本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(第1実施形態)
図1は、実施形態に係るマニピュレ-ションシステムの構成を模式的に示す図である。マニピュレーションシステム10は、顕微鏡観察下で微小対象物である試料を操作するためのシステムである。図1において、マニピュレーションシステム10は、顕微鏡ユニット12と、第1マニピュレータ14と、第2マニピュレータ16と、マニピュレーションシステム10を制御するコントローラ(制御装置)43とを備えている。顕微鏡ユニット12の両側に第1マニピュレータ14と第2マニピュレータ16とが分かれて配置されている。
撮像部としての顕微鏡ユニット12は、撮像素子を含むカメラ18と、顕微鏡20と、試料ステージ22とを備えている。試料ステージ22は、シャーレなどの試料保持部材11を支持可能であり、試料保持部材11の直上に顕微鏡20が配置される。顕微鏡ユニット12は、顕微鏡20とカメラ18とが一体構造となっており、試料保持部材11に向けて光を照射する光源(図示は省略している)を備えている。なお、カメラ18は、顕微鏡20と別体に設けてもよい。
試料保持部材11には、試料を含む溶液が収容される。溶液は、例えば、パラフィンオイル等である。試料保持部材11の試料に光が照射され、試料保持部材11の試料で反射した光が顕微鏡20に入射すると、試料に関する光学像は、顕微鏡20で拡大された後、カメラ18で撮像される。カメラ18で撮像された画像を基に試料の観察が可能となっている。
図1に示すように、第1マニピュレータ14は、第1ピペット保持部材24と、X-Y軸テーブル26と、Z軸テーブル28と、X-Y軸テーブル26を駆動する駆動装置30と、Z軸テーブル28を駆動する駆動装置32とを備える。第1マニピュレータ14は、X軸-Y軸-Z軸の3軸構成のマニピュレータである。なお、本実施形態において、水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と交差する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと交差する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。
X-Y軸テーブル26は、駆動装置30の駆動により、X軸方向又はY軸方向に移動可能となっている。Z軸テーブル28は、X-Y軸テーブル26上に上下移動可能に配置され、駆動装置32の駆動によりZ軸方向に移動可能になっている。駆動装置30、32は、コントローラ43に接続されている。
第1ピペット保持部材24は、Z軸テーブル28に連結され、先端に毛細管チップである第1ピペット25が取り付けられている。第1ピペット保持部材24は、X-Y軸テーブル26とZ軸テーブル28の移動に従って3次元空間を移動領域として移動し、試料保持部材11に収容された試料を、第1ピペット25を介して保持することができる。すなわち、第1マニピュレータ14は、微小対象物の保持に用いられる保持用マニピュレータであり、第1ピペット25は、微小対象物の保持手段として用いられるホールディングピペットである。微小対象物は、例えば、第1ピペット保持部材24及び第1ピペット25と連通されているシリンジポンプ29(図3参照)によって、第1ピペット25の先端にて吸引保持される。
図1に示す第2マニピュレータ16は、第2ピペット保持部材34と、X-Y軸テーブル36と、Z軸テーブル38と、X-Y軸テーブル36を駆動する駆動装置40と、Z軸テーブル38を駆動する駆動装置42とを備える。第2マニピュレータ16は、X軸-Y軸-Z軸の3軸構成のマニピュレータである。
X-Y軸テーブル36は、駆動装置40の駆動により、X軸方向又はY軸方向に移動可能となっている。Z軸テーブル38は、X-Y軸テーブル36上に上下移動可能に配置され、駆動装置42の駆動によりZ軸方向に移動可能になっている。駆動装置40、42は、コントローラ43に接続されている。
第2ピペット保持部材34は、Z軸テーブル38に連結され、先端にガラス製の第2ピペット35が取り付けられている。第2ピペット保持部材34は、X-Y軸テーブル36とZ軸テーブル38の移動に従って3次元空間を移動領域として移動し、試料保持部材11に収容された試料を人工操作することが可能である。すなわち、第2マニピュレータ16は、微小対象物の操作(DNA溶液の注入操作や穿孔操作など)に用いられる操作用マニピュレータであり、第2ピペット35は、微小対象物のインジェクション操作手段として用いられるインジェクションピペットである。第2ピペット35の先端は、微小対象物に押し当てた場合、微小対象物が穿孔されずに変形するサイズ及び形状とする。
X-Y軸テーブル36とZ軸テーブル38は、第2ピペット保持部材34を、試料保持部材11に収容された試料などの操作位置まで粗動駆動する粗動機構(3次元移動テーブル)として構成されている。また、Z軸テーブル38と第2ピペット保持部材34との連結部には、ナノポジショナとして微動機構44が備えられている。微動機構44は、第2ピペット保持部材34をその長手方向(軸方向)に移動可能に支持するとともに、第2ピペット保持部材34をその長手方向(軸方向)に沿って微動駆動するように構成される。
図2は、微動機構の一例を示す断面図である。図2に示すように微動機構44は、第2ピペット保持部材34を駆動対象とする圧電アクチュエータ44aを備える。圧電アクチュエータ44aは、筒状のハウジング87と、ハウジング87の内部に設けられた転がり軸受80、82と、圧電素子92とを含む。ハウジング87の軸方向に第2ピペット保持部材34が挿通される。転がり軸受80、82は、第2ピペット保持部材34を回転可能に支持する。圧電素子92は、印加される電圧に応じて第2ピペット保持部材34の長手方向に沿って伸縮する。第2ピペット保持部材34の先端側(図2左側)には第2ピペット35(図1参照)が取り付けられ固定される。
第2ピペット保持部材34は、転がり軸受80、82を介してハウジング87に支持される。転がり軸受80は、内輪80aと、外輪80bと、内輪80aと外輪80bとの間に設けられたボール80cとを備える。転がり軸受82は、内輪82aと、外輪82bと、内輪82aと外輪82bとの間に設けられたボール82cとを備える。各外輪80b、82bがハウジング87の内周面に固定され、各内輪80a、82aが中空部材84を介して第2ピペット保持部材34の外周面に固定される。このように、転がり軸受80、82は、第2ピペット保持部材34を回転自在に支持するようになっている。
中空部材84の軸方向の略中央部には、径方向外方に突出するフランジ部84aが設けられている。転がり軸受80は、フランジ部84aに対して第2ピペット保持部材34の軸方向の先端側に配置され、転がり軸受82はフランジ部84aに対して後端側に配置される。内輪間座としてのフランジ部84aを挟んで転がり軸受80の内輪80aと、転がり軸受82の内輪82aとが配置される。第2ピペット保持部材34の外周面にねじ加工が施されており、内輪80aの先端側及び内輪82aの後端側からロックナット86及びロックナット86が第2ピペット保持部材34に螺合されて、転がり軸受80、82の軸方向の位置が固定される。
円環状のスペーサ90は、転がり軸受80、82と同軸に外輪82bの軸方向後端側に配置される。スペーサ90の軸方向後端側には、円環状の圧電素子92がスペーサ90と略同軸に配置され、さらにその軸方向後端側にはハウジング87の蓋88が配置される。蓋88は、圧電素子92を軸方向に固定するためのもので、第2ピペット保持部材34が挿通する孔部を有する。蓋88は、例えば、ハウジング87の側面に不図示のボルトにより締結されていてもよい。なお、圧電素子92は、棒状又は角柱状としてスペーサ90の周方向に略等配となるように並べても良く、第2ピペット保持部材34を挿通する孔部を有した角筒としても良い。
圧電素子92はスペーサ90を介して転がり軸受82と接している。圧電素子92は、リード線(図示せず)を介して制御回路としてのコントローラ43に接続されている。圧電素子92は、コントローラ43からの印加電圧に応答して第2ピペット保持部材34の軸方向に沿って伸縮し、第2ピペット保持部材34をその軸方向に沿って微動させるようになっている。第2ピペット保持部材34が軸方向に沿って微動すると、この微動が第2ピペット35(図1参照)に伝達され、第2ピペット35の位置が微調整されることになる。また、圧電素子92により第2ピペット保持部材34が軸方向に振動すると、第2ピペット35も軸方向に振動する。このように微動機構44により、微小対象物への操作(DNA溶液や細胞の注入操作や穿孔操作など)の際には、より正確な操作が可能となり、圧電素子92による穿孔作用の向上を実現できる。
