JP7187935B2 - 積層フィルム及びその製造方法、並びに包装容器及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、積層フィルム及びその製造方法、並びに包装容器及びその製造方法に関する。
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料としては、一般に、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や性質を保持するために、水蒸気、酸素、その他の内容物を変質させる気体の進入を遮断するガスバリア性を有する積層フィルムが用いられている。ガスバリア性を有する積層フィルムとしては、例えば、ポリエステルテルフィルム等の基材フィルムの外面に、金属や金属酸化物の蒸着層からなるバリア層が形成され、該バリア層の内面に接着層を介してシーラント層が積層された積層フィルムが知られている(特許文献1)。
ところで、積層フィルムには、高温の殺菌処理を行ってもデラミネーション(剥離)を起こさない高温耐性(レトルト耐性)を有していることが求められる。また、特に内容物が食酢、オイル等の液体調味料、浴用剤(アルコール含有)や湿布薬等、強い浸透力をもつ揮発性物質を含むものであっても、デラミネーションを起こさない内容物耐性を有することも求められる。
積層フィルムにおいては、レトルト加熱殺菌用包材等の耐性包材の用途であっても、接着層を形成する接着剤として一般的にウレタン2液硬化タイプのドライラミネート用接着剤が用いられる。しかし、ドライラミネート用接着剤を用いる場合、充分なレトルト耐性及び内容物耐性を得るためには長時間の接着剤養生時間を要するため、短時間での製造は困難である。また、製造時に積層フィルムを巻き芯に巻き取る場合には、養生時に巻き芯近くのフィルムが熱によって巻き締まって負荷がかかることで、フィルムに破損が生じることもある。
一方、ガスバリア性のフィルム層と熱可塑性樹脂層とを溶融した接着性樹脂を介して重ね、続いて加熱ロールで押圧して積層する方法も知られており、この接着性樹脂としてマレイン酸グラフト変性ポリプロピレン樹脂を用いることも提案されている(例えば特許文献2)。しかしながら、この方法では、前記加熱ロールの温度を160℃以上の高温としなければ、十分な接着力が得られなかった。このような高温のロールで加熱した場合には、ドライラミネート用接着剤を用いた場合と同様にフィルムに熱負荷がかかり、フィルムに破損が生じることがあった。
特開2011-46006号公報 特公平5-21955号公報
本発明は以上のような技術的事情に応じてなされたもので、ガスバリアフィルム層と熱可塑性樹脂層とを溶融した接着性樹脂を介して重ね、加熱ロールで押圧して積層した積層フィルムにおいて、その加熱ロールの温度を高温にする必要がなく、しかも、高い接着強度で積層することができる積層フィルムを提供することを目的とする。
すなわち、請求項1に記載の発明は、ガスバリアフィルム層と熱可塑性樹脂層とを溶融
した接着性樹脂を介して積層した積層フィルムにおいて、
前記接着性樹脂が、マレイン酸グラフト変性ポリプロピレンを主成分とする樹脂であり、前記マレイン酸グラフト変性ポリプロピレンはポリプロピレンとして、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、又はランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体(αオレフィンは、エチレン、1-ブテン)のいずれかのポリプロピレンを無水マレイン酸によりグラフト変性したポリプロピレンであり、
このマレイン酸グラフト変性ポリプロピレンについて示差走査熱量分析(DSC)を行ったとき3つ以上の融点ピークを示し、かつ、140℃および155℃の融点ピークを有し、これら3つ以上の融点ピークのうち高温側に位置する2つの融点ピークが10℃以上離れた位置にあると共に、その融点ピークの裾野が互いに重なり合って連続していることを特徴とする積層フィルムである。
次に、請求項に記載の発明は、請求項1に記載の積層フィルムにおいて、
前記ガスバリアフィルム層が、酸化金属の蒸着層を、基材フィルムの前記接着性樹脂層側に積層して構成されていることを特徴とする積層フィルムである。
次に、請求項に記載の発明は、請求項に記載の積層フィルムにおいて、
前記蒸着層の上にガスバリア皮膜層が積層して構成されており、
前記ガスバリア皮膜層が珪素系ガスバリア性複合構造物で構成されていることを特徴とする積層フィルムである。
次に、請求項に記載の発明は、請求項に記載の積層フィルムにおいて、
前記珪素系ガスバリア性複合構造物が、次の化合物1~化合物3が反応して形成されたものであることを特徴とする積層フィルムである。
化合物1:一般式Si(OR(RはCH,C,またはCOCHを表す)で表されるケイ素化合物又はこれらの加水分解物。
化合物2:一般式(RSi(OR(Rは有機官能基、RはCH,C,またはCOCHを表す)で表されるケイ素化合物又はこれらの加水分解物。
化合物3:水溶性高分子。
次に、請求項に記載の発明は 請求項2~4のいずれかに記載の積層フィルムにおい
て、
前記基材フィルムと前記蒸着層との間にプライマー層が配置されており、
このプライマー層が次の化合物4~化合物6が反応して形成された珪素系複合構造物であることを特徴とする積層フィルムである。
化合物4:一般式RSi(OR (R:アルキル基、ビニル基、イソシアネート基、グリシドキシ基又はエポキシ基を有するアルキル基、R:アルキル基を表す)で
表せる3官能オルガノシランあるいはその加水分解物。
化合物5:アクリルポリオール。
化合物6:イソシアネート化合物。
次に、請求項に記載の発明は、請求項2~5のいずれかに記載の積層フィルムにおい
て、
前記基材フィルムの蒸着層形成面がプラズマ処理されていることを特徴とする積層フィ
ルムである。
次に、請求項に記載の発明は、請求項1に記載の積層フィルムにおいて、
前記ガスバリアフィルム層が、ポリカルボン酸系重合体を含有するガスバリア皮膜層を、基材フィルムの前記接着性樹脂層側に積層して構成されていることを特徴とする積層フィルムである。
次に、請求項に記載の発明は、請求項1に記載の積層フィルムにおいて、
前記ガスバリアフィルム層が、多価金属の化合物とリン化合物とが反応して形成されたリン系ガスバリア性複合構造物を含有するガスバリア皮膜層を、基材フィルムの前記接着性樹脂層側に積層して構成されていることを特徴とする積層フィルムである。
次に、請求項に記載の発明は、請求項1~のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法である。
次に、請求項1に記載の発明は、請求項1~のいずれかに記載の積層フィルムを製袋してなる包装容器である。
次に、請求項1に記載の発明は、請求項1に記載の包装容器の製造方法である。
本発明によれば、加熱ロールの温度を高温にする必要がなく、しかも、高い接着強度で接着した積層フィルムを製造することが可能となる。
図1は本発明の積層フィルムの第1の具体例を示した断面図である。 図2は本発明の積層フィルムの第2の具体例を示した断面図である。 図3は本発明の積層フィルムの第3の具体例を示した断面図である。 図4は本発明の積層フィルムの第4の具体例を示した断面図である。 図5は本発明の積層フィルムの第5の具体例を示した断面図である。 図6はホロアノード・プラズマ処理装置の一例を示した概略構成図である。 図7は本発明の具体例に係るマレイン酸グラフト変性ポリプロピレンを示差走査熱量分析(DSC)で測定した測定値を示したグラフ図である。
本発明の積層フィルムは、ガスバリアフィルム層、接着性樹脂層及び熱可塑性樹脂層をこの順に積層したものである。ガスバリアフィルム層はガスバリア性を有するものであれば、任意のフィルムでよいが、5種類の例を挙げて、以下、説明する。図1~図5は、この5種類のガスバリアフィルム層10A~10Eを使用した積層フィルムA~Eの例を示す断面図である。
[積層フィルムA]
