JP7187750B2 - 放射性同位元素Mo-99の製造方法とターゲット材料 - Google Patents
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Description
に使用されるターゲット材料に関する。
れまで、Mo-99の生産は、高濃縮U-235を使った原子炉の使用済み核燃料中の核分裂生成物を原料(特許文献1:特開2016-180760)とし、これを溶液にして抽出(特許文献2:特
開2018-91708)する核分裂法で行われてきたが、核セキュリティーの観点から日本では実施できなかった。
属微粒子ターゲットに中性子照射した後、NaOH水溶液で全量溶解後Mo-99を抽出し、未反
応のMo-98を再利用する方法が検討されている(非特許文献1:木村ら、JAEA-Technology
2013-048)。一方、未反応のMo-98が大量に含まれているNaOH水溶液からMo-99同位体の
みを抽出することは容易ではなかった。さらに、この溶解・再利用の過程をホットセルとマニピュレーターを使用して行わなければならず、作業性と安全性に問題を抱えていた。
ができる方法を提供することを課題とする。
まず、背景技術として、Mo-98(n, γ)Mo-99の核反応の場合、Mo-99が得る運動エネルギーは190eVしかなく、価数は変化する可能性があるもののMo-O固体中を3nmしか透過できない。このため、単にMoを含むターゲットを中性子照射しただけでは、生成したMo-99のほ
とんどはターゲットから脱出・溶液中に抽出できないことが予想された。固体中をMo-99
ホットアトムに拡散させて抽出のためにターゲット表面に出すためには、高いγ線エネルギーを発生するMo-100(n,2n)Mo-99を利用する加速器由来の中性子照射(初川、科学研究
費基盤研究(C)、25420913)や、拡散しなければならないターゲット直径を小さくした
金属Moナノ粒子(Ilyinら、Physics Proc., 72 (2015) 548)を用いる必要があったが、
前者は照射施設が限られ、後者はMo-99抽出のための金属Moナノ粒子を遠心分離する必要
があった。このため、単なるMoを含んだターゲットでは、原子炉での中性子照射後に水に接するだけでは、生成したMo-99の大部分を水に抽出することができないことが分かって
いた。
を行った実験結果は存在せず、実現できるかは全く不明であった。特に、Mo-98(n, γ)Mo-99反応で、Mo-99が異なる価数のイオンとなったとしても、それが水へ移動するかどうかは全く不明であった。実際、Mo+4価のMoO2や+6価のMoO3は水にほぼ不溶であることが知られており、さらに、前述の通り、ホットアトムになったとしてもMo-99はMo-O固体ターゲ
ット中を3nmしか移動せず、水と接する生成核種はごく一部と予想されたので、水に不溶
のターゲットに水を接するだけで目的の核種を分離することができるかま全く不明でであった。
いかと着想した。
ホットアトムは、核反応後に発生するγ線の反跳により、生成した核種が高い運動エネルギーを有し、異なる価数のイオンになる現象であるが、これにより、生成した核種がターゲットから飛び出したり、ターゲットに対して不溶な溶液、特に水に選択的に溶解したりするため、同位体の抽出に好適である。
ここで、MoO3は、6配位のMoO3八面体が層状に並んだ結晶であり、その層間は弱く結合
しているのみである。よって、MoO3の多孔体を用意し、それをターゲットに利用すれば、ホットアトムによって価数が変わったMo-99がターゲット中に浸透した水に接し、多孔体MoO3中および外への水の拡散に伴いターゲットから抽出可能になる可能性があると考えた
。
な粒子からなるが、これに中性子照射し、水を接触させることで、効率よくMo-99を得る
ことができることを見出し、本発明を完成させた。
射してMo-99を生成させる工程、および、前記モリブデン酸化物ターゲット材料に水を接
触させてMo-99を回収する工程を含む、Mo-99の製造方法、に係るものである。
また、モリブデン酸化物がMoO3であることを特徴とする前記方法に係るものである。
本発明はまた、相対密度20~70%のMoO3からなる、Mo-99製造用ターゲット材料、に係るものである。
。
物であればよいが、Mo-98を含むMoO2やMoO3の多孔体が好ましく、Mo-98を含むMoO3の多孔体がより好ましい。モリブデン酸化物多孔体のサイズは中性子を照射し、水を通水できるサイズであれば特に制限されないが、例えば、0.1~25mmである。なお、モリブデン酸化
物はMo-99の生成および抽出が可能である限り、他のMo同位体や他の元素を含んでもよい
。
密度1.5g/cm3)が細孔容積0.2-0.3cm3/g(すなわち相対密度77-69%)であることから、通水してMo-99を回収するためには、モリブデン酸化物多孔体の相対密度の上限は70%が妥当と考えられる。さらに、水分子を無機物中に吸収・脱離する必要があるシリカゲル(理論密度2.65g/cm3)では細孔容積0.4-4.0cm3/g(すなわち相対密度49-9%)である(ファインセラミックスハンドブック、P.635)ことから、モリブデン酸化物多孔体の相対密度の上