なお、上述の微動機構44は、微小対象物の操作用の第2マニピュレータ16に設けられるとしているが、図1に示すように微小対象物の固定用の第1マニピュレータ14に微動機構44と同様の微動機構54を設けてもよく、省略することも可能である。
次に、コントローラ43によるマニピュレーションシステム10の制御について図3を参照して説明する。図3は、マニピュレーションシステムの制御ブロック図である。
コントローラ43は、演算手段としてのCPU(中央演算処理装置)及び記憶手段としてのハードディスク、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のハードウェア資源を備える。コントローラ43は、記憶部46Bに格納された所定のプログラムに基づいて各種の演算を行い、演算結果に従って制御部46Aが各種の制御を行うように駆動信号を出力する。
制御部46Aは、顕微鏡ユニット12の焦点合わせ機構81、第1マニピュレータ14の駆動装置30、駆動装置32、シリンジポンプ29、第2マニピュレータ16の駆動装置40、駆動装置42、圧電素子92、注入ポンプ39を制御し、必要に応じて設けられたドライバやアンプ等を介してそれぞれに駆動信号を出力する。制御部46Aは、駆動装置30、32、40、42にそれぞれ駆動信号Vxy、Vz(図1参照)を供給する。駆動装置30、32、40、42は、駆動信号Vxy、Vzに基づいてX-Y-Z軸方向に駆動する。制御部46Aは、微動機構44にナノポジショナ制御信号VN(図1参照)を供給して、微動機構44の制御を行ってもよい。
コントローラ43は、情報入力手段としてジョイスティック47と、キーボード、マウス又はタッチパネル等の入力部49とが接続されている。また、コントローラ43は、液晶パネル等の表示部45が接続される。表示部45にはカメラ18で取得した顕微鏡画像や各種制御用画面が表示されるようになっている。なお、入力部49としてタッチパネルが用いられる場合には、表示部45の表示画面にタッチパネルを重ねて用い、操作者が表示部45の表示画像を確認しつつ入力操作を行うようにしてもよい。
ジョイスティック47は公知のものを用いることができる。ジョイスティック47は、基台と、基台から直立するハンドル部とを備えており、ハンドル部を傾斜させるように操作することで駆動装置30、40のX-Y駆動を行うことができ、ハンドル部をねじることで駆動装置32、42のZ駆動を行うことができる。ジョイスティック47は、シリンジポンプ29、圧電素子92、注入ポンプ39の各駆動を操作するためのボタン47Aを備えていてもよい。
図3に示すように、コントローラ43は、さらに画像入力部43A、画像処理部43B、画像出力部43C及び位置検出部43Dを備えている。顕微鏡20を通してカメラ18で撮像した画像信号Vpix(図1参照)が画像入力部43Aに入力される。画像処理部43Bは、画像入力部43Aから画像信号を受け取って、画像処理を行う。画像出力部43Cは、画像処理部43Bで画像処理された画像情報を表示部45へ出力する。位置検出部43Dは、カメラ18で撮像された微小対象物である細胞等の位置や、第2ピペット35によるインジェクション操作を行う操作対象である細胞の核等の位置を、画像処理後の画像情報に基づいて検出することができる。位置検出部43Dは、画像情報に基づいてカメラ18の撮像領域内における細胞等の有無を検出することができる。また、位置検出部43Dは、第1ピペット25及び第2ピペット35の位置を検出してもよい。画像入力部43A、画像処理部43B、画像出力部43C及び位置検出部43Dは、制御部46Aにより制御される。
制御部46Aは、位置検出部43Dからの位置情報、及び細胞等の有無の情報に基づいて、第1マニピュレータ14及び第2マニピュレータ16を制御する。本実施形態において、制御部46Aは、第1マニピュレータ14及び第2マニピュレータ16を所定のシーケンスで自動的に駆動する。かかるシーケンス駆動は、記憶部46Bにあらかじめ保存された所定のプログラムによるCPUの演算結果に基づいて、制御部46Aが順次それぞれに駆動信号を出力することで行われる。
次に、図4を参照して、微小対象物である試料の操作対象の検出方法と、操作実行位置IJ、第2ピペット35の挿入開始位置P0、透明帯接触位置P1、細胞膜接触位置P2及び核膜接触位置P3の決定方法と、について説明する。図4は、操作対象の細胞及び核の一例を示す模式図である。図4は、図1におけるZ軸方向に視た図である。本実施形態において、試料は細胞100である。また、細胞100は、前核期受精卵である。また、細胞100への操作は、DNA溶液のインジェクション操作である。また、本実施形態において、細胞100への第2ピペット35の挿入方向は、X軸方向に平行である。挿入方向に直交する交差方向は、Y軸方向に平行である。なお、図1に示すように、第2ピペット35は、所定の傾きをもって取り付けられている。このため、第2ピペット35の先端位置は、挿入が開始されると、実際にはZ軸方向(図4の紙面垂直方向)に若干移動する。以下の説明では、Z軸方向の説明は省略し、X-Y平面に沿う移動について説明する。
細胞100は、試料保持部材11(図1参照)に収容される。本実施形態において、試料保持部材11は、未処理の細胞100を載置する未処理細胞領域と、操作が成功した細胞100を載置する成功細胞領域と、操作が失敗した細胞100を載置する失敗細胞領域と、を含む。細胞100は、透明帯102と、細胞膜104と、核110と、を含む。透明帯102は、細胞膜104を取り囲む糖タンパク質の層である。細胞膜104は、細胞100の内外を隔てる生体膜である。透明帯102及び細胞膜104は、流動性を有する高弾性の物質である。高弾性とは、弾性限界が大きいことである。核110は、細胞膜104に覆われた細胞100の内部に存在する。核110は、核膜112と核小体114とを有する。核膜112は、流動性を有する高弾性の物質である。核小体114は、核膜112に覆われた核110の内部に存在する。
細胞100は、第1ピペット25(図1参照)に保持された状態で、第2ピペット35によってインジェクション操作される。DNA溶液等のインジェクションにおいては、DNA溶液等を、核膜112の内部に注入する必要がある。核膜112は、低コントラストかつ形状が不定であるため、エッジ抽出処理等の一般的な画像処理手段による検出が困難である。そこで、核膜112より高コントラストの核小体114を検出し、核小体114の位置に基づいて、インジェクションの操作実行位置IJを決定する。
細胞100の画像データは、図3に示すカメラ18により撮像される。カメラ18により撮像された細胞100の画像データは、画像入力部43Aから画像信号として画像処理部43Bに送られる。画像処理部43Bは、細胞100の画像データの画像処理を行う。画像処理部43Bは、細胞100及び核小体114の位置及び形状を検出するために、画像入力部43Aから受け取った画像信号について二値化処理とフィルタ処理を実行する。画像処理部43Bは、画像信号をグレースケール化して、あらかじめ設定された所定の閾値に基づいて、このグレースケール画像をモノクロ画像に変換する。そして、画像処理部43Bは、二値化処理とフィルタ処理により得られたモノクロ画像に基づいてエッジ抽出処理やパターンマッチングを行う。その処理結果に基づいて位置検出部43Dは、細胞100及び核小体114の位置及び形状を検出することができる。すなわち、コントローラ43は、画像データに基づいて、細胞100の半径R、細胞100の中心C1、核小体114の半径r、及び核小体114の中心C2を検出する。
コントローラ43は、検出結果に基づいて、第1ピペット25を移動させて、予め定められた原点(0,0)に細胞100の中心C1を移動させる。コントローラ43は、細胞100の中心C1のX-Y平面における座標を原点(0,0)と定義するようにしてもよい。コントローラ43は、検出結果における細胞100の中心C1及び核小体114の中心C2の位置に基づいて、核小体114の中心C2の座標(x1,y1)を算出する。本実施形態において、x1=0である。