積層フィルムAはガスバリアフィルム層10Aを使用した例で、このガスバリアフィルム層10Aは、基材フィルム11に酸化金属の蒸着層12を積層して構成されている。そして、その蒸着層11側に接着性樹脂層20と熱可塑性樹脂層30とをこの順に積層して積層フィルムAとしている。
(基材フィルム11)
基材フィルム11としては、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムを形成する樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン-2、6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体等のポリオレフィン系樹脂
;ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-12等のポリアミド系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の水酸基含有重合体等が挙げられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレートやポリアミド系樹脂が好ましく用いられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
基材フィルム11は、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。なかでも、機械的強度や寸法安定性に優れる点から、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが好ましく、二軸延伸フィルムがより好ましい。
基材フィルム11は、1枚の樹脂フィルムからなる単層であってもよく、2枚以上の樹脂フィルムが積層された複層であってもよい。
基材フィルム11の厚さは、特に限定されず、例えば3~200μmとすることができ、6~30μmが好ましい。
なお、酸化金属蒸着層12の形成に先立ち、基材フィルム11の蒸着層形成面にプラズマ処理を施すことにより、基材フィルム11と酸化金属蒸着層12との密着性を向上させることができる。
プラズマ処理としては、リアクティブイオンエッチング(反応性イオンエッチング、RIE)モードのプラズマ処理が好ましい。具体的には、例えば、図6に例示したホロアノード・プラズマ処理装置100を用いたRIE処理が挙げられる。
ホロアノード・プラズマ処理装置100は、陽極としての処理ロール101を備える。陰極102、及び陰極102の両端に配置された遮蔽版103は、処理ロール101の外部に処理ロール101と対向するように配置されている。陰極102は、処理ロール101側が開口したボックス形をなしている。遮蔽版103は、処理ロール101に沿った曲面状に形成されている。
ガス導入ノズル104は、陰極102の上方に配置されている。ガス導入ノズル104は、陰極102及び遮蔽版103と処理ロール101との間の隙間105にガスを導入する。マッチングボックス106は、陰極102の背面に配置されている。
ホロアノード・プラズマ処理装置100で基材フィルムをRIE処理するには、以下のようにする。
基材フィルム107を処理ロール101に沿って搬送しながら、マッチングボックス106から陰極102に電圧を印加する。ガスが導入される隙間105にプラズマを発生して、陽極である処理ロール101側にプラズマ中のラジカルを引き寄せることによって、基材フィルム107の表面にラジカルを作用させる。
さらに、陽極として処理ロール101の面積を対極となる基材フィルム107の面積よりも大きくすることによって、基材フィルム107上に多くの自己バイアスを発生させることができる。この大きな自己バイアスにより、プラズマ中のイオン108を基材フィルム107に引き寄せるスパッタ作用(物理的作用)が働く。これにより、RIE処理後の基材フィルム11の表面に酸化金属蒸着層12が形成された際に、基材フィルム11と酸化金属蒸着層12との間の密着性が向上する。
(酸化金属蒸着層12)
酸化金属蒸着層12は、金属酸化物の蒸着により形成される層である。金属酸化物としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム等が挙げられ、酸化アルミニウムが好ましい。
酸化金属蒸着層12の形成方法としては、特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。
酸化金属蒸着層12の厚さは、100~500Åが好ましく、150~300Åがより好ましい。酸化金属蒸着層12の厚さが下限値以上であれば、バリア性が確保される。酸化金属蒸着層12の厚さが上限値以下であれば、透明性が確保される。
(接着性樹脂層20)
接着性樹脂層20は、マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(以下、変性PPという。)を主成分とする層である。なお、マレイン酸グラフト変性ポリプロピレンは、ポリプロピレンを無水マレイン酸によりグラフト変性したポリプロピレンである。ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、又はランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。αオレフィンとしては、エチレン、1-ブテン等が挙げられる。
ただし、この変性PPは、これについて示差走査熱量分析(DSC)を行ったとき3つ以上の融点ピークを示し、かつ、これら3つ以上の融点ピークのうち高温側に位置する2つの融点ピークが10℃以上離れた位置にあると共に、その融点ピークの裾野が互いに重なり合って連続している必要がある。中でも、裾野が互いに重なり合って連続している2つの融点ピークが、いずれも、120℃以上の温度にあることが望ましい。このように3つ以上の融点ピークを示し、かつ、これら3つ以上の融点ピークのうち高温側に位置する2つの融点ピークが10℃以上離れた位置にあると共に、その融点ピークの裾野が互いに重なり合って連続している変性PPは、それぞれの融点ピークを示す3種類以上のマレイン酸グラフト変性ポリプロピレンを混合して製造することができる。例えば、次の3種類のマレイン酸グラフト変性ポリプロピレンの混合物である。こうして得られた混合物の融点をDSCで測定した場合、この混合物は、104℃、140℃及び155℃の融点ピークを示す(図7参照)。そして、この図7から分かるように、140℃に位置する融点ピークと155℃に位置する融点ピークとは、その裾野が互いに重なり合って連続している。
・104℃の融点ピークを示すマレイン酸グラフト変性ポリプロピレン。
・140℃の融点ピークを示すマレイン酸グラフト変性ポリプロピレン。
・155℃の融点ピークを示すマレイン酸グラフト変性ポリプロピレン。
そして、前記変性PPを主成分とする接着性樹脂を加熱溶融して押し出し、この接着性樹脂が接着力を有している間にその両面にガスバリアフィルム層10と熱可塑性樹脂層30とを重ね、加熱ロールによって押圧することにより、これらを一体的に接着積層することができる。この際、加熱ロールの温度が高いほど強い接着力で接着するが、その温度が高い場合にはガスバリアフィルム層10に熱負荷がかかり、ガスバリアフィルム層10が損傷を受けることがある。加熱ロールの温度は140℃以上であれば十分であり、高くても160度以下でよい。
このような積層方法としては、例えば、ガスバリアフィルム層10の上に前記接着性樹脂を溶融押し出しコーティングした後、この接着性樹脂が接着力を有する間に熱可塑性樹脂層30を重ね、加熱ロールによって押圧することにより、この樹脂から成る接着性樹脂層20を介して、ガスバリアフィルム層10と熱可塑性樹脂層30とを接着積層する方法が例示できる。また、熱可塑性樹脂層30の上にシーラントフィルムを積層する場合には
、ガスバリアフィルム層10の上に前記接着性樹脂を溶融押し出しコーティングし、熱可塑性樹脂層30とシーラントフィルムとを重ね、加熱ロールによって押圧することにより、これらガスバリアフィルム層10、接着性樹脂層20、熱可塑性樹脂層30及びシーラントフィルムを一体的に接着積層することができる。
