指令を生成する。すなわち、第3演算処理部32Cは、第2ブレーキ駆動回路23Bに対してブレーキ電流を低減して第2ブレーキ14Bに供給させる内容の制御指令を出力する。
また一方、ステップS09Cで運転制御部21から出力された制動指令が入力されていない場合、処理はステップS13Cへと進む。ステップS13Cにおいては、運転制御部21及び安全監視部22のいずれからも制動指令が入力されていない。そこで、第3演算処理部32Cは、第2ブレーキ駆動回路23Bに対してブレーキ電流の遮断を停止させて第2ブレーキ14Bを解放させる内容の制御指令を出力する。
ステップS11C、ステップS12C及びステップS13Cの後、処理はステップS14へと進む。ステップS14Cにおいては、第3演算処理部32Cは、第3演算処理部32Cにおける演算処理結果を第4演算処理部32Dの演算処理結果と比較する。第3演算処理部32Cの演算処理結果と第4演算処理部32Dの演算処理結果とが合致した場合、演算処理が正常に実施されたものと判定される。したがって、この場合、処理はステップS01Cに戻って同様の処理を繰り返すことになる。
一方、ステップS14Cで第3演算処理部32Cの演算処理結果と第4演算処理部32Dの演算処理結果とが合致しない場合、処理はステップS23Cへと進む。ステップS23Cでは、演算処理に異常があったと判定される。したがって、この場合、第3演算処理部32Cはその旨を運転制御部21に発報する。そして、処理はステップS24Cへと進み、第2ブレーキ制御部31Bによる第2ブレーキ14Bの制御が無効化された後、一連の処理は終了となる。
最後に、第4演算処理部32Dで行う処理の一例について図9及び図10を参照しながら説明する。まず、ステップS01Dにおいて、第4演算処理部32Dは、第3速度センサ4Cから入力された検出信号に基づいて乗りかご1の速度を算出する。続くステップS02Dにおいて、第4演算処理部32Dは、第4速度センサ4Dから入力された検出信号に基づいて乗りかご1の速度を算出する。ステップS02Dの後、処理はステップS03Dへと進む。
ステップS03Dにおいては、第4演算処理部32Dは、ステップS01Dで算出した乗りかご1の速度と、ステップS02Dで算出した乗りかご1の速度とを比較する。これらの速度の差が予め設定された基準値を超える場合、処理はステップS21Dへと進む。ステップS21Dにおいては、第3速度センサ4C及び第4速度センサ4Dを用いた乗りかご1の速度検出に異常があると判定し、第4演算処理部32Dは運転制御部21に発報する。ステップS21Dの後、処理はステップS04Dへと進む。一方、ステップS03Dで、ステップS01Dで算出した乗りかご1の速度とステップS02Dで算出した乗りかご1の速度との差が基準値以下の場合、第3速度センサ4C及び第4速度センサ4Dを用いた乗りかご1の速度検出に異常がなく正常であると判定し、処理はステップS04Dへと進む。
ステップS04Dでは、第4演算処理部32Dは、第3エンコーダ16Cから入力された検出信号に基づいて綱車12の回転速度を算出する。続くステップS05Dにおいて、第4演算処理部32Dは、第4エンコーダ16Dから入力された検出信号に基づいて綱車12の回転速度を算出する。ステップS05Dの後、処理はステップS06Dへと進む。
ステップS06Dにおいては、第4演算処理部32Dは、ステップS04Dで算出した綱車12の回転速度と、ステップS05Dで算出した綱車12の回転速度とを比較する。これらの回転速度の差が予め設定された基準値を超える場合、処理はステップS22Dへと進む。ステップS22Dにおいては、第3エンコーダ16C及び第4エンコーダ16Dを用いた綱車12の回転速度検出に異常があると判定し、第4演算処理部32Dは運転制御部21に発報する。ステップS22Dの後、処理はステップS07Dへと進む。一方、ステップS06Dで、ステップS04Dで算出した綱車12の回転速度とステップS05Dで算出した綱車12の回転速度との差が基準値以下の場合、第3エンコーダ16C及び第4エンコーダ16Dを用いた綱車12の回転速度検出に異常がなく正常であると判定し、処理はステップS07Dへと進む。
