以下、本発明に係る腕動作補助装置の実施形態について図面を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態としての腕動作補助装置1を示す斜視図である。図1では、便宜上、腕動作補助装置1が装着される人体2を、人体を模した形状の3Dモデルとして示している。本明細書においては、説明の便宜上、起立した姿勢における人体2に対して、人体2の胸部ないし腹部が面する側を前方とし、背中が面する側を後方とし、人体2の左右側を側方(右方及び左方)とする。
腕動作補助装置1は、例えば作業者等の着用者の人体2に装着され、この人体2の腕3の動作を補助するためのものである。また、腕動作補助装置1は、例えばブドウや桃等の作物を収穫する作業などの上向き作業の作業補助に利用可能である。図1では、上向き作業時の人体2の姿勢の一例を示している。図1に示すように、上向き作業とは、上腕3aを、略水平状態、又は、この略水平状態よりも鉛直方向上方に上げた状態、となるまで胴体4に対して前側に向けて持ち上げつつ、前腕3bを上腕3aに対して鉛直方向上方に屈曲させた姿勢を保ちながら行う作業を意味する。前腕3bは、上腕3aから鉛直方向上方に屈曲していればよく、前腕3bの上腕3aに対する屈曲角度θ1は特に限定されない。したがって、前腕3bの上腕3aに対する屈曲角度θ1は、約90°であってもよく、図1に示すような90°より大きい角度であってもよい。なお、上向き作業は、上記したブドウや桃等の作物の収穫作業に限らず、例えば工場ラインにおける上向きでの組付け作業や上向きで行う溶接作業など、腕3を長時間に亘り上げたままで行う種々の作業を含む。
また、図1では、腕3の内旋方向A及び外旋方向Bを示している。腕3の内旋方向Aとは、肘を屈曲させた状態の腕3を内旋運動させた際に、前腕3bが回動する回動方向を意味する。腕3の内旋運動とは、上腕3aを、位置を変えずに、体の内側に向かって回動させる動きを言う。また、腕3の外旋方向Bとは、肘を屈曲させた状態の腕3を外旋運動させた際に、前腕3bが回動する回動方向を意味する。腕3の外旋運動とは、上腕3aを、位置を変えずに、体の外側に向かって回動させる動きを言う。なお、外旋方向Bは、内旋方向Aの逆方向である。また、上述の屈曲角度θ1(図1等参照)とは、腕3の内旋運動及び外旋回運動の旋回平面に直交し、かつ、上腕3aの中心軸線O4(図1参照)を含む平面での、前腕3bの上腕3aに対する角度を意味している。更に、「回動」とは、移動の一態様であり、中心軸周りの移動を意味している。
図1に示すように、腕動作補助装置1は、前腕3bの内旋方向Aの運動に追従して弾性変形することで、前腕3bを外旋方向Bに押圧する押圧機構10を備えている。このような押圧機構10の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態の押圧機構10は、一例として、前腕当接部20が弾性変形することで、その復元力により、前腕3bを外旋方向Bに押圧する(図7等参照)。押圧機構10を設けることにより、上向き作業時に腕3の内旋運動が行われた場合に、前腕3bから腕動作補助装置1に加えられる鉛直方向下方の荷重、つまり、前腕3bの重さ、の少なくとも一部を、押圧機構10により負担することができ、前腕3bを補助することができる。また、押圧機構10は、前腕3bの内旋方向Aの運動に追従して弾性変形することで、前腕3bの重さの少なくとも一部を負担するため、モータ等を用いて荷重を負担する構成と比較して、簡易な構成とすることができる。
以下、本実施形態の腕動作補助装置1の押圧機構10の詳細について、図1~図7を参照して説明する。
図2は、図1に示す腕動作補助装置1が装着された状態の人体2を鉛直方向上方から見た平面図である。図3は、図1に示す腕動作補助装置1が装着された状態の人体2を後方から見た背面図である。図4は、図1に示す腕動作補助装置1が装着された状態の人体2を側方から見た側面図である。図5は、図2におけるI-I線に沿う断面図である。図6A、図6Bは、後述する上腕装着部32が肩関節の回動に追従する様子を模式的に示す説明図である(押圧機構10は不図示)。図7は、後述する前腕当接部20が弾性変形している様子を人体2の前方から見た説明図である。なお、図7では、便宜上、前腕3bが鉛直方向上方に向かって上げられている状態を点線により示している。
図1等に示すように、本実施形態の腕動作補助装置1は、前腕3bに当接可能な前腕当接部20と、この前腕当接部20を支持する装置本体30と、を備えている。装置本体30は、少なくとも人体2に装着可能な装着部を備えている。本実施形態の装置本体30は、装着部として、後述する胴体装着部31及び上腕装着部32を備えている。
本実施形態の腕動作補助装置1の押圧機構10は、上述の前腕当接部20及び装置本体30により構成されている。具体的に、本実施形態の押圧機構10は、前腕3bに当接可能であり、内旋方向Aに弾性変形可能な前腕当接部20と、この前腕当接部20を支持する装置本体30と、を備えている。図7に示すように、前腕当接部20の弾性変形による復元力により、前腕3bの重さの少なくとも一部が負担される。以下、前腕当接部20及び装置本体30の詳細について説明する。
[前腕当接部20]
図1等に示すように、本実施形態の前腕当接部20は、前腕3bが内旋方向Aに運動する際に、前腕3bの内側等の側面3b1と当接する。本実施形態の前腕当接部20は、前腕3bの長手方向に沿って延在し前腕3bを受ける凹面21を有している。より具体的に、本実施形態の前腕当接部20は、前腕3bの側面3b1を覆い、前腕3bの側面3b1と当接する側面カバ-部22と、この側面カバー部22と装置本体30とを連結する連結部23と、を備えている。