インジェクションの操作実行位置IJは、第2ピペット35が細胞100にインジェクション操作する際の、第2ピペット35の先端の位置である。インジェクションの操作実行位置IJの座標(x2,y2)は、核小体114の中心C2の座標(x1,y1)と、核小体114の半径rと、オフセット量αと、によって決定される。オフセット量αは、予め定められる任意の設定値である。操作実行位置IJの座標(x2,y2)は、核小体114の中心C1の座標(x1,y1)に対して、細胞100の中心C1に向かってY軸方向に(r+α)だけ移動した位置である。操作実行位置IJのX座標x2は、x2=x1によって算出される。本実施形態において、x2=0である。操作実行位置IJのY座標y2は、y1≧0である場合、y2=y1-(r+α)によって算出される。操作実行位置IJのY座標y2は、y1<0である場合、y2=y1+(r+α)によって算出される。
第2ピペット35の挿入開始位置P0は、細胞100に対する第2ピペット35の挿入動作が開始される位置である。第2ピペット35は、操作実行位置IJに向かって、かつ、X軸に対して平行に挿入される。図4に示すように、第2ピペット35の挿入開始位置P0の座標(x3,y3)は、操作実行位置IJの座標(x2,y2)と、初期距離L0と、によって決定される。初期距離L0は、細胞100の中心C1と第2ピペット35の先端の初期位置IPとのX軸方向の距離である。初期距離L0は、細胞100の半径Rよりも大きい。挿入開始位置P0のY座標y3は、y3=y2によって算出される。挿入開始位置P0のX座標x3は、x3=-L0によって算出される。
透明帯接触位置P1は、第2ピペット35の先端が透明帯102に接触する位置である。透明帯接触位置P1は、挿入開始位置P0と操作実行位置IJとを結ぶ直線と、透明帯102の外形とが交差する位置である。透明帯接触位置P1の座標(x4,y4)は、顕微鏡ユニット12の画像データに基づいて決定される。透明帯接触位置P1のY座標y4は、y4=y2である。
細胞膜接触位置P2は、第2ピペット35の先端が細胞膜104に接触する位置である。細胞膜接触位置P2は、挿入開始位置P0と操作実行位置IJとを結ぶ直線と、細胞膜104の外形とが交差する位置である。細胞膜接触位置P2の座標(x5,y5)は、顕微鏡ユニット12の画像データに基づいて決定される。細胞膜接触位置P2のY座標y5は、y5=y2である。
核膜接触位置P3は、第2ピペット35の先端が核膜112に接触する位置である。核膜接触位置P3は、挿入開始位置P0と操作実行位置IJとを結ぶ直線と、核膜112の外形とが交差する位置である。核膜接触位置P3の座標(x6,y6)は、顕微鏡ユニット12の画像データに基づいて決定される。核膜接触位置P3のY座標y6は、y6=y2である。
次に、マニピュレーションシステム10の駆動方法について説明する。マニピュレーションシステム10の動作を開始する前に、操作者は、まず、図1に示すカメラ18の視野内に、第1ピペット25及び第2ピペット35を配置する。ここで、第1ピペット25の先端の高さは試料保持部材11の底面よりわずかに上の位置とする。操作者は、次に、顕微鏡20の焦点合わせ機構81(図3参照)を用いて、焦点を第1ピペット25に合わせる。操作者は、焦点を第1ピペット25に合わせた状態で、焦点が合うように第2ピペット35の高さを調整する。操作者は、次に、試料保持部材11内の細胞100の周辺を、カメラ18の視野と重なるように試料ステージ22を移動させる。操作者は、さらに、細胞100に第1ピペット25の先端を近付けても細胞100が動かないことを確認する。これは、図3に示すシリンジポンプ29が平衡状態であることを確認するためである。以上の準備により、細胞100は、第1ピペット25及び第2ピペット35の近傍に配置される。
図5は、第1実施形態のマニピュレーションシステムの動作の一例を示すフローチャート図である。図6は、透明帯の穿孔動作の一例を示すフローチャート図である。図7は、細胞膜の穿孔動作の一例を示すフローチャート図である。図8は、核膜の穿孔動作の一例を示すフローチャート図である。図9は、第1実施形態のマニピュレーションシステムの動作を説明する説明図である。マニピュレーションシステム10は、試料保持部材11に載置された複数の細胞100に対し、1つの細胞100ごとに操作を行い、複数の細胞100について操作を繰り返し実行する。コントローラ43は、複数の細胞100に対する操作を自動で実行する。マニピュレーションシステム10による自動操作は、例えば、PCソフト上の開始ボタンを押すことでスタートする。
図5に示すように、まず、ステップST10において、操作者は、マニピュレーションシステム10が複数回の操作を実行した後、操作を終了する回数である操作終了回数Neを、図3に示す入力部49を介してコントローラ43の制御部46Aに設定する。1つの細胞100ごとに操作を行うので、操作終了回数Neは、操作を行う細胞100の個数である。制御部46Aに操作終了回数Neが入力されると、ステップST12において、制御部46Aは、実行した操作回数のカウンタ値である操作実行回数NをN=0としてコントローラ43の記憶部46Bに記憶させる。
次に、コントローラ43の画像処理部43Bは、顕微鏡20を通してカメラ18が撮像した画像データの画像処理を行う。コントローラ43の位置検出部43Dは、画像処理によって、カメラ18の画面上における第1ピペット25の先端中央の位置座標及び第2ピペット35の先端中央の位置座標を検出する。ステップST14において、制御部46Aは、第1マニピュレータ14を駆動して、検出結果に基づいて、第1ピペット25を所定の位置へ移動させる。所定の位置とは、第1ピペット25の先端中央が操作対象の細胞100に対向する位置である。
次に、ステップST16において、制御部46Aは、第1マニピュレータ14のシリンジポンプ29(図3参照)を駆動させ、第1ピペット25の吸引を実行させる。シリンジポンプ29が駆動すると、第1ピペット25の内部は陰圧となり、第1ピペット25の開口に向かって試料保持部材11の溶液の流れが発生する。細胞100は、溶液とともに吸引されて、第1ピペット25の先端に吸着し、保持される。ここで、細胞100が保持されたかを確認するために、第1ピペット25の先端近傍に細胞100があるか、画像処理によって検出して判断するようにしてもよい。
次に、ステップST18において、画像処理部43Bは、細胞100の画像データを取得する。ステップST20において、位置検出部43Dは、取得した画像データに基づいて、細胞100及び核小体114の位置及び形状を画像処理シーケンスにより検出する。ステップST22において、位置検出部43Dは、核小体114が検出されたか否かを判断する。ステップST22において、核小体114が検出されないと判断された場合(ステップST22;No)、ステップST20に戻り、画像処理部43Bは、再び細胞100及び核小体114の位置及び形状を画像シーケンスにより再度検出する。ステップST22において、核小体114が検出されないと判断した場合、ステップST18に戻って、画像処理部43Bが細胞100の画像データを再度取得してもよい。ステップST18において、画像データを再度取得する前に、制御部46Aは、第1ピペット25による細胞100の保持を一時解除して細胞100の姿勢を変更させるようにしてもよい。
ステップST22において、核小体114が検出されたと判断された場合(ステップST22;Yes)、制御部46Aは、核小体114の中心C2の座標(x1,y1)を算出する。本実施形態において、x1=0である。次に、ステップST24において、制御部46Aは、核小体114の中心C2のY座標y1が細胞100の中心C1のY座標0以上か否かを判断する。ステップST24において、核小体114の中心C2のY座標y1が細胞100の中心C1のY座標0以上であると判断された場合、ステップST26において、操作実行位置IJのY座標y2は、y2=y1-(r+α)によって算出される。ステップST24において、核小体114の中心C2のY座標y1が細胞100の中心C1のY座標0より小さいと判断された場合、ステップST28において、操作実行位置IJのY座標y2は、y2=y1+(r+α)によって算出される。
ステップST26及びステップST28によって操作実行位置IJのY座標y2を算出した後、ステップST30において、制御部46Aは、操作実行位置IJ及び挿入開始位置P0を決定する。具体的には、制御部46Aは、操作実行位置IJの座標(x2,y2)及び挿入開始位置P0の座標(x3,y3)を算出し、第2ピペット35の移動経路を設定する。制御部46Aは、第2ピペット35の移動経路と細胞100の画像データとから、透明帯接触位置P1(x4,y4)、細胞膜接触位置P2(x5,y5)及び核膜接触位置P3(x6,y6)を決定する。