また、前記変性PPを主成分とする樹脂と前記熱可塑性樹脂とを溶融共押し出しして、ガスバリアフィルム層10の上にコーティングした後、加熱ロールによって押圧することにより、接着性樹脂層20を介して、ガスバリアフィルム層10と熱可塑性樹脂層30とを接着積層することも可能である。熱可塑性樹脂層30の上にシーラントフィルムを積層する場合には、ガスバリアフィルム層10の上に前記変性PPを主成分とする樹脂と前記熱可塑性樹脂とを溶融共押し出しし、さらにシーラントフィルムを重ねた後、加熱ロールによって押圧することにより、これらガスバリアフィルム層10、接着性樹脂層20、熱可塑性樹脂層30及びシーラントフィルムを一体的に接着積層することができる。
また、ガスバリアフィルム層10とシーラントフィルムとの間に、前記変性PPを主成分とする樹脂と前記熱可塑性樹脂とを溶融共押し出しし、加熱ロールによって押圧することにより、これらガスバリアフィルム層10、接着性樹脂層20、熱可塑性樹脂層30及びシーラントフィルムを一体的に接着積層することも可能である。
接着性樹脂層20の厚さは、1~20μmが好ましく、1~5μmがより好ましい。接着性樹脂層20の厚さが下限値以上であれば、ガスバリアフィルム層10と熱可塑性樹脂層30との間でデラミネーションが生じることを抑制しやすい。接着性樹脂層20の厚さが上限値以下であれば均一な積層状態が得られる。
(熱可塑性樹脂層30)
熱可塑性樹脂層30を形成する熱可塑性樹脂としては、熱融着性のある樹脂であれば使用できる。熱可塑性樹脂としては、例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂(EP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、及びそれらの金属架橋物等が挙げられる。なかでも、食品包装におけるレトルト殺菌適性等を考慮すると、ポリプロピレン及び耐熱性のLLDPEが好ましい。これら熱可塑性樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂層30の厚さは、目的に応じて適宜設定でき、一般的には15~200μmの範囲である。
なお、包装容器を製袋する際に、この熱可塑性樹脂層30をシーラント層として使用することもできるが、前述のとおり、この熱可塑性樹脂層30の上にシーラントフィルムを積層して使用することも可能である。
(積層フィルムAの製造方法)
積層フィルムAは次の方法で製造することができる。すなわち、まず基材フィルム11に蒸着層12を形成してガスバリアフィルム層10Aを製造する。
次に、接着性樹脂層20を構成して変性PPを主成分とする樹脂を蒸着層12上に溶融押出しコーティングして、接着性樹脂層20を形成した後、この接着性樹脂が接着力を有する間に熱可塑性樹脂層30を重ね、加熱ロールによって押圧すすればよい。なお、接着性樹脂層20と熱可塑性樹脂層30とを溶融共押出しコーティングした後、加熱ロールによって押圧することにより、ガスバリアフィルム層10と熱可塑性樹脂層30とを接着積
層することも可能である。また、熱可塑性樹脂層30の上にシーラントフィルムを積層する場合には、ガスバリアフィルム層10とシーラントフィルムとの間に、前記変性PPを主成分とする樹脂と前記熱可塑性樹脂とを溶融共押し出しし、加熱ロールによって押圧することによって、これらを接着積層することも可能である。いずれの場合にも、加熱ロールの温度は140℃以上160℃未満であることが望ましい。
[積層フィルムB]
積層フィルムBはガスバリアフィルム層としてガスバリアフィルム層10Bを使用した例で、この点を除き、積層フィルムAと同様である。このガスバリアフィルム層10Bでは、酸化金属蒸着層12の上にガスバリア皮膜層13が積層されている。すなわち、ガスバリアフィルム層10Bは、基材フィルム11上に、酸化金属蒸着層12及びガスバリア皮膜層13をこの順に積層した層構成を有しており、接着性樹脂層20はガスバリア皮膜層13の上に積層されている(図2参照)。
この積層フィルムBにおいては、基材フィルム11、酸化金属蒸着層12、接着性樹脂層20及び熱可塑性樹脂層30は、それぞれ、積層フィルムAにおける基材フィルム11、酸化金属蒸着層12、接着性樹脂層20及び熱可塑性樹脂層30と同様であるから、その説明を省略して、ガスバリア皮膜層13について説明する。
(ガスバリア皮膜層13)
ガスバリア皮膜層13はとしては、次の化合物1~化合物3が反応して形成された珪素系ガスバリア性複合構造物を使用することができる。また、この他、イソシアネート成分を配合することができる。
化合物1:一般式Si(OR(RはCH,C,またはCOCHを表す)で表されるケイ素化合物又はこれらの加水分解物。
化合物2:一般式(RSi(OR(Rは有機官能基、RはCH,C,またはCOCHを表す)で表されるケイ素化合物又はこれらの加水分解物。
化合物3:水溶性高分子。
一般式Si(ORで表されるケイ素化合物はテトラアルコキシシランである。例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランである。また、一般式(RSi(ORで表されるケイ素化合物はシランカップリング剤である。例えば、アミンシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤等を使用することができる。また、イソシアネート基やエポキシ基を持つシランカップリング剤であってもよい。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニルアルコール部位をもつ有機ポリマーを例示できる。イソシアネート成分としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
なお、イソシアネート基を有するシランカップリング剤を、イソシアネート化合物とシランカップリング剤の両方を兼ねる化合物として使用してもよい。例えば、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレート(化学式:NCO-RSi(OR)又はその加水分解物である。
ガスバリア皮膜層13を、飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)による測定した場合には、酸化珪素成分、ビニルアルコール成分、イソシアネート成分及びシランカップリング剤成分が検出される。なお、TOF-SIMSとは、表面にイオンを照射した際に発生する2次イオンのマススペクトルを測定し、表面の構成元素や化学構造に関する情報を得ることができる表面分析法である。
ガスバリア皮膜層13には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、隣接する層との密着性、濡れ性、収縮によるクラック発生の抑制を考慮して、コロイダルシリカやスメクタイト等の粘土鉱物、安定化剤、着色剤、粘度調整剤等の公知の添加剤を添加してもよい。
ガスバリア皮膜層13の厚さは、0.01~50μmが好ましい。ガスバリア皮膜層13の厚さが下限値以上であれば、優れたガスバリア性が得られやすい。ガスバリア皮膜層13の厚さが上限値以下であれば、クラックが生じることを抑制しやすい。
ガスバリア皮膜層13の形成方法としては、特に限定されず、例えば、酸化珪素成分等を溶媒中で混合し、酸化金属蒸着層13上に塗工し、乾燥する方法が挙げられる。金属アルコキシドは水系溶媒中では均一分散しにくいため、加水分解して用いてもよい。
ガスバリア皮膜層13の形成方法は、特に限定されない。例えば、各成分を混合した溶液を基材フィルム層11に塗工し、乾燥する方法が挙げられる。
塗工方法としては、特に限定されず、例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。
乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射等、熱をかけて溶媒分子をとばす方法であればよく、これら2つ以上を組み合わせてもよい。