側面カバ-部22は、前腕3bの長手方向に延在しており、前腕3bの内側等の側面3b1に沿うように湾曲する湾曲板形状を有している。つまり、側面カバー部22のうち前腕3bの側面3b1に対向する面により、上述の凹面21が構成されている。前腕3bが内旋方向Aに運動する際は、前腕3bの側面3b1が側面カバー部22の凹面21に当接し、側面カバー部22が内旋方向Aに押圧される。
連結部23は、側面カバー部22の一端と装置本体30とを連結している。具体的に、本実施形態の連結部23は、側面カバー部22と装置本体30とを連結する帯板形状を有している。連結部23は、装置本体30に取り付けられている取付部24を支点として弾性変形可能な板ばねを構成している。より具体的には、図7に示すように、帯板形状の連結部23は、その一端部である取付部24を支点として、側面カバー部22が取り付けられている他端部側が、内旋方向A及び外旋方向Bに回動するように弾性変形可能である。したがって、前腕3bが内旋方向Aに運動する際に、前腕3bにより側面カバー部22が内旋方向Aに押圧されると、連結部23がその取付部24を支点として弾性変形し、側面カバー部22が前腕3bに追従して内旋方向Aに移動する。
このようにして、前腕当接部20は、前腕3bに追従して内旋方向Aに弾性変形する。但し、図1、図7に示すように、前腕当接部20は、前腕3bが鉛直方向上方に向いている状態から肘の回動中心軸O1周りに内旋方向Aへ所定角度θ2以下(例えば20度以下)の範囲で運動する場合は、弾性変形しないように設計されていてもよい。腕動作補助装置1の着用者である作業者は、押圧機構10による荷重負担を利用せずに、上向き作業を行う場合もある。このような場合であっても、作業者は、意図せずに前腕当接部20に触れてしまうことがあり、その度に前腕当接部20が弾性変形し復元力を受けると、作業者に不快感を与える場合がある。そのため、前腕当接部20を、前腕3bが鉛直方向上方に向いている状態から所定角度θ2以下(例えば20度以下)の範囲で運動する場合は、弾性変形しないように構成することで、前腕当接部20の意図しない弾性変形による復元力で、作業者が不快に感じることを抑制できる。なお、前腕3bが鉛直方向上方に向いている状態から内旋方向Aに所定角度θ2以下の範囲で運動する場合は、前腕当接部20は、復元力を発生しない態様で変形する。そして、前腕当接部20には、上述の所定角度を超えることで、弾性変形による復元力が発生する。このような前腕当接部20の構成は特に限定されない。前腕当接部20は、例えば、折り曲げ自在な屈曲部を有する。このような屈曲部を利用することで、上記の所定角度θ2以下の範囲で復元力を発生しない変形が可能な前腕当接部20を実現できる。また、後述する別の実施形態における付勢部材270、370(図9、図10参照)の作動範囲を調整することでも、上記の所定角度θ2以下の範囲で復元力を発生しない変形が可能な前腕当接部を実現できる。
本実施形態の前腕当接部20は、装置本体30に対して、内旋方向A及び外旋方向Bに弾性変形可能な状態で支持されているのみならず、腕3の内旋及び外旋の旋回平面と直交する面に沿って回動可能な状態で支持されている。より具体的に、本実施形態では、前腕当接部20の連結部23の取付部24が、装置本体30の後述する支軸54(図1等参照)に回動可能に支持されている。これにより、前腕当接部20は、装置本体30に対して、腕3の内旋及び外旋の旋回平面と直交する面に沿って回動することができる。なお、「腕3の内旋及び外旋の旋回平面と直交する面」とは、肘の屈曲及び伸展による腕3の曲げ伸ばし時において、前腕3bが上腕3aに対して回動する回動平面(以下、「肘の屈曲回動平面」と記載する。)を意味する。つまり、本実施形態の前腕当接部20は、上述したように、取付部24を支点として装置本体30に対して内旋方向A及び外旋方向Bに回動するように弾性変形すると共に、取付部24が支持される後述の支軸54(図1等参照)を回動中心軸O2として装置本体30に対して肘の屈曲回動平面に沿って回動可能である。
また、本実施形態の取付部24は、装置本体30の別の部位に回動可能に支持されていてもよく、装置本体30の後述する支軸54(図1等参照)に限られるものではない。但し、連結部23の取付部24は、腕3の内旋運動及び外旋運動の回動中心軸O1に近い位置とすることが好ましい。このようにすれば、前腕3bと側面カバー部22との回動軌道ズレを低減できる。そのため、前腕3bが内旋方向Aに運動する際の、側面カバー部22の前腕3bに対する追従性を、高めることができる。
更に、前腕当接部20は、肘の屈曲回動平面に沿って回動不能な状態で、装置本体30に固定されていてもよい。但し、本実施形態のように、肘の屈曲回動平面に沿って回動可能な状態で、装置本体30に支持されていることが好ましい。このような構成とすることにより、前腕当接部20を装置本体30に対して肘の屈曲回動平面に沿って自由に回動させることができる。これにより、上腕3aに対する前腕3bの屈曲角度θ1(図1等参照)に合わせて、前腕当接部20の位置を調整することができる。また、腕動作補助装置1を使用しない時には、前腕当接部20を肘の屈曲回動平面に沿って回動させることで、前腕当接部20が外方に突出することを抑制して、収納し易い形態にすることができる。