次に、ステップST32において、制御部46Aは、第2ピペット35の先端を挿入開始位置P0に移動させる。第2ピペット35の初期位置IPと、挿入開始位置P0とは、X座標が同一なので、第2ピペット35は、Y軸方向に平行に移動する。第2ピペット35の先端は、操作実行位置IJに対向する。
次に、ステップST40において、第2ピペット35は、透明帯102を穿孔する。図6に示すように、ステップST40-2において、制御部46Aは、第2ピペット35の先端を透明帯接触位置P1に移動させる。第2ピペット35の挿入開始位置P0と、透明帯接触位置P1とは、Y座標が同一なので、第2ピペット35は、X軸方向に平行に移動する。第2ピペット35の先端は、操作実行位置IJに向かって透明帯102に僅かに押し当てられる。透明帯102は、高弾性であるため、第2ピペット35の先端が押し当てられることによって、穿孔されず、微小に変形する。
ステップST40-4において、画像処理部43Bは、細胞100の画像データを取得する。ステップST40-6において、位置検出部43Dは、取得した画像データに基づいて、透明帯102と第2ピペット35の先端との接触位置を画像処理シーケンスにより検出する。制御部46Aは、透明帯102と第2ピペット35の先端との接触位置の座標を記憶部46Bに記憶させる。ステップST40-6において、透明帯102と第2ピペット35の先端との接触位置が検出されなかった場合、画像処理部43Bは、再び透明帯102と第2ピペット35の先端との接触位置を画像シーケンスにより再度検出してもよい。
ステップST40-8において、位置検出部43Dは、透明帯102と第2ピペット35の先端とが接触しているか否かを判断する。ステップST40-8において、透明帯102と第2ピペット35の先端とが接触していないと判断された場合(ステップST40-8;No)、ステップST40-10に移行する。ステップST40-8において、透明帯102と第2ピペット35の先端とが接触していると判断された場合(ステップST40-8;Yes)、ステップST40-12に移行する。
ステップST40-10において、制御部46Aは、第2ピペット35の先端を、透明帯102に接触するように移動させる。制御部46Aは、予め設定された所定のプログラムに従って第2ピペット35を移動させる。第2ピペット35を移動させた後、ステップST40-4に戻り、画像処理部43Bが細胞100の画像データを再度取得する。
ステップST40-4からステップST40-10は、省略してもよい。すなわち、ステップST40-2において、第2ピペット35の先端が透明帯接触位置P1に移動したことによって、透明帯102と第2ピペット35の先端とが接触したと見做してもよい。この場合、ステップST30において、透明帯接触位置P1を決定した後、制御部46Aは、透明帯接触位置P1を、透明帯102と第2ピペット35の先端との接触位置の座標として記憶部46Bに記憶させておく。
ステップST40-12において、制御部46Aは、微動機構44を駆動する。制御部46Aは、微動機構44に第2ピペット35を加振させる。第2ピペット35の振動によって、透明帯102と第2ピペット35の先端との接触位置において、透明帯102が穿孔される。制御部46Aは、予め定められた所定回数又は所定時間、微動機構44に第2ピペット35を加振させる。
微動機構44による第2ピペット35への加振を終えた後、ステップST40-14において、制御部46Aは、第2ピペット35をX軸方向に僅かに前進移動させる。ステップST40-16において、画像処理部43Bは、細胞100の画像データを取得する。ステップST40-18において、位置検出部43Dは、取得した画像データに基づいて、透明帯102の穿孔位置を画像処理シーケンスにより検出する。穿孔位置は、透明帯102の外形と第2ピペット35とが交差する位置である。制御部46Aは、透明帯102の穿孔位置の座標を記憶部46Bに記憶させる。ステップST40-18において、透明帯102の穿孔位置が検出されなかった場合、画像処理部43Bは、再び透明帯102の穿孔位置を画像シーケンスにより再度検出してもよい。
ステップST40-20において、制御部46Aは、透明帯102の穿孔操作が成功したか否かを判断する。制御部46Aは、ステップST40-18において検出した透明帯102の穿孔位置の座標と第2ピペット35の先端の座標とを比較する。制御部46Aは、第2ピペット35の先端の座標が穿孔位置の座標より細胞100の内側にない場合、穿孔操作が失敗したと判断し、穿孔操作の失敗情報を記憶部46Bに記憶させる。制御部46Aは、第2ピペット35の先端の座標が穿孔位置の座標より細胞100の内側にある場合、穿孔操作が成功したと判断し、穿孔操作の成功情報を記憶部46Bに記憶させる。ステップST40-20において、透明帯102の穿孔操作が失敗したと判断された場合(ステップST40-20;No)、ステップST40-10に移行する。ステップST40-20において、透明帯102の穿孔操作が成功したと判断された場合(ステップST40-20;Yes)、ステップST40を終了し、ステップST50に移行する。
次に、ステップST50において、第2ピペット35は、細胞膜104を穿孔する。図7に示すように、ステップST50-2において、制御部46Aは、第2ピペット35の先端を細胞膜接触位置P2に移動させる。透明帯接触位置P1と、細胞膜接触位置P2とは、Y座標が同一なので、第2ピペット35は、X軸方向に平行に移動する。第2ピペット35の先端は、操作実行位置IJに向かって細胞膜104に僅かに押し当てられる。細胞膜104は、高弾性であるため、第2ピペット35の先端が押し当てられることによって、穿孔されず、微小に変形する。
ステップST50-4において、画像処理部43Bは、細胞100の画像データを取得する。ステップST50-6において、位置検出部43Dは、取得した画像データに基づいて、細胞膜104と第2ピペット35の先端との接触位置を画像処理シーケンスにより検出する。制御部46Aは、細胞膜104と第2ピペット35の先端との接触位置の座標を記憶部46Bに記憶させる。ステップST50-6において、細胞膜104と第2ピペット35の先端との接触位置が検出されなかった場合、画像処理部43Bは、再び細胞膜104と第2ピペット35の先端との接触位置を画像シーケンスにより再度検出してもよい。
ステップST50-8において、位置検出部43Dは、細胞膜104と第2ピペット35の先端とが接触しているか否かを判断する。ステップST50-8において、細胞膜104と第2ピペット35の先端とが接触していないと判断された場合(ステップST50-8;No)、ステップST50-10に移行する。ステップST50-8において、細胞膜104と第2ピペット35の先端とが接触していると判断された場合(ステップST50-8;Yes)、ステップST50-12に移行する。
ステップST50-10において、制御部46Aは、第2ピペット35の先端を、細胞膜104に接触するように移動させる。制御部46Aは、予め設定された所定のプログラムに従って第2ピペット35を移動させる。第2ピペット35を移動させた後、ステップST50-4に戻り、画像処理部43Bが細胞100の画像データを再度取得する。
ステップST50-4からステップST50-10は、省略してもよい。すなわち、ステップST50-2において、第2ピペット35の先端が細胞膜接触位置P2に移動したことによって、細胞膜104と第2ピペット35の先端とが接触したと見做してもよい。この場合、ステップST30において、細胞膜接触位置P2を決定した後、制御部46Aは、細胞膜接触位置P2を、細胞膜104と第2ピペット35の先端との接触位置の座標として記憶部46Bに記憶させておく。
ステップST50-12において、制御部46Aは、微動機構44を駆動する。制御部46Aは、微動機構44に第2ピペット35を加振させる。第2ピペット35の振動によって、細胞膜104と第2ピペット35の先端との接触位置において、細胞膜104が穿孔される。制御部46Aは、予め定められた所定回数又は所定時間、微動機構44に第2ピペット35を加振させる。