ステップS07Dにおいては、第4演算処理部32Dは、ステップS21D及びステップS22Dの一方又は両方の異常検知処理が実行されたか否かを確認する。ステップS21D及びステップS22Dの一方又は両方の異常検知処理が実行された場合、処理はステップS24Dへと進む。
ステップS24Dにおいては、第2ブレーキ制御部31Bによる第2ブレーキ14Bの制御自体が無効化される。この無効化は、例えば、第2ブレーキ制御部31Bに並列に設けられた短絡回路により運転制御部21及び安全監視部22から出力された制動指令をバイパスすることにより行なわれる。なお、この短絡回路は、通常時は切断されている。この短絡回路を接続することで、運転制御部21及び安全監視部22からの制動指令が、第2ブレーキ制御部31Bによる演算処理の影響を受けることなく、第2ブレーキ駆動回路23Bに直接入力されることになる。ステップS24Dの処理が完了すると、一連の処理は終了となる。
以上に対し、ステップS21D及びステップS22Dのいずれの異常検知処理も実行されていない場合、処理はステップS07DからステップS08Dへと進む。ステップS08Dにおいては、第4演算処理部32Dは、安全監視部22から出力された制動指令が入力されているか否かを確認する。そして、安全監視部22から出力された制動指令が入力されていない場合、処理はステップS09Dへと進む。ステップS09Dにおいては、第4演算処理部32Dは、運転制御部21から出力された制動指令が入力されているか否かを確認する。
ステップS08Dで安全監視部22から出力された制動指令が入力されている場合、処理はステップS10Dへと進む。ステップS09Dで運転制御部21から出力された制動指令が入力されている場合も、処理はステップS10Dへと進む。ステップS10Dにおいては、第3速度センサ4Cの検出信号から算出した乗りかご1の速度すなわち主索3の移動速度と、第3エンコーダ16Cの検出信号から算出した綱車12の回転速度との差が、前述の基準速度差以下であるか否かを確認する。
そして、主索3の移動速度と綱車12の回転速度との差が基準速度差以下の場合、第4演算処理部32Dは、主索3と綱車12との間に滑りは発生していないと判定する。一方、主索3の移動速度と綱車12の回転速度との差が基準速度差を超える場合、第4演算処理部32Dは、主索3と綱車12との間に滑りが発生していると判定する。いずれの場合も、滑り発生有無の判定の後に処理はステップS14Dへと進む。また、ステップS09Dで運転制御部21から出力された制動指令が入力されていない場合、ステップS10Dの滑り発生判定処理を行うことなくステップS14Dへと進む。
ステップS14Dにおいては、第4演算処理部32Dは、第4演算処理部32Dにおける演算処理結果を第3演算処理部32Cの演算処理結果と比較する。第4演算処理部32Dの演算処理結果と第3演算処理部32Cの演算処理結果とが合致した場合、演算処理が正常に実施されたものと判定される。したがって、この場合、処理はステップS01Dに戻って同様の処理を繰り返すことになる。
一方、ステップS14Dで第4演算処理部32Dの演算処理結果と第3演算処理部32Cの演算処理結果とが合致しない場合、処理はステップS23Dへと進む。ステップS23Dでは、演算処理に異常があったと判定される。したがって、この場合、第4演算処理部32Dはその旨を運転制御部21に発報する。そして、処理はステップS24Dへと進み、第2ブレーキ制御部31Bによる第2ブレーキ14Bの制御が無効化された後、一連の処理は終了となる。
なお、運転制御部21は、第1ブレーキ制御部31A及び第2ブレーキ制御部31Bの一方又は両方から異常の発報を受けると、巻上機モータ15の駆動を停止させることで乗りかご1を停止させた後、ブレーキの制動指令を出力する。この際、運転制御部21は、乗りかご1の走行中に第1ブレーキ制御部31A及び第2ブレーキ制御部31Bの一方又は両方から異常の発報を受けた場合には、乗りかご1を停止可能な最も近い階又は目的階で停止させ、戸開させてからブレーキの制動指令を出力してもよい。このようにすることで、第1ブレーキ制御部31A又は第2ブレーキ制御部31Bに故障が発生した場合においても、乗りかご1内に乗客が閉じ込められることを防止できる。