特に、本実施形態の前腕当接部20は、上述したように、前腕3bの側面3b1に沿うように湾曲する凹面21(図1等参照)を有してため、このような凹面21を有さない構成と比較して、肘の屈曲及び伸展による腕3の曲げ伸ばし時に、前腕3bと前腕当接部20とが干渉し易い。つまり、凹面21を設けることで、腕3の曲げ伸ばし動作の際に、前腕3bが凹面21の一部に当接し易くなる。そのため、肘の屈曲回動平面に沿う前腕3bの運動に追従して肘の屈曲回動平面に沿って回動可能な前腕当接部20を実現できる。
図7に示すように、本実施形態の前腕当接部20では、前腕3bの内旋方向Aへの運動に対して、側面カバー部22は弾性変形せずに連結部23が弾性変形するが、この構成に限られるものではなく、側面カバー部22が弾性変形し、連結部23が弾性変形しない構成としてもよい。また、側面カバー部22及び連結部23の両方が弾性変形する構成であってもよい。したがって、側面カバー部22及び連結部23の構成についても、本実施形態の構成に限られない。例えば、側面カバー部22が、前腕3bの側面3b1のみならず、肘の鉛直方向下方までを覆う構成としてもよい。
但し、前腕当接部20の内旋方向Aの剛性は、装置本体30のうち前腕当接部20が連結されている部分(本実施形態では後述する作動アーム52)の内旋方向Aの剛性よりも小さい。このようにすることで、前腕当接部20よりも装置本体30が先に内旋方向Aに弾性変形することを抑制できる。このような剛性関係は、前腕当接部20及び装置本体30の各部の形状や材料を適宜設計・選択することにより実現可能である。
なお、本実施形態の側面カバー部22及び連結部23は同一の材料から形成されているが、別々の材料から形成されていてもよい。前腕当接部20の材料は、特に限定されることなく、金属材料であっても樹脂材料であってもよい。但し、前腕当接部20の材料は、例えば、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルケトンなどの樹脂材料、又は、ガラス繊維により強化されているガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維により強化されている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの樹脂複合材料、とすることが好ましい。前腕当接部20を樹脂材料又は樹脂複合材料から形成することにより、金属材料から形成される当接部材と比較して、押圧機構10を軽量化することができる。
また、前腕当接部20の側面カバー部22及び連結部23は、本実施形態のように一部材により一体形成されていてもよく、別部材がネジ等の締結部材により締結されることで一体化された構成であってもよい。
[装置本体30]
図1~図5に示すように、本実施形態の装置本体30は、胴体4に装着される胴体装着部31と、上腕3aに装着される上腕装着部32と、胴体装着部31と上腕装着部32とを連結する連結機構33と、頭支持部34と、を備えている。胴体装着部31の左右両側(両方の側方)に、それぞれ人体2の左右両側の腕3に対応した一対の上腕装着部32及び連結機構33が設けられ、着用者である人体2の左右両側の腕3の動作を補助できるようになっている。左右の上腕装着部32及び連結機構33は、互いに対称である以外は基本的に同一の構成であるので、以下では、左右の一方側の上腕装着部32及び連結機構33についてのみ説明し、重複した説明は省略する。
胴体装着部31は、連結機構33を介して上腕装着部32を支持する部分である。本実施形態の胴体装着部31は、例えばベルトや襷、ベスト等の装着部材(不図示)を含み、この装着部材を用いて着用者の胴体4に装着される。更に、本実施形態の胴体装着部31は、矩形の板状に形成され、胴体4の後方つまり背中の高い位置(両腕3の胴体4への付け根の間)に配置される支持部材31aを備えている。支持部材31aは、腕3の動作に伴って上腕装着部32や連結機構33が作動しても、胴体4に対する装着位置が固定された状態に保持される。
なお、胴体装着部31は、胴体4に対する装着位置が完全に固定されるように胴体4に装着されることが好ましいが、胴体4に対する装着位置がある程度変化するように装着されていてもよい。また、胴体装着部31は、胴体4の高い位置に限らず、例えば腰部の後方など、種々の位置に配置することができる。
上腕装着部32は、内部に腕3を挿通可能な円環状(円筒状)に形成され、人体2の上腕3aの先端側部分(前腕3bに近い部分)に装着される。上腕3aに装着された上腕装着部32は、上腕3aの動作に伴って上腕3aとともに移動することができる。
上腕装着部32を上腕3aに装着する構成とすることにより、この腕動作補助装置1をより小型軽量かつ安価なものとすることができる。また、上腕装着部32を円環状に形成することにより、腕3を上腕装着部32に通すだけの簡単な動作で、上腕装着部32を容易かつ確実に上腕3aに装着することができる。これにより、この腕動作補助装置1の人体2への着用を容易に行うことが可能となる。
なお、上腕装着部32は、円環状に限らず、腕3に装着されて当該腕3を保持することができれば、その形状は種々変更可能である。
図1等に示すように、本実施形態の連結機構33は、この腕動作補助装置1が人体2に装着された状態において、上腕装着部32を胴体装着部31に対して水平方向に移動自在に連結する水平動機構部40と、上腕装着部32を胴体装着部31に対して鉛直方向に移動自在とする鉛直動機構部50と、を有している。水平動機構部40は胴体装着部31の支持部材31aと、鉛直動機構部50と、の間に設けられ、鉛直動機構部50は上腕装着部32と水平動機構部40との間に設けられている。