微動機構44による第2ピペット35への加振を終えた後、ステップST50-14において、制御部46Aは、第2ピペット35をX軸方向に僅かに前進移動させる。ステップST50-16において、画像処理部43Bは、細胞100の画像データを取得する。ステップST50-18において、位置検出部43Dは、取得した画像データに基づいて、細胞膜104の穿孔位置を画像処理シーケンスにより検出する。穿孔位置は、細胞膜104の外形と第2ピペット35とが交差する位置である。制御部46Aは、細胞膜104の穿孔位置の座標を記憶部46Bに記憶させる。ステップST50-18において、細胞膜104の穿孔位置が検出されなかった場合、画像処理部43Bは、再び細胞膜104の穿孔位置を画像シーケンスにより再度検出してもよい。
ステップST50-20において、制御部46Aは、細胞膜104の穿孔操作が成功したか否かを判断する。制御部46Aは、ステップST50-18において検出した細胞膜104の穿孔位置の座標と第2ピペット35の先端の座標とを比較する。制御部46Aは、第2ピペット35の先端の座標が穿孔位置の座標より細胞100の内側にない場合、穿孔操作が失敗したと判断し、穿孔操作の失敗情報を記憶部46Bに記憶させる。制御部46Aは、第2ピペット35の先端の座標が穿孔位置の座標より細胞100の内側にある場合、穿孔操作が成功したと判断し、穿孔操作の成功情報を記憶部46Bに記憶させる。ステップST50-20において、細胞膜104の穿孔操作が失敗したと判断された場合(ステップST50-20;No)、ステップST50-10に移行する。ステップST50-20において、細胞膜104の穿孔操作が成功したと判断された場合(ステップST50-20;Yes)、ステップST50を終了し、ステップST60に移行する。
次に、ステップST60において、第2ピペット35は、核膜112を穿孔する。図8に示すように、ステップST60-2において、制御部46Aは、第2ピペット35の先端を核膜接触位置P3に移動させる。細胞膜接触位置P2と、核膜接触位置P3とは、Y座標が同一なので、第2ピペット35は、X軸方向に平行に移動する。第2ピペット35の先端は、操作実行位置IJに向かって核膜112に僅かに押し当てられる。核膜112は、高弾性であるため、第2ピペット35の先端が押し当てられることによって、穿孔されず、微小に変形する。
ステップST60-4において、画像処理部43Bは、細胞100の画像データを取得する。ステップST60-6において、位置検出部43Dは、取得した画像データに基づいて、核膜112と第2ピペット35の先端との接触位置を画像処理シーケンスにより検出する。制御部46Aは、核膜112と第2ピペット35の先端との接触位置の座標を記憶部46Bに記憶させる。ステップST60-6において、核膜112と第2ピペット35の先端との接触位置が検出されなかった場合、画像処理部43Bは、再び核膜112と第2ピペット35の先端との接触位置を画像シーケンスにより再度検出してもよい。
ステップST60-8において、位置検出部43Dは、核膜112と第2ピペット35の先端とが接触しているか否かを判断する。ステップST60-8において、核膜112と第2ピペット35の先端とが接触していないと判断された場合(ステップST60-8;No)、ステップST60-10に移行する。ステップST60-8において、核膜112と第2ピペット35の先端とが接触していると判断された場合(ステップST60-8;Yes)、ステップST60-12に移行する。
ステップST60-10において、制御部46Aは、第2ピペット35の先端を、核膜112に接触するように移動させる。制御部46Aは、予め設定された所定のプログラムに従って第2ピペット35を移動させる。第2ピペット35を移動させた後、ステップST60-4に戻り、画像処理部43Bが細胞100の画像データを再度取得する。
ステップST60-4からステップST60-10は、省略してもよい。すなわち、ステップST60-2において、第2ピペット35の先端が核膜接触位置P3に移動したことによって、核膜112と第2ピペット35の先端とが接触したと見做してもよい。この場合、ステップST30において、核膜接触位置P3を決定した後、制御部46Aは、核膜接触位置P3を、核膜112と第2ピペット35の先端との接触位置の座標として記憶部46Bに記憶させておく。
ステップST60-12において、制御部46Aは、微動機構44を駆動する。制御部46Aは、微動機構44に第2ピペット35を加振させる。第2ピペット35の振動によって、核膜112と第2ピペット35の先端との接触位置において、核膜112が穿孔される。制御部46Aは、予め定められた所定回数又は所定時間、微動機構44に第2ピペット35を加振させる。
微動機構44による第2ピペット35への加振を終えた後、ステップST60-14において、制御部46Aは、第2ピペット35をX軸方向に僅かに前進移動させる。ステップST60-16において、画像処理部43Bは、細胞100の画像データを取得する。ステップST60-18において、位置検出部43Dは、取得した画像データに基づいて、核膜112の穿孔位置を画像処理シーケンスにより検出する。穿孔位置は、核膜112の外形と第2ピペット35とが交差する位置である。制御部46Aは、核膜112の穿孔位置の座標を記憶部46Bに記憶させる。ステップST60-18において、核膜112の穿孔位置が検出されなかった場合、画像処理部43Bは、再び核膜112の穿孔位置を画像シーケンスにより再度検出してもよい。
ステップST60-20において、制御部46Aは、核膜112の穿孔操作が成功したか否かを判断する。制御部46Aは、ステップST60-18において検出した核膜112の穿孔位置の座標と第2ピペット35の先端の座標とを比較する。制御部46Aは、第2ピペット35の先端の座標が穿孔位置の座標より核110の内側にない場合、穿孔操作が失敗したと判断し、穿孔操作の失敗情報を記憶部46Bに記憶させる。制御部46Aは、第2ピペット35の先端の座標が穿孔位置の座標より核110の内側にある場合、穿孔操作が成功したと判断し、穿孔操作の成功情報を記憶部46Bに記憶させる。ステップST60-20において、核膜112の穿孔操作が失敗したと判断された場合(ステップST60-20;No)、ステップST60-10に移行する。ステップST60-20において、核膜112の穿孔操作が成功したと判断された場合(ステップST60-20;Yes)、ステップST60を終了し、ステップST80に移行する。
次に、ステップST80において、制御部46Aは、第2マニピュレータ16の注入ポンプ39(図3参照)を駆動させ、細胞100に対するDNA溶液等のインジェクション操作を実行させる。制御部46Aは、例えば、予め設定された時間、注入ポンプ39を駆動させてインジェクション操作を実行させてもよい。画像処理部43Bは、インジェクション操作中に画像処理を実行し、核膜112の膨らみを検出して、DNA溶液等のインジェクションが完了したか判断してもよい。インジェクション操作を実行した後、ステップST82において、制御部46Aは、第2ピペット35を初期位置IPに移動させる。具体的には、第2ピペット35は、X軸方向に移動して細胞100から引き抜かれた後、Y軸方向に移動して初期位置IPに戻る。
次に、ステップST84において、制御部46Aは、インジェクション操作が成功したか否かを判断する。ステップST84において、インジェクションが成功したと判断された場合(ステップST84;Yes)、ステップST86に移行する。ステップST86において、制御部46Aは、試料ステージ22を駆動し、インジェクション操作後の細胞100を、試料保持部材11(図1参照)の成功細胞領域に移動させる。制御部46Aは、第1マニピュレータ14のシリンジポンプ29を停止させ、第1ピペット25の吸引を停止させる。これにより、第1ピペット25の内部が陽圧となり、第1ピペット25は、細胞100の保持を解除する。細胞100は、成功細胞領域に載置される。制御部46Aは、再度試料ステージ22を駆動し、未処理の細胞100が配置される試料保持部材11の未処理細胞領域の近傍に第1ピペット25の先端を移動させる。ステップST84において、インジェクションが失敗したと判断された場合(ステップST84;No)、ステップST88に移行する。ステップST88において、制御部46Aは、試料ステージ22を駆動し、インジェクション操作後の細胞100を、試料保持部材11の失敗細胞領域に移動させる。制御部46Aは、第1マニピュレータ14のシリンジポンプ29を停止させ、第1ピペット25の吸引を停止させる。これにより、第1ピペット25の内部が陽圧となり、第1ピペット25は、細胞100の保持を解除する。細胞100は、成功細胞領域に載置される。制御部46Aは、再度試料ステージ22を駆動し、未処理の細胞100が配置される未処理細胞領域の近傍に第1ピペット25の先端を移動させる。