また、運転制御部21は、ステップS23A、ステップS23B、ステップS23C及びステップS23Dの少なくともいずれかの処理が実行されて、ブレーキ制御部の異常発報を受けた場合、新たな運転サービスの実行を禁止してもよい。すなわち、この場合に、運転制御部21は、前述の第1自己診断により第1ブレーキ制御部31Aの異常が検出された場合、及び、前述の第2自己診断により第2ブレーキ制御部31Bの異常が検出された場合の一方又は両方の場合に、新たな運転サービスの実行を禁止する。このようにすることで、二次故障の発生を抑制し、制動能力が損なわれることを防止できる。
さらに、第1ブレーキ制御部31A及び第2ブレーキ制御部31Bの一方又は両方から異常の発報を運転制御部21が受けた場合に、異常の発報元、発報された異常の内容等を記憶する手段をエレベーター装置に備えてもよい。また、異常の発報元、発報された異常の内容等を報知する手段をエレベーター装置に備えてもよい。報知の態様としては、例えば、乗場、乗りかご1の操作盤に設けられた表示器、エレベーター装置の制御盤に設けられた表示器等に、報知内容を表示させること等が考えられる。このようにすることで、異常の内容を容易に確認でき、部品交換等の復旧作業が容易になる。
なお、以上で説明した図3から図10のフロー図は、前述したように、各演算処理部で行う処理のあくまでも一例を示すものである。したがって、例えば、図4のステップS12Aにおける前述の第1制動能力抑制制御で、第1演算処理部32Aが出力する制御指令は、第1ブレーキ駆動回路23Aでブレーキ電流を低減して第1ブレーキ14Aに供給させる内容に限られない。他に例えば、前述したように、第1ブレーキ駆動回路23Aにブレーキ電流のONとOFFを交互に繰り返させることで第1ブレーキ14Aの制動能力を抑制してもよい。
あるいは、第1ブレーキ駆動回路23Aに運転制御部21からのブレーキ電流をそのまま第1ブレーキ14Aへと供給させ、第1ブレーキ14Aを解放することで第1ブレーキ14Aの制動能力を抑制してもよい。この場合、ステップS12Aの処理において、第1演算処理部32Aが既に第1ブレーキ駆動回路23Aへブレーキ電流を遮断する指令を出力している場合には、第1演算処理部32Aはこのブレーキ電流遮断指令を停止してからステップS14Aの処理へと進む。一方、第1演算処理部32Aが第1ブレーキ駆動回路23Aへブレーキ電流遮断指令を出力していない場合には、そのままブレーキ電流遮断指令を出力しない状態を維持してステップS14Aの処理へと進む。このようにすることで、第1ブレーキ駆動回路23Aは第1制動能力抑制制御においてブレーキ電流のONとOFFとを制御するだけでよくなる。このため、第1ブレーキ駆動回路23A等の構成を簡素化できる。
なお、図8のステップS12Cにおける前述の第2制動能力抑制制御についても同様である。すなわち、ステップS12Cで第3演算処理部32Cが出力する制御指令は、第2ブレーキ駆動回路23Bでブレーキ電流を低減して第2ブレーキ14Bに供給させる内容に限られない。他に例えば、前述したように、第2ブレーキ駆動回路23Bにブレーキ電流のONとOFFを交互に繰り返させることで第2ブレーキ14Bの制動能力を抑制してもよい。
あるいは、第2ブレーキ駆動回路23Bに運転制御部21からのブレーキ電流をそのまま第2ブレーキ14Bへと供給させ、第2ブレーキ14Bを解放することで第2ブレーキ14Bの制動能力を抑制してもよい。この場合、ステップS12Cの処理において、第3演算処理部32Cが既に第2ブレーキ駆動回路23Bへブレーキ電流を遮断する指令を出力している場合には、第3演算処理部32Cはこのブレーキ電流遮断指令を停止してからステップS14Cの処理へと進む。一方、第3演算処理部32Cが第2ブレーキ駆動回路23Bへブレーキ電流遮断指令を出力していない場合には、そのままブレーキ電流遮断指令を出力しない状態を維持してステップS14Cの処理へと進む。
次に、この実施の形態のエレベーター装置において、第1ブレーキ14A及び第2ブレーキ14Bに設定される制動能力について説明する。ここでは、説明を理解しやすくするために図11に示すエレベーター装置の簡易的な構成を例に、第1ブレーキ14A及び第2ブレーキ14Bの制動能力の設定方法を説明する。なお、同図はエレベーター装置の構成の一例に過ぎず、ローピング、巻上機11の配置等は図示した構成に限るものではない。