本実施形態においては、水平動機構部40は、図1及び図2に示すように、細長い板状に形成されてその長手方向の一端部において第1の回動軸41により胴体装着部31の支持部材31aに回動自在に連結される第1連結体42と、細長い板状に形成されてその長手方向の一端部において第2の回動軸43により鉛直動機構部50の支持体51に回動自在に連結されるとともに長手方向の他端部において第3の回動軸44により第1連結体42の長手方向の他端部に回動自在に連結される第2連結体45とを有した構成となっている。第1の回動軸41、第2の回動軸43及び第3の回動軸44は、何れも、連結対象となる部材を互いにピン結合する軸体で構成されている。また、第1の回動軸41、第2の回動軸43及び第3の回動軸44は、それぞれ腕動作補助装置1が着用者の人体2に装着された状態において、その軸方向が鉛直方向を向くように配置されている。このような構成により、水平動機構部40は、それぞれの回動軸41、43、44まわりの回動により上腕装着部32を胴体装着部31の支持部材31aに対して水平方向に移動自在とすることができるとともに、上腕装着部32及び鉛直動機構部50から加えられる鉛直方向の荷重を、当該水平動機構部40を介して胴体装着部31の支持部材31aに支持させることができる。
図2に示すように、水平動機構部40は、この腕動作補助装置1が人体2に装着された状態において、胴体装着部31の支持部材31aとともに胴体4の後方すなわち背中側に配置されるようになっている。また、腕動作補助装置1を着用した着用者が肩関節を回動させない姿勢(図2に示す姿勢)でいるときには、第1連結体42と第2連結体45とを連結する第3の回動軸44が第1の回動軸41及び第2の回動軸43を結ぶ直線よりも後方側に位置するように第1連結体42と第2連結体45とが互いに傾斜し、水平動機構部40は後方に向けて山形に屈曲している。
鉛直動機構部50は、腕3の側方つまり胴体4の側方に配置されており、上腕装着部32を水平動機構部40に対して上下動自在に連結し、当該上腕装着部32を胴体装着部31の支持部材31aに対して鉛直方向に移動自在としている。
図5に示すように、本実施形態においては、鉛直動機構部50は、支持体51と作動アーム52とを有している。上記の通り、支持体51は水平動機構部40の第2連結体45の端部に第2の回動軸43によって水平方向に回動自在に連結されており、胴体装着部31の支持部材31aに対する鉛直方向位置が一定となるように水平動機構部40を介して胴体装着部31の支持部材31aに支持されている。
作動アーム52は、上腕3aと同程度の長さを有するアーム形状に形成され、腕3の側方に配置される。作動アーム52は、その一端側において第1軸53によって支持体51に回動自在に連結されている。第1軸53は、その軸方向を水平方向、より具体的には左右方向に向けて設けられている。これにより、作動アーム52は、第1軸53を中心として、その他端側が支持体51、ひいては胴体装着部31の支持部材31aに対して左右方向に垂直な面内で上下方向に移動するように第1軸53を中心として上下方向に回動自在となっている。また、作動アーム52は、その他端側において上腕装着部32に連結されている。したがって、上腕装着部32が装着された上腕3aが肩関節の左右方向の回動軸を中心として回動すると、作動アーム52が上腕3aの回動に伴って第1軸53を中心として回動し、上腕装着部32は上腕3aの移動に追従することができる。
本実施形態においては、上腕装着部32は作動アーム52に対して、第1軸53と平行、より具体的には左右方向を向く支軸54によって回動自在に連結されている。このように、上腕装着部32を作動アーム52に対して回動自在に連結した構成とすることにより、上腕3aが上下方向に動作して作動アーム52が第1軸53を中心として回動したときに、第1軸53が肩関節の回動中心からずれていることにより上腕装着部32と上腕3aとの間に生じる角度変化ないし拗れを、上腕装着部32の支軸54を中心とした作動アーム52に対する回動により吸収することができる。したがって、上腕3aを上下に動作させたときに、上腕装着部32を上腕3aにさらに滑らかに追従させることができる。
本実施形態においては、鉛直動機構部50には、荷重負担機構60が設けられている。この荷重負担機構60は、腕3から上腕装着部32に加えられる鉛直方向下向きの荷重つまり腕3の重さの少なくとも一部を負担して、この腕動作補助装置1を装着した着用者である人体2の上向き作業時における腕3の負担を低減させることができる。
荷重負担機構60は、上腕装着部32に加えられる下向きの荷重を、上腕装着部32の鉛直方向位置すなわち作動アーム52の第1軸53を中心とした回動位置に拘わらず、常に一定の割合で負担する構成とすることができる。本実施形態においては、上腕装着部32の鉛直方向位置すなわち作動アーム52の第1軸53を中心とした回動位置に拘わらず、荷重負担機構60を、上腕装着部32に加えられる鉛直方向下向きの荷重の全てを負担(補償)する構成としている。すなわち、荷重負担機構60によって、作動アーム52を介して上腕装着部32に、当該上腕装着部32に加えられる鉛直方向下向きの荷重に釣り合う上向きの力を常に加えることで、腕3を上げた状態に保持するようにしている。このように、荷重負担機構60を、いわゆる荷重補償機構に構成するようにしている。
荷重負担機構60は、第1軸53と腕3の重心(上腕3aと前腕3bの合成重心)との距離が常に一定となるような腕3の動きに対して、当該腕3から上腕装着部32に加えられる鉛直方向下向きの荷重に釣り合う上向きの力を常に加えるように設定することができる。または、荷重負担機構60は、前腕3bを常に鉛直姿勢としたまま腕3を上下に動かした場合において、当該腕3から上腕装着部32に加えられる鉛直方向下向きの荷重に釣り合う上向きの力を常に加える設定とすることができる。このような構成とすることにより、荷重負担機構60を、前腕3bを鉛直姿勢として行われることが多い上向き作業において、腕3の鉛直方向位置に拘わらず常に腕3の負担を一定の割合で負担する完全な荷重補償機構に構成して、当該腕3の負担を効果的に補助することができる。