[積層フィルムC]
積層フィルムCはガスバリアフィルム層としてガスバリアフィルム層10Cを使用した例で、この点を除き、積層フィルムAと同様である。このガスバリアフィルム層10Bでは、基材フィルム11と酸化金属蒸着層12との間にプライマー層12cが配置されている。すなわち、ガスバリアフィルム層10Cは、基材フィルム11上に、プライマー層12c、酸化金属蒸着層12及びガスバリア皮膜層13をこの順に積層した層構成を有しており、接着性樹脂層20はガスバリア皮膜層13の上に積層されている(図3参照)。
この積層フィルムCにおいては、基材フィルム11、酸化金属蒸着層12、ガスバリア皮膜層13、接着性樹脂層20及び熱可塑性樹脂層30は、それぞれ、積層フィルムA又は積層フィルムBにおける基材フィルム11、酸化金属蒸着層12、ガスバリア皮膜層13、接着性樹脂層20及び熱可塑性樹脂層30と同様であるから、その説明を省略して、プライマー層12cについて説明する。
(プライマー層12c)
プライマー層12cは、基材フィルム11と酸化金属蒸着層12との密着性を高めるもので、次の化合物4~化合物6が反応して形成された珪素系複合構造物で構成することができる。
化合物4:一般式RSi(OR (R:アルキル基、ビニル基、イソシアネート基、グリシドキシ基又はエポキシ基を有するアルキル基、R:アルキル基を表す)で表せる3官能オルガノシランあるいはその加水分解物。
化合物5:アクリルポリオール。
化合物6:イソシアネート化合物。
3官能オルガノシランとしては、例えば、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピル
トリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、R中にイソシアネート基を有するイソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシ基を有するグリシドオキシトリメトキシシラン、エポキシ基を有するエポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランが特に好ましい。
3官能オルガノシランの加水分解物は、3官能オルガノシランに酸やアルカリ等を直接添加して加水分解を行う方法等、公知の方法で得ることができる。
アクリルポリオールとは、アクリル酸誘導体モノマーを単独重合又は共重合させて得られる高分子化合物、もくしはアクリル酸誘導体モノマー及びその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物のうち、末端に水酸基を有し、イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応するものである。
アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
他のモノマーとしては、例えば、スチレンが挙げられる。
アクリルポリオールとしては、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートから選ばれる1種のアクリル酸誘導体モノマーの単独重合体;前記アクリル酸誘導体とスチレンの共重合体が好ましい。
アクリルポリオールの水酸基価は、イソシアネート化合物との反応性に優れる点から、5~200KOHmg/gが好ましい。
アクリルポリオールと3官能オルガノシランとの質量比は、1/1~100/1が好ましく、2/1~50/1がより好ましい。
イソシアネート化合物は、2以上のイソシアネート基を有し、アクリルポリオールと反応してウレタン結合を形成する化合物であり、基材フィルム11と酸化金属蒸着層13との密着性を高める架橋剤もしくは硬化剤として作用する。
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族系イソシアネート化合物、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサレンジイソシアネート(HMDI)等の脂肪族系イソシアネート化合物、それら芳香族系又は脂肪族系イソシアネート化合物とポリオールとを重合して得られる、イソシアネート基を有する重合体、及びそれらの誘導体等が挙げられる。イソシアネート化合物としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリルポリオールとイソシアネート化合物との配合比としては、アクリルポリオール由来の水酸基の数に対するイソシアネート化合物由来のイソシアネート基の数の比が50倍以下であることが好ましく、イソシアネート基と水酸基が当量であることが特に好ましい。これにより、イソシアネート化合物が少なすぎて硬化不良が生じたり、イソシアネート化合物が多すぎてブロッキングが発生して加工し難くなったりすることを抑制しやすい。
珪素系複合構造物は、3官能オルガノシラン及びその加水分解物からなる群から選ばれる1種以上と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物を溶媒中で反応させることで得られる。
溶媒としては、各成分を溶解及び希釈できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;メチルエチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。溶媒としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。3官能オルガノシラン等を加水分解するために塩酸等の水溶液を用いる場合は、共溶媒として、イソプロピルアルコール等と極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることが好ましい。
複合物を調製する際には、3官能オルガノシランとアクリルポリオールの反応を促進させるために、反応液に触媒を添加してもよい。触媒としては、反応性及び重合安定性の点から、塩化錫(SnCl、SnCl)、オキシ塩化錫(SnOHCl、Sn(OH)Cl)、錫アルコキシド等の錫化合物が好ましい。これらの触媒は、各成分の配合時に直接添加してもよく、またメタノール等の溶媒に溶かして添加してもよい。
触媒の添加量は、3官能オルガノシラン及びその加水分解物の合計量に対して、モル比で1/10~1/10000が好ましく、1/100~1/2000がより好ましい。
また、複合物を含む液の液安定性を向上させるために、金属アルコキシド又はその加水分解物を加えてもよい。
金属アルコキシドとしては、テトラエトキシシラン〔Si(OC〕、トリプロポキシアルミニウム〔Al(OC〕等、一般式:M(OR)(ただし、MはSi、Al、Ti又はZrであり、Rはメチル基、エチル基等のアルキル基である。)で表される化合物が挙げられる。なかでも、水系の溶媒中で比較的安定である点から、テトラエトキシシラン、トリプロポキシアルミニウム、又はそれらの混合物が好ましい。
金属アルコキシドの加水分解物を得る方法は、3官能オルガノシランの加水分解物を得る方法と同様である。金属アルコキシドの加水分解は、3官能オルガノシランの加水分解と同時に行ってもよく、3官能オルガノシランの加水分解とは別に行ってもよい。
3官能オルガノシランと金属アルコキシドとのモル比は、液安定性の点から、10:1~1:10が好ましく、1:1が特に好ましい。
プライマー層12cには、各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤等が挙げられる。
プライマー層12cの形成方法は、特に限定されない。例えば、必要に応じて使用する触媒の存在下で3官能オルガノシランを加水分解した液、又は3官能オルガノシランを金属アルコキシドとともに加水分解した液に、アクリルポリオールやイソシアネート化合物を混合した溶液を基材フィルム11に塗工し、乾燥する方法が挙げられる。また、必要に応じて使用する触媒、金属アルコキシドの存在下、溶媒中で3官能オルガノシランとアクリルポリオールを混合した液、又はさらに加水分解反応を行った液に、イソシアネート化合物を加えた溶液を基材フィルム11に塗工し、乾燥する方法であってもよい。