ステップST86及びステップST88の後、ステップST90において、制御部46Aは、操作実行回数Nのカウンタ値を1つ増やして、N=N+1としてコントローラ43の記憶部46Bに記憶させる。ステップST92において、制御部46Aは、操作実行回数Nが操作終了回数Neに達したか否かを判断する。ステップST92において、操作実行回数Nが操作終了回数Neよりも小さいと判断された場合(ステップST92;No)、ステップST14に戻って別の細胞100に対する保持操作、細胞100及び核小体114の検出操作、核膜112内へのインジェクション操作、細胞100の載置操作を繰り返し実行する。ステップST92において、操作実行回数Nが操作終了回数Ne以上と判断された場合(ステップST92;Yes)、予め設定された個数の細胞100に対する操作が終了し、一連の操作を終了する。
カメラ18の撮像画像は、焦点位置におけるX-Y平面を撮像したものであるので、第2ピペット35の先端と核小体114とのZ方向の位置が重ならない可能性がある。この場合、第2ピペット35の先端が核小体114の近傍に差し込まれず、インジェクションは失敗することが想定される。本実施形態においては、インジェクションが失敗した場合(ステップST84;No)、保持中の細胞100を失敗細胞領域に移動させて、失敗した細胞100への操作を中止するが、例えば、未処理細胞領域に移動させて、ステップST14に戻ってもよい。例えば、ステップST16において、同じ細胞100の姿勢を変更して保持してもよいし、違う細胞100を保持してもよい。インジェクションを失敗した細胞100について、操作者が判断してもよいし、予め設定した条件に基づいて制御部46Aが判断してもよい。
以上説明したように、本実施形態のマニピュレーションシステム10は、微小対象物が載置される試料ステージ22と、微小対象物を保持するための第1ピペット25を備える第1マニピュレータ14と、第1ピペット25に保持された微小対象物を操作するための第2ピペット35を備える第2マニピュレータ16と、第2ピペット35を軸方向に移動させるための微動機構44と、試料ステージ22、第1ピペット25、第2ピペット35及び微動機構44を制御し、第2ピペット35の先端を微小対象物に押し当てた状態で、微動機構44に第2ピペット35を加振させ、且つ、加振後に微小対象物が穿孔されたか否かを判定するコントローラ43と、を備える。
これによれば、微動機構44が第2ピペット35を挿入方向に加振させることによって穿孔するため、第2ピペット35の先端が単に突き刺しただけでは微小対象物に刺さらない太さのものであっても穿孔できる。また、微小対象物が確実に穿孔された状態で操作実行位置IJまで第2ピペット35を挿入することができる。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、操作時の微小対象物への損傷を抑制しつつ、効率よくかつ好適に操作することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10において、微動機構44は、圧電素子92を含む。このようなマニピュレーションシステム10によれば、所定の周期の周波数に基づいて圧電素子92に直接電圧を印加することによって、第2ピペット35を軸方向に振動させることができる。圧電素子92に直接電圧を印加することによって、第2ピペット35の振動をより好適に制御することができる。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、操作時の微小対象物への損傷を抑制しつつ、効率よくかつ好適に穿孔することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10において、コントローラ43は、第2ピペット35の加振後に、第2ピペット35を挿入方向に所定距離を移動させることによって微小対象物が穿孔されたか否かを判定する。このようなマニピュレーションシステム10によれば、第2ピペット35の先端における微小対象物の挙動を確認することによって、容易に微小対象物が穿孔されたか否かを判定することができる。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、操作時の微小対象物への損傷を抑制しつつ、効率よくかつ好適に操作することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10において、微小対象物は、細胞100である。このようなマニピュレーションシステム10によれば、微動機構44が第2ピペット35を挿入方向に加振させることによって穿孔するため、第2ピペット35の先端が単に突き刺しただけでは細胞100に刺さらない太さのものであっても穿孔できる。また、細胞100が確実に穿孔された状態で操作実行位置IJまで第2ピペット35を挿入することができる。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、操作時の細胞100への損傷を抑制しつつ、効率よくかつ好適に操作することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10において、コントローラ43は、第2ピペット35の先端を細胞100の透明帯102に押し当てた状態で、微動機構44に第2ピペット35を加振させ、且つ、加振後に透明帯102が穿孔されたか否かを判定する。このようなマニピュレーションシステム10によれば、微動機構44が第2ピペット35を挿入方向に加振させることによって穿孔するため、第2ピペット35の先端が単に突き刺しただけでは透明帯102に刺さらない太さのものであっても穿孔できる。また、透明帯102が確実に穿孔された状態で操作実行位置IJまで第2ピペット35を挿入することができる。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、操作時の細胞100への損傷を抑制しつつ、効率よくかつ好適に操作することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10は、細胞100を撮像する撮像部(顕微鏡ユニット12)を備える。本実施形態のマニピュレーションシステム10において、コントローラ43は、撮像部の画像データに基づいて第2ピペット35の先端を透明帯102に接触させる透明帯接触位置P1を決定する。このようなマニピュレーションシステム10によれば、撮像された画像データに基づいて、透明帯接触位置P1を決定するため、操作者の熟練度及び技術によらず、効率よくかつ好適に透明帯102を穿孔することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10において、コントローラ43は、第2ピペット35の先端を細胞100の細胞膜104に押し当てた状態で、微動機構44に第2ピペット35を加振させ、且つ、加振後に細胞膜104が穿孔されたか否かを判定する。このようなマニピュレーションシステム10によれば、微動機構44が第2ピペット35を挿入方向に加振させることによって穿孔するため、第2ピペット35の先端が単に突き刺しただけでは細胞膜104に刺さらない太さのものであっても穿孔できる。また、細胞膜104が確実に穿孔された状態で操作実行位置IJまで第2ピペット35を挿入することができる。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、操作時の細胞100への損傷を抑制しつつ、効率よくかつ好適に操作することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10は、細胞100を撮像する撮像部(顕微鏡ユニット12)を備える。本実施形態のマニピュレーションシステム10において、コントローラ43は、撮像部の画像データに基づいて第2ピペット35の先端を細胞膜104に接触させる細胞膜接触位置P2を決定する。