図4に示すように、荷重負担機構60は、スライダ61、ガイドロッド62及び圧縮コイルバネ63を有している。
スライダ61は円筒状に形成されており、作動アーム52の一端側と他端側の間の部位つまり作動アーム52の長手方向の中間部位に、第1軸53と平行、より具体的には左右方向に向けて配置された第2軸64によって回動自在に支持されている。
ガイドロッド62は、スライダ61の内径に対応した外径を有する細長い断面円形の棒状に形成されており、スライダ61に挿通されて当該スライダ61にその軸方向に沿って移動自在に保持されている。ガイドロッド62のスライダ61から突出する一端は、第1軸53に対して上方にずれて配置された第3軸65によって支持体51に対して鉛直方向に、より具体的には、左右方向に垂直な面内で回動自在に連結されている。
一方、ガイドロッド62の他端にはバネ受け部62aが設けられ、このバネ受け部62aとスライダ61との間に圧縮コイルバネ63が装着されている。圧縮コイルバネ63は、作動アーム52の第1軸53を中心とした回動位置に拘わらず常に、当該圧縮コイルバネ63の無負荷時における自然長から、第2軸64と第3軸65との間の距離に等しい長さだけ圧縮されて、スライダ61とバネ受け部62aとの間に装着された状態となっている。本実施形態においては、圧縮コイルバネ63は、無負荷時における自然長が、バネ受け部62aと第3軸65との間の距離から、第2軸64の軸心とスライダ61の圧縮コイルバネ63との当接面との間の距離を差し引いた長さに等しい長さのものとなっている。そして、圧縮コイルバネ63は、作動アーム52の第1軸53を中心とした回動位置に拘わらず、上腕装着部32に加えられる下向きの荷重と釣り合う上向きの荷重を生じるための付勢力(ここでは復元力)を作動アーム52に付与するようになっている。すなわち、上腕装着部32を介して作動アーム52に加えられる腕3の重さにより作動アーム52に作用する第1軸53まわりの負荷トルクの大きさは、作動アーム52の第1軸53を中心とした回動位置によって変化することになるが、圧縮コイルバネ63は、その付勢力が作動アーム52の回動位置に応じて変化することにより、作動アーム52の回動位置に拘わらず、常に、腕3の重さが作動アーム52に加える鉛直方向下向きの負荷トルクと釣り合った上向きの補償トルクを作動アーム52に加えるようになっている。したがって、肩関節の胴体4を左右方向に貫く方向の回動軸を中心として上腕3aを前側で鉛直方向上方に持ち上げるように腕3を動作させると、当該持ち上げられた腕3の重さが常に荷重負担機構60によって負担ないし補償され、上腕3aを支えるための筋肉によって当該位置に支えなくても、腕3は荷重負担機構60によって当該位置つまり上げた状態に保持されることになる。
荷重負担機構60は、スライダ61を第1軸53に対して鉛直方向上方にずれて配置された第3軸65によって支持体51に回動自在に支持させ、スライダ61に移動自在に保持されるガイドロッド62のスライダ61から突出する一端側を第2軸64によって作動アーム52の中間部位に回動自在に連結し、ガイドロッド62の他端側に設けられたバネ受け部62aとスライダ61との間に圧縮コイルバネ63を装着した構成とすることもできる。
このように、鉛直動機構部50に荷重負担機構60を設けたことにより、当該荷重負担機構60によって、上腕装着部32ないし上腕3aの鉛直方向位置つまり作動アーム52の第1軸53を中心とした回動位置に拘わらず、常に腕3の重さを荷重負担機構60によって支持して、腕3を当該位置に保持することができる。すなわち、この腕動作補助装置1を着用した着用者が上向き作業を行う際に、その上げたままの腕3の重さを荷重負担機構60によって支持して、腕3を上げた状態に楽に保持させることができる。したがって、この腕動作補助装置1を着用した作業者の上向き作業時における腕3の負担を低減させることができる。これにより、当該作業をより容易に行なわせることができるとともに、当該作業による腕3の疲労を低減させることができる。
また、上記実施形態においては、荷重負担機構60として、スライダ61、ガイドロッド62及び圧縮コイルバネ63で構成されるものを用いるようにしたので、荷重負担機構60を簡素な構成として、この腕動作補助装置1のコストを低減することができるとともに、荷重負担機構60の安全性と耐久性を優れたものとすることができる。
本実施形態においては、荷重負担機構60を、上腕装着部32に加わる鉛直方向下向きの荷重つまり腕3の重さの全てを負担ないし支持する構成としているが、上腕装着部32に加わる鉛直方向下向きの荷重の少なくとも一部を負担する構成とすることもできる。この場合、例えば上腕装着部32に加わる腕3の重さの20%~50%を負担する構成とすることができる。このような設定とすることにより、この腕動作補助装置1を着用した着用者が、腕3を前側上方に持ち上げた位置から下方に向けて動かす際に、腕3に荷重負担機構60から上向きの力が加えられて当該動作に違和感(拘束されている感覚)が生じることを抑制しつつ上向き作業時における腕3の負担を効果的に低減させることができる。また、荷重負担機構60は、電動ドライバーやグラインダー等の大型の工具を常に手で把持した状態で上向き作業を行う場合において、腕3の重さに加えて工具の重さをも補助することができるようにするために、例えば、上腕装着部32に加わる腕3の重さの200%程度を負担する設定とすることもできる。なお、上記した荷重負担機構60の設定変更は、例えば圧縮コイルバネ63のバネ定数を変更し、あるいは、第1軸53と第2軸64との間の距離に対する第1軸53と第3軸65との間の距離の割合を変更すること等により行うことができる。