塗工方法及び乾燥方法としては、特に限定されず、例えば、ガスバリア皮膜層13の形成において挙げた方法と同じ方法が挙げられる。
[積層フィルムD]
積層フィルムDはガスバリアフィルム層としてガスバリアフィルム層10Dを使用した例で、この点を除き、積層フィルムAと同様である。このガスバリアフィルム層10Dはポリカルボン酸系重合体を含有するガスバリア皮膜層14を、基材フィルム11の前記接着性樹脂側に積層して構成されている(図4参照)。
この積層フィルムDにおいては、基材フィルム11、接着性樹脂層20及び熱可塑性樹脂層30は、それぞれ、積層フィルムA~Cにおける基材フィルム11、接着性樹脂層20及び熱可塑性樹脂層30と同様であるから、その説明を省略して、ポリカルボン酸系重合体を含有するガスバリア皮膜層14について説明する。
(ガスバリア皮膜層14)
ガスバリア皮膜層14はポリカルボン酸系重合体を含有する層であり、ポリカルボン酸系重合体を用いることで、基材フィルム11とガスバリア皮膜層14の密着性が向上し、それらの間でデラミネーションが起きることが抑制されやすくなる。なお、ポリカルボン酸系重合体とは、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する重合体をいう。
ポリカルボン酸系重合体としては、例えば、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体;少なくとも2種類のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体;α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類が挙げられる。これらポリカルボン酸系重合体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等が挙げられる。
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、スチレン等が挙げられる。
ポリカルボン酸系重合体が、α、β-モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である場合には、ガスバリア性、耐水性の観点から、α、β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合割合は、60モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、100モル%が特に好ましい。
ポリカルボン酸系重合体が、α、β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる重合体の場合には、当該重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体の重合によって得られる。当該重合体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸から選ばれる少なくとも1種の単量体の重合によって得られる重合体が好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、又はそれらの混合物がより好ましい。
ポリカルボン酸系重合体が酸性多糖類の場合には、モノマー成分としてアルギン酸が好
ましく用いられる。ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は、特に限定されない。ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は、コーティング性の観点から、2,000~10,000,000が好ましく、5,000~1,000,000がより好ましい。
ガスバリア皮膜層14には、ガスバリア性を損なわない範囲で、ポリカルボン酸系重合体に他の重合体が混合されてもよい。例えば、ガスバリア皮膜層14が、ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類の混合物からなるものであってもよい。
ポリアルコール類は、分子内に2個以上の水酸基を有する低分子化合物からアルコール系重合体を含む。ポリアルコール類は、ポリビニルアルコール(PVA)、糖類及び澱粉類を含む。前記分子内に2個以上の水酸基を有する低分子量化合物としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ペンタエリトリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
PVAのケン化度は、95%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。PVAの平均重合度は、300~1500が好ましい。ポリカルボン酸系重合体との相溶性の観点から、ビニルアルコールを主成分とするビニルアルコール-ポリ(メタ)アクリル酸共重合体を、ポリアルコール類として用いることが好ましい。
単糖類、オリゴ糖類及び多糖類が、糖類として使用される。これらの糖類は、特開平7-165942号公報に記載のソルビトール、マンニトール、ズルシトール、キシリトール、エリトリトール等の糖アルコール、糖アルコールの置換体、糖アルコールの誘導体を包含する。好ましい糖類は、水、アルコール、あるいは水とアルコールの混合溶剤に溶解するものである。澱粉類は、前記多糖類に含まれる。澱粉類の具体例は、例えば、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉等の生澱粉(未変性澱粉)、各種の加工澱粉が挙げられる。加工澱粉の具体例は、例えば、物理的変性澱粉、酵素変性澱粉、化学変性澱粉、澱粉類にモノマーをグラフト変性したグラフト澱粉が挙げられる。これらの澱粉類のなかでも、馬鈴薯澱粉が酸で加水分解された水可溶性加工澱粉、澱粉の末端基(アルデヒド基)が水酸基に置換された糖アルコールが好ましい。澱粉類は、含水物であってもよい。これらの澱粉類は、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類との混合比(質量比)は、高湿度条件下でも優れた酸素ガスバリア性を有する包装容器を得るという観点から、99:1~20:80が好ましく、95:5~40:60がより好ましく、95:5~50:50がさらに好ましい。
ガスバリア皮膜層14は、例えば、ポリカルボン酸系重合体と溶媒を含む塗液1、又は、ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類と溶媒を含む塗液2を、基材フィルム11上に塗工し、溶媒を蒸発乾燥させることで形成される。また、ポリカルボン酸系重合体を形成するモノマーを含む塗液を基材フィルム11上に塗工し、紫外線又は電子線を照射して重合を行ってポリカルボン酸系重合体とし、ガスバリア皮膜層14を形成する方法、前記モノマーを基材フィルム上に蒸着すると同時に電子線を照射して重合を行い、ポリカルボン酸系重合体としてガスバリア皮膜層14を形成する方法を用いてもよい。
塗液1は、ポリカルボン酸系重合体が溶媒に溶解又は分散されることで調製される。溶媒としては、ポリカルボン酸系重合体を均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。溶媒の具体例は、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセト
アミド等が挙げられる。溶媒としては、非水系溶媒又は非水系溶媒と水の混合物が好ましい。塗液1中のポリカルボン酸系重合体の濃度は、0.1~50質量%が好ましい。