このようなマニピュレーションシステム10によれば、撮像された画像データに基づいて、細胞膜接触位置P2を決定するため、操作者の熟練度及び技術によらず、効率よくかつ好適に細胞膜104を穿孔することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10において、コントローラ43は、第2ピペット35の先端を細胞100の核膜112に押し当てた状態で、微動機構44に第2ピペット35を加振させ、且つ、加振後に核膜112が穿孔されたか否かを判定する。このようなマニピュレーションシステム10によれば、微動機構44が第2ピペット35を挿入方向に加振させることによって穿孔するため、第2ピペット35の先端が単に突き刺しただけでは核膜112に刺さらない太さのものであっても穿孔できる。また、核膜112が確実に穿孔された状態で操作実行位置IJまで第2ピペット35を挿入することができる。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、操作時の細胞100への損傷を抑制しつつ、効率よくかつ好適に操作することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10は、細胞100を撮像する撮像部(顕微鏡ユニット12)を備える。本実施形態のマニピュレーションシステム10において、コントローラ43は、撮像部の画像データに基づいて第2ピペット35の先端を核膜112に接触させる核膜接触位置P3を決定する。このようなマニピュレーションシステム10によれば、撮像された画像データに基づいて、核膜接触位置P3を決定するため、操作者の熟練度及び技術によらず、効率よくかつ好適に核膜112を穿孔することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10は、細胞100を撮像する撮像部(顕微鏡ユニット12)を備える。本実施形態のマニピュレーションシステム10において、コントローラ43は、撮像部の画像データに基づいて細胞100の核小体114の位置を検出する。このようなマニピュレーションシステム10によれば、撮像された画像データに基づいて、細胞100の核小体114の位置を検出するため、操作者の熟練度及び技術によらず、効率よくかつ好適に核小体114を検出することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10において、コントローラ43は、核小体114の位置に基づいて所定の操作実行位置IJを決定する。このようなマニピュレーションシステム10によれば、撮像された画像データから検出された核小体114の位置に基づいて、操作実行位置IJを決定するため、操作者の熟練度及び技術によらず、効率よくかつ好適に細胞100を操作することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10において、操作実行位置IJは、核小体114の外側である。このようなマニピュレーションシステム10によれば、操作実行位置IJを核小体114の外部に設定することによって、第2ピペット35の挿入時に第2ピペット35の先端が核小体114に触れることなくインジェクション操作をすることが可能である。したがって、インジェクション操作において、細胞100への損傷を抑制できる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10において、操作実行位置IJは、核小体114の中心C2からオフセットされた位置である。このようなマニピュレーションシステム10によれば、第2ピペット35の挿入時に第2ピペット35の先端が核小体114を損傷させることを抑制できる。したがって、インジェクション操作において、細胞100への損傷を抑制できる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10において、核小体114の中心C2と操作実行位置IJとの第2ピペット35の挿入方向に直交する交差方向の距離は、核小体114の半径rより大きい。このようなマニピュレーションシステム10によれば、操作実行位置IJを核小体114の外部に設定できるので、第2ピペット35の挿入時に第2ピペット35の先端が核小体114に触れることなくインジェクション操作をすることが可能である。したがって、インジェクション操作において、細胞100への損傷を抑制できる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10において、コントローラ43は、撮像部の画像データ及び操作実行位置IJに基づいて所定の挿入開始位置P0を決定する。このようなマニピュレーションシステム10によれば、撮像された画像データに基づいて、挿入開始位置P0を決定するため、操作者の熟練度及び技術によらず、効率よくかつ好適に細胞100を操作することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10の駆動方法は、細胞100が載置される試料ステージ22と、細胞100を保持するための第1ピペット25を備える第1マニピュレータ14と、第1ピペット25に保持された細胞100を操作するための第2ピペット35を備える第2マニピュレータ16と、第2ピペット35を軸方向に移動させるための微動機構44と、を備えるマニピュレーションシステム10の駆動方法であって、第2ピペット35の先端を細胞100の所定の挿入開始位置P0に移動させるステップST32と、第2ピペット35の先端を、細胞100の透明帯102に押し当てるステップST40-2と、微動機構44によって第2ピペット35を加振させるステップST40-12と、第2ピペット35を加振させた後に透明帯102が穿孔されたか否かを判定するステップST40-20と、第2ピペット35の先端を、細胞100の細胞膜104に押し当てるステップST50-2と、微動機構44によって第2ピペット35を加振させるステップST50-12と、第2ピペット35を加振させた後に細胞膜104が穿孔されたか否かを判定するステップST50-20と、第2ピペット35の先端を、細胞100の核膜112に押し当てるステップST60-2と、微動機構44によって第2ピペット35を加振させるステップST60-12と、第2ピペット35を加振させた後に核膜112が穿孔されたか否かを判定するステップST60-20と、を含む。
これによれば、微動機構44が第2ピペット35を挿入方向に加振させることによって穿孔するため、第2ピペット35の先端が単に突き刺しただけでは透明帯102、細胞膜104及び核膜112に刺さらない太さのものであっても穿孔できる。また、透明帯102、細胞膜104及び核膜112を確実に穿孔されたか否かを確認することができる。すなわち、透明帯102、細胞膜104及び核膜112が確実に穿孔された状態で操作実行位置IJまで第2ピペット35を挿入することができる。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、操作時の細胞100への損傷を抑制しつつ、効率よくかつ好適に操作することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のマニピュレーションシステム10の他の駆動方法について説明する。図10は、第2実施形態のマニピュレーションシステムの動作の一例を示すフローチャート図である。図11は、細胞膜及び核膜の穿孔動作の一例を示すフローチャート図である。図12は、第2実施形態のマニピュレーションシステムの動作を説明するための説明図である。第2実施形態のマニピュレーションシステム10の動作において、第1実施形態のマニピュレーションシステム10と同一の動作については説明を省略し、異なる動作について説明する。第2実施形態のマニピュレーションシステム10の動作は、第1実施形態のマニピュレーションシステム10の動作と比較して、ステップST50、ステップST60の代わりに、ステップST70を含み、ステップST40を終了すると、ステップST70に移行する。
ステップST70において、第2ピペット35は、細胞膜104及び核膜112を穿孔する。図11に示すように、ステップST70-2において、制御部46Aは、第2ピペット35の先端を細胞膜接触位置P2に移動させる。透明帯接触位置P1と、細胞膜接触位置P2とは、Y座標が同一なので、第2ピペット35は、X軸方向に平行に移動する。第2ピペット35の先端は、操作実行位置IJに向かって細胞膜104に僅かに押し当てられる。細胞膜104は、高弾性であるため、第2ピペット35の先端が押し当てられることによって、穿孔されず、微小に変形する。