なお、作動アーム52には、横断面形状がコの字となるカバー部66によって収容空間67が設けられ、上腕3aが下方に向けられたときに、ガイドロッド62の一部と圧縮コイルバネ63が収容空間67の内部に配置されるようになっている。また、カバー部66には開口66aが設けられており、ガイドロッド62の一端側はこの開口66aから第3軸65に向けて突出している。
次に、このような構成の本実施形態の腕動作補助装置1の作動について説明する。
装置本体30の連結機構33は、水平動機構部40と鉛直動機構部50とを有することにより、上腕装着部32を上腕3aに追従させて当該上腕3aとともに胴体装着部31に対して水平方向及び鉛直方向に移動させることができる。例えば、腕動作補助装置1を着用した着用者が、図6Aに示すように肩関節を回動させない姿勢から、図6Bに示すように、肩関節が人体2を鉛直方向に貫く回動軸を中心として回動し、腕3が胴体4の前方側に位置するように水平方向に回動させると、水平動機構部40は、第1の回動軸41を中心として第1連結体42が胴体装着部31の支持部材31aに対して回動し、第2の回動軸43を中心として第2連結体45が支持体51に対して回動し、第1連結体42と第2連結体45が第3の回動軸44を中心として互いに相対的に回動することで、その屈曲度合いを増加させるように(第1の回動軸41と第2の回動軸43との間隔を増加させるように)作動する。これにより、上腕3aとともに水平方向に移動する上腕装着部32及びこれに連結された鉛直動機構部50を、水平動機構部40によって胴体装着部31の支持部材31aにその荷重を支持させた状態のまま、肩関節の回動に伴う腕3の動きに滑らかに追従させることができる。
一方、例えば、腕3が胴体4を左右方向に貫く回動軸を中心として鉛直方向に回動されたときには、上腕装着部32を鉛直動機構部50によって腕3の鉛直方向の動きに滑らかに追従させることができる。
このように、本実施形態に係る腕動作補助装置1では、連結機構33を、少なくとも2つの回動軸41、43、44を備えた水平動機構部40を有するものとしたので、水平動機構部40の移動の瞬間中心位置を肩関節の回動中心位置に近似させて、上腕装着部32を水平動機構部40によって胴体装着部31の支持部材31aに対して水平方向に移動自在とすることができる。
ここで、本実施形態の上述の前腕当接部20は、装置本体30のうち上腕3aの長手方向に延在する作動アーム52に支持されている。具体的に、本実施形態の前腕当接部20は、作動アーム52の延在方向と直交する平面に沿って内旋方向A及び外旋方向Bに弾性変形することができる。より具体的に、本実施形態の前腕当接部20の連結部23は、作動アーム52の延在方向と直交する平面に沿って内旋方向A及び外旋方向Bに弾性変形することができる。これにより、本実施形態の前腕当接部20の側面カバー部22は、作動アーム52の延在方向と直交する平面に沿って内旋方向A及び外旋方向Bに回動することができる。
図1~図5に示すように、本実施形態の頭支持部34は、胴体装着部31の支持部材31aに取り付けられており、着用者である人体2の後頭部5を支持する。具体的に、本実施形態の頭支持部34は、人体2の後頭部5を受ける受け部35と、この受け部35と胴体装着部31の支持部材31aとを連結する連結アーム部36と、を備えている。連結アーム部36は、後頭部5から受け部35に加わる荷重に応じて弾性変形し、後頭部5からの荷重を支持する。
<第2実施形態>
次に、第1実施形態とは別の実施形態としての腕動作補助装置101について説明する。図8は、本実施形態の腕動作補助装置101を示す図である。本実施形態の腕動作補助装置101は、上述した腕動作補助装置1と比較して、押圧機構の構成が相違する。ここでは、この相違点について主に説明する。
図8に示すように、本実施形態の腕動作補助装置101は、上述した腕動作補助装置1と同様、前腕3b(図1等参照)の内旋方向Aの運動に追従して弾性変形することで、前腕3bを外旋方向Bに押圧する押圧機構110を備えている。
図8に示すように、本実施形態の腕動作補助装置101は、前腕3bに当接可能な前腕当接部120と、この前腕当接部120を支持する装置本体130と、を備えている。
本実施形態の腕動作補助装置101の押圧機構110は、上述の前腕当接部120及び装置本体130により構成されている。上述した腕動作補助装置1(図1等参照)の押圧機構10(図1等参照)は、前腕当接部20(図1等参照)が弾性変形する構成であるが、本実施形態の腕動作補助装置101の押圧機構110は、装置本体130が弾性変形する。つまり、本実施形態の押圧機構110は、前腕3bに当接可能な前腕当接部120と、弾性変形することにより前腕当接部120を内旋方向Aに移動可能に支持する装置本体130と、を備えている。
図8に示すように、本実施形態の前腕当接部120は、前腕3bが内旋方向Aに運動する際に、前腕3bの内側等の側面3b1(図1等参照)と当接する。本実施形態の前腕当接部120は、上述した第1実施形態の前腕当接部20と同様、側面カバ-部122及び連結部123を備えている。
前腕3b(図1等参照)が内旋方向Aに運動する際は、前腕3bの側面3b1が側面カバー部122に当接し、側面カバー部122が内旋方向Aに押圧される。