塗液2を得る方法は特に限定されない。塗液2を得る方法の具体例としては、各成分を溶媒に溶解する方法、各成分の溶液を混合する方法、ポリアルコール類溶液中でカルボキシル基を含有するモノマーを重合し、所望により重合後にアルカリで中和する方法等が挙げられる。溶媒の具体例としては、例えば、水、アルコール、水とアルコールの混合物が挙げられる。塗液2の固形分濃度は、1~30質量%が好ましい。
塗液1や塗液2には、酸素ガスバリア性が損なわれない範囲で、他の重合体、柔軟剤、可塑剤(分子内に2個以上の水酸基を有する低分子化合物は除く)、安定剤、アンチブロッキング剤、粘着剤、モンモリロナイト等の無機層状化合物等が適宜添加されてもよい。
酸素ガスバリア性の観点から、塗液1には1価及び/又は2価の金属を含む化合物を添加してもよい。1価及び/又は2価の金属の具体例としては、ナトリウム、カリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、銅が挙げられる。1価及び/又は2価の金属を含む化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、酸化カルシウムである。
塗液1への1価及び/又は2価の金属を含む化合物の添加量は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基に対して、0~70モル%が好ましく、0~50モル%がより好ましい。
酸素ガスバリア性の向上のため、基材フィルム上に塗液2を塗工し、乾燥して得られた被膜を熱処理してもよい。この場合、熱処理条件の緩和のため、塗液2の調製の際に、水に可溶な、アルカリ金属化合物や無機酸又は有機酸の金属塩を適宜添加してもよい。金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が挙げられる。
無機酸又は有機酸の金属塩の具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、亜リン酸水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの例示された金属塩のなかでも、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、ホスフィン酸カルシウム(次亜リン酸カルシウム)等のホスフィン酸金属塩(次亜リン酸金属塩)が好ましい。無機酸及び有機酸の金属塩の添加量は、塗液2中の固形分100質量部に対して、0.1~40質量部が好ましく、1~30質量部がより好ましい。
アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ金属化合物の添加量は、塗液2中のポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基に対して、0~30モル%が好ましい。
塗液1又は塗液2の塗工方法としては、例えば、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、デイップコーター、ダイコーター、スプレー等の装置、あるいは、それらを組み合わせた装置を用いる方法が挙げられる。
溶媒を蒸発乾燥させる方法としては、例えば、アーチドライヤー、ストレートバスドライヤー、タワードライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、赤外線ドライヤー等の装置、あるいは、それらを組み合わせた装置による熱風の吹き付け、赤外線照射、自然乾燥、オーブン中での乾燥等の方法が挙げられる。
ガスバリア皮膜層14の厚さは、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。
ガスバリア皮膜層14上には、亜鉛化合物を含むコーティング層を形成してもよい。
亜鉛化合物の具体例としては、亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、無機酸塩等が挙げられる。亜鉛化合物としては、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、リン酸亜鉛が好ましい。亜鉛の毒性は低く、亜鉛がレトルト臭の原因となる硫化水素と反応して生成する硫化亜鉛(白色)は包装容器の外観にほとんど影響を与えない。
亜鉛化合物の好ましい形態は粒子である。コーティング適性及び溶媒への分散性の観点から、亜鉛化合物粒子の平均粒径は、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。
コーティング層中の亜鉛化合物の含有量は、1m当たり亜鉛として32.7mg以上が好ましい。前記亜鉛化合物の含有量が32.7mg以上であれば、硫化水素が亜鉛化合物に吸収される効果が官能的に認知されやすい。前記亜鉛化合物の含有量は、1m当たり亜鉛として65.4mg以上がより好ましく、131mg以上がさらに好ましく、196mg以上が特に好ましい。亜鉛化合物の含有量が増大するほどレトルト臭の吸収効果も大きくなるが、内容物の風味が損なわれるおそれもある。例えば、ニンニク調味製品等の含硫化合物に由来する風味が重要な食品が、亜鉛化合物が多量に含まれる包装容器で包装される場合、当該食品の風味が損なわれることがある。従って、亜鉛化合物の含有量は、包装される内容物により適宜調節する必要がある。
亜鉛化合物を含有するコーティング層の厚さは、0.1~10μmが好ましく、0.1~2μmがより好ましく、0.1~1μmがさらに好ましい。コーティング層の厚さが下限値以上であれば、コーティング層の厚さが安定に維持されやすい。コーティング層の厚さが上限値以下であれば、コーティング層の生産性が高くなり、またコーティング層が凝集破壊しにくくなる。
亜鉛化合物を含むコーティング層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、亜鉛化合物と溶媒又は分散媒体を含むコーティング剤を塗工する方法が挙げられる。
溶媒又は分散媒体の具体例としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。塗工適性や製造性の観点から、溶媒又は分散媒体としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、水が好ましい。これらの溶媒又は分散媒体は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
コーティング剤には、樹脂、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、アンチブロッキング剤、粘着剤等の添加物を適宜添加してもよい。
樹脂としては、例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の塗料用樹脂が挙げられる。
亜鉛化合物の分散性の観点から、コーティング剤には分散剤を添加することが好ましい。分散剤の具体例としては、例えば、アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸中和物、アクリロニトリル、アジピン酸、アジピン酸エステル、アジピン酸中和物、アゼライン酸、アビエチン酸、アミノドデカン酸、アラキジン酸、アリルアミン、アルギニン、アルギニン酸、アルブミン、アンモニア、イタコン酸、イタコン酸エステル、イタコン酸中和物、エチレンオキサイド、エチレングリコール、エチレンジアミン、オレイン酸、カオリン、カゼイン、カプリル酸、カプロラクタム、キサンタンガム、クエン酸、グリシン、クリストバライト、グリセリン、グリセリンエステル、グルコース、クロトン酸、ケイ酸、サッカロース、サリチル酸、シクロヘプテン、シュウ酸、スターチ、ステアリン酸、セバシン酸、セルロース、セレシン、ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンオレエート、ソルビタンステアレート、ソルビタンパーミレート、ソルビタンベヘネート、ソルビタンラウレート)、ソルビトール、ソルビン酸、タルク、デキストリン、テレフタル酸、ドロマイト、ニトロセルロース、尿素、バーミキュライト、パルチミン酸、ピネン、フタル酸、フマル酸、プロピオン酸、プロピレングリコール、ヘキサメチレンジアミン、ペクチン、ベヘン酸、ベンジルアルコール、ベンゾイン酸、ベンゾイン酸エステル、ベンゾグアナミン、ペンタエリスリトール、ベントナイト、ホウ酸、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルアルコール、マイカ、マレイン酸、マレイン酸エステル、マレイン酸中和物、マロン酸、マンニトール、ミリスチン酸、メタクリル酸、メチルセルロース、ヤシ油、ユージノール、酪酸、リグノセルロース、リジン、リンゴ酸、リン酸、レシチン、ロジン、ワックス、これらの重合体、これらの共重合体等が挙げられる。