限は40%であることがより好ましい。
例えば、中性子発生用加速器を用いて、例えば重水素(2H)ビームを3重水素(3H)に照射して、高速中性子をヘリウム(4He)とともに生成することができる。
照射する中性子のエネルギーはMo-99を発生させることができる限り特に制限はないが
、例えば、0.001~0.1eVである。照射時間も適宜設定できるが、例えば、1~10時間であ
る。
抽出できる十分量であれば特に制限はないが、例えば、モリブデン酸化物多孔体ターゲット 1gあたり10ml以上である。水温は例えば25~90℃である。モリブデン酸化物多孔体
ターゲットへの通水時間は例えば、10分~20時間であり、短時間でMo-99を抽出できる。
また、水量としては、1gあたり1mlでもよく、10ml以上であればMo-99を抽出することができる。
Mo-99の抽出方法としては、MoO2やMoO3多孔体への中性子照射後に通水するバッチ処理
法の他に、照射中に通水する連続処理法も可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様
には限定されない。
に示す。すべて単相MoO3であった。アルキメデス法で測定したところ、その相対密度は下記の表1のようであった。よって、500℃で相対密度70%以下の焼結体が得られた。
℃、1時間加圧・加熱して焼結を行った。図2に粉末X線回折結果を示す。MoO2単一相であった。また、450℃で焼結した試料の相対密度は60%であった。実施例1と同様な多孔体をMoO2で得られたことが分かった。
により、NaClを溶解させ、MoO3多孔体を作製した。
焼結後の試料外観を図3に示す。試料直径は10mmであった。MoO3とNaCl粉末の混合比は体積比であるから、相対密度80%、50、30%のMoO3試料を作製できたことが分かった。また、MoO3にCaCl2、KCl粉末を添加しても、同様な焼結体が作製できた。この試料の中で、NaCl添加量50vol.%の試料の通水後の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。通水前には、白色のコアの中に灰色の粒子が見られたが、通水後にはコアのみが存在している。多孔体サイズは250μm程度であり、他に0.1~1mmの多孔体も観察された。このことから、MoO3からなる多孔体が得られた。
った。これを2x1013n/cm2sの中性子束、中性子エネルギー0.001-0.1eV(ピーク強度のエネルギーは0.025eV)で7時間照射した。これを水中10mlに投入し、20時間置いた後、水中のMo-99およびTc-99mからのγ線をGeスペクトロメーターで測定し、水中に溶解したMo-99の濃度を算出した。
図5に水からのγ線スペクトルを示す。これから測定したMo-99は29.84MBqであった。
これを溶解度に直すと0.36%であった。一方、MoO3の水への溶解度は0.04%であることか
ら、9倍のMoが水に溶解した。これは、結晶質MoO3水が浸透し、ホットアトムとなったMo-99が溶解した効果と考えられた。この効果は、粉末と同様比表面積が大きく水との接触が容易な他のモリブデン酸化物多孔体、特に結晶質MoO3多孔体でも同様に期待される。よって、本発明により、MoO3多孔体を中性子照射した後水に接するだけでMo-99を抽出可能で
あることが判明した。
原子炉中性子を高密度MoO3ターゲットに照射してMo-99を製造した例が文献(木村ら、J
AEA-Technology 2013-048)で報告された。この中で2種類のターゲットが使われ、相対密度は>90%であった。照射後、高密度MoO3ターゲットは6N-NaOH水溶液に溶解され、溶液か
らMo-99を回収した。
これに対し、本発明では、相対密度20-70%のモリブデン酸化物多孔体ターゲットを原
子炉中性子照射後に水に接するだけでMo-99を抽出することができる。
原子炉中性子をMoに照射してMo-99を製造する際、飛程3nmのホットアトムを利用して抽出する方法が文献(Ilyinら、Physics Proc., 72 (2015) 548)で報告された。この中で
は、水中でMo-99を抽出する際Mo-99ホットアトムがターゲット表面まで拡散しなければならないため、ターゲット直径140nmの金属Moナノ粒子を用いる必要があった。Mo-99抽出後、未反応の金属Moナノ粒子を回収・再利用したと記載されている。この方法の記述はないが、遠心分離、フィルターによる分離や酸による溶解が行われたと推定された。
これに対し、本発明では、モリブデン酸化物多孔体ターゲットを利用しているため、水に接するだけでMo-99を水に抽出できる。
Claims (2)
- 相対密度20~70%の多孔体であるモリブデン酸化物ターゲット材料に中性子照射してMo-99を生成させる工程、および、前記モリブデン酸化物ターゲット材料に水を接触させてホットアトムによって価数が変わった前記Mo-99を回収する工程を含む、Mo-99の製造方法。
- モリブデン酸化物がMoO3である、請求項1に記載の方法。
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