次に、ステップST70-4において、制御部46Aは、第2ピペット35の先端を核膜接触位置P3に移動させる。細胞膜接触位置P2と、核膜接触位置P3とは、Y座標が同一なので、第2ピペット35は、X軸方向に平行に移動する。細胞膜104は、高弾性であるため、第2ピペット35の先端に押し込まれることによって、穿孔されず、変形する。第2ピペット35の先端は、操作実行位置IJに向かって細胞膜104を介して核膜112に僅かに押し当てられる。核膜112は、高弾性であるため、第2ピペット35の先端が押し当てられることによって、穿孔されず、微小に変形する。
ステップST70-6において、画像処理部43Bは、細胞100の画像データを取得する。ステップST70-8において、位置検出部43Dは、取得した画像データに基づいて、核膜112と第2ピペット35の先端との接触位置を画像処理シーケンスにより検出する。制御部46Aは、核膜112と第2ピペット35の先端との接触位置の座標を記憶部46Bに記憶させる。ステップST70-8において、核膜112と第2ピペット35の先端との接触位置が検出されなかった場合、画像処理部43Bは、再び核膜112と第2ピペット35の先端との接触位置を画像シーケンスにより再度検出してもよい。
ステップST70-10において、位置検出部43Dは、核膜112と第2ピペット35の先端とが細胞膜104を介して接触しているか否かを判断する。ステップST70-10において、核膜112と第2ピペット35の先端とが接触していないと判断された場合(ステップST70-10;No)、ステップST70-12に移行する。ステップST70-10において、核膜112と第2ピペット35の先端とが接触していると判断された場合(ステップST70-10;Yes)、ステップST70-14に移行する。
ステップST70-12において、制御部46Aは、第2ピペット35の先端を、細胞膜104を介して核膜112に接触するように移動させる。制御部46Aは、予め設定された所定のプログラムに従って第2ピペット35を移動させる。第2ピペット35を移動させた後、ステップST70-6に戻り、画像処理部43Bが細胞100の画像データを再度取得する。
ステップST70-6からステップST70-12は、省略してもよい。すなわち、ステップST70-4において、第2ピペット35の先端が核膜接触位置P3に移動したことによって、核膜112と第2ピペット35の先端とが接触したと見做してもよい。この場合、ステップST30において、核膜接触位置P3を決定した後、制御部46Aは、核膜接触位置P3を、核膜112と第2ピペット35の先端との接触位置の座標として記憶部46Bに記憶させておく。
ステップST70-14において、制御部46Aは、微動機構44を駆動する。制御部46Aは、微動機構44に第2ピペット35を加振させる。第2ピペット35の振動によって、細胞膜104及び核膜112と第2ピペット35の先端との接触位置において、細胞膜104及び核膜112が穿孔される。制御部46Aは、予め定められた所定回数又は所定時間、微動機構44に第2ピペット35を加振させる。
微動機構44による第2ピペット35への加振を終えた後、ステップST70-16において、制御部46Aは、第2ピペット35をX軸方向に僅かに前進移動させる。ステップST70-18において、画像処理部43Bは、細胞100の画像データを取得する。ステップST70-20において、位置検出部43Dは、取得した画像データに基づいて、核膜112の穿孔位置を画像処理シーケンスにより検出する。穿孔位置は、核膜112の外形と第2ピペット35とが交差する位置である。制御部46Aは、核膜112の穿孔位置の座標を記憶部46Bに記憶させる。ステップST70-20において、核膜112の穿孔位置が検出されなかった場合、画像処理部43Bは、再び核膜112の穿孔位置を画像シーケンスにより再度検出してもよい。
ステップST70-22において、制御部46Aは、細胞膜104及び核膜112の穿孔操作が成功したか否かを判断する。制御部46Aは、ステップST70-20において検出した核膜112の穿孔位置の座標と第2ピペット35の先端の座標とを比較する。制御部46Aは、第2ピペット35の先端の座標が穿孔位置の座標より核110の内側にない場合、穿孔操作が失敗したと判断し、穿孔操作の失敗情報を記憶部46Bに記憶させる。制御部46Aは、第2ピペット35の先端の座標が穿孔位置の座標より核110の内側にある場合、穿孔操作が成功したと判断し、穿孔操作の成功情報を記憶部46Bに記憶させる。ステップST70-22において、細胞膜104及び核膜112の穿孔操作が失敗したと判断された場合(ステップST70-22;No)、ステップST70-12に移行する。ステップST70-22において、細胞膜104及び核膜112の穿孔操作が成功したと判断された場合(ステップST70-22;Yes)、ステップST70を終了し、ステップST80に移行する。
以上説明したように、本実施形態のマニピュレーションシステム10は、コントローラ43は、第2ピペット35の先端によって細胞100の細胞膜104を変形させて細胞100の核膜112に接触させた状態で、微動機構44に第2ピペット35を加振させ、且つ、加振後に細胞膜104及び核膜112が穿孔されたか否かを判定する。このようなマニピュレーションシステム10によれば、微動機構44が第2ピペット35を挿入方向に加振させることによって穿孔するため、第2ピペット35の先端が単に突き刺しただけでは細胞100に刺さらない太さのものであっても穿孔できる。また、細胞100が確実に穿孔された状態で操作実行位置IJまで第2ピペット35を挿入することができる。また、細胞膜104と核膜112とを同時に穿孔することができる。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、操作時の細胞100への損傷を抑制しつつ、効率よくかつ好適に操作することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10の駆動方法は、細胞100が載置される試料ステージ22と、細胞100を保持するための第1ピペット25を備える第1マニピュレータ14と、第1ピペット25に保持された細胞100を操作するための第2ピペット35を備える第2マニピュレータ16と、第2ピペット35を軸方向に移動させるための微動機構44と、備えるマニピュレーションシステム10の駆動方法であって、第2ピペット35の先端を細胞100の所定の挿入開始位置P0に移動させるステップST32と、第2ピペット35の先端を、細胞100の透明帯102に押し当てるステップST40-2と、微動機構44によって第2ピペット35を加振させるステップST40-12と、第2ピペット35を加振させた後に透明帯102が穿孔されたか否かを判定するステップST40-20と、第2ピペット35の先端を、細胞100の細胞膜104に押し当てるステップST70-2と、第2ピペット35の先端を、挿入方向に移動させることによって変形させた細胞膜104を細胞100の核膜112に接触させるステップST70-4と、微動機構44によって第2ピペット35を加振させるステップST70-14と、第2ピペット35を加振させた後に細胞膜104及び核膜112が穿孔されたか否かを判定するステップST70-22と、を含む。
これによれば、微動機構44が第2ピペット35を挿入方向に加振させることによって穿孔するため、第2ピペット35の先端が単に突き刺しただけでは透明帯102、細胞膜104及び核膜112に刺さらない太さのものであっても穿孔できる。また、透明帯102、細胞膜104及び核膜112を確実に穿孔されたか否かを確認することができる。すなわち、透明帯102、細胞膜104及び核膜112が確実に穿孔された状態で操作実行位置IJまで第2ピペット35を挿入することができる。また、細胞膜104と核膜112とを同時に穿孔することができる。したがって、操作者の熟練度及び技術によらず、操作時の細胞100への損傷を抑制しつつ、効率よくかつ好適に操作することができる。
本実施形態のマニピュレーションシステム10及びマニピュレーションシステム10の駆動方法は適宜変更してもよい。例えば、第1ピペット25、第2ピペット35等の形状等は、微小対象物の種類や、微小対象物に対する操作に応じて適宜変更することが好ましい。微小対象物の保持操作、所定の操作対象位置の検出操作、インジェクション操作、微小対象物の載置操作の各操作において、適宜手順の一部を省略してもよく、また、手順を置換して実行してもよい。