コーティング適性の観点から、コーティング剤中の亜鉛化合物の含有量は、1~50質量%が好ましい。
コーティング剤の塗工方法としては、特に限定されず、例えば、前記した塗液1又は塗液2の塗工方法で挙げた方法と同じ方法が挙げられる。
コーティング剤の塗工後の乾燥方法としては、特に限定されず、例えば、塗液1又は塗液2の塗工後の乾燥方法と同じ方法が挙げられる。乾燥条件も特に限定されずない。乾燥温度は、40~350℃が好ましく、45~325℃がより好ましく、50~300℃がさらに好ましい。乾燥時間は、0.5秒~10分間が好ましく、1秒~5分間がより好ましく、1秒~1分間がさらに好ましい。
[積層フィルムE]
積層フィルムEはガスバリアフィルム層としてガスバリアフィルム層10Eを使用した例で、この点を除き、積層フィルムAと同様である。このガスバリアフィルム層10Eは、多価金属の化合物とリン化合物とが反応して形成されたリン系ガスバリア性複合構造物を含有するガスバリア皮膜層15を、基材フィルム11の前記接着性樹脂層側に積層して構成されている(図5参照)。
この積層フィルムEにおいても、基材フィルム11、接着性樹脂層20及び熱可塑性樹脂層30は、それぞれ、積層フィルムA~Dにおける基材フィルム11、接着性樹脂層20及び熱可塑性樹脂層30と同様であるから、その説明を省略して、リン系ガスバリア性複合構造物を含有するガスバリア皮膜層15について説明する。
(ガスバリア皮膜層15)
ガスバリア皮膜層15は、金属酸化物とリン化合物の反応物を含有する層の単層であってもよく、多層であってもよい。
金属酸化物を構成する金属原子としては、原子価が2価以上(例えば、2~4価や3~4価)の金属原子が挙げられる。具体的な金属原子としては、例えば、Mg、Ca、Zn、Al、Si、Ti、Zr等が挙げられる。特に、金属原子としてAlを用いることが好ましい。
金属酸化物は、加水分解可能な特性基が金属原子に結合した化合物を原料として用いて、これを加水分解縮合させることで、化合物の加水分解縮合物として合成することができる。
化合物を加水分解縮合させる方法としては、液相合成法、具体的にはゾルゲル法を採用することができる。
合成された金属酸化物は微小な粒子となる。金属酸化物の粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、扁平状、多面体状、繊維状、針状等の形状が挙げられる。粒子を繊維状又は針状の形状にすると、バリア性及び耐熱水性がさらに優れるので好ましい。
金属酸化物の粒子の大きさも特に限定されず、ナノメートルサイズからサブミクロンサイズのものが使用できる。バリア性と透明性により優れることから、金属酸化物の平均粒径は、1~100nmが好ましい。
リン化合物は、例えばリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸及びそれらの誘導体のような、金属酸化物と反応可能な部位を1以上有するものである。反応可能な部位としては、リン原子に直接結合したハロゲン原子や、リン原子に直接結合した酸素原子が挙げられる。
金属原子の表面には、通常、水酸基が存在するから、ハロゲン原子や酸素原子はこの水酸基と縮合反応(加水分解縮合反応)を起こすことで、結合することができる。金属酸化物とリン化合物との反応物は、金属酸化物の粒子同士が、リン化合物に由来するリン原子を介して結合された構造を有することができる。具体的には、金属酸化物の表面に存在する官能基(例えば、水酸基)と、リン化合物における金属酸化と反応可能な部位(例えば、リン原子に直接結合したハロゲン原子や、リン原子に直接結合した酸素原子)とが縮合反応(加水分解縮合反応)を起こし、結合する。
反応生成物は、例えば、金属酸化物とリン化合物とを含む塗液を基材の表面に塗工し、形成した塗膜を熱処理することにより得られる。金属酸化物の粒子同士が、リン化合物に由来するリン原子を介して結合される反応を進行させる。
熱処理の温度は、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましく、170℃以上が特に好ましい。熱処理温度が下限値以上であれば、反応時間が短くなり、生産性が向上する。また、熱処理温度は、基材フィルム層11の種類等によって異なるが、220℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましい。
熱処理は、空気中、窒素雰囲気下、又はアルゴン雰囲気下等で実施することができる。熱処理の時間は0.1秒~1時間が好ましく、1秒~15分がより好ましく、5~300秒がさらに好ましい。
ガスバリア皮膜層15には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、でんぷん等の多糖類、多糖類から誘導される多糖類誘導体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、(ポリ)アクリル酸/メタクリル酸、及びそれらの塩、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸交互共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体のけん化物等が含まれてもよい。
ガスバリア皮膜層15は、800~1400cm-1の範囲における赤外線吸収スペクトルの赤外線吸収が最大となる波数が1080~1130cm-1の範囲にあることが好ましい。
吸収ピークが、一般に各種の原子と酸素原子との結合に由来する吸収が見られる800~1400cm-1の領域において最大吸収波数の吸収ピークとして現れる場合には、より優れたバリア性と耐熱水性が発現される。この要件を満たす金属酸化物を構成する金属原子としては、例えばAl等が挙げられる。
ガスバリア皮膜層15の厚さの上限は、4.0μmが好ましく、2.0μmがより好ましく、1.0μmがさらに好ましく、0.9μmが特に好ましい。ガスバリア皮膜層15を薄くすることによって、印刷、ラミネート等の加工時におけるガスバリアフィルム層10Cの寸法変化を低く抑えることができる。さらに、ガスバリアフィルム層10Cの柔軟性が増し、その力学的特性を、基材フィルム層11自体の力学的特性に近づけることができる。
ガスバリア皮膜層15の厚さの下限は、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。
[包装容器]
本発明の包装容器は、本発明の積層フィルムを製袋してなる包装容器である。本発明の包装容器は、本発明の積層フィルムを用いる以外は、公知の態様を採用することができる。本発明の包装容器としては、例えば、2枚の矩形の積層フィルムを熱可塑性樹脂層同士が接するように重ねてその四方をヒートシールした包装容器、矩形の積層フィルムを熱可塑性樹脂層同士が接するように二つ折りにしてその三方をヒートシールした包装容器等が挙げられる。また、矩形の積層フィルムを熱可塑性樹脂層が内側となるように筒状にし、両方の側端部の熱可塑性樹脂層同士を合わせてヒートシールして背貼り部を形成し、その上下をヒートシールして密封したピロー形状の包装容器としてもよい。
これら積層フィルムの熱可塑性樹脂層同士をヒートシールする際には、そのヒートシール温度を140℃以上とすることが望ましい。もっとも、160℃未満のヒートシール温度で十分な接着力を得ることができる。