連結部123は、側面カバー部122の一端と装置本体130とを連結している。具体的に、本実施形態の連結部123は、側面カバー部122と装置本体130とを連結する帯板形状を有している。但し、本実施形態の連結部123は、上述した連結部23(図1等参照)と異なり、装置本体130に取り付けられている取付部124を支点として弾性変形し難い、内旋方向Aでの剛性が高い材料により形成されている。つまり、前腕3bが内旋方向Aに運動する際に、前腕3bにより側面カバー部122が内旋方向Aに押圧されても、連結部123は、その取付部124を支点として弾性変形しない。
本実施形態では、前腕3b(図1等参照)が内旋方向Aに運動する際に、前腕3bにより側面カバー部122が内旋方向Aに押圧されると、装置本体130のうち、前腕当接部120の連結部123が取り付けられている作動アーム152が、捩れるように弾性変形し、側面カバー部122が前腕3bに追従して内旋方向Aに移動する。このように、装置本体130の弾性変形による復元力により、前腕3bの重さの少なくとも一部が負担される。なお、図8では、作動アーム152が捩れる前の状態を二点鎖線で示し、作動アーム152が捩れることで弾性変形した状態を実線で示している。
本実施形態では、装置本体130の作動アーム152が捩れるように弾性変形することで、前腕当接部120の内旋方向A及び外旋方向Bへの移動を実現しているが、装置本体130の別の一部又は装置本体130の全部が弾性変形することにより、前腕当接部120の内旋方向A及び外旋方向Bへの移動を実現してもよい。
また、本実施形態では、前腕3bが内旋方向Aに運動する際に、前腕当接部120自体は弾性変形せず、装置本体130が弾性変形するが、装置本体130のみならず、前腕当接部120も弾性変形する構成であってもよい。
但し、前腕当接部120の内旋方向Aの剛性は、装置本体130のうち前腕当接部120が連結されている部分(本実施形態では作動アーム152)の内旋方向Aの剛性よりも大きい。このようにすることで、装置本体130よりも前腕当接部120が先に内旋方向Aに弾性変形することを抑制できる。このような剛性関係は、前腕当接部120及び装置本体130の各部の形状や材料を適宜設計・選択することにより実現可能である。
<第3実施形態>
次に、第1実施形態とは別の実施形態としての腕動作補助装置201について説明する。図9は、本実施形態の腕動作補助装置201を示す図である。本実施形態の腕動作補助装置201は、上述した腕動作補助装置1と比較して、押圧機構の構成が相違する。ここでは、この相違点について主に説明する。
図9に示すように、本実施形態の腕動作補助装置201は、上述した腕動作補助装置1と同様、前腕3bの内旋方向Aの運動に追従して弾性変形することで、前腕3bを外旋方向Bに押圧する押圧機構210を備えている。
図9に示すように、本実施形態の腕動作補助装置201は、前腕3bに当接可能な前腕当接部220と、この前腕当接部220を支持する装置本体230と、を備えている。
本実施形態の腕動作補助装置201の押圧機構210は、上述の前腕当接部220、装置本体230、及び、付勢部材270、により構成されている。本実施形態の押圧機構210は、前腕3bに当接可能な前腕当接部220と、この前腕当接部220を内旋方向Aに移動可能に支持する装置本体230と、弾性変形することにより前腕当接部220を外旋方向Bに付勢する付勢部材270と、を備えている。
図9に示すように、本実施形態の前腕当接部220は、前腕3bが内旋方向Aに運動する際に、前腕3bの内側等の側面3b1と当接する。本実施形態の前腕当接部220は、上述した第1実施形態の前腕当接部20と同様、側面カバ-部222及び連結部223を備えている。
前腕3bが内旋方向Aに運動する際は、前腕3bの側面3b1が側面カバー部222に当接し、側面カバー部222が内旋方向Aに押圧される。
連結部223は、側面カバー部222の一端と装置本体230とを連結している。具体的に、本実施形態の連結部223は、側面カバー部222と装置本体230とを連結する帯板形状を有している。但し、本実施形態の連結部223は、上述した連結部23(図1等参照)と異なり、装置本体230に対して内旋方向A及び外旋方向Bに回動自在にヒンジ接合されている。より具体的に、本実施形態の前腕当接部220の連結部223は、装置本体230と、ヒンジ部272により、互いに回動自在にヒンジ接合されている。つまり、前腕3bが内旋方向Aに運動する際に、前腕3bにより側面カバー部222が内旋方向Aに押圧されると、側面カバー部222及び連結部223が共に、装置本体230に対して内旋方向Aに回動する。換言すれば、本実施形態の前腕当接部220は、装置本体230に対して、内旋方向A及び外旋方向Bに移動可能に支持されている。
なお、本実施形態の前腕当接部220の形状は、上述した側面カバー部222及び連結部223を備える構成に限定されない。装置本体230に対して内旋方向A及び外旋方向Bに移動可能に支持される、本実施形態とは異なる形状の前腕当接部220であってもよい。また、本実施形態のヒンジ部272は、作動アーム52近傍に配置しているが、ヒンジ部272の位置はこの位置に限られない。ヒンジ部272の位置は、例えば、腕3の内旋運動及び外旋運動の回動中心軸O1に対して鉛直方向下方の位置など、図9に示す位置よりも側面カバー部222に近い位置とすることが好ましい。このようにすれば、前腕3bと側面カバー部222との回動軌道ズレを低減できる。つまり、前腕3bが内旋方向Aに運動する際の、側面カバー部222の前腕3bに対する追従性を、高めることができる。