図11に示すエレベーター装置において、限界トラクション能力をΓとする。この限界トラクション能力Γは、綱車12の溝形状、主索3の形状、綱車12及び主索3の間の摩擦係数、主索3の綱車12に対する巻付角から決定されることが一般的に知られている。巻上機11における乗りかご1側の主索3にかかる張力をT1、巻上機11における乗りかご1側主索にかかる張力をT2とすると、主索3と綱車12との間で滑りが発生しない条件は、次の式(1)で表すことができる。
次に、綱車12の半径をr、制動トルクをTbとする。また、巻上機11における乗りかご側質量の総和をm1、巻上機11における釣合い重り2側質量の総和をm2、巻上機11における回転部の慣性モーメントの影響を綱車12の表面での並進運動における影響に換算した値をm3とする。そして、乗りかご1の上昇方向の加速度をaとし、重力加速度をgとすると、乗りかご1、釣合い重り2及び巻上機11についての運動方程式は、それぞれ次の式(2)、式(3)及び式(4)のようになる。
以上の式(1)~式(4)より、図7に示すエレベーター装置では、式(5)及び式(6)が共に成立する場合において、主索3と綱車12との間で滑りが発生しない。
ここで、この実施の形態のエレベーター装置においては、前述の第1自己診断により第1ブレーキ制御部31Aの異常が検出された場合には、前述の第1制動能力抑制制御が無効化される。したがって、第1ブレーキ14Aが作動するときは、綱車12と主索3との間における滑りの有無に関わらず、最大の制動トルクを発生させることになる。同様に、前述の第2自己診断により第2ブレーキ制御部31Bの異常が検出された場合には、前述の第2制動能力抑制制御が無効化される。したがって、第2ブレーキ14Bが作動するときは、綱車12と主索3との間における滑りの有無に関わらず、最大の制動トルクを発生させることになる。
そこで、第1ブレーキ14A及び第2ブレーキ14Bのそれぞれの制動トルクを式(5)及び式(6)が共に成立するように設定する。すなわち、第1ブレーキ14Aの最大制動能力は、綱車12と主索3の間の滑りを引き起こす制動能力よりも低く設定される。また、第2ブレーキ14Bの最大制動能力は、綱車12と主索3の間の滑りを引き起こす制動能力よりも低く設定される。このようにすることで、前述の第1制動能力抑制制御又は第2制動能力抑制制御のいずれか一方のみについて無効化されても、綱車12と主索3の間の滑りを抑制することが可能となる。
なお、第1ブレーキ14Aと第2ブレーキ14Bの制動トルクの総和が、エレベーター装置の安全な運行を実現するために必要な制動トルクに達していることは、前提として必要である。ここで、安全な運行を実現するために必要な制動トルクとは、乗りかご1を制止保持する制動トルク、安全監視部22の検出対象である事象に対して安全に乗りかご1を停止することが可能な制動トルク、各種検査に必要な制動トルク等を指す。
第1ブレーキ14A、第2ブレーキ14Bのそれぞれの制動トルクが式(5)、式(6)のいずれも満足するように設定した場合に、第1ブレーキ14A、第2ブレーキ14Bの2つのブレーキの制動トルクの総和がエレベーター装置の安全な運行を実現するために必要な制動トルクに達しない場合も考えられる。そのときは、前述した第3のブレーキ系統、第4のブレーキ系統等を追加することで、それぞれのブレーキについて式(5)及び式(6)を共に満足した上で、さらに必要な制動トルクの総和を確保することが可能である。
なお、第1速度センサ4A、第2速度センサ4B、第3速度センサ4C及び第4速度センサ4Dは、一般的に知られるリニアエンコーダを用いたり、加速度センサ信号を演算処理したりすることにより実現されるもので構わない。あるいは、一般的にエレベーター装置に備えられている調速機と類似するものでもよい。すなわち、乗りかご1に固定されて乗りかご1と同期して動く無端状のロープが架けられた滑車の回転をエンコーダ等で検出し、さらに演算処理することによって実現されるものでもよい。また、乗りかご1側でなく釣合い重り2側に設けてもよい。