(実施例)
この例は、図1に示す積層フィルムBの例である。
すなわち、ガスバリアフィルム層10Bとして、基材フィルム11上に酸化金属蒸着層12とガスバリア皮膜層13とを有するフィルムを使用した。なお、基材フィルム11は二軸延伸ポリエステルフィルムである。また、酸化金属蒸着層12は酸化アルミニウムを基材フィルム11上に蒸着して形成した。ガスバリア皮膜層13は、テトラアルコキシシラン、ポリビニルアルコール及びシランカップリング剤を混合した塗布液を酸化金属蒸着層12上に塗布し、加熱乾燥して硬化させることによって形成した。
また、接着性樹脂層20を構成する接着性樹脂として、マレイン酸グラフト変性ポリプロピレンを使用した。このマレイン酸グラフト変性ポリプロピレンについて示差走査熱量
分析(DSC)を行ったとき、104℃、140℃、155℃で融点ピークを示し、140℃に位置する融点ピークと155℃に位置する融点ピークとは、その裾野が互いに重なり合って連続している(図7参照)。その密度は0.88g・cm、メルトフローレートは8.2g/10minである。
また、熱可塑性樹脂層30を構成する樹脂として、日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂を使用した。このポリプロピレン樹脂の融点は138℃、密度は0.89g・cm、メルトフローレートは18g/10minである。
また、シーラントフィルムとして厚さ70μmのレトルト用無延伸ポリプロピレンフィルムを使用した。
そして、ガスバリアフィルム層10とシーラントフィルムとの間に、前記接着性樹脂と前記熱可塑性樹脂とを溶融共押し出しし、加熱ロールによって押圧することにより、これらガスバリアフィルム層10、接着性樹脂層20、熱可塑性樹脂層30及びシーラントフィルムを重ね、加熱ロールの代わりに加熱盤を使用して、この加熱盤によって押圧することにより、実施例の積層フィルムBを製造した。接着層20と熱可塑性樹脂層30との厚さは、いずれも、10μmである。
なお、加熱盤の温度を130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃及び200℃に変えて各積層フィルムを製造した。押圧の圧力は0.2MPa、押圧時間は1秒である。
なお、接着性樹脂層20と熱可塑性樹脂層30との厚さは、いずれも、10μmである。
最後に、シーラントフィルムとして厚さ70μmのレトルト用無延伸ポリプロピレンフィルムを熱可塑性樹脂層30上に積層することにより、実施例の積層フィルムBを製造した。
(比較例1)
接着性樹脂層20を構成するマレイン酸グラフト変性ポリプロピレン樹脂として、示差走査熱量分析(DSC)を行ったとき、2つの融点ピークを示す樹脂を使用したほかは、実施例と同様に比較例1の積層フィルムを製造した。その2つの融点ピークは、108℃及び162℃の位置である。なお、密度は0.89g・cm、メルトフローレートは9.8g/10minである。
(比較例2)
接着性樹脂層20を構成するマレイン酸グラフト変性ポリプロピレン樹脂として、示差走査熱量分析(DSC)を行ったとき、1つの融点ピークを示す樹脂を使用したほかは、実施例と同様に比較例1の積層フィルムを製造した。その融点ピークは、157℃の位置である。なお、密度は0.874g・cm、メルトフローレートは13g/10minである。
(評価)
実施例及び比較例1,2の積層フィルムについて、その接着強度を測定した。この結果を表1に示す。
Figure 0007187935000001
この結果から分かるように、本発明の積層フィルムは、加熱ロールの温度が140℃~
150℃の低温でも高い接着強度で接着することができる。
A~E:積層フィルム
10A~10E:ガスバリアフィルム層
11:基材フィルム
12:酸化金属蒸着層 12c:プライマー層
13:珪素系ガスバリア性複合構造物で構成されたガスバリア皮膜層
14:ポリカルボン酸系重合体を含有するガスバリア皮膜層
15:リン系ガスバリア性複合構造物を含有するガスバリア皮膜層
20:接着性樹脂層
30:熱可塑性樹脂層

Claims (11)

  1. ガスバリアフィルム層と熱可塑性樹脂層とを溶融した接着性樹脂を介して積層した積層
    フィルムにおいて、
    前記接着性樹脂が、マレイン酸グラフト変性ポリプロピレンを主成分とする樹脂であり、
    前記マレイン酸グラフト変性ポリプロピレンはポリプロピレンとして、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、又はランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体(αオレフィンは、エチレン、1-ブテン)のいずれかのポリプロピレンを無水マレイン酸によりグラフト変性したポリプロピレンであり、
    このマレイン酸グラフト変性ポリプロピレンについて示差走査熱量分析(DSC)を行ったとき3つ以上の融点ピークを示し、かつ、140℃および155℃の融点ピークを有し、
    これらの融点ピークの裾野が互いに重なり合って連続していることを特徴とする積層フィルム。
  2. 請求項1に記載の積層フィルムにおいて、
    前記ガスバリアフィルム層が、酸化金属の蒸着層を、基材フィルムの前記接着性樹脂層側に積層して構成されていることを特徴とする積層フィルム。
  3. 請求項に記載の積層フィルムにおいて、
    前記蒸着層の上にガスバリア皮膜層が積層して構成されており、
    前記ガスバリア皮膜層が珪素系ガスバリア性複合構造物で構成されていることを特徴とする積層フィルム。
  4. 請求項に記載の積層フィルムにおいて、
    前記珪素系ガスバリア性複合構造物が、次の化合物1~化合物3が反応して形成されたものであることを特徴とする積層フィルム。
    化合物1:一般式Si(OR(RはCH,C,またはCOCH
    を表す)で表されるケイ素化合物又はこれらの加水分解物。
    化合物2:一般式(RSi(OR(Rは有機官能基、RはCH,C
    ,またはCOCHを表す)で表されるケイ素化合物又はこれらの加水分解物。
    化合物3:水溶性高分子。
  5. 請求項2~4のいずれかに記載の積層フィルムにおいて、
    前記基材フィルムと前記蒸着層との間にプライマー層が配置されており、
    このプライマー層が次の化合物4~化合物6が反応して形成された珪素系複合構造物であることを特徴とする積層フィルム。
    化合物4:一般式RSi(OR (R:アルキル基、ビニル基、イソシアネート基、グリシドキシ基又はエポキシ基を有するアルキル基、R:アルキル基を表す)で
    表せる3官能オルガノシランあるいはその加水分解物。
    化合物5:アクリルポリオール。
    化合物6:イソシアネート化合物。
  6. 請求項2~5のいずれかに記載の積層フィルムにおいて、
    前記基材フィルムの蒸着層形成面がプラズマ処理されていることを特徴とする積層フィ
    ルム。
  7. 請求項1に記載の積層フィルムにおいて、
    前記ガスバリアフィルム層が、ポリカルボン酸系重合体を含有するガスバリア皮膜層を、基材フィルムの前記接着性樹脂層側に積層して構成されていることを特徴とする積層フィルム。
  8. 請求項1に記載の積層フィルムにおいて、
    前記ガスバリアフィルム層が、多価金属の化合物とリン化合物とが反応して形成されたリン系ガスバリア性複合構造物を含有するガスバリア皮膜層を、基材フィルムの前記接着
    性樹脂層側に積層して構成されていることを特徴とする積層フィルム。
  9. 請求項1~のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
  10. 請求項1~のいずれかに記載の積層フィルムを製袋してなる包装容器。
  11. 請求項1に記載の包装容器の製造方法。
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