付勢部材270は、弾性変形することで、前腕当接部220を外旋方向Bに付勢する。本実施形態の付勢部材270は、例えば、前腕当接部220と装置本体230との間に取り付けられるコイルバネにより構成することができる。前腕当接部220が、装置本体230に対して、内旋方向Aに移動すると、付勢部材270としてのコイルバネが弾性変形し、外旋方向Bへの復元力が生じる。なお、本実施形態の付勢部材270は、前腕当接部220が内旋方向Aに移動する際に、弾性変形することにより前腕当接部220を外旋方向Bに付勢する構成であれば、特に限定されない。
本実施形態では、前腕3bが内旋方向Aに運動する際は、前腕3bの側面3b1が側面カバー部222に当接し、側面カバー部222が内旋方向Aに押圧される。上述したように、前腕当接部220は、ヒンジ部272により、装置本体230に対して回動自在にヒンジ接合されているため、前腕当接部220が前腕3bにより内旋方向Aに押圧されると、前腕当接部220は装置本体230に対して内旋方向Aに回動する。つまり、前腕当接部220は前腕3bに追従して内旋方向Aに回動する。但し、付勢部材270の存在により、前腕当接部220には、外旋方向Bへの付勢力(復元力)が加わった状態となる。つまり、前腕3bが内旋方向Aに運動した場合に、前腕3bの重さの少なくとも一部は、付勢部材270の付勢力により負担される。なお、図9では、便宜上、前腕3bが鉛直方向上方に向かって上げられている状態を点線で示している。
図10は、本実施形態の押圧機構210の変形例としての押圧機構310を示す図である。図10に示す押圧機構310は、図9に示す押圧機構210と比較して、前腕当接部が装置本体に対して移動する機構、及び、付勢部材の構成、が主に相違している。
図10に示す押圧機構310の前腕当接部320は、装置本体330に設けられたガイドレール371に沿って、装置本体330に対して移動するスライダにより構成されている。より具体的に、図10に示す前腕当接部320は、前腕3bの側面3b1を覆い、前腕3bの側面3b1と当接する側面カバ-部322と、この側面カバー部322と装置本体330とを連結すると共に、装置本体330のガイドレール371に沿って移動可能な連結部323と、を備えている。なお、図10では、便宜上、装置本体330の一部を断面により示している。
側面カバー部322は、上述した側面カバー部222と同様である。連結部323は、側面カバー部322に連続して延在し、装置本体330に対して、ガイドレール371に沿って移動可能に支持されている。
前腕3bが内旋方向Aに運動する際は、前腕3bにより前腕当接部320の側面カバー部322が内旋方向Aに押圧されると、前腕当接部320の連結部323にも内旋方向Aへの力が作用する。この力のうち、装置本体330のガイドレール371に沿う分力により、前腕当接部320の連結部323は、装置本体330のガイドレール371に沿って移動する。図10に示すガイドレール371は、腕3の内旋運動及び外旋運動の回動中心軸O1周りに延在している。また、前腕当接部320の連結部323も、腕3の内旋運動及び外旋運動の回動中心軸O1周りに延在している。そのため、前腕当接部320の連結部323には、前腕当接部320の側面カバー部322の内旋方向Aへの回動により、装置本体330のガイドレール371に沿う力が作用し易い。つまり、図10に示す構成によれば、前腕3bが内旋方向Aに運動する際に、前腕3bに追従して内旋方向Aに移動し易い前腕当接部320を実現できる。
図10に示す押圧機構310の付勢部材370は、例えばコイルバネにより構成され、弾性変形することにより、装置本体330のガイドレール371に沿って、前腕当接部320の連結部323を外旋方向Bに付勢する。これにより、前腕3bが内旋方向Aに運動した場合に、前腕3bの重さの少なくとも一部は、付勢部材370の付勢力(復元力)により負担される。
また、図10に示す押圧機構310によれば、前腕当接部320の回動中心軸O3の位置を、腕3の内旋運動及び外旋運動に合わせて変化させることができる。より具体的に、図10に示す押圧機構310では、腕3の内旋運動時及び外旋運動時に、正面視(図10の視点)で、腕3の内旋運動及び外旋運動の回動中心軸O1と、前腕当接部320の回動中心軸O3と、が前腕3bの長手方向に沿って並ぶように、前腕当接部320の回動中心軸O3の位置を移動させる。これにより、腕3の内旋運動時及び外旋運動時の、前腕当接部320の前腕3bに対する追従性及び密着性を高めることができる。この結果、前腕3bの重さの少なくとも一部を、より確実に押圧機構310に負担させることができる。
本発明に係る腕動作補助装置は、上述した実施形態及び変形例に示す具体的な構成に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形・変更が可能である。第1実施形態の押圧機構10、第2実施形態の押圧機構110、及び、第3実施形態の押圧機構210を、例えば、適宜組み合わせて別の押圧機構を構成してもよい。例えば、第3実施形態の付勢部材270を、第1実施形態や第2実施形態に用いてもよい。また、第1実施形態の前腕当接部20のように、第3実施形態の前腕当接部220を弾性変形可能に構成してもよい。更に、第2実施形態の装置本体130のように、第3実施形態の装置本体230を弾性変形可能に構成してもよい。更に、上述した第1実施形態~第3実施形態の装置本体は、胴体装着部31及び上腕装着部32を備えているが、装置本体の構成は特に限られるものではなく、例えば、上腕装着部32を有さない装置本体としてもよい。